(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】コークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 53/04 20060101AFI20230125BHJP
C10B 53/08 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C10B53/04
C10B53/08
(21)【出願番号】P 2019118486
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】野村 誠治
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-041286(JP,A)
【文献】特開2016-079387(JP,A)
【文献】特開2000-160175(JP,A)
【文献】特開昭56-061494(JP,A)
【文献】特開2016-079388(JP,A)
【文献】特開昭58-142982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/04
C10B 53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥炭若しくは予熱炭に超微粉石炭を含む第1の添加炭及び/又は粗粒石炭を含む第2の添加炭を添加,混合することにより、所定の条件を満足する混合炭を製造し、この混合炭を有機高分子材で被覆した成型炭を配合炭の一部としてコークスを製造し、
前記第1の添加炭は、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭を70質量%以上含み、前記第2の添加炭は、粒径が6mm以上の粗粒石炭を70質量%以上含んでおり、
前記所定の条件は、超微粉石炭及び/又は粗粒石炭を除いた乾燥炭若しくは予熱炭に対して、超微粉石炭の合計含有量が外数で1.5質量%以上5.0質量%以下及び/又は粗粒石炭の合計含有量が外数で3.0質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とするコークスの製造方法。
【請求項2】
前記乾燥炭若しくは予熱炭に含まれる超微粉石炭の含有量を予め測定しておき、この測定値と前記超微粉石炭の合計含有量との差分に基づき前記第1の添加炭の添加量を決定することを特徴とする請求項1に記載のコークスの製造方法。
【請求項3】
前記乾燥炭若しくは予熱炭に含まれる超微粉石炭は、粒径が0.01mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のコークスの製造方法。
【請求項4】
前記乾燥炭若しくは予熱炭に含まれる粗粒石炭の含有量を予め測定しておき、この測定値と前記粗粒石炭の合計含有量との差分に基づき前記第2の添加炭の添加量を決定することを特徴とする請求項1に記載のコークスの製造方法。
【請求項5】
前記乾燥炭若しくは予熱炭に含まれる粗粒石炭は、粒径が6mm以上であることを特徴とする請求項1または4に記載のコークスの製造方法。
【請求項6】
前記第1の添加炭及び/又は前記第2の添加炭とともに固体ピッチを添加、混合し、
前記固体ピッチの添加量は、前記超微粉石炭及び/又は粗粒石炭を除いた乾燥炭若しくは予熱炭に対して外数で2質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至
5のうちいずれか一つに記載のコークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型炭を含む配合炭を乾留してコークスを製造するコークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉装入用の原料として、乾燥炭若しくは予熱炭にバインダーを添加して成型炭をつくるのではなく、所定の大きさに圧密された乾燥炭若しくは予熱炭を有機高分子薄膜で被覆した成型炭が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
