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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230125BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A01G31/00 601C
A01G31/00 601A
A01G31/00 612
A01G7/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019546682
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036421
(87)【国際公開番号】W WO2019069826
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2017192410
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 博
(72)【発明者】
【氏名】米田 和博
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小谷 陽史
(72)【発明者】
【氏名】竹本 将孝
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06219966(US,B1)
【文献】特開2006-067999(JP,A)
【文献】国際公開第2011/021716(WO,A1)
【文献】特開2012-223127(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00124912(EP,A2)
【文献】特開2005-052754(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136459(WO,A1)
【文献】特開平06-046696(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043326(WO,A1)
【文献】実開平05-053457(JP,U)
【文献】特開2016-178891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0279126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 ー31/06
A01G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物の根を下垂させる中空の根圏部を有する栽培ボックスを備え、前記根圏部に養液を霧状にして噴霧する植物栽培装置において、
前記栽培ボックスを上側パネルと下側パネルを着脱自在に組み合わせて設けると共に、該下側パネルの廃液口を設けた底壁の下部に長さ方向全長に亙って樋形状のガターを着脱自在に取り付けており、
前記上側パネルは長さ方向に間隔をあけてノズル装着穴を備え、各ノズル装着穴に養液供給管を差し込んで前記根圏部に吊り下げ、前記養液供給管の下端に前方向きに噴射するノズルおよび/または後方向きに噴射するノズルを設け、
前記上側パネルは長さ方向に並んだ植付穴からなる植付穴の列複数備え、該植付穴に栽培植物の根部を差し込んで前記根圏部に吊り下げ
前記ノズル装着穴を、前記複数の植付穴の列の間に配置し、
前記ノズルから前記根圏部に養液を噴霧する構成としていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記下側パネルの幅方向両側の側壁は上向き広がり方向に傾斜させた傾斜側壁と、前記上側パネルの幅方向両側の側壁は下向き広がり方向に傾斜させた傾斜側壁とし、
かつ、前記下側パネルおよび前記上側パネルの幅および高さを変えて、前記栽培ボックスを幅広、幅狭、浅底、深底のいずれかの形状とし、
さらに、該上側パネルの両側の傾斜側壁の間の頂面に前記ノズル装着穴を設けると共に、前記傾斜側壁に千鳥配置で前記植付穴を設けている請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記下側パネルおよび上側パネルの幅方向両側の側壁は垂直壁とすると共に、前記上側パネルの頂面および下側パネルの底面は水平し、
かつ、前記下側パネルおよび前記上側パネルの幅および高さを変えて、前記栽培ボックスを幅広、幅狭、浅底、深底のいずれかの形状とし、
さらに、幅狭の前記上側パネルの頂面に1つの前記ノズル装着穴を設け、又は幅広の前記上側パネルの頂面に複数の前記ノズル装着穴を間隔をあけて設け、
かつ、該ノズル装着穴を挟む位置に前記植付穴を設けている請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記下側パネルの幅方向両側の側壁の上端に外側に向けて突設した受板部を設け、該受板部に嵌合部を設ける一方、
前記上側パネルの幅方向両側の側壁の下端に外側に向けて突設した載置部を設け、該載置部に被嵌合部を設け、
前記上側パネルの前記載置部を前記下側パネルの前記受板部に載せて前記被嵌合部と前記嵌合部を嵌合し、あるいは前記上側パネルと下側パネルの両側の側壁の間に介在させて前記根圏部の容積を拡大する中間パネルを設け、該中間パネルの上端と下端に外側に突設した連結板部を前記載置部と受板部にそれぞれ当接させて連結している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
記養液供給管を主養液供給本管に長さ方向に間隔をあけて取り付け、該主養液供給本管を前記上側パネルの上面に搭載して配管している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記養液噴霧用のノズルとして、旋回流を噴霧する空円錐形ノズルまたは直進棒流をピンに衝突させて噴霧するピンジェット形ノズルを用いる請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
停電時に作動する発電機、または充電用太陽光発電パネルから給電されるバッテリーを備えている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記根圏部にCOを供給するCO供給装置を備えている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項9】
前記ノズルへの養液供給手段に付設している電気部品の停電および異常発生、養液を貯留する施肥タンク内の水位異常発生、前記根圏部に設置するCOセンサーの断線発生、日射センサーの断線発生のいずれかを検出した時にアラームを発信する異常通知装置を備えている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項10】
前記廃液口を通して回収した廃液を除菌するUV、オゾン、あるいは光触媒を用いた浄化装置と、浄化した廃液を濾過する自動洗浄フィルター装置と、該自動洗浄フィルター装置から施肥タンクにリターンさせる配管を備えている請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項11】
施肥タンク内に貯留する養液の過熱防止用チラー装置を備えている請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項12】
根圏部のCO濃度と養液の噴霧サイクルの少なくとも一方を、植物の成長段階と日射量に応じて自動制御するコントローラを備えている請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項13】
