(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】ボンディング装置、フレームフィーダ及びヒータユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230125BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H01L21/60 301K
H01L21/52 H
(21)【出願番号】P 2021549567
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009886
(87)【国際公開番号】W WO2021176739
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】長野 一昭
(72)【発明者】
【氏名】小島 和仁
(72)【発明者】
【氏名】宮近 峻匡
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-052334(JP,U)
【文献】特開平06-260526(JP,A)
【文献】特開平01-241837(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026916(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/60-21/607
H05K 3/32- 3/34
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業領域に搬送されたリードフレームに対してボンディング作業を行うボンディング部と、
前記作業領域に前記リードフレームを搬送する
搬送部及び前記作業領域に搬送される前の前記リードフレームを予備加熱する
ヒータユニットを有するフレームフィーダと、を備え、
前記搬送部は、前記リードフレームを前記ヒータユニットから離間させて搬送し、
前記ヒータユニットは、
発熱体と、
前記リードフレームの搬送方向において前記作業領域よりも上流側であって、前記リードフレームの裏面に対面
すると共に前記リードフレームから離間して配置されて、前記発熱体から受けた熱を前記リードフレームに提供するヒータブロックと、を有し、
前記ヒータブロックには、前記ヒータブロックの表面から深さ方向に形成された複数のフィンを有する放熱部が設けら
れ、
前記深さ方向における前記フィンの長さは、前記深さ方向における前記フィンの先端から前記リードフレームまでの距離に対して5倍以上20倍以下である、ボンディング装置。
【請求項2】
前記複数のフィンは、前記リードフレームの搬送方向と交差する方向に沿って互いに離間している、請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
前記ヒータブロックには、前記フィンの間に設けられると共に前記深さ方向に貫通する穴が設けられている、請求項1又は2に記載のボンディング装置。
【請求項4】
前記深さ方向における前記フィンの長さは、前記深さ方向における前記フィンの先端から前記リードフレームまでの距離よりも長い、請求項1~3の何れか一項に記載のボンディング装置。
【請求項5】
前記ボンディング部及び前記フレームフィーダの動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、
第1の期間において前記ボンディング部に
前記リードフレームである第1のリードフレームに対してボンディング作業を行わせる制御信号を前記ボンディング部に提供し、
前記第1の期間に重複する第2の期間において、前記ヒータユニットに前記
第1のリードフレームとは別の第2のリードフレームの予備加熱を行わせる制御信号を前記フレームフィーダに提供し、
前記第2の期間の長さは、前記第1の期間の長さ以下である、請求項1~4の何れか一項に記載のボンディング装置。
【請求項6】
リードフレームに対してボンディング作業を行う作業領域に前記リードフレームを搬送する搬送部と、
前記作業領域に搬送される前の前記リードフレームを予備加熱する第1ヒータユニットと、を備え、
前記搬送部は、前記リードフレームを前記第1ヒータユニットから離間させて搬送し、
前記第1ヒータユニットは、
第1発熱体と、
前記リードフレームの搬送方向において前記作業領域よりも上流側であって、前記リードフレームの裏面に対面
すると共に前記リードフレームから離間して配置されて、前記第1発熱体から受けた熱を前記リードフレームに提供する第1ヒータブロックと、を有し、
前記第1ヒータブロックには、前記第1ヒータブロックの表面から深さ方向に形成された複数の第1フィンを有する第1放熱部が設けら
れ、
