(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】業務適合性判定システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/30 20120101AFI20230125BHJP
【FI】
G06Q50/30
(21)【出願番号】P 2019109890
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513302477
【氏名又は名称】エコナビスタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】清石 彩華
(72)【発明者】
【氏名】川又 大祐
(72)【発明者】
【氏名】冨田 岳陽
(72)【発明者】
【氏名】安田 輝訓
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-112853(JP,A)
【文献】特開2007-203913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の睡眠中の生体データから、予め定められた業務に対する当該被検者の業務適合性を判定する業務適合性判定システムにおいて、
被検者および当該被検者の業務に関与する人物の睡眠中の生体データを保持するデータベースと、
判定対象の生体データを取得する判定対象データ取得手段と、
前記データベースに保持されている生体データである保持データと前記判定対象データ取得手段により取得された生体データである取得データとを比較し、当該取得データが前記被検者の生体データか否かを判定する主体判定手段と、
前記被検者の生体データと判定された前記取得データに基づいて当該被検者の業務適合性を判定する業務適合性判定手段と、
を有することを特徴とする、業務適合性判定システム。
【請求項2】
前記データベースは、前記保持データとして前記被検者の過去の生体データを保持しており、
前記主体判定手段は、前記取得データと前記被検者の過去の生体データとを比較し、当該取得データおよび当該生体データの主体が同一と判断される場合に、当該取得データが当該被検者の生体データであると判定することを特徴とする、請求項1に記載の業務適合性判定システム。
【請求項3】
前記主体判定手段は、前記取得データと前記保持データとを比較して当該取得データと主体が同一と判断される保持データを特定し、特定された当該保持データの主体が前記被検者である場合に、当該取得データが当該被検者の生体データであると判定することを特徴とする、請求項1に記載の業務適合性判定システム。
【請求項4】
前記業務適合性判定手段は、前記被検者の生体データと判定された前記取得データから抽出される睡眠に関する情報が、予め定められた適合条件を満足する場合に、当該被検者は業務適合性を有すると判定し、当該情報が当該適合条件を満足しない場合に、当該被検者は業務適合性を欠くと判定することを特徴とする、請求項1に記載の業務適合性判定システム。
【請求項5】
前記主体判定手段および前記業務適合性判定手段の判定結果に応じて制御対象を制御し、当該主体判定手段により前記取得データが前記被検者の生体データではないと判定された場合に、当該制御対象を停止させる制御手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の業務適合性判定システム。
【請求項6】
被検者の睡眠中の生体データから、当該被検者が特定の属性を有するか否かを判定する属性判定システムにおいて、
被検者および当該被検者以外の人物の睡眠中の生体データを保持するデータベースと、
判定対象の生体データを取得する判定対象データ取得手段と、
前記データベースに保持されている生体データである保持データと前記判定対象データ取得手段により取得された生体データである取得データとを比較し、当該取得データが前記被検者の生体データか否かを判定する主体判定手段と、
前記被検者の生体データと判定された前記取得データに基づいて当該被検者が前記特定の属性を有するか否かを判定する属性判定手段と、
を有することを特徴とする、属性判定システム。
【請求項7】
被検者の睡眠中の生体データから、予め定められた業務に対する当該被検者の業務適合性を判定するコンピュータに、
被検者および当該被検者の業務に関与する人物の睡眠中の生体データを記憶手段に保持させる機能と、
判定対象の生体データを取得する機能と、
前記記憶手段に保持されている生体データである保持データと取得された前記判定対象の生体データである取得データとを比較し、当該取得データが前記被検者の生体データか否かを判定する機能と、
前記被検者の生体データと判定された前記取得データに基づいて当該被検者の業務適合性を判定する機能と、
