(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】有機/無機複合コーティング組成物及びこれを利用して表面処理された亜鉛めっき鋼板
(51)【国際特許分類】
C23C 28/00 20060101AFI20230125BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20230125BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230125BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230125BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230125BHJP
C09D 191/06 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C23C28/00 A
C09D5/08
C09D7/61
C09D7/63
C09D175/04
C09D191/06
(21)【出願番号】P 2021525089
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 KR2019015177
(87)【国際公開番号】W WO2020101284
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0137954
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ドゥ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン、 チュン-ホ
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/029988(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104312272(CN,A)
【文献】特開2007-069376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/00-28/04
C09D 163/00
C09D 167/00
C09D 175/04
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量に対し、
ポリウレタン樹脂5~25重量%、
シラン化合物4~20重量%、
硬化剤3~10重量%、及び
ビニルフェロセン化合物0.1~2重量%を含
み、
前記シラン化合物は、3-Aminopropyltrithoxysilane、3-Glycidoxypropyltrimethoxysilane、3-Methaglycodoxypropyltrimethoxysilane、N-(1,3-Dimethylbutylidene)-3-(triethoxysilyl)-1-propylamine、N,N-Bis[3-(trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine、N-β(aminoethyl)-γ-aminopropyltrimethoxysilane、N-β(aminoethyl)-γ-aminopropyltriethoxysilane、N-β(aminoethyl)-γ-aminopropylmethyltriethoxysilane、N-(β-aminoethyl)-γ-aminopropyltrimethoxysilane、γ-Glycidoxypropyltriethoxysilane、γ-Glycidoxypropyltrimethoxysilane、2-(3,4-Epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane、γ-Methacryloxypropyltrimethoxysilane、γ-Methacryloxypropyltrimethoxysilane、N-[2-(Vinylbenzylamino)ethyl]-3-aminopropyltrimethoxysilane、n-decyltriethoxysilane、2-(methoxy(polyethyleneoxy)propyl)trimethoxysilane、7-octenyltrimethoxysilane、2-(N-allylamino)propyl trimethoxysilane、Bis-[(3-methyldimethoxysilyl)propyl]polypropylene oxide、1,9-Bis(trimethoxysilyl)nonane、Bis(triethoxysilyl)octane、Bis[(3-triethoxysilyl)propyl]urea、Di-s-Buthoxyaluminoxy Triethoxysilane、(N,N’-Diethyl-3-aminopropyl)trimethoxysilane、Dodesylmethyldiethoxysilane、2-(Diphenylphosphino)ethyl