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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】布団側地の製造方法及び布団の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/02 20060101AFI20230125BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20230125BHJP
   D03D 1/04 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A47G9/02 A
D03D1/00 Z
D03D1/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019155295
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021029784
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】511049196
【氏名又は名称】南京優尼可国際貿易有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 晧雪
(72)【発明者】
【氏名】谷口 透
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特許第4611452(JP,B1)
【文献】特開平04-119138(JP,A)
【文献】特開平07-246145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/00-11/00
D03D 1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平織である表側生地と、平織である裏側生地とを重ねて同時に織り進めると共に、前記表側生地の糸と前記裏側生地の糸とを絡み合わせて形成される接結組織によって、前記表側生地及び前記裏側生地の長さ方向に沿って伸びると共に幅方向に所定間隔で形成された複数の長さ方向連結ラインと、前記表側生地及び前記裏側生地の幅方向に沿って伸びると共に長さ方向に沿って所定間隔で形成された複数の幅方向連結ラインとを形成して、格子状に区画された複数のポケット空間を形成し、前記幅方向連結ライン又は前記長さ方向連結ラインの一部を接結させないで筒状開口部を設け、前記ポケット空間のうち長さ方向に並ぶもの又は幅方向に並ぶものどうしが前記筒状開口部を通して直線状に連通するようにして布団側地一枚に相当する部位を製造した後、前記表側生地と前記裏側生地とを全幅で一重織りにして形成した一重織物領域を介して次の布団側地一枚に相当する部位の製織を連続して行うと共に、縫製の工程において前記一重織物領域の部分で幅方向に裁断するダウンプルーフ仕様の布団側地の製造方法であって、高速ウオータージェットの16枚の綜絖枠を有するドビー織機を用いて、前記ポケット空間及び前記幅方向連結ラインを形成する部分は、12枚の綜絖枠を使用し、前記筒状開口部を形成する部分は、残余の4枚の綜絖枠を使用し、前記長さ方向連結ラインは、前記12枚の綜絖枠の一部を流用使用し、一重織物領域を形成する部分は、16枚の綜絖枠すべてを流用使用すると共に紋板変更して、布団側地の長手方向に沿って、表側生地と、裏側生地とを重ねて同時に織り進めることを特徴とする布団側地の製造方法。
【請求項2】
前記筒状開口部を、前記ポケット空間の一方の側部を貫通するように形成する、請求項に記載の布団側地の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された方法で布団側地を製織製造した後、前記布団側地の周縁の、前記筒状開口部により前記ポケット空間が直線状に連通する部分に対応する部分を開口させて、該開口及び前記筒状開口部を通して、長さ方向又は幅方向に並ぶ前記ポケット空間内にパイプを挿入し、挿入方向先端側の前記ポケット空間から順番に前記パイプを通して布団わたを順次吹込み充填することを特徴とする布団の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表側生地と、裏側生地とを重ねて同時に織り進めると共に、部分的に表側生地の糸と裏側生地の糸とを絡み合わせて接結組織を形成するようにした布団側地の製造方法及び布団の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、布団側地は、表側生地と、裏側生地とを重ねて、周縁を縫製して袋状に形成することにより製造されている。ただし、内部が1つの空間であると、そこに充填された羽毛や布団わたは日常使用してゆくと偏ってしまって、均一な厚さを保てなく、均一な保温効果を阻害する問題が起きるので、(一)ふとん全体をキルティング後加工して、充填の空間を小さく平面的に仕切ることによって充填物を固定することや、(二)仕切用マチ布を側地内面に縫い付けて、内部空間を立体的に仕切ることにより、羽毛や布団わたがずれ動きにくい立体構造とすることなどが一般化している。
