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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】水系分散剤および水系分散体組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20230125BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C09K23/52
C08F290/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019179009
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053579
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 文隆
(72)【発明者】
【氏名】松崎 健太
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-508844(JP,A)
【文献】特開2005-118684(JP,A)
【文献】特表2010-506984(JP,A)
【文献】特表2011-505453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/52
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(a)および下記単量体(b)の共重合体からなる水系分散剤であって、前記単量体(a)と前記単量体(b)との組成比((a):(b))がモル%で40:60~90:10であり、かつ前記共重合体の重量平均分子量が5,000~50,000であることを特徴とする、水系分散剤。

単量体(a)
式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体

R1O(AO)nR2 (1)

(式(1)において、
R1は、炭素数1~4の炭化水素基を示し、
R2は、二重結合を1つ有する炭素数3~4の不飽和炭化水素基を示し、
AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を示し、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1~100の実数を示す。)

単量体(b)

式(2)で表されるN-置換マレイミド

【化1】
(式(2)において、R3は炭素数1~15の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
顔料、水および請求項1記載の水系分散剤を含有し、前記顔料1質量部に対して、水の含有量が1~100質量部であり、前記水系分散剤の含有量が0.1~100質量部であることを特徴とする、水系分散体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中における優れた顔料分散性およびチクソトロピー性を付与可能な分散剤、およびそれを含んでなる水系分散体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機顔料あるいは無機顔料を水中に分散させた水系分散体組成物は塗料、印刷インキ、カラーフィルター用レジストなどに利用されており、顔料を微粒に分散させることにより、高い着色力、鮮明な色調等を持たせている。しかし、分散安定性に乏しい有機顔料やカーボンブラック等の顔料は、微粒に分散させても再度凝集してしまい、色調の低下や粘度上昇を引き起こす。そこで分散状態を安定させるために分散剤が用いられる。
【0003】
さらに、近年では、高度に微細化した顔料が用いられるため、より顔料の表面エネルギーが高くなり、従来の顔料分散剤では十分な粘度低下や分散安定性が得られない場合が多く、より微細な顔料分散に適した分散剤が開発されている。例えば、これらの分散安定性の乏しい顔料を容易に分散安定化させる分散剤として、特許文献1のような酸性官能基とベンゾイソインドール誘導体を含む分散剤や、特許文献2のような顔料親和性の高いペリレン骨格を有する分散剤が報告されており、有機顔料やカーボンブラックに対する高い分散安定性や組成物の粘度低下を達成している。
【0004】
しかし、これら分散剤を用いた場合、組成物の粘度低下とともにチクソトロピー性も低下する傾向がある。塗料やインキ用途においては、組成物が適度なチクソトロピー性を持たないと塗工後に垂れが生じる等の問題が起こる。そこで、しばしば分散剤とともに粘性調整剤やチクソトロピック剤を併用することで組成物にチクソトロピー性を与えている(特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-57477
【文献】特開2014-141635
【文献】特開2002-146336
【文献】特開2018-62556
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3、4記載のような添加剤を併用する場合、双方の相性が悪いと分散不良を生じる可能性があり、添加剤の組み合わせを最適化する必要があった。また、分散する顔料種によって、好適な分散剤が異なるため、その度に用いる粘性調整剤やチクソトロピック剤も最適なものを選定する必要があった。
【0007】
そのため、添加剤の組み合わせを変更した際の相性の不一致による分散不良を防ぐことが可能な、一剤で分散性およびチクソトロピー性を付与可能な水系分散剤の開発が望まれる。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、添加剤の組み合わせを変更した際の相性の不一致による分散不良が起こりにくい、分散性およびチクソトロピー性を付与可能な分散剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定成分から構成される共重合体を分散剤として用いることで、一剤で分散性およびチクソトロピー性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)、(2)である。
(1) 下記単量体(a)および下記単量体(b)の共重合体からなる水系分散剤であって、前記単量体(a)と前記単量体(b)との組成比((a):(b))がモル%で40:60~90:10であり、かつ前記共重合体の重量平均分子量が5,000~50,000であることを特徴とする、水系分散剤。

単量体(a)
式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体

R1O(AO)nR2 (1)

(式(1)において、
R1は、炭素数1~4の炭化水素基を示し、
R2は、二重結合を1つ有する炭素数3~4の不飽和炭化水素基を示し、
AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を示し、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1~100の実数を示す。)

単量体(b)