Triethoxysilane、Dodesyltriethoxysilane、5,6-Epoxyhexyltriethoxysilane、(3-Glycidoxypropyl)trimethoxysilane、(3-Glycidoxypropyl)triethoxysilane、(Heptadecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrodecyl)triethoxysilane、Hexadecyltrimethoxysilane、Hexyltrimethoxysilane、Methacryloxypropyl Triethoxysilane、n-Octadecyltriethoxysilane、n-Octadecyltrimethoxysilane、n-Octyltriethoxysilane、n-Octyltrimethoxysilane、(Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)triethoxysilane、triethoxysilylpropyl)gluconamide、N-(triethoxysilylpropyl-o-polyethylene oxide urethane、Ureidopropyltriethoxysilane、Ureidopropyltrimethoxysilane及びo-(Vinyloxymethyl)-N-(triethoxysilylpropyl)urethaneからなる群から選択される単独または2種以上の組み合わせである、
亜鉛めっき鋼板の表面コーティング用有機/無機複合樹脂組成物。
【請求項2】
前記
ポリウレタン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が-30~10℃であり、数平均分子量が20,000~100,000である、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板の表面コーティング用有機/無機複合樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤は、カルボジイミド化合物である、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板の表面コーティング用有機/無機複合樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機/無機複合樹脂組成物は、フッ化金属化合物2~10重量%をさらに含む、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板の表面コーティング用有機/無機複合樹脂組成物。
【請求項5】
前記フッ化金属化合物は、HPF
6、H
2TiF
6、H
2ZrF
6、H
2SiF
6、MPF
6、M
2TiF
6、M
2ZrF
6またはM
2SiF
6(M=Li、NaまたはK)である、請求項
4に記載の亜鉛めっき鋼板の表面コーティング用有機/無機複合樹脂組成物。
【請求項6】
前記有機/無機複合樹脂組成物は、有機金属酸化物、分散剤またはワックスをさらに含む、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板の表面コーティング用有機/無機複合樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の有機/無機複合樹脂組成物が塗布されて形成されたコーティング層を含み、前記コーティング層の乾燥厚さは0.1~1.0μmである、亜鉛めっき鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気導電性に優れた自己架橋型有機/無機複合コーティング組成物及びこれを利用して表面処理された複合コーティング鋼板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家電機器のパネル、主に内板に用いられる亜鉛めっき鋼板は、次のような重要な品質特性を有する必要がある。第1に、様々な腐食環境での使用が可能な耐腐食性を有する必要がある。殆どの亜鉛めっき鋼板は、製造後に顧客に到達するまでの輸送、製品を作るための加工工程、消費者が製品を使用する時から廃棄するまでの間、腐食環境から素材を保護するためのコーティング層の耐腐食性が要求される。第2に、表面電気導電性を有する必要がある。家電機器の作動時に発生する電磁波は、鋼板表面に吸収して除去されるため、表面の電気導電性が十分である必要がある。第3に、部品の加工に必要なプレス加工性に優れる必要がある。亜鉛めっき層は、柔軟(soft)でプレス加工時にダイによって損傷するため、その上に処理されるコーティング層は、これを防ぐことができるように加工性及び潤滑性を有する必要がある。第4に、耐化学性を有する必要がある。部品の加工後、アルカリ溶液に対する脱脂時、またはエタノール、MEK(methylethylketone)、シンナーなどの様々な有機溶剤を使用して表面を洗浄する場合、塗膜の安定性が要求される。また、長期間使用時に機器内部で発生する熱による塗膜の劣化による変色があってはならない。
【0003】
一般的に、亜鉛めっき鋼板は、めっき層が柔軟(Soft)で表面が汚れやすく、外部環境への露出時に酸化しやすい。このような欠点を補完するために、有機/無機化合物の保護膜コーティングを実施する。また、鋼板表面の保護のために輸送及び顧客の使用時まで巻取コイルを包装して運搬する。しかし、高温多湿な地域環境での長期間輸送及び保管時、包装されたコイル内におけるめっき層の酸化により変色が頻繁に起こる。このような現象は、制限された酸素及び水分の雰囲気で亜鉛めっき層の局部的なガルバニック酸化により黄変や黒変現象が現れるものとして知られている。
