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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】小麦ふすま含有加工食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/21 20160101AFI20230124BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20230124BHJP
   A21D 13/02 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A23L33/21
A21D2/36
A21D13/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021213713
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2017104939の分割
【原出願日】2017-05-26
(65)【公開番号】P2022034062
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔平
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02392215(EP,A1)
【文献】特開昭60-210939(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105831593(CN,A)
【文献】特開2004-298179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0191393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A21D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦ふすまを1~30質量%、乳化剤を0.4~3.0質量%含有する小麦ふすま含有焼き菓子であって、
前記小麦ふすま含有焼き菓子中の乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれるHLBが2~5の乳化剤を含み、
前記小麦ふすま含有焼き菓子中の乳化剤に占める、前記のHLB2~5の乳化剤の割合が70質量%以上である、小麦ふすま含有焼き菓子
【請求項2】
アラビノキシランを1.0~7.6質量%、乳化剤を0.4~3.0質量%含有する小麦ふすま含有焼き菓子であって、
前記小麦ふすま含有焼き菓子中の乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれるHLBが2~5の乳化剤を含み、
前記小麦ふすま含有焼き菓子中の乳化剤に占める、前記のHLB2~5の乳化剤の割合が70質量%以上である、小麦ふすま含有焼き菓子
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦ふすまを含有する加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦ふすまは主に粉砕された小麦の外皮からなり、不溶性食物繊維、ビタミン、ミネラル等を豊富に含むことから、健康食品素材として注目されている。しかし、小麦ふすまは特有の臭気(いわゆるふすま臭)を有するために、小麦ふすま配合食品は一般に食味に劣る。
小麦ふすまの臭気を改善するための技術がいくつか報告されている。例えば特許文献1には、小麦ふすまを含有する加工食品において、不溶性食物繊維の含有量に対するフェルラ酸とp-クマル酸の各含有量を特定の比に調整することにより、小麦ふすまの臭気が抑えられたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5922285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、小麦ふすま、あるいはその主要成分であるアラビノキシランを豊富に含有しながらも、ふすま臭が効果的に低減された加工食品の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、小麦ふすまを豊富に、かつ特定範囲内の量で含有する加工食品、あるいは小麦ふすまを含有し、小麦ふすまの主要成分であるアラビノキシランを豊富に、かつ特定範囲内の量で含有する加工食品において、乳化剤を通常の配合量よりも多量に、かつ特定範囲内の量で含有させることにより、得られる加工食品のふすま臭を効果的に低減できること、また、多量の乳化剤に起因する異味も発現しにくくなることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0006】
本発明は、小麦ふすまを1~30質量%、乳化剤を0.4~3.0質量%含有する小麦ふすま含有加工食品を提供するものである。
また本発明は、アラビノキシランを1.0~7.6質量%、乳化剤を0.4~3.0質量%含有する小麦ふすま含有加工食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の小麦ふすま含有加工食品は、小麦ふすまないしはアラビノキシランを豊富に含有しながらも、ふすま臭が効果的に低減された加工食品である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の小麦ふすま含有加工食品(以下、単に「本発明の加工食品」とも称す。」の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0009】
