(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】光硬化性熱硬化性樹脂組成物及びドライフィルム及び硬化物ならびにプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20230125BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230125BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230125BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/004 512
G03F7/004 501
C08F2/50
H05K3/28 D
H05K3/28 F
(21)【出願番号】P 2018065923
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】工藤 知哉
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和也
(72)【発明者】
【氏名】植田 千穂
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 沙和子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅年
(72)【発明者】
【氏名】前田 順啓
(72)【発明者】
【氏名】大槻 信章
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-062651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/004
C08F 2/50
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)熱硬化性化合物、を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂が、ラジカル重合性重合体を含み、該ラジカル重合性重合体は、ベースポリマーである重合体100質量%中、マレイミド系単量体由来の構成単位30~40質量%、
(メタ)アクリル酸由来の構成単位21~27質量%、水酸基を有する単量体由来の構成単位15~20質量%、
スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエンから選ばれる芳香族単量体由来の構成単位13~29質量%を必須単位として含有し、前記ベースポリマーである重合体が有するカルボキシル基に対して、グリシジルメタクリレートを反応させてなる構造を有するものであり、かつ、
次式(1)により得られる熱処理後残存率X(質量%)と次式(2)により得られる固形分濃度Y(質量%)との割合X/Yで表される相対値が0.95以上であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
式(1):
熱処理後残存率X(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を常圧200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
式(2):
固形分濃度Y(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
【請求項2】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)熱硬化性化合物、を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂が、ラジカル重合性重合体を含み、該ラジカル重合性重合体は、ベースポリマーである重合体100質量%中、マレイミド系単量体由来の構成単位30~40質量%、
(メタ)アクリル酸由来の構成単位21~27質量%、水酸基を有する単量体由来の構成単位15~20質量%、
スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエンから選ばれる芳香族単量体由来の構成単位13~29質量%を必須単位として含有し、前記ベースポリマーである重合体が有するカルボキシル基に対して、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートを反応させてなる構造を有するものであり、かつ、
次式(1)により得られる熱処理後残存率X(質量%)と次式(2)により得られる固形分濃度Y(質量%)との割合X/Yで表される相対値が0.95以上であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
式(1):
熱処理後残存率X(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を常圧200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
式(2):
固形分濃度Y(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
【請求項3】
前記ラジカル重合性重合体は、二重結合当量が800~2500g/当量である請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物が、フィルム上に塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物または請求項4記載のドライフィルムの樹脂層が、硬化されていることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
請求項5記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ水溶液に可溶なラジカル重合性重合体を含む硬化性樹脂組成物、そのドライフィルムおよび硬化物ならびに電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造におけるソルダーレジスト等の永久被膜の形成に、一般に硬化性樹脂組成物が採用されている。このような硬化性樹脂組成物としてドライフィルム型の組成物や液状の組成物が開発されている。また、硬化性樹脂組成物は、写真法(フォトリソグラフィー)の原理を応用することによって微細加工が可能である。近年では、環境対策の点から希薄な弱アルカリ水溶液で現像できるアルカリ現像型が主流になっている。
【0003】
上記硬化性樹脂組成物は、一般的に、不飽和二重結合を有するプレポリマー、重合性モノマー、及び光重合開始剤を必須成分としている。光硬化性成分として主に用いられる上記プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、及びエポキシアクリレートなどのアクリレート系樹脂が挙げられる。これらアクリレート系樹脂は、製造が容易であり、光硬化性に優れていることから、広く用いられており、例えば、分子中に2個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物と分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を反応させて得られる不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂を含有する樹脂組成物は、アルカリ現像性、耐熱性、可撓性等の重要特性が良好であることが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
一方で、電子部品の軽薄短小化に伴うプリント配線板の高密度化に対応して、半導体パッケージの小型化や多ピン化が実用化され量産化が進み、最近では、QFP(クワッド・フラット・パッケージ)やSOP(スモール・アウトライン・パッケージ)と呼ばれる半導体パッケージに代わり、パッケージ基板を用いたBGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・スケール・パッケージ)などが広く採用されている。
このようなパッケージ基板では、配線パターンがより高密度に、互いに近接して形成されているため、かかるパッケージ基板に用いられるソルダーレジスト等の永久被膜には、より高い信頼性(B-HAST耐性、PCT耐性、耐熱性、アルカリ現像性等)が求められるようになってきた。しかしながら、前述のアクリレート系樹脂は、エステル結合を有するため、加水分解性が高く、B-HAST耐性等の絶縁信頼性に劣るという問題があった。
また、高い耐熱性への要求に応え得る感光性樹脂として、N-置換マレイミド基とエチレン性不飽和二重結合を有するポリマーが検討されている(例えば特許文献2)。しかしながら、これらの系の感光性樹脂においても、耐熱性に重きを置き過ぎるとアルカリ現像性が低下したり、硬化物に脆さが発現したりすることになりかねず、耐熱性、アルカリ現像性等の特性のバランスに改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-48495号公報
【文献】特開2002-62651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、アルカリ現像性、硬化性、耐熱性等の特性を維持しつつ、B-HAST耐性等の絶縁信頼性に優れた硬化性樹脂組成物、そのドライフィルムおよび硬化物ならびに電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のカルボキシル基含有感光性樹脂と、熱硬化性化合物とを含む樹脂組成物が、優れたアルカリ現像性、耐熱性等を維持したまま可とう性の付与、さらには優れたB-HAST耐性等の絶縁信頼性を有する硬化物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)熱硬化性化合物、を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂が、ラジカル重合性重合体を含み、該ラジカル重合性重合体は、ベースポリマーである重合体100質量%中、マレイミド系単量体由来の構成単位10~60質量%、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体由来の構成単位10~40質量%、水酸基を有する単量体由来の構成単位10~40質量%を必須単位として含有し、前記ベースポリマーである重合体が有するカルボキシル基に対して、該カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体を反応させてなる構造を有するものであり、かつ、