【0003】
しかし、(二)の工法はミシン工の縫製工数が非常に嵩み、そのコストアップがネックになる。また(一)(二)共に羽毛布団、細めのわた繊維が使用されたわた布団、などにおいては、ミシン縫い目から羽毛やわた繊維が吹き出したりする不都合が生じるので、ミシン縫い目をできる限りなくすことが望まれる。このため、(三)表側生地と裏側生地とを仕切用マチ布を介して接着又は溶着することによって仕切を作ること、或いは表生地と裏生地を直接接着又は溶着する工法なども行われているが、その接着溶着の耐久性が問題になる、という欠点があった。
【0004】
一方、下記特許文献1には、表側生地と裏側生地の全面にわたって多数の皺を形成すると共に、前記表側生地と裏側生地の各内面における前記皺の頂部を連ねるように複数本の邪魔糸を1mm ~15mmの間隔で掛け渡し、かつ、前記表側生地と裏側生地の間に羽毛を充填するための複数のポケット空間を形成するように両側生地を製織時に接結した羽毛の吹き出し防止構造が開示されている。
【0005】
各接結箇所では、表側の緯糸が裏側にシフトすると共に裏側の緯糸が表側にシフトしている。また、緯糸のシフトに合わせて経糸も同じように反対側にシフトしている。それによって表側生地と裏側生地とが接合される。このように接結によって表側生地と裏側生地とを接合することにより、キルティングによる縫い目を設けたり、仕切用マチ布を接着したり溶着したりすることなく、ポケット空間を作るための仕切りを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許4611452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1には、接結組織によって複数のポケット空間を有する布団側地をどのようにして形成するかについて具体的な記載がなく、そのような布団側地を工業的に生産性良く製造する方法については、何ら記載されていない。
また、一枚のふとんの幅及び長さの用尺の単位、例えば製品サイズが短辺幅150cmで長辺長さ210cmの場合は、縫製や中わた充填に依る生地の収縮が有るので、縫製工程投入の際には幅162cm、長さ230cm程度が必要になる。このため、縫製工場の裁断機で230cm単位で切り出されるが、長さ方向両端の二辺の切り口は袋状が解放され単に二枚の織物状態となり、縁かがり縫製代に使われる部位以外は生地ロスとして無用なので切り捨てられる。ふとんの場合、ポケット空間を作る一つの格子の長手方向の大きさは20cm、30cmとか大きな数字で有るので、ふとん側地一枚の面積に鑑みるとこのロス率は10%近くなる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、接結組織によって複数のポケット空間を有する布団側地及び該布団側地を用いた布団を工業的に生産性良く、かつ、生地のロスを少なくして製造することができる、布団側地の製造方法及び布団の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の1つは、表側生地と、裏側生地とを重ねて同時に織り進めると共に、前記表側生地の糸と前記裏側生地の糸とを絡み合わせて形成した接結組織によって、前記表側生地及び前記裏側生地の長さ方向に沿って伸びると共に幅方向に所定間隔で形成された複数の長さ方向連結ラインと、前記表側生地及び前記裏側生地の幅方向に沿って伸びると共に長さ方向に沿って所定間隔で形成された複数の幅方向連結ラインとを形成して、格子状に区画された複数のポケット空間を形成し、前記幅方向連結ライン又は前記長さ方向連結ラインの一部を接結させないで筒状開口部を設け、前記ポケット空間のうち長さ方向に並ぶもの又は幅方向に並ぶものどうしが前記筒状開口部を通して直線状に連通するようにして一枚の布団側地を製造した後、前記表側生地と前記裏側生地とを全幅で一重織りにして形成した一重織物領域を介して次の布団側地の製織を連続して行うと共に、縫製の工程において前記一重織物領域の部分で幅方向に裁断することを特徴とする布団側地の製造方法を提供するものである。
