(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 45/04 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
F04B45/04 D
(21)【出願番号】P 2018224701
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000121833
【氏名又は名称】応研精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 晃
(72)【発明者】
【氏名】板原 一毅
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-180171(JP,A)
【文献】特開2003-074724(JP,A)
【文献】特開2012-002339(JP,A)
【文献】国際公開第2016/153004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/00-47/14
F16K 7/12、15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングの中に設けられたダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムのポンプ部と前記ポンプハウジングとによって形成されたポンプ室と、
前記ポンプ室が拡張することにより流体が前記ポンプ室に向けて流れる吸入通路と、
前記ポンプ室が収縮することにより前記ポンプ室から吐出された流体が流れる吐出通路と、
前記吸入通路内より前記ポンプ室内の圧力が低い場合に前記吸入通路を開きかつ前記吸入通路内より前記ポンプ室内の圧力が高い場合に前記吸入通路を閉じる吸入弁と、
前記吐出通路内より前記ポンプ室内の圧力が高い場合に前記吐出通路を開きかつ前記吐出通路内より前記ポンプ室内の圧力が低い場合に前記吐出通路を閉じる吐出弁とを備え、
前記吸入弁と前記吐出弁とのうち少なくとも一方の弁は、弾性材によって形成されているとともに、
円柱状に形成された軸と、前記軸の一端部に一体に形成されて前記軸の軸線とは直交する方向に延びる板状の弁体とを備え、
前記ポンプハウジングは、
前記軸の他端部が
嵌合する非貫通孔からなる軸孔が開口しかつ前記吸入通路または前記吐出通路が開口するシート面を有する第1のハウジング部材と、
前記軸孔に
前記他端部が挿入
されて前記軸孔の内側底面に他端面が当接した前記軸の前記一端部を
前記他端部に向けて押し、前記軸を前記第1のハウジング部材と協働して挟持する第2のハウジング部材とを備え、
前記軸の一端部には、前記第2のハウジング部材に向けて突出する突起が設けられ、
前記弁体は、前記軸が前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材とに挟まれることにより前記シート面に密着するものであることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤフラムポンプにおいて、
前記突起は、断面山形状の突条であって、前記軸の軸線方向から見て円環状に形成されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
請求項1記載のダイヤフラムポンプにおいて、
前記突起は、山形状に形成されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性材によって形成されたアンブレラ弁を有するダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
アンブレラ弁を備えた従来のダイヤフラムポンプとしては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているものがある。
特許文献1に開示されたダイヤフラムポンプは、アンブレラ弁からなる吸入弁を備えている。この吸入弁を
図7を参照して説明する、
図7に示す吸入弁1は、ハウジング部材2の貫通孔3に軸4を通して取付けられており、ハウジング部材2に形成された吸入通路5を開閉する。ハウジング部材2は、ダイヤフラム6のポンプ部7と協働してポンプ室8を形成するものである。
