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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230125BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A41D13/11 B
A62B18/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018148739
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020023768
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021325
【氏名又は名称】CROSSEED株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】澤本 英忠
(72)【発明者】
【氏名】辻 政和
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-227194(JP,A)
【文献】特開2016-191172(JP,A)
【文献】登録実用新案第3051129(JP,U)
【文献】国際公開第2015/132862(WO,A1)
【文献】特開2008-301962(JP,A)
【文献】特開2018-3207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の複数のシートが積層され各シートが四辺に沿って融着された本体部を備えるマスクであって,
前記複数のシートのうちの着用者の口元に接する口当てシートは,部分的に切り離し可能なめくり部を有し,
前記めくり部の周囲を画定する少なくとも1辺に切り込みであるスリット線が形成されている
マスク。
【請求項2】
前記めくり部は,多角形状であり,そのうちの1辺以上がスリット線となっており,残りの辺にミシン目線が形成されている
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記めくり部は,多角形状であり,そのうちの1辺のみがミシン目線及びスリット線が形成されていない繋止部となっており,残りの辺にスリット又はミシン目線が形成されている
請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記めくり部は,多角形状であり,そのうちの1辺のみがミシン目線及びスリット線が形成されていない繋止部又はミシン目線となっており,残りの辺にスリット線が形成されている
請求項1に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,口元に装着されるマスクに関する。より具体的に説明すると,本発明は,着用者の口元に接するシートの一部を部分的にめくることのできるマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,ファンデーションや口紅などが付着して汚れた口当てシートを取り外し可能なマスクが知られている(特許文献1)。特許文献1には,折り目を有して拡開するマスク本体部と,このマスク本体部の左右側部に設けた耳掛け部を備え,マスク本体部に設けられた口当てシートが取り外し可能に複数付設されたマスクを開示している。また,特許文献1には,「前記口当てシートは、ミシン目によって前記マスク本体部に切り取ることにより取り外し可能に付設してなること」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-301962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,特許文献1に記載のマスクでは,口当てシートに切り離し可能なめくり部(捲り部)を設ける場合に,そのめくり部の全周をミシン目で囲うようにしていると考えられられる。しかしながら,このような構造を採用すると,めくり部を切り離すときにその全周に亘ってミシン目を破断させなければならず,めくり部を切り離す際に手間がかかるという問題がある。また,マスクの口当てシートには不織布などの柔らかい繊維製のシート部材が用いられることが多いが,このようなシート部材に設けられたミシン目を切り離すと,もともと不切れ部であった箇所に毛羽立ちが生じて着用者に不快感を与えるおそれがある。
【0005】
そこで,本発明は,口当てシートをめくり易いマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は,上記従来発明の問題の解決手段について鋭意検討した結果,マスクの口当てシートにめくり部を形成するとともに,そのめくり部の周囲を画定する少なくとも1辺にスリット線を形成することで,めくり部をめくり易くなるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば従来発明の問題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0007】