【0004】
このような酸化変色の問題を解決するための方法として、厚膜の保護膜コーティングをするか、二層コーティングをする方法がある。前者の場合、目的を達成することはできるが、電気電子分野で要求される電磁波遮蔽性を確保するための表面の電気導電性を確保することが難しいという問題が生じる。後者の方法は、下塗り及び上塗りコーティングからなり、表面の電気導電性を確保するための精密な薄膜コーティング工程だけでなく、二層コーティングが可能な設備を備える必要があるという問題がある。
【0005】
一方、有機/無機複合樹脂コーティング鋼板は、主に電磁気パネル用に用いられるが、機器内部で発生する熱によるコーティング層の劣化によって変色が起こる場合が多い。このような場合、塗膜の性能が低下し、機器の外観が悪くなって、顧客の不満要因となる。一般的に、劣化による変色の原因となる芳香族環式化合物を使用しない組成物を使用する場合が多いが、効果的でないという問題がある。
【0006】
本発明では、設備の制約がなく、単一膜コーティングによってフェロセン誘導体を高分子樹脂に結合して塗膜に電気導電性を付与するだけでなく、亜鉛金属の酸化を防止し、水分などの腐食因子の浸透を効果的に防ぎ、高温多湿地域における酸化変色の問題を解決しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、家電用パネルに適用するために、表面コーティング層の電気導電性、耐腐食性及び加工性などの基本物性に優れるだけでなく、高温及び多湿環境下での酸素や水分などの腐食因子の浸透を効果的に防ぎ、めっき層の耐酸化性に優れ、また、電子機器から発生する熱による塗膜の変色を防ぐ有機/無機バインダー化合物と、溶液安定性及び作業性に優れたCarbodiimide硬化剤化合物及び耐食性に優れた添加剤からなる有機/無機複合コーティング組成物とその組成物からなる自己架橋型有機/無機複合コーティング鋼板に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、組成物の総重量に対し、高分子樹脂5~25重量%、シラン化合物4~20重量%、硬化剤3~10重量%、及びフェロセン化合物0.1~2重量%を含む亜鉛めっき鋼板の表面コーティング用有機/無機複合樹脂組成物が提供される。
【0009】
上記フェロセン化合物は、フェロセン(Ferrocene)、ビニルフェロセン(Vinylferrocene)、フェロセニルグリシジルエーテル(Ferrocenyl glycidyl ether)、ビニルフェロセニルグリシジルエーテル(Vinyl ferrocenyl glycidyl ether)、フェロセニルメチルメタクリレート(Ferrocenylmethyl methacrylate)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルフェロセンカルボキシレート(2-(methacryloyloxy)ethyl ferrocenecarboxylate))、及び2-(アクリロイルオキシ)エチルフェロセンカルボキシレート(2-(acryloyloxy)ethyl ferrocenecarboxylate)からなる群から選択される単独または2種以上の組み合わせであることができる。
【0010】
上記高分子樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエポキシ樹脂からなる群から選択される単独または2種以上の組み合わせであることができ、ガラス転移温度(Tg)が-30~10℃であり、数平均分子量が20,000~100,000であることができる。
【0011】
上記硬化剤は、カルボジイミド化合物であることができる。
【0012】
上記有機/無機複合樹脂組成物は、フッ化金属化合物2~10重量%をさらに含み、上記フッ化金属化合物は、HPF6、H2TiF6、H2ZrF6、H2SiF6、MPF6、M2TiF6、M2ZrF6またはM2SiF6(M=Li、NaまたはK)であることができる。
【0013】
上記有機/無機複合樹脂組成物は、有機金属酸化物、分散剤またはワックスをさらに含むことができる。
【0014】
本発明の他の実施形態によると、上記有機/無機複合樹脂組成物が塗布されて形成されたコーティング層を含み、上記コーティング層の乾燥厚さは0.1~1.0μmである亜鉛めっき鋼板が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、亜鉛めっき鋼板にフェロセン化合物と結合された高分子を含む自己架橋型有機/無機複合コーティング層を形成して塗膜の電気導電性が向上し、耐腐食性、加工部の耐黒化性、高温高湿雰囲気での耐酸化性及び耐熱性に優れた亜鉛めっき鋼板を提供する。
【0016】
また、本発明の有機/無機複合コーティング組成物は、有機バインダーと硬化剤、無機バインダー化合物の自己架橋反応による二重硬化メカニズムにより硬化温度が低いのみならず、塗膜の硬度が高くて極薄コーティング時にも加工性に優れる。これにより、巻取コイル状態で長期輸送が可能であり、高温高湿環境での長期保管時にもめっき層の耐酸化性に優れた複合コーティング鋼板を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の複合コーティング鋼板のコーティング層の概念図であり、(a)は比較例、(b)は実施例である。
【
図2】複合コーティング鋼板の耐腐食性の評価結果を示したものである。
【
図3】複合コーティング鋼板の加工部の耐黒化性評価用の標準板を示したものである。
