(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/52 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
H02K3/52 E
(21)【出願番号】P 2022538327
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2022000588
(87)【国際公開番号】W WO2022168538
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021017703
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敬一
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-099210(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190124(WO,A1)
【文献】特開2020-022326(JP,A)
【文献】特開2014-064361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーク及び複数のティースを有するステータコアと、
前記複数のティースにそれぞれ巻回され、各一端部が各前記ティースの根元側に配置され、各他端部が各前記ティースの先端側に配置される複数のコイルと、
前記ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置され、前記ヨークに沿って前記ステータコアの周方向に延在する第1延在部を有すると共に、前記第1延在部から各前記ティースの根元側へ延出され、各前記コイルの前記一端部が接合される複数の第1接合部を有する第1バスバーと、
前記ステータコアに対して軸線方向に配置され、前記ヨークに沿って前記ステータコアの周方向に延在する第2延在部を有すると共に、前記第2延在部から各前記ティースの先端側へ延出され、各前記コイルの前記他端部が接合される複数の第2接合部を有する第2バスバーと、
を備えるステータ。
【請求項2】
ヨーク及び複数のティースを有するステータコアと、
前記複数のティースにそれぞれ巻回され、各一端部が各前記ティースの根元側に配置され、各他端部が各前記ティースの先端側に配置される複数のコイルと、
前記ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置され、前記ヨークに沿って前記ステータコアの周方向に延在する第1延在部を有すると共に、前記第1延在部から各前記ティースの根元側へ延出され、各前記コイルの前記一端部が接合される複数の第1接合部を有する第1バスバーと、
前記ステータコアに対して軸線方向に配置され、前記ヨークに沿って前記ステータコアの周方向に延在する第2延在部を有すると共に、前記第2延在部から各前記ティースの先端側へ延出され、各前記コイルの前記他端部が接合される複数の第2接合部を有する第2バスバーと、
を備え、
前記複数のコイルの各前記一端部が前記ステータコアに対して前記軸線方向の一方側へ延びており、前記複数のコイルの各前記他端部が前記ステータコアに対して前記軸線方向の一方側又は他方側へ延びているステータ。
【請求項3】
前記第2バスバーは、前記ステータコアに対して軸線方向の他方側に配置される請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
絶縁性及び熱伝導性を有し、前記第1延在部を保持する第1インシュレータと、
絶縁性及び熱伝導性を有し、前記第2延在部を保持する第2インシュレータと、
を備える請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記第2バスバーは、前記ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置される請求項1又は請求項2に記載のステータ。
【請求項6】
絶縁性及び熱伝導性を有し、前記第1延在部及び前記第2延在部を保持するインシュレータを備える請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記複数のコイルには、U相コイル、V相コイル及びW相コイルが含まれており、
前記第1バスバーには、U相バスバー、V相バスバー及びW相バスバーが含まれており、
前記U相バスバー、前記V相バスバー及び前記W相バスバーはそれぞれ、三相の電源に接続されるU相端子部、V相端子部及びW相端子部を有する請求項1~請求項6の何れか1項に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータのステータに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-11937号公報に記載されたステータは、ステータコアと、ステータコアに複数装着されたコイルと、を有している。コイルは、平角導体からなり、ステータコアのティースに巻回された巻線部と、巻線部の外側端部から引き出された端末部と、巻線部の内側端部から引き出されたバスバー部とを有している。巻線部の外側端部は、ティースの根元側に配置されており、当該外側端部から引き出された端末部は、ステータコアのヨークの外周側に配置されている。巻線部の内側端部は、ティースの先端部側に配置されており、当該内側端部から上記のバスバー部がヨークの外周側へ引き回されている。このバスバー部は、他のコイルの端末部と接合されている。