【0010】
本発明の布団側地の製造方法によれば、接結組織によって、表側生地及び裏側生地の長さ方向に沿って伸びると共に幅方向に所定間隔で形成された複数の長さ方向連結ラインと、表側生地及び裏側生地の幅方向に沿って伸びると共に長さ方向に沿って所定間隔で形成された複数の幅方向連結ラインとを有する連結部を形成することにより、複数のポケット空間を織成時に形成することができるので、ふとん全体をキルティング後加工して、充填の空間を小さく平面的に仕切ることによって充填物を固定することや、仕切用マチ布を側地内面に縫い付けて、内部空間を立体的に仕切ること、などをすることなく、ポケット空間を形成することができる。
【0011】
また、ポケット空間のうち、長さ方向に並ぶもの又は幅方向に並ぶものどうしが、幅方向連結ライン又は長さ方向連結ラインの一部に接結しない部分を設けて形成した筒状開口部を通して直線状に連通するので、上記筒状開口部にパイプを通して、それぞれのポケット空間に布団わた、羽毛など充填物を作業性良く充填することができる。
【0012】
更に、一枚の布団側地を製造した後、表側生地の経(たて)糸と裏側生地の経糸とを流用して生地とを一重織りにして形成した一重織物領域を介して次の布団側地の製造を連続して行うと共に、前記一重織物領域の部分を幅方向に裁断する部位とすることによって、長手方向に袋状の表裏二枚の生地をそれぞれ裁断して更に二枚を合わせて周縁を縫製する従前工法に比較して、側地生地のロスを軽減、かつ縫製工程の時間的な合理化が可能になる。
【0013】
本発明の布団側地の製造方法においては、布団側地の長手方向に沿って、表側生地と、裏側生地とを重ねて同時に織り進めることが、好ましい。この態様によれば、布団側地の長手方向に沿って織り進めることにより、それと直交する方向に織り進める場合に比べて織り幅を狭くすることができるので、設備装置コストが比較的こなれた通常のいわゆる並幅ダブル幅の織機(190cm以下)を使用できる。また、別の技術的観点では、例えば羽毛布団の場合は、経糸密度を非常に高く設定する必要が有り、具体的には、狭い方(例)150cmふとん製品の幅手、を織り幅に設定する際の経糸総本数は2万本以上、広い方(例)210cmふとん製品の長手、を織り幅に設定する際には経糸総本数は3万本以上になる。後者、広い方(例)210cmふとん製品の長手、を織り幅に設定する際の経糸総本数3万本以上、は織機の開口が非常に重くなり、稼働回転数が抑制される。
【0014】
また、本発明においては、16枚ドビーの織機を用いて、最大限16枚の綜絖枠を使用して、布団側地の長手方向に沿って、表側生地と、裏側生地とを重ねて同時に織り進めることが好ましい。本発明者らは、布団側地の長手方向に沿って、表側生地と、裏側生地とを重ねて同時に織り進めることによって、汎用されている16枚ドビーの織機であっても、羽毛布団などに要求される高密度の生地からなる布団側地を製造可能となることを見出した。これによって、汎用タイプの織機を用いて、複数のポケット空間を有する、シームレスな布団側地を生産性良く製造することができる。
【0015】
また、本発明の布団側地の製造方法においては、前記筒状開口部を、前記ポケット空間の一方の側部を貫通するように形成することが好ましい。この態様によれば、ポケット空間に充填された布団わた、羽毛など充填物は、筒状開口部を通して隣接するポケット空間に移動しようとしても、接結組織によって形成された長さ方向連結ライン又は幅方向連結ラインによって表側生地と裏側生地とが接合された部分に隣接するため、布団わたが動きにくくなり、各ポケット空間に充填された布団わたが移動しにくくすることができる。
本発明のもう1つは、上記方法で布団側地を製織製造した後、前記布団側地の周縁の、前記筒状開口部により前記ポケット空間が直線状に連通する部分に対応する部分を開口させて、該開口及び前記筒状開口部を通して、長さ方向又は幅方向に並ぶ前記ポケット空間内にパイプを挿入し、挿入方向先端側の前記ポケット空間から順番に前記パイプを通して布団わた羽毛など充填物を順次吹込み充填することを特徴とする布団の製造方法を提供するものである。
【0016】
