IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジキンの特許一覧

<>
  • 特許-流量制御装置 図1
  • 特許-流量制御装置 図2
  • 特許-流量制御装置 図3
  • 特許-流量制御装置 図4
  • 特許-流量制御装置 図5
  • 特許-流量制御装置 図6
  • 特許-流量制御装置 図7
  • 特許-流量制御装置 図8
  • 特許-流量制御装置 図9
  • 特許-流量制御装置 図10
  • 特許-流量制御装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019557165
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2018042795
(87)【国際公開番号】W WO2019107215
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2017230538
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】川田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-228950(JP,A)
【文献】特開2012-033188(JP,A)
【文献】特開2008-008356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に設けられた圧力制御バルブと、
前記圧力制御バルブの下流側に設けられた流量制御バルブと、
前記圧力制御バルブの下流側かつ前記流量制御バルブの上流側の圧力を測定する第1圧力センサと、
開度が固定された絞り部と
を備え、
前記流量制御バルブは、弁座に離着座する弁体と、前記弁体を前記弁座に離着座させるために前記弁体を移動させるための圧電素子と、前記圧電素子の側面に設置された歪センサと有し、
前記流量制御バルブが有する前記弁座と前記弁体との距離を開度として、前記流量制御バルブは、前記開度を変更可能な絞り部として用いられ、
前記第1圧力センサから出力される信号に基づいて前記圧力制御バルブを制御しながら、前記歪センサから出力される信号に基づいて前記圧電素子の駆動を制御し、
連続的な流れの制御を行うときには、前記開度が固定された絞り部を用いて流量制御を行い、断続的な流れの制御を行うときには、前記開度を変更可能な絞り部としての前記流量制御バルブを用いて流量制御を行う、流量制御装置。
【請求項2】
前記開度が固定された絞り部を用いて前記連続的な流れの制御を行うとき、前記流量制御バルブを全開とする、請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記開度が固定された絞り部は、前記流量制御バルブの上流側に設けられている、請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記流量制御バルブの下流側の圧力を測定する第2圧力センサをさらに備える、請求項3に記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記開度が固定された絞り部は、前記流量制御バルブの下流側に設けられている、請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記開度が固定された絞り部の下流側の圧力を測定する第2圧力センサをさらに備える、請求項5に記載の流量制御装置。
【請求項7】
前記流量制御バルブと前記開度が固定された絞り部との間の圧力を測定する第3圧力センサをさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項8】
前記開度が固定された絞り部の最大設定流量は、前記流量制御バルブの最大設定流量よりも大きい、請求項1から7のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項9】
前記流量制御バルブの上流側の圧力と前記流量制御バルブの下流側の圧力とが臨界膨張条件を満たす状態で流量制御が行われる、請求項1から8のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項10】
前記歪センサは、前記圧電素子の伸長方向の歪を検出するための第1歪ゲージと、前記圧電素子の前記伸長方向と直交する方向の歪を検出するための第2歪ゲージとを含む、請求項1から9のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項11】
前記流量制御バルブは、前記歪センサが取り付けられた前記圧電素子を含む複数の圧電素子と前記複数の圧電素子を一列に収容する筒体とを有するピエゾアクチュエータを備えており、前記ピエゾアクチュエータに電圧を印加することによって前記弁体としての金属ダイヤフラム弁体が弁座の方向に移動するように構成されたノーマルオープン型のバルブである、請求項1から10のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項12】
前記流量制御バルブは、前記歪センサが取り付けられた前記圧電素子と、前記圧電素子を収容する筒体とを有するピエゾアクチュエータを備えており、前記ピエゾアクチュエータに電圧を印加することによって前記弁体としての金属ダイヤフラム弁体が弁座の方向に移動するように構成されたノーマルオープン型のバルブである、請求項1から10のいずれかに記載の流量制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御装置に関し、特に、半導体製造設備や化学品製造設備等に好適に利用される流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や化学プラントにおいて、材料ガスやエッチングガス等の流体の流れを制御するために、種々のタイプの流量計や流量制御装置が利用されている。このなかで圧力式流量制御装置は、制御バルブと絞り部(例えばオリフィスプレート)とを組み合せた比較的簡単な機構によって各種流体の流量を高精度に制御することができるので広く利用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