前記深さ方向における前記フィンの長さは、前記深さ方向における前記フィンの先端から前記リードフレームまでの距離に対して5倍以上20倍以下である、フレームフィーダ。
【請求項7】
前記ボンディング作業が行われた後に前記作業領域から搬送された前記リードフレームを加熱する第2ヒータユニットをさらに備え、
前記第2ヒータユニットは、
第2発熱体と、
前記リードフレームの搬送方向において前記作業領域よりも下流側であって、前記リードフレームの裏面に対面するように配置されて、前記第2発熱体から受けた熱を前記リードフレームに提供する第2ヒータブロックと、を有し、
前記第2ヒータブロックには、前記第2ヒータブロックの表面から深さ方向に形成された複数の第2フィンを有する第2放熱部が設けられている、請求項6に記載のフレームフィーダ。
【請求項8】
リードフレームに対してボンディング作業を行う作業領域に搬送される前の前記リードフレームを予備加熱するヒータユニットであって、
発熱体と、
前記リードフレームの搬送方向において前記作業領域よりも上流側であって、前記リードフレームの裏面に対面
すると共に前記リードフレームから離間して配置されて、前記発熱体から受けた熱を前記リードフレームに提供するヒータブロックと、を備え、
前記ヒータブロックには、前記ヒータブロックの表面から深さ方向に形成された複数のフィンを有する放熱部が設けら
れ、
前記深さ方向における前記フィンの長さは、前記深さ方向における前記フィンの先端から前記リードフレームまでの距離に対して5倍以上20倍以下である、ヒータユニット。
【請求項9】
前記複数のフィンは、前記リードフレームの搬送方向と交差する方向に沿って互いに離間している、請求項8に記載のヒータユニット。
【請求項10】
前記ヒータブロックには、前記フィンの間に設けられると共に前記深さ方向に貫通する穴が設けられている、請求項8又は9に記載のヒータユニット。
【請求項11】
前記深さ方向における前記フィンの長さは、前記深さ方向における前記フィンの先端から前記リードフレームまでの距離よりも長い、請求項8~10の何れか一項に記載のヒータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置、フレームフィーダ及びヒータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるダイボンドは、リードフレームに対して半導体ダイを接合する作業である。また、いわゆるワイヤボンドは、半導体ダイに対してボンディングワイヤを接合する作業である。これらの接合作業を行うとき、リードフレームは、室温より高い所定の温度まで加熱される。接合作業を行う領域においてリードフレームの加熱を行うと、リードフレームは、加熱のための時間と接合ための時間とを合計した時間だけ、接合作業を行う領域に留まる。
【0003】
例えば、特許文献1の半導体組立装置は、リードフレームの予備加熱を行う領域と、ワイヤボンディングを行う領域と、を含む。この装置によれば、予備加熱を行う時間と、ワイヤボンディングを行う時間と、を重複させることができる。その結果、接合作業の作業効率を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ボンディング作業を行うボンディング装置のさらなる生産性の向上が望まれている。そこで、本発明は、生産性の向上を可能とするボンディング装置、フレームフィーダ及びヒータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態であるボンディング装置は、作業領域に搬送されたリードフレームに対してボンディング作業を行うボンディング部と、搬送部によって作業領域にリードフレームを搬送すると共に、ヒータユニットによって作業領域に搬送される前のリードフレームを予備加熱するフレームフィーダと、を備える。ヒータユニットは、発熱体と、リードフレームの搬送方向において作業領域よりも上流側であって、リードフレームの裏面に対面するように配置されて、発熱体から受けた熱をリードフレームに提供するヒータブロックと、を有する。ヒータブロックには、ヒータブロックの表面から深さ方向に形成された複数のフィンを有する放熱部が設けられている。
【0007】
ボンディング装置は、作業領域においてボンディング部によるボンディング作業を行う。この作業領域の上流側には、作業領域に搬送される前のリードフレームを加熱するヒータユニットが配置されている。従って、ボンディング作業の前に予備加熱を行う領域と、ボンディング作業を行う領域と、を互いに異ならせることが可能になる。さらに、ヒータユニットが有するヒータブロックは、深さ方向に延びる複数のフィンを有する。複数のフィンによれば、ヒータブロックからリードフレームへ熱が効率よく伝わる。従って、予備加熱に要する時間を短縮することが可能になる。その結果、生産性を向上することができる。