本発明は,口元に装着されるマスクに関する。本発明に係るマスクは,複数のシートが積層された本体部を備える。本体部を構成する複数のシートには,着用者の口元に直接接する口当てシートが含まれる。この口当てシートには,部分的に切り離し可能なめくり部が設けられている。そして,めくり部の周囲を画定する少なくとも1辺に,スリット線(切り込み)が形成されている。このように,口当てシートのめくり部の周囲に,ミシン目線の代わりにスリット線を形成しておくことで,全周がミシン目線に囲われている場合と比較して,めくり部をめくり易くなる。また,ミシン目線の不切れ部を破断させると口当てシートに毛羽立ちが生じるおそれがあるが,口当てシートにスリット線を予め形成しておくことでこのような毛羽立ちが生じるのを防止できる。
【0008】
本発明に係るマスクにおいて,めくり部は,多角形状であり,そのうちの1辺以上がスリット線となっており,残りの辺にミシン目線が形成されていてもよい。このように,スリット線とミシン目線とでめくり部の周囲を囲うことで,全周がミシン目線によって囲われためくり部と比較して,めくり部をめくり易くなる。多角形状のめくり部のうち,例えば,1辺のみがスリット線で残りの辺がミシン目線で形成されていてもよいし,1辺のみがミシン目線で残りの辺がスリット線で形成されていてもよいし,スリット線とミシン目線がそれぞれ複数ずつ形成されていてもよい。
【0009】
本発明に係るマスクにおいて,めくり部は,多角形状であり,そのうちの1辺のみがミシン目線及びスリット線が形成されていない繋止部となっており,残りの辺にスリット又はミシン目線が形成されていてもよい。このように,めくり部の周囲の一部が繋止部となっていることで,ミシン目線やスリットに沿ってめくり部をめくった後も,このめくり部が口当てシートに繋留され続けることとなる。従って,めくり部を廃棄する必要がなくなり,例えばゴミを廃棄できない状況においても,口当てシートのめくり部をめくることが可能となる。
【0010】
本発明に係るマスクにおいて,めくり部は,多角形状であり,そのうちの1辺のみがミシン目線及びスリット線が形成されていない繋止部又はミシン目線となっており,残りの辺にスリット線が形成されていてもよい。このようにすることで,めくり部のほぼ全周に亘ってスリット線を形成することができるため,めくり部が極めてめくり易いものとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,口当てシートをめくり易いマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は,マスクの一例を示す外観斜視図である。
図2図2は,マスク本体部を構成するシートの例を示している。
図3図3は,マスクの一例を示した平面図であって,肌対向面側から見た状態を示している。
図4図4は,展開状態の口当てシートの例を示している。
図5図5は,口当てシートに形成されたミシン目線の例を示している。
図6図6は,マスクの別の実施形態を示した平面図であって,肌対向面側から見た状態を示している。
図7図7は,マスクの別の実施形態を示した平面図であって,肌対向面側から見た状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
なお,本願明細書において「A~B」というときは,「A以上B以下」であることを意味する。
【0014】
本発明は,口元に装着されるマスクに関するものであり,主に有害な微小粒子(ウイルス等の飛沫物)が呼吸器内に侵入することを防止したり,あるいは咳やくしゃみによって微小粒子が空気中に飛散することを防止することを目的として使用される。図1は,本発明に係るマスク10の外観を示し,図2は,マスク10の本体部11を構成する複数のシートを示し,図3は,マスク10を肌対向面側から見た状態を示している。
【0015】
図1から図3に示されるように,マスク10は,本体部11と,耳掛け部12とを備える。本体部11は,着用者の口元を覆うための部材であり,微小粒子をフィルタリングするためのシートが複数層に亘って積層された構造となっている。本願図に示した実施形態において,本体部11は平面視において略矩形状をなしているが,本体部11の形状は図したものに限られず,円形状や楕円形状,あるいは多角形状とすることも可能である。また,耳掛け部12は,本体部11の左右両側縁部に取り付けられた伸縮性を持つ紐状の部材である。耳掛け部12は,ループ状をなすようにその両端が本体部11に側縁に固定(例えば融着)されている。着用者は,このループ状の耳掛け部12を耳に掛けることで,本体部11で自身の口元を覆うことが出来る。耳掛け部12を構成する伸縮性材料としては,例えばゴム糸と綿の交織帯や,樹脂フィラメントの交編ネット,あるいは伸縮性の不織布等を用いることができる。
