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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】シリンダ変位制御システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/28 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
F15B15/28 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018215269
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020085022
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小田井 正樹
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】大野 諭
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆浩
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-264543(JP,A)
【文献】特開2005-054862(JP,A)
【文献】特開2010-159783(JP,A)
【文献】特開昭58-198738(JP,A)
【文献】特開昭61-215002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ及び該シリンダ内に配置されたピストンから成り、駆動液により駆動されるアクチュエータシリンダと、
該アクチュエータシリンダの前記シリンダ又は前記ピストンが移動することに伴う前記アクチュエータシリンダの変位を制御する制御装置と、
該制御装置の制御に合致するように、前記駆動液を前記アクチュエータシリンダに供給する配管と、
該配管及び/又は前記駆動液、前記配管の周囲環境の少なくとも1つの状態を観測する配管観測器とを備え、
前記制御装置は、前記アクチュエータシリンダの変位指令と前記配管観測器の観測結果とに基づき、前記配管に供給する駆動液の配管供給液量を制御するものであり、
前記配管観測器は前記配管の径を観測し、この配管の径から配管体積変化を演算して出力することを特徴とするシリンダ変位制御システム。
【請求項2】
請求項に記載のシリンダ変位制御システムにおいて、
前記制御装置は、前記配管観測器で演算して出力された前記配管体積変化と上位制御装置からのシリンダ変位指令に基づいて前記配管供給液量を算出し、この配管供給液量を駆動液として前記配管に供給することを特徴とするシリンダ変位制御システム。
【請求項3】
請求項に記載のシリンダ変位制御システムにおいて、
前記配管への前記駆動液は、前記配管上に設置され、前記駆動液を貯蔵しているタンクに接続されているポンプにより供給され、
前記ポンプは、前記タンク内の前記駆動液を前記配管に設置されている弁の開度に応じて前記配管に供給するものであり、
前記配管に設置されている流量計の観測した前記駆動液の流量を時間積分して配管供給液量の観測値を演算し、前記配管供給液量の指令値となるよう前記弁の開度を制御する弁制御器を備えていることを特徴とするシリンダ変位制御システム。
【請求項4】
請求項に記載のシリンダ変位制御システムにおいて、
前記配管上にポンプシリンダとポンプピストンから成るシリンジポンプを備え、
前記シリンジポンプは、前記ポンプピストンの変位に応じて前記ポンプシリンダ内の駆動液を前記配管に供給するものであり、
前記ポンプピストンの変位を観測するピストン変位観測器で観測した前記ポンプピストンの変位が、前記配管供給液量の指令値から演算した前記ポンプピストンの変位の指令値となるよう、ピストン駆動装置を駆動することで前記ポンプピストンを変位させるピストン変位制御器を備えていることを特徴とするシリンダ変位制御システム。
【請求項5】
シリンダ及び該シリンダ内に配置されたピストンから成り、駆動液により駆動されるアクチュエータシリンダと、
該アクチュエータシリンダの前記シリンダ又は前記ピストンが移動することに伴う前記アクチュエータシリンダの変位を制御する制御装置と、
該制御装置の制御に合致するように、前記駆動液を前記アクチュエータシリンダに供給する配管と、
該配管及び/又は前記駆動液、前記配管の周囲環境の少なくとも1つの状態を観測する配管観測器とを備え、
前記制御装置は、前記アクチュエータシリンダの変位指令と前記配管観測器の観測結果とに基づき、前記配管に供給する駆動液の配管供給液量を制御するものであり、
前記配管観測器は、配管条件観測器と環境条件観測器とから構成され、前記配管条件観測器で観測した観測結果の出力と前記環境条件観測器で観測した観測結果の出力とに基づいて配管体積変化を演算して出力し、この出力結果を前記制御装置に送信することを特徴とするシリンダ変位制御システム。
【請求項6】
請求項に記載のシリンダ変位制御システムにおいて、
前記配管条件観測器は、前記配管の径、前記駆動液の圧力、前記駆動液の温度、前記駆動液の成分の少なくとも1つを観測して出力するものであり、
前記環境条件観測器は、環境圧力、環境温度、環境湿度、環境明度、環境紫外線強度、環境放射線強度、雰囲気成分の少なくとも1つを観測して出力するものであることを特徴とするシリンダ変位制御システム。
【請求項7】
請求項又はに記載のシリンダ変位制御システムにおいて、
前記制御装置は、前記配管観測器で演算して出力された前記配管体積変化と上位制御装置からのシリンダ変位指令に基づいて前記配管供給液量を算出し、この配管供給液量を駆動液として前記配管に供給することを特徴とするシリンダ変位制御システム。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のシリンダ変位制御システムにおいて、