【0008】
複数のフィンは、リードフレームの搬送方向と交差する方向に沿って互いに離間してもよい。この構成によれば、リードフレームの裏面を保護することができる。
【0009】
ヒータブロックには、フィンの間に設けられると共に深さ方向に貫通する穴が設けられてもよい。ヒータブロックからリードフレームへの熱の伝達は、ヒータブロックからリードフレームへ向かう空気の対流による。この穴を設けることにより、熱を伝えるための空気がフィンへ好適に供給される。従って、ヒータブロックからリードフレームへさらに効率よく熱が伝わる。その結果、生産性をより向上することができる。
【0010】
深さ方向におけるフィンの長さは、深さ方向におけるフィンの先端からリードフレームまでの距離よりも長くてもよい。この構成によれば、フィンによって熱せられた空気をリードフレームの裏面へ好適に供給することが可能になる。
【0011】
上記のボンディング装置は、ボンディング部及びフレームフィーダの動作を制御する制御部をさらに備えてもよい。制御部は、第1の期間においてボンディング部にボンディング作業を行わせる第1制御信号をボンディング部に提供し、第1の期間に重複する第2の期間において、ヒータユニットにリードフレームの予備加熱を行わせる第2制御信号をフレームフィーダに提供してもよい。第2の期間の長さは、第1の期間の長さ以下であってもよい。この制御によれば、ボンディング作業を行っている間に、次のリードフレームの予備加熱が完了する。従って、ボンディング作業の終了後、作業領域からのリードフレームの搬出と並行して、予備加熱が終了したリードフレームを搬入することが可能になる。つまり、予備加熱に関し、ボンディング作業の待機時間を設ける必要がない。その結果、生産性をさらに高めることができる。
【0012】
本発明の別の形態であるフレームフィーダは、リードフレームに対してボンディング作業を行う作業領域にリードフレームを搬送する搬送部と、作業領域に搬送される前のリードフレームを予備加熱する第1ヒータユニットと、を備える。第1ヒータユニットは、第1発熱体と、リードフレームの搬送方向において作業領域よりも上流側であって、リードフレームの裏面に対面するように配置されて、第1発熱体から受けた熱をリードフレームに提供する第1ヒータブロックと、を有する。第1ヒータブロックには、第1ヒータブロックの表面から深さ方向に形成された複数の第1フィンを有する第1放熱部が設けられている。
【0013】
フレームフィーダのヒータユニットが有するヒータブロックは、深さ方向に延びる複数のフィンを有してもよい。複数のフィンによれば、ヒータブロックからリードフレームへ熱が効率よく伝わる。従って、予備加熱に要する時間を短縮することが可能になる。その結果、生産性を向上することができる。
【0014】
上記のフレームフィーダは、ボンディング作業が行われた後に作業領域から搬送されたリードフレームを加熱する第2ヒータユニットをさらに備えてもよい。第2ヒータユニットは、第2発熱体と、リードフレームの搬送方向において作業領域よりも下流側であって、リードフレームの裏面に対面するように配置されて、第2発熱体から受けた熱をリードフレームに提供する第2ヒータブロックと、を有してもよい。第2ヒータブロックには、第2ヒータブロックの表面から深さ方向に形成された複数の第2フィンを有する第2放熱部が設けられていてもよい。この構成によれば、ボンディング作業が行われたリードフレームが急激に冷却されることが抑制される。従って、ボンディング作業によって得られた結果物を保護することができる。
【0015】
本発明のさらに別の形態は、リードフレームに対してボンディング作業を行う作業領域に搬送される前のリードフレームを予備加熱するヒータユニットである。ヒータユニットは、発熱体と、リードフレームの搬送方向において作業領域よりも上流側であって、リードフレームの裏面に対面するように配置されて、発熱体から受けた熱をリードフレームに提供するヒータブロックと、を有する。ヒータブロックには、ヒータブロックの表面から深さ方向に形成された複数のフィンを有する放熱部が設けられている。
【0016】
ヒータユニットが有するヒータブロックは、深さ方向に延びる複数のフィンを有する。複数のフィンによれば、ヒータブロックからリードフレームへ熱が効率よく伝わる。従って、予備加熱に要する時間を短縮することが可能になる。その結果、生産性を向上することができる。また、複数のフィンは、リードフレームの搬送方向と交差する方向に沿って互いに離間してもよい。またヒータブロックには、フィンの間に設けられると共に深さ方向に貫通する穴が設けられてもよい。さらに、深さ方向におけるフィンの長さは、深さ方向におけるフィンの先端からリードフレームまでの距離よりも長くてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るボンディング装置、フレームフィーダ及びヒータユニットによれば、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態のワイヤボンディング装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、プリヒータ、ヒートプレート及びアフターヒータと、リードフレームとの位置関係を示す図である。
