IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図1
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図2
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図3
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図4
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図5
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図6
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図7
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図8
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図9
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図10
  • -ペルソナ学習および利用方法、プログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】ペルソナ学習および利用方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230125BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021544354
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015103
(87)【国際公開番号】W WO2021206179
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2020070942
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502305722
【氏名又は名称】伊藤 庸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 庸一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 友和
(72)【発明者】
【氏名】上野 太輔
【審査官】松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0221502(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0130067(US,A1)
【文献】特表2000-511304(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0205381(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0251859(US,A1)
【文献】国際公開第2001/070361(WO,A2)
【文献】国際公開第2003/012596(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実施される方法であって、
(a)エレメントおよびエレメントバリューを生成し、前記エレメントおよび前記エレメントバリューに対する設定を行うことによって、第1のルールツリーに関連付けられる第1のペルソナを生成することと、
(b)前記第1のペルソナをユーザに公開することと、
(c)前記ユーザからの入力を受信し、前記入力の内容を分析して次の会話内容を生成することであって、前記入力の内容を分析して次の会話内容を生成することは、
前記入力の内容に対する適切な応答を前記第1のペルソナによって行うことができないと判定することと、
前記エレメントおよび前記エレメントバリューに対する設定に基づいて、第2のペルソナを呼び出すことと、
前記第2のペルソナに関連付けられるルールツリーを辿ることによって次の会話内容を生成することと、
呼び出し元である前記第1のペルソナおよび呼び出し回数を、前記第2のペルソナのルールツリーに記憶し、前記呼び出し回数に応じて前記第2のペルソナに関連付けられるドナーに対する報酬を決定すること
を含む、ことと、
(d)生成した前記次の会話内容をユーザに提供することと、
(e)前記(c)および前記(d)を繰り返すことと
を備える方法。
【請求項2】
コンピュータによって実施される方法であって、
(a)予め定められたドナーのための事例取得用ペルソナを生成し、前記ドナーに公開することであって、前記事例取得用ペルソナは、エレメントを有する、ことと、
(b)前記エレメントに関連付けられるエレメントバリューを前記ドナーから受信し、受信した前記エレメントバリューを前記事例取得用ペルソナのルールツリーに登録することによって、ドナークローンペルソナである第1のペルソナを生成することと、
(c)前記第1のペルソナをユーザに公開することと、
(d)前記ユーザからの入力を受信し、前記入力の内容を分析して次の会話内容を生成することであって、前記入力の内容を分析して次の会話内容を生成することは、
前記入力の内容に対する適切な応答を前記第1のペルソナによって行うことができないと判定することと、
前記エレメントおよび前記エレメントバリューに対する設定に基づいて、第2のペルソナを呼び出すことと、
前記第2のペルソナに関連付けられるルールツリーを辿ることによって次の会話内容を生成することと、
呼び出し元である前記第1のペルソナおよび呼び出し回数を、前記第2のペルソナのルールツリーに記憶し、前記呼び出し回数に応じて前記第2のペルソナに関連付けられるドナーに対する報酬を決定すること
を含む、ことと、
(e)生成した前記次の会話内容をユーザに提供することと、
(f)前記(d)および前記(e)を繰り返すことと
を備える方法。
【請求項3】
前記入力の内容を分析して次の会話内容を生成することは、
前記分析の結果に基づいてルールツリーを辿ることと、
話題を深めるための質問を提供し、別の話題を選択して提供し、または前の会話内容についての聞き直しを提供することにより、次の会話内容を生成することと