バインダーを無くすことで、炉蓋からのタール漏れ等のコークス炉操業上の問題を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のフェノール樹脂液等の有機高分子材を用いて成型炭を被覆する方法は、バインダーを添加していないため、成型炭の強度が充分ではないことが懸念される。
【0006】
このため、搬送中の衝撃(落下衝撃)により成型炭に亀裂が生成され、成型炭から発生する微粉が増大するおそれがある。したがって、コークス炉で乾留したときに、カーボン付着厚みが厚くなるおそれがある。ここで、成型炭の強度を増大させることができれば、成型炭の亀裂の生成が抑制され、カーボン付着厚みの増大を抑制させることができる。また、成型炭の強度を増大させることができれば、成型炭から発生する微粉の増大が抑制されるため、有機高分子材の使用量を低減させることができる。
【0007】
そこで、本願発明は、有機高分子材で被覆した成型炭を用いてコークスを製造するにあたり、バインダーを実質的に添加せずに、成型炭の強度を増大させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のコークスの製造方法は、(1)乾燥炭若しくは予熱炭に超微粉石炭を含む第1の添加炭及び/又は粗粒石炭を含む第2の添加炭を添加,混合することにより、所定の条件を満足する混合炭を製造し、この混合炭を有機高分子材で被覆した成型炭を配合炭の一部としてコークスを製造し、前記所定の条件は、超微粉石炭及び/又は粗粒石炭を除いた乾燥炭若しくは予熱炭に対して、超微粉石炭の合計含有量が外数で1.5質量%以上5.0質量%以下及び/又は粗粒石炭の合計含有量が外数で3.0質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
(2)前記乾燥炭若しくは予熱炭に含まれる超微粉石炭の含有量を予め測定しておき、この測定値と前記超微粉石炭の合計含有量との差分に基づき前記第1の添加炭の添加量を決定することを特徴とする上記(1)に記載のコークスの製造方法。
【0010】
(3)超微粉石炭は、粒径が0.01mm以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のコークスの製造方法。
【0011】
(4)前記乾燥炭若しくは予熱炭に含まれる粗粒石炭の含有量を予め測定しておき、この測定値と前記粗粒石炭の合計含有量との差分に基づき前記第2の添加炭の添加量を決定することを特徴とする上記(1)に記載のコークスの製造方法。
【0012】
(5)粗粒石炭は、粒径が6mm以上であることを特徴とする上記(1)または(4)に記載のコークスの製造方法。
【0013】
(6)前記第1の添加炭は、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭を70質量%以上含み、前記第2の添加炭は、粒径が6mm以上の粗粒石炭を70質量%以上含むことを特徴とする上記(1)乃至(5)のうちいずれか一つに記載のコークスの製造方法。
【0014】
(7)前記第1の添加炭及び/又は前記第2の添加炭とともに固体ピッチを添加、混合し、前記固体ピッチの添加量は、前記超微粉石炭及び/又は粗粒石炭を除いた乾燥炭若しくは予熱炭に対して外数で2質量%以下であることを特徴とする上記(1)乃至(6)のうちいずれか一つに記載のコークスの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、成型炭の強度を増大させることにより、カーボン付着厚みの増大を抑制することや、有機高分子材の使用量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は乾燥炭等の粒子群を模式的に示した図であり、
図1(b)は乾燥炭等の粒子群に超微粉石炭を添加した状態を模式的に示した図である(第1実施形態)。
【
図2】コークスの製造工程を説明するためのブロック線図である(第1実施形態)。
【
図3】コークスの製造工程を説明するためのブロック線図である(第2実施形態)。
【
図4】コークスの製造工程を説明するためのブロック線図である(第3実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明者は、乾燥炭若しくは予熱炭(以下、特に断らない限り「乾燥炭等」と称する)を成型炭にする際に、超微粉石炭を添加することによって成型性が改善して、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数が向上することを知見した。
