(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/17 20160101AFI20230125BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20230125BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20230125BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20230125BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20230125BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20230125BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20230125BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20230125BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20230125BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230125BHJP
【FI】
B60W20/17
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F02D29/02 Z
F02D29/06 D
B60L50/16
B60L58/12
B60L3/00 H
(21)【出願番号】P 2019031938
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 潤
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-266841(JP,A)
【文献】特開2017-105287(JP,A)
【文献】特開2013-086600(JP,A)
【文献】特開2015-147465(JP,A)
【文献】特開2008-105639(JP,A)
【文献】特開2013-075547(JP,A)
【文献】特開2016-117316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
F02D 29/00 - 29/06
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、蓄電池と、前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と、前記蓄電池または前記発電機から電力を供給されて走行駆動輪を駆動する電気モータと、を搭載し、前記エンジンを作動させて前記発電機を駆動して発電、又は、前記エンジンを作動させて前記走行駆動輪を走行駆動するエンジン作動走行モードが可能な車両の制御装置であって、
前記車両の車室の開閉状態を検出する開閉状態検出部と、
前記エンジン作動走行モードにおいて、前記車室が開状態である場合に、前記車室が閉状態である場合よりも前記エンジンの回転速度を低下させる制御部と、
を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記エンジン作動走行モードは、前記エンジンにより前記発電機を駆動して発電しながら前記電気モータにより前記走行駆動輪を駆動して走行する発電モードであることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記エンジン作動走行モードにおいて、前記車室が開状態である場合に、前記車両の走行速度が低下するに伴って前記エンジンの回転速度を低下させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記蓄電池の充電率を検出する充電率検出部を備え、
前記制御部は、前記蓄電池の充電率が所定値未満である場合に、前記蓄電池の充電率が前記所定値以上である場合よりも前記エンジンの駆動トルクを上昇させて前記発電機の発電量を上昇させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記エンジンの排気成分を検出する検出部と、
前記蓄電池からの電力によりエンジン駆動用電気モータを作動させて前記エンジンを強制駆動するモータリングを実行するモータリング制御部と、
前記モータリングの実行中に、前記エンジンへの燃料供給及び供給停止を切換えて、前記検出部の故障判定をする故障判定部と、を備え、