本発明の布団の製造方法によれば、複数のポケット空間に布団わたや羽毛などの充填物が充填され、キルティング後加工による縫い目及び針穴の存在しない、接着又は溶着された仕切用マチ布の必要がない、シームレスな布団を生産性よく製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、接結組織によって、表側生地及び裏側生地の長さ方向に沿って伸びると共に幅方向に所定間隔で形成された複数の長さ方向連結ラインと、表側生地及び裏側生地の幅方向に沿って伸びると共に長さ方向に沿って所定間隔で形成された複数の幅方向連結ラインとを形成することによって、織成時に複数のポケット空間を形成することができる。また、幅方向連結ライン又は長さ方向連結ラインの一部に接結しない筒状開口部を設けて、該ポケット空間のうち長さ方向に並ぶもの又は幅方向に並ぶものどうしが、筒状開口部を通して直線状に連通するように接結組織を形成することにより、上記筒状開口部にパイプを通して、それぞれのポケット空間に布団わた羽毛など充填物を作業性良く充填することができる。更に、一枚の布団側地を製造した後、表側生地と裏側生地とを一重織りにして形成した一重織物領域を介して次の布団側地の製造を連続して行うと共に、前記一重織物領域の部分で幅方向に裁断することによって、複数のポケット空間を有するシームレスな布団側地を、生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によって製造される布団の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】本発明に係る布団側地の製織製造過程における平面図である。
図4】本発明に係る布団側地の布団わたの充填方法を示す説明図である。
図5】本発明に係る布団側地の他の実施形態における布団わた羽毛など充填物の充填方法を示す説明図である。
図6】本発明に係る布団側地の織り方の一実施例における、綜絖枠16枚を準用する織物組織図である。
図7】同実施例における一重織りの組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図1~4には、本発明の布団及び布団側地の一実施形態が示されている。
図1、2に示すように、この布団100は、ふとん側地120と、このふとん側地120に充填された布団わた103とを有している。
【0020】
ふとん側地120は、表側生地101と、裏側生地102と、それらの周縁に縫着された縁掛かり105とを有している。表側生地101と、裏側生地102とは、二重織りにより同時に織り進められて、部分的に表側生地101の糸と裏側生地102の糸とを絡み合わせて形成された接結組織により連結されて、複数のポケット空間108を有する袋状に形成されている。
【0021】
ふとん側地120の製造方法については、後に詳しく説明するが、複数のポケット空間108は、接結組織によって形成された長さ方向連結ライン106と、幅方向連結ライン107とによって格子状に区画されている。長さ方向連結ライン106は、表側生地101及び裏側生地102の長さ方向に沿って伸びると共に、幅方向に所定間隔で形成されている。幅方向連結ライン107は、表側生地101及び裏側生地102の幅方向に伸びると共に、長さ方向に所定間隔で形成されている。この実施形態では、ポケット空間108は、布団100の長手方向に7個、幅手方向に6個並ぶように形成されている。
【0022】
表側生地101,裏側生地102の両側は、袋織物の耳部104によって連結されている。また、長さ方向両端部は、後述する図3に示す一重織物領域110によって連結されている。そして、図2の拡大図に示されるように、袋織物の耳部104、一重織物領域110で囲まれた表側生地101,裏側生地102の周縁には、縁掛かり105が被せられたり、或いは巻き込み縫製にて縫着されている。縁掛かり或いは巻き込み縫製105は、その両側部を折り返し部105aによって2重に折り込まれて耳部104等を挟むようにして装着され、針孔等がポケット空間108の内部にかからないように縫着されるべきである。
【0023】
そして、各ポケット空間108に布団わた103がそれぞれ充填されて、布団100が形成されている。布団わた103としては、羽毛、或いはポリエステル等の球状粒わたなどの、空気輸送充填が可能な、各種の材質からなるなかわたを用いることができるが、本発明に係るふとん側地120は、接結によって表側生地101及び裏側生地102が該織物自体を構成する糸によって連結されて作られており、針孔等が存在しない、シームレスなふとん側地120であることから、特に羽毛わたや、細めのわた繊維が使用された極細繊維わた、に好適である。
【0024】