【
図4】複合コーティング鋼板の加工部の耐黒化性の評価結果を示したものである。
【
図5】複合コーティング鋼板の耐熱性の評価結果を示したものである。
【
図6】複合コーティング鋼板の高温高湿性を評価するために積層されたコーティング鋼板を示した模式図である。
【
図7】複合コーティング鋼板の高温高湿性の評価結果を示したものである。
【
図8】複合コーティング鋼板の耐アルカリ性の評価結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
家電機器のパネル用亜鉛めっき鋼板は、従来よりクロメート化成処理したコーティング層に高分子樹脂コーティングをすることで耐腐食性及び機能性を確保した。しかし、殆どの場合において、高分子樹脂コーティングを介して亜鉛めっき鋼板の特性を確保したため、クロメート化合物の環境有害性によって、それに相応する品質特性を得るに至らないという問題があった。特に、耐腐食性は、塗膜の遮蔽(Barrier)効果及び自己治療(self-healing)メカニズムによって得られるが、クロメート塗膜は、高分子樹脂塗膜に比べて優れた性質を有するという利点がある。通常の方法としては、優れた耐腐食性を確保するために、高分子樹脂コーティング量を高める方法を導入したが、表面の不十分な電気導電性によって家電機器の電磁波遮蔽性に問題があった。また、プレス加工性を向上させるために、高分子樹脂の含有量を増やすか、ガラス転移温度(Tg)が高い高分子を使用する場合、表面硬度が向上して潤滑性は確保されるが、その他の特性を満足させることが難しい。
【0020】
これを改善するために、本発明では、有機バインダー化合物の硬化反応と、無機バインダー化合物の自己架橋型(self-crosslinking)反応を利用した二重硬化(dual curing)システムを導入した。加工性を向上させるためには、柔軟性に優れたTgが低い高分子樹脂を使用するが、プレス加工時の塗膜のずれ現象により加工黒化性に劣るという問題が生じる。このような問題点を改善するためにTgが低い有機系高分子樹脂とイミン化合物間の硬化反応と加水分解されたシランなどの架橋反応が可能な無機系化合物を導入して有機/無機バインダーシステムを製作する方法で加工性を向上させた。すなわち、Tgが低い高分子樹脂とイミン硬化剤間の硬化反応によって塗膜の柔軟性(flexibility)を確保し、無機系シラン化合物の架橋反応を介して塗膜の表面硬度の向上を同時に確保することで、加工性、耐化学性、及びコーティング層の緻密性を確保した。
【0021】
本発明の一実施形態によると、高分子樹脂、シラン化合物、硬化剤、及びフェロセン化合物を含む亜鉛めっき鋼板の表面コーティング用の有機/無機複合コーティング組成物が提供される。上記有機/無機複合コーティング組成物は、フッ化金属化合物、有機金属酸化物、分散剤、ワックスをさらに含むことができる。
【0022】
上記一実施形態において、高分子樹脂としては、特に制限されるものではないが、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエポキシ樹脂からなる群から選択される単独または2種以上を組み合わせて用いることができ、ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
高分子樹脂は、有機/無機複合コーティング組成物の総重量に対し、5~25重量%含まれることができる。上記高分子樹脂の含有量が5重量%未満であると、シランの含有量が比較的多くなって加工に必要な延性を得ることができず、25重量%を超えると、加工性は優れるが、耐熱性及び高温高湿な環境における耐腐食性が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0024】
上記高分子樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が-30~10℃である高分子樹脂が用いられることができる。上記高分子樹脂のガラス転移温度が-30℃未満であると、コーティング塗膜の硬度が非常に低くなって加工性が悪く、ガラス転移温度が10℃を超えると、シラン化合物との二重硬化反応によって塗膜の硬度が高くなり、割れが生じやすいという問題がある。
【0025】
また、上記高分子樹脂は数平均分子量が20,000~100,000であることが好ましい。上記数平均分子量が20,000未満であると、塗膜の硬化度が高くなって加工性が悪くなるという問題があり、数平均分子量が100,000を超えると、塗膜が割れが生じやすいだけでなく、溶液安定性が悪くなるという問題がある。
【0026】
上記一実施形態において、無機系バインダーとしては、シラン化合物及び/またはその加水分解化合物が用いられる。ここで、シラン化合物の加水分解化合物とは、シラン化合物を加水分解して得られた化合物または縮合反応によってシロキサン結合を形成して得られたオリゴマー(Oligomer)を意味する。
【0027】
上記シラン化合物は、有機/無機複合コーティング組成物の総重量に対し、4~20重量%含まれることができる。このとき、シラン化合物の含有量が4重量%未満であると、耐食性、加工性向上の効果が不足し、20重量%を超えると、溶液安定性が低下し、樹脂組成物の製造が困難であるという問題がある。
【0028】