図1(a)は、乾燥炭等の粒子群を模式的に示す図である。
図1(b)は、乾燥炭等の粒子群に超微粉石炭を添加した状態を模式的に示す図である。本明細書では、粒径が0.01mm以下の石炭粒子を超微粉石炭と定義する。
【0018】
これらの図を参照して、乾燥炭等に超微粉石炭を添加していない場合には、乾燥炭等の粒子の間に形成される空隙が大きいため、成型時に割れなどが発生して成型性を悪化させる。一方、乾燥炭等に超微粉石炭を添加した場合には、乾燥炭等の粒子の間に形成された空隙に超微粉炭石炭が入り込み、空隙率が低下する。したがって、空隙に入り込んだ超微粉石炭粒子がいわゆるバインダーとして機能し、成型性が改善するものと考えられる。
【0019】
したがって、同一サイズの成型炭で比較したとき、超微粉石炭を添加した成型炭は超微粉石炭を添加していない成型炭よりも、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数を高くすることができる。落下強度指数が高くなると、搬送中に落下衝撃を受けたときに、成型炭が割れにくくなるため、微粉の発生量の増大が抑制され、コークス炉におけるカーボン付着厚みの増大を抑制することができる。また、成型炭の周りを覆う有機高分子材の使用量も減らせるため、コストを削減することができる。
【0020】
また、成型性が改善することによって、従来の成形炭(特許文献1に記載の方法によって製造された成型炭)に対して、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数をほぼ維持しながら成型炭のサイズを大きくすることができる。その理由は明らかではないが、成型炭は粉砕された石炭を圧縮成型して塊成化することで得られるため、サイズが大きくなると成型炭の中心部は外周部よりも圧密度合が小さくなるものの、成型炭の中心部の見掛け密度を向上させているため、圧密度合が小さい中心部の割れが発生しにくくなり、落下強度指数がほぼ維持されるものと考えられる。
この様に、成型炭のサイズを大きくすることにより、コークス強度を向上させることもできる。その理由は、以下の通りである。
(1)有機高分子材自体は、コークス強度に大きな影響を及ぼすものではないが、有機高分子材が石炭の表面に存在すると、石炭粒子同士の接着性が損なわれるおそれがある。すなわち、石炭の表面に存在する有機高分子材は、石炭が軟化溶融する前に熱分解して消失するため、隣接する石炭粒子の間に微小な隙間が形成され、石炭粒子間の距離が遠くなる。したがって、有機高分子材を減らすことによって、有機高分子材の消失時に形成される隙間を小さくできるため、コークス強度が向上する。つまり、同一質量で比較した場合、成型炭のサイズが大きくなるほど表面積が小さくなり、有機高分子材の使用量が削減されるから、結果的にコークス強度を向上させることができる。
(2)また、大きな成型炭も増やせるため、結果的にコークス炉18に装入する配合炭17の粒径分布がブロードになり、コークス炉内の石炭の嵩密度を上昇させることができる。これにより、コークス強度を向上させることができる。
【0021】
図2のブロック線図を参照しながら、本発明の一実施形態であるコークスの製造方法について説明する。乾燥装置2は、原料石炭1を乾燥させ、例えば、水分が5質量%以上になるように調湿する。原料石炭1は、石炭を粉砕したものであり、銘柄については特に限定しない。
【0022】
原料石炭1を乾燥させておくことで、コークス炉の生産性を向上させることができる。ただし、水分が5質量%未満になると原料石炭1からの発塵量が急増して、キャリーオーバー炭の発生を招くおそれがある。したがって、原料石炭1の好ましい調湿限度(下限値)は、5質量%である。
【0023】
調湿炭の一部3は予熱若しくは乾燥装置5に送られ、調湿炭の残部4は第2混合機16に送られる。予熱若しくは乾燥装置5において、調湿炭の一部3が加熱されることにより、水分が5質量%以下の乾燥炭等6が生成される。
【0024】