次式(1)により得られる熱処理後残存率X(質量%)と次式(2)により得られる固形分濃度Y(質量%)との割合X/Yで表される相対値が0.95以上であることを特徴とする。
式(1):
熱処理後残存率X(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を常圧200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
式(2):
固形分濃度Y(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
【0009】
本発明のドライフィルムは、上記の硬化性樹脂組成物を、フィルム上に塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とする。
本発明の硬化物は、上記の硬化性樹脂組成物または上記のドライフィルムが硬化されていることを特徴とする。
本発明の電子部品は、上記の硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、アルカリ現像性、硬化性、耐熱性、絶縁信頼性に優れている。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、プリント配線板の基材上や半導体素子の部材上で活性エネルギー線を照射することにより上記硬化物として有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物、そのドライフィルムおよび硬化物ならびに電子部品を、より具体的に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)熱硬化性化合物、を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂がラジカル重合性重合体を含み、該ラジカル重合性重合体は、ベースポリマーである重合体100質量%中、マレイミド系単量体由来の構成単位10~60質量%、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体由来の構成単位10~40質量%、水酸基を有する単量体由来の構成単位10~40質量%を必須単位として含有し、前記ベースポリマーである重合体が有するカルボキシル基に対して、該カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体を反応させてなる構造を有するものであり、かつ、
次式(1)により得られる熱処理後残存率X(質量%)と次式(2)により得られる固形分濃度Y(質量%)との割合X/Yで表される相対値が0.95以上であることを特徴とする。
式(1):
熱処理後残存率X(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を常圧200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
式(2):
固形分濃度Y(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
【0012】
<(A)カルボキシル基含有感光性樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有感光性樹脂を含む。このカルボキシル基含有感光性樹脂は、ラジカル重合性重合体を含む。当該ラジカル重合性重合体は、マレイミド系単量体由来の構成単位、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体由来の構成単位、水酸基を有する単量体由来の構成単位を必須単位として有する重合体(ベースポリマー)が有するカルボキシル基に対して、カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体を反応させてなる構造を有する。上記カルボキシル基は、上記重合体(ベースポリマー)中の上記エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体由来の構成単位に含まれる。上記ラジカル重合性重合体では、上記エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体由来の構成単位が有するカルボキシル基の、好ましくはその一部に、カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体を付加させてなる構造を有する。
上記ラジカル重合性重合体中、上記重合体(ベースポリマー)由来の構成単位は、主鎖を構成する。上記カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体由来の構成単位は、ラジカル重合性重合体の側鎖を構成する。
上記カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体は、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合(以下、単にラジカル重合性二重結合という場合がある)を有することが好ましい。
上記ラジカル重合性重合体は、好ましくは、主鎖100質量%中、マレイミド系単量体由来の構成単位10~60質量%、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体由来の構成単位10~40質量%、および水酸基を有する単量体由来の構成単位10~40質量%を含み、かつ、側鎖にラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有する。
なお、以下において、単量体単位との記載は、単量体に由来する構成単位を示し、当該単量体中の重合性炭素-炭素二重結合(C=C)が単結合(C-C)になった構造単位を意味する。例えば、マレイミド系単量体単位とは、マレイミド系単量体を共重合又はグラフト重合した場合の、マレイミド系単量体由来の構成単位を意味する。
【0013】
マレイミド系単量体単位、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸(単量体)単位、水酸基を有する単量体単位を必須単位として有する重合体(ベースポリマー)は、マレイミド系単量体、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸、水酸基を有する単量体を必須成分としてラジカル重合させて得られることが好ましい。以下に単量体について説明する。
【0014】
マレイミド系単量体としては、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-(2-クロロフェニル)マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-フェニルメチルマレイミド、N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイミド、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]マレイミド、N-オクタデセニルマレイミド、N-ドデセニルマレイミド、N-(2-メトキシフェニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(1-ヒドロキシフェニル)マレイミド等のN-置換マレイミドや無置換マレイミドが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、耐熱性向上効果が大きく、共重合性が良好で、かつ入手し易いという点でN-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド等が好ましく、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミドがより好ましく、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミドが最も好ましい。
また、N-フェニルマレイミドとN-ベンジルマレイミドとを併用することも好ましい。併用する場合のN-フェニルマレイミドとN-ベンジルマレイミドとの好ましい比率は、質量比で99:1~1:99である。
【0015】
次に、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸(単量体)について説明する。本発明ではアルカリ現像に必須となるカルボキシル基を導入し、加えて硬化物の特性を優れたものとするため、単量体としてエステル結合を有さない不飽和カルボン酸を必須成分として用いる。具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ソルビン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、中でも、硬化物の特性に優れることから(メタ)アクリル酸が好ましい。また、他の態様として、カルボキシル基と共に、またはカルボキシル基に代えて、他の酸基を導入してもよい。他の酸基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基、スルホン酸基等、アルカリ水と中和反応する官能基が挙げられ、これらの1種のみを有していても、2種以上有していてもよい。以下の記載において、カルボキシル基に対する記載は、上記他の酸基にもあてはまる。
【0016】
次に、水酸基を有する単量体について説明する。本発明では、水酸基(ヒドロキシル基)を有する単量体を必須成分として用いる。従来より、カルボキシル基を有する重合体として(メタ)アクリル酸を共重合させたものが知られているが、アルカリ現像性の点で改善の余地があった。また、アルカリ現像性を向上させる手法として、水酸基を有する単量体単位を共重合させ、水酸基含有骨格中の水酸基に対して多塩基酸無水物を反応させたものや、特許文献2に記載されているように、グリシジル基含有骨格中のグリシジル基に対して(メタ)アクリル酸のような不飽和一塩基酸を反応させ、グリシジル基が開環して生成したヒドロキシル基に対して多塩基酸無水物を反応させたものが知られているが、いずれもアルカリ現像性、耐熱性の両立の点で改善の余地があった。
【0017】
