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特許7216217家具フラップを運動させるための駆動装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】家具フラップを運動させるための駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/10 20060101AFI20230124BHJP
   A47B 55/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
E05F1/10
A47B55/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021544591
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 AT2020060007
(87)【国際公開番号】W WO2020154751
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】A50082/2019
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ボーレ
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-514457(JP,A)
【文献】特表2012-507644(JP,A)
【文献】特表2008-525673(JP,A)
【文献】特開平01-151682(JP,A)
【文献】特開平02-055025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
17/00
A47B 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具本体(2)に対して相対的に可動に支持された家具フラップ(3)を運動させるための駆動装置(4)であって、
- 前記家具フラップ(3)を運動させるための、回動軸(6)を中心として旋回可能に支持された少なくとも1つの作動アーム(7)であって、前記家具フラップ(3)の組付け状態で前記家具本体(2)に対して相対的な前記家具フラップ(3)の閉鎖位置に相当する閉鎖位置と、開放位置との間で可動に支持された少なくとも1つの作動アーム(7)と、
- 前記少なくとも1つの作動アーム(7)に力を加えるための蓄力器(11)と、
- 前記少なくとも1つの作動アーム(7)の旋回運動を制動するかまたは阻止するためのクラッチ装置(19)であって、可動に支持された、歯列(34a,34b)を備える少なくとも1つの第1のクラッチ要素(23a,23b)を有し、該少なくとも1つの第1のクラッチ要素(23a,23b)は、前記作動アーム(7)の予め設定された旋回速度を上回ると、第2のクラッチ要素(24)に係合可能であり、これによって、前記少なくとも1つの作動アーム(7)の前記旋回運動が制動されるかまたは阻止され、前記第2のクラッチ要素(24)は、両方の前記クラッチ要素(23a,23b,24)を互いに係合させることができる少なくとも1つの係合区分(25)を有する、クラッチ装置(19)と
を備える、駆動装置(4)において、
前記第2のクラッチ要素(24)は、前記係合区分(25)と別個の少なくとも1つの空転区分(26)を有し、前記第1のクラッチ要素(23a,23b)は、前記作動アーム(7)の前記閉鎖位置で前記第2のクラッチ要素(24)の前記空転区分(26)の範囲内に配置されており、これによって、前記両方のクラッチ要素(23a,23b,24)が、前記作動アーム(7)の前記閉鎖位置で互いに切り離されており、
前記少なくとも1つの第1のクラッチ要素(23a,23b)は、ロータ(29)に可動に支持されており、該ロータ(29)は、回転軸線(22)を中心として回動可能に支持されており、該ロータ(29)の前記回転軸線(22)と前記作動アーム(7)の前記回動軸(6)とは、互いに平行に離間させられていることを特徴とする、駆動装置(4)。
【請求項2】