ここで、乾燥炭等6には、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭が0.3~1.0質量%程度含まれている場合が多い。乾燥炭等6に含まれる超微粉石炭の含有量は、レーザー回折法等によって調べることができる。したがって、乾燥炭等6が第1混合機7に送られる前に予め乾燥炭等6に含まれる超微粉石炭の含有量をレーザー回折法等によって調べておき、この含有量と粒径が0.01mm以下の超微粉石炭の目標合計含有量との差分から、添加炭9a(第1の添加炭に相当する)の添加量を決定することができる。この点についての詳細は、後述する。なお、乾燥炭等6には、粒径が6mm以上の粗粒石炭が少量含まれている場合がある。
【0025】
乾燥炭等6は第1混合機7に送られ、超微粉石炭ホッパー8aから供給される添加炭9aとともに混合される。第1混合機7は、工業的に使用可能な混合機であれば、どのような方式であってもよく、例えば、モルタルミキサー、パドルミキサー、ピンミキサー、アイリッヒミキサー、2軸ニーダー、レーデイゲミキサー等を用いることができる。乾燥炭等6に混合された超微粉石炭は、
図1(b)の模式図に示すように、乾燥炭等6の粒子の間に形成された空隙に入り込むため、混合炭10の空隙率を低下させることができる。
【0026】
添加炭9aは、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭を70質量%以上含んでいることが好ましく、例えば乾燥炭等6の一部を、図示しない超微粉石炭粉砕機で粉砕することにより製造することができる。ここで、超微粉石炭粉砕機で粉砕される石炭の全てを粒径0.01mm以下に粉砕することは、粉砕機の性能上困難である。そこで、粒径0.01mm以下の超微粉石炭が70質量%以上含まれるように、超微粉石炭粉砕機の運転条件(回転数など)を調整することにより添加炭9aは製造されることが好ましい。
【0027】
添加炭9aに占める超微粉石炭の含有量が70質量%未満になると、粒度が粗くなり、超微粉石炭に期待される効果が十分に発揮されにくくなることを実験的に確認している。超微粉石炭粉砕機としては、例えば、ボールミル、ローラープレス等の粉砕機を用いることができる。
【0028】
ここで、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭及び/又は粒径が6mm以上の粗粒石炭を除いた乾燥炭等6に対して、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭の合計含有量が外数で1.5質量%以上5.0質量%以下の範囲から選択される目標合計含有量となるように、超微粉石炭ホッパー8aから供給される添加炭9aの添加量は調整される。即ち、混合炭10が上述の目標合計含有量を満足するように、添加炭9aの添加量は調整される。
ここで、「粒径が0.01mm以下の超微粉石炭及び/又は粒径が6mm以上の粗粒石炭を除いた乾燥炭等6」とは、超微粉石炭及び粗粒石炭のうち超微粉石炭のみが乾燥炭等6に含まれている場合には、超微粉石炭を除いた乾燥炭等6を意味し、超微粉石炭及び粗粒石炭のうち粗粒石炭のみが乾燥炭等6に含まれている場合には、粗粒石炭を除いた乾燥炭等6を意味し、超微粉石炭及び粗粒石炭の双方が乾燥炭等6に含まれている場合には、超微粉石炭及び粗粒石炭を除いた乾燥炭等6を意味し、乾燥炭等6に超微粉石炭及び粗粒石炭がいずれも含まれていない場合には、乾燥炭等6を意味する(他の実施形態及び変形例においても同様である)。乾燥炭等6には超微粉石炭が含まれるとともに、超微粉石炭ホッパー8aに貯留される添加炭9aには粒径が0.01mm超の石炭粒子も含まれているため、これらの点を考慮しながら、混合炭10に含まれる超微粉石炭の合計含有量が前記目標合計含有量を満足するように添加炭9aの添加量を調整する。
【0029】
超微粉石炭の合計含有量が外数で1.5質量%未満になると、超微粉石炭のバインダー効果を享受できないため、成型性が改善されない。このため、成型炭14の見掛け密度及び落下強度指数を高くすることができないため、カーボン付着厚みの増大を招く。
【0030】
超微粉石炭の合計含有量が外数で5.0質量%を超過すると、超微粉石炭が過剰となり、成型性が悪化する。また、成型に寄与しなかった超微粉石炭が成型されずに発塵する。
【0031】
なお、乾燥炭等6に超微粉石炭が含まれていない場合(無視できる程度に少量の場合も含む)には、添加炭9aのみで混合炭10中の超微粉石炭が目標合計含有量を満足するように、添加量を調整することができる。
【0032】