圧力式流量制御装置の制御バルブとしては、耐食性が高いこと、発塵が少ないこと、ガスの置換性が良いこと、開閉速度が速いこと及び閉弁時に迅速且つ確実に流体通路を閉鎖できること等の点から金属ダイヤフラム型バルブが多く使用されている。また、金属ダイヤフラムを開閉する駆動装置としては、圧電素子駆動装置(ピエゾアクチュエータとも言う)が広く利用されている。
【0004】
特許文献2には、上記のように圧電素子(ピエゾ素子とも言う)を用いて金属ダイヤフラム弁体を開閉させるように構成された圧電素子駆動式バルブが開示されている。圧電素子駆動式バルブでは、圧電素子に印加する駆動電圧の大きさによって圧電素子の伸長度合が変化し、これに伴い金属ダイヤフラム弁体を弁座に押し付ける押圧力が変化する。金属ダイヤフラム弁体が弁座に対して十分な押圧力で押し付けられているときは閉弁状態となり、押圧力が弱まると金属ダイヤフラム弁体が弁座から離れて開弁する。圧電素子駆動式バルブは、高速作動が可能なうえ、動作特性上のヒステリシスが比較的小さいという利点を有している。
【0005】
また、圧電素子駆動式バルブには、ノーマルオープン型とノーマルクローズ型とがあり、ノーマルオープン型では、電圧印加による圧電素子の伸長に連動して弁体が閉方向に移動する。一方、ノーマルクローズ型では圧電素子の伸長に連動して弁体が開方向に移動する。ノーマルオープン型の圧電素子駆動式バルブは、例えば、特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-138425号公報
【文献】特開2007-192269号公報
【文献】特許第4933936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の半導体プロセス制御においては、圧電素子駆動式バルブは、設定流量に対する偏差を解消するように制御されるため、アナログ的に僅かな変位量で比較的緩やかに開閉動作が行われることが多かった。
【0008】
しかしながら、近年、流量制御装置は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)などへの適用が求められており、このような用途では、高速な(周期が非常に短い)パルス状の制御信号によって制御バルブを開閉して流量の切り替えを短時間のうちに高速に行うことが要求される。この場合、従来の圧力式流量制御装置のように、絞り部の上流側の圧力を制御バルブを用いて制御する流量制御方式では、十分な流量立上げ/立下げ特性が得られず、パルス的な流量制御に対応するのは困難であった。
【0009】
また、パルス的な流量制御を適切に行うためには、応答性に優れた電磁弁などを用いて流量制御装置を構成することも考えられる。しかしながら、この場合には、装置の製造コストが増加し、圧力式流量制御装置の有する比較的簡単な機構によって高精度に流量を制御できるという利点が損なわれるおそれがあった。このため、従来の流量制御装置では、パルス的な流量制御と連続的な流れの流量制御との双方を両立して適切に行うことに支障があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、従来の圧力式流量制御装置の特長を踏襲しながら、パルス流量制御などにも対応可能な、応答性が良好な流量制御装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態による流量制御装置は、流路に設けられた圧力制御バルブと、前記圧力制御バルブの下流側に設けられた流量制御バルブと、前記圧力制御バルブの下流側かつ前記流量制御バルブの上流側の圧力を測定する第1圧力センサと、開度が固定された絞り部とを備え、前記流量制御バルブは、弁座に離着座する弁体と、前記弁体を前記弁座に離着座させるために前記弁体を移動させるための圧電素子と、前記圧電素子の側面に設置された歪センサと有し、前記流量制御バルブが有する前記弁座と前記弁体との距離を開度として、前記流量制御バルブは、前記開度を変更可能な絞り部として用いられ、前記第1圧力センサから出力される信号に基づいて前記圧力制御バルブを制御しながら、前記歪センサから出力される信号に基づいて前記圧電素子の駆動を制御し、連続的な流れの制御を行うときには、前記開度が固定された絞り部を用いて流量制御を行い、断続的な流れの制御を行うときには、前記開度を変更可能な絞り部としての前記流量制御バルブを用いて流量制御を行う。
【0012】
ある実施形態において、前記開度が固定された絞り部を用いて前記連続的な流れの制御を行うとき、前記流体制御バルブを全開とする。
【0013】
ある実施形態において、前記開度が固定された絞り部は、前記流量制御バルブの上流側に設けられている。
【0014】
ある実施形態において、上記流量制御装置は、前記流量制御バルブの下流側の圧力を測定する第2圧力センサをさらに備える。
【0015】
ある実施形態において、前記開度が固定された絞り部は、前記流量制御バルブの下流側に設けられている。
【0016】
ある実施形態において、上記流量制御装置は、前記開度が固定された絞り部の下流側の圧力を測定する第2圧力センサをさらに備える。
【0017】
ある実施形態において、上記流量制御装置は、前記流量制御バルブと前記開度が固定された絞り部との間の圧力を測定する第3圧力センサをさらに備える。