前記制御部は、前記車室が開状態である場合に、前記故障判定を実行するための前記モータリングを規制することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に車両に搭載したエンジンの作動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車のように、電気モータによって走行駆動可能であるとともに、発電あるいは走行駆動用としてエンジンを搭載した車両が知られている。このように、エンジン及び電気モータを備えた車両において、エンジンを作動し発電しながら電気モータで走行駆動するシリーズモードや、エンジン及び電気モータで走行駆動するパラレルモードのように、エンジンを作動しながら走行するエンジン作動走行モードが可能な車両が開発されている。
【0003】
一方、特許文献1のように、車室をルーフによって覆うクローズ状態と、ルーフによって覆わずに車室を開放したオープン状態に切換え可能なオープンカーにおいて、クローズ状態とオープン状態とで空調装置の作動形態を自動的に切換える制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなオープンカーにおいて、オープン状態では乗員は外部の騒音が聞こえ易い。また、オープンカー以外の車両であっても、車室の窓を開けている場合では、外部の騒音が聞こえ易く、乗員の快適性を損ねる虞がある。
そして、上記のようなエンジン作動走行モードにおいては、エンジンが作動しながら走行するので、オープン状態ではエンジンの作動音が乗員に聞こえ易く、車室内に侵入する騒音を抑制する技術が要求されている。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、エンジン作動走行モードが可能な車両において、走行時における騒音を抑制して乗員の快適性を向上させる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンと、蓄電池と、前記エンジンにより駆動されて発電する発電機と、前記蓄電池または前記発電機から電力を供給されて前記車両の走行駆動輪を駆動する走行駆動用電気モータと、を搭載し、前記エンジンを作動させて前記走行駆動輪を走行駆動するエンジン作動走行モードが可能な車両の制御装置であって、前記車両の車室の開閉状態を検出する開閉状態検出部と、前記エンジン作動走行モードにおいて、前記車室が開状態である場合に、前記車室が閉状態である場合よりも前記エンジンの回転速度を低下させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これにより、エンジン作動走行モードにおいて、外部より車室内に騒音が侵入し易い開状態である場合には、閉状態である場合よりもエンジンの回転速度が低下するので、車室内に侵入する騒音を抑制することができる。
好ましくは、前記エンジン作動走行モードは、前記エンジンにより前記発電機を駆動して発電しながら前記走行駆動用電気モータにより前記走行駆動輪を駆動して走行する発電モードであるとよい。
【0009】
これにより、発電モードにおいて、車室が開状態である場合には、閉状態である場合よりもエンジンの回転速度が低下するので、車室内に侵入する騒音を抑制することができる。また、発電モードであるので、エンジンの回転速度を変化させても車両の走行への影響を回避することができる。
好ましくは、前記制御部は、前記エンジン作動走行モードにおいて、前記車室が開状態である場合に、前記車両の走行速度が低下するに伴って前記エンジンの回転速度を低下させるとよい。
【0010】
これにより、車両の走行速度に基づいて、エンジンの回転速度が変化するので、走行速度の変化による走行音の増減に合わせてエンジンの回転速度を増減させ、効果的に騒音低下させることができる。例えば走行速度が低下するに伴ってエンジンの回転速度を低下させることで、低走行音時にエンジンの作動音を低減させて効果的に乗員の快適性を向上させることができる一方、走行速度が増加するに伴ってエンジンの回転速度を増加させることで、発電機による発電量を増加させ蓄電池の電力消費を抑制することができる。
【0011】
好ましくは、前記蓄電池の充電率を検出する充電率検出部を備え、前記制御部は、前記蓄電池の充電率が所定値以下である場合に、前記蓄電池の充電率が前記所定値以上である場合よりも前記エンジンの駆動トルクを上昇させて前記発電機の発電量を上昇させるとよい。
これにより、蓄電池が低充電状態である場合に発電機の発電量が増加するので、蓄電池の充電を促進させることができる。また、エンジンの駆動トルクを上昇させて発電機の発電量を上昇させるので、エンジンの回転速度を上昇させて発電機の発電量を上昇させるよりもエンジン音の上昇を抑制することができる。