前記両方のクラッチ要素(23a,23b,24)は、前記第2のクラッチ要素(24)の前記空転区分(26)によって、前記作動アーム(7)の前記閉鎖位置と、最大30°前記作動アーム(7)の開放位置との間に生じる前記作動アーム(7)の旋回角度範囲内で互いに切り離されていることを特徴とする、請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記両方のクラッチ要素(23a,23b,24)は、前記第2のクラッチ要素(24)の前記空転区分(26)によって、前記作動アーム(7)の前記閉鎖位置と、最大20°の前記作動アーム(7)の開放位置との間に生じる前記作動アーム(7)の旋回角度範囲内で互いに切り離されていることを特徴とする、請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ロータ(29)は、前記第1のクラッチ要素(23a,23b)の回動部分(33a,33b)を収容するための少なくとも1つの回動支持部(31a,31b)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項5】
ばね要素(27a)の力によって、前記第1のクラッチ要素(23a,23b)に、前記第2のクラッチ要素(24)から切り離された位置の方向へ予荷重が加えられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動装置(4)は、前記作動アーム(7)の旋回経路の少なくとも一部の範囲にわたる前記作動アーム(7)の旋回速度を前記第1のクラッチ要素(23a)のより高い回転速度に増速させることができる増速伝動機構を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項7】
前記増速伝動機構は、前記第1のクラッチ要素(23a,23b)を駆動するための少なくとも1つの歯車(20)を有し、該歯車(20)は、前記回動軸(6)を中心とした前記作動アーム(7)の旋回運動時に、前記駆動装置(4)の付きレール(21)に沿って可動であることを特徴とする、請求項記載の駆動装置。
【請求項8】
前記歯付きレール(21)は、円弧状であることを特徴とする、請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
前記第1のクラッチ要素(23a,23b)は、歯列(34a,34b)を有し、前記第2のクラッチ要素(24)の前記係合区分(25)は応歯列(35)を有し、前記第1のクラッチ要素(23a,23b)の前記歯列(34a,34b)と前記第2のクラッチ要素(24)の前記対応歯列(35)とは、互いに形状接続的に係合可能であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項10】
前記対応歯列(35)は、円弧状に形成されていることを特徴とする、請求項9記載の駆動装置。
【請求項11】
前記第2のクラッチ要素(24)は、実質的に環状の内側輪郭部を有し、前記係合区分(25)と前記空転区分(26)とは、前記第2のクラッチ要素(24)の前記環状の内側輪郭部に配置されているかまたは形成されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項12】
第2のクラッチ要素(24,24a)の係合区分(25,25a)にそれぞれ係合可能である少なくとも2つの第1のクラッチ要素(23a,23b)が設けられていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の駆動装置。
【請求項13】
両方の前記第1のクラッチ要素(23a,23b)は、互いに180°だけずらされて前記ロータ(29)に配置されていることを特徴とする、請求項12記載の駆動装置。
【請求項14】
家具本体(2)と、該家具本体(2)に対して相対的に可動に支持された家具フラップ(3)と、該家具フラップ(3)を運動させるための、請求項1から13までのいずれか1項記載の駆動装置(4)とを備える家具(1)。
【請求項15】
前記家具フラップ(3)は、閉鎖位置では、前記家具本体(2)を覆い隠しており、開放位置では、前記家具本体(2)に対して相対的に持ち上げられた位置を占めていることを特徴とする、請求項14記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具本体に対して相対的に可動に支持された家具フラップを運動させるための駆動装置であって、
- 家具フラップを運動させるための、回動軸を中心として旋回可能に支持された少なくとも1つの作動アームであって、家具フラップの組付け状態で家具本体に対して相対的な家具フラップの閉鎖位置に相当する閉鎖位置と、開放位置との間で可動に支持された少なくとも1つの作動アームと、