【0018】
ある実施形態において、前記開度が固定された絞り部の最大設定流量は、前記流量制御バルブの最大設定流量よりも大きい。
【0019】
ある実施形態において、前記流量制御バルブの上流側の圧力と前記流量制御バルブの下流側の圧力とが臨界膨張条件を満たす状態で流量制御が行われる。
【0020】
ある実施形態において、前記歪センサは、前記圧電素子の伸長方向の歪を検出するための第1歪ゲージと、前記圧電素子の前記伸長方向と直交する方向の歪を検出するための第2歪ゲージとを含む。
【0021】
ある実施形態において、前記流量制御バルブは、前記歪センサが取り付けられた前記圧電素子を含む複数の圧電素子と前記複数の圧電素子を一列に収容する筒体とを有するピエゾアクチュエータを備えており、前記ピエゾアクチュエータに電圧を印加することによって前記弁体としての金属ダイヤフラム弁体が弁座の方向に移動するように構成されたノーマルオープン型のバルブである。
【0022】
ある実施形態において、前記流量制御バルブは、前記歪センサが取り付けられた前記圧電素子と、前記圧電素子を収容する筒体とを有するピエゾアクチュエータを備えており、前記ピエゾアクチュエータに電圧を印加することによって前記弁体としての金属ダイヤフラム弁体が弁座の方向に移動するように構成されたノーマルオープン型のバルブである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によれば、応答性が良好な流量制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態による流量制御装置の構成を示す模式的な図である。
図2】本発明の実施形態で用いられる流量制御バルブおよび第2圧力センサを示す断面図である。
図3】本発明の実施形態で用いられるピエゾアクチュエータを示す図であり、(a)は筒体および内部に収容されるピエゾスタックを示し、(b)はコネクタ部を示す。
図4】本発明の実施形態で用いられる歪センサ出力を得るための例示的なブリッジ回路を示す図である。
図5】縦1ゲージの場合と直交2ゲージの場合とでの、歪センサの出力を示すグラフである。
図6】縦1ゲージの場合と直交2ゲージの場合とでの、歪センサの出力の温度依存性を示すグラフであり、(a)は縦1ゲージの場合を示し、(b)は直交2ゲージの場合を示す。
図7】流量と、流量制御バルブのピエゾ変位量(歪センサ出力)との関係を示す図であり、上流圧力P1を異なるものとしたときの3つのグラフが示されている。
図8】パルス流量制御の態様を示す図であり、(a)は絞り部によって決定される流量でのパルス流量制御、(b)は流量制御バルブの開度によって決定される流量でのパルス流量制御を示す。
図9】本発明の実施形態による変形例の流量制御装置の構成を示す模式的な図である。
図10】本発明の実施形態による別の変形例の流量制御装置の構成を示す模式的な図である。
図11】本発明の実施形態によるさらに別の変形例の流量制御装置の構成を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施形態による流量制御装置100の構成を示す。流量制御装置100は、ガスG0の流入側の流路1に設けられた圧力制御バルブ6と、圧力制御バルブ6の下流側に設けられた流量制御バルブ8と、圧力制御バルブ6の下流側かつ流量制御バルブ8の上流側の圧力P1を検出する第1(または上流)圧力センサ3と、圧力制御バルブ6の下流側に配置された絞り部2とを備えている。
【0027】
本実施形態では、絞り部2は、流量制御バルブ8の上流側に配置されたオリフィスプレートによって構成されている。オリフィスプレートは、オリフィスの面積が固定されているので、開度が固定された絞り部として機能する。なお、本明細書において、「絞り部」とは、流路の断面積を、前後の流路断面積より小さく制限した部分であり、例えば、オリフィスプレートや臨界ノズル、音速ノズルなどを用いて構成されるが、他のものを用いて構成することもできる。また、本明細書において、絞り部には、バルブの弁座と弁体との距離を開度とし、この開度を仮想の可変オリフィスに見立てたバルブ構造も含まれる。このようなバルブ構造は、開度が可変の絞り部として機能する。
【0028】
本実施形態の流量制御装置100はまた、流量制御バルブ8の下流側の圧力P2を測定する第2(または下流)圧力センサ4と、圧力制御バルブ6の上流側の圧力P0を検出する流入圧力センサ5とを備えている。ただし、流量制御装置100は、他の態様において、第2圧力センサ4や流入圧力センサ5を備えていなくてもよい。
【0029】
第1圧力センサ3は、圧力制御バルブ6と絞り部2または流量制御バルブ8との間の流体圧力である上流圧力P1を測定することができ、第2圧力センサ4は、絞り部2または流量制御バルブ8の下流圧力P2を測定することができる。また、流入圧力センサ5は、接続されたガス供給装置(例えば原料気化器やガス供給源等)から流量制御装置100に供給される材料ガス、エッチングガスまたはキャリアガスなどの流入圧力P0を測定することができる。流入圧力P0は、ガス供給装置からのガス供給量やガス供給圧を制御するために利用され得る。
【0030】
流量制御バルブ8の下流側は、下流弁(図示せず)を介して半導体製造装置のプロセスチャンバに接続されている。プロセスチャンバには真空ポンプが接続されており、典型的には、プロセスチャンバの内部が真空引きされた状態で、流量制御装置100から流量制御されたガスG1がプロセスチャンバに供給される。下流弁としては、例えば、圧縮空気により開閉動作が制御される公知の空気駆動弁(Air Operated Valve)や電磁弁等を用いることができる。
【0031】