【0012】
好ましくは、前記エンジンの排気通路に排気成分を検出する検出部と、前記蓄電池からの電力によりエンジン駆動用電気モータを作動させて前記エンジンを強制駆動するモータリングを実行するモータリング制御部と、前記モータリングを実行中に、前記エンジンへの燃料供給及び供給停止を切換えて、前記検出部の故障判定をする故障判定部と、を備え、前記制御部は、前記車室が開状態である場合に、前記故障判定を実行するための前記モータリングを規制するとよい。
【0013】
これにより、車室が開状態である場合に、故障判定を行うためのモータリングが規制されるので、エンジンの回転速度の低下に伴い発電機の発電量が低下しても、充電池の充電率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両の制御装置によれば、エンジン作動走行モードにおいて、車室が開状態である場合には、閉状態である場合よりもエンジンの回転速度が低下し、車室内に侵入する騒音を抑制することができるので、車室内の乗員の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプラグインハイブリッド車の概略構成図である。
【
図3】エンジン回転速度変更制御の制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】シリーズモードにおけるエンジン回転速度設定用マップの一例である。
【
図5】駆動用バッテリの充電率SOCに基づくエンジントルク設定用のマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を搭載したプラグインハイブリッド車(以下、車両1という)の概略構成図である。
本実施形態の車両1は、エンジン2の出力によって前輪3を駆動して走行可能であるとともに、前輪3(走行駆動輪)を駆動する電動のフロントモータ4(電気モータ)及び後輪5(走行駆動輪)を駆動する電動のリヤモータ6(電気モータ)を備えた4輪駆動車である。
【0017】
エンジン2は、減速機7を介して前輪3の駆動軸8を駆動可能であるとともに、減速機7を介してモータジェネレータ9(発電機、エンジン駆動用電気モータ)を駆動して発電させることが可能となっている。
フロントモータ4は、フロントインバータ10を介して、車両1に搭載された駆動用バッテリ11(蓄電池)及びモータジェネレータ9から高電圧の電力を供給されて駆動し、減速機7を介して前輪3の駆動軸8を駆動する。減速機7には、エンジン2の出力軸と前輪3の駆動軸8との間の動力の伝達を断接切換え可能なクラッチ7aが内蔵されている。
【0018】
リヤモータ6は、リヤインバータ12を介して駆動用バッテリ11及びモータジェネレータ9から高電圧の電力を供給されて駆動し、減速機13を介して後輪5の駆動軸14を駆動する。
モータジェネレータ9によって発電された電力は、フロントインバータ10を介して駆動用バッテリ11を充電可能であるとともに、フロントモータ4及びリヤモータ6に電力を供給可能である。
【0019】
駆動用バッテリ11は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルをまとめて構成された図示しない電池モジュールを有しており、更に、電池モジュールの充電率(State Of Charge、以下、SOC)等を監視するバッテリモニタリングユニット11aを備えている。なお、バッテリモニタリングユニット11aは、駆動用バッテリ11の充電状態を検出する本発明の充電率検出部に該当する。
【0020】
フロントインバータ10は、フロントモータコントロールユニット10aとジェネレータコントロールユニット10bを有している。フロントモータコントロールユニット10aは、ハイブリッドコントロールユニット20(制御部)からの制御信号に基づきフロントモータ4の出力を制御する。ジェネレータコントロールユニット10bは、ハイブリッドコントロールユニット20からの制御信号に基づきモータジェネレータ9の発電量を制御する機能を有する。
【0021】
リヤインバータ12は、リヤモータコントロールユニット12aを有している。リヤモータコントロールユニット12aは、ハイブリッドコントロールユニット20からの制御信号に基づきリヤモータ6の出力を制御する機能を有する。
更に、モータジェネレータ9は、ハイブリッドコントロールユニット20からの制御信号に基づき、駆動用バッテリ11から電力を供給されて、エンジン2を駆動することが可能となっており、エンジン2のスタータモータとしての機能を有する。
【0022】