第1混合機7において製造された混合炭10は、圧縮成型機11に送られる。圧縮成型機11は、工業的に使用可能な成型機であれば、どのような方式であってもよい。例えば、ブリケットマシン、ロールコンパクター、ダブルロール成型機、押出成型機であってもよい。成型炭14のサイズは、好ましくは50cm3以上であり、より好ましくは60cm3以上である。
【0033】
ここで、特許文献1に記載の方法によって製造された成型炭のサイズは、成型炭1個が50gで、見掛け密度が1.03~1.14(g/cm3)の記載から、43.9~48.5cm3であり、従来からこのサイズが通常であった。これに対し、本実施形態では、超微粉石炭粒子を添加することによって、成型性が向上しているため、成型炭14のサイズを50cm3以上にしても、成型炭14の見掛け密度及び落下強度指数が大きく低下することはない。
【0034】
圧縮成型機11のうち混合炭10に接触する面には、有機高分子材槽12に貯留された有機高分子材13が吹き付けられている。したがって、圧縮成型機11において成型炭14を成型する際に、混合炭10の表面を有機高分子材13で覆うことができる。有機高分子材としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、フェノール樹脂、パラフィン類等を用いることができる。
【0035】
ここで、本実施形態では、成型炭の落下強度指数を上げることができるため、搬送中の衝撃(落下衝撃)による成型炭の亀裂の生成が抑制され、微粉の発生が抑制されるため、コークス炉で乾留したときのカーボン付着厚みの増大を抑制できる。
また、成型炭の亀裂の生成が抑制されることにより、有機高分子材13の吹き付け量を減らすことができる。さらに、成型炭14のサイズを従来サイズより大きくできるため、有機高分子材13の吹き付け量を減らすことができる。これにより、コストを削減することができる。
また、有機高分子材13が減ることで、乾留時に有機高分子材13が消失することにより形成される石炭粒子間の隙間を小さくできるため、コークス強度を向上させることができる。
【0036】
圧縮成型機11において得られた成型炭14は、硬化処理装置15によって加熱されることで、硬化処理される。硬化処理装置15は、例えば、ネットコンベア上に載置された成型炭14を、熱風により加熱する装置であってもよい。
【0037】
硬化処理装置15で硬化処理された成型炭14は、第2混合機16において調湿炭の残部4と混合されることにより配合炭17とされ、コークス炉18で乾留される。
【0038】
(第2実施形態)
本発明者は、乾燥炭等を成型炭にする際に、超微粉石炭とともに粗粒石炭を添加することにより、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数がさらに向上することを発見した。本明細書では、粒径が6mm以上の石炭を粗粒石炭と定義する。粗粒石炭の粒径の上限値は特に限定しないが、好ましくは15mmである。粗粒石炭は、コークス製造に用いられる一般的な原料石炭の性状を有していればよい。具体的には、揮発分であるVM(volatile matter)が20~35質量%で、かつ、粘結性を表す指標である全膨張率(JIS M 8801の膨張性試験方法により測定される全膨張率)が20%以上であればよい。
【0039】
粗粒石炭が乾燥炭等に添加されることにより、粒度分布がよりブロードとなるため、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数を向上させることができる。落下強度指数が増大することにより、搬送中に落下衝撃を受けたときに、成型炭が割れにくくなるため、微粉の発生量の増大を抑制することができる。また、コークス炉におけるカーボン付着厚みの増大を防止しながら、成型炭の周りを覆う有機高分子材の添加量を減らせるため、コストを削減することができる。
【0040】
図3のブロック線図を参照しながら、本実施形態のコークスの製造方法について説明する。ただし、第1実施形態と共通する工程については、詳細な説明を省略する。粗粒石炭を含む添加炭9b(第2の添加炭に相当する)は、石炭の粉砕粒度を3mm以下70~90質量%に設定し、粉砕した石炭を篩分けすることにより得ることができる。例えば、原料石炭1を得るときの粉砕粒度を3mm以下70~90質量%に設定して、篩分けを行うことにより粗粒石炭を含む添加炭9bを得ることができる。添加炭9bには、粒径6mm以上の粗粒石炭が70質量%以上含まれていることが望ましい。