流量制御装置100の流路1は、配管によって構成されていてもよいし、金属製ブロックに形成した流路孔によって構成されていてもよい。第1および第2圧力センサ3、4は、例えばシリコン単結晶のセンサチップとダイヤフラムとを内蔵するものであってよい。
【0032】
また、圧力制御バルブ6は、例えば、金属製ダイヤフラム弁体をピエゾアクチュエータで駆動する公知の圧電素子駆動式バルブであってよい。後述するように、圧力制御バルブ6は、第1圧力センサ3から出力される信号に応じてその開度が制御され、例えば、第1圧力センサ3が出力する上流圧力P1が、入力された設定値に維持されるようにフィードバック制御される。
【0033】
また、本実施形態において、流量制御バルブ8は、弁座に当接および離間(以下、離着座と呼ぶことがある)するように配置された弁体と、弁体を移動させるための圧電素子と、圧電素子の伸長量を検出する歪センサ(歪ゲージとも言う)20とを備えた圧電素子駆動式のバルブである。後述するように、流量制御バルブ8は、歪センサ20から出力される信号に基づいて圧電素子の駆動がフィードバック制御され得るように構成されている。
【0034】
図2は、図1に示した流量制御バルブ8と、その下流側に設けられた第2圧力センサ4との構成例を示している。流量制御バルブ8および第2圧力センサ4は、本体ブロック11に取り付けられている。なお、本体ブロック11の入口側は、図1に示した圧力制御バルブ6および第1圧力センサ3が取り付けられた別の本体ブロック(図示せず)に接続されている。また、図1に示した絞り部2は、本体ブロック11と別の本体ブロックとの接続部において、例えば、ガスケットを介してオリフィスプレートとして固定されている。ただし、絞り部としては、オリフィスプレートなどのオリフィス部材の他に、臨界ノズルまたは音速ノズルを用いることもできる。オリフィスまたはノズルの口径は、例えば100μm~500μmに設定される。
【0035】
図2に示す流量制御バルブ8は、ノーマルオープン型のバルブであり、ピエゾアクチュエータ10の伸長によって弁体が弁座の方向に移動するように構成されている。流量制御バルブ8は、1本もしくは複数の圧電素子10b(図3参照)を含むピエゾアクチュエータ10と、ピエゾアクチュエータ10の下方に配置された金属ダイヤフラム弁体13と、ピエゾアクチュエータ10の外側に設けられた案内筒体14とを備えている。
【0036】
ピエゾアクチュエータ10の下端10tは、支持体16によって支持されており、支持体16の下方にはダイヤフラム弁体13と当接する弁体押さえ18が設けられている。金属ダイヤフラム弁体13は、自己弾性復帰型であり、例えばニッケルクロム合金鋼等の薄板により形成されている。
【0037】
金属ダイヤフラム弁体13は、本体ブロック11の流路に設けられた弁座12に対して離着座可能に配置されている。本実施形態の金属ダイヤフラム弁体13は、中央部が上方へ僅かに膨出した逆皿形に形成されているが、金属ダイヤフラム弁体13の形状は平板状であってもよく、また、材質もステンレス鋼やインコネル合金やその他の合金鋼であってもよい。金属ダイヤフラム弁体13は、1枚の金属ダイヤフラムによって構成されていてもよいし、積層された2~3枚の複数の金属ダイヤフラムによって構成されていてもよい。
【0038】
上記構成において、ピエゾアクチュエータ10に駆動電圧が印加されていない状態では、金属ダイヤフラム弁体13(中央部)は自己弾性力により弁座12に対して離間している。また、本実施形態では、支持体16の周囲に配置された弾性部材(ここでは皿バネ)15が支持体16およびピエゾアクチュエータ10を支持しており、電圧無印加時に金属ダイヤフラム弁体13が弁座12から離間しやすくなっている。弾性部材15は、予めピエゾアクチュエータ10を圧縮させておくためにも用いられる。
【0039】
一方、ピエゾアクチュエータ10に駆動電圧を印加すると、バルブ本体11に対して固定された案内筒体14の内側で、ピエゾアクチュエータ10が下方に向かって伸長する。そして、ピエゾアクチュエータ10の下端10tが弾性部材15の付勢力に抗して支持体16を押し下げ、これに連動して弁体押さえ18が金属ダイヤフラム弁体13を弁座12の方向に移動させる。これにより、弁開度は減少し最終的には閉弁する。
【0040】
このようなノーマルオープン型のバルブでは、ピエゾアクチュエータ10に最大駆動電圧を印加しているときに閉弁状態となり、駆動電圧を減少させることによって開度を任意に調節することができる。また、ノーマルオープン型のバルブは、ピエゾアクチュエータ10から弁体押さえ18まで比較的遊びの少ない機構で接続されるとともに、電圧印加開始時におけるピエゾアクチュエータ10の伸長が妨げられにくい。このため、ピエゾアクチュエータ10に電圧印加した瞬間から弁体13を移動させやすく、応答性が良好である。
【0041】
次に、流体制御バルブ8を構成するピエゾアクチュエータ10の詳細構成を説明する。図3(a)は、外側の筒体10aと、この筒体10a内に一列に並べられた状態で収容される複数の圧電素子10b(以下、ピエゾスタック10bと呼ぶことがある)とを分解して示し、図3(b)は、図3(a)に示すコネクタ部10cを正面方向から見た状態を示す。図3(a)では、ピエゾアクチュエータ10を、図2とは上下逆向きに示している。
【0042】
図3(a)に示すように、ピエゾアクチュエータ10において、複数の圧電素子10bのうちの1つには、接着剤等によって歪センサ20が直接的に取り付けられている。歪センサ20は圧電素子の側面に配置されており、本実施形態においては、圧電素子の積層方向、すなわち、ピエゾスタックの主伸長方向であるz方向の歪を検出する第1歪ゲージ20zと、主伸長方向と直交するx方向の歪を検出する第2歪ゲージ20xとによって構成されている。第1歪ゲージ20zおよび第2歪ゲージ20xとしては、例えば、株式会社共和電業社製のKFR-02NやKFGS-1、KFGS-3等を用いることが出来る。