式(2)で表されるN-置換マレイミド

【化1】
(式(2)において、R3は炭素数1~15の炭化水素基を示す。)
【0011】
(2) 顔料、水および(1)の水系分散剤を含有し、前記顔料1質量部に対して、水の含有量が1~100質量部であり、水系分散剤の含有量が0.1~100質量部であることを特徴とする、水系分散体組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、添加剤の組み合わせを変更した際の相性の不一致による分散不良が起こりにくい、分散性およびチクソトロピー性を付与した水系分散体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の水系分散剤および水系分散体組成物の実施形態について順次説明する。
【0014】
(水系分散剤)
本発明の分散剤は、単量体(a)および単量体(b)を必須の構成単位とし、単量体(c)を任意の構成単位として含む、重量平均分子量が5,000~50,000の共重合体からなる。
【0015】
単量体(a)は、式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体である。
R1O(AO)nR2 ・・・(1)
式(1)中、R1は炭素数1~4の炭化水素基を示し、直鎖状及び分枝状のいずれの形態であってもよい。R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられ、中でも好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、更に好ましくはブチル基である。
【0016】
R2は二重結合を1つ有する炭素数3~4の不飽和炭化水素基を示し、例えば、アリル基、メタリル基などが挙げられ、好ましくはアリル基である。
【0017】
AOは炭素数2~3のオキシアルキレン基を示すが、オキシアルキレン基は直鎖状及び分枝状のいずれの形態であってもよい。また、AOは1種であっても、2種であってもよく、AOが2種のとき、その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよい。AOとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基などが挙げられる。分散性の観点から、オキシエチレン基または、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の2種類をランダム状に付加することが好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。オキシエチレン基とオキシプロピレン基の2種類をランダム状に付加する場合には、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の組成比は、モル%(オキシエチレン基:オキシプロピレン基)で、30~90:70~10が好ましく、50~70:50~30がより好ましい。
【0018】
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1~100を示す。ポリオキシアルキレン誘導体は、分散剤の構造中で、分散体に吸着した際に立体反発部位として作用する。分散性の観点から、AOの平均付加モル数は5~50が好ましく、20~40がより好ましい。nが100を超えると、粘度が高くなり扱い難くなる。
【0019】
単量体(a)のポリオキシアルキレン誘導体は、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルに不飽和炭化水素基を導入しても、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテルに炭化水素基を導入してもよい。すなわち、炭素数が1~4の炭化水素基を有するアルコールに炭素数2~3のアルキレンオキシドを付加重合させた後、炭素数3~4の不飽和炭化水素基を有するモノハロゲン化不飽和炭化水素とのエーテル化反応によりポリオキシアルキレン誘導体を得る、あるいは、炭素数3~4の不飽和炭化水素基を有するアルコールに炭素数2~3のアルキレンオキシドを付加重合させた後、炭素数が1~4の炭化水素基を有するモノハロゲン化炭化水素とのエーテル化反応によりポリオキシアルキレン誘導体を得ることができる。
また、単量体(a)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0020】
単量体(b)は式(2)
【化1】
(R3は炭素数1~15の炭化水素基を示す。)で表されるN-置換マレイミドである。
【0021】
R3は通常、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基であり、芳香族炭化水素基を有するN-置換マレイミドがより好ましい。芳香族炭化水素基を有するN-置換マレイミドとしては、N-フェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド等が挙げられ、分散性およびチクソトロピー性の観点からN-フェニルマレイミドが好ましい。
また、単量体(b)は、単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の単量体(a)および単量体(b)を含む単量体混合物から共重合体を得るためには、上述した単量体成分を重合すればよく、各単量体の配合割合は、分散性およびチクソトロピー性の観点から(a)および(b)がモル%で(a):(b)=40:60~90:10であることが好ましく、50:50~90:10であることが更に好ましく、70:30~90:10がより好ましい。上記範囲外の場合、分散性およびチクソトロピー性が低下する。
【0023】
また、本発明の共重合体には、所望により、単量体(a)及び単量体(b)と共重合可能な単量体(c)を含ませることが出来る。単量体(c)としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、イソブチレン、ジイソブチレン、ビニルシクロヘキサンなどのエチレン性不飽和結合を有する化合物や、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸塩およびマレイン酸エステルなどのマレイン酸系化合物が挙げられる。分散性の観点から、マレイン酸系化合物を用いるのが好ましく、更に好ましくは無水マレイン酸である。
また、単量体(c)は単独又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
単量体(c)の含有量は、分散性およびチクソトロピー性の観点から、単量体(a)と単量体(b)との合計量を100モル部としたとき、0~60モル部が好ましく、40~60モル部がより好ましい。
【0025】
また、共重合体の重合型式は溶液重合や塊状重合などの公知の方法で行うことができ、特に限定されるものではない。すなわち、重合反応は無溶媒下又は溶媒存在下で行なうことが可能であるが、重合反応を溶媒存在下で行なう場合には、水; メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類; アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類; テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、n-へキサン、2-エチルへキサン、メチルシクロへキサン等の脂肪族炭化水素類; トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などを使用することができ、トルエン、メチルシクロヘキサンが好適に使用される。溶媒の使用量は、単量体の全重量に対して、通常1~50重量%、好ましくは5~30重量%である。反応に使用した溶媒は蒸留等の操作によって除去するか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。なお、溶液重合は回分式や連続式で行うことができる。
【0026】
重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物系開始剤、2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルなどのアゾ系重合開始剤; 過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸系開始剤等が挙げられる。また、必要に応じて、連鎖移動剤を併用してもよい。また、重合温度は、通常50~130℃、好ましくは60~90℃