シラン化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、3-Aminopropyltrithoxysilane、3-Glycidoxypropyltrimethoxysilane、3-Methaglycodoxypropyltrimethoxysilane、N-(1,3-Dimethylbutylidene)-3-(triethoxysilyl)-1-propylamine、N,N-Bis[3-(trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine、N-β(aminoethyl)-γ-aminopropyltrimethoxysilane、N-β(aminoethyl)-γ-aminopropyltriethoxysilane、N-β(aminoethyl)-γ-aminopropylmethyltriethoxysilane、N-(β-aminoethyl)-γ-aminopropyltrimethoxysilane、γ-Glycidoxypropyltriethoxysilane、γ-Glycidoxypropyltrimethoxysilane、2-(3,4-Epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane、γ-Methacryloxypropyltrimethoxysilane、γ-Methacryloxypropyltrimethoxysilane、N-[2-(Vinylbenzylamino)ethyl]-3-aminopropyltrimethoxysilane、n-decyltriethoxysilane、2-(methoxy(polyethyleneoxy)propyl)trimethoxysilane、7-octenyltrimethoxysilane、2-(N-allylamino)propyl trimethoxysilane、Bis-[(3-methyldimethoxysilyl)propyl]polypropylene oxide、1,9-Bis(trimethoxysilyl)nonane、Bis(triethoxysilyl)octane、Bis[(3-triethoxysilyl)propyl]urea、Di-s-Buthoxyaluminoxy Triethoxysilane、(N,N’-Diethyl-3-aminopropyl)trimethoxysilane、Dodesylmethyldiethoxysilane、2-(Diphenylphosphino)ethyl Triethoxysilane、Dodesyltriethoxysilane、5,6-Epoxyhexyltriethoxysilane、(3-Glycidoxypropyl)trimethoxysilane、(3-Glycidoxypropyl)triethoxysilane、(Heptadecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrodecyl)triethoxysilane、Hexadecyltrimethoxysilane、Hexyltrimethoxysilane、Methacryloxypropyl Triethoxysilane、n-Octadecyltriethoxysilane、n-Octadecyltrimethoxysilane、n-Octyltriethoxysilane、n-Octyltrimethoxysilane、(Tridecafluoro-1,1,2,2-tetrahydrooctyl)triethoxysilane、triethoxysilylpropyl)gluconamide、N-(triethoxysilylpropyl-o-polyethylene oxide urethane、Ureidopropyltriethoxysilane、Ureidopropyltrimethoxysilane及びo-(Vinyloxymethyl)-N-(triethoxysilylpropyl)urethaneからなる群から単独または2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0029】
シラン化合物などの無機系化合物の使用によって、コーティング層は熱的安定性に優れ、コーティング塗膜の劣化による変色を防ぎ、耐熱性に優れるという利点がある。また、高分子樹脂塗膜は通常、多孔質(Porous)であるため、空気や水分などの腐食因子の浸透を完全に防ぐことが難しいという問題がある。これを解決する上で、シラン化合物の緻密な架橋結合の特性は、高分子との組み合わせにより腐食因子の移動経路を遮断する効果がある。したがって、高温高湿の熱帯地方での巻取コイルの長期輸送や保管時に問題となる表面酸化による変色現象を防ぐことができる。
【0030】
上記一実施形態において、硬化剤としては溶液安定性及び作業性に優れたカルボジイミド(carbodiimide)の化合物を用いることができる。一般的に、鋼板は高温での加工時に熱硬化現象により降伏強度が上昇してプレス加工が難しくなるという問題があり、通常、高分子樹脂コーティング鋼板は、170℃以上で乾燥及び硬化を介して塗膜を形成する。このとき、一般的には降伏強度(Yp)が5%以上上昇して鋼板のプレス加工時に多くの影響を及ぼす。しかし、カルボジイミド化合物を用いると、高分子樹脂のカルボキシ基との反応を介してウレア結合を形成し、架橋結合を形成することができる。これは、常温または低い温度での速い硬化反応を可能とし、溶液安定性及び作業性に優れるという利点がある。
【0031】