を実現させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務適合性判定システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サーバが、睡眠データ(睡眠時の脈拍、呼吸、体動等)に基づいて、ユーザの睡眠が充分か否かを解析し、解析結果を車両に出力する安全運転管理システムが開示されている。このシステムでは、ユーザが睡眠不足である場合には、ユーザが運転できないよう車両を制御する。また、このシステムでは、睡眠データを取得する際に取得した睡眠時ユーザ識別情報(血圧、体重等)と、ユーザが車両に搭乗したときに取得した運転時ユーザ識別情報とに基づき、ユーザを識別する。
【0003】
特許文献2には、睡眠状態情報(利用者の脈拍、呼吸、体動等に基づいて演算された睡眠の質等に関する情報)と、運転状態情報とに基づいて、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す運転レベルマップを設定し、運転レベルマップに基づき、車両運転時に利用者に警告、アドバイスを行う安全運転支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-126376号公報
【文献】特開2010-122732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2の技術では、被検者の睡眠中の生体データに基づいて運転の可否を制御したり、運転時の警告やアドバイスを行ったりしている。これらの技術は、被検者自身の生体データを用いた判定が行われることを前提としており、被検者とは異なる人物のデータが用いられた場合は正確な判定を行うことができない。これは、運転業務に限らず、種々の業務に対する被検者の適合性の判定に関しても同様である。
【0006】
本発明は、睡眠中の生体データに基づいて被検者による業務適合性を判定するシステムにおいて、判定対象の生体データとして、被検者とは異なる人物のデータが用いられる不正を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被検者の睡眠中の生体データから、予め定められた業務に対する当該被検者の業務適合性を判定する業務適合性判定システムにおいて、被検者および当該被検者の業務に関与する人物の睡眠中の生体データを保持するデータベースと、判定対象の生体データを取得する判定対象データ取得手段と、前記データベースに保持されている生体データである保持データと前記判定対象データ取得手段により取得された生体データである取得データとを比較し、当該取得データが前記被検者の生体データか否かを判定する主体判定手段と、前記被検者の生体データと判定された前記取得データに基づいて当該被検者の業務適合性を判定する業務適合性判定手段と、を有することを特徴とする、業務適合性判定システムである。
請求項2に記載の発明は、前記データベースは、前記保持データとして前記被検者の過去の生体データを保持しており、前記主体判定手段は、前記取得データと前記被検者の過去の生体データとを比較し、当該取得データおよび当該生体データの主体が同一と判断される場合に、当該取得データが当該被検者の生体データであると判定することを特徴とする、請求項1に記載の業務適合性判定システムである。
請求項3に記載の発明は、前記主体判定手段は、前記取得データと前記保持データとを比較して当該取得データと主体が同一と判断される保持データを特定し、特定された当該保持データの主体が前記被検者である場合に、当該取得データが当該被検者の生体データであると判定することを特徴とする、請求項1に記載の業務適合性判定システムである。
請求項4に記載の発明は、前記業務適合性判定手段は、前記被検者の生体データと判定された前記取得データから抽出される睡眠に関する情報が、予め定められた適合条件を満足する場合に、当該被検者は業務適合性を有すると判定し、当該情報が当該適合条件を満足しない場合に、当該被検者は業務適合性を欠くと判定することを特徴とする、請求項1に記載の業務適合性判定システムである。
請求項5に記載の発明は、前記主体判定手段および前記業務適合性判定手段の判定結果に応じて制御対象を制御し、当該主体判定手段により前記取得データが前記被検者の生体データではないと判定された場合に、当該制御対象を停止させる制御手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の業務適合性判定システムである。