を含む、請求項1または請求項2の方法。
【請求項4】
前記ユーザからの第2の入力を受信し、前記第2の入力の内容を分析して次の会話内容を生成することであって、前記第2の入力の内容を分析して次の会話内容を生成することは、
前記第2の入力の内容に対する適切な応答を前記第2のペルソナによって行うことができないと判定することと、
前記第2のペルソナに関連付けられるエレメントおよびエレメントバリューに対する設定に基づいて、第1のペルソナを呼び出すことと、
前記第2のペルソナに関連付けられるルールツリーを辿ることによって次の会話内容を生成することと
を含む、ことをさらに備える、請求項1または請求項2の方法。
【請求項5】
前記ユーザからの入力は、対話型アプリケーションによって取得され、生成した前記次の会話内容は、前記対話型アプリケーションによってユーザに提供される、請求項1または請求項2の方法。
【請求項6】
コンピュータに、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DTL(デシジョンツリーラーニング)によって、人間とコンピュータの間でコミュニケーションするための方法、およびプログラムに関する。また、本発明は、DTLによってコンピュータ同士でコミュニケーションするための方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人は仕事、家庭、地域、個人、趣味等の側面において様々な人格(ペルソナ)を持ってコミュニケーションを図る。すなわち、人は他者との関わりに応じて複数のペルソナを持ち得る。一般的に「ペルソナ」という用語は、人の属性等から消費行動を想定し、モデル化された顧客像を指す。
【0003】
特許文献1には、製品に関連するコンテキストと顧客に関連するコンテキストとを関連付けたペルソナを作成し、製品が直接関連しない顧客についても見込み顧客として抽出する技術が開示されている。特許文献2には、ペルソナを作成および精緻化する技術、ならびにペルソナを他社サービス等に提供する技術等が開示されている。特許文献3には、エキスパートシステムにおいてルールを生成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-126198号公報
【文献】特許6104239号公報
【文献】特許5572615号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、コミュニケーションの中で伝達する感性、思考、ノウハウ等の情報は、共有された人のみが認識および活用できるものであり、定量化されていなかった。また、人が有している感性、思考、ノウハウ等の情報自体に価値があっても、自身が価値を認識していない場合も多い。また、価値のある情報も他人等に提供できなければ有効活用することができない。
【0006】
ペルソナの利用が広まってくると、人間がペルソナを介してコンピュータともっと自由に会話したいという要求が高まってくる。AI技術を利用してペルソナを生成したとしても、予め用意された会話の文言、例えば、ユーザへ質問を行い、その返答内容によって定められた回答を行う単なる診断システムでは、自由な会話を行っているとは言えない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、人間とコンピュータ(ペルソナ)との間でコミュニケーションを図るための方法、およびプログラムを提供する。また、本発明は、コンピュータ(ペルソナ)同士でコミュニケーションを図るための方法、およびプログラムを提供する。
【0008】
本発明の一態様である、コンピュータによって実施される方法は、(a)エレメントおよびエレメントバリューを生成し、前記エレメントおよび前記エレメントバリューに対する設定を行うことによって、第1のルールツリーに関連付けられる第1のペルソナを生成することと、(b)前記第1のペルソナをユーザに公開することと、(c)前記ユーザからの入力を受信し、前記入力の内容を分析して次の会話内容を生成することと、(d)生成した前記次の会話内容をユーザに提供することと、(e)前記(c)および前記(d)を繰り返すことを備える。
【0009】
本発明によれば、人がコミュニケーションの過程において伝達する感性、思考、ノウハウ等の情報を定量化し、ペルソナとして作成することができる(以下、「ペルソナ化」という)。また本発明によれば、作成されたペルソナを使用することによって、例えば自身の行動の代行や行動の予測等を行うことができる。さらに本発明によれば、価値のある情報(例えば高度なスキルや希少なノウハウ等)を有するペルソナが提供するサービスを、他人等が必要な時に利用可能なプラットフォームを構築できる。
【0010】
本発明によれば、人間とコンピュータ(ペルソナ)との間でコミュニケーションを行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書において開示される実施形態の詳細な理解は、添付図面に関連して例示される以下の説明から得ることができる。
図1図1は、本発明の一実施形態に係るペルソナ化システム100の構成を例示するブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る入力データ収集を例示する図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る他のペルソナ集合体の起動を例示する図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係るペルソナ集合体の学習を例示するフロー図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係るペルソナとのやり取りの概念を例示する図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係るペルソナのプラットフォームの概念を例示する図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るペルソナ化システム100が動作し得るデバイスの汎用的な構成を例示する図である。
図8図8は、ペルソナ化システム100によって実行される、第1のアプリ、第2のアプリ、第3のアプリ、および第4のアプリの利用形態を説明する図である。