【
図3】
図3は、ヒータユニットを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、ヒータユニットの断面を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ワイヤボンディング装置の動作を説明するチャート図である。
【
図6】
図6は、比較例のヒータユニットが有する加熱性能と、実施例のヒータユニットが有する加熱性能と、を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
〔ワイヤボンディング装置〕
図1に示すワイヤボンディング装置1(ボンディング装置)は、例えば、リードフレーム100の電極と、当該リードフレーム100にダイボンドされた半導体素子の電極と、を細径の金属ワイヤを用いて電気的に接続する。ワイヤボンディング装置1は、ワイヤに対して熱、超音波又は圧力を提供することにより、ワイヤを電極に接続する。ワイヤボンディング装置1は、フレームフィーダ2と、ボンディングユニット3(ボンディング部)と、制御ユニット4(制御部)と、を有する。これらフレームフィーダ2、ボンディングユニット3及び制御ユニット4は、ベース6に設けられている。
【0021】
なお、以下の説明において、搬送方向D1、対面方向D2及び奥行方向D3との用語を用いることがある。搬送方向D1とは、フレームフィーダ2によってリードフレーム100が搬送される方向である。対面方向D2とは、後述するプリヒータ11の主面11aからリードフレーム100の裏面100aに向かう方向である。なお、対面方向D2は、ボンディングユニット3におけるキャピラリ8の移動方向に対して平行である。さらに、対面方向D2は、ヒータブロック16における深さ方向である。奥行方向D3は、搬送方向D1及び対面方向D2のそれぞれに直交する。
【0022】
フレームフィーダ2は、被処理部品であるリードフレーム100を搬送する。フレームフィーダ2は、リードフレーム100の温度を制御するために、リードフレーム100を加熱する。フレームフィーダ2の詳細は、後述する。ボンディングユニット3は、ボンディングツール7と、キャピラリ8と、を含む。キャピラリ8は、ボンディングツール7の先端に対して着脱可能に設けられる。キャピラリ8は、ワイヤに対して熱、超音波又は圧力を提供する。制御ユニット4は、フレームフィーダ2及びボンディングユニット3の動作を含むワイヤボンディング装置1の全体の動作を制御する。
【0023】
制御ユニット4は、いくつかの制御信号をボンディングユニット3及びフレームフィーダ2に提供する。例えば、制御信号は、フレームフィーダ2におけるリードフレーム100の搬送を制御するための信号と、フレームフィーダ2におけるリードフレーム100の加熱を制御するための信号と、を含む。また、制御信号は、リードフレーム100に対するキャピラリ8の位置を制御するための信号と、熱、超音波又は圧力の提供の開始及び停止のための信号と、を含んでもよい。
【0024】
〔フレームフィーダ〕
フレームフィーダ2は、レール9(搬送部)と、プリヒータ11(ヒータユニット、第1ヒータユニット)と、ヒートプレート12と、アフターヒータ13(第2ヒータユニット)と、を有する。
【0025】
レール9は、搬送方向D1に延びる一対の部材である。レール9は、搬送方向D1と直交する方向に互いに離間する。レール9は、未処理のリードフレーム100を収容するマガジンから、リードフレーム100を取り出す。レール9は、リードフレーム100を搬送方向D1に沿って移動させる。この搬送において、レール9は、プリヒータ11、ヒートプレート12、アフターヒータ13のそれぞれの上方において、所定の期間だけリードフレーム100の位置を保持する。そして、レール9は、処理が完了したリードフレーム100を別のマガジンに収納する。
【0026】
プリヒータ11、ヒートプレート12及びアフターヒータ13は、一対のレール9の間に配置されている。プリヒータ11、ヒートプレート12及びアフターヒータ13は、搬送方向D1に沿ってこの順に配置されている。そして、
