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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】造形物駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/00 20060101AFI20230125BHJP
   B44C 3/00 20060101ALI20230125BHJP
   B23H 9/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
B44C5/00 Z
B44C3/00 H
B23H9/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021511487
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012827
(87)【国際公開番号】W WO2020203431
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019066876
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519114694
【氏名又は名称】岩井プレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】相馬 光成
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202077654(CN,U)
【文献】実開昭59-063376(JP,U)
【文献】特開2003-275474(JP,A)
【文献】”これぞ職人技!文字が消えるマジックメタル”,YouTube [online][video],2017年12月04日,https://www.youtube.com/watch?v=OsLYZekmxak,主に1分00秒~1分04秒、1分19秒-1分25秒を参照
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 5/00
B44C 3/00
B23H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーカット放電加工により金属材料から作成された所定の立体形状のオス型と、前記オス型とスライド可能に嵌合するメス型と、前記オス型と前記メス型とを載置するベースとを備え、前記メス型に嵌合する前記オス型をスライドさせることで造形物を出現させる造形物駆動装置において、
前記オス型は複数のパーツから構成され、可撓性のチューブに挿通され前記パーツの裏面に一端が接続されたフレキシブルワイヤーと、前記フレキシブルワイヤーの他端と接続する変位アジャスターと、前記変位アジャスターに当接するカムと、前記カムを回転させる回転軸を備えたモーターとを備え、
前記オス型は、初期状態において前記変位アジャスターにより、前記オス型の表面と前記メス型の表面とが面一の状態に引張保持されていることを特徴とする造形物駆動装置。
【請求項2】
前記変位アジャスターは、一端が前記フレキシブルワイヤーに接続し、他端が前記カムの凸部と当接するストロークピンと、前記ストロークピンの軸間に介装されるバネと、前記ストロークピンの変位に伴う前記バネの伸長を所定の範囲に止めるストッパーとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の造形物駆動装置
【請求項3】
前記カムの凸部と当接する前記変位アジャスターの端部は、前記カムの回転に伴い金属又はセラミックスのボールが自在に回転可能なボール構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の造形物駆動装置
【請求項4】
前記変位アジャスターは、一端が前記フレキシブルワイヤーに接続し、前記カムと当接する他端に前記カムの回転に伴い回転するローラを有するストロークピンと、
前記ストロークピンと所定の離隔で平行して延在し、その軸間にバネを介装するとともに一端が前記ローラの近傍で連結され、前記ストロークピンの変位による前記バネの伸長を所定の範囲に止めるストッパーとを有するバネ用ストロークピン
とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の造形物駆動装置。
【請求項5】
前記可撓性のチューブは、少なくともその一か所が固定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載に造形物駆動装置
【請求項6】
少なくとも隣接する前記カムの位相が異なることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の造形物駆動装置
【請求項7】