噴霧する養液のEC濃度とpHの制御手段を備えている請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培装置に関し、詳しくは、ビニルハウス等の温室内で栽培植物の根にノズルから養液を噴霧して霧栽培を行う植物栽培装置において、植物の根を位置させる閉鎖空間(以下、根圏部と称す)に噴霧する養液を効率的に根に吸収させることが出来、余剰養液を低減すると共に余剰養液が生じても迅速に排出でき、かつ、栽培植物を高密度に栽培可能として収穫量の増加並びに栽培植物の品質を上げることにより経済的な営農に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近時、土壌を用いることなく作物等の栽培を行う養液栽培が注目されている。長所としては、土壌病害や連作障害を回避でき、耕起、畝立、土寄せ、施肥、除草等の土耕に必要な作業が省略でき、給液や施肥管理が自動化でき、大規模化が容易になり、かつ、肥料や水の利用効率が向上する等が挙げられる。養液栽培の中でも、栽培植物の根圏部に養液を噴霧して霧状に充填させる「空中栽培」は、養液の吸収率が高く、生育を速めることが出来る。特に、植物の根に吸収させる噴霧養液を自在にコントロールして栽培植物の品質を高めることができ、かつ、自動化、省力化がしやすい利点がある。
【0003】
前記噴霧による植物栽培装置として本出願人は特許第5792888号公報(特許文献1)、特開2012-10651号公報(特許文献2)、WO2015/174493号公報(特許文献3)等を含め多数の提供をしている。
【0004】
特許文献1および特許文献2の植物栽培装置では、図17(A)に示すように、横長な栽培ボックス100内に長さ方向Lに沿ってボックス上面に栽培植物Pを間隔をあけて植栽し、これら栽培植物Pの根部Prを栽培ボックス100内に垂下させている。栽培ボックス100内には長さ方向Lに沿って上下を仕切る傾斜仕切板106を設置し、短辺側の一側壁101の内面中央に1つのノズル110を取り付ける一方、対向する他側壁102の近傍の下部に噴霧循環用のファン115を取り付けている。前記ノズル110とファン115とにより、栽培ボックス100内でノズル110からの養液の噴霧を傾斜仕切板106の上方で他側壁102へと流し、他側壁102に沿って下方へ流した後に、傾斜仕切板106の下方で一側壁101へ循環させている。特許文献2では図17(B)に示すように、栽培ボックス100の上面100aを階段状とし、各段に栽培植物Pを植栽し、栽培ボックス100の内部に設置するノズル110から根部Prに向けて養液を噴霧する一方、栽培植物Pの地上部の茎や葉に向けてノズル111から水や養液を噴霧している。
【0005】
特許文献3では、図18(A)(B)(C)に示すように、栽培ボックス100の内部に、長さ方向Lの側壁内面に間隔をあけてノズル110を配置し、これらノズルからボックス内部の根部Prに向けて養液を噴霧している。即ち、特許文献1、2では、長さ方向Lの一端に取り付ける1つのノズルから長さ方向に養液を噴霧しているのに対して、特許文献3では長さ方向に間隔をあけて配置する複数のノズル110から直交する幅方向Wに養液を噴霧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5792888号公報
【文献】特開2012-10651号公報
【文献】W02015/174493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1~3の従来の植物栽培装置では、栽培ボックスの中空部を囲む側壁の内面にノズルを設置しているため、設置作業およびメンテナンスはボックスの蓋を開いた状態で行う必要があり、作業手数がかかる問題がある。
また、前記特許文献1、2では、長さ方向の一端に設置した1個のノズルからの噴霧を他端に設置したファンで循環させるため、噴霧の飛距離を伸ばす必要がある。そのため、該ノズルとして二流体ノズルを用いることになる。しかしながら、二流体ノズルを用いると、圧力空気を供給するエアコンプレッサを必要とし、設備コストおよびランニングコストがかかる問題がある。一方、特許文献3では、各栽培植物の根に向かって養液を噴霧するため噴霧の飛距離を伸ばす必要は無く、一流体ノズルを用いることができ、設備コストおよびランニングコストの低減を図ることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献3の栽培装置とすると、1または2個の栽培植物の根に向けて直接噴霧しているためノズルの個数が多くなり、噴霧量も多くなる。そのため、作物に吸収されなかった余剰養液が多く発生し、栽培ボックス内に余剰養液が溜まりやすくなる。この余剰養液に栽培植物の根が浸ると養分の過剰摂取が起こり施肥管理が困難となる。かつ、溜まった余剰養液に病原菌が発生し、植物の根に感染すると根腐れや維管束の障害を起こしやすくなり、一旦病害が発生すると、均一な環境であるため短時間のうちに急速に拡大し栽培植物が全滅する恐れがある。
【0009】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、少ない噴霧量で中空の根圏部を高湿度環境として効率よく養液を根が吸収できるようにして、余剰養液を少なくすると共に余剰養液の排出が迅速に行え、かつ、ノズルの設置を含めた植物栽培装置の全体の組み立て及びメンテナンスが容易に行える植物栽培装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、栽培植物の根を下垂させる中空の根圏部を有する栽培ボックスを備え、前記根圏部に養液を霧状にして噴霧する植物栽培装置において、
前記栽培ボックスを上側パネルと下側パネルを着脱自在に組み合わせて設けると共に、該下側パネルの廃液口を設けた底壁の下部に長さ方向全長に亙って樋形状のガターを着脱自在に取り付けており、
前記上側パネルは長さ方向に間隔をあけてノズル装着穴を備え、各ノズル装着穴に養液噴霧用のノズルを差し込んで前記根圏部に吊り下げると共に、該上側パネルは栽培植物の植付穴を備え、該植付穴に栽培植物の根部を差し込んで前記根圏部に吊り下げて前記ノズルから養液を噴霧する構成としていることを特徴とする植物栽培装置を提供している。
【0011】
前記上側パネルはノズル装着穴と植付穴を設けて定植パネル兼ノズル取付パネルとして機能させる一方、前記下側パネルは伸びてくる根を収納する中空の根圏部として機能させると共にガターに余剰養液を導いている。前記上側パネルを下側パネルと分離していることにより、下側パネルに上側パネルを取り付けてから、上側パネルにノズル及び栽培植物を取り付けることができる。特に、上側パネルに設けるノズル装着穴を通してノズルを根圏部に吊り下げることができるため、メンテナンス時には上側パネルを下側パネルから分離することなく、ノズル装着穴からノズルを引き出してメンテナンスができ、ノズルの取り付け及びメンテナンスを簡単に行うことができる。
【0012】
本発明の植物栽培装置で用いる栽培ボックスは、前記上側パネルと、下側パネルとガターの3部材を必須として組み立てて構成している。長さ方向に延存する前記上側パネルと下側パネルとを組み立てた時に長さ方向の両端を閉鎖して中空の根圏部を構成するため、両端閉鎖パネルを取り付け、あるいは前記上側パネルまたは下側パネルに長さ方向の両端に閉鎖パネル部分を設けておいてもよい。
搬送時には複数の下側パネルを積み重ね、複数の上側パネルも積み重ねて輸送でき、梱包容量が小さくなり、輸送性に優れる。かつ、栽培ボックスは下側パネルに上側パネルを被せて搭載するだけで簡単に組み立てられ、栽培ボックスを小型化できる。
【0013】
前記ノズルからの養液噴霧量は前記根圏部が高湿度となる噴霧量としていることが好ましい。
前記のように、栽培ボックスを小型化し根圏部の容積を小さく出来るため、少ない噴量で小さい中空の根圏部内を効率よく霧を充満させて、高湿度の養液環境にでき、効率良く栽培植物の根に養液を吸収させることができる。このように、供給する養液量を低減でき、その結果、余剰養液を減少することができる。
【0014】
前記下側パネルの幅方向両側の側壁は上向き広がり方向に傾斜させた傾斜側壁と、前記上側パネルの幅方向両側の側壁は下向き広がり方向に傾斜させた傾斜側壁とし、
かつ、前記下側パネルおよび前記上側パネルの幅および高さを変えて、前記栽培ボックスを幅広、幅狭、浅底、深底のいずれかの形状とし、