図2の(a)部に示すように、プリヒータ11上には、予備加熱領域A1が設定される。ヒートプレート12上には、ボンディング領域A2(作業領域)が設定される。さらに、アフターヒータ13上には、後加熱領域A3が設定される。この配置によれば、リードフレーム100は、予備加熱領域A1、ボンディング領域A2及び後加熱領域A3の順に移動する。
【0027】
プリヒータ11及びアフターヒータ13は、リードフレーム100の裏面100aに対して所定の距離だけ離間する。プリヒータ11とリードフレーム100との間には、隙間L1が形成される。同様に、アフターヒータ13とリードフレーム100との間にも、隙間L1が形成される。隙間L1は、例えば、0.5mm以上3.0mm以下であり、一例として1mm以上2mm以下であってよい。プリヒータ11及びアフターヒータ13は、ベース6(
図1)に固定されている。従って、プリヒータ11とリードフレーム100との間の距離は、基本的に不変である。同様に、アフターヒータ13とリードフレーム100との間の距離も、基本的に不変である。
【0028】
ヒートプレート12とリードフレーム100の裏面100aとの間の距離は、可変である。具体的には、ボンディング作業が行われるとき、ヒートプレート12は、リードフレーム100の裏面100aに接する(
図2の(a)部参照)。これに対して、ヒートプレート12にリードフレーム100を搬送するとき、及び、ヒートプレート12からリードフレーム100を搬出するとき、ヒートプレート12は、駆動機構10によって下方に移動する(
図2の(b)部参照)。このとき、ヒートプレート12とリードフレーム100との間には、隙間L2が形成される。隙間L2は、例えば、1mm以上15mm以下であり、一例として10mmであってよい。
【0029】
〔プリヒータ〕
図3は、プリヒータ11の構成をより具体的に示す斜視図である。プリヒータ11は、カートリッジヒータ14(発熱体、第1発熱体)と、ヒータブロック16(第1ヒータブロック)と、を有する。カートリッジヒータ14は、通電によって発熱する。例えば、カートリッジヒータ14の温度は、200℃以上400℃以下であってよい。
【0030】
ヒータブロック16は、カートリッジヒータ14が発した熱を、リードフレーム100に伝達する。ヒータブロック16は、リードフレーム100に対面する主面16aを含む。奥行方向D3におけるヒータブロック16の幅は、リードフレーム100の幅より大きくてもよい。ヒータブロック16は、ヒータ固定面17と、上流放熱部18と、下流放熱部19と、を有する。ヒータ固定面17は、ベース6に対してアダプタ等を介して固定される。リードフレーム100と対面するヒータブロック16の表面には、上流放熱部18及び下流放熱部19が形成されている。上流放熱部18及び下流放熱部19は、プリヒータ11の主面としてよい。また、上流放熱部18及び下流放熱部19は、ヒータブロック16の主面としてもよい。上流放熱部18及び下流放熱部19は、リードフレーム100に隙間L1を挟んで互いに対面する。ヒータ固定面17から受け入れられた熱は、上流放熱部18及び下流放熱部19からリードフレーム100に提供される。
【0031】
上流放熱部18は、搬送方向D1における上流側に設けられている。下流放熱部19は、搬送方向D1における下流側に設けられている。下流放熱部19には、円筒状のカートリッジヒータ14が設けられている。上流放熱部18と下流放熱部19との間には、連結部21が設けられている。連結部21には後述するフィン22は設けられていない。連結部21には、例えば、プリヒータ11をベース6(
図1参照)に固定するためのボルト穴が設けられてもよい。
【0032】
図4を参照しながら、下流放熱部19について説明する。
図4は、
図3に示す仮想面Kにおける断面斜視図である。上流放熱部18は、下流放熱部19に対して形成される位置が異なるだけであるので、詳細な説明は省略する。下流放熱部19は、複数のフィン22(複数の第1フィン)と、溝23と、空気供給穴24と、を有する。
【0033】
ヒータブロック16において、主面16aは、放熱部(第1放熱部)を構成する。フィン22は、主面16aに開口を有する。フィン22は、放熱面積を増大させると共に、助走区間としての溝23を形成する。フィン22は、対面方向D2に延びている。フィン22の先端面22aは、ヒータブロック16の主面16aの一部である。従って、プリヒータ11からリードフレーム100までの隙間L1は、フィン22の先端面22aからリードフレーム100の裏面100aまでの距離と同じ意味である。
【0034】