- 少なくとも1つの作動アームに力を加えるための蓄力器と、
- 少なくとも1つの作動アームの旋回運動を制動するかまたは阻止するためのクラッチ装置であって、可動に支持された、歯列を備える少なくとも1つの第1のクラッチ要素を有し、この少なくとも1つの第1のクラッチ要素は、作動アームの予め設定された旋回速度を上回ると、第2のクラッチ要素に係合可能であり、これによって、少なくとも1つの作動アームの旋回運動が制動されるかまたは阻止され、第2のクラッチ要素は、両方のクラッチ要素を互いに係合させることができる少なくとも1つの係合区分を有する、クラッチ装置と
を備える、駆動装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、家具本体と、この家具本体に対して相対的に可動に支持された家具フラップと、この家具フラップを運動させるための、以下に記載する形態の駆動装置とを備える家具に関する。
【0003】
家具フラップを運動させるための駆動装置は、通常、旋回可能に支持された少なくとも1つの作動アームと、この作動アームに力を加えるためのばね装置の形態の蓄力器とを有している。この蓄力器によって、家具フラップの重量を少なくとも部分的に補償することができるため、人は家具フラップを容易に動かすことができる。作動アームには、家具フラップのサイズおよび重量に応じて、開放位置に向かって、蓄力器の極めて高い予荷重力が加えられている。特に家具フラップがまだ作動アームに結合されていない場合には、問題となる状況が生じてしまう。このような場合には、作動アームに釣合い重りも作用しない。これによって、作動アームが蓄力器の力により急激に飛び出し、人がけがをしてしまったり、物体が損傷を受けてしまう。
【0004】
国際公開第2006/069412号および国際公開第2010/051569号には、家具フラップを運動させるための駆動装置が開示されている。この駆動装置は、開放位置の方向への作動アームのコントロールされない急激な飛出しを阻止するための遠心クラッチを具備している。この遠心クラッチは、作動アームが、予め設定された旋回速度未満ではコントロールされて運動可能であることを確保している。作動アームの予め設定された旋回速度を上回ると、遠心クラッチによって、作動アームの自動的なロックが引き起こされる。これによって、作動アームがその旋回姿勢でロックされ、もはや開放位置の方向へと急激に飛び出さないようになっている。
【0005】
実際には、駆動装置が、すでに家具に予め組み付けられていて、作動アームが、一方で家具本体に枢着されていて、他方で家具フラップに枢着されている限り、遠心クラッチに関する問題が生じてしまう。家具フラップが、家具本体に対して相対的な閉鎖された位置にあると、例えば、家具本体の輸送または組付け時の家具本体の傾動によって、遠心クラッチのクラッチ要素同士が望ましくない形で互いに引っ掛かり合ってしまうことが生じる。遠心クラッチの機能不全によって、作動アームがその閉鎖された位置に留められており、家具本体への家具フラップの接触によって、作動アームをもはや閉鎖位置の方向にさらに押圧することもできなくなってしまう。これによって、遠心クラッチの引っ掛かりおよび作動アームの機能不全を解消することができない恐れがある。この場合、家具フラップの開放は、もはや家具フラップまたは駆動装置の損傷を伴ってしか可能とならないことが増えてしまう。
【0006】
本発明の課題は、冒頭で述べたカテゴリーの駆動装置を改良して、上述した欠点を回避することである。
【0007】
このことは、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。本発明の更なる有利な実施例は、従属請求項に定義してある。
【0008】
本発明によれば、第2のクラッチ要素が、係合区分と別個の少なくとも1つの空転区分を有し、第1のクラッチ要素が、作動アームの閉鎖位置で第2のクラッチ要素の空転区分の範囲内に配置されており、これによって、両方のクラッチ要素が、作動アームの閉鎖位置で互いに切り離されていることが特定されている。
【0009】
言い換えると、第2のクラッチ要素が、作動アームの閉鎖位置および/または作動アームの閉鎖位置の直前に位置する旋回範囲での両方のクラッチ要素相互の係合、特に形状接続的なロックを阻止する少なくとも1つの空転区分を有している。
【0010】