【0043】
本実施形態において、第1歪ゲージ20zは全体が圧電素子と接するように貼り付けられており、第2歪ゲージ20xは第1歪ゲージ20zの中央部をまたいで交差するように圧電素子に貼り付けられている。第1歪ゲージ20zおよび第2歪ゲージ20xは、圧電素子の変位を、第1歪ゲージ20zおよび第2歪ゲージ20xの電気抵抗の変化として検出することができる。
【0044】
また、図3(b)に示すように、コネクタ部10cには、ピエゾスタック10bに駆動電圧を印加するための一対の駆動電圧端子22a、22bと、第1歪ゲージ20zの一方の端子に接続された第1歪センサ出力端子24aと、第1歪ゲージ20zの他方の端子および第2歪ゲージ20xの一方の端子に共通に接続された歪センサ共通出力端子24cと、第2歪ゲージ20xの他方の端子に接続された第2歪センサ出力端子24bとが設けられている。
【0045】
ピエゾスタック10bを構成する複数の圧電素子10bは、公知の回路構成によって駆動電圧端子22a、22bに電気的に接続されており、駆動電圧端子22a、22bに電圧を印加することによって、複数の圧電素子10bの全てをスタック方向に伸長させることができる。ピエゾスタックの変位は、印加電圧の大きさによって制御することができる。ピエゾアクチュエータ10としては、例えばNTKセラテック社等から販売されているものを利用することができる。なお、ピエゾアクチュエータ10は、他の態様において、筒体に収容された単一の圧電素子およびこの側面に取り付けられた歪センサによって構成されていてもよい。
【0046】
第1および第2歪センサ出力端子24a、24bおよび歪センサ共通出力端子24cは、外部基板に設けられた回路に接続されており、第1歪ゲージ20zおよび第2歪ゲージ20xを含むブリッジ回路が形成されている。このブリッジ回路において、第1歪ゲージ20zおよび第2歪ゲージ20xの抵抗値の変化を検出することができる。
【0047】
図4は、第1歪ゲージ20zおよび第2歪ゲージ20xの抵抗値変化を検出するための例示的な等価回路を示す。図4に示す等価回路において、分岐点A-D間および分岐点C-D間に設けられた抵抗R1、R2は、外部基板上に設けられた既知抵抗値の固定抵抗に対応し、分岐点A-B間に設けられた抵抗R3は、第1歪ゲージ20zに対応し、分岐点B-C間に設けられた抵抗R4は、第2歪ゲージ20xに対応する。本実施形態では、第1歪ゲージ20zおよび第2歪ゲージ20xの抵抗値と、2つの固定抵抗R1、R2の抵抗値とは同じに設定されており、例えば、いずれも120オームもしくは350オームに設定されている。
【0048】
また、図4において、分岐点Aは、第1歪センサ出力端子24aに対応し、分岐点Bは、歪センサ共通出力端子24cに対応し、分岐点Cは、第2歪センサ出力端子24bに対応する。この等価回路において、分岐点A-C間に所定のブリッジ印加電圧が印加された状態で、第1歪ゲージ20zまたは第2歪ゲージ20xの抵抗値の変化は、ブリッジ出力信号(分岐点B-D間の電位差)の変化として検出される。なお、上記のように各抵抗R1~R4の大きさが同じである場合、第1および第2歪ゲージ20z、20xに応力が生じていない初期状態において、ブリッジ出力信号は典型的にはゼロを示す。
【0049】
ピエゾスタックに駆動電圧が印加されたとき、歪センサ20が取り付けられた圧電素子はz方向に伸長するとともに、これと直交するx方向においては収縮する。この場合、第1歪ゲージ20zの抵抗値は、圧電素子の伸長量に対応して増加し、第2歪ゲージ20xの抵抗値は圧電素子の収縮量に対応して減少する。
【0050】
そして、図4に示す回路では、ピエゾスタック10bに駆動電圧が印加されてこれが伸長したとき、第1歪ゲージ20zにおける歪量が増大してブリッジ出力信号が増加するとともに、第2歪ゲージ20xにおける歪量が減少することによってもブリッジ出力信号が増加する。このため、ピエゾスタック変位時には、第1歪ゲージ20zの歪み量の増加分と、第2歪ゲージ20xの歪み量の減少分との合計に対応するブリッジ出力信号の変動が生じることになる。これにより、ブリッジ出力信号を増幅させることができる。
【0051】
また、上記のように第1歪ゲージ20zと、これに直交する第2歪ゲージ20xとを用いてブリッジ回路を構成することによって、温度変化による歪ゲージの抵抗値変化を補正することが可能である。これは、例えば温度が上昇することによって圧電素子が膨張したとき、その膨張が、第1歪ゲージ20zに対してはブリッジ出力信号を増加させる要素として働くのに対して、第2歪ゲージ20xに対してはブリッジ出力信号を減少させる要素として働き、温度による増加要素と減少要素とが相殺されたブリッジ出力信号が得られるからである。このため、温度の変化に起因して圧電素子自体の膨張および収縮が生じているときであっても、ブリッジ出力信号への影響は低減され、温度補償を実現することが可能になる。
【0052】
図5は、第1歪ゲージ20zのみ(縦1ゲージ)を用いた場合(図4に示した等価回路において、分岐点B-C間に設けられた抵抗R4を既知の固定抵抗としてブリッジ回路を構成した場合)におけるピエゾ駆動電圧と歪センサ出力(ブリッジ出力信号:アンプゲイン×400)との関係を示すグラフA1と、上記の第1歪ゲージ20zと第2歪ゲージ20xと(直交2ゲージ)を用いて歪センサを構成した場合のグラフA2とを示す。グラフA2としては、同様に直交2ゲージの構成とした2つの例が示されている。
【0053】
グラフA1とグラフA2とを比較してわかるように、ピエゾ駆動電圧を印加したとき、直交2ゲージを用いた場合のグラフA2では、縦1ゲージの場合のグラフA1に比べて増幅された歪センサ出力が得られることが分かる。
【0054】