さらに、該上側パネルの両側の傾斜側壁の間の頂面に前記ノズル装着穴を設けると共に、前記傾斜側壁に千鳥配置で前記植付穴を設ける構成とすることが好ましい。
【0015】
あるいは、前記下側パネルおよび上側パネルの幅方向両側の側壁は垂直壁とすると共に、前記上側パネルの頂面および下側パネルの底面は水平し、
かつ、前記下側パネルおよび前記上側パネルの幅および高さを変えて、前記栽培ボックスを幅広、幅狭、浅底、深底のいずれかの形状とし、
さらに、幅狭の前記上側パネルの頂面に1つの前記ノズル装着穴を設け、又は幅広の前記上側パネルの頂面に複数の前記ノズル装着穴を間隔をあけて設け、
かつ、該ノズル装着穴を挟む位置に前記植付穴を設けてもよい。
【0016】
栽培ボックス内部でノズルから噴霧する養液は下側パネルの下方へスムーズに落下して底部に溜まり、この溜まった余剰養液は底壁の廃液用開口からガターへと流れ込み、余剰養液を迅速に排出できる。前記廃液用開口は廃液穴でも廃液溝でもよい。よって、栽培ボックスの下側パネルの内部に余剰養液が廃液となって溜まることはなく、栽培植物の成長する根が栽培ボックス内で溜まった廃液に浸ることはなく、根腐れや植物の病害の発生を防止できる。なお、前記ガターの底壁は長さ方向の一端に向けて下方傾斜させても良い。
【0017】
略山形状とした前記上側パネルの左右の傾斜側壁の間の頂面は細長い平板形状で連続させ、該頂面に長さ方向に間隔をあけて設ける前記ノズル装着穴の大きさは、前記ノズルを挿入できる大きさとすると共に該ノズルを下端に吊り下げる養液供給管に前記ノズル装着穴より大きい蓋板を取り付け、該蓋板が前記ノズル装着穴の周縁に係止するものとしている。該構成とすることで、ノズルをワンタッチで栽培ボックスに取り付けおよび取り外しすることができる。
【0018】
前記のように、上側パネルの傾斜側壁には長さ方向に間隔をあけると共に上下方向で千鳥配置で上下複数段の植付穴を設け、各植付穴に栽培植物の根を装着した定植ポットを差し込んで着脱自在に取り付けることが好ましい。該定植ポットは上面開口の筒材で、多孔の底壁と周壁を備えると共に周壁の上端縁に沿って植付穴の周縁に保持される突出片を設けた形状としていることが好ましい。
なお、上側パネルは略山形状でなく、栽培室の壁面に沿って設置する栽培ボックスでは、一側壁を傾斜側壁とし、他側壁は植付穴が無い垂直壁とした直角三角形状としてもよい。その場合、該上側パネルと組み合わせる下側パネルも同様な直角三角形状となる。
【0019】
前記下側パネルの幅方向両側の側壁の上端に外側に向けて突設した受板部を設け、該受板部に嵌合部を設ける一方、
前記上側パネルの幅方向両側の側壁の下端に外側に向けて突設した載置部を設け、該載置部に被嵌合部を設け、
前記上側パネルの前記載置部を前記下側パネルの前記受板部に載せて前記被嵌合部と前記嵌合部を嵌合し、あるいは前記上側パネルと下側パネルの両側の側壁の間に介在させて前記根圏部の容積を拡大する中間パネルを設け、該中間パネルの上端と下端に外側に突設した連結板部を前記載置部と受板部にそれぞれ当接させて連結している。
前記中間パネルの上下端の連結板部には、上側パネルの載置部に設けた被嵌合部と嵌合する嵌合部、下側パネルの受板部に設けた嵌合部と嵌合する被嵌合部を設けている。
前記嵌合部は嵌合凸部、被嵌合部は嵌合凹部とし、凹凸嵌合することが好ましい。
【0020】
栽培する植物に応じて、前記根圏部の容積を拡大する必要がある時は、前記のように上側パネルと下側パネルの側壁の高さを大として栽培ボックスを深底としてもよいし、上側パネルと下側パネルを幅広としてもよい。
さらに、上側パネルと下側パネルの間に前記中間パネルを介在させてもよい。このように中間パネルを用いると上側パネルと下側パネルは変えることなく、中間パネルを介在させて取り付け、かつ、該中間パネルの高さを変えることで、栽培する植物の根の成長量に応じた根圏部の容積として、栽培植物に対応することができる。
【0021】
前記栽培ボックスを保持する架台は、前記下側パネルの受板部を支承する部分を取り付けた左右両側の支柱パイプと、該左右の支柱パイプを連結する下端連結パイプと前記ガターの下面を支持する上部連結パイプとからなる架台とすることが好ましい。
前記上側パネルに植え付ける栽培植物が葉物野菜等で低背であれば、前記栽培ボックスを上下複数段で前記左右両側の支柱パイプで支持して取り付けると、高密度で栽培することができる。トマト等の背の高い作物の場合は栽培ボックスを一段としている。
【0022】
前記上側パネルのノズル装着穴に差し込んで前記根圏部に吊り下げる養液供給管の下端に長さ方向の両側に分岐する管を設け、該管の前後両端に前方向きに噴霧する前記ノズルと後方向きに噴霧する前記ノズルを設ける一方、
前記長さ方向に並設させる複数本の栽培植物の間に前記ノズルを配置し、これらノズルを主養液供給本管に間隔をあけて取り付け、該主養液供給本管を上側パネルの上面に搭載して配管し、前記各ノズルを前記ノズル装着穴に差し込むだけで取り付けられるものとしている。
【0023】
即ち、前記上側パネルのノズル装着穴に差し込んで前記中空の根圏部に吊り下げる前記ノズルは、前記養液供給管の下端に設ける逆T形状の継ぎ手管の前後長さ方向両側の先端にそれぞれ取り付けた前向きのノズルと後向きのノズルとの前後一対のノズルとし、前記長さ方向に並設させる複数本の栽培植物の間に前記前向きノズルと後向きノズルを配置し、これら前後ノズルから前後方向に噴霧する養液を前後方向の栽培植物の根圏部に供給し、前記養液供給管を上側パネルの上方に配管している主養液供給本管に接続できるようにしていることが好ましい。
このように、前後一対のノズルを前後長さ方向の先端に取り付けた養液供給管を前記ノズル装着穴に差し込むだけで、上側パネルと下側パネルで囲まれた根圏部にノズルを取り付けられ、組立作業性を高めることができる。
具体的には、長さ方向に並設させる栽培植物の3~10本に1本の割合で前後一対のノズルを取り付けた1本の養液供給管を配置している。尚、ノズルは前後一対に限定されず、片側だけとしてもよい。
【0024】
詳しくは、前記養液供給管は水平方向の上端管の長さ方向中央から下向きに延長する垂直管を備え、上端管を主養液供給本管の間に介在させて連結し、
該垂直管の上端に前記蓋板を取り付けると共に、下端に前記逆T形状の継ぎ手管を連結し、
該継ぎ手管の下部の前後長さ方向に延在する分岐管の先端に前記前向きノズルと後向きノズルとを挿入して回転するだけのワンタッチ操作で連結できるようにしている。
前記前向きノズルと後向きノズルは、それぞれノズルの上流側にストレーナを一体的に取り付けた構造とし、主養液供給本管から養液供給管、継ぎ手管の分岐管を通してストレーナに流入する養液の異物をストレーナで除去した後、ノズルに流入させて噴霧している。
前記養液供給管を栽培ボックスの根圏部に長さ方向に間隔をあけて配置し、各養液供給管の下端で前向きノズルから前向きに養液を噴霧し、後向きノズルから後向きに養液を噴霧して、根圏部の全体に略均等に養液の霧を充満させている。
【0025】
前記のように、本発明では栽培ボックス内に栽培植物の根圏部に向けて養液を噴霧するノズルを間隔をあけて複数配置しているため、前記特許文献1の1本のノズルからの噴霧をボックス内に循環させる場合と比較して各ノズルからの噴霧飛距離を伸ばす必要はなく、よって、圧力空気を混合せずに養液のみを噴霧する一流体ノズルを用いることができる。このように、圧力空気を用いる二流体ノズルを用いないと、エアコンプレッサーを不要に出来ると共に、栽培ボックス内で噴霧を循環させるファンも不要にでき、ランニングコストおよび設備コストを低下できる。
【0026】
具体的には、養液からなる一流体を噴霧する一流体ノズルからの噴霧の平均粒子径は10μm~100、好ましくは10μm~50μm、更に好ましくは10~30μmの微霧からなるセミドライフォグとしている。セミドライフォグをノズルから噴霧すると、栽培ボックス内で水滴となって落下しにくく、栽培植物の根部への養液吸収率を高めることができると共に養液の無駄を無くすことができる。前記霧の粒子径はレーザ法で測定している。