また、車両1には、駆動用バッテリ11を外部電源によって充電する充電機21が備えられている。
ハイブリッドコントロールユニット20は、車両1の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成される。
【0023】
ハイブリッドコントロールユニット20の入力側には、駆動用バッテリ11のバッテリモニタリングユニット11a、フロントインバータ10のフロントモータコントロールユニット10aとジェネレータコントロールユニット10b、リヤインバータ12のリヤモータコントロールユニット12a、エンジンコントロールユニット22、アクセル操作量を検出するアクセル開度センサ40等が接続されており、これらの機器からの検出及び作動情報が入力される。
【0024】
一方、ハイブリッドコントロールユニット20の出力側には、フロントインバータ10のフロントモータコントロールユニット10aとジェネレータコントロールユニット10b、リヤインバータ12のリヤモータコントロールユニット12a、減速機7(クラッチ7a)、エンジンコントロールユニット22が接続されている。
そして、ハイブリッドコントロールユニット20は、アクセル開度センサ40等の上記各種検出量及び各種作動情報に基づいて、車両1の走行駆動に必要とする車両要求出力を演算し、エンジンコントロールユニット22、フロントモータコントロールユニット10a、ジェネレータコントロールユニット10b及びリヤモータコントロールユニット12a、減速機7に制御信号を送信して、走行モード((EVモード:電気自動車モード)、(シリーズモード:発電モード)、パラレルモード)の切換え、エンジン2とフロントモータ4とリヤモータ6の出力、モータジェネレータ9の出力(発電電力)を制御する。
【0025】
EVモードでは、エンジン2を停止し、駆動用バッテリ11から供給される電力によりフロントモータ4やリヤモータ6を駆動して車両1を走行させる。
シリーズモードでは、減速機7のクラッチ7aを切断し、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動する。そして、モータジェネレータ9により発電された電力及び駆動用バッテリ11から供給される電力によりフロントモータ4やリヤモータ6を駆動して走行させる。また、シリーズモードでは、エンジン2の運転点(回転速度及びエンジントルク)を出力及び燃費について効率の高い運転点を記憶したマップに基づいて設定し、余剰電力を駆動用バッテリ11に供給して駆動用バッテリ11を充電する。
【0026】
パラレルモードでは、減速機7のクラッチ7aを接続し、エンジン2から減速機7を介して機械的に動力を伝達して前輪3を駆動させる。また、エンジン2によりモータジェネレータ9を作動させて発電した電力及び駆動用バッテリ11から供給される電力によってフロントモータ4やリヤモータ6を駆動して走行させる。
ハイブリッドコントロールユニット20は、高速領域のように、エンジン2の効率の高い領域では、走行モードをパラレルモードとする。また、パラレルモードを除く領域、即ち中低速領域では、車両1の駆動トルク及び駆動用バッテリ11の充電率SOCに基づいてEVモードとシリーズモードとの間で切換える。
【0027】
図2は、走行モードの切換え用マップの一例である。
例えば
図2に示すように、ハイブリッドコントロールユニット20は、車速(車両1の走行速度)が第1の所定値Va以上の場合にはパラレルモード、車速が第1の閾値Vaより低くかつ車両1の駆動トルクが第2の閾値Tb以上の場合にはシリーズモード、車速が第1の閾値Vaより低くかつ車両1の駆動トルクが第2の閾値Tb未満の場合にはEVモードに自動的に切換える。
【0028】
ハイブリッドコントロールユニット20は、更に、駆動用バッテリ11の充電率SOCが許容範囲の下限値付近に設定された第3の閾値Scより低下したときには、エンジン2を強制的に駆動して発電させて駆動用バッテリ11を充電させる機能を有している。
また、ハイブリッドコントロールユニット20は、エンジンコントロールユニット22を介してエンジン2に燃料供給しないように制御するとともに、モータジェネレータ9により強制的にエンジン2を駆動させるモータリングを行うモータリング制御部20aを備えている。更に、ハイブリッドコントロールユニット20は、モータリング制御部20aによってモータリングを実行してエンジン2を強制駆動している際に、エンジン2への燃料供給及び供給停止を切り換えて、エンジン2の排気成分を検出するNOxセンサ等の排気センサ50の検出値の変化に基づいて、当該排気センサ50の故障判定を行う故障判定部20bを備えている。
【0029】