【0016】
図2に示されるように,本体部11は,複数のシートを厚み方向に積層した構造を持つ。図2に示した例において,本体部11は5層のシートからなるものであるが,少なくとも2層のシートを備えていればよい。本体部11を構成する各シートとしては,一般的なマスクの材料として用いられている周知のシート材料を用いることができる。例えば,シートの例としては,不織布や,ガーゼ,紙,透湿性樹脂シートなどが挙げられる。また,不織布としては,例えば,ポリエステル系繊維,ポリプロピレン系繊維,レーヨン系線維,ナイロン系線維,アセテート系線維,羊毛系線維,コットン系線維,ウレタン系線維,ポリエチレン系線維の1種又は2種以上を組み合わせたものを用いることができる。
【0017】
図2に示した構造例において,本体部11を構成する各シートを機能別に分けると,着用者の肌から近い順に,口当てシート21,予備口当てシート22,形状維持シート23,フィルターシート24,及び外装シート25が積層されている。
【0018】
口当てシート21は,着用者の口元に直接接するシートである。口当てシート21は,不織布で形成されていることが好ましい。口当てシート21を構成する不織布としては,例えば,スパンボンド不織布,ポイントボンド不織布,スパンレース不織布,エアスルー不織布などを挙げることができる。口当てシート21の目付量は,例えば10~50g/mであることが好ましく,15~40g/mであることが特に好ましい。また,口当てシート21の厚さは,100~350μmであることが好ましく,120~250μmであることが特に好ましい。このようにすれば,口当てシート21の汚れが予備口当てシート22に裏移りすることを抑制できる。さらに,口当てシート21に形成されたミシン目線の保持力を維持しながら,必要に応じてミシン目線を破断させ易くなる。
【0019】
また,口当てシート21の肌対向面には,口紅やファンデーションの付着を防止するための防汚コーティング処理が施されていてもよい。例えば,口当てシート21の肌対向面に,フッ素系樹脂や,シリコン系樹脂,パラフィン,ワックス(蝋)などのコーティング剤を適宜塗布しておくことも可能である。
【0020】
さらに,図2に示されるように,本体部11の最内層(最も肌対向面側の層)に位置する口当てシート21には,囲い線30によって上下左右の4辺が画定されためくり部40が形成されている。本実施形態において,囲い線30には,上下方向に延びる左辺33及び右辺34と,これら左辺33及び右辺34の上端と下端を繋ぐように左右方向に延びる上辺線35及び下辺36が含まれる。そして,これらの囲い線30のうち,左辺33及び右辺34が切り込み部31と不切れ部32が交互に形成されたミシン目線となっており,上辺35及び下辺36がスリット線で形成されている(なお,各図において,ミシン目線は破線で表し,スリット線は実線で表している)。このため,左右のミシン目線33,34(右辺,左辺)の不切れ部31を破断させることにより,めくり部40が口当てシート21から切り離されて,その部分に開口が形成される。なお,スリット線は元々切れ込み状となっているものであるため,めくり部40をめくる際に切り離す必要はない。これにより,口当てシート21の裏側に位置する予備口当てシート22が表面に露出し,この予備口当てシート22に着用者の口元が直接接するようになる。例えば,口当てシート21に口紅等が付着して汚れた場合に,めくり部40をめくり取ることで,清潔な予備口当てシート22が露出するため,マスク全体の交換が不要になる。このように,口当てシート21の一部を切り離し可能にすることで,着用者は同じマスクを長時間使用することができ,経済的なメリットを享受できる。
【0021】
予備口当てシート22は,口当てシート21の非肌対向面側に位置し,口当てシート21のめくり部40を切り離した後に,着用者の口元に直接接するシートである。予備口当てシート22は,口当てシート21と同じシート材料で形成されており,等しい目付量を有することが好ましい。なお,等しい目付量とは,予備口当てシート22の目付量が,口当てシート21の目付量に対して±10%の範囲内であることを意味する。ただし,口当てシート21と予備口当てシート22とで肌に接する感触やその機能を変化させるために,口当てシート21と予備口当てシート22とで異なるシート材料を利用したり,塗布するコーティング剤を異ならせることも可能である。
【0022】
形状維持シート23は,本体部11の立体形状を保持するためのシートである。形状維持シート23は,樹脂からなるメッシュ状のシートであることが好ましい。本体部11が形状維持シート23を備えることにより,後述するプリーツを展開した後に形成される立体形状を長時間維持しやすくなる。
【0023】