であり、重合時間は、通常5~25時間、好ましくは5~10時間である。
【0027】
なお、本発明においては分散性の観点から、アゾ系重合開始剤を用いることが好ましく、2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが特に好ましい。アゾ系開始剤の使用量は、単量体の全重量に対して、通常1~10モル% 、好ましくは2~5モル%である。
【0028】
また、所望により連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、連鎖移動剤の使用量は、単量体の全重量に対して、通常1~20モル%である。なお、連鎖移動剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は50,000以下であり、より好ましくは40,000以下である。Mwが50,000以上のものについては、分散性が低下しその性能を十分に発揮できない。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量をいう。
【0030】
(水系分散体組成物)
本発明の水系分散体組成物は、水系分散剤、顔料および水系溶媒を含有する。
【0031】
水系分散剤の含有量は、顔料1質量部に対して、0.1~100質量部が好ましく、さらに好ましくは10~40質量%である。水系分散剤の含有量が0.1質量部未満であると、十分な分散性が得られないおそれがあり、含有量が100質量部を超えても含有量に見合う効果が得られないおそれがある。
【0032】
本発明の水系分散体組成物に含まれる顔料としては、有機顔料あるいは無機顔料が挙げられる。
【0033】
有機顔料としては、例えば、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾロン系、ペニレン系、フタロシアニン系、アントラピリジン系、およびジオキサジン系などのが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、鉄黒、チタンブラック、コバルトバイオレット、バーミリオン、モリブデンオレンジ、鉛丹、ベンガラ、黄鉛、カドミウムイエロー、ジンククロメート、イエローオーカー、酸化クロム、群青、紺青、コバルトブルー、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(シングルウォールナノチューブ、ダブルウォールナノチューブ、マルチウォールナノチューブ)などが挙げられる。顔料として好ましくは、汎用性の観点からカーボンブラックなどの炭素材料である。顔料の含有量は、水系分散体組成中、通常1~50質量%である。
【0034】
水系溶媒は、顔料の分散性向上、および本発明におけるポリオキシアルキレン誘導体成分との相溶性の観点から、水を必須成分とし、必要に応じて水と混和可能な有機溶媒を配合したものを用いることが出来る。配合する有機溶媒としては、水と任意に混和可能なものが好ましく、具体的にメタノール、エタノール、グリセリン、エチレングリコール等が挙げられる。
なお、本発明の水系分散体組成物における水の含有量は、顔料1質量部に対して1~100質量部である。ここで、水の含有量と前記水と混和可能な有機溶媒との質量比率は、1:0~1:9であることが好ましく、1:0~1:3がより好ましく、1:0~1:1が特に好ましい。
【0035】
本発明の水系分散体組成物には、その目的が損なわれない範囲で、他の界面活性剤、バインダー、可塑剤および消泡剤などの各種添加剤を配合させることができる。
【0036】
本発明の水系分散体組成物は、公知の水系分散体組成物の製造方法に準じて製造することができる。例えば、水系分散剤を溶解した水溶液中に分散体を添加した後、室温下にて攪拌し混合する方法、顔料に水および分散剤を添加した後、室温下にて攪拌し混合する方法などが挙げられる。
攪拌、混合、あるいは分散するための分散機器としては、公知の分散機を使用することができる。例えば、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ホモジナイザー、ディスパー、自転公転型ミキサーなどが挙げられる。また超音波発生浴中において分散処理を行うこともできる。
【実施例
【0037】
以下、具体例により本発明を説明する。
(分散剤の調製)
(実施例1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を装着した0.3リットルフラスコに、表1のポリオキシアルキレン誘導体165g(0.15モル)、N-フェニルマレイミド29.9g(0.17モル)を加えた。窒素ガス雰囲気下、重合開始剤としての2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルを3.1g(0.01モル)加え、第1段階:60±5℃にて1時間、第2段階:75±5℃にて4時間、第3段階:85±5℃にて3時間、反応を行い、共重合体を得た。得られた共重合体の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は24,000であった。
【0038】
(実施例2)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を装着した0.5リットルフラスコに、表1のポリオキシアルキレン誘導体255g(0.15モル)、無水マレイン酸11.8g(0.12モル)、N-フェニルマレイミド9.0g(0.05モル)を加えた。窒素ガス雰囲気下、重合開始剤としての2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルを3.1g(0.01モル)加え、第1段階:60±5℃にて1時間、第2段階:75±5℃にて4時間、第3段階:85±5℃にて3時間、反応を行い共重合体を得た。得られた共重合体の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は35,000であった。
【0039】
(実施例3)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を装着した0.5リットルフラスコに、表1のポリオキシアルキレン誘導体255g(0.15モル)、無水マレイン酸12.6g(0.13モル)、N-フェニルマレイミド3.6g(0.02モル)を加えた。窒素ガス雰囲気下、重合開始剤としての2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルを3.1g(0.01モル)加え、第1段階:60±5℃にて1時間、第2段階:75±5℃にて4時間、第3段階:85±5℃にて3時間、反応を行い共重合体を得た。得られた共重合体の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は35,000であった。
【0040】
(比較例1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を装着した0.5リットルフラスコに、表1のポリオキシアルキレン誘導体255g(0.15モル)、無水マレイン酸16.8g(0.17モル)を加えた。窒素ガス雰囲気下、重合開始剤としての2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルを3.1g(0.01モル)加え、第1段階:85±5℃にて1時間、第2段階:125±5℃にて8時間、反応を行い共重合体を得た。得られた共重合体の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は20,000であった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】
【0043】
(分散実験)
顔料として、平均粒径が55nmのカーボンブラック(製品名:MA-220、三菱ケミカル社製)を用いて、次のようにして分散体組成物を得た。すなわち、50mLスクリュー管にカーボンブラックを1.5g量り取り、これに表2に示す分散剤0.23g、イオン交換水3.27g、ジルコニアビーズ(φ0.5mm)5.0g(組成物全量に対して当量)を加え、ハイブリットミキサーを用いて、2,000rpmで15分混合・粉砕した。得られた分散体組成物の20℃におけるせん断速度100 (1/s)のときのせん断粘度をレオメーターにて測定し、分散性を評価した。また、チクソトロピーインデックス(TI値)を下記の式より算出した。