【0003】
吸入弁1は、貫通孔3に挿入された軸4と、ポンプ室8内に位置する軸4の一端部に設けられた板状の弁体9とによって形成されている。
図7に示す軸4の他端部には、貫通孔3の孔径より大径なストッパー4aと、このストッパー4aから長手方向に突出する摘み部4bとが設けられている。軸4の摘み部4bは、吸入弁1がハウジング部材2に組み込まれる以前は
図8に示すようにストッパー4aが軸4の中間部に位置するように長く形成されており、吸入弁1がハウジング部材2に組み込まれた後に
図7に示すようにストッパー4aの近傍で切断される。
【0004】
吸入弁1は、軸4を貫通孔3に通し、ストッパー4aがハウジング部材2から突出するように摘み部4bを摘んで引っ張ることによって、ハウジング部材2に取付けられる。ハウジング部材2に取付けられた状態では軸4が弁体9とストッパー4aとを引っ張り、弁体9が所定の押付け力でハウジング部材2のシート面2aに押し付けられるようになる。
図7は、吸入弁1が開いた状態で描いてある。
【0005】
特許文献2に記載されたアンブレラ弁は、板状の弁体が軸の軸線方向の中央部に設けられており、2枚のハウジング部材の間に配置されている。このアンブレラ弁の軸の一端部は、一方のハウジング部材の軸孔に嵌合し、他端部は、他方のハウジング部材の軸孔に嵌合している。このアンブレラ弁は、軸の両端部がそれぞれ軸孔に嵌合した状態で弁体が一方のハウジング部材のシート面に密着するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-112127号公報
【文献】特開2013-192639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたアンブレラ弁を使用したダイヤフラムポンプにおいては、アンブレラ弁の摘み部4bが原因でコストダウンと小型化とを両立することが難しいという問題があった。すなわち、アンブレラ弁をハウジング部材2に組付けた後に摘み部4bを切断すると、切断作業が増えてコストアップになってしまう。摘み部4bを切断することなく残す構成を採ると、他の部品を摘み部4bとの干渉を避けるために最適な位置に配置できなくなり、ダイヤフラムポンプが大型化してしまう。
【0008】
特許文献2に開示されたアンブレラ弁は、摘み部4bを必要としないためにコストダウンと小型化とを実現し易い。しかし、このアンブレラ弁では、軸やハウジング部材の軸孔dの製造誤差により軸の軸線方向における弁体の位置が一定になり難く、シール面の位置の精度が低くなるという問題があった。このため、弁体をシート面に押し付ける力が一定にならず、品質がばらついてしまう。
【0009】
本発明の目的は、シール面の位置の精度が高いアンブレラ弁を実現し、コストダウンと小型化とを図ることができるダイヤフラムポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係るダイヤフラムポンプは、ポンプハウジングの中に設けられたダイヤフラムと、前記ダイヤフラムのポンプ部と前記ポンプハウジングとによって形成されたポンプ室と、前記ポンプ室が拡張することにより流体が前記ポンプ室に向けて流れる吸入通路と、前記ポンプ室が収縮することにより前記ポンプ室から吐出された流体が流れる吐出通路と、前記吸入通路内より前記ポンプ室内の圧力が低い場合に前記吸入通路を開きかつ前記吸入通路内より前記ポンプ室内の圧力が高い場合に前記吸入通路を閉じる吸入弁と、前記吐出通路内より前記ポンプ室内の圧力が高い場合に前記吐出通路を開きかつ前記吐出通路内より前記ポンプ室内の圧力が低い場合に前記吐出通路を閉じる吐出弁とを備え、前記吸入弁と前記吐出弁とのうち少なくとも一方の弁は、弾性材によって形成されているとともに、軸と、前記軸の一端部に一体に形成されて前記軸の軸線とは直交する方向に延びる板状の弁体とを備え、前記ポンプハウジングは、前記軸の他端部が挿入される非貫通孔からなる軸孔が開口しかつ前記吸入通路または前記吐出通路が開口するシート面を有する第1のハウジング部材と、前記軸孔に挿入された前記軸の前記一端部を他端部に向けて押し、前記軸を前記第1のハウジング部材と協働して挟持する第2のハウジング部材とを備え、前記軸の一端部には、前記第2のハウジング部材に向けて突出する突起が設けられ、前記弁体は、前記軸が前記第1のハウジング部材と前記第2のハウジング部材とに挟まれることにより前記シート面に密着するものである。