また、図6(a)は、縦1ゲージを用いた場合の歪センサ出力の温度依存性(15℃、25℃、35℃のグラフA3、A4、A5)を示し、図6(b)は直交2ゲージを用いた場合を示す。図6(a)と図6(b)とを比較してわかるように、直交2ゲージを用いることによって、15℃のグラフA3、25℃のグラフA4、35℃のグラフA5は、より近接したものとなり、温度依存性を低減できることが分かる。なお、温度補償をより精度よく行うために、ピエゾ駆動電圧(圧電素子への印加電圧)が0のときの歪センサ出力を0に補正する、ゼロ点補正を行ってもよい。
【0055】
また、図5および図6からわかるように、ピエゾ駆動電圧と歪センサ出力との関係は、昇圧時と降圧時とでわずかに異なっている。これは、ピエゾアクチュエータの昇圧時と降圧時とでは、駆動電圧の大きさが同じであっても弁の実際の開度が異なるのに対して、歪センサ出力は弁の実際の開度に対応したものであるためであると考えられる。このように、駆動電圧を参照しただけでは弁の実際の開度を判断しにくい場合があるが、歪センサの出力に基づいて弁開度をフィードバック制御すれば、より精度よく開度調整を行い得る。
【0056】
なお、本明細書において、歪センサの出力とは、歪センサを構成する歪ゲージの歪量に応じて変化する歪ゲージの抵抗値に対応する種々の出力を意味しており、例えば、歪ゲージの抵抗値自体であってもよいし、複数の歪ゲージを組み込んだホイートストンブリッジ回路が出力する上記のブリッジ出力信号(図4参照)などであってもよい。いずれの態様で得られる歪センサの出力も、圧電素子の伸長量に対応するものであり、歪センサの出力に基づいて圧電素子の伸長量を知ることができる。
【0057】
以下、再び図1を参照して、流量制御装置100における流量制御動作を説明する。
【0058】
流量制御装置100は、第1圧力センサ3の出力に基づいて圧力制御バルブ6の開閉動作を制御する第1制御回路7を備えている。第1制御回路7は、外部から受け取った設定上流圧力と第1圧力センサ3の出力P1との差がゼロになるように圧力制御バルブ6をフィードバック制御するように構成されている。これにより、圧力制御バルブ6の下流側かつ流量制御バルブ8の上流側の圧力P1を設定値に維持することが可能である。
【0059】
また、流量制御装置100は、流量制御バルブ8に設けられた歪センサ20からの出力をピエゾバルブ変位として受け取り、この出力に基づいて流量制御バルブ8の駆動を制御する第2制御回路17を有している。なお、図1には、第1制御回路7と第2制御回路17とが別個に設けられた態様が示されているが、これらは一体的に設けられていてもよい。
【0060】
第1制御回路7および第2制御回路17は、流量制御装置100に内蔵されたものであってもよいし、流量制御装置100の外部に設けられたものであってもよい。第1制御回路7および第2制御回路17は、典型的には、CPU、ROMやRAMなどのメモリ(記憶装置)M、A/Dコンバータ等によって構成され、後述する流量制御動作を実行するように構成されたコンピュータプログラムを含んでいてよい。第1制御回路7および第2制御回路17は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実現され得る。
【0061】
流量制御装置100は、第1制御回路7および第2制御回路17によって、第1圧力センサ3が出力する上流圧力P1が設定値になるように圧力制御バルブ6を制御しながら、流量制御バルブ8の圧電素子10bの駆動を制御することにより、流量制御バルブ8の下流側に流れる流体の流量を制御するように構成されている。流量制御装置100は、特に、臨界膨張条件P1/P2≧約2(P1:絞り部上流側の流体圧力(上流圧力)、P2:絞り部下流側の流体圧力(下流圧力))を満たすとき、絞り部2または流量制御バルブ8を通過するガスの流量が、下流圧力P2によらず上流圧力P1によって決まるという原理を利用して流量制御を行うことができる。
【0062】
臨界膨張条件を満たすとき、流量制御バルブ8の下流側の流量Qは、Q=K1・Av・P1(K1は流体の種類と流体温度に依存する定数)によって与えられる。流量Qは、上流圧力P1および流量制御バルブ8の弁開度Avに概ね比例するものと考えられる。また、第2圧力センサ4を備える場合、上流圧力P1と下流圧力P2との差が小さく、上記の臨界膨張条件を満足しない場合であっても流量を算出することができ、各圧力センサによって測定された上流圧力P1および下流側圧力P2に基づいて、所定の計算式Q=K2・Av・P2 m(P1-P2n(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、m、nは実際の流量を元に導出される指数)から流量Qを算出することができる。
【0063】
図7は、流量と、流量制御バルブ8におけるピエゾ変位量との関係を示す図である。ただし、図7では、ピエゾ変位量の増加につれて弁開度Avが増加する場合(ノーマルクローズ型に対応)が示されている。上述したように、本実施形態の流量制御装置100では、ピエゾ変位量(または弁開度Av)を、歪センサ出力に基づいて検出することができる。
【0064】
図7には、第1圧力センサ3からの出力に基づいて圧力制御バルブ6を制御することにより、上流圧力P1を50kPa abs、100kPa abs、300kPa absのそれぞれに制御したときのグラフB1~B3が示されている。図7に示されるように、圧力制御バルブ6を用いて上流圧力P1を所望の流量レンジに対応する一定値に制御しながら、流量制御バルブ8の弁開度を歪センサ出力(ピエゾ変位量)に基づいて制御することにより、広い範囲にわたって流量を好適に制御することができる。特に、歪センサ出力に基づいて流量制御バルブ8をフィードバック制御する場合、従来のように上流圧力P1に基づいて制御バルブをフィードバック制御する場合に比べて、流量制御の応答性を向上させ得る。このように、流量制御バルブ8は、本実施形態では、バルブの弁座と弁体との距離を開度としてこの開度を変更する機能を有し、可変オリフィス(開度が可変である絞り部)として用いられ得る。