【0027】
前記養液噴霧用の一流体ノズルとして、旋回流を噴霧する空円錐形ノズルまたは直進棒流をピンに衝突させて噴霧するピンジェット形ノズルを用いることが好ましい。
前記空円錐形ノズルは、例えば、ノズル本体とクローザーを備え、前記ノズル本体は中央に噴射穴が貫通した噴射側壁と外周壁を備え、該ノズル本体の噴射側壁と外周壁の内周面に囲まれた空間に前記クローザーが収容され、前記ノズル本体の噴射穴の大径流入口を前記噴射側壁の流入側内面の中央部分または前記クローザーの噴射側端面の中央部分に位置し、該大径流入口を囲む外周段部に設けられる円弧状の旋回溝の内周端が前記大径流入口に開口すると共に、前記旋回溝の外周端を前記クローザーの外周に設けられる液通路に開口させて前記旋回溝を流れる旋回流が前記噴射穴より噴霧されるものとし、かつ、前記旋回溝の内周端にオリフィスを備え、該オリフィスの最小部分の寸法は前記噴射穴の最小径部分の寸法と同等とされるノズルを用いることが好ましい。
【0028】
前記ピンジェット形ノズルは、ノズル本体の噴射側閉鎖壁の中心に直進棒流を噴射する直線穴からなる噴射穴を備えていると共に、該ノズル本体の噴射側閉鎖壁の外面から前記噴射穴と対向する位置に直進棒流が衝突する衝突用ピンを突設している。
該ピンジェット形ノズルでは噴射穴から噴射する直進棒流を前記衝突ピンに衝突させて、噴霧の微細化を図っている。
前記衝突ピンはノズル本体の噴射側閉鎖壁から突出するJ字状あるいはU字状の衝突枠を突設し、該衝突枠に設ける前記衝突用ピンはアルミナ等のセラミックで形成し、衝突する直進棒流による摩損を低減していることが好ましい。
【0029】
前記ノズルに養液供給管を介して、ポンプで所要圧とした養液を供給し、該ノズルの噴霧圧力を0.5MPa~2MPaとしていることが好ましい。栽培植物の成長する根部の長さに対応させて前記ポンプの吐出圧を変えて前記ノズルの噴霧圧力を0.5MPa~2MPaの範囲内で漸次高圧として噴霧量を増加することが好ましい。
【0030】
本発明は主として営農用を対象としているため、栽培ボックスは、例えば、長さ1m、幅0.5m、高さ0.3mを1ユニットとし、栽培施設に応じて複数ユニットを連結した大型栽培ボックスとしている。この大型栽培ボックス内に栽培植物を長さ方向に50~100cmの間隔をあけて配置することが好ましい。
【0031】
本発明の植物栽培装置は、停電時に作動する発電機または充電用太陽光発電パネルから給電されるバッテリーを備えていることが好ましい。
【0032】
さらに、前記栽培ボックスの根圏部にCOを供給するCO供給装置を備えていることが好ましい。具体的には、栽培ボックスの外側にCOボンベを配置し、該COボンベから栽培ボックスに供給管を通して根圏部内にCOを供給して、栽培植物の生育を促進させても良い。
【0033】
前記ノズルへの養液供給手段に付設している電気部品、例えば、配管に付設している圧力計、流量計、電磁開閉弁、ポンプの駆動機等の停電および異常発生、養液を貯留する施肥タンク、廃液のリターンタンク等の各種タンク内の水位異常発生、前記根圏部に設置するCOセンサーの断線発生、日射センサーの断線発生のいずれかを検出した時にアラームを発信する異常通知装置を備えていることが好ましい。異常通知装置は作業員の携帯用通信機にアラーム発信する機能を備えていることが好ましい。
【0034】
前記廃液口を通して回収した廃液を除菌するUV、オゾン、あるいは光触媒を用いた浄化装置と、浄化した廃液を濾過する自動洗浄フィルター装置と、該自動洗浄フィルター装置から施肥タンクにリターンさせる配管を備えていることが好ましい。
【0035】
更に、施肥タンク内に貯留する養液の過熱を防止するため、過熱防止用のチラー装置を備えていることが好ましい。具体的には、チラー装置と施肥タンクとを配管を介して連通し、チラー装置で冷却した養液を施肥タンクに還流させる構成としている。
【0036】
さらに、前記栽培ボックス内の根圏部のCO濃度と養液の噴霧サイクルの少なくとも一方を、植物の成長段階と日射量に応じて自動制御するコントローラを備えていることが好ましい。
【0037】
かつ、植物の成長段階と日射量に応じて、噴霧する養液のEC濃度とpHの制御手段も備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の植物栽培装置では、栽培植物の根を垂れ下げる栽培ボックスを着脱自在に組み合わせる上側パネルと下側パネルで形成し、該下側パネルに廃液を流すガターを着脱自在に組みつけることで、栽培ボックスを簡単かつ安価に組み立てることができ、初期費用を低減できる。さらに、栽培ボックスの内部に配置するノズルは、上側パネルの外方からノズル装着穴に差し込んで簡単に取り付けることができる。
【0039】
かつ、栽培ボックスは上側パネルの上端のノズル装着穴を通してノズルを中空の根圏部内に吊り下げ、両側の傾斜側壁に植付穴を設けているため、高密度に栽培植物を配置でき、栽培ボックスの小型化を図って、根に養液を吸収させるために噴霧するノズルの個数を減らすことができる。
さらに、栽培ボックスの中空の根圏部内で下方に落下する余剰養液(廃液)の液滴は下側パネルの底部に集まり、側壁に付着する液滴も側壁から底部へ自重落下させ、下側パネルの底壁に設けた廃液用開口から下方のガターに流下させているため、根圏部の底部に廃液を溜めず、成長した栽培植物の根が廃液に浸って根腐れするのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】(A)は本発明の第一実施形態の植物栽培装置の栽培施設を示す概略斜視図、(B)は栽培施設内に設置する栽培ボックスを示す斜視図である。
図2】(A)は栽培ボックスを架台で保持した状態を示す側面図、(B)は栽培ボックスの拡大側面図、(C)は栽培ボックスの長さ方向の断面図である。
図3】栽培ボックスの上側パネルを示し、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は断面図である。
図4】栽培ボックスの下側パネルを示し、(A)は底面図、(B)は斜視図、(C)は断面図である。
図5】ガターの斜視図である。
図6】栽培植物用のポットを示し、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は平面図である。
図7】(A)は栽培ボックス内にノズルを吊り下げている状態を示す概略図、(B)は(A)の拡大断面図である。
図8】(A)はノズルと養液供給管の継ぎ手管との連結部分を示す図面、(B)は継ぎ手管の側面図、(C)は(B)の底面図である。
図9】(A)はストレーナと一体型のノズルの断面図、(B)はノズルの要部断面図である。
図10】栽培施設の設備を示す図面である。
図11】(A)(B)は下側パネルを変えた栽培ボックスの第二実施形態の側面図である。
図12】(A)(B)(C)は上側パネルと下側パネルの幅と深さを変えた栽培ボックスの第三実施形態の概略図である。
図13】中間パネルを用いた栽培パネルの第四実施形態の断面図である。
図14】栽培ボックスを上下多段で設置した第五実施形態の側面図である。
図15】第六実施形態のピンジェット形のノズルを示し、(A)はストレーナ付きピンジェット型ノズルの断面図、(B)はストレーナの側面図、(C)はストレーナの部分断面図、(D)はノズル本体の噴射穴から直進棒流が衝突ピンに衝突する状態を示す説明図である。
図16】第七実施形態の他のピンジェット形のノズルの断面図である。
図17】(A)(B)は従来例を示す図面である。
図18】(A)~(C)は他の従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の植物栽培装置の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図10に第一実施形態を示す。