前記パーツの裏面の略重心位置に、前記フレキシブルワイヤーの一端が接続されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の造形物駆動装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の金属材料からなる所定の立体形状を有する複数のパーツを動的にスライド(変位)させることで、平面上から装飾的な造形物(観賞オブジェ)を動的に出現させては消し去る(浮かび上がらせては消し去る)造形物駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の金属材料からなるパーツを動的に変化させ、立体形状の造形物を出現させる技術として、下記、非特許文献1に記載の「マジックメタル」がある。このマジックメタルは、金型製作技術の一つであるワイヤーカット放電加工により、鏡面に仕上げられた平面上から一筆書きで切り抜いたステンレスのブロックの文字板をオス型とし、切り抜かれた原板をメス型とし、オス型を手動でスライドさせて文字板を浮かび上がらせる、というものである。
【0003】
ワイヤーカット放電加工により作成されたオス型とメス型との離隔が0.01mm以下であり、オス型とメス型の表面が面一で嵌合していると、両者の隙間はほとんど見えず、鏡面に仕上げられた平板に見える。かかる状態からオス型(又はメス型)をスライドさせると、鏡面から文字が浮かび上がってくる。非特許文献1が開示する技術は、オス型とメス型との隙間を0.01mm程度で均一に作成するワイヤーカット放電技術の加工精度をアピールする技術として、公開されている。
【0004】
上述したように、非特許文献1に記載の技術は、ワイヤーカット放電の加工精度をアピールするものであるが、かかる高精度なワイヤーカット放電加工技術により装飾的な造形物を作成し、それを動的に出現させては消え去る装置(造形物駆動装置)があれば、見る者を魅了する装置となるが、今のところそうした装置はない。
【0005】
放電加工により金属面に文字を形成する先行技術としては、下記特許記載1に記載の技術がある。この技術は、加工すべき形状を転写切抜したマスキングシートを表面に貼り付けた電極素材に対して、ショットブラストによってマスキングシートの切り抜き部を凹溝型に加工して放電加工用電極を形成し、かかる放電加工用電極により金属板に凸状の文字や模様を形成するものである。下記特許文献1に記載の技術は、凸状の文字や模様を放電彫刻により形成するものであるが、文字や模様が動的に変化するものではなく、装飾的な造形物を見せる装置でもない。
【0006】
下記特許文献2は、成型済みの食品を保持するための複数の凹部が形成されたプレート部と、前記複数の凹部の少なくとも1つに設けられたカム機構と、前記カム機構を駆動する駆動部とを備える食品展示装置であって、前記カム機構は、前記凹部に形成されたカム穴と、少なくとも1箇所以上の凸部を有するカムと、前記カムが固定された回転軸とを有し、前記カムの前記凸部は、前記カム穴から前記食品を押し上げるように構成された食品展示装置を開示している。
【0007】
下記特許文献2に記載の技術は、凹部から食品が押し上げられる、即ち、メス型から食品であるオス型が出入りする技術を開示する。しかし、特許文献2に記載の技術は様々なパーツを動的に変化させることで装飾的な造形物を出現・消失させるものではなく、また、凹部から押し上げられる凸部(食品)との間には大きな隙間があり、平面上から突如、造形物が浮き上がってくる、といった驚きや感動を見る者にもたらすものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】http://www.tkd-mgn.com/magicmetal.html
【文献】特開平6-246543号公報
【文献】実用新案登録第3317760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、複数の金属材料からなる所定の立体形状を有する複数のパーツを動的にスライド(変位)させることで、平面上から装飾的な造形物(観賞オブジェ)を動的に出現させては消し去る(浮かび上がらせては消し去る)ことで、見る者に驚きや感動を与えることのできる造形物駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、ワイヤーカット放電加工により金属材料から作成された所定の立体形状のオス型と、前記オス型とスライド可能に嵌合するメス型と、前記オス型と前記メス型とを載置するベースとを備え、前記メス型に嵌合する前記オス型をスライドさせることで造形物を出現させる造形物駆動装置において、
前記オス型は複数のパーツから構成され、前記パーツの裏面に一端が接続されたフレキシブルワイヤーと、前記フレキシブルワイヤーの他端と接続する変位アジャスターと、前記変位アジャスターに当接するカムと、前記カムを回転させる回転軸を備えたモーター
とを備えたことを特徴とする造形物駆動装置、である。
【0011】
パーツの表面は鏡面に研磨され、初期状態において前記オス型の表面は、変位アジャスターにより前記メス型の表面と引張保持されて面一の状態となっている。モーターの回転により回転軸に接続されたカムにより変位アジャスターを介して複数のパーツからなるオス型がスライドする。これにより鏡面に仕上げられた表面から複数の立体形状のパーツからなる装飾的な造形物が、動的に出現しては消え去る。