【0011】
本発明は、前記ダイヤフラムポンプにおいて、前記突起は、断面山形状の突条であって、前記軸の軸線方向から見て円環状に形成されていてもよい。
【0012】
本発明は、前記ダイヤフラムポンプにおいて、前記突起は、山形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による弁は、軸が第1のハウジング部材と第2のハウジング部材とに挟まれて保持され、軸線方向に圧縮されることによって、弁体が所定の押し付け力でシート面に押し付けられる。このため、この弁によれば摘み部が不要になる。
軸が圧縮されるときは、突起が弾性変形する。軸が第1および第2のハウジング部材から受ける押圧力の大きさは、部品の公差の範囲で増減する。この押圧力が相対的に大きい場合は突起の弾性変形量が増え、この押圧力が相対的に小さい場合は突起の弾性変形量が少なくなる。このため、この弁においては、突起が弾性変形するから、弁体をシート面に押し付ける力を適度にすることが容易になる。このことは、弁体のシール面の位置の精度が高くなることを意味する。
したがって、本発明によれば、シール面の位置の精度が高いアンブレラ弁を実現し、コストダウンと小型化とを図ることが可能なダイヤフラムポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るダイヤフラムポンプの断面図である。
【
図7】従来のアンブレラ弁が設けられたダイヤフラムポンプの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るダイヤフラムポンプの一実施の形態を
図1~
図7を参照して詳細に説明する。
図1に示すダイヤフラムポンプ11は、
図1において最も下に位置するモータ12に取付けられ、このモータ12によって駆動されて動作する。この実施の形態によるダイヤフラムポンプ11は、空気を吸込んで吐出するポンプである。このダイヤフラムポンプ11に流れる流体は空気である。
このダイヤフラムポンプ11は、モータ12に固定された駆動部13と、この駆動部13に取付けられた弁部14とを備えている。
【0016】
<駆動部の構成>
駆動部13は、モータ12に固定された駆動部用ハウジング15と、このハウジング15の中に収容された駆動機構16とによって構成されている。
ハウジング15は、有底円筒状に形成されてモータ12に固定用ボルト17によって固定されている
駆動機構16は、モータ12の回転軸18に取付けられたクランク体19と、このクランク体19に駆動軸20を介して連結された駆動体21などを備えている。
【0017】
駆動軸20は、回転軸18に対して所定の方向に傾斜している。
駆動体21は、駆動軸20に回転自在に支持された円柱状の軸部22と、この軸部22から径方向の外側に突出する複数の腕部23とによって構成されている。
腕部23は、後述するダイヤフラム24のポンプ部25毎に設けられており、軸部22から放射状に径方向の外側へ延びている。
【0018】
腕部23には貫通穴23aが穿設されている。この貫通穴23aには、ダイヤフラム24の連結片26が係入されている。連結片26は、腕部23を貫通した状態で腕部23に固定されている。
この駆動機構16によれば、モータ12の回転軸18とともにクランク体19と駆動軸20とが回転することにより、駆動体21が揺動し、ダイヤフラム24のポンプ部25が収縮と拡張とを繰り返す。
【0019】
<弁部の構成>
弁部14は、上述した駆動部用ハウジング15の開口部分に取付けられたダイヤフラムホルダー31と、このダイヤフラムホルダー31との間に後述するダイヤフラム24が挟まれる状態でダイヤフラムホルダー31に取付けられたダイヤフラムハウジング32と、このダイヤフラムハウジング32に隔壁33を介して取付けられたカバー34などを備えている。ダイヤフラムホルダー31と、ダイヤフラムハウジング32と、カバー34は、モータ12の軸線方向から見て円形に形成されている。この実施の形態においては、ダイヤフラムホルダー31と、ダイヤフラムハウジング32と、カバー34と、上述した駆動部用ハウジング15とによって、本発明でいうポンプハウジング35が構成されている。