植物栽培装置は図1(A)に示すように、太陽光を取り入れるビニルハウスまたはガラス張りの温室等からなる栽培施設50の内部に図1(B)に示す栽培ボックス1を作業員通路をあけて多数列で並設している。なお、本実施形態では栽培施設の1つのハウス内に8列で栽培ボックス1を並設している。かつ、本実施形態では栽培植物Pが成長時には高背となるトマト等であるため、各列に栽培ボックス1は一段としている。なお、低背のレタス等の葉物野菜では図13に示すように、各列に栽培ボックス1を上下2段としている。更に3段以上としてもよい。また、太陽光を取り入れる温室等に代えて建造物の内部を栽培施設とする植物工場内に栽培ボックスを設置してもよい。
【0042】
栽培ボックス1は上側パネル2と下側パネル3を着脱自在に組み合わせて、栽培植物Pの根Prを下垂させる長尺な密閉空間となる中空の根圏部4を設け、下側パネル3の下部にガター5を着脱自在に組みつけて形成している。前記長さ方向に延存する前記上側パネルと下側パネルとを組み立てた時に長さ方向の両端を形成される開口を両端閉鎖パネル(図示せず)で閉鎖して中空の根圏部4を設けている。
上側パネル2、下側パネル3およびガター5は樹脂または発泡スチロールからなる。樹脂または発泡スチロールとすると軽量かつ安価となる。所要の強度、耐久性、耐候性、軽量性があれば素材は限定されない。該栽培ボックス1は栽培植物Pを一定間隔をあけて栽培できる大きさとしており、本実施形態では栽培ボックス1の高さHは略30センチ、幅Wは50センチとし、該栽培ボックス1を長さ方向に複数連結して、栽培施設50に応じた長さとしている。なお、栽培植物により高さH、幅Wを変えてもよい。
【0043】
図2、3に示すように上側パネル2は略山形状で、下向きに広がる両側の傾斜側壁2aに上下二段の千鳥配置で植付穴6を設けている。両側の傾斜側壁2aに挟まれる頂面2bに長さ方向に間隔をあけてノズル10を差し込むノズル装着穴7を設け、上側パネル2を定植パネル兼ノズル取付パネルとして機能させている。
【0044】
傾斜側壁2aの下端には外向きに載置部2cを突設し、該載置部2cの下面に下向きの嵌合凹部2dを設けている。頂面2bに設けるノズル装着穴7は長さ方向を長辺とする長方形の穴で、養液供給管14の下端に前後一対のノズル10(10A、10B)を取り付けた状態でスムーズに貫通できる大きさとしている。該ノズル装着穴7は長さ方向に並ぶ複数の植付穴6毎に1つ設けている。本実施形態では3つの植付穴6(千鳥配置する上下の植付穴6では6個)に1つのノズル装着穴7を設けている。
さらに、ノズル装着穴7に近接した位置の傾斜側壁2aに、内部観察穴2hを設け、該内部観察穴2hを開閉する蓋2kを設けている。
【0045】
図2、4に示すように、上側パネル2と略対称形状で、上側パネル2の頂面2bと対向する底壁3bに長さ方向に間隔をあけて廃液口8を設けている。底壁3bを挟む傾斜側壁3aの上端に載置部2cを搭載する受板部3cを外向きに突設し、該受板部3cの上面に上側パネル2の嵌合凹部2dに嵌合する嵌合凸部3dを設けると共に、下面にパイプ受け凹部3eを設けている。さらに、底壁3bの外面全長にガター5を取り付ける嵌合突起3fを設けている。
【0046】
さらに、図1(B)に示すように、下側パネル3の傾斜側壁3aにCO導入穴3hを設け、栽培ボックス2の外部に設置するCOボンベ80から中空の根圏部4内にCOを供給出来るようにしている。さらに、該COボンベ80からのCOの供給時及び供給量は、根圏部4内に設置するCOセンサー72とハウス内に設置する日射センサー71の検出値、さらに植物の成長段階に応じて自動制御している。
【0047】
ガター5は図5に示すように、底壁5aと両側壁5bとからなる樋形状で、両側壁5bの上端に前記嵌合突起3fと嵌合する嵌合凹部5fを設け、ガターの一端にドレン管12の上端と連結する排出口5hを設けている。
なお、図2(C)に示すように、ガター5の底壁5aは長さ方向の一端から他端にかけて廃液が流れ落ちるスロープを設け、傾斜底壁としてもよい。あるいは、3部材で形成している栽培ボックス1そのものを傾斜させてもよい。
【0048】
下側パネル3の受板部3cに上側パネル2の載置部2cを重ね、嵌合凸部3dを嵌合凹部2dに嵌合して、断面六角形状の中空の根圏部4を有する横長なボックスを組み立て、下側パネル3にガター5を組みつけ、3部材で栽培ボックス1を形成している。該栽培ボックス1は市販の農用パイプおよび受け金具からなる架台で保持している。詳しくは、図1(B)に示すように、下側パネル3の受板部3cのパイプ受け凹部3eに嵌合する長さ方向のパイプ11Aを左右両側の支柱パイプ11Bに取り付けた受金具11Cで支持している。左右の支柱パイプ11Bを地面Gに突き刺して立設し、下端連結パイプ11Dとガター5の下面を支持する上部連結パイプ11Eで連結している。
【0049】
上側パネル2の植付穴6には図6(A)~(C)に示すポット16を用いて、栽培植物Pの根Prを栽培ボックス1の中空の根圏部4に吊り下げている。
ポット16は樹脂成形品からなり、植付穴6に挿入する上面開口の円筒で、傾斜側壁2aに設けた植付穴6に挿入係止できるように、上端は傾斜させると共に傾斜周縁に係止する係止片16aを突設している。かつ、外周壁および底壁に多数の開口16hを設け、栽培植物Pの根Prが開口16hを通して根圏部4の内部に伸びられるようにしている。
【0050】
上側パネル2のノズル装着穴7に差し込んで装着するノズル10として養液のみを噴霧する一流体ノズルを用いている。図7および図8に示すように、養液供給管14の上端管14uの貫通穴14hに主養液供給本管13を挿入して取り付けている。
【0051】
詳しくは、図7(A)(B)に示すように、養液供給管14は水平方向の上端管14uの長さ方向中央から下向きに延長する垂直管14aを備え、上端管14uの貫通穴14hの両端に主養液供給本管13の切断部を内嵌して連結している。
垂直管14aの上部外周に、長方形状のノズル装着穴7を閉鎖する大きさとした蓋材70を固着している。垂直管14a内の上下の貫通穴14cは上端管14uの貫通穴14hに連通し、主養液供給本管13から養液供給管14の上端管14uの貫通穴14hに流入した養液が垂直管14aの貫通穴14cを下端まで流下する形状としている。
【0052】
該垂直管14aの下端に逆T形状管からなる継ぎ手管60を連結し、該継ぎ手管60の下部の前後長さ方向に延在する分岐管60aと60bの各先端に前向きノズル10Aと後向きノズル10Bをそれぞれ挿入して回転するだけのワンタッチ操作で連結している。
分岐管60aと60bの周壁に図8(A)(B)(C)に示すように90度間隔をあけて差込穴60kを設け、これら差込穴60kは回転方向の一端に係止部60iを備え、後述するノズル10(10A、10B)の90度間隔をあけて設けた係止片29を差込穴60kに挿入した後、回転させると、係止片29が係止部60iと係止して連結できる形状としている。
該継ぎ手管60の逆T字状の貫通穴60hは養液供給管14の垂直管14aの貫通穴14cの下端と連通し、貫通穴14cから流入する養液を前後一対のノズル10A、10Bに分岐して流入させている。
【0053】
前後一対のノズル10(10A、10B)を継ぎ手管60を介して下端に取り付けた養液供給管14の垂直管14aは、上側パネル2の頂面2bのノズル装着穴7にスムーズに通すことができ、蓋材70が頂面2bに接触するとノズル装着穴7を閉じると共に、中空の根圏部4に前後一対のノズル10(10A、10B)を吊り下げるものとしている。
ノズル装着穴7を長さ方向に間隔をあけて設け、養液供給管14を栽培ボックスの根圏部4に長さ方向に間隔をあけて配置し、各養液供給管14の下端の前向きノズル10Aから前向きに養液を噴霧し、後向きノズル10Bから後向きに養液を噴霧することで、根圏部4の全体に略均等に養液の霧を充満させて高湿度環境としている。
【0054】
前向きノズル10Aと後向きノズル10Bは、それぞれ上流側にストレーナ17を一体的に取り付けた構造とし、主養液供給本管13から養液供給管14、継ぎ手管60の分岐管を通してストレーナ17に流入する養液の異物をストレーナで除去して、ノズル10に流入させて噴霧している。ストレーナ17の構成は後述する。
ストレーナーは養液供給管の途中もしくは養液供給管と継ぎ手管の間に取り付けてもよい。