【0003】
特開2020-145916号公報に記載されたモータは、複数のステータ部材とバスバー部材とを備えている。複数のステータ部材は、それぞれにコイルが巻回され、モータの軸方向に視て環状に配列されている。各コイルの両端部は、ステータ部材の外周側に引き出されており、バスバー部材に接合されている。このバスバー部材は、環状のベース部と、該ベース部からステータ部材の外周側に延出された接続端子とを備えており、接続端子に形成された2個の凹部にコイルの両端部が挿通されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各公報に記載された先行技術では、各コイルの両端部がヨークの外周側へ引き出される。特に太線のコイルの場合、このような構成では、ティースにコイルを巻き回す工程の後で、ティースの先端側へ巻き回したコイルの端部をヨークの外周側へ引き回す工程が必要となる。その結果、例えば製造コストの増加、作業性の低下、コイルの寸法精度の悪化などの要因となる。
【0005】
本開示は上記事実を考慮し、ティースの先端側へ巻き回したコイルの端部をヨークの外周側へ引き回す工程が不要となるステータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のステータは、ヨーク及び複数のティースを有するステータコアと、前記複数のティースにそれぞれ巻回され、各一端部が各前記ティースの根元側に配置され、各他端部が各前記ティースの先端側に配置される複数のコイルと、前記ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置され、前記ヨークに沿って前記ステータコアの周方向に延在する第1延在部を有すると共に、前記第1延在部から各前記ティースの根元側へ延出され、各前記コイルの前記一端部が接合される複数の第1接合部を有する第1バスバーと、前記ステータコアに対して軸線方向に配置され、前記ヨークに沿って前記ステータコアの周方向に延在する第2延在部を有すると共に、前記第2延在部から各前記ティースの先端側へ延出され、各前記コイルの前記他端部が接合される複数の第2接合部を有する第2バスバーと、を備えている。
【0007】
第1の態様のステータでは、ステータコアが有する複数のティースにそれぞれコイルが巻回される。各コイルの一端部は、各ティースの根元側に配置され、各コイルの他端部は、各ティースの先端側に配置される。ステータコアに対して軸線方向の一方側には、第1バスバーが配置される。第1バスバーは、ステータコアのヨークに沿ってステータコアの周方向に延在する第1延在部を有する。この第1延在部からは、複数の第1接合部が各ティースの根元側へ延出される。複数の第1接合部には、各コイルの一端部が接合される。ステータコアに対して軸線方向の一方側又は他方側には、第2バスバーが配置される。第2バスバーは、ヨークに沿ってステータコアの周方向に延在する第2延在部を有する。この第2延在部からは、複数の第2接合部が各ティースの先端側へ延出される。複数の第2接合部には、各コイルの他端部が接合される。このように、第2バスバーの第2接合部がティースの先端側へ延出されて各コイルの他端部と接合されるので、ティースの先端側へ巻き回した各コイルの他端部をヨークの外周側へ引き回す工程が不要となる。
【0008】
第2の態様のステータは、第1の態様において、前記第2バスバーは、前記ステータコアに対して軸線方向の他方側に配置される。
【0009】
第2の態様のステータでは、第1バスバーは、ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置され、第2バスバーは、ステータコアに対して軸線方向の他方側に配置される。このように、第1バスバーと第2バスバーとがステータコアに対して軸線方向両側に分かれて配置されるので、各バスバーを冷却し易くなる。
【0010】
第3の態様のステータは、第2の態様において、絶縁性及び熱伝導性を有し、前記第1延在部を保持する第1インシュレータと、絶縁性及び熱伝導性を有し、前記第2延在部を保持する第2インシュレータと、を備える。
【0011】
第3の態様のステータによれば、ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置される第1バスバーの第1延在部は、絶縁性及び熱伝導性を有する第1インシュレータによって保持される。ステータコアに対して軸線方向の他方側に配置される第2バスバーの第2延在部は、絶縁性及び熱伝導性を有する第2インシュレータによって保持される。これらの第1インシュレータ及び第2インシュレータを介して第1バスバー及び第2バスバーの熱を放熱することができる。
【0012】
第4の態様のステータは、第1の態様において、前記第2バスバーは、前記ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置される。
【0013】
第4の態様のステータでは、第1バスバー及び第2バスバーは、ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置される。このように、第1バスバー及び第2バスバーの両方がステータコアに対して軸線方向の一方側にまとめて配置されるので、第1バスバー及び第2バスバーのユニットを一体化できて製造コストを低減できる。また、各バスバーと各コイルとの接合をステータコアの軸線方向一方側のみで行えるので、ステータの組み立て工程や段取りが簡略化できる。