上記カルボジイミド化合物は、有機/無機複合コーティング組成物の総重量に対し、3~10重量%含まれることができる。このとき、カルボジイミド化合物の含有量が3重量%未満であると、耐食性、加工性向上の効果が不足し、10重量%を超えると、硬化反応が完全でないため、耐化学性などの塗膜の物性が悪くなって好ましくない。
【0032】
カルボジイミド化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、N,N’-Diisopropylcarbodiimide、1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide、Bis(trimethylsilyl)carbodiimide、Dicyclohexylcarbodiimide、Bis(o-methoxyphenyl)carbodiimide、Diphenylcarbodiimide、N-(3-Dimethylaminopropyl)-N’-ethylcarbonate、Bis(2,6-diisopropylphenyl)carbodiimideまたは商品名SiliaBond(登録商法)Carbodiimide(SiliCycle Inc.)からなる群から単独または2種以上の組み合わせとして用いることができる。
【0033】
上記一実施形態において、フェロセン化合物は、複合コーティング組成物の電気導電性を向上させるために添加されるものであって、複合コーティング組成物の硬化反応時に高分子樹脂の官能基と反応して高分子ネットワークに結合することで塗膜の電気導電性を付与する。
【0034】
上記フェロセン化合物は、熱的に安定し、電子供与体として作用して塗膜に電子移動チャンネルを形成するため、塗膜の厚さが増加しても通常の塗膜とは異なり、電気導電性が発現され、また、亜鉛塗膜の酸化を防ぐ役割を果たすことができる。
【0035】
フェロセン化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、下記化学式1で表されるように、Ferrocene(a)、Vinylferrocene(b)、Ferrocenyl glycidyl ether(c)、Vinyl ferrocenyl glycidyl ether(d)、Ferrocenylmethyl methacrylate(e)、2-(methacryloyloxy)ethyl ferrocenecarboxylate)(f)、2-(acryloyloxy)ethyl ferrocenecarboxylate(g)からなる群から単独または2種以上の組み合わせを用いることができる。
【化1】
【0036】
フェロセン化合物は、有機/無機複合コーティング組成物の総重量に対し、0.1~2重量%含まれることができ、フェロセン化合物の含有量が0.1重量%未満であると、高分子樹脂官能基との反応が少ないため、電気導電性向上の効果が低い。一方、フェロセン化合物の含有量が2重量%を超えると、塗膜の色に影響を及ぼすため、好ましくない。
【0037】
上記複合コーティング組成物の耐腐食性を向上させるためにフッ化金属化合物をさらに含むことができ、上記フッ化金属化合物としては、HPF6、H2TiF6、H2ZrF6、H2SiF6、MPF6、M2TiF6、M2ZrF6、M2SiF6(M=Li、Na、K)などを用いることができる。
【0038】
上記フッ化金属化合物は、上記一実施形態の複合コーティング組成物と鋼板との結合、または高分子樹脂との反応で耐腐食性を強化する役割を果たし、有機/無機複合コーティング組成物の総重量に対し、2~10重量%含まれることができる。フッ化金属化合物の含有量が2重量%未満であると、高分子樹脂の官能基との反応が低下して耐食性向上の効果が低く、10重量%を超えると、高分子樹脂組成物の自体反応を促進して、もつれ現象が発生し、これにより、溶液安定性が悪くなって塗膜密着性を実現することが難しい。
【0039】
上記一実施形態の樹脂組成物は、有機金属酸化物、分散剤、ワックスなどを選択的にさらに含むことができる。
【0040】
有機金属酸化物は、シラン化合物の結合力を向上させる触媒としての役割を果たし、キレート化合物を形成して耐食性を向上させるだけでなく、金属成分の含有による溶接性向上の効果がある。
【0041】
上記有機金属酸化物としては、有機チタン酸塩(titanate)または有機ジルコン酸塩(zirconate)から選択された1種以上を用いることができ、複合コーティング組成物の総重量に対して2重量%以下添加されることが好ましい。これは、有機金属酸化物の含有量が2重量%を超えて添加されてもシリカの結合力向上の効果及び耐食性向上の効果が僅かであるのに対し、樹脂組成物溶液のゲル化が発生することがあり、原価が大きく上昇するためである。
【0042】
複合コーティング組成物溶液の濡れ(wetting)性及び非晶質シリカの分散性を向上させるために、分散剤を含むことができる。上記分散剤は、シロキサン(Polyether modified polydimethylsiloxane)化合物またはエステル(Hydro functional carboxylic acid ester)化合物から選択された1種以上であることができる。
【0043】
上記分散剤は、複合コーティング組成物の総重量に対して2重量%以下添加され、分散剤の含有量が2重量%を超えると、溶液の濡れ性が過度に増加してコーティング層形成時に付着量の調節が困難である場合がある。
【0044】