【0055】
ノズル10(10A、10B)は一流体ノズルとし、肥料を水により所要倍率で希釈した養液のみを噴射している。即ち、図16で示す従来例で提示したエアコンプレッサーを必要とする二流体ノズルを用いていない。
一流体ノズルからなるノズル10は、ノズルの噴射穴の先端から旋回流として養液を噴霧する空円錐噴霧ノズルとしている。該ノズル10からの噴霧の平均粒子径は本実施形態では10~30μmとしている。
【0056】
前記ノズル10は図9に示すように、ノズル本体23とクローザー30の2部材からなり、該2部材はいずれも樹脂成形品からなる。ノズル本体23は噴射側壁23aと該噴射側壁の外周に連続する外周壁23bを備え、噴射側壁23aと対向する他端は開口としている。ノズル本体23の噴射側壁23aと外周壁23bの内周面に囲まれた空間23cにクローザー30を内嵌固定して収容し、噴射側壁23aの中央に噴射穴25を貫通して設けている。噴射穴25は、噴射側に噴射口25aに連続する小径部を備え、該小径部に流入端側を広げたテーパ状穴25tを連続させ、該テーパ状穴を大径直線通路25uと連続させている。
【0057】
ノズル本体23の空間23cに面する噴射側壁23aの流入側内面は、図9(B)に示すように、中央に開口する大径流入口25eを囲む円形状の段部を設け、該段部に180度間隔をあけて一対の円弧状の旋回溝26を設けている。これら旋回溝26の内周端を大径流入口25eに180度間隔をあけて開口して連通している。
【0058】
旋回溝26は円弧状に湾曲すると共に、内周端に向けて次第に幅狭とし、内周端側に最小幅としたオリフィス27を設けている。オリフィス27の開口の幅寸法は噴射穴25の最小径部分の噴射口25aの幅と同一としている。かつ、これにより噴射口より小さい異物であれば旋回溝26のオリフィス27で詰まることはなく、噴射口25aからの養液の噴霧と共に外部に排出されるようにしている。さらに、旋回溝26は断面U形状とし、底部はアール形状とし、異物が引っ掛かるエッジを設けておらず、メンテナンス時に容易に異物を除去できるようにしている。
【0059】
クローザー30は略円柱形状とすると共に流入側の先端中央に液流入口30cを設けている。該クローザー30はノズル本体23の空間23cに内嵌固定し、クローザー30の平坦面からなる噴射側端面30aをノズル本体23の段部23dに押接すると共に、該クローザー30の外周面をノズル本体23の外周壁23bの内周面に押接している。
【0060】
クローザー30の噴射側端面30aがノズル本体23の大径流入口25eを囲む段部23dに押接されることで、旋回溝26、26を閉断面の旋回通路としている。
クローザー30の外周面30gに90度間隔をあけて4つの円弧状の窪みを設け、ノズル本体の外周壁23bとの間に液通路33を設けている。該液通路33はノズル本体23の液流入部に連通させている。
クローザー30の液流入口30cを囲む外周壁には、液流入口30cの窪みと連通する径方向の液通路を設けている。これにより、クローザー30の液流入口30cに流入する液が液通路33を通してノズル本体23の液流入部に流入し、旋回溝26を通して噴射穴25に旋回流として流入し、先端の噴射口25aから外部に噴射されるようにしている。
【0061】
前記ノズル本体23にクローザー30を内嵌固定して組み立てるノズル10は、前記の
ように、養液供給管14の下端に連結した継ぎ手管60の分岐管60a、60bの先端にそれぞれノズル本体23の流入側を、前記のように、挿入した後に回転させてワンタッチで取り付けている。
ノズル本体23の流入側に一体的に内嵌固定するストレーナ17は三次元状に連続する空孔を備えた樹脂材からなり、空孔率は40~80%としている。ノズル10の噴射口25aおよび旋回溝26のオリフィス27の寸法は、ストレーナ17の空孔の平均径より大きくして、ノズルのオリフィス27および噴射口25aで詰まる異物をストレーナ17で予め捕捉できるようにしている。
【0062】
主養液供給本管13から供給される養液Qは養液供給管14、継ぎ手管60の分岐管60a、60bを通してノズル10と一体のストレーナ17に導入され、該ストレーナ17で養液Qに混入する異物が捕捉される。ストレーナ17を通った養液はノズル10内のクローザー30に流入し、液通路33を通して旋回溝26に流入する。
旋回溝26を流通する過程で、オリフィス27に向けて流路断面積を漸次減少しているため液体圧が高められ、噴射穴25へ旋回しながら流れ込み、ノズル本体23の噴射口25aより旋回しながら噴射され、外部へ飛散する。旋回溝26のオリフィス27および噴射穴25の最小径部分で噴射圧が高められることより、外部に噴射される噴霧の飛距離は長くなる。かつ、旋回溝26で旋回された状態で噴射穴25を旋回しながら流通するため、液滴同士が衝突して微粒化される。このように、微粒化機能が優れているため、噴霧圧力を0.5MPa~2MPaの低圧としても、平均粒子径が10~100μm、好ましくは10~50μm以下、更に好ましくは10~30μmのセミドライフォグを噴霧できる。
【0063】
主養液供給本管13から供給する養液Qに異物が混入していると、まず、ストレーナ17の通過時に、ストレーナ17の空孔でオリフィス27および噴射穴25で詰まる異物を予め捕捉している。そのため、オリフィス27および噴射穴25の最小径部分で詰まる異物はノズル10に流入しない。また、ストレーナ17を通過した噴射穴25の最小径部分より小さい異物は旋回溝26のオリフィス27で詰まることなく噴射穴25からそのまま外部へ排出される。その結果、噴射穴25およびオリフィス27での異物による目詰まり発生を防止できる機能も優れている。
【0064】
本発明の栽培ボックス1を備えた栽培施設50では、図10に示すように、各栽培ボックス1の上側パネル2の頂面2bに配管する主養液供給本管13を複数本(本実施形態では4本)をまとめて供給管40に連続し、該供給管40をまとめて供給本管41を介して噴霧する養液を貯留する施肥タンク42に接続している。施肥タンク42に水位センサー58、撹拌器59、EC・PHセンサー69を設置している。前記各供給管40に制御盤43で制御される電動式の開閉弁44を介設すると共に、供給本管41に制御盤43で制御されるポンプ45を介設している。施肥タンク42は給水管52と接続すると共に、濃縮液肥タンク46および酸アルカリタンク47と配管を介して接続して液肥混合ユニット65を設けている。かつ、施肥タンク42は循環式のチラー装置48と循環管49を介して接続し、施肥タンク42内に貯留している液肥の過熱を防止している。
【0065】
さらに、ガター5に接続するドレン管12を排水管54を介してリターンタンク55に接続し、該リターンタンク55内に集めた廃液を浄化装置56に循環管57を介して接続し、ポンプ67によりリターンタンク55に戻している。浄化装置56では廃液をUV、オゾン、光触媒等を用いて除菌し、養液として再生している。かつ、リターンタンク55に貯留した浄化済みの廃液を再利用するため、タンク内に汲み上げポンプ66を設置し、汲み上げた廃液を配管61を通して自動洗浄フィルター62に通して濾過した後、施肥タンク42に戻している。このように、浄化濾過して清浄化した廃液を施肥タンク42に供給して養液を無駄なく再利用している。
【0066】
前記制御盤43は電動式の開閉弁44、施肥タンク42に設置した水位センサー58、撹拌器59、EC・PHセンサー69と電気接続すると共に、各種配管に設置している電磁開閉弁、圧力センサー、流量センサー、リターンタンク55内の汲み上げポンプ66と接続し、駆動信号を出力すると共に、前記各種センサーからの検出値を受信している。
【0067】