請求項6に記載の発明は、被検者の睡眠中の生体データから、当該被検者が特定の属性を有するか否かを判定する属性判定システムにおいて、被検者および当該被検者以外の人物の睡眠中の生体データを保持するデータベースと、判定対象の生体データを取得する判定対象データ取得手段と、前記データベースに保持されている生体データである保持データと前記判定対象データ取得手段により取得された生体データである取得データとを比較し、当該取得データが前記被検者の生体データか否かを判定する主体判定手段と、前記被検者の生体データと判定された前記取得データに基づいて当該被検者が前記特定の属性を有するか否かを判定する属性判定手段と、を有することを特徴とする、属性判定システムである。
請求項7に記載の発明は、被検者の睡眠中の生体データから、予め定められた業務に対する当該被検者の業務適合性を判定するコンピュータに、被検者および当該被検者の業務に関与する人物の睡眠中の生体データを記憶手段に保持させる機能と、判定対象の生体データを取得する機能と、前記記憶手段に保持されている生体データである保持データと取得された前記判定対象の生体データである取得データとを比較し、当該取得データが前記被検者の生体データか否かを判定する機能と、前記被検者の生体データと判定された前記取得データに基づいて当該被検者の業務適合性を判定する機能と、を実現させることを特徴とする、プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、睡眠中の生体データに基づいて被検者による業務適合性を判定するシステムにおいて、判定対象の生体データとして、被検者とは異なる人物のデータが用いられる不正を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態による業務適合性判定システムの全体構成を示す図である。
【
図3】判定サーバの処理装置による判定処理の動作を示すフローチャートである。
【
図4】判定サーバの主体判定部による判定結果の出力例を示す図である。
【
図5】判定サーバの適合性判定部による判定結果の出力例を示す図であり、
図5(A)は、被検者の業務適合性が不適合と判定された場合の出力例を示す図、
図5(B)は、被検者の業務適合性が適合と判定された場合の出力例を示す図である。
【
図6】他の実施形態による業務適合性判定システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<システム構成>
図1は、本実施形態による業務適合性判定システムの全体構成を示す図である。本実施形態の業務適合性判定システムは、生体データ取得装置100と、判定サーバ200と、端末装置300とを備える。各装置は、ネットワーク400を介して接続されている。なお、
図1には、一つの生体データ取得装置100が記載されているが、生体データ取得装置100は、通常、被検者ごとに設けられるため複数となる。また、
図1には、一つの端末装置300が記載されているが、複数の端末装置300がシステムに存在しても良い。
【0011】
端末装置300は、判定サーバ200に対して判定処理の実行を指示したり、判定サーバ200による判定結果を受信して表示したりする装置である。端末装置300としては、例えば、スマートフォン等の携帯型情報端末や、パーソナルコンピュータ(PC)等が用いられる。
【0012】
ネットワーク400は、各システム間のデータ通信に用いられる通信ネットワークであれば良く、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等が用いられる。ネットワーク400の通信方式、通信基盤等の種類や構成は特に限定されない。ネットワーク400においてデータ通信に用いられる通信回線は、有線か無線かを問わず、これらを併用しても良い。
【0013】
<生体データ取得装置の構成>
生体データ取得装置100は、被検者の睡眠中の生体データを取得する装置である。ここで、被検者とは、業務適合性判定システムの利用者であり、業務適合性の判定対象の人物である。
図1に示すように、生体データ取得装置100は、生体データを取得するセンサであるベッドセンサ110と、ベッドセンサ110により取得された生体データを判定サーバ200へ送信するための通信装置120とを備える。
【0014】
ベッドセンサ110は、被検者の体動に関するデータを非接触で測定可能なセンサを用いて構成される。一例として、ベッドセンサ110として、寝具の下に敷いて使用するマット型のセンサを用いても良い。具体的には、ベッドセンサ110は、導電性の生地と複数個の圧電素子によって構成され、周期的な微振動を検知するようにしても良い。また、ベッドセンサ110には、マイクロ波ドップラーレーダー等を使用しても良い。ベッドセンサ110は、生体データとして、例えば脈拍、呼吸数、寝返り等の体動を検知する。もっとも、体動を検知できれば、ベッドセンサ110は、マット型のセンサやマイクロ波ドップラーレーダーを用いた構成に限らない。例えば、ベッドセンサ110として、スマートフォンを代用してもよい。例えば、スマートフォン用のアプリケーション・プログラムとして、スマートフォンに内蔵された加速度センサの出力を用いて、被検者の睡眠時間や睡眠サイクル等を計測できるものが存在しており、これを用いて生体データを取得することも考えられる。なお、ベッドセンサ110は、被検者の睡眠中の生体データの他、被検者がベッドに入ったか否か、ベッドから出たか否か等の被検者の動作を検知するようにしても良い。