作動アームの閉鎖位置では、第1のクラッチ要素が、第2のクラッチ要素の空転区分に当付け可能である。この空転区分の表面は、実質的に歯を備えずにまたは実質的に平滑に形成されてよい。空転区分は別の表面性状を有してもよいが、いずれにせよ、作動アームの閉鎖位置で両方のクラッチ要素の間のロックが不可能となることが確保されている必要がある。
【0011】
1つの実施例によれば、両方のクラッチ要素が、第2のクラッチ要素の空転区分によって、作動アームの閉鎖位置と、最大30°、好ましくは最大20°の作動アームの開放位置との間に生じる作動アームの旋回角度範囲内で互いに切り離されていることが特定されていてよい。
【0012】
本発明の1つの実施例によれば、第2のクラッチ要素が、実質的に環状の内側輪郭部を有し、係合区分と空転区分とが、第2のクラッチ要素の環状の内側輪郭部に配置されているかまたは形成されていることが特定されていてよい。
【0013】
第2のクラッチ要素の係合区分は、例えば、第1のクラッチ要素に形状接続的にロックするための対応歯列を有していてよい。これに対して、空転区分は、作動アームの閉鎖位置で第1のクラッチ要素を当て付けることができる実質的に平滑な当付け面を形成していてよい。
【0014】
本発明の更なる詳細および利点は、以下の図説から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】家具本体と、開放位置にある家具フラップと、この家具フラップを運動させるための駆動装置とを備えた家具の側面図である。
図2】家具フラップが家具本体に対して相対的に閉鎖位置を占めている、図1に示した家具を示す図である。
図3a】作動アームが閉鎖位置にある駆動装置の側面図である。
図3b】作動アームが閉鎖位置にある駆動装置の詳細な拡大図である。
図3c】作動アームが閉鎖位置にある駆動装置の詳細な拡大図である。
図4a】作動アームが、ロックされた開放位置にある駆動装置の側面図である。
図4b】作動アームが、ロックされた開放位置にある駆動装置の詳細な拡大図である。
図4c】作動アームが、ロックされた開放位置にある駆動装置の詳細な拡大図である。
図5a】駆動装置の、作動アームに結合することができる連結片の斜視図である。
図5b】駆動装置の、作動アームに結合することができる連結片の詳細な拡大図である。
図6a】クラッチ装置の分解図である。
図6b】クラッチ装置の詳細な拡大図である。
【0016】
図1には、家具本体2を備えた家具1が側面図で示してある。同図では、家具フラップ3が、駆動装置4によって家具本体2に対して相対的に可動に支持されている。図示の実施例では、家具フラップ3が2つの部分から構成されていて、家具本体2の天板2aの下面にヒンジ10により旋回可能に取り付けられた第1の部分フラップ3aを有している。この第1の部分フラップ3aには、第2の部分フラップ3bが枢動自在に結合されている。駆動装置4は、家具本体2に取り付けることができるハウジング5と、このハウジング5に旋回可能に支持された、好ましくは長さ調整可能に形成された、家具フラップ3を運動させるための少なくとも1つの作動アーム7とを有している。この作動アーム7は、枢動軸8を介して旋回可能に金具部分9に結合されている。この金具部分9は、好ましくは組付けプレートを介して第2の部分フラップ3bの内面に取り付けることができる。
【0017】
図2には、家具フラップ3が家具本体2に対して閉鎖された、図1に示した家具1の側面図が示してある。駆動装置4は、作動アーム7に力を加えるための蓄力器11(図3a)を有している。これによって、家具フラップ3の重量を少なくとも部分的に補償することができる。その上、駆動装置4は、少なくとも1つの作動アーム7の旋回運動を制動するかまたは阻止するためのクラッチ装置19(図示せず)を有しており、これによって、フリーな状態の作動アーム7、つまり、家具フラップ3がまだ取り付けられていない作動アーム7が、蓄力器11の、開放方向に作用する力により不本意に開放してしまうかまたは急激に飛び出してしまうことを回避することができる。家具フラップ3が作動アーム7に取り付けられている場合には、クラッチ装置19は作動しない。なぜならば、家具フラップ3が作動アーム7に組み付けられている場合には、この作動アーム7の旋回速度が、予め設定された臨界値を常に大幅に下回っているからである。しかしながら、駆動装置4のクラッチ装置19は、家具フラップ3の図示の閉鎖位置では動作しなくなってしまうことがあり、これによって、家具フラップ3が、開放方向にも閉鎖方向にも運動することができず、クラッチ装置19の動作不全は解消することができない。