【0014】
第5の態様のステータは、第4の態様において、絶縁性及び熱伝導性を有し、前記第1延在部及び前記第2延在部を保持するインシュレータを備える。
【0015】
第5の態様のステータでは、ステータコアに対して軸線方向の一方側に配置される第1バスバー及び第2バスバーは、絶縁性及び熱伝導性を有するインシュレータによってまとめて保持される。このインシュレータを介して第1バスバー及び第2バスバーの熱を放熱することができる。
【0016】
第6の態様のステータは、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様において、前記複数のコイルには、U相コイル、V相コイル及びW相コイルが含まれており、前記第1バスバーには、U相バスバー、V相バスバー及びW相バスバーが含まれており、前記U相バスバー、前記V相バスバー及び前記W相バスバーはそれぞれ、三相の電源に接続されるU相端子部、V相端子部及びW相端子部を有する。
【0017】
第6の態様のステータでは、第1バスバーに含まれるU相バスバー、V相バスバー及びW相バスバーに、U相コイル、V相コイル及びW相コイルの一端部が接合され、U相コイル、V相コイル及びW相コイルの他端部が第2バスバーに接続される。U相バスバー、前記V相バスバー及び前記W相バスバーが有するU相端子部、V相端子部及びW相端子部は、三相の電源に接続される。これにより、本ステータを、三相モータのステータとして機能させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本開示に係るステータでは、ティースの先端側へ巻き回したコイルの端部をヨークの外周側へ引き回す工程が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るステータを示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るステータを示す平面図である。
【
図3】
図2のF3-F3線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るステータを示す分解斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係るステータの部分的な構成を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係るステータのバスバーユニットの一部を示す斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係るステータを示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係るステータを示す
図3と同様の断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るステータを示す分解斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係るステータの第1バスバーユニットの一部を示す斜視図である。
【
図11】第2実施形態に係るステータの第2バスバーユニットの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図5を用いて、本開示の第1実施形態に係るステータ10について説明する。なお、各図においては、図面の縮尺を適宜変更している。また、各図においては、図面を見易くする関係から、一部の符号を省略している場合がある。
【0021】
図1~
図4に示されるように、本実施形態に係るステータ10は、ステータコア12と、複数(ここでは24個)のコイル18と、バスバーユニット20とを備えた電機子(固定子)である。ステータコア12、複数のコイル18及びバスバーユニット20は、円筒状のケース28内に収容されている。このステータ10の内側には、図示しない回転子が配置され、インナロータ型のモータ(回転電機)が構成される。このモータは、一例として三相モータである。
【0022】
ステータコア12は、電磁鋼板からなる複数枚の鉄心片が積層されて構成されている。このステータコア12は、環状に形成されており、ヨーク14と、複数(ここでは24個)のティース16とを有している。ヨーク14は、円筒状をなしている。複数のティース16は、ヨーク14の内周面からステータコア12の径方向の内側に向かって突出するように形成されている。複数のティース16は、ステータコア12の周方向に等間隔に並んで形成されており、複数のティース16の間には、それぞれスロット(符号省略)が形成されている。このステータ10は、ケース28の内側に嵌合している。なお、
図1~
図4に示されるステータ10の極数やスロット数は単なる一例であり、これに限定されない。
【0023】
複数のコイル18は、複数のティース16の回りにそれぞれ螺旋状に巻回されている。各コイル18と各ティース16との間には、インシュレータ、絶縁紙又はワニスなどの絶縁物が介在している。各コイル18は、例えば銅、アルミ、銀又はこれらの合金線材からなる素線がエナメル等の絶縁物によって被覆された構成とされている。この素線は、ここでは丸線とされているが、平角線や六角線等であってもよい。このコイル18は、ステータコア12の径方向から見て、ステータコア12の軸線方向を長手とする略長尺矩形状に巻回されている。