複数のフィン22は、対面方向D2及び搬送方向D1のそれぞれに直交する方向(奥行方向D3)に沿って、互いに離間する。従って、フィン先端の稜線は、搬送方向D1に対して平行である。この構成により、溝23が形成される。つまり、フィン22の間に溝23が形成される。溝23の深さL3は、フィン22の高さと同じ意味である。溝23の深さL3は、隙間L1よりも大きい。例えば、溝23の深さL3は、5mm以上30mm以下であり、一例として12mmである。溝23の深さL3は、隙間L1に対して5倍(L3=5×L1)以上20倍以下としてよく、一例として隙間L1の10倍と規定してもよい。
【0035】
溝23の底面23aには、空気供給穴24の開口24aが設けられている。空気供給穴24は、対面方向D2に沿って延びている。空気供給穴24の逆側の開口24bは、ヒータ固定面17側に設けられている。空気供給穴24は、開口24bから空気を取り入れて、溝23の底面23aに空気を排出する。空気供給穴24は、フィン22の間に空気(白抜き矢印参照)を供給する。空気供給穴24は、溝23ごとに設けられている。従って、ヒータブロック16を平面視すると、空気供給穴24は、奥行方向D3に沿って互いに離間してヒータブロック16に設けられている。
【0036】
プリヒータ11によれば、カートリッジヒータ14において熱が発生する。当該熱は、ヒータブロック16に移動する。そして、熱は、フィン22に到達する。フィン22に到達した熱は、フィン22の側面の近くに存在する空気に移動する。つまり、溝23に存在する空気が加熱される。加熱された空気は、相対的に密度が小さくなるので、上昇を始める。ここで、フィン22では、フィン22の側面において上記の熱移動が生じ、熱せられた空気の上昇流が生じる。このフィン22から空気への熱移動が生じる区間を、助走区間と呼ぶ。つまり、フィン22を有しない場合にも、フィン22から空気への熱移動は生じるが、助走区間は形成されない。助走区間を設けた自然対流加熱を利用することで、必要十分な熱エネルギをプリヒータ11からリードフレーム100に提供することができる。
【0037】
なお、アフターヒータ13は、プリヒータ11と同様の構成を有する。つまり、第2発熱体であるカートリッジヒータ14と、第2ヒータブロックであるヒータブロック16と、を有する。そして、ヒータブロック16は、第2放熱部である上流放熱部18及び下流放熱部19を有し、当該上流放熱部18及び下流放熱部19には第2フィンであるフィン22が設けられている。従って、アフターヒータ13に関する詳細な説明は省略する。
【0038】
〔ワイヤボンディング装置の動作〕
ワイヤボンディング装置1の動作について説明する。
図5は、ワイヤボンディング装置1の動作を模式的に示す図である。
図5において、最上段の横軸は、予備加熱領域A1に対応する。中段の横軸は、ボンディング領域A2に対応する。最下段の横軸は、後加熱領域A3に対応する。それぞれの横軸は、左から右に向けて時間が進行することを示す。また、それぞれの横軸に重複する矩形は、リードフレーム100がそれぞれの領域に存在することを示す。
【0039】
制御ユニット4は、プリヒータ11、ヒートプレート12及びアフターヒータ13に電流を提供する。この動作により、プリヒータ11、ヒートプレート12及びアフターヒータ13は、それぞれ所定の温度に設定される。例えば、プリヒータ11の設定温度は、200℃以上350℃以下である。例えば、ヒートプレート12の設定温度は、300℃である。例えば、アフターヒータ13の設定温度は、300℃である。
【0040】
次に、制御ユニット4は、フレームフィーダ2に制御信号を提供する。その結果、リードフレーム100を搬送する制御が行われる。以下、フレームフィーダ2の動作を説明するが、各動作は、フレームフィーダ2が制御ユニット4から受ける制御信号に応じて行われる。
【0041】
具体的には、フレームフィーダ2は、マガジンからリードフレーム100を取り出す。フレームフィーダ2は、取り出したリードフレーム100を予備加熱領域A1に搬送する(S1)。次に、フレームフィーダ2は、リードフレーム100の位置を所定期間だけ保持する(S2)。この期間において、リードフレーム100は、プリヒータ11から熱の提供を受ける。その結果、リードフレーム100は、所定の温度まで加熱される。
【0042】
所定期間の経過後、フレームフィーダ2は、リードフレーム100をボンディング領域A2に搬送する(S3)。この搬送と並行して、フレームフィーダ2は、再びマガジンからリードフレーム100を取り出すと共に取り出したリードフレーム100を予備加熱領域A1に搬送する(S4)。そして、フレームフィーダ2は、ボンディング領域A2に搬送されたリードフレーム100の位置を所定期間(第1の期間)だけ保持する。同様に、フレームフィーダ2は、予備加熱領域A1に搬送されたリードフレーム100の位置を所定期間(第2の期間)だけ保持する。この期間において、制御ユニット4は、ボンディングユニット3に制御信号を提供する。この制御信号に応じて、ボンディングユニット3は、リードフレーム100に対するボンディング作業を行う(S5)。さらに、ボンディング作業と並行して、予備加熱領域A1に配置されたリードフレーム100は、プリヒータ11から熱の提供を受けるので、所定の温度まで加熱される(S6)。