【0018】
図3aには、家具本体2に取り付けることができるハウジング5を備えた駆動装置4が側面図で示してある。作動アーム7(図示せず)は、回動軸6を中心として回動可能な連結片17に解離可能に結合可能である。この連結片17は、作動アーム7を形状接続的に取り付けるために、複数の切欠き18を有している。作動アーム7に力を加えるために、少なくとも1つのコイルばね、例えば少なくとも1つの圧縮ばねまたは少なくとも1つのコイルばね)を有する蓄力器11が設けられている。この蓄力器11は、好適な実施形態によれば、互いに並列に配置された複数の圧縮ばねを備えたばねセットを有している。蓄力器11は、作用箇所16を介して、回動軸13を中心として旋回可能な中間レバー12に可動に結合されている。この中間レバー12には、押圧ローラ14が回動可能に支持されている。連結片17には、制御輪郭部15が形成されている。中間レバー12の押圧ローラ14は、回動軸6を中心とした作動アーム7の運動時に、連結片17の制御輪郭部15に沿って走行可能である。
【0019】
駆動装置4は、少なくとも1つの作動アーム7の旋回運動を制動するかまたは阻止するためのクラッチ装置19を有している。これによって、作動アーム7が、蓄力器11の、作動アーム7に加えられた力に基づき開放位置の方向に不本意に急激に飛び出してしまうことが阻止されている。クラッチ装置19は、例えば遠心クラッチを有していてよい。クラッチ装置19は、回転軸線22を中心として回動可能な歯車20によって駆動可能である。この歯車20は、回動軸6を中心とした作動アーム7の運動時に、好ましくは円弧状に形成された歯付きレール21に沿って転動し走行可能である。この歯付きレール21は、駆動装置4のハウジング5に配置されているかまたは形成されている。歯車20と歯付きレール21とは、作動アーム7の旋回経路の範囲における作動アーム7の旋回速度を、回転軸線22の周りに回転可能に支持された軸30(図6a)のより高い回動速度に増速させる増速伝動機構を構成している。この増速伝動機構の増速比が1:4の場合、これは、作動アーム7が15°だけ角度変化、つまり旋回することによって、回転軸線22の周りに回転可能に支持された軸30の角度変化が4倍になることを意味している。つまり、このとき、軸30は60°だけ回動させられる。こうして、遠心クラッチとして形成されたクラッチ装置19の応動時間を著しく短縮することができる。
【0020】
図3bには、図3aにおいて枠で囲った範囲が拡大図で示してある。作動アーム7(つまり、連結片17)の運動時には、歯車20が歯付きレール21に沿って転動する。クラッチ装置19は、可動に支持された少なくとも1つの第1のクラッチ要素23a,23b(図3c)を有している。このクラッチ要素23a,23bは、作動アーム7の、予め設定された旋回速度を上回ると、第2のクラッチ要素24に係合可能となる。これによって、作動アーム7の旋回運動が制動されるかまたは阻止される。
【0021】
図3cには、クラッチ装置19の詳細な拡大図が示してある。同図では、2つの第1のクラッチ要素23a,23bが、回転軸線22を中心として回動可能な1つの共通の軸30に配置されている。両方の第1のクラッチ要素23a,23bは、軸30の軸方向で互いに離間させられていて、歯付きレール21に接して転動する歯車20によって回転軸線22を中心として駆動可能である。クラッチ要素23a,23bは、それぞれ1つの歯列34a,34bを有している。この歯列34a,34bは、予め設定された作動アーム7の旋回速度を上回ると、第2のクラッチ要素24に配置された係合区分25の対応歯列35に形状接続的に、つまり嵌め合いによりロック可能となる。第2のクラッチ要素24に少なくとも1つの空転区分26が配置されていることを認めることができる。この空転区分26は、作動アーム7の図示の閉鎖位置において、第2のクラッチ要素24に対する第1のクラッチ要素23aのロックを阻止している。空転区分26の角度範囲が28°の角度範囲にわたって延在している例示的な事例では、増速伝動機構の増速比が、すでに述べた1:4の場合、作動アーム7のロックが7°の角度範囲において不可能となる。空転区分26は、凹部または凸部なしに形成された、円弧状に形成された平滑な輪郭部を有していてよい。
【0022】