【0065】
また、本実施形態の流量制御装置100では、開度が固定された絞り部2の最大設定流量が、開度が可変である流量制御バルブ8の最大設定流量よりも大きく設定されている。ここで、絞り部2の最大設定流量とは、流量制御装置100において臨界膨張条件下で絞り部2の上流側の圧力を最大設定圧力としたときに絞り部2を流れるガスの流量であり、流量制御バルブ8の最大設定流量とは、同条件で流量制御バルブ8を最大設定開度で開いた時に流れるガスの流量を意味する。この場合、典型的には、絞り部2の開口面積(すなわち流路断面積)が、流量制御バルブ8の最大設定開度での流路断面積よりも大きいものとなる。絞り部2は、例えば、最大設定流量2000sccm(オリフィス径:約300μm)のオリフィスプレートによって構成され、流量制御バルブ8の制御流量は2000sccm以下に設定される。なお、上記の流量制御バルブ8を最大設定開度とは、流量制御に用いる範囲内で最も大きい開度を意味し、通常、流量制御バルブ8を全開(電圧無印加)にしたときの最大開度よりも小さい開度である。
【0066】
以上のように構成することにより、開度が固定された絞り部2を流量制御の主要素として用いて圧力制御バルブ6によって上流圧力P1を制御することで、従来の圧力式流量制御装置と同様に流量制御を行うことが可能なうえに、圧力制御バルブ6を用いて上流圧力P1を一定に保ちながら流量制御バルブ8の開度調整を行うことによりガス流量を制御することも可能である。したがって、種々の態様でのガス流量制御が可能であり、パルス流量制御にも対応することができる。
【0067】
なお、開度が固定された絞り部2を流量制御の主要素として用いる流量制御は、比較的長い期間にわたり流量制御を設定値に維持する連続的な流れの制御に好適である。一方、開度が固定された絞り部2の最大設定流量未満の流量で流量制御バルブ8の開度により流量が決まるような流量制御、すなわち、流量制御バルブ8を可変オリフィス(開度が可変である絞り部)として用いるような流量制御は、断続的な流れの制御(パルス流量制御など)に好適である。
【0068】
ここで、連続的な流れの制御とは、流体の流れが継続するときの流体の制御を広く意味しており、例えば100%流量で流体が流れている状態から50%流量で流体が流れている状態に変更される場合なども含み得る。また、開度が固定された絞り部2を用いて連続的な流れの制御を行うときには、流量制御バルブ8は全開(最大開度)とするか、あるいは、少なくとも開度が固定された絞り部2の開度よりも大きい開度に維持することが好適である。
【0069】
また、断続的な流れの制御には、パルス流量制御のような一定間隔での周期的な開閉制御に限らず、不定期に行うパルス的な開閉制御や、パルスの振幅が一定でなく変動するような開閉制御も場合も含まれ、また、パルス幅が変動するような開閉制御も含まれる。
【0070】
図8(a)および(b)は、流量制御装置100においてパルス流量制御を行うときの上流圧力P1、流量制御バルブ8に与えられる開度制御信号、流量出力を示しており、図8(a)には2000sccmでパルス流量制御を行う場合を示し、図8(b)には200sccmでパルス流量制御を行う場合を示している。
【0071】
図8(a)に示すようにしてパルス流量制御を行う場合、圧力制御バルブ6および第1圧力センサ3を用いて、上流圧力P1が一定の設定値(ここでは300kPa)となるように上流圧力P1の制御を行う。より具体的には、圧力センサ3が出力する測定値と設定値との差が0になるように圧力制御バルブ6をフィードバック制御することによって、上流圧力P1を設定値に維持することができる。
【0072】
そして、上記のように上流圧力P1を一定に維持しながら、パルス状の開度制御信号によって流量制御バルブ8の開度を制御する。このとき、ノーマルオープン型の流量制御バルブ8では、閉状態のときに最大駆動電圧が印加され、全開状態の時に最小駆動電圧が印加される。ただし、印加する最小駆動電圧は0ボルトである必要はなく、開度が固定された絞り部2の最大設定流量以上の流量で流量制御バルブ8をガスが流れ得る開度に対応する電圧であればよい。このようにして流量制御バルブ8の開閉動作をパルス的に行うことによって、開度が固定された絞り部2の最大設定流量に依拠した流量(ここでは2000sccm)でのパルス的なガスの流量制御を行うことが可能である。
【0073】
一方、図8(b)に示すように、より小流量でパルス流量制御を行うときには、圧力制御バルブ6および第1圧力センサ3を用いて、より小さい一定の設定値(ここでは100kPa)に維持されるように上流圧力P1の制御を行いながら、開度が固定された絞り部2よりも小さい設定開度での流量制御バルブ8の開閉動作をパルス的に行う。これにより、開度が可変な絞り部である流量制御バルブ8の設定開度に応じた流量でのパルス的なガス供給を行うことが可能になる。
【0074】
このとき、流量制御バルブ8の開度は、歪センサの出力に基づいてピエゾアクチュエータの駆動電圧を制御することによって、精度よく制御することができる。より具体的に説明すると、歪センサの出力に基づいて実際のピエゾアクチュエータの伸長量を検出しながら、検出した伸長量が所望流量に対応する伸長量(図8に示す態様では6.6μm位置)と一致するようにピエゾアクチュエータへの印加駆動電圧をフィードバック制御することによって、所望流量に適合する開度に流量制御バルブ8を制御することができる。
【0075】
以上のようにしてパルス流量制御を行った後、圧力制御バルブ6を閉じることによって上流圧力P1を低下させ、例えば図8(a)および(b)に示すように0KPaまで低下させることによって流量を0にすることができる。このとき、流量制御バルブ8は、例えば、上記の最大設定開度に対応する最小駆動電圧での開度、すなわち、開度制御の原点位置に維持されていてもよい。