【0012】
前記フレキシブルワイヤーの他端は変位アジャスターの一端に接続し、前記カムの凸部が前記変位アジャスターの他端と当接することで前記パーツがスライドする。変位アジャスターはバネを備えており、初期状態においてはそのバネにより前記パーツの表面をメス型の表面と面一に保持している(バネ力によりパーツが引張されている)。かかる引張状態にあるワイヤーをカムの回転により変位させることで前記パーツがスライドする。オス型とメス型との表面が面一になっているのが初期状態(平常状態)であり、パーツは変位アジャスターのバネ力により引張状態に保持され、オス型とメス型の表面が面一になっている。これにより、スライド面に塵埃や傷がつき難くなり、長期間にわたる安定的なスライドが可能となる。
【0013】
変位アジャスターの端部は、前記カムの回転に伴い金属又はセラミックスのボールが自在に回転可能なボール構造となっている。これによりカムの回転力をより効率的に変位方向に変換することができる。また、変位アジャスターが、カムの凸部と当接する他端にカムの回転に伴い回転するローラを有する矩形のストロークピンと、前記ローラの近傍で前記矩形のストロークピンと所定の離隔で連結し、前記フレキシブルワイヤー方向に延在し、その軸間にバネを介装するとともに、前記ストロークピンの変位による前記バネの伸長を所定の範囲に止めるストッパーとを有するバネ用ストロークピンを備えることが好適である。ストロークピンを矩形にすることで、端部にローラの設置が容易となる。また、ストロークピンの変位を制御するバネをストロークピンとは別構造とすることで装置の組み立て加工を容易とすることができるからである。
【0014】
前記フレキシブルワイヤーを樹脂製のチューブに挿通しこれをワイヤーホルダーとし、係るワイヤーホルダーを造形物駆動装置の函体の底板や壁面に固定することでカム凸部による変位を確実にワイヤー変位に変換できる。
【0015】
複数の異なる立体的形状からなるパーツをスライドさせるカムの位相を変えることで、より躍動感のある造形物を出現させて消え去ることができる。また、前記メス型と前記オス型の離隔及び隣接する前記パーツの離隔を0.005mm~0.01mmとすることで、鏡面から装飾的な造形物が浮き上がり消え去っていくように見える。また、パーツ裏面の略重心位置に、パーツをスライドさせるフレキシブルワイヤーの一端が接続することで、パーツの傾きによるパーツ間の摩擦を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、複数の金属材料からなる所定の立体形状を有する複数のパーツを動的にスライド(変位)させることで、鏡面に仕上げられた平面上から装飾的な造形物(観賞オブジェ)を動的に出現させては消し去る(浮かび上がらせては消し去る)ことができる。これにより見る者に驚きや感動を与えることのできる造形物駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態である装飾的な造形物(以下、観賞オブジェという。)の全体図(図1(a))と、その一部を拡大した図(図1(b))である。
【0018】
図1に示す観賞オブジェ2は、本発明の一実施の形態として47都道府県を47個のパーツとし作成した日本列島である。本発明によれば、一実施の形態として47個のパーツ10を動的に変化させ(スライドさせ)、鏡面仕上げの平面から日本列島を浮かび上がらせて消し去る日本列島駆動装置を提供することができる。なお、後述するように本発明の造形物駆動装置1は、日本列島に限定されるものではなく、動物園内を動きまわる動物を動的に出現させては消え去る動物園駆動装置、あるいはオリンピック競技を動的に表現するオリンピック競技駆動装置など、様々な造形物駆動装置として適用することができる。
【0019】
図1(a)において、観賞オブジェ2は、ワイヤーカット放電加工により金属材料から作成された日本列島であるオス型を構成するパーツ10と、係るパーツ10とスライド可能に嵌合する金属材料で形成されたメス型20と、パーツ10とメス型20とを載置するベース30とを備える。パーツ10とメス型20との表面は鏡面に研磨されている。図1(a)において、オス型(日本列島)がメス型20から上方に突出するが、オス型のパーツ10とメス型20とを初期状態において面一に嵌合するように構成することで、その表面は一枚の鏡にように見え(オス型の日本列島は見えない)、かかる鏡面から日本列島が浮き上がっては消え去るような造形物(観賞オブジェ)とすることができる
【0020】
図1(b)は、パーツ10の一部である関東・東海・信越地域の都県を構成するパーツ10の拡大図である。これらの地域は、例えば、長野県パーツ10-1、埼玉県パーツ10-2、東京都パーツ10-3、神奈川県パーツ10-4、静岡県パーツ10-5、そして山梨県パーツ10-6で構成されている。本実施の形態では各パーツ10の金属材料として、主に金型で使用されている合金工具鋼(SKD)を用いた。また、ワイヤーカット放電加工によりこれらを作成した。図1(b)において、長野県パーツ10-1と、東京都パーツ10-3とが初期状態から出現している(浮かび上がっている)が、パーツ10を出現・消失(浮かび上がらせては消し去る(本実施の形態では上下させる))機構については後述する。