【0043】
ここで、予備加熱領域A1にリードフレーム100が配置される期間(S6)の長さは、ボンディング作業(S5)に要する期間の長さと同じである。つまり、予備加熱領域A1にリードフレーム100が到達したタイミングと、ボンディング領域A2にリードフレーム100が到達したタイミングが同じであるとすれば、予備加熱(S6)とボンディング作業(S5)とは同時に終了する。
【0044】
なお、ここで言うリードフレーム100が配置される期間とは、予備加熱領域A1におけるリードフレーム100の位置が静止してから、再び移動を開始するまでの期間としてよい。ボンディング作業に要する期間とは、ボンディング領域A2におけるリードフレーム100の位置が静止してから、再び移動を開始するまでの期間としてよい。また、ボンディング作業に要する期間とは、ボンディングユニット3の動作が開始されてから、停止するまでの期間としてもよい。つまり、ボンディング作業に要する期間は、ボンディング領域A2におけるリードフレーム100の位置が静止してからボンディングユニット3の動作が開始されるまでの期間を含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0045】
所定期間の経過後、フレームフィーダ2は、ボンディング作業が行われたリードフレーム100を後加熱領域A3に搬送する(S7)。この搬送と並行して、フレームフィーダ2は、予備加熱がなされたリードフレーム100をボンディング領域A2に搬送する(S8)。さらに、フレームフィーダ2は、再びマガジンからリードフレーム100を取り出すと共に取り出したリードフレーム100を予備加熱領域A1に搬送する(S9)。
【0046】
そして、フレームフィーダ2は、後加熱領域A3に搬送されたリードフレーム100の位置を所定期間だけ保持する。同様に、フレームフィーダ2は、ボンディング領域A2に搬送されたリードフレーム100の位置を所定期間だけ保持する。さらに、フレームフィーダ2は、予備加熱領域A1に搬送されたリードフレーム100の位置を所定期間だけ保持する。この期間において、後加熱領域A3に配置されたリードフレーム100は、アフターヒータ13から熱の提供を受ける(S11)。また、ボンディングユニット3は、リードフレーム100に対するボンディング作業を行う(S12)。さらに、ボンディング作業と並行して、予備加熱領域A1に配置されたリードフレーム100は、プリヒータ11から熱の提供を受けるので、所定の温度まで加熱される(S14)。その後、フレームフィーダ2は、リードフレーム100をマガジンに収納する(S14)。
【0047】
〔作用効果〕
以下、ワイヤボンディング装置1の作用効果について説明する。
【0048】
ワイヤボンディング装置1は、予備加熱とボンディング作業とを並行して行う。より詳細には、予備加熱に要する期間は、ボンディング作業に要する期間と同じであるか、それよりも短い。そうすると、ボンディング作業が終了すると、直ちに、予備加熱が終了したリードフレーム100をボンディング領域A2に搬送できる。従って、リードフレーム100を搬送する時間を除き、ボンディングユニット3が待機する時間が生じない。その結果、生産性が向上する。
【0049】
一方、ワイヤボンディング装置の動作として、ボンディング作業が終了したリードフレームを搬出した後に、所定の温度に達していないリードフレームを直ちにボンディング領域に搬入する動作もあり得る。しかし、この動作では、ボンディング領域へ搬入された後に、リードフレームが所定の温度に達するまでボンディング作業を開始することができない。なぜならば、ボンディング作業に際して、ボンディングユニット3は、キャピラリ8を正確にボンディング位置(例えば、電極パッドの位置)に移動させる必要がある。ここで、ボンディング領域A2に配置されたリードフレーム100の温度が上昇すると、リードフレーム100が熱膨張を生じるので、電極パッドの位置が変わってしまう。その結果、キャピラリ8を電極パッドに正確に位置させることが難しくなるためである。従って、この動作によっても、ボンディングユニットの待機時間が生じてしまう。
【0050】
一方、ワイヤボンディング装置1では、目標温度に達しているリードフレーム100をボンディング領域A2に常に提供できる。つまり、ボンディング領域A2に搬送されたリードフレーム100は、ボンディング作業に影響を及ぼす程度の熱膨張を生じることがない。従って、上述のような待機時間を発生させることなく、正確なボンディング作業を行うことができる。
【0051】