【0020】
<ダイヤフラムホルダーの説明>
ダイヤフラムホルダー31は、駆動部用ハウジング15に接続可能な円板状に形成され、
図2に示すように複数の貫通孔を有している。これらの貫通孔とは、後述するダイヤフラム24のポンプ部25が挿入されるポンプ部毎のシリンダ孔36と、後述する吸入弁37によって開閉される吸入孔38である。これらのシリンダ孔36と吸入孔38は、それぞれ駆動部用ハウジング15とダイヤフラムホルダー31とによって囲まれたハウジング内空間Sに開口している。
【0021】
吸入孔38は、ハウジング内空間Sと、ダイヤフラムホルダー31の中心部に形成された円形凹部39とを連通している。円形凹部39の中心部には非貫通孔からなる軸孔41が形成されている。この軸孔41には吸入弁37の軸42が嵌合している。吸入弁37の構成は後述する。円形凹部39の底面は平坦に形成され、シート面43を構成している。吸入孔38と軸孔41は、このシート面43に開口している。
【0022】
<ダイヤフラムの説明>
ダイヤフラム24は、ダイヤフラムホルダー31とダイヤフラムハウジング32とに挟まれて保持されている。また、ダイヤフラム24は、ダイヤフラムハウジング32に向けて開口する複数のカップ状のポンプ部25と、このポンプ部25よりダイヤフラムホルダー31の中心側に位置するポンプ部毎の第1の貫通孔44と、ダイヤフラムホルダー31の中心部に位置する第2の貫通孔45と、ポンプ部25よりダイヤフラムホルダー31の外周側に位置するポンプ部毎の板状の吐出弁46および貫通穴47などを有している。
【0023】
ポンプ部25は、ダイヤフラムホルダー31の周方向において、ダイヤフラム24を複数に分割する位置にそれぞれ設けられている。これらのポンプ部25は、ダイヤフラムホルダー31に形成されたシリンダ孔36の中に挿入されている。
ポンプ部25の開口部分は、ダイヤフラムハウジング32によって閉塞されている。
このポンプ部25とダイヤフラムハウジング32との間にポンプ室48が形成されている。
カップ状を呈するポンプ部25の底にはピストン49が設けられているとともに、ポンプ室48とは反対方向に向けて突出する連結片26が設けられている。この連結片26は、上述したように駆動機構16の駆動体21に連結されている。
【0024】
ダイヤフラムハウジング32におけるポンプ室48の壁を構成する部分には、吸入通路51の一部を構成する第1の溝52と、吐出通路53の一部を構成する第2の溝54とが形成されている。第1の溝52は、ポンプ室48からダイヤフラムハウジング32の中心側に向けて延びており、ダイヤフラム24の第1の貫通孔44に接続されている。
吸入通路51は、第1の溝52と、第1の貫通孔44と、ダイヤフラムホルダー31の吸入孔38および円形凹部39などによって形成されている。円形凹部39は、図示してはいないが、ポンプ室48毎に設けられている全ての吸入通路51に接続されている。
ハウジング内空間Sの空気は、ポンプ室48が拡張することにより後述する吸入弁37を開き、吸入通路51をポンプ室48に向けて流れる。
【0025】
第2の溝54は、ポンプ室48からダイヤフラム24の吐出弁46と対向する位置まで延びている。吐出弁46は、ダイヤフラムハウジング32の外周部で第2の溝54の一端部(下流側端部)を閉じるように形成されている。
吐出弁46は、ダイヤフラム24の貫通穴47内(吐出通路53内)よりポンプ室48内の圧力が高い場合に吐出通路53を開く。また、吐出弁46は、吐出通路53内よりポンプ室48内の圧力が低い場合に吐出通路53を閉じる。
【0026】
ダイヤフラム24の貫通穴47は、ダイヤフラムハウジング32の通路孔55の一端部に接続されている。この通路孔55の他端部は、ダイヤフラムハウジング32と後述する隔壁33との間に形成された入力側空間56に接続されている。
隔壁33は、ダイヤフラムハウジング32とカバー34との間に挟まれて保持されている。また、隔壁33は、合成ゴムを含むゴム材料などの弾性材によって板状に形成され、ダイヤフラムハウジング32とカバー34との間を仕切っている。隔壁33とダイヤフラムハウジング32との間には入力側空間56が形成され、隔壁33とカバー34との間には出力側空間57が形成されている。
【0027】