フィルターシート24は,塵埃や,細菌,ウィルス,花粉等を捕集する機能を有するシートである。フィルターシート24は,捕集機能を有する物質を吸着させた樹脂等のシートであってもよいし,捕集機能を有する不織布シートであってもよい。
【0024】
外装シート25は,本体部11の最外層(最も非肌対向面側の層)に位置するシートである。外装シート25としては,表面に光沢のある不織布を用いることが好ましい。不織布の例は,スパンボンド不織布,ポイントボンド不織布,スパンレース不織布,エアスルー不織布などである。
【0025】
上記した複数のシート21~25は,図3に示されるように,それぞれ厚み方向に積層された状態で,四隅に形成された隅融着部13及び四辺に沿って形成された融着線14によって熱融着されて一体化される。具体的に説明すると,本実施形態では,各シートが矩形状に成型されており,各シートを積層した状態でその四隅に熱プレスを行うことで隅融着部13が形成されている。また,各シートの積層体の上下左右の四辺に沿って熱プレスを行うことで,各辺に一又は複数本の融着線14が形成される。なお,融着線14は,複数の融着点が所定間隔を空けて直線上に形成されたものである。図3の例では,本体部11の左辺,右辺,及び上辺にはそれぞれ融着線14が2本ずつ形成されており,下辺には融着線14が1本形成されている。また,本体部11の上辺に形成された2本の融着線14の間の隙間には,本体部11の左右方向と平行にノーズクリップ15が埋め込まれている。ノーズクリップ15は,本体部11を構成するシートの間に配置しておけばよい。ノーズクリップ15は,着用者の鼻部の形状に適合するように変形可能な部材で構成される。ノーズクリップ15としては,例えば樹脂製の板状又は棒状の部材を用いることが好ましい。また,ノーズクリップ15としては金属テープ等を用いてもよい。
【0026】
また,図3に示されるように,口当てシート21に形成されためくり部40(囲い線30)は,上下左右の融着線14によって囲われた領域内に形成されている。つまり,めくり部40を形成するための囲い線30は,上下左右の融着線14と重ならないように配置される。融着線14と囲い線30が重なると,囲い線30を構成するミシン目線を破断させにくくなるため,融着線14と囲い線30は重複しないようにすることが好ましい。
【0027】
また,図1及び図3に示されるように,本体部11には一又は複数箇所にプリーツが形成されている。プリーツとは,本体部11の左右方向に延びる山折線16と谷折線17が,上下方向に交互に形成されたことで,本体部11の一部が折り返された構造を意味する。プリーツのための折り目(山折線16及び谷折線17)は,本体部11を構成する複数のシートの全てに形成されたものである。このような折り目は,本体部11の両側端部で接合されることによって形状を保持されている。すなわち,マスクの未着用状態では,両側端部の接合部で折り目の展開が阻止されているが,マスクの着用時に,両側端部の接合部の間に位置する中間領域において折り目が展開されることで,プリーツが上下に広がって本体部11が立体的な形状に展開される。
【0028】
図4には,口当てシート21を例に挙げて,本体部11にプリーツを形成する位置を示している。図4に示されるように,本願明細書において「山折線16」とは,外側(非肌対向面側)に向かって凸になるように本体部11を折り曲げるための折り目であり,「谷折線17」とは,外側(肌対向面側)に向かって凸になるように本体部11を折り曲げるための折り目である。山折線16と谷折線17は,本体部11の左右方向に向かって平行に延びている。本体部11の上下方向に所定間隔を空けて山折線16と谷折線17を形成することで,本体部11にプリーツが形成される。図4に示した例では,山折線16と谷折線17がそれぞれ4本ずつ形成されており,その結果本体部11の4箇所にプリーツが形成されることとなる。また,図4に示した例では,最上段に上向きのプリーツが1箇所形成され,その下に下向きのプリーツが3箇所形成されている。「上向きのプリーツ」とは,外側(非肌対向面)からみて山折線16が上向きになるプリーツであり,図4に示した展開した状態では上から谷折線17,山折線16の順に形成されたものである。「下向きのプリーツ」とは,外側(非肌対向面)からみて山折線16が下向きになるプリーツであり,図4に示した展開した状態では上から山折線16,谷折線17の順に形成されたものである。このように,本体部11の上方に上向きのプリーツを少なくとも1つ形成し,その下方に下向きのプリーツを上向きプリーツよりも多い数で形成することが好ましい。上向きのプリーツの数は1~2箇所,好ましくは1箇所であり,下向きのプリーツの数は2~6箇所,好ましくは3~5箇所である。
【0029】