図5に示されるように、コイル18は、巻き始めの端部である一端部181がティース16の根元側に配置されており、巻き終わりの端部である他端部182がティース16の先端側に配置されている。一端部181及び他端部182は、何れもステータコア12の軸線方向の一方側へ延びている。なお、巻線されたコイル18が1本でも、2本以上でも良い。
【0024】
複数のコイル18は、複数(ここでは8個)のU相コイル18Uと、複数(ここでは8個)のV相コイル18Vと、複数(ここでは8個)のW相コイル18Wとによって構成されている。ステータコア12の周方向に沿って、U相コイル18U、V相コイル18V、W相コイル18Wの順に順次配列されている。各U相コイル18U同士、各V相コイル18V同士、各W相コイル18W同士はそれぞれ、ステータコア12の周方向に間隔をあけてステータコア12のティース16に装着されている。そして、隣り合う同相(U相、V相、W相のうちの同じ相)のコイル18同士がバスバーユニット20によって電気的に接続されている。
【0025】
図1~
図4に示されるように、バスバーユニット20は、ステータコア12に対して軸線方向の一方側に配置されている。
図6に示されるように、バスバーユニット20は、第1バスバー22と、第2バスバー24と、インシュレータ26とを備えている。第1バスバー22は、U相バスバー22Uと、V相バスバー22Vと、W相バスバー22Wとによって構成されている。第2バスバー24は、一例として複数(ここでは8個)のバスバー分割体24Sによって構成されている。U相バスバー22U、V相バスバー22V、W相バスバー22W、及びバスバー分割体24Sは、一例として金属板がプレス成形されて製造されたものであるが、これに限るものではない。例えばコイル18と同様、丸線によってU相バスバー22U、V相バスバー22V、W相バスバー22W及びバスバー分割体24Sが製造される構成にしてもよい。
【0026】
U相バスバー22U、V相バスバー22V、及びW相バスバー22Wはそれぞれ、ヨーク14に沿ってステータコア12の周方向に環状に延在する第1延在部22U1、22V1、22W1と、第1延在部22U1、22V1、22W1から各ティース16の根元側へ延出された複数の第1接合部22U2、22V2、22W2とを有している。さらに、U相バスバー22U、V相バスバー22V、及びW相バスバー22Wは、第1延在部22U1、22V1、22W1からステータコア12の径方向外側へ延出されたU相端子部22U3、V相端子部22V3及びW相端子部22W3(
図1、
図2及び
図4参照)を有している。なお、U相端子部22U3、V相端子部22V3及びW相端子部22W3が第1延在部22U1、22V1、22W1からステータコア12の軸線方向外側へ延出された構成にしてもよい。
【0027】
U相バスバー22Uの第1延在部22U1と、V相バスバー22Vの第1延在部22V1と、W相バスバー22Wの第1延在部221W1とは、ステータコア12と同心状に配置されている。ステータコア12の径方向外側から第1延在部22U1、第1延在部22V1、第1延在部22W1の順に間隔をあけて並んでいる。第1延在部22U1、22V1、22W1は、ステータコア12の軸線方向から見てヨーク14と重なる領域に配置されている。なお、ステータコア12の径方向における第1延在部22U1、第1延在部22V1及び第1延在部22W1の上記位置関係は単なる一例であり、適宜変更可能である。
【0028】
第1接合部22U2、22V2、22W2は、第1延在部22U1、22V1、22W1から一旦ステータコア12とは反対側へ延びた後に、ステータコア12の径方向内側へ向けて屈曲しており、各先端部が各ティース16の根元付近に配置されている。第1接合部22U2、22V2、22W2の各先端部には、それぞれ第1挿入部23が形成されている。各第1挿入部23は、ステータコア12の軸線方向から見てステータコア12の周方向の一方側が開放されたU字状をなしている。各第1挿入部23の内側には、各コイル18の一端部181が挿入されており、溶接等の手段で各第1挿入部23と各コイル18の一端部181とが接合されている。なお、1接合部22U2、22V2、22W2の各先端部に第1挿入部23が形成されない構成にしてもよい。
【0029】
第2バスバー24を構成する複数のバスバー分割体24Sはそれぞれ、ヨーク14に沿ってステータコア12の周方向に円弧状に延在する第2延在部24S1と、第2延在部24S1から各ティース16の先端側へ延出された複数(ここでは3個)の第2接合部24S2とを有している。第2延在部24S1は、W相バスバー22Wの第1延在部22W1に対してステータコア12の径方向内側に間隔をあけて配置されており、ステータコア12と同心の円弧状に湾曲している。
【0030】
複数の第2接合部24S2は、第2延在部24S1から一旦ステータコア12とは反対側へ延びた後に、ステータコア12の径方向内側へ向けて屈曲しており、各先端部が各ティース16の先端付近に配置されている。各第2接合部24S2の先端部には、それぞれ第2挿入部25が形成されている。各第2挿入部25は、ステータコア12の軸線方向から見てステータコア12の周方向の一方側が開放されたU字状をなしている。各第2挿入部25の内側には、各コイル18の他端部182が挿入されており、溶接等の手段で各第2挿入部25と各コイル18の他端部182とが接合されている。なお、各第2接合部24S2の先端部に第2挿入部25が形成されない構成にしてもよい。また、第2バスバー24が複数のバスバー分割体24Sに分割されずに一体に形成される構成にしてもよい。