また、ワイヤボンディング装置1のフレームフィーダ2が備えるプリヒータ11は、圧搾空気を提供するための設備や、配管空路などの複雑な機構を要しない。従って、簡易な構成によって、リードフレーム100を迅速に所定の温度まで加熱することができる。
【0052】
〔実施例1及び比較例1〕
ヒータユニットであるプリヒータ11の効果を、比較例のヒータユニットの効果と比較することにより確認した。比較例のヒータユニットは、フィン22及び空気供給穴24を有しない点でプリヒータ11と相違する。比較例のヒータユニットのその他の構成は、実施形態のプリヒータ11と同じである。つまり、比較例のヒータユニットによれば、ヒータブロックの主面とリードフレームの裏面との間における輻射による熱移動と、ヒータブロックの主面から生じる上昇対流に起因する熱伝達と、により、ヒータユニットからリードフレームに熱が提供される。
【0053】
実施例1及び比較例1では、カートリッジヒータ14の温度を350℃に設定した。そして、リードフレーム100を搬送し、ヒータブロック16の主面16a上に静止させたタイミングを基点として、リードフレーム100の温度上昇の様子を確認した。
図6は、実施例1の結果及び比較例1の結果を示すグラフである。横軸は、時間を示す。縦軸は、リードフレーム100の温度を示す。グラフG6aは、実施例1の結果を示す。グラフG6bは、比較例1の結果を示す。
【0054】
まず、比較例1の結果を確認した。グラフG6bによれば、まず、リードフレーム100の温度は、25℃程度であることが分かった(プロットP1参照)。この温度は、室温におおむね対応する。次に、計測開始から約40秒経過後にリードフレーム100をヒータユニット上へ搬送した(プロットP2参照)。その結果、リードフレーム100の温度が急激に上昇していることがわかった。そして、計測開始から120秒後には、リードフレームの温度は、約260℃に収束した(プロットP3参照)。
【0055】
次に、実施例1の結果を確認した。グラフG6aによれば、まず、リードフレーム100の温度は、25℃程度であることが分かった(プロットP1参照)。次に、計測開始から約40秒経過後にリードフレーム100をヒータユニット上へ搬送した(プロットP2参照)。その結果、リードフレーム100の温度が急激に上昇していることがわかった。そして、計測開始から120秒後には、リードフレームの温度は、約260℃に収束した(プロットP3参照)。
【0056】
つまり、フィン22の有無に関わらず、リードフレーム100の収束温度には有意な差異がないことが確認できた。
【0057】
一方、収束温度に達するまでの期間には、相違が表れた。例えば、加熱開始から収束温度(260℃)の95%に達するまでの期間を比較した。まず、比較例(グラフG6b)の場合には、加熱開始から収束温度の95%に達するまでに、約48秒(87秒-39秒)の時間を要した(プロットP4参照)。実施例1(グラフG6a)の場合には、加熱開始から収束温度の95%に達するまでに、約28秒(71秒-42秒)の時間を要した(プロットP5参照)。つまり、フィン22及び空気供給穴24を設けることにより、20秒の短縮に成功した。従って、フィン22及び空気供給穴24を設けることにより、予備加熱に要する期間を短縮できることが確認できた。
【0058】
〔変形例〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施してよい。
【0059】
例えば、上記の実施形態では、ボンディング装置として、ワイヤボンディング装置1を例示した。例えば、ボンディング装置は、ダイボンド装置であってもよい。この場合、ボンディング作業とは、ワイヤボンディングではなく、ダイボンディングを意味する。そして、ボンディング部は、半導体チップをリードフレーム100に搬送する機構や半導体チップ及び/又はリードフレーム100に接着剤を配置する機構などを備えてよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ワイヤボンディング装置(ボンディング装置)、2…フレームフィーダ、3…ボンディングユニット、4…制御ユニット、6…ベース、7…ボンディングツール、8…キャピラリ、9…レール、10…駆動機構、11…プリヒータ(ヒータユニット、第1ヒータユニット)、12…ヒートプレート、13…アフターヒータ(ヒータユニット、第2ヒータユニット)、14…カートリッジヒータ(発熱体、第1発熱体、第2発熱体)、16…ヒータブロック、16a…主面、17…ヒータ固定面、18…上流放熱部、19…下流放熱部、21…連結部、22…フィン、23…溝、24…空気供給穴、100…リードフレーム、D1…搬送方向、D2…対面方向、D3…奥行方向、K…仮想面、L1…隙間、L3…深さ、A1…予備加熱領域、A2…ボンディング領域、A3…後加熱領域。