図9図9は、デザイナー兼ドナーが、任意のペルソナをデザインし、事例を登録してルールツリーを生成する一例を説明する図である。
図10図10は、一般ユーザがペルソナと会話する一例を説明する図である。
図11図11は、ドナーが、第4のアプリを介して事例取得用ペルソナと会話することによってドナークローンペルソナを生成する一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。複数の図面において同一の符号は同一の要素を表し、重複した説明は省略する。本明細書において説明されるペルソナ化(本明細書では「AI化」と同義で使用する)する対象は、経験者・体験者である。経験者・体験者の中で専門的なことをするのが専門家と呼ばれる者であり、専門家の一例として栄養士を本明細書で一例として説明することとする。しかしながら、本明細書で挙げる例は、あくまでも一例であって、本明細書の記載によって何らかの制限を意図したものではない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るペルソナ化システム100の構成を例示するブロック図である。図1で例示されたペルソナ化システム100は、例えばスマートフォン、タブレット、PC、サーバ等の任意のデバイス上で動作し得る。ペルソナ化システム100を有するデバイスは、情報の入力、任意の操作等を受け付け、他のデバイスとの間で任意のデータを送受信できる。情報の入力は、テキストデータ、動画/画像データ等の任意のデータ形式で行われてよい。操作は、マウス、キーボード、タッチペン、音声、ジェスチャ等を含む。
【0014】
ペルソナ化システム100は、本発明に係る事例学習・機械学習ツールを備える。事例学習・機械学習ツールは、入力データに基づく事例を「条件属性(エレメント)」および「結論属性(ターゲット)」の組で表現する。事例学習・機械学習ツールはまた、事例を元に観測された「条件属性値(エレメントバリュー)」から「結論属性値(ターゲットバリュー)」を推定するルールを決定木の形式(以下、「ルールツリー」という)で学習する。事例学習・機械学習ツールは、予め設定された質問項目(エレメント)の応答の仕方(エレメントバリュー)に基づいて自動的にルールツリーを辿ることによって、ターゲットバリューを出力することができる(オートコンサルティング)。事例学習・機械学習ツールはまた、集積した事例に基づいてルールツリーの自動生成を行うことができる。
【0015】
ペルソナ化システム100は、「この質問項目ではこのように応答する」、「このように応答したときはどのような状況か」等を分析することによって、「こういう状況では、こうする人である」という人の感性、思考、ノウハウ等の情報を得る。すなわち、人の感性、思考、ノウハウ等が人格としてルール化されているといえる。本発明の一実施形態では、事例学習・機械学習ツールを使用して、人を模倣する「ペルソナ」を作成および利用するペルソナ化システム100を構築する。
【0016】
ペルソナ化システム100は、模倣する人の世界観を表すためのテーブルを備える。テーブルは、入力データに基づいてルールツリーを辿って(オートコンサルティングを行って)得られた事例を集積する。テーブルは、誰に対してオートコンサルティングを行い、得られた事例かによって異なる。すなわち、Aという人から得られた事例、Bという人から得られた事例等に応じて、事例ごとにテーブルが複数用意される。テーブルはインターネット等のネットワーク上に存在してもよく、一意となるアドレス、ID等によって呼び出すように実装されてもよい。
【0017】
人を模倣するペルソナは、例えば仕事、家庭、地域、個人、趣味等の細分化されたペルソナを含むペルソナ集合体として表すことができる。例えば、仕事のペルソナである栄養士のペルソナはさらに、「食事関係」、「食生活関係」、「満足度関係」、「継続意識」等の細分化されたペルソナ単体を含むペルソナ集合体として表すことができる。ペルソナ集合体がどのようなペルソナを含むかはデザインに応じて異なり、例えば人のあらゆる側面を模倣する場合には数千個の細分化されたペルソナ単体を含んでもよい。ペルソナ集合体は、例えば一意となるアドレスと関連付けられ、ネットワーク上の任意のデータベースに登録される。ペルソナ集合体はアドレスをキーとして呼び出すことによって、任意のデバイスから利用できる。
【0018】
ペルソナ集合体に含まれるペルソナ単体は、1つまたは複数のルールツリーおよびテーブルを含む。ペルソナ単体が1つである場合、ペルソナ集合体とペルソナ単体とが等しくなる。ペルソナ集合体は、複数のペルソナ単体を予め定義し、多量のサンプル事例を集積することによって、平均的な初期のモデルを作成してもよい。初期のペルソナ集合体は、テーブル、ルールツリー等を更新すること等によって変化し得る。
【0019】
以下、ペルソナ化システム100が備え得る機能の一例を説明する。
【0020】
ペルソナ化システム100はメインモジュール101を備える。メインモジュール101は、指定されたペルソナ集合体とテーブルをアクティブにするmain文である。メインモジュール101はまた、ペルソナ化システム100への入力データをキャッシュ情報化する。
【0021】
ペルソナ化システム100は反映モジュール102を備える。反映モジュール102は、ルールツリーを辿って得られた事例等を記録し、テーブルに反映する。反映モジュール102はまた、1つまたは複数のルールツリーにエレメントバリューの情報を連携する。エレメントバリューの連携によって、入力データから得られたエレメントバリューに基づいて、複数のルールツリーを同時進行で辿ることができ、重複が生じない。連携されたエレメントバリューは、1つまたは複数のルールツリーのうちのいずれかのエレメントに対応付けられると、対応付けられたエレメントの次のエレメントを辿るようにオートコンサルティングが行われてもよい。このようにすることで、「そういえば、〇〇は?」という具合に異なるルールツリーやエレメントの順であっても辿ることができ、単独のルールツリーを順番に辿るよりも人間的/自然なオートコンサルティングを行うことができる。
【0022】
ペルソナ化システム100は選択モジュール103を備える。入力データに基づいてなされたルールツリーに対する反応がテーブルに反映されると、選択モジュール103は記録された反応に対する処理の選択を促す。選択モジュール103は、例えば入力データを事例として単に蓄積するか否か、学習するか否か等の選択を可能にする。ペルソナ化システム100は選択を容易にするためのGUIを備えてもよい。