【0015】
通信装置120は、ネットワーク400に接続して判定サーバ200との間で通信を行う装置である。通信装置120は、ネットワーク400に接続するためのネットワーク・インターフェイスを備える。通信装置120は、ベッドセンサ110により取得されたデータを収集し、予め定められた通信プロトコルにしたがって、例えば定期的に判定サーバ200へ送信する。なお、生体データ取得装置100は、生体データを、通信装置120により直接、判定サーバ200へ送信しても良いし、エッジサーバのような外部装置による中継を経て判定サーバ200へ送信するようにしても良い。後者の場合、通信装置120は、単にベッドセンサ110が取得した生体データを外部装置へ出力する機能のみを有し、通信プロトコルにしたがった通信制御や生体データの送信タイミングの制御等は外部装置が行うようにしても良い。
【0016】
<判定サーバの構成>
図2は、判定サーバ200の構成を示す図である。判定サーバ200は、生体データ取得装置100から被検者の睡眠中の生体データを取得し、被検者の業務適合性を判定するサーバである。
図2に示すように、判定サーバ200は、記憶装置210と、処理装置220と、通信装置230とを備える。
【0017】
記憶装置210は、判定処理に用いられるデータやプログラムを記憶する装置であり、例えば磁気ディスク装置や不揮発性半導体メモリ等で実現される。
図2に示すように、記憶装置210には、取得データ保持部211と、生体データ・データベース(DB)212とが構築されている。
【0018】
取得データ保持部211には、生体データ取得装置100により取得された被検者の睡眠中の生体データが保持される。生体データ取得装置100から受信した生体データは、後述の処理装置220による処理の対象となる他、生体データDB212に格納され、次に処理対象として生体データ取得装置100から受信する生体データに対する比較対象となる。以下、取得データ保持部211に保持された被検者の睡眠中の生体データを「取得データ」と呼ぶ。
【0019】
生体データDB212には、被検者および被検者の業務に関与する人物(以下、「比較対象者」と呼ぶ)の睡眠中の生体データが格納される。被検者の業務に関与する人物とは、被検者と共に業務を行う人物や被検者と交代で同じ業務を行う人物、被検者の業務に関連する業務を行う人物等である。具体的にどのような人物を被検者の業務に関与する人物として設定するかは、業務の内容や各人物と被検者との関係等に応じて個別に定め得る。以下、被検者の業務に関与する人物を「比較対象者」と呼ぶ。
【0020】
比較対象者の生体データは、被検者と同様に、各人に対して設けられた生体データ取得装置100により取得される。したがって、同一人物Aに関して、その人物Aに対する業務適合性の判定を行う場合は、その人物Aが被検者となり、その人物Aの業務に関与する別の人物Bに対する業務適合性の判定を行う場合は、その人物Aが比較対象者となるようにしても良い。なお、被検者と比較対象者との関係は、常に双方向に成り立つとは限らない。すなわち、業務内容や各人の関係によっては、人物A、Bに関して、人物Aが被検者であるときに人物Bは比較対象者であるが、人物Bが被検者であるときに人物Aが比較対象者ではない場合があり得る。以下、生体データDB212に格納されている被検者および比較対象者の睡眠中の生体データを「保持データ」と呼ぶ。
【0021】
処理装置220は、判定処理を実行する装置であり、演算手段としてのCPU(Central Processing Unit)、作業用メモリとして用いられるRAM(Random Access Memory)、BIOS(Basic Input/Output System)等のプログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)を備える。
図2に示すように、処理装置220は、主体判定部221と、適合性判定部222とを備える。処理装置220において、CPUが記憶装置210に格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、主体判定部221および適合性判定部222の機能が実現される。処理装置220は、判定対象データ取得手段の一例である。
【0022】