それに対して、本発明では、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸、水酸基を有する単量体、両方を必須成分として共重合することで良好なアルカリ現像性を発現させることができ、加えて硬化物の特性にも優れるものとすることができる。分子内に水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル等の(ジ)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシピバリル(メタ)アクリルアミド、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリルアミド、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用可能である。中でも、共重合性の点から、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、特に(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。
【0018】
次に、上述した単量体の配合割合について説明する。
マレイミド系単量体(マレイミド系単量体単位)は、ベースポリマーである重合体100質量%中、換言すればベースポリマーを構成する全単量体成分(ベースポリマーを構成する全単量体単位100質量%)中10~60質量%である。マレイミド系単量体の含有量を10質量%以上とすることで、硬化物に充分な耐熱性を付与することができる。一方、含有量を60質量%以下とすることで、不飽和カルボン酸、水酸基を有する単量体に起因するアルカリ現像性、硬化物特性を充分に付与することができる。マレイミド系単量体の好ましい下限は15質量%、より好ましい下限は20質量%である。また、好ましい上限は55質量%、より好ましい上限は50質量%である。
【0019】
エステル結合を有さない不飽和カルボン酸(エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単位)は、ベースポリマーを構成する全単量体成分(ベースポリマーを構成する全単量体単位100質量%)中10~40質量%である。不飽和カルボン酸の含有量を10質量%以上とすることで良好なアルカリ現像性を発現させることができる。一方、含有量を40質量%以下とすることで、マレイミド系単量体に起因する耐熱性等の硬化物特性を充分に付与することができる。不飽和カルボン酸の好ましい下限は15質量%、より好ましい下限は20質量%である。また、好ましい上限は35質量%、より好ましい上限は30質量%である。
【0020】
水酸基を有する単量体(水酸基を有する単量体単位)は、ベースポリマーを構成する全単量体成分(ベースポリマーを構成する全単量体単位100質量%)中10~40質量%である。水酸基を有する単量体の含有量を10質量%以上とすることで良好なアルカリ現像性を発現させることができる。一方、含有量を40質量%以下とすることで、マレイミド系単量体に起因する耐熱性等の硬化物特性を充分に付与することができる。水酸基を有する単量体の好ましい下限は12質量%、より好ましい下限は15質量%である。また、好ましい上限は35質量%、より好ましい上限は30質量%である。
【0021】
本発明では、特性に悪影響を及ぼさない限りにおいて、重合体(ベースポリマー)を得る際に他の共重合可能な単量体成分を使用しても良い。
このような単量体成分の具体例としては、エステル結合を有さない芳香族系単量体;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルや対応するアルキルビニル(チオ)エーテル;無水マレイン酸等の酸無水物基含有単量体あるいはこれをアルコール類等により酸無水物基を開環変性した単量体や上記したもの以外の不飽和塩基酸;N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリドン等のN-ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、マレイミド系単量体との共重合性が良好であり、硬化物の特性にも優れることから、エステル結合を有さない芳香族系単量体が好ましい。具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、電気特性に優れ、安価である点からスチレンが最も好ましい。
【0023】
上記他の共重合可能な単量体成分の含有量は、ベースポリマーを構成する全単量体成分(ベースポリマーを構成する全単量体単位100質量%)中、合計で、好ましくは0~70質量%、より好ましくは0~55質量%、さらに好ましくは0~20質量%である。
また、エステル結合を有さない芳香族系単量体(エステル結合を有さない芳香族系単量体単位)が、ベースポリマーを構成する全単量体成分(ベースポリマーを構成する全単量体単位100質量%)中に1~35質量%含まれていることが好ましい。エステル結合を有さない芳香族系単量体の含有量を1質量%以上とすることで、硬化物特性をより充分に付与することができる。一方、含有量を35質量%以下とすることで、マレイミド系単量体、不飽和カルボン酸、水酸基を有する単量体に起因する耐熱性、アルカリ現像性をより充分に付与することができる。エステル結合を有さない芳香族系単量体のより好ましい下限は5質量%、さらに好ましい下限は7質量%、特に好ましい下限は8質量%である。また、より好ましい上限は33質量%、さらに好ましい上限は30質量%である。
【0024】
上記ラジカル重合性重合体の製造方法を説明する。下記式(1)および(2)
熱処理後残存率X(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を常圧200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)} (1)
固形分濃度Y(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)} (2)
により得られる熱処理後残存率X(質量%)と固形分濃度Y(質量%)との相対値X/Yが0.95以上であるラジカル重合性重合体の製造方法であって、
単量体成分100質量%中、マレイミド系単量体10~60質量%、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体10~40質量%、および水酸基を有する単量体10~40質量%を必須として含有する上記単量体成分を反応させて重合体(ベースポリマー)を得る工程と、
上記重合体が有するカルボキシル基に対して、上記カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体を反応させてラジカル重合性重合体を得る工程と、
を含んでいる。
【0025】
単量体成分を反応させて重合体(ベースポリマー)を得る工程において、該重合体を得る方法は特に限定されず、溶液重合法や塊状重合法等、従来公知の重合法の採用が可能である。中でも、重合反応中の温度制御が容易な溶液重合法が好ましい。
溶液重合の際の溶媒としては、重合を阻害したり、原料単量体各成分を変質させたりするおそれの無い溶媒であれば特に限定されない。使用可能な溶媒の具体的としては、トルエン、キシレン等の炭化水素類;セロソルブアセテート、カルビトールアセテート、(ジ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸(ジ)メチル、コハク酸(ジ)メチル、アジピン酸(ジ)メチル、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルプロピオネート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチル-t-ブチルエーテル、(ジ)エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。また、特に、マレイミド系単量体の使用量が30質量%を超える場合や(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸の使用量が30質量%を超える場合には、単量体や重合体の溶解性向上のために、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートやカルビトールアセテート等のエステル類とプロピレングリコールモノメチルエーテルやイソプロパノール等のアルコール類との混合溶媒が好ましい。
【0026】
重合反応の際に使用可能な重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤が挙げられる。具体的には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルイソブチロニトリル)等のアゾ系化合物;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物等を挙げることができ、所望する反応条件や、得られる重合体に対する要求特性に応じて適宜選択して使用すればよい。
【0027】
上記重合開始剤の使用量は、上記重合反応に使用する単量体成分100質量%に対して、0.001~15質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.01~10質量%である。
【0028】
重合体(ベースポリマー)を得る具体的手法としては特に限定されないが、溶媒中に、全ての成分を一括で仕込んで重合する方法、予め溶媒と成分の一部を仕込んだ反応容器に残りの成分を連続添加あるいは逐次添加して重合する方法等が採用可能である。
【0029】
重合体(ベースポリマー)の製造では、ベースポリマーを構成する全単量体成分中、マレイミド系単量体10~60質量%、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体10~40質量%、水酸基を有する単量体10~40質量%を必須成分とする単量体を、上記重合開始剤を用いて、ラジカル重合させることが好ましい。
上記全単量体成分中、さらに、エステル結合を有さない芳香族系単量体1~35質量%を含有することが好ましい。
【0030】
反応時の圧力についても特に限定はなく、常圧、加圧のいずれの条件下で行ってもよい。重合反応時の温度については、使用する原料モノマーの種類や組成比、使用溶媒の種類にもよるが、通常は20~150℃の範囲で行うのが好ましく、より好ましくは30~120℃である。
【0031】
重合反応時には、重合体溶液の最終固形分濃度が10~70質量%となるように、溶媒と各単量体成分の量を設定することが好ましい。この最終固形分濃度が10質量%未満では、生産性が低くなるため好ましくない。一方、最終固形分濃度が70質量%を超える場合、溶液重合の場合でも重合液の粘度が上昇して重合転化率が上昇しないおそれがある。より好ましい最終固形分濃度は20~65質量%であり、さらに好ましくは25~60質量%である。