【0023】
ペルソナ化システム100はペルソナ集合体更新モジュール104を備える。ペルソナ集合体更新モジュール104は、テーブルに記録した事例、ルールツリーに対する反応を事例学習・機械学習ツールによって学習する。学習によって、テーブル、ルールツリー等が更新される。ペルソナ集合体更新モジュール104は、ペルソナ集合体に含まれるペルソナ単体のルールツリーを新しく自動生成してもよい。
【0024】
ペルソナ化システム100は誘導モジュール105を備える。誘導モジュール105は、ペルソナ集合体とユーザとのやり取りに基づいて、ユーザのペルソナを作成する。誘導モジュール105は例えば、「この質問項目ではこのように応答する」等の事例におけるエレメントとエレメントバリューとの組み合わせを分析し、「このように応答したときはどのような状況か」という事例を生成する。誘導モジュール105は、ユーザの反応に基づいて生成された事例に沿うように1つまたは複数のルールツリーを自動生成する。誘導モジュール105はまた、自動生成された1つまたは複数のルールツリーに基づいて、ユーザのペルソナを作成する。
【0025】
ペルソナ化システム100はペルソナ集合体起動モジュール106を備える。ペルソナ集合体起動モジュール106は、他のペルソナ集合体を起動でき、他のペルソナ集合体とのやり取りを可能にする。
【0026】
ペルソナ化システム100はペルソナ起動モジュール107を備える。ペルソナ起動モジュール107は、他のペルソナ集合体に含まれるペルソナ単体を起動でき、ルールツリーを利用可能にする。
【0027】
ペルソナ化システム100は出力モジュール108を備える。出力モジュール108は、ルールツリーを辿る途中で選択されたエレメントおよびエレメントバリューに対応したテキスト、画像、動画等のデータを任意のシステムに返す。出力モジュール108は、エレメントバリューが所定の条件を満たすかどうか等に応じて出力を変更させてよい。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る入力データ収集を例示する図である。図2は、対話型アプリケーションを介して入力データを収集する例を示している。対話型アプリケーションは、一対一または複数人の間での対話プラットフォーム(以下、「トーク」という)を提供でき、例えばコミュニケーションツールとして知られる従来のアプリケーションとすることができる。対話型アプリケーションは、ローカルアプリケーション、Webアプリケーション等の形態は問わない。ペルソナ化システム100は、対話型アプリケーションとの間で任意のデータを送受信できる。対話型アプリケーションは、メッセージの一部または全部をペルソナ化システム100に送信する。ペルソナ化システム100は受信したデータを入力データとしてキャッシュ情報化する。
【0029】
図2は、例えばユーザが食生活の改善アドバイスを受けるために、サービス提供者である栄養士のペルソナ200と、サービス利用者であるユーザ210との間で行われるトークの例を示している。ユーザ210は、例えば自身が有するスマートフォン等の任意のデバイスを使用して対話型アプリケーションを利用する。トークを開始するとき、ペルソナ化システム100は、栄養士のペルソナ200のペルソナ集合体とテーブルを展開する。栄養士のペルソナ200は、例えば「食事関係」、「食生活関係」、「満足度関係」、「継続意識」等に関するペルソナ単体を含むようにデザインされてよい。
【0030】
栄養士のペルソナ200が提供するメッセージは、ペルソナ化システム100が予め規定するか、または自動的に生成したテキストデータ等をトークに表示させるものであってよい。ペルソナ化システム100は、トークを介するメッセージのやり取りによってオートコンサルティングを行う。
【0031】
図2のトークは経時的に上から順に並んでいる。栄養士のペルソナ200は、例えば最初に「糖質量の数値を入力して下さい。」というメッセージをトークに送信する。ユーザ210は、栄養士のペルソナ200のメッセージに応答して「14.2」というメッセージをトークに送信する。
【0032】
ペルソナ化システム100は、トークから得られた入力データに基づいてエレメントのマッチングを行い、エレメントバリューを当てはめる。食生活の改善アドバイスを目的としたルールツリーにおけるエレメントの定義を表1に例示する。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に例示するように、例えば食事に関するエレメントは、一日に摂取した「糖質量」、「タンパク質量」、「脂質量」等が定義可能である。エレメントバリューは、エレメントに対応する値であり、表1の例えば「糖質量」エレメントに対応する数値型の「g(グラム)」を入力データから当てはめることができる。エレメントバリューはまた、例えば「糖質量」のエレメントバリューが所定の範囲よりも多いかまたは少ないか等の判定に基づいて、「糖質量増減」エレメントを論理型の値としてもよい。
【0035】
図2において、ペルソナ化システム100は表1に示したエレメント「糖質量」とエレメントバリュー「14.2(g)」のデータを得られる。ペルソナ化システム100は糖質量が14.2(g)というデータに基づいて、所定の範囲内かどうか等の判定を行ってもよく、判定に応じて追加のメッセージをトークに送信してもよい。
【0036】
ペルソナ化システム100は、例えば「糖質量」のデータが得られた後、「タンパク質量の数値を入力してください」というメッセージをトークに表示する。ユーザ210は、栄養士のペルソナ200のメッセージに応答して「27.7」というメッセージをトークに送信する。ペルソナ化システム100は、トークからエレメント「タンパク質量」とエレメントバリュー「27.7(g)」のデータを得られる。
【0037】
メッセージは、例えば食事内容を問うものでもよく、この場合、ユーザにより回答された食事内容から糖質量、タンパク質量、脂質量、カロリー等を推定してもよく、食事内容に応じて追加のメッセージをトークに表示させるようにしてもよい。メッセージはまた、例えば食生活習慣の評価を問うものでもよく、ユーザにより回答された「良い」または「悪い」等に応じて追加のメッセージをトークに表示させるようにしてもよい。
【0038】
ペルソナ化システム100は、トークを繰り返すことによって得られた事例をテーブルに記録する。事例の一部を表2に例示する。