本発明の加工食品は一実施形態(以下、単に「第1実施形態」と称す。)において、小麦ふすまを1~30質量%含有し、また乳化剤を0.4~3.0質量%含有する。
本発明において加工食品中の各成分の含有量とは、すなわち、加工食品を構成する生地中(例えば、焼き菓子であれば、焼成後の生地中)の各成分の含有量を意味する。
【0010】
本発明の加工食品の食品形態に特に制限はなく、例えば、焼き菓子(好ましくは、「製菓辞典」、初版、1981年10月30日、第204頁に記載のビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、パイ、カットパン又はショートブレッドにおいて、本発明で規定する特定量の小麦ふすま及び乳化剤を含有する形態)、シリアル食品(一般的に朝食シリアル(Ready to eat,Breakfast cereal)と称される。一般的には、穀類原料を蒸煮し、冷却後に圧扁し、成形した後に膨張させ、次いで乾燥後に焙焼することで得られるフレーク状の食品である。牛乳等の液状食品を加えて食されることが多い。なお、本発明においてシリアル食品とは、牛乳等を加える前の状態、すなわち、シリアル食品として販売される形態を意味する。)、造粒米、調味用食品(例えばドレッシング、ポン酢、しょうゆ、スプレッド)、クルトン、麺、パンが挙げられる。なかでも本発明の効果をより効果的に発現する観点から焼き菓子又はシリアル食品が好ましく、より好ましくは焼き菓子である。また、本発明の加工食品は、栄養補助食品としての、あるいは栄養バランスを考慮した焼き菓子であるカロリーバー等であってもよい。
【0011】
第1実施形態において、加工食品中の小麦ふすまの含有量を1質量%以上とすることにより、当該加工食品を食することによる小麦ふすまの生理作用をより効果的に享受することが可能となる。この観点から、当該加工食品中の小麦ふすまの含有量は2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、9質量%以上が特に好ましい。
また、第1実施形態において、加工食品中の小麦ふすまの含有量を30質量%以下とすることにより、生地の調製に支障を生じにくく、また乳化剤によるふすま臭のマスキング作用を十分に引き出すことが可能となる。当該加工食品中の小麦ふすまの含有量は25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは18質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以下である。加工食品中の小麦ふすまの含有量はすなわち、加工食品に配合した小麦ふすまの配合量である。
【0012】
小麦ふすまは、主要成分としてアラビノキシランを含有する。「アラビノキシラン」は、キシロース成分からなる主鎖にアラビノース成分からなる側鎖が結合して構成される、ヘミセルロースの1種である。
本発明の加工食品の別の実施形態(以下、単に「第2実施形態」との称す。)において、加工食品は小麦ふすまを含有し、またアラビノキシランを1.0~7.6質量%含有する。当該加工食品中のアラビノキシランの含有量は、2.0質量%以上が好ましく、2.5質量%以上がより好ましい。また当該加工食品中のアラビノキシランの含有量は6.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましい。本発明においてアラビノキシランは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0013】
本発明の加工食品に含まれるアラビノキシランの分子量に特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜に分画等して用いてもよい。アラビノキシランの重量平均分子量(Mw)は通常は300以上であり、10000以上が好ましく、50000以上がより好ましい。また、アラビノキシランのMwは通常は1000000以下であり、500000以下が好ましく、200000以下がより好ましい。
また、上記アラビノキシランを構成するアラビノース成分とキシロース成分との比についても、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜設定することができる。キシロース成分に対するアラビノース成分のモル比(Ara/Xyl)は、通常は0.01/1以上であり、0.05/1以上が好ましく、0.1/1以上がより好ましい。またAra/Xylは通常は10/1以下であり、2/1以下が好ましく、1.2/1以下がより好ましい。
なお、本明細書においてアラビノキシランの量を説明する場合、アラビノキシランの固形分量(不揮発成分量)を意味する。
【0014】
本発明の加工食品(第1実施形態及び第2実施形態を併せて「本発明の加工食品」と称す。)は乳化剤を0.4~3.0質量%含有する。加工食品中の乳化剤の含有量を0.4質量%以上とすることにより、小麦ふすまに由来するふすま臭を効果的にマスキングすることができる。この観点から、当該加工食品中の乳化剤の含有量は0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましい。