一方、複合コーティング被覆鋼板のプレス加工中にコーティング層の脱膜を防止するためにワックスを添加することができ、上記ワックスは、表面改質されたポリエチレンまたはフッ素系ポリエチレンワックスであり、複合コーティング組成物の総重量に対して2重量%以下添加される。これはワックスが2重量%を超えて添加されても摩擦力低下の効果が僅かであるだけでなく、ワックス成分がコーティング層の乾燥中に表面に溶出して腐食因子が浸透し易くなり、耐食性の低下を招く可能性があるためである。また、上記ワックスは、コーティング層の形成後、潤滑性付与及び複合コーティング組成物の溶液の製造時における作業の便宜性の側面から、融点が100度以上であるものを用いることが好ましい。
【0045】
本発明の他の実施形態によると、亜鉛めっき鋼板上に上記複合コーティング組成物を塗布して形成されたコーティング層を含む複合コーティング鋼板が提供される。
【0046】
複合コーティング組成物は、500~1,500mg/m2の付着量で塗布され、150℃温度で乾燥してコーティング層を形成する。乾燥皮膜の厚さは、0.1~1.0μmであり、フェロセン化合物の電子供与特性によってコーティング層に電子移動チャンネルを形成して電気導電性が向上された鋼板を得ることができる。
【実施例】
【0047】
(実施例)
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0048】
「めっき鋼板の製造」
電気めっきを介して冷延鋼板上に亜鉛付着量が20g/m2である亜鉛めっき層を形成した。
【0049】
「実施例1~実施例36」
複合コーティング組成物の製造において、主剤化合物としてガラス転移温度が-28℃であり、数平均分子量が50,000であるポリウレタンエマルジョン樹脂と、加水分解されたUreidopropyltriethoxysilane、硬化剤としてCarbodiimide化合物(SiliaBond(登録商標) Carbodiimide、SiliCycle Inc.)、添加剤としてフッ化チタン化合物とフェロセン化合物(Vinyl Ferrocene、Aldrich Chemical Co.)、ポリシロキサン系分散剤及び表面改質されたポリエチレンワックス(PE WAX)と残部の純水を表1のような組成で順に投入し、24時間の間熟成してpHが5±0.5である有機/無機複合コーティング組成物を製造した。
【0050】
その後、製造された上記組成物をロールコーターを用いて上記亜鉛めっき鋼板上に塗布し、鋼板温度が150℃になるように焼付乾燥してコーティング層の付着量が0.5~1.5g/m2であるコーティング鋼板を製造した。
【0051】
【0052】
「比較例1~比較例8」
複合コーティング組成物の製造において、下記表2の組成で順に投入し、24時間の間熟成して有機/無機複合コーティング組成物を製造した。比較例の組成物には、添加剤として有機チタン化合物及びシリカゾルを用いた。
【0053】
その後、製造された上記組成物をロールコーターを用いて上記亜鉛めっき鋼板上に塗布し、鋼板温度が180℃になるように焼付乾燥してコーティング層の付着量が1.0g/m2であるコーティング鋼板を製造した。
【0054】
【0055】
「実験例」
コーティング鋼板の品質評価としては、溶液安定性、耐腐食性、加工黒化性、耐化学性、電気導電性、耐熱性、高温高湿性などのクロム-フリー耐指紋鋼板に必要な物性を評価し、各物性は下記方式で測定した。
【0056】
1.溶液安定性
複合コーティング組成物溶液の溶液安定性を測定するために、上記溶液の製造直後、それぞれ初期粘度(ηi)を測定する。50℃温度のオーブンで5日間放置した後、常温に冷却し、常温で10日間攪拌した後、粘度(ηf)を測定し、その変化値を求めて評価基準に基づいて評価した。溶液安定性の評価結果を表3及び表4に示した。
Dη=(ηf-ηi)/ηi×100(%)
【0057】
<評価基準>
◎:Dηが1.5%未満であるか、目視観察時にゲル化現象が見えない
○:Dηが1.5~3%未満であるか、目視観察時にゲル化現象が見えない
△:Dηが3~5%未満であるか、目視観察時にゲル化現象が見えない
×:Dηが5%以上であるか、目視観察時にゲル化現象が見える
【0058】
2.固形分の評価
複合コーティング組成物溶液1gを採取し、150℃の温度で30分間放置した後、常温に冷却してから重さを測定して百分率で示した。固形分の評価結果を表3及び表4に示した。
【0059】
3.耐腐食性
平板部の耐腐食性は、複合コーティング鋼板を用いて70mm×150mm(横×縦)の大きさで試験片を製造し、上記試験片に5%の塩水濃度及び35℃の温度を有する塩水を1kg/cm
2の噴霧圧で均一に噴射した後、鋼板の表面に5%面積の白錆が発生するまでの時間を測定した。また、加工部の耐腐食性は、試験片をエリクセン7mm加工後に上記方法で評価した。耐腐食性の評価結果を表3、表4及び
図2に示した。
【0060】
<評価基準>
◎:平板部96時間及び加工部72時間以上の場合
○:平板部72時間以上96時間未満、加工部48時間以上72時間未満の場合
△:平板部48時間以上72時間未満、加工部24時間以上48時間未満の場合
×:平板部48時間未満、または加工部24時間未満の場合
【0061】
4.加工部の耐黒化性
複合コーティング鋼板を用いて70mm×70mm(横×縦)の大きさで試験片を製造し、上記試験片に無塗油のローラを0.25kgf/mm
2の圧力で30回往復させた後、加工部の変色程度を目視観察し、
図3の評価用標準板と比較して評価した。加工部の耐黒化性の評価結果を表3、表4及び
図4に示した。
【0062】