【0031】
インシュレータ26は、一例としてモールド樹脂により構成されており、環状に形成されている。このインシュレータ26は、ケース28の内側に嵌合している。このインシュレータ26は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等に、非磁性体の粉末がフィラーとして混練されたものであり、熱伝導性及び絶縁性を有している。このインシュレータ26には、U相バスバー22U、V相バスバー22V、及びW相バスバー22Wの第1延在部22U1、22V1、22W1と、複数のバスバー分割体24Sの第2延在部24S1とが埋め込まれている。このインシュレータ26によって、U相バスバー22U、V相バスバー22V、及びW相バスバー22Wの第1延在部22U1、22V1、22W1と、複数のバスバー分割体24Sの第2延在部24S1とが保持されている。
【0032】
なお、インシュレータ26の構成は、上記に限らず適宜変更可能である。例えば、熱伝導性及び絶縁性を有する樹脂により環状に成形されたインシュレータ26に、ステータコア12の軸線方向の一方側に開口する複数の環状溝が同心状に形成され、それらの環状溝内に第1延在部22U1、22V1、22W1及び第2延在部24S1が挿入されて保持される構成にしてもよい。また例えば、ステータコア12と各コイル18との間に介在される図示しないインシュレータと上記のインシュレータ26とが一体化される構成にしてもよい。
【0033】
上記構成のステータ10では、U相バスバー22U、V相バスバー22V及びW相バスバー22Wが有するU相端子部22U3、V相端子部22V3及びW相端子部22W3が三相の電源に接続される。これにより、上記構成のステータ10が、三相モータのステータとして機能する。
【0034】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
上記構成のステータ10では、ステータコア12が有する複数のティース16にそれぞれコイル18が巻回されている。各コイル18の一端部181は、各ティース16の根元側に配置されており、各コイル18の他端部182は、各ティース16の先端側に配置される。ステータコア12に対して軸線方向の一方側には、第1バスバー22及び第2バスバー24が配置されている。第1バスバー22は、U相バスバー22U、V相バスバー22V及びW相バスバー22Wによって構成されている。U相バスバー22U、V相バスバー22V及びW相バスバー22Wは、ステータコア12のヨーク14に沿ってステータコア12の周方向に延在する第1延在部22U1、22V1、22W1を有している。これらの第1延在部22U1、22V1、22W1からは、複数の第1接合部22U2、22V2、22W2が各ティース16の根元側へ延出されている。複数の第1接合部22U2、22V2、22W2の先端部には、各コイル18の一端部181が接合されている。
【0036】
第2バスバー24は、複数のバスバー分割体24Sによって構成されている。各バスバー分割体24Sは、ヨーク14に沿ってステータコア12の周方向に延在する第2延在部24S1を有しており、第2延在部24S1からは、複数の第2接合部24S2が各ティース16の先端側へ延出されている。複数の第2接合部24S2には、各コイル18の他端部182が接合されている。このように、第2バスバー24の第2接合部24S2がティース16の先端側へ延出(延長)されて各コイル18の他端部182と接合されるので、ティース16の先端側へ巻き回した各コイル18の他端部182をヨーク14の外周側へ引き回す工程(コイルエンドの位置を矯正する工程)が不要となる。
【0037】
その結果、製造工程を簡素化することができ、製造コストの低減が可能となる。また、各コイル18の他端部182をヨーク14の外周側へ引き回すことによる他端部182(コイルエンド)の寸法悪化が生じなくなるので、コイル18の巻回精度を維持してコイル18をステータコア12に組み付けることができる。さらに、コイル18の他端部182の引き回しが不要となり、コイル18の他端部182を巻線時の位置のままとすることができるので、他端部182の位置が安定する。これにより、他端部182と第2接合部24S2との接合(例えば溶接)を安定して行うことが可能となる。また、コイル18が太線で且つ巻き数が少なかったり、スペースに制約があったりすると、ヨーク14の外周側にコイル18の一端部181及び他端部182を配置できない場合があるが、本実施形態では、他端部182をヨーク14の外周側に配置する必要がないため、好適である。
【0038】
また、本実施形態では、第1バスバー22の第1接合部22U2、22V2、22W2には、コイル18の一端部181が挿入される第1挿入部23が形成されており、第2バスバー24の第2接合部24S2には、コイル18の他端部182が挿入される第2挿入部25が形成されている。この挿入により、コイル18の一端部181及び他端部182と第1接合部22U2、22V2、22W2及び第2接合部24S2との位置関係が安定するので、一端部181及び他端部182と第1接合部22U2、22V2、22W2及び第2接合部24S2との接合作業が容易になる。
【0039】