主体判定部221は、取得データ保持部211に保持された取得データと、生体データDB212に保持されている保持データとを比較し、取得データの主体が業務適合性を判定しようとする対象である被検者本人か否かを判定する。主体判定部221は、主体判定手段の一例である。主体判定部221による主体の判定方法としては、いくつかの方法が考えられる。一例としては、取得データと、生体データDB212に記憶されている被検者自身の過去の生体データ(保持データ)との特徴点が近似する場合に、取得データの主体が被検者であると判定する方法がある。また、他の一例としては、取得データと、生体データDB212に記憶されている被検者および比較対象者の保持データとを比較して、取得データと同一人物を主体とする保持データを特定し、その保持データの主体が被検者か否かを判定する方法がある。取得データと同一人物を主体とする保持データは、例えば、特徴点が取得データと近似する保持データとすることができる。ここで、特徴点とは、生体データの項目ごとに設定された主体を特徴付ける要素である。特徴点は、例えば、生体データとして取得される各種の体動のパターン等に対して設定される。また、特徴点の近似の範囲は、取得される生体データの種類等に応じて個別に定めても良い。具体例を挙げると、生体データ(取得データおよび保持データ)を解析し、睡眠中のレム(REM:Rapid Eye Movement)睡眠とノンレム(Non-REM)睡眠の出現傾向を抽出して特定される睡眠リズム情報が近似する度合いにより同一人物の生体データを判定するようにしても良い。レム睡眠およびノンレム睡眠の出現傾向は、例えば、複数回の睡眠中の生体データから抽出されるレム睡眠およびノンレム睡眠の出現頻度や出現のタイミング(入眠からの経過時間や各出現時の間隔など)の平均や標準偏差等としても良い。
【0023】
適合性判定部222は、主体判定部221により主体が被検者本人であると判定された取得データを分析し、自動車の運転等の業務に対する業務適合性を判定する。適合性判定部222は、業務適合性判定手段の一例である。具体的には、適合性判定部222は、例えば取得データから就寝時間と起床時間、睡眠時間の長さ、睡眠深度のパターン、中途覚醒の回数等の睡眠に関する情報を抽出する。そして、適合性判定部222は、これらの情報が予め定められた適合条件を満足するならば、被検者が業務適合性を有すると判定し、適合条件を満足しないならば、被検者が業務適合性を欠くと判定する。具体的には、例えば、睡眠時間が不足している、睡眠の質が低い等の、正常時と比較して判断力や対応力といった業務を遂行する能力が低下する要素を含む傾向があると判断される場合、適合性判定部222は、適合条件を満足しないとして、業務適合性を欠くと判定する。ここで、業務適合性を有する(適合)とは、適合性判定部222による判定において、被検者の状態が業務を遂行するのに適当であると判断されることを言う。また、業務適合性を欠く(不適合)とは、適合性判定部222による判定において、被検者の状態が業務を遂行するのに適当でないと判断されることを言う。
【0024】
なお、睡眠中の生体データの分析、および、業務に対する適合性の判定には、既存の種々の分析方法や判定方法を用いて良い。また、被検者の正常時における睡眠中の生体データは、例えば、予め医師の診断等により正常であることが確認されたときに取得された睡眠中の生体データを生体データDB212に保持しておいても良い。また、ある程度の期間にわたって継続的に取得され生体データDB212に保持された被検者の睡眠中の生体データの平均値を正常時の生体データとして扱うことも考えられる。また、適合性判定部222は、業務適合性の判定に関して、上記の生体データに加え、被検者の属性情報を参酌して判定を行っても良い。属性情報としては、例えば、その被検者の過去の業務実績における事故の数や業務上のミスの数等を用いても良い。
【0025】
処理装置220は、以上のようにして得られた判定結果を判定サーバ200の外部の出力対象装置へ出力する。出力対象装置としては、例えば、被検者が所持する端末装置300や被検者の家族等が所持する端末装置300が挙げられる。
【0026】
通信装置230は、ネットワーク400に接続して生体データ取得装置100や端末装置300との間で通信を行う装置である。通信装置230は、ネットワーク400に接続するためのネットワーク・インターフェイスを備える。通信装置230は、生体データ取得装置100から被検者の睡眠中の生体データを受信する。また、通信装置230は、被検者に対する業務適合性の判定結果を端末装置300へ送信する。なお、生体データ取得装置100により取得された生体データがエッジサーバにより収集される場合、通信装置230は、このエッジサーバから生体データを受信する。
【0027】
<判定サーバの処理装置の動作>
図3は、判定サーバ200の処理装置による判定処理の動作を示すフローチャートである。なお、業務適合性の判定を行う対象である被検者に対しては、事前に、生体データ取得装置100を継続的に使用して睡眠中の生体データが取得され、生体データDB212に保持データとして記録されているものとする。