【0039】
【表2】
【0040】

ペルソナ化システム100は、例えば「タンパク質量」が所定の値の範囲内である場合、および所定の範囲を超えて下回った場合をそれぞれ「タンパク質量増減」の項目で「範囲内」、「減」等のようなデータを合わせて記録してもよい。ペルソナ化システム100はまた、前回取得したデータからの変化量を記録してもよい。例えば「体重」の項目では、経時的に上から順に並んでいることから、「69」から「68.9」に変化した場合、「体重増減」の項目は「減」と表すことができる。同様に「体重」が「68.8」から「68.9」に変化した場合、「体重増減」の項目は「増」と表すことができる。ペルソナ化システム100は、変化量に応じてルールツリーを辿ること、ルールツリーを自動生成すること、メッセージを変更すること等の処理を行ってもよい。
【0041】
図2において、ペルソナ化システム100は、例えば「糖質量」、「タンパク質量」に関連する「食事関係」および「食生活関係」等の複数のルールツリーにエレメントとエレメントバリューを連携してもよい。
【0042】
このように、ペルソナ化システム100は、トークを介して得られたエレメントとエレメントバリューに基づいて自動的にルールツリーを辿ることによって、オートコンサルティングを行い得る。
【0043】
また、トークを繰り返すことによって、ペルソナ化システム100は「こういう質問をしたときに、こう回答する」、「こういう食生活である場合、食生活習慣の評価が良い」等のユーザ210の反応をテーブルに記録できる。ペルソナ化システム100は、ユーザ210の反応に基づいて事例を蓄積し、1つまたは複数のルールツリーを新しく自動生成することによって、ユーザ210のペルソナを生成することができる。作成されたユーザ210のペルソナは、例えば「このような回答をしたときに、どう思っているか」等の思考を予測でき、食生活アドバイスの継続または中断を予測するデータとして利用可能である。事例の蓄積量と種類の増加に応じて、ユーザ210のペルソナ集合体に含まれるペルソナ単体は増加し得る。
【0044】
図3は、本発明の一実施形態に係る他のペルソナ集合体の起動を例示する図である。図3は、図2と同様に、栄養士のペルソナ200とユーザ210との間で行われるトークの例を示している。
【0045】
ペルソナ化システム100は、栄養士のペルソナ200とユーザ210との間のトークにおいて、他の専門家(例えば、運動の知見を有するトレーナー)等の他のペルソナ集合体を起動する。他のペルソナ集合体は、例えば一意に関連付けられたアドレスによって、ネットワーク上から呼び出して、トークに参加させることができる。図3において、例えばトレーナーのペルソナ300のペルソナ集合体を起動したものとする。トレーナーのペルソナ300は、例えば「栄養関係」、「運動関係」等に関するルールツリーを備える。トレーナーのペルソナ300のトークへの参加は、予め参加するか、またはトークの途中に必要に応じて行われる。
【0046】
図3において、栄養士のペルソナ200は、「食事内容を入力してください。」というメッセージをトークに送信する。ユーザ210はメッセージに応答して、例えば「ラーメン」というメッセージをトークに送信する。ペルソナ化システム100は、例えば「食事内容」エレメントと「ラーメン」エレメントバリューに基づいてルールツリーを辿る。得られた事例は、栄養士のペルソナ200、および/またはトレーナーのペルソナ300のテーブルに記録され、事例学習・機械学習に利用され得る。
【0047】
トレーナーのペルソナ300は、「運動内容を入力してください。」というメッセージをトークに送信する。ユーザ210はメッセージに応答して、例えば「なし」というメッセージをトークに送信する。
【0048】
ペルソナ化システム100は、ユーザ210のメッセージの内容を入力データとして処理し、ルールツリーを辿る。ペルソナ化システム100は、例えば「栄養関係」ルールツリーにエレメントとエレメントバリューを当てはめることによって、ユーザ210の摂取カロリーが高いと判断する。ペルソナ化システム100はまた、「運動関係」ルールツリーにエレメントとエレメントバリューを連携することによって、ユーザ210に推薦するトレーニング内容等を判断する。推薦するトレーニング内容は、ユーザ210から得られた過去の事例に基づいて、ウォーキングを好む、ランニングは好まない等の傾向等にさらに基づいてよい。
【0049】
ペルソナ化システム100は、上記のような判断に基づいて、トレーニングを推奨するメッセージ「○○なので、ウォーキングを△△分行いましょう。」を生成し、トークに送信する。この時点で、ユーザ210はトレーナーのペルソナ300からサービスの提供を受けたことになる。
【0050】
ペルソナ化システム100は、栄養士のペルソナ200とユーザ210との間のトークにおいて、トレーナーのペルソナ300に含まれるペルソナ単体を起動してもよい。ペルソナ化システム100は、トレーナーのペルソナ300が有している専門的な知見に関連するルールツリーを利用可能となる。この場合、栄養士のペルソナ200とユーザ210との間のテーブルは、トレーナーのペルソナ300のテーブルを連結させて一体として扱うことができる。すなわち、栄養士のペルソナ200が「運動関係」のルールツリーを辿り、ユーザ210に推薦するトレーニング内容等を判断できる。
【0051】
図3において、ペルソナ化システム100がトレーナーのペルソナ300のペルソナ集合体またはペルソナ単体を起動した場合、トークから得られる入力データは栄養士のペルソナ200とトレーナーのペルソナ300の両方に利用され得る。また、例えばトレーナーのペルソナ300が別のトーク等で重複して呼び出された場合も入力データを収集することができ、事例の集積を効率的に行うことができる。
【0052】
図3の栄養士のペルソナ200は、例えばトレーナーのペルソナ300とのやり取り(相互通信)も可能であり、ペルソナ同士のトークから得られた入力データに基づいて学習することが可能である。
【0053】
図4は、本発明の一実施形態に係るペルソナ集合体の学習を例示するフロー図である。図2および図3で例示した栄養士のペルソナ200のペルソナ集合体の学習する場面について説明する。
【0054】
S401:ペルソナ化システム100は、入力データを収集する。ペルソナ化システム100は、例えば図2および図3のように、例えば対話型アプリケーションのトークから得られるテキストデータ等を入力データとして収集する。