さらに、栽培施設50のハウス内には図1(A)に示す日射センサー71を設け、該日射センサー71および栽培ボックス1内の根圏部に設置したCOセンサー72の検出値を入力するコントローラ70を設けている。該コントローラ70には前記制御盤43から前記各種センサーの検出値も入力されている。前記施肥タンク42内のEC・PHセンサー69で検出したEC値およびPH値、日射センサー71で検出した日射量、さらに栽培植物の成長段階に対応させて、コントローラ70から前記液肥混合ユニット65の濃縮液肥タンク46、酸アルカリタンク47から施肥タンク42へ供給する濃縮液、酸、アルカリ成分の供給量を制御する指令を送信している。かつ、前記電気部品の停電および異常発生、タンク内の水位異常発生、前記根圏部に設置するCOセンサー72の断線発生、日射センサー71の断線発生を検出した時、コントローラ70から携帯用通信機器75に異常を知らせるアラームを送信できるようにしている。
さらに、停電時に作動する発電機または充電用太陽光発電パネルから給電されるバッテリーを備えている。
【0068】
さらに、コントローラ70で栽培ボックス1内の根圏部のCO濃度と、施肥タンク42からの養液の噴霧サイクルを、植物の成長段階と日射センサー71の検出値に応じてコントローラ70で自動制御している。前記植物の成長段階は、例えば、初期、中期、終期と3段階に分けている。
【0069】
本発明の植物栽培装置では、各栽培ボックス1に、養液供給管14、分岐管を備えた継ぎ手管60を介してノズル10(10A、10B)から養液を栽培植物Pの根圏部4に向けて噴霧し、高湿度の養液環境としている。噴霧は平均粒子径を10~50μm(本実施形態では10~30μm)としているため、水滴として凝集して落下するのを抑制でき、栽培ボックス1内で空気中に浮遊させ、栽培植物Pの根部Prは養液を吸着しやすいため、養液の吸収効率を高めることができる。かつ、前記ノズルからの養液噴霧量は栽培ボックス1の根圏部が高湿度となる噴霧量としている。
【0070】
また、栽培ボックス1内に前後一対のノズル10(10Aと10B)を間隔をあけて複数配置しているため、各ノズル10からの噴霧飛距離を伸ばす必要はなく、よって、ノズル10として圧力空気を混合せずに養液のみを噴霧する一流体ノズルを用いることができる。かつ、栽培ボックス1内で噴霧を循環させるファンを設置する必要はなく、エアコンプレッサーおよびファンを不要にでき、ランニングコストおよび設備コストを低下できる。
【0071】
特に、本栽培ボックス1では、上側パネル2の上端の頂面2bからノズル10を中空の根圏部4内に吊り下げ、両側の傾斜側壁2a、2aにそれぞれ上下2段に植付穴6を設けて、栽培植物Pの根Prをポット16に入れて中空の根圏部4内に吊り下げている。よって、栽培ボックス1を小型化しながら、栽培植物Pを高密度に定植でき、これら栽培植物の根圏部に養液を噴霧するノズル10の個数を減らすことができる。
【0072】
さらに、中空の根圏部4内で下方に落下する余剰養液(廃液)の液滴は下側パネル3の底部に落下し、側壁に付着する液滴も底部へ落下させることが出来る。かつ、下側パネル3の底壁3bに廃液口8を設け、下方のガター5へ流下させているため、下側パネル3の底部に廃液は溜まらず、成長した栽培植物の根Prが廃液に浸って根腐れするのを防止できる。さらに、ガター5からドレン管12へと連続させているため、自動的にリターンタンク55に廃液を溜めることができる。かつ、該リターンタンク55内の廃液を浄化装置56へと送給して浄化すると共に、自動洗浄フィルターを通して濾過した後に施肥タンク42に戻して再利用できる。
【0073】
また、上側パネル2へのノズル10の取リ付けは、主養液供給本管13を頂面2bに配管し、ノズル装着穴7にノズル10を位置させて挿入するだけで簡単に取り付けることができ、ノズル10を取り付けた養液供給管14に固着した蓋材70でノズル装着穴7を塞ぐことができる。逆にノズル10のメンテナンス時は養液供給管14を上方へ引き上げるだけでノズル10を取り出すことができる。このように、ノズル10の取り付け及びメンテナンスが容易となる利点を有する。
かつ、ノズル取付部分に近接して内部観察穴2hを設けているため、蓋2kを外して簡単に中空の根圏部4内を観察することができる。
【0074】
さらに、栽培ボックス1内にCOボンベ80からCOを供給しているため、栽培植物の成長を促進できる。かつ、制御盤43、コントローラ70を備え、施肥のEC、PHを栽培植物の成長段階に対応して適正に自動調合できる。さらに、電気系統の異常を作業者に知らせることができ、作業能率を高めると共に、作業負担を軽減できる。
【0075】
さらにまた、栽培ボックス1は上側パネル2、下側パネル3、ガター5を栽培施設50内で簡単に組み立てることができる。これら上側パネル2、下側パネル3は複数枚を重ねて栽培施設まで搬送でき、搬送性に優れ、初期コストの低減を図ることができる。
また、噴霧する養液は施肥タンク42をチラー装置48を用いて過熱防止を図っているため、噴霧により栽培ボックス1内の温度が上昇し、根Prが死滅するのを防止できる。
【0076】
図11(A)(B)に栽培ボックスの形態を変えた第二実施形態を示す。
図示のように、下側パネル3の両側の傾斜側壁3aを傾斜角度を急激にした上側部3a1と、傾斜角度をゆるくした底側の下側部3a2の段状としてもよい。変形例(A)(B)の形状とすると、上側パネル2と下側パネル3で囲まれる中空の根圏部4の下部容積を増大でき、栽培植物Pの根Prが成長しても、根同士が絡み合うのを抑制でき、ノズル10からの噴霧の飛距離を確保できる。
【0077】
図12(A)(B)(C)に栽培ボックスの形態を変えた第三実施形態を示す。
第三実施形態の栽培ボックス1は上側パネル2の両側の側壁2a-3及び下側パネル3の両側の側壁3a-3は垂直とし、上側パネル2の頂面2b-3および下側パネル3の底壁3b-3は水平としている。
【0078】
図12(A)の第三実施形態Aは幅広で浅底とし、中空の根圏部4の容積を幅方向に広げている。上側パネル2の頂面2b-3の幅方向の中央にノズル装着穴を設け、ノズル10を差し込んで根圏部4に吊り下げている。該ノズル10を差し込むノズル装着穴を挟む位置に植付穴(図示せず)を設け、これら植付穴に前記第一実施形態と同様に栽培植物の根部を充填するポットを装着している。
この第三実施形態Aは、栽培植物の根が横広がりの場合に好適に用いられる。
【0079】
図12(B)の第三実施形態Bは幅狭で深底とし、中空の根圏部4の容積を深さ方向に広げ、栽培植物の根が縦長の場合に好適に用いられるものとしている。
図12(C)の第三実施形態Cは第三実施形態Aと同じ幅広で浅底とし、中空の根圏部4の容積を幅方向に広げている。該第三実施形態Cでは上側パネル2の頂面2b-3の幅方向に間隔をあけてノズル装着穴を2個設け、それぞれノズル10を差し込んで根圏部4に吊り下げている。前記各ノズル10を差し込むノズル装着穴を挟む位置に植付穴(図示せず)を設け、これら植付穴に前記第一実施形態と同様に栽培植物の根部を充填するポットを装着している。該第三実施形態Cの栽培ボックス内には栽培植物を幅方向で2列に並べて栽培することができる。なお、栽培ボックスの幅をさらに広げて、3列、4列でノズルを吊り下げ、栽培植物を対向させて3列、4列で栽培することも可能である。
【0080】
図13に栽培ボックスの形態を変えた第四実施形態を示す。
前記第一~第三実施形態では上側パネル2と下側パネル3とで中空の根圏部4を形成しているが、第四実施形態では、上側パネル2と下側パネル3の両側の傾斜側壁2a、3aの間に長方形状の平板からなる中間パネル85を介在させて根圏部4の容積を拡大している。詳しくは、中間パネル85の上端面85aは上側パネル2の傾斜側壁2aの下端から外向きに突設した載置部2cと当接させ、該載置部2cの下面に設けた嵌合凹部2dを嵌合する嵌合凸部8dを上端面85aの中央から突設している。
同様に、中間パネル85の下端面85bは下側パネル3の傾斜側壁3aの上端から外向きに突設した受板部3cと当接させ、該受板部3cの上面に設けた嵌合凸部3dを嵌合する嵌合凹部8eを下端面85bの中央から突設している。
【0081】
上側パネル2と下側パネル3とは中間パネル85を介在させずに直接に連結する場合と同一のパネルを用いることができ、左右同形の中間パネル85を用いるだけで、栽培する植物の根の成長が大きな場合に、根圏部4の容積を拡大して対応することができる。