【0028】
判定処理が開始されると、まず、処理装置220が、取得データ保持部211から取得データを読み出し、生体データDB212から保持データを読み出す(S301)。このとき、主体の判定方法として、被検者の取得データと保持データとを比較する方法を用いる場合、生体データDB212から読み出されるデータは被検者の保持データである。また、主体の判定方法として、取得データと同一人物を主体とする保持データを特定する方法を用いる場合、生体データDB212から読み出されるデータは、被検者および比較対象者の保持データである。
【0029】
取得データおよび保持データが読み出されると、処理装置220の主体判定部221が、取得データの主体を判定する(S302)。判定の結果、取得データの主体が被検者でないと判定された場合、処理装置220は、判定処理を終了させる(S303でNO)。この場合、判定サーバ200から端末装置300へ、取得データが被検者の生体データでないことを示す通知が行われる。
【0030】
一方、判定の結果、取得データの主体が被検者であれば(S303でYES)、次に処理装置220の適合性判定部222が、被検者の業務適合性を判定する(S304)。適合性判定部222は、取得データから抽出される睡眠に関する情報が適合条件を満足する場合(S305でYES)、適合と判定する(S306)。そして、判定サーバ200から端末装置300へ、被検者の状態が業務の遂行に適合していることを示す通知が行われる。
【0031】
これに対し、適合性判定部222は、取得データから抽出される睡眠に関する情報が適合条件を満足しない場合(S305でNO)、不適合と判定する(S307)。そして、判定サーバ200から端末装置300へ、被検者の状態が業務の遂行に不適合であることを示す通知が行われる。
【0032】
<判定結果の出力例>
次に、判定サーバ200による判定結果の出力例を示す。端末装置300が受信した判定結果は、例えば、端末装置300に設けられた表示手段(液晶ディスプレイ等)の画面に表示される。
【0033】
図4は、判定サーバ200の主体判定部221による判定結果の出力例を示す図である。主体判定部221が、取得データの主体が被検者でない判定した場合、
図4に示すように、端末装置300の表示部310には、取得データが被検者の生体データでないことを示すメッセージが表示される。図示の例では、「○○さんのデータではありません。○○さん本人のデータを入力してください。」というメッセージが表示されている。また、この通知画面には、移行ボタン311と、終了ボタン312とが表示されている。
【0034】
移行ボタン311は、表示中の判定結果の通知画面から判定サーバ200に業務適合性の判定指示を行う操作画面に表示を移行させるためのボタンオブジェクトである。この移行ボタン311が選択されると、表示部310の表示が、現在の通知画面から、取得データを指定して業務適合性の判定指示を行うための操作画面に切り替わる。なお、判定結果が通知される前に、現在の判定結果を得るための判定指示を操作画面で行っており、操作画面への移行は、かかる操作画面に戻る動作に相当することから、移行ボタン311には「戻る」と表示されている。
【0035】
終了ボタン312は、判定サーバ200による判定処理を終了するためのボタンオブジェクトである。この終了ボタン312が選択されると、端末装置300から判定サーバ200へ、判定処理の終了要求が送信され、端末装置300による判定サーバ200へのアクセスが切断される。判定サーバ200は、この終了要求を受信すると、被検者に対する判定処理を終了する。
【0036】
図5は、判定サーバ200の適合性判定部222による判定結果の出力例を示す図である。
図5(A)は、被検者の業務適合性が不適合と判定された場合の出力例を示す図、
図5(B)は、被検者の業務適合性が適合と判定された場合の出力例を示す図である。ここでは、自動車の運転を業務とする場合の出力例を示している。適合性判定部222が、被検者の業務適合性が不適合と判定した場合、
図5(A)に示すように、端末装置300の表示部310には、不適合という判定結果を通知するメッセージが表示される。図示の例では、「業務不適合と判定されました。自動車の運転を控えてください。」というメッセージが表示されている。この通知画面には、終了ボタン312が表示されており、この終了ボタン312が選択されると、判定処理が終了し、端末装置300による判定サーバ200へのアクセスが切断される。
【0037】
また、適合性判定部222が、被検者の業務適合性が適合と判定した場合、
図5(B)に示すように、端末装置300の表示部310には、適合という判定結果を通知するメッセージが表示される。図示の例では、「業務適合と判定されました。」というメッセージが表示されている。この通知画面には、終了ボタン312が表示されており、この終了ボタン312が選択されると、判定処理が終了し、端末装置300による判定サーバ200へのアクセスが切断される。