【0041】
添加炭9bは、粗粒石炭貯留ホッパー8bに貯留されており、第1混合機7に供給される。第1混合機7に供給された添加炭9bは、乾燥炭等6及び添加炭9aとともに混合される。つまり、第1混合機7において、乾燥炭等6、超微粉石炭及び粗粒石炭が混合される。
【0042】
ここで、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭及び/又は粒径が6mm以上の粗粒石炭を除いた乾燥炭等6に対して、超微粉石炭の合計含有量が外数で1.5質量%以上5.0質量%以下であって、かつ、粗粒石炭の含有量が外数で3.0質量%以上10.0質量%以下となるように、添加炭9a及び9bの添加量は決定される。第1混合機7に送られる前の乾燥炭等6には、通常、0.5~3質量%の粗粒石炭が含まれている。したがって、乾燥炭等6が第1混合機7に送られる前に予め乾燥炭等6に含まれる粗粒石炭の含有量を調べておき、この含有量と粗粒石炭の目標合計含有量との差分から、添加炭9bの添加量を決定することが望ましい。なお、乾燥炭等6に含まれている粗粒石炭の含有量は、レーザー回折法等によって調べることができる。
【0043】
ここで、粗粒石炭の含有量が外数で3.0質量%未満になると、粒度分布をブロードにする効果を享受できないため、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数を向上させることができない。粗粒石炭の含有量が外数で10.0質量%を超過すると、粗粒石炭が多すぎる粒度分布となり、充填密度が低下するため、成形炭の見掛け密度及び落下強度指数を向上させることができない。
【0044】
ただし、乾燥炭等6に粗粒石炭が含まれていない場合(無視できる程度に少量の場合も含む)には、添加炭9bのみで混合炭10中の粗粒石炭が目標合計含有量を満足するように、添加量を調整することができる。
【0045】
第1混合機7よりも後の工程は、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0046】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、超微粉石炭及び粗粒石炭を添加炭として添加したが、本発明はこれに限るものではなく、粗粒石炭のみを添加してもよい。粗粒石炭だけを添加しても、粒度分布をよりブロードにする効果が得られるため、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数を増加させることができる。粗粒石炭の添加量などについては、第2実施形態と同様であるから詳細な説明を省略する。
【0047】
(第3実施形態)
乾燥炭等を成型炭にする際に、搬送中の衝撃(落下衝撃)が大きい場合は、超微粉石炭とともに固体ピッチを少量添加しても良い。これにより、成型炭落下強度指数が増加するため、搬送中の衝撃(落下衝撃)が大きい場合でも、成型炭の亀裂の生成が抑制され、微粉の発生が抑制されるため、コークス炉で乾留したときのカーボン付着厚みの増大を抑制できる。また、成型炭の亀裂の生成が抑制されることにより、有機高分子材の使用量が削減できる。
固体ピッチには、硬ピッチ(石炭系のピッチ)や石油重質残渣(例えば、ASP)等の常温で固相状態の固体ピッチを用いることができる。
固体ピッチは可塑性があり、第1混合機7による混合工程及び圧縮成型機11による成型工程において、石炭粒子の接触面の凹凸により生じる微小な隙間にも浸透する効果があるため、成型炭の落下強度指数を増加することができると考えられる。この充填効果を高めるために、固体ピッチは、粉砕しておくことが好ましい。固体ピッチの粒度は、好ましくは、1mm以下である。
【0048】
図4のブロック線図を参照しながら、本実施形態のコークスの製造方法について説明する。ただし、第1実施形態と共通する工程については、詳細な説明を省略する。固体ピッチは、固体ピッチ貯留ホッパー8cに貯留されており、第1混合機7に供給される。第1混合機7に供給された固体ピッチ9cは、乾燥炭等6及び添加炭9aとともに混合される。
【0049】