表側生地101,裏側生地102の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、綿、ナイロン、レーヨンなどが好ましく用いられる。布団わた103として、羽毛わたを用いる場合、表側生地101、裏側生地102としては、羽毛が吹き出さないように程度に比較的高密度に織られた生地(ダウンプルーフ生地)が好ましく用いられる。ダウンプルーフ生地の場合、表側生地101,裏側生地102を構成する織物の糸の太さは、30~150デニールが好ましく、50~75デニールが生地の軽量化及びダウンプルーフ機能を確保するためにはより好ましい。また、ダウンプルーフ生地の場合、織物の密度は、50d×50d平織りで例示すると、整理加工後の経緯合計密度は表裏単体の平織物の密度で表現すると300本/inch程度(つまり、二層織物合計では600本/inch)以上が好ましい。粒わた仕様の場合は二層織物で合計500本/inch程度も可能である。
【0025】
図3は、本発明の製造方法によるふとん側地120の製造過程における平面図である。このふとん側地120は、図2に示したように、表側生地101と裏側生地102とを二重織りにより同時に織り進めて製造される。その際、部分的に表側生地101の糸と裏側生地102の糸とを絡み合わせて形成された接結組織により、表側生地101と裏側生地102とが連結されて袋状が形成される。
【0026】
この実施形態では、表側生地101,裏側生地102の長手方向が織り方向となっており、それらの両側は、接結組織によって連結されて袋織物の耳部104が形成される。この実施形態では、最も汎用な織機幅である、190cm幅の織機を用い、側地の長手方向を織り方向とする前提で説明をする。ただし、260cm以上の広幅の織機が高次の製織技術面の判断から手配可能とされる場合は、織機上で側地の幅方向を織方向とすることも可能になる、この場合、側地一枚の製織に要する時間を幾分短縮することが可能になる。
また、接結組織によって、表側生地101及び裏側生地102の長さ方向に沿って伸びると共に、幅方向に所定間隔で複数の長さ方向連結ライン106が形成され、表側生地101及び裏側生地102の幅方向に伸びると共に、長さ方向に所定間隔で複数の幅方向連結ライン107が形成される。その結果、長さ方向連結ライン106と幅方向連結ライン107とによって、格子状に区画されたポケット空間108が形成される。
【0027】
なお、長さ方向連結ライン106と幅方向連結ライン107と交差する部分では、幅方向連結ライン107の一部が接結されないで、筒状開口部109が設けられている。この筒状開口部109は、ふとん側地120の長さ方向に並んでポケット空間108の一側を貫通する直線状の連通路を構成している。
【0028】
前述したように、この実施形態では、ポケット空間108は、ふとん側地120の長さ方向に7個、幅方向に6個形成される。そして、ふとん側地120が長さ方向に7個並ぶまで織り進められると、ふとん側地120の全幅で紋板変更に依って織物組織の変更がなされて一重織物領域110が形成される。
【0029】
次いで、次の「ふとん側地」一枚相当、が織り進められ、ふとん側地120が連続して次々に製織織成される。そして、ふとん側地120とふとん側地120との間に形成される一重織物領域110の長手方向の中央部を幅方向に裁断することにより、個々一枚単位のふとん側地120に分かれる。
その結果、ふとん側地120は、幅方向の両側が袋織物の耳部104で閉じられ、長さ方向の両端が一重織物領域110で閉じられ、内側に形成された複数の長さ方向連結ライン106と幅方向連結ライン107とによって、複数のポケット空間108が形成された形状となる。
【0030】
次に、図4に示すように、上記のようにして形成されたふとん側地120の一重織物領域110の、筒状開口部109が配列されてポケット空間108が直線状に連通する部分に対応する部分に開口部113を設け、この開口部113から充填物送入パイプ112をそれぞれ挿入し、その先端を奥方に位置するポケット空間108a内に配置する。そしてポケット空間108aから順番に、充填物送入パイプ112の先端部を配置して布団わた103を充填する。例えば奥方のポケット空間108aに布団わた103が充填されたら、充填物送入パイプ112を少し引き出して、その先端を隣接する次のポケット空間108内に位置させ、そのポケット空間108内に同様にして布団わた103を充填する。この作業を繰り返すことにより、全てのポケット空間108に布団わた103を充填することができる。
【0031】
こうして、全てのポケット空間108に布団わた103を充填したら、開口部113が縁掛かり或いは巻き込み縫製により封止される。
【0032】
その結果、布団わた103は、耳部104、一重織物領域110、長さ方向連結ライン106、幅方向連結ライン107で囲まれた格子状のポケット空間108にそれぞれ充填されて、縫い目を有さないシームレスなふとん側地120で包まれた状態となる。
【0033】