【0055】
S402:ペルソナ化システム100は、入力データに基づいてルールツリーを辿り、事例を集積する。ペルソナ化システム100は、入力データから得られたエレメントおよびエレメントバリューに基づいてルールツリーを辿り、必要に応じて追加のメッセージをトークに送信する等を行い、事例の集積を行う。集積した事例やユーザ210の反応はテーブルに記録される。
【0056】
S403:ペルソナ化システム100は、集積した事例を単に記録するか、事例学習・機械学習に利用するかどうかを選択する。ここでは、事例学習・機械学習に利用すると選択するものとする。
【0057】
S404:ペルソナ化システム100は、テーブルに記録した事例、ルールツリーに対するユーザ210の反応を事例学習・機械学習ツールによって学習する。
【0058】
S405:ペルソナ化システム100は、集積した事例に基づいてルールツリーを自動生成する。ルールが追加されることで、栄養士のペルソナ200は事例を学習したことになる。
【0059】
ペルソナ化システム100は、「この質問項目ではこのように応答する」等の事例におけるエレメントとエレメントバリューとの組み合わせを分析し、「このように応答したときはどのような状況か」という事例を生成してもよい。ペルソナ化システム100は、ユーザ210の反応に基づいて生成された事例に沿うように1つまたは複数のルールツリーを自動生成してもよい。ペルソナ化システム100はまた、自動生成された1つまたは複数のルールツリーに基づいて、ユーザ210のペルソナを作成してもよい。
【0060】
図5は、本発明の一実施形態に係るペルソナとのやり取りの概念を例示する図である。例えば現実の旅行プランナーは、観光地・現地、交通手段、添乗員または現地ガイドからのフィードバック、顧客からのフィードバック等の情報の入手、および対話を経て、旅行プランの改善、提案等を行っている。ペルソナ化システム100は、旅行プランナーから得られる各種の情報等をサンプルの入力データとし、旅行プランナーのペルソナ500を予め作成する。
【0061】
図5に例示するように、旅行プランナーのペルソナ500とユーザ210の間で、対話型アプリケーション等を介して質問、旅行プランおすすめ等のコンサルティングが行われる。ペルソナ化システム100は対話型アプリケーション等から得られる入力データに基づきルールツリーを辿り、事例をテーブルに記録していく。また顧客に関する情報、例えば来店日時、住所、年齢、性別、職業、希望旅行地、時期、期間、同行者、予算等のデータをペルソナ化システム100の入力データとして使用できる。
【0062】
旅行プランナーのペルソナ500はまた、旅行プラン提案中、旅行中、旅行後のタイミングに応じてメッセージを選択できる。メッセージは、例えば旅行の目的、旅行の気分に関するキーワード、旅行プランナーからの提案内容、タイミング等がメッセージ生成において考慮され得る。
【0063】
旅行プランナーのペルソナ500はさらに、対話型アプリケーション等を介して、旅行先、旅行中の行動、飲食店等の提案を行ってもよい。また、対話型アプリケーション等を介して得られた旅行中の気分や体調等に応答して、旅行プランの変更や医療機関等の提案等をしてもよい。
【0064】
図6は、本発明の一実施形態に係るペルソナのプラットフォームの概念を例示する図である。ペルソナ化システム100により作成されたユーザのペルソナは、他の様々なペルソナとネットワークを介して接続されるプラットフォームを構築できる。このようなプラットフォームは、ペルソナが提供するサービスを必要なときに利用可能となり得る。さらに、ユーザのペルソナが、例えば対話型アプリケーション等を介して自動的に他のペルソナとやり取り(相互通信)することにより、自動的に事例学習・機械学習を行うことができる。
【0065】
図7は、本発明の一実施形態に係るペルソナ化システム100が動作し得るデバイスの汎用的な構成を例示する図である。図7に例示するように、制御部701、主記憶部702、補助記憶部703、通信部704、操作部705、および表示部706がバス707等によって接続される。
【0066】
制御部701はプロセッサであり、システムの各構成要素の制御やデータの演算を行うことができる。主記憶部702はメインメモリであり、入力されたデータ、コンピュータ実行可能な命令および命令による演算処理後のデータ等を記憶できる。補助記憶部703はハードディスク等の記憶装置であり、データやプログラムを長期的に保存する際に使用される。制御部701は、補助記憶部703に格納されているプログラムを主記憶部702に読み出して実行できる。
【0067】
通信部704は、他のシステムまたは装置との間でデータを送受信する際のインタフェースである。操作部705は、キーボード、マウス、タッチパネル等により構成され、アプリケーションの各種操作や入力データを受け付けることができる。表示部706は、ディスプレイ等により構成され、アプリケーションの各種画面等を提供できる。
【0068】
上記の実施形態では、ユーザのペルソナAIを生成する処理を説明した。以下では、図8図11を参照しながら、4種類のアプリケーションを利用してペルソナをデザインし、生成し、対話型アプリケーションなどを利用して会話するための2つのケースについて説明する。4種類のアプリケーションは、分散環境のコンピュータによって使用され得る。本明細書では、ドナーは、模倣対象となる人であり、ペルソナを生成する元となる人を意味する。また、本明細書では、学習という用語は、機械学習という用語と交換可能に使用され得る。
【0069】
まず、第1のケースを説明する。第1のケースでは、デザイナー兼ドナーが、ペルソナをデザインし、事例を登録し、ルールツリーを生成する。生成したペルソナは第2のアプリ802に公開される。
【0070】
図8は、ペルソナ化システム100によって実行される、第1のアプリ801、第2のアプリ802、第3のアプリ803、および第4のアプリ804の利用形態を説明する図である。
【0071】
第1のアプリ801は、ペルソナのデザイナー兼ドナーの端末811によって利用されるアプリケーションである。デザイナー兼ドナーは、端末811を介してペルソナ化システム100にアクセスし、第1のアプリ801を起動する。第1のアプリ801は、限定されないが以下の機能を有する。
・ペルソナの生成