出力側空間57は、入力側空間56とは隔壁33によって仕切られている。この出力側空間57は、カバー34の一側部(
図2においては左側部)に設けられている出口通路61と、カバー34の他側部に設けられている主排気通路62と、カバー34の中心部に設けられている副排気通路63とに図示していない連通路を介して接続されている。
隔壁33の一側部(
図2においては左側部)には、カバー34に向けて突出する筒状弁体64が設けられている。この筒状弁体64は、ダイヤフラムハウジング32の円柱65と協働して逆止弁66を構成するものである。
【0028】
この逆止弁166は、入力側空間56の空気を出力側空間57に流す。円柱65は、逆止弁66の弁座を構成している。筒状弁体64は、円筒65の外周面を覆う円筒状に形成されている。筒状弁体64の突出端は、円柱65の外周面に周方向の全域にわたって密着している。筒状弁体64の基端部は、円柱65より径が大きくなるように形成されている。この筒状弁体64と円柱65との間の空間は、入力側空間56の一部である。
【0029】
隔壁33には、後述する急排弁71の弁体72と、副排気通路63に接続された円形孔73とが設けられている。
急排弁71は、弁体72と、主排気通路62が開口する弁座74とによって構成されており、弁体72が入力側空間56と出力側空間57との圧力差で移動することにより、主排気通路62を開閉する。
円形孔73にはダイヤフラムハウジング32の柱状突起75が挿入されている。柱状突起75は、円形孔73の孔壁面とは微小な隙間を隔てて離間するように形成されている。このため、入力側空間56は、柱状突起75と円形孔73との間の微小な隙間と、カバー34の副排気通路63とを介して大気中に開放されている。
【0030】
<吸入弁の説明>
吸入弁37は、アンブレラ弁で、
図2および
図3に示すように、ダイヤフラムホルダー31の軸孔41に嵌合した軸42と、この軸42の一端部(ダイヤフラムハウジング32に近接する端部)に一体に形成された板状の弁体81とを備えている。
軸42は円柱状に形成され、弁体81は、軸42の軸線C(
図3参照)とは直交する方向に延びる板状に形成されている。この実施の形態による弁体81は、いわゆる傘状に形成されている。
【0031】
この吸入弁37は、合成ゴムを含むゴム材料などの弾性材によって形成されている。このため、軸42と弁体81とは一体に形成されている。
軸42の一端部には、
図3に示すように、ダイヤフラムハウジング32に向けて突出する突起82が設けられている。ダイヤフラムハウジング32における軸42と対向する部分には柱状体83が設けられている。この柱状体83は、円柱状に形成されており、ダイヤフラム24の第2の貫通孔45に通されて突起82に接触している。柱状体83の突起82と接触する先端面は平坦に形成されている。
【0032】
突起82を含めた軸42の全長は、このダイヤフラムポンプ11の完成状態における、ダイヤフラムホルダー31の軸孔41の底と、ダイヤフラムハウジング32の柱状体83の先端との間隔より僅かに長い。このため、柱状体83を有するダイヤフラムハウジング32は、軸孔41に挿入された軸42の一端部を他端部に向けて押し、軸42をダイヤフラムホルダー31と協働して挟持する。
この実施の形態においては、ダイヤフラムホルダー31が本発明でいう「第1のハウジング部材」に相当し、ダイヤフラムハウジング32が本発明でいう「第2のハウジング部材」に相当する。
【0033】
この実施の形態による突起82は、断面山形状の突条であって、
図5に示すように、軸42の軸線方向から見て円環状に形成されている。吸入弁37がダイヤフラムホルダー31とダイヤフラムハウジング32との間に組み込まれた状態においては、突起82の先端が柱状体83の先端面によって押され、突起82が座屈するように弾性変形する。
弁体81は、
図5に示すように、軸42の軸線方向から見て円形に形成されている。弁体81の外径は、ダイヤフラムホルダー31の円形凹部39の内径より小さい。
【0034】
この実施の形態による弁体81は、ダイヤフラムハウジング32に向けて凸になるとともに、球面の一部となるような湾曲した形状に形成されている。また、この弁体81は、軸42がダイヤフラムホルダー31とダイヤフラムハウジング32とに挟まれることにより所定の押圧力で円形凹部39のシート面43に密着する。弁体81がシート面43に密着することにより、吸入孔38の開口が閉じられ、吸入通路51が閉じられる。