また、本実施形態では、第1バスバー22及び第2バスバー24の両方がステータコア12に対して軸線方向の一方側にまとめて配置されている。これにより、第1バスバー22と第2バスバー24とがステータコア12に対する軸線方向の両側に分かれて配置される場合と比較して、第1バスバー22及び第2バスバー24のユニットを一体化できて製造コストを低減できる。また、各バスバー22、24と各コイル18との接合をステータコア12の軸線方向一方側のみで行えるので、ステータ10の組み立て工程や段取りが簡略化できる。
【0040】
また、本実施形態では、第1バスバー22を構成するU相バスバー22U、V相バスバー22V及びW相バスバー22Wと、第2バスバー24を構成する複数のバスバー分割体24Sとが、絶縁性及び熱伝導性を有するインシュレータ26によってまとめて保持されている。このインシュレータ26を介して第1バスバー22及び第2バスバー24の熱を放熱することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1の実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0042】
図7~
図9に示されるように、第2実施形態に係るステータ30では、各ティース16の根元側に配置された各コイル18の一端部181は、ステータコア12の軸線方向の一方側へ延びており、各ティース16の先端側に配置された各コイル18の他端部182は、ステータコア12の軸線方向の他方側へ延びている。このステータ30では、ステータコア12に対する軸線方向の一方側には、第1バスバーユニット32が配置されており、ステータコア12に対する軸線方向の他方側には、第2バスバーユニット36が配置されている。
【0043】
図10に示されるように、第1バスバーユニット32は、第1バスバー22と第1インシュレータ34とによって構成されている。第1バスバー22は、第1実施形態と同様にU相バスバー22U、V相バスバー22V及びW相バスバー22Wとによって構成されており、第1インシュレータ34は、第1実施形態に係るインシュレータ26と基本的に同様の構成とされている。この第1インシュレータ34には、U相バスバー22U、V相バスバー22V及びW相バスバー22Wの第1延在部22U1、22V1、22W1が埋め込まれて保持されている。U相バスバー22U、V相バスバー22V及びW相バスバー22Wが有する複数の第1接合部22U2、22V2、22W2の先端部には、それぞれ第1挿入部23が形成されている。各第1挿入部23には、各コイル18の一端部181が挿入されて接合されている。
【0044】
図11に示されるように、第2バスバーユニット36は、第2バスバー24と第2インシュレータ38とによって構成されている。第2バスバー24は、第1実施形態と同様に複数のバスバー分割体24Sによって構成されており、第2インシュレータ38は、第1実施形態に係るインシュレータ26と基本的に同様の構成とされている。この第2インシュレータ38には、複数のバスバー分割体24Sの第2延在部24S1が埋め込まれて保持されている。複数のバスバー分割体24Sが有する複数の第2接合部24S2の先端部には、それぞれ第2挿入部25が形成されている。各第2挿入部25には、各コイル18の他端部182が接合されている。この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。
【0045】
この実施形態においても、第2バスバー24の複数のバスバー分割体24Sは、第2延在部24S1から各ティース16の先端側へ延出された複数の第2接合部24S2を有しており、各ティース16の先端側に配置された各コイル18の他端部182が各第2接合部24S2の先端部に接合されている。このように、第2バスバー24の第2接合部24S2がティース16の先端側へ延出(延長)されて各コイル18の他端部182と接合されるので、ティース16の先端側へ巻き回した各コイル18の他端部182をヨーク14の外周側へ引き回す工程が不要となる。
【0046】
また、この実施形態では、第1バスバー22は、ステータコア12に対して軸線方向の一方側に配置され、第2バスバー24は、ステータコア12に対して軸線方向の他方側に配置されている。このように、第1バスバー22と第2バスバー24とがステータコア12に対して軸線方向両側に分かれて配置されているので、第1バスバー22及び第2バスバー24を冷却し易くなる。
【0047】
また、この実施形態では、ステータコア12に対して軸線方向の一方側に配置される第1バスバー22の第1延在部22U1、22V1、22W1は、絶縁性及び熱伝導性を有する第1インシュレータ34によって保持されている。ステータコア12に対して軸線方向の他方側に配置される第2バスバー24の第2延在部24S1は、絶縁性及び熱伝導性を有する第2インシュレータ38によって保持されている。これらの第1インシュレータ34及び第2インシュレータ38を介して第1バスバー22及び第2バスバー24の熱を放熱することができる。
【0048】
以上、2つの実施形態を挙げて本開示について説明したが、本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本開示の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【0049】
また、2021年2月5日に出願された日本国特許出願2021-017703号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個別に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。