このように、上側パネルと下側パネルは変えることなく、中間パネル85を取り付け、かつ、該中間パネルの高さを変えることで、栽培する植物の根の成長量に応じた根圏部の容積を変えて、栽培植物に対応することができる。
【0082】
図14は栽培施設のハウス内における栽培ボックス1の配置形態を変えた第五実施形態を示す。前記第一実施形態では栽培ボックス1は一段であったが、第五実施形態では、栽培ボックス1を上下2段で支柱パイプ11Bに取り付けている。
前記第一実施形態では背の高いトマト等を栽培植物Pとするため、栽培ボックス1は一段としているが、レタス、イチゴ等の低背植物では、該第五実施形態で示すように、下段の栽培ボックス1-Dの上部に上段の栽培ボックス1-Uを所要の高さ空間を空けて取り付けてもよい。該構成とすると、生産性を高めることができる。
【0083】
さらに、栽培植物の根をポットに植え込まずに、上側パネルの傾斜側壁の内面に支持シートを貼り付け、植付穴を閉鎖する部位では根を差し込むスリットを設けておき、スリットに根を差し込んで支持してもよい。また、植付穴は千鳥配置の上下2段に限定されず、1段でも良いし、3段以上でもよい。かつ、上側パネルの形状は山型に限定されず、水平な上面を設け、該上面の中央にノズル装着穴を設けると共に、両側に植付穴を設けてもよい。さらに、上面を片流れの三角形として、栽培施設の外側壁に沿って配置してもよい。
【0084】
図15に、噴霧用ノズルとして一流体ノズルのピンジェット型ノズルを用いる第六実施形態を示す。
栽培ボックス1の根圏部4に吊り下げる養液供給管14の下端の継ぎ手管60の前後両端に、第一実施形態の旋回型の空円錐ノズル10に代えて、ストレーナ付きのピンジェット型のノズル10-Pを用いている。該ピンジェット型のノズル10-Pはノズル本体の噴射側閉鎖壁の中心に直進棒流を噴射する直線穴からなる噴射穴を備えていると共に、該ノズル本体の噴射側閉鎖壁の外面から前記噴射穴と対向する位置に直進棒流が衝突する衝突用ピンを突設し、噴射穴から噴射する直進棒流を前記衝突ピンに衝突させて、噴霧の微細化を図るものである。
【0085】
詳細には、ピンジェット型のノズル10-Pは第一実施形態と同様に樹脂製の多孔質材からなるストレーナ17を組みつけている。
【0086】
ノズル10-Pはメタルインジェクションで成形した筒状のノズル本体92の一端閉鎖壁からなる噴射側壁92aの外面よりJ字状の衝突枠93を突設している。該衝突枠93は噴射側壁92aの先端外面から突出する縦枠部93aと、該縦枠部93aの先端から中心軸線を横断して突出する横枠部93bを備え、該横断枠93bの先端側の中心軸線にピン穴93cを設けている。該ピン穴93cにセラミック製の衝突ピン94を挿入し、ノズル本体の噴射側壁92aに向けて突出させ、背面をピン穴93c内に接着剤98で固着している。衝突ピン94の突出部分は先端に向けて細くなる円錐とし、小径の衝突面94aを設けている。
【0087】
ノズル本体92の一端の噴射側壁92aの中心軸線に直線穴からなる噴射穴95を備えると共に、該噴射側壁92aの平坦状内面と外周壁に囲まれた断面円形で内径が一定な直進流路96を備えている。前記噴射穴95は直進流路96に連通し、該直進流路96から噴射穴95を通して養液を直進棒流として噴射している。前記衝突ピン94の衝突面94aの直径を対向する噴射穴95の直径に対して100%~115%の範囲としている。
該ノズル10-Pでは、噴霧圧を0.5~2.0MPa、噴霧流量を1~5L/hr、噴霧する養液の平均粒子径を10μm~100μm、好ましくは10μm~50μm、さらに好ましくは10μm~30μmとしている。
【0088】
ノズル本体92は第一実施形態のノズルと同様に継ぎ手管の分岐管にワンタッチ操作で連結できるように、外周壁に90度間隔をあけて係止片99を突設し、前記図8に示すように、分岐管に90度間隔で設けている差込穴60kに回転するだけで連結できるようにしている。
【0089】
ノズル本体92の後端は開口とし、ストレーナ17の前部17aを内嵌している。ストレーナ17は図15(C)に示すように三次元状に連続する空孔17cを備えた樹脂材からなり、空孔率は40~80%としている。該ストレーナ17は前部17aと後部17bとが連続し、前部17aの前端から後部の中間部まで中心穴からなる液通路17hを設けている。該液通路17hは直進流路96に開口し、該直進流路96から噴射穴95へと流通させる構成としている。かつ、ストレーナ17の後部の外周面は図14(B)に示すように4つの円弧部17cを突出して花弁形状とし、表面積を増大させてストレーナ17の吸液量を多くしている。
【0090】
前記実施形態のストレーナ17を付設したノズル10-Pは、栽培ボックス1の根圏部4に吊り下げた養液供給管の下端の継ぎ手管の前後両端に、前後方向から養液を栽培植物の根に向けて噴霧するように取り付けている。ストレーナ17を通してノズル本体92の直進流路96を通って噴射穴95に流入し、細穴とした噴射穴95より図15(D)に示すように直進棒流Qsとなって噴射され、対向位置の衝突ピン94の先端の衝突面94aに衝突する。其の際、噴射穴95の直径を微小としているため、該噴射穴95を通る養液の圧力が増強し、噴射圧を高めて直進棒流Qsが噴射され、衝突面に衝突し、全液滴が微小化されて、外方へ飛散する。このように、衝突ピンに高圧とした直進棒流を衝突させることで、平均粒子径10~50μm以下で噴霧することが出来る。
かつ、旋回流を噴霧する空円錐形ノズルにある旋回溝が無く、直線の噴射穴なので目詰まりしにくい点で優れている。また、衝突ピンをセラミック製としているので、高圧とした直進棒流の衝突による摩耗を防止することができる。
【0091】
図16は第七実施形態を示し、他の実施形態のピンジェット型一流体ノズル10-PPを用いている。
該ピンジェット型一流体ノズル10-PPは、直線穴からなる噴射穴86hと衝突ピン86pをセラミックで一体成形した噴射側のチップ部材86をフッ素系樹脂からなるノズル本体87にインサートモールドして形成している。
【0092】
噴射側のチップ部材86は図示のように、ノズル本体87の噴射側開口に装着する噴射側壁86aの両側からU字形の衝突枠86bを突設し、衝突枠86bの両側縦枠部86b1の先端を連結する横枠部86b2の中心軸線に衝突ピン86pを突設している。噴射側壁86aの中央に噴射穴86hを設け、該噴射穴86hと衝突ピン86pとを第五実施形態のノズル10-Pと同様な関係に設定している。
【0093】
前記チップ部材86で噴射側開口を閉鎖されたノズル本体87は筒状の外周壁87aと噴射側壁86aで囲まれた直線流路87bを備え、該直線流路87bを噴射穴86hと連通している。ノズル本体87の外周壁87aの外周に図14に示すノズルと同様に継ぎ手管の分岐管にワンタッチ操作で連結できるように、外周壁に90度間隔をあけて係止片87kを突設し、分岐管に90度間隔で設けている差込穴に回転するだけで連結できるようにしている。ノズル本体87に前記実施形態と同様にストレーナ17を連結している。
【0094】
当該第七実施形態のノズルは前記第六実施形態のノズルと同様に用いられ、細穴とした噴射穴86hより直進棒流が噴射され、対向位置の衝突ピン86pの先端の衝突面に衝突し、全液滴が微小化されて外方へ飛散する。このように、衝突ピンに高圧とした直進棒流を衝突させることで、平均粒子径10~50μm以下で噴霧することが出来る。
【0095】
本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 栽培ボックス
2 上側パネル
2a 傾斜側壁
2b 頂面
3 下側パネル
3a 傾斜側壁
3b 底壁
4 中空の根圏部
5 ガター
6 植付穴
7 ノズル装着穴
8 廃液口
10(10A、10B、10-P、10-PP) ノズル
13 主養液供給本管
14 養液供給管
16 ポット
80 COボンベ
85 中間パネル
P 栽培植物
Pr 根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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