【0021】
各パーツの表面は研磨により鏡面仕上げとすることが好ましい。パーツ10間の離隔(クリアランス)を0.005~0.008mmとし、各パーツ10とメス型20の上面が、初期状態で面一となり、各パーツ10とメス型20とがスライド可能に嵌合するように構成することで、観賞オブジェ2の表面(上面)は鏡面のようになる。ここで、メス型20とパーツ10との離隔及びパーツ10間の離隔が0.001mmよりも大きくなるとメス型20とパーツ10間及び各パーツ10間のスライドは円滑になる。一方において、各パーツの合わせ面が見えるため表面は鏡面のようにならない。一方、0.005mmよりも狭くなると、メス型20とパーツ10間及びパーツ10間の合わせ面がより見え難くなり、あたかも鏡面のようになるが、メス型20とパーツ10間及び各パーツ10間のスライドし難くなる、という問題がある。
【0022】
図2は本発明の一実施形態である日本列島を観賞オブジェ2としたときの造形駆動装置1の構成を示す平面図である。日本列島を構成するパーツ10をスライドさせる機構は、モーター100、モーター100に接続しカム110を回転させる回転軸102、回転軸102を支える軸受101、カム110と当接する変位アジャスター120、変位アジャスター120とフレキシブルワイヤー151(図5図6参照)とを接続する接続具140、変位アジャスター120の固定と変形の防止の役割を果たす固定具130、固定具132、及びフレキシブルワイヤー151を固定する固定具131とを備える。カム110は47都道府県に対応するように47個設けられている。カムの形状等により各カムの位相が決まるが、隣接するカムの位相は同じであっても良いが、位相を異ならせることでより躍動感のある日本列島が表現できる。
【0023】
図3図2に示す右側部分のパーツ10を駆動する駆動機構の詳細に示した図である。図3において、モーター100により回転軸102に接続されているカム110が回転する。カム110の凸部が変位アジャスター120に当接することで変位アジャスター120の一端に接続するフレキシブルワイヤー151の先端が変位する。このとき変位アジャスター120にはカム110の回転駆動により駆動方向に曲げ応力がかかるが、固定具132により係る応力による変形が防止される。なお、回転方向に加わる曲げ応力を軽減するための手段については後述する。フレキシブルワイヤー151は可撓性のチューブに挿通され、他端がパーツ10の裏面に接続している。モーター100の回転運動は、カム110により直線運動に変換され、フレキシブルワイヤー151の先端を変位させこれによりパーツ10がスライドする。
【0024】
変位アジャスター120は、固定具130、132によりそれ自体は変位しないよう固定されている。この結果、変位アジャスター120を構成するストロークピン121(図4参照)のみが変位し、ストロークピン121がそのままフレキシブルワイヤー150の変位となり、パーツ10をスライドさせる。
【0025】
図4は変位アジャスター120、樹脂製のチューブ150と、これに挿通されるフレキシブルワイヤー151、及び様々な形状のカム110を示した図である。変位アジャスター120は図4(a)に示すようにバネ123とバネ筒124との内部を挿通するストロークピン121、バネ123の伸張を所定の範囲に止めるストッパー122、ストロークピン121の端部であってカム110に当接するカム当接部125、変位アジャスター120を固定するための押さえ部126、フレキシブルワイヤーに当接するワイヤー当接部127とから構成される。なお、抑え部126、カム当接部125の一部は、バネの伸長を所定の範囲に止めるストッパーの機能も兼ね備える。
【0026】
パーツ10の形状、重量により変位アジャスター120のサイズを変えることで、様々な形状のパーツに対応できる。図4(c)はカム110の形状を示した図である。カム110は図4(c)に示すように中心に軸孔111を有し、回転体の一部に凸部112を有し、凸部112が変位アジャスター120のカム当接部125に当接することでストロークピン121が変位する。カム110の形状としては、図4(c)に示すような様々な形状のものがあげられる。カム110の形状は観賞オブジェ2を構成するパーツ10の形状寸法、隣接するパーツ10との位相差を考慮し、適切なカム形状を選択する。これにより躍動感のある観賞オブジェ2を演出することができる。
【0027】
図4(b)は、一端がパーツ10の裏面に接続し、他端がワイヤー当接部127と接続具140で接続するフレキシブルワイヤー151が、樹脂製のチューブ150に挿通されている状態を示した図である。フレキシブルワイヤー151と樹脂製のチューブ150はパーツ10の形状、重量により、そのサイズや材質を適宜変更する。樹脂製のチューブ150は耐高温性、高機械的強度、耐屈曲疲労に優れた材料が好適である。これによりフレキシブルワイヤー151が、その中をスライドしてもホルダーとしての伸縮が無いため、フレキシブルワイヤー151の変位に変動が生じない。本発明の一実施の形態では樹脂製のチューブ150の材料としてはナフロンチューブを用いた。