吸入弁37は、吸入孔38(吸入通路51内)よりポンプ室48内の圧力が低い場合に吸入通路51を開く。また、吸入弁37は、吸入通路51内よりポンプ室48内の圧力が高い場合に吸入通路51を閉じる。
【0035】
<動作の説明>
このように構成されたダイヤフラムポンプ11において、ダイヤフラム24のポンプ部25が拡張する場合は、吸入弁37が開いてハウジング内空間Sの空気が吸入通路51を通ってポンプ室48に吸い込まれる。また、ダイヤフラム24のポンプ部25が収縮する場合は、吐出弁46が開き、ポンプ室48内の空気が入力側空間56に送られる。入力側空間56の圧力が上昇することにより急排弁71が閉じ、入力側空間56の空気が逆止弁66を通って出口通路61に供給される。
モータ12が停止すると、入力側空間56の空気が副排気通路63を通ってポンプ外に排出されているために、入力側空間56内の圧力が低下し、これに伴って急排弁71が開く。このように急排弁71が開くことにより、出力側空間57内の空気、すなわち出口通路61内の空気が主排気通路62を通ってポンプ外に排出される。
【0036】
このダイヤフラムポンプ11の吸入弁37においては、軸42がダイヤフラムホルダー31とダイヤフラムハウジング32とに挟まれて保持され、軸線方向に圧縮されることによって、弁体81が所定の押し付け力でシート面43に押し付けられる。このため、この吸入弁37によれば、従来のアンブレラ弁と較べると、摘み部を使用することなく組み付けることができるから、摘み部が不要になる。
【0037】
軸42が圧縮されるときは、突起82が弾性変形する。軸42がダイヤフラムホルダー31とダイヤフラムハウジング32とから受ける押圧力の大きさは、部品の公差の範囲で増減する。この押圧力が相対的に大きい場合は突起82の弾性変形量が増え、この押圧力が相対的に小さい場合は突起82の弾性変形量が少なくなる。
このため、この吸入弁37においては、各部品の寸法精度に公差があるにもかかわらず、弁体81をシート面43に押し付ける力を適度にすることが容易になる。このことは、弁体81のシール面の位置の精度が高くなることを意味する。
したがって、この実施の形態によれば、シール面の位置の精度が高いアンブレラ弁を実現でき、コストダウンと小型化とを図ることが可能なダイヤフラムポンプを提供することができる。
【0038】
この実施の形態による吸入弁37の突起82は、断面山形状の突条であって、軸42の軸線方向から見て円環状に形成されている。このため、ダイヤフラムハウジング32の柱状体83から受ける押圧力が円形の弁体81に伝わり易くなる。この結果、弁体81が周方向の全域において均等にシート面43に密着するようになるから、シール性能が高くなる。
【0039】
<突起の変形例>
突起は
図6に示すように形成することができる。
図6において、
図1~
図5によって説明したものと同等の部材には同一の符号を付し、この部材の詳細な説明は省略する。
図6に示す吸入弁37の突起91は、一つの山形状に形成され、軸42と同一軸線上に位置付けられている。この実施の形態による突起82は、円錐状に形成されている。
【0040】
このような山形状の突起82は、
図1~
図5に示したような環状の突条からなる突起82と較べて容易に弾性変形するものである。このため、
図6に示す突起91を用いることにより、柱状体83から受ける押圧力が相対的に小さい場合であっても突起91が弾性変形するから、弁体81のシール面の位置精度が高くなる。
【0041】
上述した実施の形態においては、吸入弁37に本発明を適用する例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはない。すなわち、本発明は、吐出弁に適用することができるし、吸入弁と吐出弁の両方に適用することもできる。
【符号の説明】
【0042】
11…ダイヤフラムポンプ、24…ダイヤフラム、25…ポンプ部、31…ダイヤフラムホルダー(第1のハウジング部材)、32…ダイヤフラムハウジング(第2のハウジング部材)、37…吸入弁、41…軸孔、42…軸、43…シート面、46…吐出弁、48…ポンプ室、51…吸入通路、53…吐出通路、81…弁体、82,91…突起。