【0032】
上記ラジカル重合性重合体を含んでなる樹脂組成物としての特性、アルカリ現像性、硬化塗膜物性、耐熱性等を考慮すれば、重合体の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)によって測定したときの値として、ポリスチレン換算値で1,000~100,000が好ましい。Mwを1,000以上とすることで、硬化物に充分な耐熱性を付与することができる。一方、Mwを100,000以下とすることで、充分なアルカリ現像性を付与することができる。Mwのより好ましい下限は2,000、さらに好ましい下限は3,000である。また、より好ましい上限は50,000、さらに好ましい上限は30,000である。
この範囲の分子量に調整するために、必要であれば、重合反応時に連鎖移動剤を用いてもよいが、用いないことでメルカプタン臭のない樹脂組成物を得ることができる。
【0033】
使用する場合の使用可能な連鎖移動剤としては、重合に使用する各単量体成分に悪影響を及ぼさないものであればよく、通常、チオール化合物が使用される。具体的には、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール等のアリールメルカプタン;メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチル等のメルカプト基含有脂肪族カルボン酸およびそのエステル等が好ましい物として挙げられる。連鎖移動剤の使用量は特に限定されず、所望の分子量を有する重合体が得られるように適宜調節すればよいが、一般的には、重合に使用される単量体総量に対して、0.1~15質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.5~10質量%である。
【0034】
次に、ラジカル重合性重合体を得る工程において、重合体(ベースポリマー)が有するカルボキシル基に対して、カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体を反応させてラジカル重合性を付与し、ラジカル重合性重合体を得る。ラジカル重合性を付与するために、好ましくは、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合導入反応を行う。ラジカル重合性基(好ましくは炭素-炭素二重結合)導入反応は、上記重合体のカルボキシル基と、カルボキシル基と反応し得る官能基ならびにラジカル重合性基(好ましくは炭素-炭素二重結合)を有する単量体の上記官能基との反応であり、メチルハイドロキノンや酸素等の重合禁止剤と、トリエチルアミン等の3級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、金属の有機酸塩および無機酸塩、キレート化合物等の反応触媒の共存下で、80~130℃程度で行うことができる。また、他の態様として、カルボキシル基と共に、またはカルボキシル基に代えて、上記他の酸基と反応させてもよい。
【0035】
カルボキシル基等の酸基と反応し得る官能基としては、グリシジル基、オキサゾリニル基、イソシアネート基およびオキセタニル基よりなる群から選択されることが好ましい。ラジカル重合性炭素-炭素二重結合は(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0036】
グリシジル基を有する単量体の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、株式会社ダイセル製の「サイクロマーA400」等)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(例えば、株式会社ダイセル製の「サイクロマーM100」等)等が挙げられる。
【0037】
オキサゾリニル基を有する単量体の具体例としては、N-ビニルオキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0038】
イソシアネート基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネートあるいはこれらの変性体等が挙げられる。より具体的には、「カレンズMOI」(メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)、「カレンズAOI」(アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート)、「カレンズMOI-EG」(メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート)、「カレンズMOI-BM」(カレンズMOIのイソシアネートブロック体)、「カレンズMOIBP」(カレンズMOIのイソシアネートブロック体)、「カレンズBEI」(ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネート)が、昭和電工社から市販されている。なお、これらの商品名は、いずれも登録商標である。
【0039】
オキセタニル基を有する単量体の具体例としては、3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン等が挙げられる。
【0040】
これら単量体のうち1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも反応性や工業的入手性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレートや3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートが好ましい。特に好ましくは、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートである。
【0041】
上記ラジカル重合性重合体においては、二重結合当量が600~4000g/当量になるように、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合導入反応を行うことが好ましい。二重結合当量は光硬化性や硬化物の物性に関連しており、上記範囲にすることで、耐熱性や強度、可撓性等の物性に優れた硬化物を与えることができる。また、光硬化性とアルカリ現像性が両立するバランスの採れた感光性樹脂が得られる。二重結合当量のより好ましい範囲は、700~3000g/当量であり、さらに好ましくは800~2500g/当量である。
【0042】
上記のようにして得られるラジカル重合性重合体の酸価は、30mgKOH/g以上が好ましく、40mgKOH/g以上がより好ましく、50mgKOH/g以上がさらに好ましく、また160mgKOH/g以下が好ましく、155mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましい。ラジカル重合性重合体の酸価が30mgKOH/g以上とすることで、良好なアルカリ現像性を発現しやすくなる。ラジカル重合性重合体の酸価が160mgKOH/g以下であれば、アルカリ現像液によって露光部分が侵食されにくくなり、また硬化物の耐水性や耐湿性が向上する。
【0043】
カルボキシル基と反応し得る官能基を有する単量体の使用量は、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合導入反応を行う前の重合体が有するカルボキシル基1当量に対し0.01~0.99当量の範囲で、かつ、得られるラジカル重合性重合体の二重結合当量と酸価が上記好適範囲になるように決定することが好ましい。なお、上記ラジカル重合性重合体のMwの好適範囲は、上記ラジカル重合性炭素-炭素二重結合導入反応前の重合体のMwの好適範囲と同様である。
【0044】
上記ラジカル重合性重合体は、下記式により得られる熱処理後残存率X(質量%)と固形分濃度Y(質量%)との相対値X/Yが0.95以上である。
熱処理後残存率X(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)とアセトン2mlとの混合物を常圧200℃で30分加熱乾燥して得た乾燥混合物の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
固形分濃度Y(質量%)={ラジカル重合性重合体0.3g(加熱乾燥前の質量)を真空下160℃で1時間30分加熱乾燥させて得た固形分の質量(g)}/{ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3(g)}
【0045】
上記式において、ラジカル重合性重合体としては上記溶媒を含んだものであってもよい。ラジカル重合性重合体の加熱乾燥は、アルミカップ等の熱伝導性の高い容器で行うことが好ましい。ラジカル重合性重合体の加熱乾燥前の質量0.3gについては、精秤した質量が分かれば良く、0.3g前後(例えば0.28~0.32g)であってもよい。
【0046】
上記ラジカル重合性重合体では、ラジカル重合性基導入反応前の重合体の全単量体由来の構成単位100質量%中、マレイミド系単量体由来の構成単位10~60質量%、エステル結合を有さない不飽和カルボン酸単量体由来の構成単位10~40質量%、水酸基を有する単量体由来の構成単位10~40質量%を必須単位として有するため、エステル結合の含有率を低く抑えられ、優れた耐熱分解性が得られる。
【0047】
上記相対値X/Yは熱分解が全く生じなかった場合には1となり、上記相対値X/Yが1に近いほど、耐熱分解性が良い。上記相対値X/Yは、好ましくは0.96以上、より好ましくは0.97以上、さらに好ましくは0.98以上である。
【0048】
上記(A)カルボキシル基含有感光性樹脂は、エポキシ樹脂を出発原料としない、アルカリ現像性と耐熱性のバランスをとったマレイミド骨格を有した共重合型樹脂である。したがって、本発明の硬化性樹脂組成物は、上記の(A)カルボキシル基含有感光性樹脂を含むことにより、耐熱性及びアルカリ現像性が良好な樹脂組成物を得ることができ、また、可撓性にも優れている。
本発明の硬化性樹脂組成物においては、さらに(A)以外のカルボキシル基含有樹脂を含有してもよい。(A)以外のカルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用できる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸又はそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光反応性モノマーを併用する必要がある。