・エレメントおよびエレメントバリューの生成
・エレメントおよびエレメントバリューに関連付けられるコメントや動画像の設定
・エレメントバリューのエイリアス(別名)の設定
・エレメントバリューに関連付けられる聞き直しコメントの設定
・回答の記憶
・第2のアプリ802で指定されたエレメントまたはエレメントバリューに到達した際に実行する追加機能(例えば、他のツリーの呼び出し、など)の設定
・事例の登録、ルールツリーの生成
【0072】
ここで、図9を参照しながら、デザイナー兼ドナー903aが、任意のペルソナ901(例えば、タレントAのペルソナ)をデザインし、事例を登録してルールツリーを生成する一例を説明する。デザイナー兼ドナー903aは、第1のアプリ801を介して、任意のペルソナ901を生成し、タレントAに関連付けられるエレメントおよびエレメントバリューを設定することができる。デザイナー兼ドナー903aは、第1のアプリ801を介して、様々な事例を登録し、第1のアプリ801は、登録された事例をルールツリーとして学習することができる。事例は、エレメントおよびエレメントバリューの組み合わせであってよい。
【0073】
デザイナー兼ドナー903aは、第1のアプリ801を介して、ルールツリーにおけるそれぞれのエレメントまたはエレメントバリューごとに追加機能を設定することができる。例えば、ペルソナ901のあるエレメントには、他のデザイナー兼ドナー903bによって生成されたペルソナ902を呼び出す機能904を設定することができる。一方、デザイナー兼ドナー903bは、ペルソナ902のあるエレメントについてペルソナ901を呼び出す機能905を設定することができる。
【0074】
図9の例では、デザイナー兼ドナー903aが生成したペルソナは、単一のルールツリーを有するように示されているが、これは単なる例に過ぎない。ペルソナは、複数のルールツリーを有することができ、ルールツリーのいくつかは互いに関連付けられていることが可能である。
【0075】
デザイナー兼ドナー903aによるペルソナ901の生成が完了すると、ペルソナ化システム100は、端末811からの指示に応答して、生成されたペルソナ901を第2のアプリ802に公開することができる。
【0076】
図8に戻って説明を続ける。第2のアプリ802は、一般ユーザの端末812によって利用される。一般ユーザは、端末812を介してペルソナ化システム100にアクセスし、第2のアプリ802を起動する。第2のアプリ802は、以下の機能を有する。
・会話する対象となるペルソナの検索、表示、選択
・一般ユーザとペルソナとの会話を通じて、新たなエレメントバリューをルールツリーに追加して新しいペルソナを生成する。新たに生成されたペルソナは、一般ユーザを「ドナー」と看做したユーザクローンペルソナと呼ばれ得る
・ユーザクローンペルソナを第3のアプリに送る。ユーザクローンペルソナは、事例取得用ペルソナと同様に使用され得る
・一般ユーザに対する聞き直し(選択肢あり、なし)
・ルールツリーに対するエイリアス(別名)の自動設定
・他のペルソナの呼び出し、呼び出し回数の記録
【0077】
ここで、図10を参照しながら、一般ユーザ1002がペルソナ1001、1003と会話する一例を説明する。一般ユーザ1002は、第2のアプリ802を介して、会話する対象となる複数のペルソナのうち、第1のアプリ801によって公開されたペルソナ1001を選択する。一般ユーザ1002は、例えば、図3のような実施形態にしたがって、ペルソナ1001と会話を続けることができる。
【0078】
第2のアプリ802は、一般ユーザ1002によって入力された会話の内容を分析して、次の会話内容を生成することができる。例えば、分析した会話が好意的な文言あるいは積極的な文言を含んでいると判定された場合、第2のアプリ802は、ペルソナ1001のルールツリーを辿ることにより、一般ユーザ1002に対してさらに話題を深めるための質問を提供することができる。分析した会話が興味なさそうな文言を含んでいると判定された場合、第2のアプリ802は、ルールツリーを辿ることにより、一般ユーザ1002に対して別の話題を選択して提供することができる。分析した会話が理解不十分であることを示す文言を含んでいると判定された場合、第2のアプリ802は、ルールツリーを辿って前の会話内容についての聞き直しを提供することができる。すなわち、第2のアプリ802は、一般ユーザ1002からの応答の内容にしたがって、ペルソナ1001のルールツリーのエレメントおよびエレメントバリューを辿って、次の会話を決定することができる。
【0079】
第2のアプリ802は、ペルソナ1001が一般ユーザ1002からの質問に対して適切な応答をすることができない(例えば、ペルソナ1001のルールツリーに対応するエレメント等が存在しない)と判定した場合、他のペルソナ1003を呼び出すことができる(1004)。呼び出された他のペルソナ1003は、一般ユーザ1002からの質問に対する応答を、ルールツリーを辿ることによって生成することができる。かかる場合、第2のアプリ802は、呼び出し元のペルソナ1001および呼び出し回数を、ペルソナ1003のルールツリーに記憶することができる。ペルソナ化システム100は、記憶されている呼び出し回数に応じて、ペルソナ1003に関連付けられたドナーに対して予め定められた報酬を提供するように構成されてもよい。
【0080】
このように、第1のケースでは、デザイナー兼ドナー903a、903bがペルソナを生成し、一般ユーザ1002はそのペルソナと会話することができるようになる。ペルソナは、ドナーの人格を模倣したものであり、会話の内容に応じて次の会話内容が変わるので、一般ユーザは、あたかもドナーと会話しているように知覚することができる。
【0081】
次に、第2のケースを説明する。第2のケースでは、デザイナーが事例取得用ペルソナを生成してドナーに公開し、ドナーが事例取得用ペルソナと会話することによりドナークローンペルソナを生成する。デザイナー813およびドナー814は、同じ人物であっても異なる人物であってもよい。生成したドナークローンペルソナは第2のアプリ802に公開される。
【0082】
第3のアプリ803は、第2のケースにおいて、デザイナーの端末813によって利用されるアプリケーションである。デザイナーは、端末813を介してペルソナ化システム100にアクセスし、第3のアプリ803を起動する。第3のアプリ803は、第1のアプリ801によって提供される機能の他、限定はされないが以下の機能を有する。