【0038】
<他のシステム構成例>
図1に示したシステム構成とは異なる実施例によるシステム構成例について説明する。
図1に示したシステム構成では、判定サーバ200の判定結果が端末装置300に送られ、端末装置300の表示部310に判定結果を示す通知画面が表示された。これに対し、判定結果を端末装置300ではなく、業務において用いられる機器や装置に送り、かかる機器や装置を制御する実施形態が考えられる。
【0039】
図6は、他の実施形態による業務適合性判定システムの全体構成を示す図である。本実施形態の業務適合性判定システムは、生体データ取得装置100と、判定サーバ200と、車両500とを備える。各装置は、ネットワーク400を介して接続されている。
図6に示す構成において、生体データ取得装置100、判定サーバ200およびネットワーク400は、
図1に示したシステムにおける各構成と同様である。
【0040】
この実施形態では、適合性を判定する対象業務として自動車の運転を伴う業務を想定する。したがって、制御対象として、車両500を例示する。すなわち、判定結果は車両500に送られる。車両500は、報知装置510と、停止装置520と、通信装置530とを備える。
【0041】
報知装置510は、
図1に示した端末装置300の表示部310に相当し、判定結果を示す通知画面を表示する。車両500に乗車した被検者は、報知装置510に表示される通知画面を閲覧して判定サーバ200による判定結果を知ることができる。
【0042】
停止装置520は、判定サーバ200による判定結果を取得して、車両500を制御する。具体的には、判定サーバ200の処理装置220における主体判定部221が、取得データの主体が被検者でないと判定した場合、および、適合性判定部222が、被検者が業務適合性を欠くと判定した場合、停止装置520は、この判定結果を受けて、車両500を停止させる。停止装置520は、制御手段の一例である。
【0043】
通信装置530は、ネットワーク400に接続して判定サーバ200との間で通信を行う装置である。通信装置230は、ネットワーク400に接続するためのネットワーク・インターフェイスを備える。車両500に設けられる通信装置530は、無線回線によりネットワーク400に接続する。したがって、通信装置530は、ネットワーク400に設けられた基地局に対して無線通信を行うための無線通信機により実現される。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、自動車の運転を伴う業務を例として出力例や制御対象の制御例を説明したが、本発明は種々の業務に対する適合性の判定に適用して良い。したがって、判定結果に応じて機器や装置を制御する実施形態においても、業務の種類や内容に応じて、車両500以外の様々な機器や装置を制御対象とし得る。
【0045】
さらに本発明は、何らかの業務に対する適合性に限定せず、被検者の睡眠中の生体データから被検者が特定の属性を有するか否かを判定する属性判定システムとして実現しても良い。この場合、生体データDB212には、被検者および被検者以外の人物の睡眠中の生体データが格納される。被検者以外の人物は特に限定しないが、判定対象の属性の種類等に応じて適宜限定しても良い。また、この属性判定システムは、上記実施形態の適合性判定部222に代えて、主体判定部221により主体が被検者本人であると判定された取得データを分析し、被検者が判定対象の属性を有するか否かを判定する属性判定部(属性判定手段)を備える。属性判定部は、例えば取得データから就寝時間と起床時間、睡眠時間の長さ、睡眠深度のパターン、中途覚醒の回数等の睡眠に関する情報を抽出する。そして、属性判定部は、これらの情報が、判定しようとする属性に応じて予め定められた適合条件を満足するならば、被検者がかかる属性を有すると判定し、適合条件を満足しないならば、被検者がかかる属性を欠くと判定する。
【0046】
また、判定サーバ200は、上述した記憶装置210、処理装置220および通信装置230を全て備え、ネットワーク上に構築された単一のサーバマシンにより実現しても良いし、いわゆるクラウドサーバ等として、各機能を複数のサーバに分散して実現しても良い。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
100…生体データ取得装置、110…ベッドセンサ、120…通信装置、200…判定サーバ、210…記憶装置、211…取得データ保持部、212…生体データ・データベース(DB)、220…処理装置、221…主体判定部、222…適合性判定部、230…通信装置、300…端末装置、400…ネットワーク、500…車両、510…報知装置、520…停止装置、530…通信装置