図4に示されるように,プリーツを展開させた状態において,めくり部40の上下方向の長さは,口当てシート21の上下方向の長さに対して,60~95%,70~93%,又は80~90%であることが好ましい。また,めくり部40の左右方向の長さは,口当てシート21の左右方向の長さに対して,60~95%,70~93%,又は80~90%であることが好ましい。このように,めくり部40は,口当てシート21の中心を含む大部分の領域に形成すると良い。
【0030】
また,図4には,口当てシート21に形成されたミシン目線とプリーツ用の折り目の関係性を示している。図4に示されるように,口当てシート21は,各プリーツにおける山折線16と谷折線17との間の領域が「折込面21a」となり,それ以外の領域が「非折込面21b」となる。図4(b)に示されるように,折込面21aは,その全体が非折込面21bの間に挟み込まれることとなる。図4(a)に示されるように,左右のミシン目線33,34(左辺,右辺)は,口当てシート21の上下方向に延在するのに対して,折込面21a(山折線16及び谷折線17)は,口当てシート21の左右方向に延在しているため,両者は交差することとなる。また,図4(a)では,口当てシート21の右方に形成された右ミシン目線34における不切れ部31を,便宜的に丸印で囲って表している。
【0031】
図4(a)に示されるように,本発明において,口当てシート21の折込面21aには,左右のミシン目線33,34の不切れ部31が形成されていない。つまり,折込面21aには,左右のミシン目線33,34の切込み部32のみが形成されており,左右のミシン目線33,34の不切れ部31は,非折込面21bにのみ形成されている。左右のミシン目線33,34の切込み部32は,折込面21aを横断するように形成されており,左右のミシン目線33,34の不切れ部31は,この折込面21aに隣接する非折込面21bのみに形成されることとなる。このように,口当てシート21の折込面21aに左右のミシン目線33,34の不切れ部31が位置しないように,切込み部32の長さやピッチを調整することで,口当てシート21が山折線16と谷折線17で折り畳まれた状態であっても,めくり部40を切り離す際に,左右のミシン目線33,34の不切れ部31を破断させやすくなる。
【0032】
なお,口当てシート21に折込面21aが複数形成されている場合に,本発明では,左右のミシン目線33,34の不切れ部31が形成されていない折込面21aが一つでも存在してればよい。ただし,本発明において,口当てシート21に折込面21aが複数形成されている場合には,すべての折込面21aに不切れ部31が形成されていないことが好ましい。
【0033】
図5を参照して,口当てシート21のミシン目線についてより詳しく説明する。図5は,口当てシート21に形成されたミシン目線の例を拡大して示したものである。図5に示されるように,左右のミシン目線33,34には,対称に構成されたものであり,不切れ部31と切込み部32が同じ長さ同じピッチで形成されている。図5では,左右のミシン目線33,34に含まれる不切れ部を符号31aで示している。また,左右のミシン目線33,34には,比較的長尺の切込み部32aと,比較的短尺の切込み部32bが含まれる。長尺の切込み部32aは,折込面21aを横断するように形成されたものであり,短尺の切込み部32bは,折込面21aの間に位置する非折込面21bに形成されたものである。
【0034】
長尺の切込み部32aは,折込面21aを十分に横断できる長さを有していることが好ましい。具体的には,長尺の切込み部32aの長さは,それが形成された折込面21aの上下方向における長さに対して,105~320%であることが好ましく,110~220%であることが特に好ましい。また,長尺の切込み部32aは,折込面21aの上縁及び下縁の両方から延出する位置に形成される。このよう十分な長さを持つ長尺の切込み部32aを折込面21aに形成しておくことで,折込面21aにおいても左右のミシン目線33,34に沿って口当てシート21を切り離し易くなる。
【0035】
また,左右のミシン目線33,34のそれぞれにおいて,最も長い切込み部(CLmax)に対する最も短い切込み部(CLmin)の長さの比a(CLmin/CLmax)は,0.05<a≦0.5であることが好ましい。また,上記比aは,0.06~0.3又は0.07~0.2であることが特に好ましい。なお,図5に示された例において,最も長い切込み部は,折込面21aを横断する位置に形成され,最も短い切込み部は,非折込面21bに形成されている。例えば,最も長い切込み部の長さは,10~40mmであることが好ましく,15~30mmであることが特に好ましい。また,最も短い切込み部の長さは,1~10mmであることが好ましく,1.5~5mmであることが特に好ましい。
【0036】