また、本発明の加工食品中の乳化剤の含有量を3.0質量%以下とすることにより、乳化剤由来の異味の発現を十分に抑えることが可能となる。乳化剤由来の異味の発現をより効果的に抑える観点から、当該加工食品中の乳化剤の含有量は2.5質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましく、1.2質量%以下が特に好ましい。
【0015】
焼き菓子等の加工食品は、生地等の改質を目的として乳化剤が配合されることが多い。しかし、乳化剤の配合量はそれほど多くはなく、通常は0.2質量%ないしはそれ以下のレベルである。本発明は、小麦ふすまを豊富に含有し、あるいは小麦ふすまの主要成分であるアラビノキシランを豊富に含有する加工食品において、乳化剤を通常の配合量よりも格段に多い特定の範囲内で配合した場合に、小麦ふすまの臭気が効果的にマスキングされ、また、乳化剤の異味も発現しにくくなることを見い出し、本発明を完成させるに至ったものである。乳化剤の異味が抑えられる理由は定かではないが、おそらく乳化剤と小麦ふすまないしはアラビノキシランとの相互作用が一定程度影響しているものと推定される。
【0016】
本発明の加工食品に含まれる上記乳化剤の種類に特に制限はなく、穀粉食品において通常用いられる乳化剤の1種又は2種以上を用いることができる。食品のふすま臭を低減する観点からは、上記乳化剤はHLBが1~16の乳化剤を含むことが好ましく、HLBが2~11の乳化剤を含むことがより好ましく、HLBが2~5の乳化剤を含むことがさらに好ましい。本発明の加工食品に含まれる乳化剤に占めるHLBが1~16の乳化剤(好ましくはHLBが2~11の乳化剤、より好ましくはHLBが2~5の乳化剤)の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。また、本発明の加工食品に含まれる乳化剤のすべてが、HLBが1~16であることも好ましい。
【0017】
上記乳化剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノアシルグリセロール(グリセリンモノ脂肪酸エステル)、有機酸モノアシルグリセロール(グリセリン脂肪酸有機酸エステル)等を挙げることができる。
上記各乳化剤を構成する脂肪酸の種類に特に制限はなく、例えば、炭素数8~24、好ましくは炭素数12~22の脂肪酸を構成脂肪酸とする乳化剤を用いることができる。当該脂肪酸の具体例としては、例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等を挙げることができる。
また、上記有機酸モノアシルグリセロールを構成する有機酸としては、例えば、コハク酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸、及び酒石酸を挙げることができる。
なかでも本発明の加工食品に含まれる乳化剤は、1種又は2種以上のショ糖脂肪酸エステルを含むことが好ましい。本発明の加工食品に含まれる乳化剤に占めるショ糖脂肪酸エステルの割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。本発明の加工食品に含まれる乳化剤のすべてがショ糖脂肪酸エステルであることも好ましい。
【0018】
本発明の加工食品の製造方法に特に制限はない。目的とする食品形態の通常の調製方法において、得られる加工食品中の小麦ふすまないしアラビノキシラン、乳化剤等の含有量が本発明の規定を満たすように、小麦ふすま、乳化剤、穀粉等を配合することで得ることができる。
小麦ふすまとしては、小麦の外皮を粉砕したものを用いるのが好ましい。小麦ふすまは商業的に入手可能であり、例えば、ウィートブランDF(商品名、日清ファルマ社製)、小麦ふすま(商品名、日本製粉社製)を用いることができる。小麦ふすまは、脱脂処理したものや、蒸煮処理等に付し、次いで乾燥したもの等を用いることも好ましい。
また、乳化剤は通常の方法で調製することができ、また商業的に入手することもできる。
【0019】
本発明の加工食品が焼き菓子であれば、例えば、少なくとも穀分(好ましくは小麦粉)と、小麦ふすまと、乳化剤とを特定量混合して生地を調製し、該生地を、オーブン等を用いて焼成することにより得ることができる。上記生地の調製における小麦ふすま、乳化剤等の配合により、得られる焼き菓子中の小麦ふすまないしはアラビノキシラン、乳化剤等の含有量が本発明で規定する範囲内に調整される。上記生地の調製においては通常の焼き菓子の調製において原料として用いうる油脂、糖類等を配合することが好ましい。また、所望により卵、粉乳、牛乳、ココナッツミルク、食塩、パウダー、調味料、膨張剤、pH調整剤、酸化防止剤、香料、ビタミン類、蛋白質、澱粉、水等を配合してもよい。
【0020】
また、本発明の加工食品がシリアル食品(朝食シリアル)の場合、当該シリアル食品は例えば、穀類原料を常法により蒸煮し、冷却後に圧扁し、成形し、エクストルーダーにより膨張させた後、乾燥し、焙焼することにより得ることができる。上記製造過程における小麦ふすま、乳化剤等の配合により、得られるシリアル食品中の小麦ふすまないしはアラビノキシラン、乳化剤等の含有量が本発明で規定する範囲内に調整される。上記生地の調製において、必要に応じて、例えば、結着剤、糖類、天然又は人工甘味料、チョコレート、ココア、食塩、調味料、香辛料、油脂、着色料、乾燥野菜、乾燥果物、ナッツ類、ビタミン類、ミネラル添加剤、食物繊維、蛋白質、水等を配合することができる。
【実施例
【0021】
本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[アラビノキシラン含有量の測定]
<試料溶液の調製>