【0076】
以上、説明したように、本実施形態の流量制御装置100によれば、パルス流量制御などにも対応可能な応答性が向上した流量制御を行うことができる。パルス流量制御では、歪センサの出力に基づいて、正確な開度で流量制御バルブ8の開閉を繰り返すことができるので、向上した流量精度でパルス的に流体を供給することが可能になる。
【0077】
また、歪センサ20を用いて圧電素子10bの伸長量をモニタすることができるので、例えば全閉の状態における伸長量が予め設定していた閾値よりも下回った時や、ピエゾアクチュエータに駆動電圧が供給されているにもかかわらず伸長量が予定の値に達しない時など、異常の傾向が見受けられた時、ピエゾアクチュエータに異常が発生した(使用限界に達した)ものと判断することができる。これによって、ピエゾアクチュエータが完全に故障する前に交換する事ができ、故障した状態のバルブを使用せずに済む。
【0078】
以下、本実施形態による流量制御装置の変形例について説明する。
【0079】
図9は、第1の変形例による流量制御装置110の構成を示す。流量制御装置110が、図1に示した流量制御装置100と異なる点は、開度が固定された絞り部2’が、流量制御バルブ8の下流側に設けられている点である。
【0080】
流量制御装置110においても、歪センサ20の出力に基づいて流量制御バルブ8の駆動電圧を制御することによって、正確な開度での流量制御バルブ8のパルス的な開閉動作が可能であり、所望流量でのパルス流量制御を行うことができる。また、開度が固定された絞り部2’を用いた流量制御を行うこともが可能である。
【0081】
図10は、第2の変形例による流量制御装置120の構成を示す。流量制御装置120が、図1に示した流量制御装置100と異なる点は、開度が固定された絞り部2と、流量制御バルブ8との間に第3圧力センサ9がさらに設けられている点である。
【0082】
第3圧力センサ9を用いれば、絞り部2と流量制御バルブ8との間の圧力を測定することができるので、より精度よく流量制御を行い得る。例えば、上記には、流量制御バルブ8の開度調整によって流量制御を行う場合に、第1圧力センサ3が検出する上流圧力P1と流量制御バルブ8の弁開度とに基づいて演算流量を求めていたが、第3圧力センサ9が検出する圧力P3と流量制御バルブ8の弁開度Avとに基づいて演算流量を求めるようにしてもよい。このようにすれば、より正確に演算流量を求められる可能性がある。
【0083】
また、他の変形例として、図9に示したように、開度が固定された絞り部2’を流量制御バルブ8の下流側に設けるとともに、流量制御バルブ8と絞り部2’との間の圧力を測定する第3圧力センサを設けるようにしてもよい。
【0084】
さらに、図11に示す第3の変形例の流量制御装置130のように、流量制御バルブ8だけでなく、圧力制御バルブ6にも歪センサ20’を設けてもよい。歪センサ20’は、例えば、圧力制御バルブ6を構成するピエゾアクチュエータの特性変化や動作異常を検知するために用いられる。歪センサ20’の出力に基づいて圧電素子の伸長量をモニタすることで、 圧力制御バルブ6の異常発生の予防保全を行い得る。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、種々の改変が可能である。例えば、歪ゲージ出力と、ピエゾアクチュエータの変位との関係がリニアでない場合などにおいて、歪ゲージ出力とピエゾアクチュエータの変位との変換テーブルを予め作成しておいてもよい。変換テーブルは、例えば、制御回路に設けられた記憶装置に予め格納されており、ピエゾアクチュエータの変位検出時には、読み出した変換テーブルを用いて、歪ゲージ出力から弁開度をより正確に知ることができる。
【0086】
また、本発明の実施形態による流量制御装置において、流量制御バルブは、ノーマルクローズ型の圧電素子駆動式バルブであってもよく、この場合にも、歪センサ出力に基づいて流量制御バルブの駆動電圧を制御することによって、良好な精度および応答性で流量制御を行うことが可能である。
【0087】
また、開度が固定された絞り部2としてオリフィスプレートを用いる場合、上記の流量制御バルブ8とオリフィスプレートとは、公知のオリフィス内蔵弁の態様で一体的に設けるようにしてもよい。オリフィス内蔵弁として設ける場合、流量制御バルブ8の取り付け用の穴部に、オリフィスプレートおよび弁座体が配置され、その上方に流量制御バルブ8のバルブ本体(弁体やアクチュエータなど)が固定される。このようにすれば、オリフィスプレートと流量制御バルブ8の弁体とを近接して配置してこれらの間の容積を小さくすることができるので、流量制御の応答性を向上させることができる。この時にも、流量制御バルブ8は、上記のようにして、圧力式流量制御装置における開度が可変な絞り部のように機能させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の実施形態による流量制御装置は、半導体製造プロセスにおいて流量制御の高速応答性が求められる場合にあっても好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0089】
1 流路
2 絞り部
3 第1圧力センサ
4 第2圧力センサ
5 流入圧力センサ
6 圧力制御バルブ
7 第1制御回路
8 流量制御バルブ
9 第3圧力センサ
10 ピエゾアクチュエータ
17 第2制御回路
20 歪センサ
20z 第1歪ゲージ
20x 第2歪ゲージ
100、110、120、130 流量制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11