<評価基準>
◎:加工部の変色程度が0レベル~1レベルの場合
○:加工部の変色程度が1レベル超過2レベル未満の場合
△:加工部の変色程度が2レベル超過3レベル未満の場合
×:加工部の変色程度が3レベル超過4レベル未満の場合
【0063】
5.耐溶剤性
複合コーティング鋼板を用いて70mm×150mm(横×縦)の大きさで試験片を製造し、上記試験片をMEK(methylethylketone)試薬に浸した綿ガーゼで1Kg荷重で往復10回こすった後、元の板と比較して色差(ΔE)を測定した。耐溶剤性の評価結果を表3及び表4に示した。
【0064】
<評価基準>
◎:色差が0~0.50の場合
○:色差が0.50超過1.0以下の場合
△:色差が1.0超過1.5以下の場合
×:色差が1.5超過の場合
【0065】
6.表面の電気導電性
複合コーティング鋼板を用いて300mm×300mm(横×縦)の大きさで試験片を製造し、上記試験片の10個所で4-probe Loresta-GP(三菱社(製))接触抵抗機器を用いて表面抵抗を10回測定した。測定された結果を下記評価基準に基づいて評価し、その結果を表3及び表4に示した。
【0066】
<評価基準>
◎:基準抵抗値である0.1mΩ以下が10回の場合
○:基準抵抗値である0.1mΩ以下が8~9回の場合
△:基準抵抗値である0.1mΩ以下が6~7回の場合
×:基準抵抗値である0.1mΩ以下が6回未満の場合
【0067】
7.耐熱性
複合コーティング鋼板を用いて70mm×70mm(横×縦)の大きさで試験片を製造し、上記試験片を温度250℃の乾燥オーブンで1時間放置した後冷却し、元の板と比較して色差(ΔE)を測定した。測定された色差を下記評価基準に基づいて評価し、その結果を表3、表4及び
図5に示した。
【0068】
<評価基準>
◎:色差(ΔE)が7未満の場合
○:色差(ΔE)が7以上9未満の場合
△:色差(ΔE)が9以上12未満の場合
×:色差(ΔE)が12以上の場合
【0069】
8.高温高湿性
高温高湿性の評価は、巻取ったコイルの状態を模写するために、
図6のようにコーティング鋼板を積層し、包装紙で密閉包装した後、コイルの巻取圧力と同様の圧力で加圧して評価した。複合コーティング鋼板を用いて70mm×70mm(横×縦)の大きさで試験片を製造し、上記試験片10枚をコーティング面が互いに対向するように積層し、輸出用コイル包装紙で密閉包装した後、1トンの圧力で加圧して恒温恒湿(65℃、95%相対湿度条件)条件で192hrの間放置し、元の板と比較して平均色差(ΔE)を測定した。測定された色差を下記評価基準に基づいて評価し、その結果を表3、表4及び
図7に示した。
【0070】
<評価基準>
◎:平均色差(ΔE)が1.5未満の場合
○:平均色差(ΔE)が1.5以上2未満の場合
△:平均色差(ΔE)が2以上3未満の場合
×:平均色差(ΔE)が3以上の場合
【0071】
9.耐アルカリ性
耐アルカリ性の評価は、複合コーティング鋼板を用いて150mm×70mm(横×縦)の大きさで試験片を製造し、上記試験片を強アルカリ脱脂剤(メーカー:大韓パーカライジング(株))DP FC-L4460A及びDP FC-L4460Bを純粋1Lにそれぞれ20g、10g溶かし、温度60℃で2min浸漬した後、元の板と比較して平均色差(ΔE)を測定した。測定された色差を下記評価基準に基づいて評価し、その結果を表3、表4及び
図8に示す。
【0072】
<評価基準>
◎:平均色差(ΔE)が1.5未満の場合
○:平均色差(ΔE)が1.5以上2未満の場合
△:平均色差(ΔE)が2以上2.5未満の場合
×:平均色差(ΔE)が3以上の場合
【0073】
10.降伏強度
降伏強度は、引張試験機を用い、試験片を10mm/minの速度で引張して0.2%降伏点での引張強度値を用いた。コーティング鋼板の製造後の降伏強度の変化値(Δyp、Mpa)は、複合樹脂コーティング前後の降伏強度の差であり、測定された降伏強度の変化値を表3及び表4に示した。
【0074】
【0075】
【0076】
実施例1~36は、ポリウレタンエマルジョン樹脂、Ureidopropyltriethoxysilane、Carbodiimide硬化剤、フッ化チタン、Vinyl Ferroceneを適正範囲で含む複合コーティング組成物であって、組成物溶液の溶液安定性に優れ、固形分含有量が比較例よりも多いという効果がある。
【0077】
また、実施例1~36の組成物を亜鉛めっき鋼板上に塗布してコーティング層を形成した場合、二重硬化反応により加工性に優れるだけでなく、表面耐摩耗性が改善されて加工後の表面黒化現象が顕著に改善した。また、無機系であるシラン化合物の架橋反応により、耐熱性、高温高湿性が向上し、巻取コイルの長期輸送、高温高湿環境での長期保管時にもめっき層の酸化を防ぐことができ、フェロセン化合物を添加することで電気導電性が向上し、亜鉛めっき層の耐酸化変色性が改善する効果がある。
【0078】
一方、比較例1~8の場合、シラン化合物を含まないため、二重硬化反応が起こらない。したがって、耐腐食性、加工部の耐黒化性が著しく低下し、耐熱性、高温高湿性、耐アルカリ性の評価において実施例1~36に比べて色差が大きいことが確認できる。また、フェロセン化合物を含まないため、コーティング層の電気導電性が低い。
【0079】
コーティング鋼板の降伏強度評価では、実施例1~36の場合、比較的低い150℃の温度で硬化し、降伏強度変化は3Mpa以下と測定された。これは、降伏強度変化が10Mpa以上である比較例1~8に比べて優れた結果であり、プレス成形性に優れることを示すものである。