また,左右のミシン目線33,34のそれぞれにおいて,最も長い切込み部(CLmax)に対する最も短い不切れ部(ULmin)の長さの比b(ULmin/CLmax)は,0.01≦b≦0.5であることが好ましい。また,上記比bは,0.15~0.3又は0.02~0.1であることが特に好ましい。なお,図5に示された例において,最も短い不切れ部は,2つの折込面21aの間に位置する非折込面21bに形成されている。例えば,最も短い不切れ部の長さは,0.5~2mmであることが好ましく,0.6~1.2mmであることが特に好ましい。また,不切れ部の最大長さは,ミシン目線の破断し易さを考慮して,すべて2mm以下であることが好ましく,1.2mm以下であることが特に好ましい。また,不切れ部の最小長さは,ミシン目の保持力を考慮して,すべて0.5mm以上であることが好ましく,1mm以上であることが特に好ましい。
【0037】
また,左右のミシン目線33,34のそれぞれにおいて,切込み部の長さの総和(CLtot)に対する不切れ部の長さの総和(ULtot)の比c(ULtot/CLtot)は,0.02≦c≦0.25であることが好ましい。また,上記比cは,0.03~0.2又は0.05~0.18であることが特に好ましい。なお,図5に示した例では,後述するように囲い線30の隅に円弧状の切込み部が形成されているが,この円弧状の切込み部は,左右のミシン目線33,34における切込み部には含まれない。このため上記総和(CLtot)は円弧状の切込み部の長さを含めずに計算する。
【0038】
また,図5に示されるように,2つの折込面21aの間に位置する非折込面21bには,左右のミシン目線33,34それぞれの不切れ部31aが少なくとも2箇所以上形成されていることが好ましい。つまり,折込面21aの間の非折込面21bには,左ミシン目線33の不切れ部31aが2箇所以上形成され,右ミシン目線34の不切れ部31aが2箇所以上形成されていると良い。折込面21aの間の非折込面21bにおいて,左右のミシン目線33,34それぞれの不切れ部31aの数が1つであるとミシン目線の保持力が低くなり,不用意にミシン目線が破断してしまう可能性がある。また,折込面21aの間の非折込面21bにおいて,左右のミシン目線33,34それぞれの不切れ部31aの数は,5箇所以下であることが好ましい。不切れ部31aの数が多いと,折込面21aの間の非折込面21bにおいてミシン目線を破断させにくくなる恐れがある。このため,折込面21aの間の非折込面21bにおいて,左右のミシン目線33,34それぞれの不切れ部31aは2箇所以上5箇所以下とすることが適切である。
【0039】
図4及び図5に示された実施形態では,左右のミシン目線33,34の上端及び下端の両方を繋ぐように,左右方向に延びる上下のスリット線35,36(上辺,下辺)が形成されている。各スリット線35,36は,口当てシート21に予め形成された切り込みであるため,めくり部40をめくる際に破断させる必要はない。
【0040】
図4及び図5に示されるように,めくり部40(囲い線30)の上方の二隅には円弧部37が形成されている。本実施形態において,円弧部37は,円弧状の切込み部によって形成されたものである。また,円弧部37は,めくり部40の四隅の少なくとも1つの形成されていればよく,上方の二隅に加えて,下方の二隅に形成されていてもよい。また,円弧部37は,切込み部のみによって形成されたものであってもよいし,切込み部と不切れ部が組み合わさって円弧状をなしているものであってもよい(つまり,円弧の途中に不切れ部が設けられていてもよい)。このように,めくり部40の隅に円弧部37を設けることで,その円弧部37をきっかけとして,めくり部40の左右両側に位置するミシン目線33,34を破断させやすくなる。なお,本願明細書において,めくり部40の隅に円弧部37が形成されている場合に,この円弧部37は,上下のスリット線35,36に含まれるものとして扱う。
【0041】
図4及び図5に示されるように,めくり部40(囲い線30)の下方の二隅には,左右のミシン目線33,34に延出部32dが形成されている。より詳しく説明すると,囲い線20の下方の二隅では,左右のミシン目線33,34の切込み部32と下スリット線36とが交わっている。そして,左右のミシン目線33,34の切込み部32は,下スリット線36を超えて,下方に向かって延出している。このミシン目線33,34の切込み部32の延出部分が,符号32dで示した「延出部」となる。このように延出部32dを形成しておくことで,上下左右のミシン目線33~36に沿ってめくり部40を切り離したときに,その下方の二隅をきれいに切り離しやすくなる。特に,めくり部40は上側から下側に向かって切り離されることが多いため,その下方の二隅に切込み部32の延出部32dを形成しておくことが有効である。延出部32dの長さは,例えば0.1mm以上又は0.5mm以上であればく,例えば0.1~5mm,0.5~3mmであることが好ましく,0.8~1.2mmであることが特に好ましい。
【0042】
図6及び図7は,図1から図5に示した実施形態とは異なる実施形態のマスクを示している。特に口当てシート21に設けられためくり部40の囲い線30の構成が,前述した実施形態のものとは異なっている。