(A)以外のカルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0049】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0050】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0051】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0052】
(4)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0053】
(5)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0054】
(6)2官能又はそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0055】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0056】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0057】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0058】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0059】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0060】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0061】
前記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、30~150mgKOH/gの範囲が適当であり、より好ましくは50~120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が30mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、150mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0062】
また、前記カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000、さらには5,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、露光後の塗膜の耐湿性が悪く、現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性においても劣ることがある。重量平均分子量は、GPCにより測定することができる。
これら(A)以外のカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したものに限らず使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。中でも、前記カルボキシル基含有樹脂(10)、(11)のごときフェノール化合物を出発原料と使用して合成されるカルボキシル基含有樹脂はHAST耐性、PCT耐性に優れるため好適に用いることが出来る。
これらの(A)以外のカルボキシル基含有樹脂を用いる場合、本発明の(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、(A)以外のカルボキシル基含有樹脂を700質量部以下で使用することが好ましい。より好ましい上限値は600質量部、さらに好ましい上限値は500質量部である。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、さらに公知のラジカル重合性化合物を含有してもよい。このようなラジカル重合性化合物には、ラジカル重合性樹脂とラジカル重合性モノマーとがある。
【0064】
ラジカル重合性樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が使用できる。これらのラジカル重合性樹脂を用いる場合、本発明の(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、ラジカル重合性樹脂を80質量部以下で使用することが好ましい。より好ましい上限値は70質量部、さらに好ましい上限値は60質量部である。
【0065】
ラジカル重合性モノマーとしては、単官能モノマー(ラジカル重合性二重結合が1個)と多官能モノマー(ラジカル重合性二重結合が2個以上)のいずれも使用可能である。ラジカル重合性モノマーは重合に関与するため、得られる硬化物の特性を改善する上に、樹脂組成物の粘度を調整することもできる。ラジカル重合性モノマーを使用する場合の好ましい使用量は、本発明の(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、300質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。好ましい下限値としては、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し1質量部、より好ましくは5質量部である。尚、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と(A)以外のカルボキシル基含有樹脂を併用する場合、ラジカル重合性モノマーの使用量は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂および(A)以外のカルボキシル基含有樹脂の合計量100質量部に対して、上記の範囲とする。
ラジカル重合性モノマーの具体例としては、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-(2-クロロフェニル)マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルメチルマレイミド、N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイミド、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]マレイミド、N-オクタデセニルマレイミド、N-ドデセニルマレイミド、N-(2-メトキシフェニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(1-ヒドロキシフェニル)マレイミド等のN-置換マレイミド基含有単量体;スチレン、α-メチルスチレン、α-クロロスチレン、ビニルトルエン、p-ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリアジン、デンドリチックアクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等の(ヒドロキシ)アルキルビニル(チオ)エーテル;(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のラジカル重合性二重結合を有するビニル(チオ)エーテル;無水マレイン酸等の酸無水物基含有単量体あるいはこれをアルコール類、アミン類、水等により酸無水物基を開環変性した単量体;N-ビニルピロリドン、N-ビニルオキサゾリドン等のN-ビニル系単量体;アリルアルコール、トリアリルシアヌレート等、ラジカル重合可能な二重結合を1個以上有する化合物が挙げられる。
これらは、用途や要求特性に応じて適宜選択され、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
本発明の(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と(A)以外のカルボキシル基含有樹脂とラジカル重合性化合物とを含んでなる樹脂組成物は、ベンゾイルパーオキサイドやクメンハイドロパーオキサイド等の公知の熱重合開始剤を使用することにより熱重合も可能であるが、光重合開始剤を配合した硬化性樹脂組成物とすることで、光によるラジカル重合が可能となる。特に、ネガ型の硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0067】
<(B)光重合開始剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、(B)光重合開始剤を含む。
光重合開始剤としては公知のものが使用でき、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オンや2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
【0068】
また、光重合開始剤としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤などを用いることもできる。
【0069】
前記オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI-325、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、ADEKA社製N-1919、NCI-831などが挙げられる。
【0070】
前記α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられ、市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)907、Omnirad(オムニラッド)369、Omnirad(オムニラッド)379などを用いることができる。
【0071】
前記アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられ、市販品とし
ては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)TPO、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)819などを用いることができる。
【0072】
前記チタノセン系光重合開始剤としては、具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-フェニル-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-クロロ-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、3、4、5、6ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、6-ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)784などが挙げられる。