【0028】
図5は本発明の一実施の形態である造形物駆動装置1の断面図である。本発明の一実施の形態である造形物駆動装置1は、底板50と枠40、そしてパーツ10、メス型20を載置するベース30とから構成される函体と、かかる函体内に収納されるモーター100、モーター100に連結する回転軸102、回転軸102に接続し回転運動を直線運動に変換するカム110、そしてカム110に当接する変位アジャスター120、変位アジャスター120とオス型20の裏面とを接続する樹脂製のチューブ150に挿通されているフレキシブルワイヤー151等から構成されている(これらは図5には図示されていないので、図6図7等を参照)。
【0029】
図6は造形物駆動装置1の駆動のメカニズムを断面的に示した図である。図6において、モーター100によりカム110が回転すると、カム110に当接している変位アジャスター120のカム当接部125を押し上げる。変位アジャスター120は、固定具132、130により固定されているため、ストロークピン121が凸部112により押し上げられる。ストロークピン121のワイヤー当接部127とフレキシブルワイヤー151とは接続具140により接続されている。これによりストロークピン121の変位がフレキシブルワイヤー151の変位となり、フレキシブルワイヤー151の先端に接続されているパーツ10をスライドさせる。
【0030】
図7は造形物駆動装置1の構造を横断的に示した図である。モーター100により複数のカム110が回転すると、各カム110の凸部112が、各変位アジャスター120のストロークピン121と当設する。これにより図7に示す左側の変位アジャスター120は、カム110の回転により下方向の曲げ応力がかかる。かかる応力による変形を防止するのが固定具132である。また図7に示す右側の変位アジャスター120は、カム110の回転により上方向の曲げ応力がかかる。かかる応力により変形を防止するのが固定具132である。変位アジャスター120は固定具130により固定されているため、各ストロークピン121の変位がそのままフレキシブルワイヤー151の変位となり、フレキシブルワイヤー151の先端に接続されているパーツ10-1から10-4がスライドする(上方に押し上げられる)。
【0031】
図8は変位アジャスター120の断面図と、その端部に設けたボール128の拡大図である。上述したように変位アジャスター120のカム当接部には、カム110の回転により曲げ応力がかかり、かかる曲げ応力による変形を防止するために固定具132が必要となるが、かかる曲げ応力は、図8に示すようにカム110と当接する部位にカム110の回転に伴い当接部が自在に回転するボール128を設けることで軽減することができる。ボール128は、例えば、金属製の台座に金属またはセラミックスのボール128を自由に回転できるようにして固定したボールペン先の構造(ボールペン先構造)とする。かかる構造によりカム110の回転に伴う曲げ応力を軽減することができ、固定具132の省略あるいは、これをより簡便なものとすることができる
【0032】
図9は変位アジャスター120の断面図と、その端部に設けたローラ129の拡大図である。図8に示すセラミックスのボール128に代えて、ローラ129をストロークピン121の端部に設けている。こうした構造とすることで、カム110の回転による変位アジャスター120にかかる曲げ応力を軽減でき、かつボールペン先構造に比較して製作が容易であり、製作・加工費を低減することができる。図9に示すローラ構造においては、ストロークピン121は矩形に加工され、その端部にローラ129が設置されている。ストロークピン121を矩形とすることで、より簡便にローラ129を端部に設置することができる。
【0033】
図9に示すローラ構造においては、ストロークピン121に介装するバネ123に代えて、図9に示すようにストロークピン121と並行して連結され、その軸間にバネ123を介装するとともに、ストロークピン121の変位によるバネ123の伸長を所定の範囲に止めるストッパーを有するバネ用ストロークピン141を設けている。これにより、ストロークピン121を矩形とし、バネ用ストロークピン141を円筒形状にすることで、バネ123をストロークピン141に介装することができる。
【0034】
図10は、図9に示す変位アジャスター120の先端にローラが設けられた造形物駆動装置1の駆動部の平面図である。モータ100によりカム110が回転し、これに当接するローラ129がストロークピン121を変位させる。ストロークピン121の上部に並行して、これに連結するバネ用ストロークピン141が設けられている。バネ用ストロークピン141にはバネ123が介装され、その端部にはストッパー143が設けられ、バネ123の伸縮によりストロークピン121の端部に接続するフレキシブルワイヤー151が変位する。
【0035】