第1のクラッチ要素23a,23bには、ばね要素27a,27bによって、第2のクラッチ要素24から切り離された位置の方向へ予荷重が加えられている。ばね要素27a,27bは、クラッチ要素23a,23bをコンパクトな休止位置へと押圧して、規定された解除力を提供するために働く。この規定された解除力を超過した後に初めて、両方の第1のクラッチ要素23a,23bが、第2のクラッチ要素24に解除可能にロック可能となる。
【0023】
図4aには、駆動装置4の側面図が示してある。同図では、作動アーム7(つまり、連結片17)が、約20°の開放位置でクラッチ装置19によってロックされている。図4bには、図4aにおいて枠で囲った範囲が拡大図で示してある。同図では、作動アーム7が、予め設定された旋回速度を上回ることにより、両方の第1のクラッチ要素23a,23bと第2のクラッチ要素24との係合によって形状接続的にロックされている。図4bに示した位置から出発して、作動アーム7を手で閉鎖位置の方向に押圧することにより、作動アーム7のロックを解除することができる。その後、両方の第1のクラッチ要素23a,23bが、ばね要素27a,27bの力によって第2のクラッチ要素24からロック解除可能となる。
【0024】
図4cには、クラッチ装置19の拡大図が示してある。同図では、第1のクラッチ要素23a,23bの歯列34a,34bが、第2のクラッチ要素24の係合区分25の対応歯列35に係合している。係合区分25は、例えば330°の角度範囲にわたって延在していてよく、これに対して、空転区分26は30°の角度範囲にわたって延在している。
【0025】
図5aには、駆動装置4の、作動アーム7に結合することができる連結片17の斜視図が示してある。この連結片17は複数の切欠き18を有している。この切欠き18内には、作動アーム7の組み付けられた状態において、作動アーム7の可能な取付け要素、特に作動アーム7のピンおよび/またはばね荷重が加えられた傾倒レバーが収容されている。押圧ローラ14を走行可能に支持するための制御輪郭部15は、互いに平行に離間させられた2つのディスク部材28a,28bの周縁部によって形成される。作動アーム7は連結片17と一緒に回動軸6を中心として旋回可能に支持されている。回転軸線22を中心として回動可能な歯車20は、駆動装置4の、湾曲させられた歯付きレール21に沿って走行可能である。家具フラップ3が組み付けられていない作動アーム7は、予め設定された旋回速度を上回ると、クラッチ装置19によって形状接続的にロック可能となる。作動アーム7の回動軸6と歯車20の回転軸線22とは、互いに実質的に平行に離間させられている。図5bには、図5aにおいて円で囲った範囲が拡大図で示してある。
【0026】
図6aには、クラッチ装置19が分解図で示してある。同図では、クラッチ装置19は、両方のディスク部材28a,28bの間に収容されていて、回動軸6を中心とした作動アーム7の旋回運動時に回動させられる。ディスク部材28a,28bの両側方には、それぞれ歯付きレール21(図3a)に噛み合っている歯車20が配置されている。この歯車20は、軸30を介して互いに運動連結されている。この軸30には、第1のクラッチ要素23a,23bを可動に支持するための回動可能なロータ29が配置されている。第1のクラッチ要素23a,23bは、互いに180°だけずらされてロータ29に支持されている。このロータ29は、第1のクラッチ要素23a,23bを支持するための回動支持部31a,31bを有している。第2のクラッチ要素24は、第1のクラッチ要素23aを解除可能にロックするための係合区分25と、この係合区分25と別個の空転区分26とを有している。この空転区分26は、作動アーム7の閉鎖位置において、第1のクラッチ要素23aと第2のクラッチ要素24との間のロックを阻止している。他方のクラッチ要素23bは、軸30の軸方向でクラッチ要素23aから離間させられている。クラッチ要素23bは、別の第2のクラッチ要素24aに係合可能である。この別のクラッチ要素24aも同じく空転区分26aを有している。この空転区分26aは、他方のクラッチ要素24の空転区分26に対して相対的に180°だけずらされて配置されている。
【0027】
図6bには、図6aにおいて円で囲った範囲が拡大図で示してある。第1のクラッチ要素23a,23bは、それぞれ2つの部材から形成されていて、それぞれリベット32a,32bによって互いに結合されている。ロータ29は、第1のクラッチ要素23a,23bの回動部分33a,33bを内部に収容することができる2つの回動支持部31a,31bを有している。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b