【0043】
図6(a)に示した実施形態では,左辺33,右辺34,上辺35,及び下辺36からなる囲い線30のうち,上辺35のみがスリット線となっており,他の左辺33,右辺34,及び下辺36がミシン目線となっている。なお,囲い線30の上下二隅には円弧部37が設けられており,この円弧部37もスリット線で形成されている。このため,めくり部40を切り離す際には,上辺35に位置するスリット線側から下方に向かってめくり部40を引き下げることにより,他のミシン目線33,34,26を容易に破断させることができる。
【0044】
図6(b)に示した実施形態では,4辺からなる囲い線30のうち,下辺36のみがスリット線となっており,他の左辺33,右辺34,及び上辺35がミシン目線となっている。なお,囲い線30の上下二隅には円弧部37が設けられており,この円弧部37もミシン目線で形成されている。この場合,例えば上辺35に位置するミシン目線側からめくり部40をめくることとしてもよいし,下辺36に位置するスリット線側からめくり部40をめくることもできる。
【0045】
図6(c)に示した実施形態では,4辺からなる囲い線30のうち,左辺33及び右辺34がスリット線となっており,他の上辺35及び下辺36がミシン目線となっている。この場合,例えば上辺35に位置するミシン目線側からめくり部40をめくることとしてもよいし,左辺33又は右辺34に位置するスリット線側からめくり部40をめくることもできる。
【0046】
図7(a)に示した実施形態では,4辺からなる囲い線30のうち,上辺35のみがミシン目線となっており,他の左辺33,右辺34,及び下辺36がスリット線となっている。このように,ミシン目線を形成する箇所を最小限とし,スリット線によってめくり部40のほぼ全周を囲うことで,めくり部40がめくり易いものとなる。
【0047】
図7(b)に示した実施形態では,めくり部40の周囲が,左辺33,右辺34,及び下辺36の3辺からなる囲い線30によって画定されている。この場合,囲い線30の上辺に相当する位置(つまり左辺33と右辺34の上端の間)には,ミシン目線やスリット線は形成されておらず,めくり部40を口当てシート21に繋留する繋止部37が存在しているとみなすことができる。また,この実施形態では,めくり部40の周囲を囲う左辺33,右辺34,及び下辺36が全てスリット線で形成されている。この場合,スリット線で3辺を囲われためくり部40を上方に向かってめくり上げることで,その裏側に位置する予備口当てシート22を露出させることができる。また,めくり部40は上辺側に位置する繋止部37において口当てシート21に繋がったままとなるため,めくり部40をめくった後もゴミが発生することを回避できる。なお,図7(b)に示した実施形態の変形例として,左辺33,右辺34,及び下辺36をスリット線ではなく,ミシン目線で形成することも可能である。
【0048】
図7(c)に示した実施形態では,めくり部40の周囲が,左辺33,右辺34,及び上辺35の3辺からなる囲い線30によって画定されている。この場合,囲い線30の下辺に相当する位置(つまり左辺33と右辺34の下端の間)には,ミシン目線やスリット線は形成されておらず,めくり部40を口当てシート21に繋留する繋止部37が存在しているとみなすことができる。また,この実施形態では,囲い線30の左辺33及び右辺34がミシン目線で形成されており,上辺35がスリット線で形成されている。このため,スリット線である上辺35側からめくり部40を引き下げて,左辺33及び右辺34のミシン目線を破断させることで,めくり部40をめくって予備口当てシート22を露出させることができる。た,めくり部40は下辺側に位置する繋止部37において口当てシート21に繋がったままとなるため,めくり部40をめくった後もゴミが発生することを回避できる。なお,図7(c)に示した実施形態の変形例として,左辺33と右辺34をスリット線で形成し,上辺35をミシン目線で形成することもできる。
【0049】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は,マスクの製造業において好適に利用しうる。
【符号の説明】
【0051】
10…マスク 11…本体部
12…耳掛け部 13…隅融着部
14…融着線 15…ノーズクリップ
16…山折線 17…谷折線
21…口当てシート 21a…折込面
21b…非折込面 22…予備口当てシート
23…形状維持シート 24…フィルターシート
25…外装シート 30…囲い線
31…不切れ部 31a…左右の不切れ部
31c…上下の不切れ部 32…切込み部
32a…長尺の切込み部 32b…短尺の切込み部
32c…上下の切込み部 32d…延出部
33…左辺 34…右辺
35…上辺 36…下辺
37…繋止部 40…めくり部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7