前記配管観測器は、前記配管上に複数個設置されていることを特徴とするシリンダ変位制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリンダ変位制御システムに係り、主に機構(例えば、建設用機械や原子力ロボット等)を駆動するために用いられる液圧駆動シリンダに好適なシリンダ変位制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ変位制御システムの一例として、例えば、特許文献1などに示すように、液圧駆動されるアクチュエータシリンダにより機構を変位する技術が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載の機構部やアクチュエータシリンダ自身を、所望の変位とするよう制御するためには、機構部やアクチュエータシリンダの変位を観測して、所望の変位となるまで駆動液を供給するなどすればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-127596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した液圧駆動されるアクチュエータシリンダによる制御方法は、過酷な動作環境で機構部やアクチュエータシリンダに変位センサを配置できない場合、或いは配置した変位センサが故障した場合などで、機構部やアクチュエータシリンダの変位を観測できない場合には、変位制御が不能となる恐れがある。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、液圧駆動されるアクチュエータシリンダの変位が観測できない場合であっても、アクチュエータシリンダ変位を精度よく制御することができるシリンダ変位制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリンダ変位制御システムは、上記目的を達成するために、シリンダ及び該シリンダ内に配置されたピストンから成り、駆動液により駆動されるアクチュエータシリンダと、該アクチュエータシリンダの前記シリンダ又は前記ピストンが移動することに伴う前記アクチュエータシリンダの変位を制御する制御装置と、該制御装置の制御に合致するように、前記駆動液を前記アクチュエータシリンダに供給する配管と、該配管及び/又は前記駆動液、前記配管の周囲環境の少なくとも1つの状態を観測する配管観測器とを備え、
前記制御装置は、前記アクチュエータシリンダの変位指令と前記配管観測器の観測結果とに基づき、前記配管に供給する駆動液の配管供給液量を制御するものであり、前記配管観測器は前記配管の径を観測し、この配管の径から配管体積変化を演算して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液圧駆動されるアクチュエータシリンダの変位が観測できない場合であっても、アクチュエータシリンダ変位を精度よく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のシリンダ変位制御システムの実施例1を示す概略構成図である。
図2】本発明のシリンダ変位制御システムの実施例1に採用される配管供給液量の制御システムの一例を示す図である。
図3】本発明のシリンダ変位制御システムの実施例1に採用される配管供給液量の制御システムの他の例を示す図である。
図4(a)】本発明のシリンダ変位制御システムの実施例1における効果の一例を示し、配管体積変化の補償を行わずシリンダ変位を制御した場合の特性図である。
図4(b)】本発明のシリンダ変位制御システムの実施例1における効果の一例を示し、配管体積変化の補償を行ってシリンダ変位を制御した場合の特性図である。
図5】本発明のシリンダ変位制御システムの実施例2を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のシリンダ変位制御システムついて説明する。なお、各図において同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明のシリンダ変位制御システムの実施例1の構成を示す図である。
【0012】
図1において、本実施例のシリンダ変位制御システム100は、駆動液により駆動されるアクチュエータシリンダ130と、配管供給液量等を制御する制御装置110、駆動液が流れる配管120、配管120の外径を計測する変位計や配管120内の液圧を計測する液圧計等の配管観測器140とから概略構成されている。
【0013】
アクチュエータシリンダ130は、シリンダ131とピストン132とから成り、シリンダ131は、ピストン132によって伸長室131aと短縮室131bとの2つの室に分けられる。
【0014】
図1の例では、配管120から駆動液が伸長室131aに供給されることで、シリンダ131の端部131cとピストン132の頭部132aとの距離であるシリンダ変位Xは増加し、一方、駆動液が伸長室131aから配管120に排出されることで、シリンダ変位Xは減少する。ピストン132は、建設用機械や原子力ロボット等に接続されている。
【0015】
配管120は、制御装置110の制御に合致するように、駆動液をアクチュエータシリンダ130に供給し、配管観測器140は、上記した変位計で配管120の外径等を計測することで配管120の膨張・収縮を観測し、この膨張・収縮による配管体積変化ΔVを演算して出力する(配管観測器140には演算機能がある)。
【0016】
制御装置110は、上位制御装置(図示せず)からのシリンダ変位指令Xrと配管体積変化ΔVに基づき、シリンダ変位Xをシリンダ変位指令Xrとする配管供給液量Qrを配管120に供給する。
【0017】
ここで、図1の例では、アクチュエータシリンダ130において駆動液が供給されるのは伸長室131aのみであるが、本発明の構成はその限りではない。例えば、駆動液は短縮室131bのみに供給される構成でもよい。この時、短縮室131bに駆動液が供給されるとシリンダ変位Xは減少し、排出されるとXは増加する。また、伸長室131aと短縮室131bの両方に駆動液が供給される構成でもよく、この場合は、配管120と配管観測器140が2系統配置される。