次いで、長手方向の周縁部は、図2に示したような態様で、ふとん側地120の周縁を縁掛かり105で覆い、縫い目がポケット空間108内に入らないように、縁掛かり105が縫着されて、布団100を製造することができる。
【0034】
このように、ふとん側地120の長手方向を織り方向にすることにより、ドビー織機のような汎用されている16枚綜絖枠の織機を用いて、ダウンプルーフ仕様のシームレスなふとん側地120を製織することが可能となる。
【0035】
また、上記実施形態では、ポケット空間108の一側部に筒状開口部109を設けているので、ポケット空間108に充填された布団わた103が、筒状開口部109を通して隣接するポケット空間108に移動しようとしても、筒状開口部109が長さ方向連結ライン106や幅方向連結ライン107に隣接しているため、筒状開口部109を通過しにくくなり、布団わた103を最初に充填されたポケット空間108内に保持して、布団わた103が偏ることを長期に亘って防ぐことができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、幅方向連結ライン107の一部に筒状開口部109を設けて、長さ方向に筒状開口部109が並ぶようにして、長さ方向に並ぶポケット空間108を貫通する連通路を構成するようにしたが、長さ方向連結ライン106の一部に筒状開口部109を設けて、幅方向に筒状開口部109に並ぶようにして、幅方向に並ぶポケット空間108を貫通する連通路を構成するようにしてもよい。その場合には、充填物送入パイプ112を幅方向に挿入することになる。
【0037】
図5には、本発明による布団側地の他の実施形態が示されている。このふとん側地120aは、表側生地101及び裏側生地102の幅方向に織り進めて作られた点が、前述した実施形態と相違する。前述した実施形態と実質的に同一部分には同符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
すなわち、このふとん側地120aでは、表側生地101及び裏側生地102の長さ方向両端部が袋織物の耳部104で連結され、幅方向両端部が一重織物領域110で連結されている。また、織り進む方向に沿って幅方向連結ライン107が形成され、それと直交する方向に沿って長さ方向連結ライン106が形成されている。長さ方向連結ライン106の一部に接結されない部分を設けて筒状開口部109を形成している。その結果、ふとん側地120aの幅方向に筒状開口部109が並び、充填物送入パイプ112は、幅方向に挿入されて、布団わた103が充填されるようになっている。
【0039】
このように、表側生地101及び裏側生地102を、幅方向に織り進めてふとん側地120aを製造することもできる。
【0040】
本発明の方法でふとん側地120を製造する場合、羽毛充填のダウンプルーフ仕様、粒わた充填の比較的高密度仕様、いずれの場合も、通常の一重織物の二倍の経糸及び緯糸を打ち込んで織り進める必要がある。一般に、そのような織物は、ジャガード織機のような複雑な経糸開口が可能な構造の織機、多数の綜絖枠を準用可能な比較的低速回転の織機でなければ織ることが困難であったが、本発明者らは、高速ウオータージェット、消極ドビー開口で最も汎用とされている16枚ドビーの織機を用いて、最大16枚の綜絖枠枚数で、超高密度二層袋織ふとん側地120を織ることに成功した。
【実施例
【0041】
図6、7には、16枚ドビーの織機を用いて、最大16枚の綜絖枠枚数で、図3の構造のふとん側地120を織る場合の織り方の一実施例が示されている。この実施例では、ふとん側生地の長手方向を織り方向としている。
【0042】
経糸、緯糸は50d、経糸総本数は約21000本である。織機上、キバタ、染色整理加工後の「織物性量 実施例実数値」は、下記表1に示す通りである。
【0043】
【表1】
【0044】
また、布団製品一枚のサイズ及び諸元データは、下記表2に示す通りである。
【0045】
【表2】
【0046】
接結ラインのピッチは、側地一枚に幅方向6格子×長手方向7格子とする。つまり、側地一枚に6×7=42のポケットを構成する前提のケースで、袋織を構成するための「織物組織」の織り幅方向の組織パターンは、最低、以下の五分類が必須となる。
[図6,7の組織パターン分別番号(1)(2)(3)(4)(5)について]
(1)耳組織(耳部104) 右左
(2)ポケットの「幅方向に展開する長手の接結ライン(長さ方向連結ライン106)」の織物組織
(3)袋状になる部位の織物組織(ポケット空間108)、「長手方向に展開する幅手の接結ライン(幅方向連結ライン107)」を含む