ここで、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭及び/又は粒径が6mm以上の粗粒石炭を除いた乾燥炭等6に対して、超微粉石炭の合計含有量は外数で1.5質量%以上5.0質量%以下である。また、固体ピッチ9cの添加量は、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭及び/又は粒径が6mm以上の粗粒石炭を除いた乾燥炭等6に対して、2質量%以下(外数)が好ましい。固体ピッチ9cの添加量が2質量%を超えると、成型炭から固体ピッチがにじみでて付着したり、成型炭の強度が低下するおそれがある。
【0050】
第1混合機7で得られた混合炭10の処理方法は、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0051】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態では、乾燥炭等6に超微粉石炭及び固体ピッチを添加したが、本発明はこれに限るものではなく、超微粉石炭及び固体ピッチとともに第2実施形態の粗粒石炭を添加してもよい。また、超微粉石炭を添加せずに、粗粒石炭及び固体ピッチを乾燥炭等6に添加してもよい。超微粉石炭、粗粒石炭及び固体ピッチを添加することによる効果は、説明が重複するため省略する。
【0052】
(実施例)
実施例を示して、本発明についてより具体的に説明する。
図3~4のブロック線図に示す通り、原料石炭1は、まず乾燥装置2で水分が5質量%以上となるように乾燥した。乾燥装置2で乾燥された原料石炭を調湿炭と称する。調湿炭の一部3は乾燥装置5で加熱し、水分が5質量%未満の乾燥炭6とした。乾燥炭6は第1混合機7で超微粉石炭および/または粗粒石炭や、さらに固体ピッチを混合し、混合炭10とした。混合炭10は圧縮成型機11で成型するとともに、その表面を有機高分子材で被覆した。これを成型炭14と称する。成型炭14と調湿炭の残部4を混合したものを配合炭17と称し、配合炭17をコークス炉に装入した。
表1に示す各種試料について、成型炭の見掛け密度、落下強度指数、コークス炉におけるカーボン付着厚み、コークス強度(DI
150
15)等に与える影響を評価した。
なお、カーボン付着厚みは、石炭装入直後にコークス炉炉頂空間に煉瓦試料を吊り下げ、コークス押出し後に煉瓦試料を回収し、煉瓦表面に付着したカーボンの厚みを実測することにより求めた。
また、調湿炭の残部4と、乾燥炭6(ただし、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭および/または粒径が6mm以上の粗粒石炭を除く)の配合割合(質量ベース)は7:3とした。なお、本実施例では、粒径が0.01mm以下の超微粉石炭及び/又は粒径が6mm以上の粗粒石炭を除いた乾燥炭を、便宜上、中粒乾燥炭と記載する場合がある。
超微粉石炭が添加される前の乾燥炭6には粒径が0.01mm以下の超微粉石炭が0.5質量%含まれていた。粗粒石炭が添加される前の乾燥炭6には粒径が6mm以上の粗粒石炭が2.0質量%含まれていた。
なお、落下強度指数(SI
25)とは、JIS K 2151に記載された落下衝撃に対する強さを示す指数であり、JIS K 2151に規定された条件下で成型炭を落下させたのち25mmのふるいでふるい分けを行い、このときのふるい上収率を落下強度指数としている。固体ピッチには、硬ピッチを使用した。有機高分子材には、フェノール樹脂を使用した。
超微粉石炭の合計含有量は、中粒乾燥炭に対する外数で表した。同様に、粗粒石炭の合計含有量及び固体ピッチの添加量も、中粒乾燥炭に対する外数で表した。
【表1】
【0053】
参考例、比較例1及び比較例2では、超微粉石炭、粗粒石炭及び固体ピッチを無添加とした。超微粉石炭が無添加の場合、成型炭のサイズが大きくなるにしたがって、見掛け密度及び落下強度指数が低下した。したがって、カーボン付着厚みが大きくなった。
比較例3では、超微粉石炭を6質量%添加して、超微粉石炭の合計含有量を6.5質量%とした。超微粉石炭の合計含有量が過剰であるため、発明例3及び4よりも成型炭見掛け密度及び成型炭落下強度指数が低下した。また、カーボン付着厚みも大きくなった。また、装入嵩密度が低下し、コークス強度が低下した。
【0054】