・事例取得用ペルソナに関連付けられるドナーの設定
・ドナーと会話を行うための事例取得用ペルソナの生成
・ドナーと会話の結論となるターゲットエレメントの設定
【0083】
デザイナーは、第3のアプリ803を介して、ドナーのための事例取得用ペルソナをデザインし、事例を登録してルールツリーを生成する。デザイナーは、ドナーに関連付けられるエレメント、およびターゲットエレメントを設定することができる。第3のアプリ803は、生成した事例取得用ペルソナを第4のアプリ804に公開する。
【0084】
第3のアプリ803は、第4のアプリ804によって生成されたドナークローンペルソナに対して、他のペルソナ呼び出しなどの機能を追加するなどの設定を行い、ドナークローンペルソナを第2のアプリ802に公開する。
【0085】
第2のアプリ802は、一般ユーザとペルソナ(ドナークローンペルソナ)との会話を通じて、新たなエレメントバリューをルールツリーに追加して新しいペルソナを生成することができる。新たに生成されたペルソナは、一般ユーザを「ドナー」と看做したユーザクローンペルソナと呼ばれ得る。ユーザクローンペルソナは、第3のアプリによって使用可能に生成される。ユーザクローンペルソナは、事例取得用ペルソナとして利用されることが可能であり、および一般ユーザと他のペルソナとの会話において呼び出されて参照されることが可能である。
【0086】
第4のアプリ804は、第2のケースにおいて、ドナーの端末814によって利用されるアプリケーションである。ドナーは、端末814を介してペルソナ化システム100にアクセスし、第4のアプリ804を起動する。第4のアプリ804は、限定はされないが以下の機能を有する。
・ドナーと会話を行い(エレメントを提供し)、その解答結果からエレメントバリューをルールツリーに登録して事例取得用ペルソナを更新し、ドナークローンペルソナを生成する
【0087】
ここで、図11を参照しながら、ドナー1101が、第4のアプリ804を介して事例取得用ペルソナ1102と会話することによってドナークローンペルソナ1103を生成する一例を説明する。図8に示されているように、事例取得用ペルソナ1102は、デザイナーによって特定のドナーのために生成されたペルソナである。
【0088】
図11では、ドナー1101は、第4のアプリ804を介して、ドナー1101に関連付けられた事例取得用ペルソナ1102を呼び出し、例えば、図3のような実施形態に従って会話を行う。会話は、事例取得用ペルソナ1102がエレメントを提供し、ドナーがエレメントに対応するバリューを提供することによって行われてよい。エレメントおよびエレメントバリューは、ルールツリーとして記憶される。バリューの内容に応じて、次の会話のエレメントが第4のアプリ804によって選択され得る。会話は、ターゲットエレメントが設定されていてよく、また、会話の内容は自由入力であってよい。
【0089】
ドナー1101によって入力された回答は事例としてルールツリーとして学習される。事例は、エレメントおよびエレメントバリューの組み合わせであってよい。学習を通じて、第4のアプリ804は、ドナークローンペルソナ1103を生成し、ドナークローンペルソナ1103は第3のアプリ803に提供される。これにより、第3のアプリ803は、ドナークローンペルソナ1103を制御できるようになる。
【0090】
本発明の一実施形態では、ペルソナ化システム100は、一般ユーザ1002の会話内容から、一般ユーザ1002が話し相手のペルソナのファンになったかどうかを判定することができる。具体的に言えば、ペルソナ化システム100は、一般ユーザ1002の会話に含まれる文言の中に好意的なイメージを示す文言が含まれていると判定した場合、その一般ユーザ1002は、話し相手のペルソナのファンになったと判定し、ファンになったユーザの識別情報を当該ペルソナのルールツリーに格納することができる。例えば、ペルソナがタレントや俳優などを模倣して作成されている場合、ファン化した一般ユーザ1002の数が多ければ、どのような会話によりナーチャリング(ファン化)効果が上がったのかを分析することが可能となる。このように、本発明では、会話相手の反応に応じて会話の内容が変わるため、あたかも人間同士のコミュニケーションが行われているような心理的効果が得られることが可能である。
【0091】
図8を参照して説明したように、本発明では、それぞれのアプリケーションでペルソナが生成されている。換言すれば、分散環境でルール(ルールツリー)が生成されている。本発明では、このように生成された1つまたは複数のペルソナを(繰り返し)呼び出す、または参照することによって、これらのペルソナを統合的に活用して1つのコミュニケーションを形成するシステムが提供される。
【0092】
本発明の他の実施形態では、一般ユーザを任意のペルソナに置き換えることが可能である。かかる場合、最初に会話対象のペルソナ同士を選択し、最初の会話文を入力してあげるだけで、後は、ペルソナ同士が相互に通信を行い、会話を続けることができるようになる。
【0093】
本発明の一実施形態は、プログラムモジュール等のコンピュータによって実行されるコンピュータ実行可能命令という一般的文脈で説明することができる。一般に、プログラムモジュールは、特定のジョブを実行する、または特定の抽象データ型を実現する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造等を含む。本発明の一実施形態はまた、分散コンピューティング環境で実現することができ、ジョブは、通信ネットワークを通して接続された遠隔処理装置によって実行される。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールを、ローカルコンピュータストレージ媒体および遠隔コンピュータストレージ媒体内に配置することができる。
【0094】
以上、例示的な実施形態を参照しながら本発明の原理を説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく、構成および細部において変更する様々な実施形態を実現可能である。すなわち、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様を採用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11