TI値=せん断速度1(1/s)時のせん断粘度/せん断速度0.1
(1/s)時のせん断粘度
【0044】
なお、分散性およびチクソトロピー性の評価基準は下記のとおりである。
(分散性の評価基準)
せん断粘度100(1/s)のときのせん断粘度を測定し、以下のように評価する。

◎: せん断粘度が15mPa以下で、非常に分散性良好。
○: せん断粘度が40mPa以下で、分散性が良好。
△: せん断粘度が40mPaを超えて、分散性が低い。
【0045】
(チクソトロピー性の評価基準)

◎: TI値5.0以上で、非常に優れたチクソトロピー性を有する。
○: TI値3.0以上で、優れたチクソトロピー性を有する。
△: TI値3.0以下で、チクソトロピー性が低い。
【0046】
なお、比較例2においては、分散剤として、カーボンブラック分散に著効であるBYK Chemie社の「BYK-198」を使用した。
【0047】
【表3】
【0048】
本発明に係る実施例1~3の分散体組成物は、せん断粘度が100mPa・s以下と低く、いずれも良好な分散性を示した。また、TI値も大きく、優れたチクソトロピー性を示し、一剤で分散性とチクソトロピー性を付与することが出来た。特に実施例1の分散体組成物はより優れた分散性およびチクソトロピー性を示した。
【0049】
比較例1では、TI値が小さく、十分なチクソトロピー性が得られず、せん断粘度が高く、十分な分散性は得られなかった。
「BYK-198」を用いた比較例2の場合、せん断粘度は低く、良好な分散性を示したが、TI値は低く、チクソトロピー性が得られなかった。
【0050】
上記の実施例と比較例の結果から、本発明の分散剤が顔料の水溶液中での分散において、添加剤の組み合わせの最適化が不要な、一剤で分散性およびチクソトロピー性を同時に付与可能な分散剤であることがわかる。