【0073】
これらの光重合開始剤は1種または2種以上の混合物として使用され、本発明の(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対し、0.005~40質量部含まれていることが好ましい。光重合開始剤の量が0.005質量部より少ない場合には、光照射時間を増やさなければならなかったり、光照射を行っても重合が起こりにくかったりするため、適切な表面硬度が得られなくなる。なお、光重合開始剤を、30質量部を超えて配合しても、多量に使用するメリットは少ない。
尚、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と(A)以外のカルボキシル基含有樹脂を併用する場合、(B)光重合開始剤の使用量は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂および(A)以外のカルボキシル基含有樹脂の合計量100質量部に対して、上記の範囲とする。
【0074】
<(C)熱硬化性化合物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)熱硬化性化合物を含む。本発明の硬化性樹脂組成物は、更に熱硬化化合物を含有することにより、アルカリ現像性を付与させた極性基と反応し当該極性基を消失させることができる。その結果、絶縁信頼性に悪影響を及ぼす吸水率が低下するため,絶縁信頼性を向上させることができる。また、熱硬化性化合物を含むことにより、耐熱性をさらに向上させることができる。
(C)熱硬化性化合物としては、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、カルボジイミド樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。これらの中でも好ましい熱硬化性成分は、1分子中に2個以上の環状エーテル基および環状チオエーテル基のいずれか少なくとも1種(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)を有する熱硬化性成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
【0075】
分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物(C-1)、分子中に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物(C-2)、分子中に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂(C-3)などが挙げられる。
【0076】
多官能エポキシ化合物(C-1)としては、例えば、三菱ケミカル社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、新日鉄住金化学社製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業社製のスミ-エポキシESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、新日鉄住金化学社製のエポトートYDB-400、YDB-500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学工業社製のスミ-エポキシESB-400、ESB-700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN-730A、エピクロンN-770、エピクロンN-865、新日鉄住金化学社製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、日本化薬社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、住友化学工業社製のスミ-エポキシESCN-195X、ESCN-220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN-235、ECN-299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱ケミカル社製jER807、新日鉄住金化学社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;新日鉄住金化学社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER604、新日鉄住金化学社製のエポトートYH-434、住友化学工業社製のスミ-エポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;株式会社ダイセル製のセロキサイド2021P等(商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、旭電化工業社製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL-931等(商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日油社製ブレンマーDDT等のジグリシジルフタレート樹脂;新日鉄住金化学社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄住金化学社製ESN-190、ESN-360、DIC社製HP-4032、EXA-4750、EXA-4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC製HP-7200、HP-7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日油社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えば株式会社ダイセル製エポリード PB-3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば新日鉄住金化学社製のYR-102、YR-450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、特にノボラック型エポキシ樹脂、変性ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0077】
多官能オキセタン化合物(C-2)としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0078】
分子中に2つ以上の環状チオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂(C-3)としては、例えば、三菱ケミカル社製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)や、新日鉄住金化学社製YSLV-120TEなどが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0079】
熱硬化性化合物の配合量は、硬化性樹脂組成物の有機溶剤を除く固形分基準で(A)カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して10~100質量部が好ましい。特に、分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性化合物の配合量は、硬化性樹脂組成物の有機溶剤を除く固形分基準で(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、環状(チオ)エーテル基が、好ましくは0.5~4.0当量、より好ましくは、0.8~3.5当量となる範囲である。熱硬化性化合物の配合量が上記範囲であると、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性、硬化被膜の強度などが良好である。
尚、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と(A)以外のカルボキシル基含有樹脂を併用する場合、(C)熱硬化性化合物の使用量は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂および(A)以外のカルボキシル基含有樹脂の合計量100質量部に対して、上記の範囲とする。
【0080】
本発明で用いられる(C)熱硬化性化合物は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基含有ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート類、ポリオール、フェノキシ樹脂、アクリル系共重合樹脂、ビニル樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、オキサジン樹脂、シアネート樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。また、それらに対応する硬化剤として(ブロック)イソシアネート類、アミン類、フェノール類なども使用できる。
【0081】
(有機溶剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や、基板やキャリアフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で、または二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0082】
本発明の樹脂組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイト及びタルクが好ましく用いられる。さらに、白色の外観や難燃性を得るために酸化チタンや金属酸化物、水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。フィラーの配合量は、組成物全体量の70質量%以下が好ましい。フィラーの配合量が、組成物全体量の70質量%を超えた場合、絶縁組成物の粘度が高くなり、塗布、成形性が低下し、硬化物が脆くなる。より好ましくは20~60質量%である。
【0083】