また、車両1は、幌(ソフトトップ)やハードトップ等のルーフ形成部によって、車室を覆うクローズ状態(閉状態)と、車室を開放するオープン状態(開状態)に切換え可能である。クローズ状態とオープン状態との切替えは、例えば図示しないルーフ用アクチュエータの作動や手動によって行われる。車両1には、車室の開閉状態、即ち車室がクローズ状態とオープン状態のいずれの状態であるかを検出するルーフ状態検出スイッチ51(開閉状態検出部)が備えられている。なお、ルーフ用アクチュエータの作動によって車室をクローズ状態とオープン状態とに切換える車両においては、ルーフ用アクチュエータを作動操作する操作スイッチの操作信号よりクローズ状態とオープン状態とのいずれの状態であるかを検出してもよい。
【0030】
本実施形態におけるハイブリッドコントロールユニット20は、ルーフ状態検出スイッチ51の操作・検出信号を入力して、上記のシリーズモードにおいてエンジンの回転速度を変更するエンジン回転速度変更制御を実行する。
図3は、ハイブリッドコントロールユニット20において実行されるエンジン回転速度変更制御の制御手順を示すフローチャートである。
【0031】
エンジン回転速度変更制御は、車両電源オン時に繰り返し実行される。
図3に示すように、始めにステップS10では、車両1の走行モードがシリーズモードであるか否かを判別する。車両1の走行モードがシリーズモードである場合には、ステップS20に進む。車両1の走行モードがシリーズモードでない場合には、本ルーチンを終了する。
【0032】
ステップS20では、ルーフ状態検出スイッチ51の検出信号を入力して、車両1のルーフがオープン状態であるか否かを判別する。少しでもルーフが開放している場合にはオープン状態とし、ステップS30に進む。ルーフが完全に閉まっている場合にはクローズ状態とし、ステップS50に進む。
ステップS30では、シリーズモードにおけるエンジン2の運転点を記憶したマップを、出力及び燃費について効率の高い通常運転点を記憶した通常用のマップよりもエンジン回転速度の低いオープン用運転点を記憶したオープン用のマップに設定する。そして、ステップS40に進む。
【0033】
ステップS40では、故障判定部20bによる排気センサ50の故障判定を行うためのモータリング(OBDモータリング)を禁止する。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS50では、シリーズモードにおけるエンジン2の運転点を記憶したマップを、出力及び燃費について効率の高い通常運転点を記憶した通常用のマップに設定する。そして、ステップS60に進む。
【0034】
ステップS60では、ステップS40において実行されたOBDモータリングの禁止を解除する。即ちモータリング制御部20aによるモータリングが可能となり、故障判定部20bによる排気センサ50の故障判定が可能となる。そして、本ルーチンを終了する。
以上のように、車両1は、エンジン2を作動させずに走行するEVモード、エンジン2を作動させて走行するシリーズモード及びパラレルモードが可能であり、これらの走行モードは車速及び駆動トルクといった車両1の走行状態に基づいて自動的に切換えられる。
【0035】
更に、車両1は、ルーフをオープン状態とクローズ状態に切換え可能なオープンカーである。そして、これらのルーフの状態に基づいて、シリーズモードにおけるエンジン2の運転点が変更される。詳しくは、車両1のルーフがオープン状態である場合には、クローズ状態である場合よりもエンジン2の回転速度を低下させる。
シリーズモードにおいては、エンジン2によって車両の前輪3を機械的に駆動せずにモータジェネレータ9を駆動するので、エンジン2の回転速度を任意に設定可能である。そして、本実施形態では、シリーズモードでありかつ車室がオープン状態である場合には、エンジン2の回転速度を低下させるので、エンジン2の作動音を低下させることができる。これにより、シリーズモードにおいて、車室内へのエンジン2の作動音の侵入を抑え、乗員の快適性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、シリーズモードにおいて車室がオープン状態である場合に、OBDモータリングを禁止するので、エンジン回転速度を低下させるに伴って発電量が低下しても、OBDモータリングによる電力消費を回避して駆動用バッテリ11の充電率の低下を抑制することができる。
図4は、シリーズモードにおけるエンジン回転速度設定用マップの一例である。
図4には、クローズ時でのエンジン回転速度Rc、オープン時でのエンジン回転速度Ro1、車速に基づいて設定されるオープン時でのエンジン回転速度Ro2の設定例を示している。
【0037】
図4に示すように、シリーズモードにおいて、オープン状態である場合のエンジン回転速度Ro1は、クローズ時でのエンジン回転速度Rcよりも低く設定される。