図11は、図8図9に示す変位アジャスター120の先端にローラが設けられた造形物駆動装置1の構造を横断的に示した図である。モーター100により複数のカム110が回転すると、各カム110の凸部112が、各変位アジャスター120のストロークピン121の端部に設けられたローラ129と当設する。ローラ129の曲げ応力軽減により、図7に示す、応力変形を防止する固定具132が不要となっている。フレキシブルワイヤー151が挿通しているチューブは固定具により固定されているため、各ストロークピン121の変位がそのままフレキシブルワイヤー151の変位となり、フレキシブルワイヤー151の先端に接続されているパーツ10-1から10-4がスライドする(上方に押し上げられる)。
【0036】
図12(a)は、図9から図11に示すストロークピン121の端部にローラ129を設け、バネ用ストロークピン141をストロークピン121に併設した構造の側面図であり、図12(c)はその拡大図である。図12(b)はローラ129側からみた正面図である。ストロークピン121の先端にローラ129が設けられ、その上部にバネ123を介装するバネ用ストロークピン141が設けられている。バネ123の両端はストッパー143で伸縮範囲が固定されている。図12(b)はこの構造を説明するため、ストロークピン121とバネ用ストロークピン141は2か所にだけ設置し、他の3か所(左右両端と中央)はストロークピン121が挿通される穴(下側の矩形の穴)と、バネ用ストロークピン141が挿通される穴(上側の丸穴))は、挿通口が見えるようにしている。
【0037】
図13図9から図12に示す変位アジャスター120の先端にローラが設けられた駆動部の斜視図である。モータ100の回転軸102の回転で位相の異なるカム110が回転する。カム110に当接するローラ129がカム110の回転に伴い変位し、フレキシブルワイヤー151を変位させ、フレキシブルワイヤー151に接続するオス型10(パーツ)が上下する。なお、図13においては、変位アジャスター120の曲げ応力による変形を防止するための固定具132が設けられているが、ローラ129により曲げ応力が軽減されるので、変位させるオス型10(パーツ)の重量、大きさ等によっては省略することもできる。
【0038】
本発明の一実施の形態として、日本列島を観賞オブジェ(造形物)として説明してきたが、本発明によれば、図14に示すような動物園における動物の動きを造形物とすることもできる。即ち、動物園内の様々な動物をパーツとし、これらを動的に出現させて消え去る造形物を観賞オブジェとして提供することができる。また、オリンピックスタジアムにおける各種競技をパーツとし、これらを出現させては消え去る造形物を観賞オブジェとして提供することができる。
【0039】
本発明によれば、立体形状を有する複数のパーツを動的にスライド(変位)させることで、平面上から装飾的な造形物(観賞オブジェ)を動的に出現させては消し去る(浮かび上がらせては消し去る)ことで、見る者に驚きや感動を与えることのできる造形物駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の一実施の形態である観賞対象物である立体形状(以下、観賞オブジェ2という。)の全体(図1(a))とその一部(図1(b))を示した図である。
図2】本発明の一実施形態である日本地図を観賞オブジェ2としたときの、立体形状表示装置1の構成を示した図である。
図3図2に示す左側部分のパーツ10を駆動するパーツ駆動機構の詳細図を示した図である。
図4】変位アジャスターの構造、可撓性樹脂製チューブを挿通するフレキシブルワイヤー、及びカム110の形状を示した図である。
図5】本発明の一実施の形態である造形物駆動装置1の断面図である。
図6】造形物駆動装置1の駆動のメカニズムを断面的に示した図である。
図7】造形物駆動装置1の駆動のメカニズムの一部を平面的に、一部を断面的に示した図である。
図8】変位アジャスター120の断面図と、その端部に設けたボール128の拡大図である。
図9】変位アジャスター120の断面図と、その端部に設けたローラ129の拡大図である。
図10】変位アジャスター120の先端にローラが設けた構造の平面図である。
図11】変位アジャスター120の先端にローラが設けられた造形物駆動装置1の断面図(横断面図)である。
図12】変位アジャスター120の端部にローラ129を設け、バネ用ストロークピン141をストロークピン121に併設した構造の側面図及び正面図である。
図13】変位アジャスター120の先端にローラが設けた構造の斜視図である。
図14】観賞オブジェの他の一例として動物園を示した図である。
【符号の説明】
【0041】
1 造形物駆動装置
2 観賞オブジェ
10 オス型
20 メス型
30 ベース
40 枠
50 底板
100 モーター
102 回転軸
110 カム
111 軸穴
112 凸部
120 変位アジャスター
121 ストロークピン
122 ストッパー
123 バネ
124 バネ筒
125 カム当接部
126 押さえ部
127 ワイヤー当接部
128 ボール
129 ローラ
130 131 132 固定具
140 接続具
141 バネ用ストロークピン
150 樹脂製のチューブ
151 フレキシブルワイヤー


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14