本発明の樹脂組成物には、さらに必要に応じて、着色用顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤、密着助剤、架橋剤等の公知の添加剤を添加してもよい。また、各種強化繊維を補強用繊維として用い、繊維強化複合材料とすることができる。
【0084】
(ドライフィルム)
本発明の硬化性樹脂組成物は、支持(キャリア)フィルムと、この支持フィルム上に形成された上記硬化性樹脂組成物からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。ドライフィルム化に際しては、本発明の硬化性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1~150μm、好ましくは10~60μmの範囲で適宜選択される。
【0085】
支持フィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。支持フィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0086】
支持フィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な保護(カバー)フィルムを積層することが好ましい。剥離可能な保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、保護フィルムを剥離するときに樹脂層と支持フィルムとの接着力よりも樹脂層と保護フィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0087】
なお、本発明においては、上記保護フィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面に支持フィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明においてドライフィルムを製造する際に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては、支持フィルムおよび保護フィルムのいずれを用いてもよい。
【0088】
(硬化物)
本発明の硬化物は、上記本発明の硬化性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものであり、高い絶縁信頼性を有する。
【0089】
(プリント配線板)
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0090】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0091】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0092】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。
【0093】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0094】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0095】
本発明の硬化性樹脂組成物は、電子部品に硬化膜を形成するために、特にはプリント配線板上に硬化膜を形成するために好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用され、さらに好適には、ソルダーレジスト、層間絶縁層、カバーレイを形成するために使用される。また、高度な信頼性が求められるプリント配線板、例えばパッケージ基板、特にFC-BGA用の永久被膜(特にソルダーレジスト)の形成に好適である。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0097】
次に示す合成例1~7のラジカル重合性重合体を合成した。なお、合成例6および7は、本発明の硬化性樹脂組成物中の(A)カルボキシル基含有感光性樹脂に含まれるラジカル重合性重合体に該当しないラジカル重合性重合体であり、つまり比較例のためのラジカル重合性重合体である。
【0098】
(合成例1)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、カルビトールアセテート81.5部を仕込み、窒素置換した後、80℃に昇温した。他方、滴下槽1にN-フェニルマレイミドを30部、カルビトールアセテートを120部混合したもの、滴下槽2にスチレンを29部、メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルを20部混合したもの、滴下槽3にアクリル酸を21部、カルビトールアセテートを10.6部混合したもの、滴下槽4に重合開始剤としてルペロックス11(商品名;アルケマ吉富社製、t-ブチルパーオキシピバレートを70%含有する炭化水素溶液)を10部、カルビトールアセテートを21.2部混合したものをそれぞれ仕込んだ。反応温度を80℃に保ちながら、滴下槽1、2,4から3時間、滴下槽3から2.5時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に80℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を95℃に昇温し、1.5時間反応を継続してラジカル重合性二重結合導入反応前の重合体溶液を得た。
次いで、この重合体溶液にグリシジルメタクリレートを9.9部、カルビトールアセテートを7.4部、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.7部、重合禁止剤としてアンテージW-400(川口化学工業社製)を0.2部加え、窒素と酸素との混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃で反応させてラジカル重合性重合体溶液A-1を得た。
得られたラジカル重合性重合体溶液A-1について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は19800、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は32.0%、固形分当たりの酸価は121mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.972であった。
【0099】
(合成例2)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート81.5部を仕込み、窒素置換した後、80℃に昇温した。他方、滴下槽1にN-フェニルマレイミドを30部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを120部混合したもの、滴下槽2にスチレンを28.5部、メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルを20部混合したもの、滴下槽3にアクリル酸を21.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを10.6部混合したもの、滴下槽4に重合開始剤としてルペロックス11を10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを21.2部混合したものをそれぞれ仕込んだ。反応温度を80℃に保ちながら、滴下槽1、2、4から3時間、滴下槽3から2.5時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に80℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を95℃に昇温し、1.5時間反応を継続してラジカル重合性二重結合導入反応前の重合体溶液を得た。
次いで、この重合体溶液にサイクロマーM100(株式会社ダイセル製)を13.6部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを7.4部、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.7部、重合禁止剤としてアンテージW-400を0.2部加え、窒素と酸素との混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃で反応させてラジカル重合性重合体溶液A-2を得た。
得られたラジカル重合性重合体溶液A-2について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は16900、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は31.9%、固形分当たりの酸価は123mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.997であった。
【0100】
(合成例3)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート82.4部、イソプロパノール35.3部を仕込み、窒素置換した後、100℃に昇温した。他方、滴下槽1にN-フェニルマレイミドを40部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを128部、イソプロパノールを32部混合したもの、滴下槽2にスチレンを13部、メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルを20部、メタアクリル酸を27部、イソプロパノールを22.2部混合したもの、滴下槽3に重合開始剤としてパーブチルO(商品名;日油社製、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)10部をそれぞれ仕込んだ。反応温度を100℃に保ちながら、滴下槽1~3から3時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に100℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を115℃に昇温し、1.5時間反応を継続してラジカル重合性二重結合導入反応前の重合体溶液を得た。
次いで、この重合体溶液にサイクロマーM100を13.7部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを31.2部、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.7部、重合禁止剤としてアンテージW-400を0.2部加え、窒素と酸素との混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃で反応させてラジカル重合性重合体溶液A-3を得た。