(4)「中わた充填連通口(筒状開口部109)」の筒状織物組織
(5)上下二枚の織物を一重織物化する織物組織(一重織物領域110)
以上のパターンをそれぞれ構成するのに必要な、織物全幅の経糸総本数概数及び綜絖枚数は、以下の通りである。
[図6,7の組織パターン分別番号(1)(2)(3)(4)(5)に必要な経糸総本数概数及び綜絖枚数];
(1)400本程度 綜絖枚数最低2枚が組織構成に必要
(2)24本程度 綜絖枚数最低2枚が組織構成に必要
(3)17,000本程度 綜絖枚数4枚=4250本/枚、8枚=2125本/枚、等では綜絖枠一枚当たりの綜絖本数が混みすぎのため織機稼働が困難になるので、綜絖枚数12枚1,400本/枚が最低必要な枚数の限界である。さもなくば綜絖及び糸の遊ぶ空間がなくなり、綜絖及び糸の摩擦で経糸は容易に切断して、その結果、製織は困難になる。
【0047】
なお、最新の極薄い軽量な「プラスチックヘルド」綜絖使用でも、綜絖枠一枚に収容可能な綜絖本数は、max1800本/190cm幅綜絖枠が製造現場の限界的現実である。
(4)4,200本程度 袋状組織構成のため綜絖枚数最低4枚、が組織構成に必須である。
(5)については、[(2)~(4)の綜絖枠を流用]、紋板変更のみによる一重織物を工夫研究した。経緯二重織組織の場合(3)(4)組織はいずれも、綜絖枚数最低四枚綜絖必須の組織である。
【0048】
つまり、組織パターン(3)は綜絖枚数12枚必須であり、組織パターン(4)は綜絖枚数4枚必須であり、これらを充当すると、既に綜絖枚数16枚に達してしまって、織機上の綜絖枠に余裕は無い。したがって、組織パターン(1)及び組織パターン(2)は、組織パターン(3)又は組織パターン(4)の綜絖枠を流用して、変化通しとかでその組織を組み替えるとかの工夫をするしかない。これが、この種超高密度二重織を16枚綜絖ドビー織機で,製造現場の直面する現実である。
【0049】
この実施例では、この知見に基づいて、図6,7に示す織物基本組織図及び綜絖枠番号の構成により、高速ウオータージェットでの製織を可能とした。その要点を説明すると下記の通りである。
組織パターン(1)は、耳組織 右左:耳組織は、「単独の綜絖枠」に余裕がないので、組織パターン(3)の綜絖枠を部分流用して「共耳」とする。組織パターン(1)は右端部及び左端部に有ってその幅は各々織機機上で約3cm程度である。
組織パターン(2)は、ポケットの「幅方向に展開する長手の接結ライン」の織物組織:「接結する組織」数本であり、「綜絖枠」に余裕がないので、組織パターン(3)の綜絖枠の一部分を流用する。
【0050】
組織パターン(3)は、袋状になる部位の織物組織であり、綜絖枠としては1~12を占有する。「長手方向に展開する幅手の接結ライン」を含んでおり、袋状タテヨコ平二重織組織(実施例で、ふとん製品上のサイズで、幅方向は約25cmピッチ)をなす。
組織パターン(4)は、「中わた充填連通口」の筒状織物組織であり、「中わた充填パイプ」を挿入する筒状組織で、開口部幅は、ふとん製品上で約5cmであり、綜絖枠13~16で「長手方向に展開する、幅手の接結ライン」を含まない単に長手方向筒状の、タテヨコ平二重織組織4×4組織を繰り返す。
【0051】
組織パターン(5)は、上下二枚の織物を一重織物化する織物組織であり、ふとん一枚(製織の長さ方向)の終わり部分に配置する一重織りの継ぎ組織である。
一組のふとんに相当するポケット空間の一リピート相当長さの製織が完結した段階で、ポケット構成に使用した1~16の綜絖通しをそのまま活用して、紋板のみの変更に依って、「一重織」組織として製織することで一組のふとんのポケットの製織形成が完結される。一重織り組織で製織する長さは、織機上で約5~8cmとすることができる。綜絖枠としては、組織パターン(3)、(4)、(2)の16枚すべてを流用して、「紋板」の変更で操作する。
【0052】
ふとん縫製工場の裁断工程では、この幅方向の一重織物の帯状領域にカッターを入れて、ふとん一組単位に裁断して、次工程のパイプ挿入、中わた充填作業を行う。
【0053】
以下、織機上では、次の一組の布団側地の製織作業が継続される。
【符号の説明】
【0054】
100 布団
101 表側生地
102 裏側生地
103 布団わた
104 耳部
105 縁掛かり
105a 折り返し部
106 長さ方向連結ライン
107 幅方向連結ライン
108 ポケット空間
109 筒状開口部
110 一重織物領域
111 裁断ライン
112 なかわた送入パイプ
113 開口部
120 ふとん側地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7