試料10mgに対して1mol/Lの塩酸を2mL加え、30分間撹拌した。撹拌後、100℃に加熱し、次いで15分以上かけて放冷した。放冷後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を2mL、超純水を2mL加えて撹拌した。撹拌後、3000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄み液を回収した。上澄み液回収後、残った残渣については、上記の手順(1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を2mL、超純水を2mL加えて撹拌)をもう一度行い、遠心後の上澄み液を1回目に回収した上澄み液とあわせ、下記の液体クロマトグラフィー(LC)を用いた分析に供した。
【0023】
<LC分析条件>
-移動相の調製-
1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mLと超純水900mLをよく混和して脱気し、移動相とした。
【0024】
-LC条件-
機種 :DIONEX DX320
検出器 :ペルスドアンペロメトリック検出器(PAD)
カラム :CarboPAC PA1 (4×250mm)
カラム温度:室温
移動相 :A液 100mmol/L水酸化ナトリウム水溶液
:B液 超純水
流速 :1.0mL/min
注入量 :25μL
上記の条件で、保持時間12.5分(アラビノース)、21.9分(キシロース)のピーク面積からアラビノースとキシロースの含有量を定量し、両者の合計量をアラビノキシランの量とした。
【0025】
[調製例] 焼き菓子の調製
ショートニング22.4g、還元水飴62.1g、並びに膨張剤として炭酸アンモニウム及び重曹を合計1.0g秤量し、これらをホバートミキサー N50 MIXER(ホバート社製)に入れた。さらに下表に示す乳化剤を入れ、低速で30秒間撹拌した後、中速で30秒間撹拌した。乳化剤の配合量は、焼き菓子中(焼成後の生地中)の含有量が下表に示す量となるように調整した。
さらに低速で30秒間撹拌しながら、水14.1gを2分割して加えた。最初の水の添加後、低速で30秒間撹拌し、次いで2回目の水を添加し、低速で30秒間攪拌した。ミキサーの壁に付着した油をかき落とした後、低速で30秒間攪拌した。
続いて、小麦粉を配合し、低速で45秒間撹拌し、次いで小麦ふすま(商品名:ウィートブランM、日清ファルマ社製)を配合し、低速で45秒間撹拌した。小麦粉及び小麦ふすまの配合量は、焼き菓子中の小麦ふすまないしアラビノキシランの含有量が下表に示す量となるように調整した。
上記で得られた生地を、長方形の焼型に詰め、剥離紙を敷いた天板にならべた。焼型は金属製で、縦×横×高さ:80mm×20mm×15mmのものを用いた。
続いて、下記の焼成条件において焼成して焼き菓子(実施例1~18、比較例)を得た。
焼成温度:上火:180℃、下火:180℃
焼成時間:11分00秒
【0026】
[試験例] 焼き菓子の食味評価
上記調製例で得られた各焼き菓子のふすま臭と、乳化剤の異味について、3名の専門パネルにより下記評価基準に基づき評価した。各専門パネルの評価結果はすべて同じであった。
【0027】
<ふすま臭の評価基準>
5:ふすま臭を感じない
4:ふすま臭をほとんど感じない
3:基準に比べてふすま臭が大きく低減されている
2:基準に比べてふすま臭がやや低減されている
1:乳化剤を配合していない例のふすま臭(基準)と同等のふすま臭を感じる。
【0028】
上記のふすま臭の評価は、小麦ふすまの含有量が同じである焼き菓子の間で、乳化剤を配合していない例を基準とし、上記評価基準に基づき評価した。
ただし実施例4及び5の焼き菓子(小麦ふすま含有量3.0質量%及び5.0質量%)については、小麦ふすまの含有量が1.0質量%で乳化剤を配合していない例(すなわち比較例1の焼き菓子)を基準として評価した。
また比較例8の焼き菓子(小麦ふすま含有量35.0質量%)については、小麦ふすまの含有量が30.0質量%で乳化剤を配合していない例(すなわち比較例6)を基準として評価した。
また実施例12~18については、小麦ふすまの含有量が13.8質量%で乳化剤を配合していない例(すなわち比較例3)を基準として評価した。
【0029】
<乳化剤の異味の評価基準>
4:乳化剤の異味を感じない
3:乳化剤の異味をほとんど感じない
2:乳化剤の異味を感じる
1:乳化剤の異味を強く感じる
【0030】
結果を下表に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
上記各表に示されるように、小麦ふすまを含有し、乳化剤を含有しない焼き菓子は、いずれもふすま臭を強く感じるものであった(比較例1、3、6)。また、このふすま臭は、乳化剤を配合してもその量が本発明で規定するよりも少ない場合には、十分に低減することはできなかった(比較例4)。また、乳化剤を本発明で規定するよりも多量に配合した場合には、ふすま臭を十分に低減することができるが、乳化剤由来の異味を感じる結果となった(比較例2、5、7)。また、乳化剤を本発明の規定量含有する焼き菓子であっても、小麦ふすまを大量に配合した場合には、ふすま臭を十分に低減することはできなかった(比較例8)。
これに対し、小麦ふすまの含有量を本発明で規定する範囲内とした上で、乳化剤の含有量を本発明で規定する量で配合した焼き菓子は、いずれもふすま臭が大きく低減され、あるいはふすま臭を感じないかほとんど感じないレベルにまでふすま臭を低減でき、また乳化剤の異味も感じにくいことがわかる(実施例1~18)。