得られたラジカル重合性重合体溶液A-3について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は7400、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は32.0%、固形分当たりの酸価は124mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.982であった。
【0101】
(合成例4)
合成例3において、N-フェニルマレイミド40部に変えてN-ベンジルマレイミドを40部とした以外は、合成例3と同様にして、ラジカル重合性重合体溶液A-4を得た。
得られたラジカル重合性重合体溶液A-4について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は6200、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は32.0%、固形分当たりの酸価は125mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.980であった。
【0102】
(合成例5)
合成例3において、N-フェニルマレイミド40部に変えてN-フェニルマレイミドを20部およびN-ベンジルマレイミドを20部とし、パーブチルOの仕込み量を8部とした以外は、合成例3と同様にして、ラジカル重合性重合体溶液A-5を得た。
得られたラジカル重合性重合体溶液A-5について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は7600、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は32.0%、固形分当たりの酸価は126mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.985であった。
【0103】
(合成例6)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、カルビトールアセテート81.5部を仕込み、窒素置換した後、80℃に昇温した。他方、滴下槽1にN-フェニルマレイミドを30部、カルビトールアセテートを120部混合したもの、滴下槽2にスチレンを39部、メタアクリル酸2-ヒドロキシエチルを10部混合したもの、滴下槽3にアクリル酸を21部、カルビトールアセテートを10.6部混合したもの、滴下槽4に重合開始剤としてルペロックス11を10部、カルビトールアセテートを21.2部混合したものをそれぞれ仕込んだ。反応温度を80℃に保ちながら、滴下槽1、2,4から3時間、滴下槽3から2.5時間かけて滴下を行った。滴下終了後から更に80℃で30分、反応を継続した。その後、反応温度を95℃に昇温し、1.5時間反応を継続してラジカル重合性二重結合導入反応前の重合体溶液を得た。
次いで、この重合体溶液にグリシジルメタクリレートを9.9部、カルビトールアセテートを7.4部、反応触媒としてトリフェニルホスフィンを0.7部、重合禁止剤としてアンテージW-400を0.2部加え、窒素と酸素との混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃で反応させて比較用のラジカル重合性重合体溶液A-6を得た。
得られたラジカル重合性重合体溶液A-6について各種物性を測定したところ、重量平均分子量は15600、真空下160℃にて加熱乾燥させて得られた固形分濃度は31.6%、固形分当たりの酸価は121mgKOH/gであった。耐熱分解性については、X/Y=0.959であった。
【0104】
(合成例7)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート600gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔DIC社製EPICLON N-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6〕1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)415g、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物534g(3.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行い、冷却後、固形分酸価89mgKOH/g、固形分65%のラジカル重合性重合体溶液A-7を得た。
【0105】
上記合成例1~7のラジカル重合性重合体をカルボキシル基含有感光性樹脂として用い、光重合開始剤としてイルガキュアーOXE02を用い、熱硬化性樹脂としてN-730Aを用いて表1に示す実施例1~7、比較例1~3の硬化性樹脂組成物を調製した。
【0106】
【0107】
表1中のB-1:イルガキュアーOXE02(BASFジャパン社製;オキシムエステル系光重合開始剤)である。
表1中のC-1: エピクロンN-730A,(DIC社製:クレゾールノボラック型熱硬化性成分)である。
【0108】
表1中のフィラーDは、以下の製法により調製した。
アドマテック社製球状シリカ(アドマファインSO-E2)700g、溶剤としてPEGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)300g、ビーズミルにて0.5μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行なった。これを3回繰り返して3μmフィルターでろ過し、平均粒子径が500nmとなるシリカスラリーを調製した。なお、この無機フィラーは、粒子径D10が250nmであり、最大粒子径D100が3μmであった。
表1中の溶剤E-1は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)である。
【0109】
これらの実施例1~7、比較例1~3の硬化性樹脂組成物について、アルカリ現像性、光硬化性、はんだ耐熱性、B-HAST耐性を評価した。その結果を表2に示す。
【0110】
【0111】
表2の諸特性の評価方法は、以下のとおりである。
<アルカリ現像性>
各硬化性樹脂組成物を銅板上にアプリケータ(50μmギャップ)で塗布し,80℃で30分乾燥させた後に室温まで冷却し、アルカリ現像性試験基板を得た。このアルカリ現像性試験基板について、スプレー圧2kg/cm2の現像液(30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液)にて60秒間のスプレー現像を行ない、塗膜の溶解性によって評価を行った。表1におけるアルカリ現像性の評価は、以下の基準とした。
○・・・目視による残存物無し
×・・・目視による残存物有り
【0112】
<光硬化性>
上記で得たアルカリ現像性試験基板に、波長365nmの紫外線をオーク製作所(株)製の積算光量計を用いて2J/cm2の光量で照射し、スプレー圧2kg/cm2の現像液(30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液)にて60秒間の現像を行なった。表1における光硬化性の評価は、以下の基準とした。
○・・・露光部の残存有り
×・・・露光部の残存無し
【0113】
<はんだ耐熱性>
各硬化性樹脂組成物を、バフロール研磨後水洗、乾燥させた銅貼り積層基板にアプリケータ(50μmギャップ)で塗布し,80℃で30分乾燥させた。その後、フォトマスクを介して、波長365nmの紫外線をオーク製作所(株)製の積算光量計を用いて2J/cm2の光量で照射し、スプレー圧2kg/cm2の現像液(炭酸ナトリウム水溶液)にて60秒間の現像を行なった。その後、150℃の熱風循環式乾燥炉で60分間熱硬化させ、はんだ耐熱性基板とした。この作製基板に水溶性フラックスW-121(メック社製)を塗布し、予め260℃に設定したはんだ槽に30秒間浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視による硬化塗膜の膨れ・剥がれについて評価した。表1におけるはんだ耐熱性の評価基準は以下のとおりである。
○:硬化塗膜に膨れおよび剥がれがない
△:硬化塗膜にわずかに膨れあるいは剥がれがある
×:硬化塗膜に明らかに膨れおよび剥がれがある
【0114】
<B-HAST耐性>
CZ-8101Bでエッチングレート1.0μm/m2の条件で処理されたL/S=20/20μmの櫛形パターンが形成された基板に硬化性樹脂組成物を膜厚約20μmになるように形成し、全面露光を行った。その後、はんだ耐熱性試験基板と同様の条件で現像、硬化を行った。その後電極をつなぎ130℃、85%、5Vの条件でB-HAST耐性試験を行った。表1における絶縁信頼性の評価基準は、次のとおりである。
○:350h後も異常なし
△:250~350hで短絡
×:250h以内で短絡
【0115】
<可とう性>
銅箔上に硬化性樹脂組成物を膜厚約40μmになるように塗布し、全面露光を行った後、はんだ耐熱性試験基板と同様の条件で現像、硬化を行った。その後銅箔上から硬化塗膜を剥離し,幅約5mm、長さ約80mmの試験片に切断し、引っ張り試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS-100N)を用いて、破断点伸び率を測定した。測定条件は、サンプル幅約10mm、支点間距離約40mm、引っ張り速度は1.0mm/minとし、破断までの伸び率を破断点伸び率とした。表1における可とう性の評価基準は、次のとおりである。
○:破断点伸び率が3%以上
△:破断点伸び率が1.5%以上3%未満
×:破断点伸び率が1.5%未満
【0116】
表2から分かるように、本発明に従い、特定のラジカル重合性重合体および熱硬化性化合物を含む実施例1~7は、アルカリ現像性、光硬化性、はんだ耐熱性、絶縁信頼性,可とう性を高いバランスで具備していた。
これに対して、比較例1は、合成例6のラジカル重合性重合体を用いており、本発明の特定のラジカル重合性重合体を含まないため、アルカリ現像性が悪く目視による残存物があり、光硬化性、絶縁信頼性、はんだ耐熱性は評価しなかった。
また、比較例2は、合成例7のラジカル重合性重合体を用いており,特定のカルボキシル基含有感光性樹脂を含まないため、はんだ耐熱性、B-HAST耐性が十分でなかった。
また、比較例3は熱硬化性化合物を含んでいないため、B-HAST耐性が十分でなかった。