ハイブリッドコントロールユニット20は、オープン状態である場合のエンジン回転速度Ro1を、車速に基づいて変化させるとよい。詳しくは、
図4のエンジン回転速度Ro2に示すように、シリーズモードにおいて、オープン状態である場合のエンジン回転速度Ro2を、車速が低下するに伴って低下するように設定する。
【0038】
このように、車速が低下するに伴ってエンジン回転速度Ro2を減少させるように設定することで、車両1の走行音が減少する低車速時においてエンジン2の作動音を低下させ、乗員の快適性を更に向上させるとともに、高車速時においてはエンジン回転速度を上昇させることで発電量を増加させて駆動用バッテリ11の充電率の低下を抑制することができる。なお、車速の増減に伴うエンジン回転速度Ro2は、段階的に増減させても良く、連続的に増減させても良い。
【0039】
図5は、駆動用バッテリ11の充電率に基づくエンジントルク設定用マップの一例である。
ハイブリッドコントロールユニット20は、シリーズモードにおいて、更に、駆動用バッテリ11の充電率SOCを入力して、充電率SOCに基づいてエンジントルク(エンジン2の駆動トルク)を変更するとよい。
【0040】
図5に示すように、ハイブリッドコントロールユニット20は、シリーズモードにおいて、駆動用バッテリ11の充電率SOCが所定値S1以上では、エンジントルクを通常に設定される通常値T1とし、駆動用バッテリ11の充電率SOCが所定値S1未満では、エンジントルクを通常値T1よりも高い値である高設定値T2に設定する。そして、ハイブリッドコントロールユニット20は、エンジントルクを高設定値T2に設定するに伴って発電量が増加するように、ジェネレータコントロールユニット10bを介してモータジェネレータ9を制御する。
【0041】
これにより、駆動用バッテリ11の充電率SOCが所定値S1未満の低充電状態では、エンジントルクを増加させて発電量を増加させるので、駆動用バッテリ11への充電を促進させて充電率の回復を図ることができる。また、エンジントルクを上昇させて発電量を増加させるので、エンジン2の回転速度を上昇させてモータジェネレータ9発電機の発電量を上昇させるよりもエンジン音の上昇を抑制することができ、騒音の低下を更に図ることができる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態に限定するものではない。
例えば上記実施形態では、シリーズモードにおいて、オープン状態にエンジン回転速度を低下させるように制御するが、パラレルモードにおいても本発明を適用することができる。
パラレルモードに適用するには、エンジン2と走行駆動輪(前輪3)との間に変速比を切換え可能な変速機を備えることで可能である。ハイブリッドコントロールユニット20は、ルーフのオープン状態においてエンジン回転速度を低下させる際に、このエンジン回転速度の低下に合わせて変速機における変速比を変更して、エンジン2と走行駆動輪との間の全体の変速比が変化しないようにする。
【0043】
これにより、オープン状態においてエンジン回転速度を低下させることで騒音低下を図るとともに、エンジン回転速度の低下に伴う車両1の走行への影響を回避することができる。
また、以上の実施形態では、ルーフをクローズ状態とオープン状態との切替えるオープンカーに本発明を適用しているが、オープンカー以外にも本発明を適用することができる。例えば、車両のウインドウの少なくとも一部が開いているか否かを判別して、一部が開いている場合にエンジン回転速度を低下させるようにするとよい。あるいは、ルーフをクローズ状態とオープン状態との切替えるオープンカーにおいても、更にウインドウの開閉に基づいてエンジン回転速度を制御するとよい。
【0044】
また、上記実施形態の車両はフロントモータ4、リヤモータ6により前輪3及び後輪5を駆動する4輪駆動車であるが、電気モータによって前輪または後輪のいずれかを駆動する2輪駆動車であっても本発明を適用することができる。
本発明は、エンジンを作動して走行駆動するエンジン作動走行モードが可能な車両に、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
2 エンジン
4 フロントモータ(電気モータ)
6 リヤモータ(電気モータ)
9 モータジェネレータ(発電機、エンジン駆動用電気モータ)
11 駆動用バッテリ(蓄電池)
11a バッテリモニタリングユニット(充電率検出部)
20 ハイブリッドコントロールユニット(制御部)
20a モータリング制御部
20b 故障判定部
50 排気センサ(排気検出部)
51 ルーフ状態検出スイッチ(開閉状態検出部)