ちなみに、装入嵩密度には成型炭サイズと成型炭見かけ密度が影響する。すなわち、成型炭サイズが大きいほど、成型炭見かけ密度が大きいほど、装入嵩密度は大きくなる。また、装入嵩密度が大きいほど、コークス強度は高くなる。従って、比較例3では、発明例3及び4と成型炭サイズは同じであるものの、成型炭見掛け密度が低下したため、装入嵩密度が790kg/m3から750kg/m3に低下し、コークス強度が低下した。
【0055】
発明例1乃至4では、超微粉石炭の合計含有量が1.5質量%又は4.5質量%となるように超微粉石炭を添加している。発明例1,2(超微粉石炭のみ添加)と比較例1とを比較して、超微粉石炭を添加することにより、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数が向上するとともに、有機高分子材の使用量が同じでありながら、カーボン付着厚みが小さくなり、コークス強度も向上した。発明例3、4(超微粉石炭のみ添加)及び比較例2の比較からも、同様の結果が得られた。また、比較例1と比べて発明例1では、成型炭サイズは同じだが成型炭の見かけ密度が大きくなった影響で装入嵩密度が750kg/m3から780kg/m3に上昇した。また、発明例2と発明例4を比較すると、成型炭見かけ密度は同じであるが、成型炭サイズが大きくなった影響で装入嵩密度が780kg/m3から790kg/m3に上昇した。
【0056】
また、発明例1及び2に対して、発明例3及び4では成型炭のサイズを大きくしているものの、比較例1及び2のように成型炭の見掛け密度や落下強度指数が大きくは低下しなかった。また、成型炭のサイズが大きくなることで、有機高分子材の使用量が低減された。その結果、カーボン付着厚みの過度な増大を抑制しながら、コークス強度を向上させることができた。
【0057】
発明例5及び発明例6はそれぞれ、それぞれ発明例3及び発明例4に対して有機高分子材の使用量を減らしたため、カーボン付着厚みが増大したが、カーボン付着厚みが同一である比較例2と比較すると、有機高分子材の使用量が削減された。
【0058】
発明例7と比較例2とを比較して、粗粒石炭の合計含有量を6質量%に増やすことにより、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数が向上した。また、粗粒石炭の割合を増やすことにより、有機高分子材の使用量を削減しながら、カーボン付着厚みを同一に維持できることがわかった。
【0059】
発明例8は、発明例4よりも粗粒石炭を増やして、粗粒石炭の合計含有量を3.5質量%とした実施例であり、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数が増加した。また、発明例8は、発明例4と有機高分子材の使用量が同じでありながら、カーボン付着厚みが減少した。
【0060】
発明例9は、発明例8よりも有機高分子材の使用量を削減した実施例であり、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数は同等であったが、カーボン付着厚みが増加した。発明例9と比較例2とを比較して、超微粉石炭及び粗粒石炭の割合を増やすことにより、成型炭の見掛け密度及び落下強度指数が向上した。また、超微粉石炭及び粗粒石炭の割合を増やすことにより、有機高分子材の使用量を削減しながら、カーボン付着厚みを同一に維持できることがわかった。発明例10は、発明例9よりも粗粒石炭を増やして、粗粒石炭の合計含有量を9.5質量%とした実施例であるが、発明例9と同様の結果が得られた。
【0061】
発明例11は、発明例4に対して固体ピッチを添加した実施例であり、成型炭の落下強度指数が向上した。また、発明例11は、発明例4と有機高分子材の使用量が同じでありながら、カーボン付着厚みが減少した。
発明例12は、発明例11に対して有機高分子材の使用量を減らしたため、カーボン付着厚みが増大したが、カーボン付着厚みが同一である比較例2と比較すると、有機高分子材の使用量が削減された。
【符号の説明】
【0062】
1 原料石炭 2 乾燥装置 3 調湿炭の一部 4 調湿炭の残部
5 乾燥若しくは予熱装置 6 乾燥炭等 7 第1混合機
8a 超微粉石炭ホッパー 8b 粗粒石炭ホッパー 8c 固体ピッチホッパー
9a 9b 添加炭 9c 固体ピッチ 10 混合炭
11 圧縮成型機 12 有機高分子材槽 13 有機高分子材
14 成型炭 15 硬化処理装置 16 第2混合機
17 配合炭 18 コークス炉