【0018】
また、配管観測器140は、配管120に対し複数配置されてもよい。配管120の複数個所で配管体積変化dVを観測することで、配管体積変化ΔVを高精度に推定でき、より精度の高いシリンダ変位制御を可能とする。
【0019】
次に、配管供給液量Qrを求める手段について、数式を用いて説明する。
【0020】
図1の例において、伸長室131aの有効断面積をAとすると、シリンダ変位Xの時に伸長室131aに満たされている駆動液の体積Qaは数1となる。
【0021】
【数1】
【0022】
従って、配管120が駆動液で満たされている場合、配管120が膨張・収縮しなければ、シリンダ変位Xを実現するために、制御装置110が配管120に供給した駆動液量である配管供給液量QrはQaとなる。
【0023】
このことから、配管120は、液圧によって膨張・収縮して配管体積変化ΔVを生じた場合、シリンダ変位Xを実現するための配管供給液量Qrは、数2となる。
【0024】
【数2】
【0025】
本実施例のシリンダ変位制御システム100は、シリンダ変位Xをシリンダ変位指令Xrとするよう制御している。従って、制御装置110は、例えば、数3に示す通り、シリンダ変位指令Xrと配管体積変化ΔVとに基づいて配管供給液量Qrを算出し、この配管供給液量Qrを配管120に駆動液として供給する。
【0026】
【数3】
【0027】
図2は、制御装置110において、配管供給液量Qrの供給を制御するシステムの一例を示す(この図2のシステムは、図1の制御装置110の中に組み込まれている)。図2では、アクチュエータシリンダ130に正圧を印加する系統のみを記載している。
【0028】
図2において、ポンプ114は、タンク115内の駆動液を弁113の開度に応じて配管120に供給する。弁制御器111は、流量計112の観測した駆動液流量を時間積分して配管供給液量の観測値を演算し、配管供給液量Qrの指令値となるよう弁113の開度を制御する。これにより、配管120に配管供給液量Qrの駆動液が供給できる。
【0029】
図3は、制御装置110において、配管供給液量Qrの供給を制御するシステムの他の例を示す。
【0030】
図3において、シリンジポンプ116は、ポンプピストン1162の変位Xpに応じてポンプシリンダ1161内の駆動液を配管120に供給する。ここで、配管供給液量Qrを実現するピストン変位Xprは、ポンプシリンダ1161の有効断面積Apを用いて数4より求まる。
【0031】
【数4】
【0032】
ピストン変位制御器119は、ピストン変位観測器118の観測したピストン変位Xpが、配管供給液量Qrの指令値から演算したピストン変位の指令値Xprとなるよう、ピストン駆動装置117を駆動することでポンプピストン1162を変位させる。これにより、配管120に配管供給液量Qrの駆動液が供給できる。
【0033】
なお、ピストン駆動装置117がポンプピストン1162を駆動する駆動力は、電気モータなどの電磁力に限るものではなく、液圧などでもよい。
【0034】
次に、配管観測器140が配管体積変化ΔVを観測する手段の例を説明する。
【0035】
先ず配管観測器140の一例として、変位計で配管120の外径Dを観測する。配管120内に液圧が印加されていない場合の配管120の外径をD0とし、配管120の肉厚δは液圧によって変化しないと仮定した場合、単位長さdL当たりの配管体積変化dVは数5となる。
【0036】
【数5】
【0037】
従って、長さLの配管120の配管体積変化ΔVは、数6より観測した配管120の外径Dを用いて観測できる。
【0038】
【数6】
【0039】
さらに、駆動液の液温などにより、駆動液は体積変化することがある。配管観測器140は液温を観測し、液温の上昇に基づいて駆動液体積変化を導出してもよい。配管単体の配管体積変化から、この駆動液体積変化の差をとるなどの方法で、駆動液体積変化を考慮した実質的な配管体積変化ΔVを求めることができる。なお、この駆動液体積変化と液温との関係は、例えば実験的に求めおけばよい。
【0040】
また、配管観測器140は、配管120の内径(D-δ)を観測しても配管体積変化ΔVを観測できることは言うまでもない。
【0041】
配管観測器140の別の例として、配管120内の液圧Pを観測してもよい。この例では、液圧により配管120に印加される力と配管120の復元力がつり合う場合、単位長さdLあたりの配管体積変化dVは、数7のとおり、液圧Pと環境圧力(配管120の周囲の圧力)P0との差に比例する。
【0042】
【数7】
【0043】
従って、長さLの配管120の配管体積変化ΔVは、数6より観測した液圧Pを用いて観測できる。なお、数7の比例係数Kは、使用する配管120に応じて理論的若しくは実験的に事前に求めておくことができる。
【0044】
図4(a)及び図4(b)は、本実施例のシリンダ変位制御システムにおける効果の一例を示す図である。
【0045】
図4(a)は、配管体積変化ΔVの補償を行わずシリンダ変位を制御した場合である。
【0046】
図4(a)に示すように、配管120の膨張・収縮によって、シリンダ変位はシリンダ変位指令より遅れ、変位指令に対してヒステリシスをもつ。
【0047】
図4(b)は、本発明により配管体積変化ΔVを補償してシリンダ変位を制御した場合である。
【0048】
図4(b)に示すように、配管体積変化ΔVを補償したことにより、シリンダ変位はシリンダ変位指令によく追従している。
【0049】
このように本実施例によれば、液圧駆動されるアクチュエータシリンダ130の変位制御システムにおいて、アクチュエータシリンダ130の変位を観測できない場合であっても、アクチュエータシリンダ130の変位を精度よく制御できる。
【0050】
また、アクチュエータシリンダ130によって駆動する機構部を含んだアクチュエータの変位制御においても、本実施例のシリンダ変位制御システム100を用いてアクチュエータシリンダ130の変位を制御することで、機構部を含んだアクチュエータの変位を精度よく制御できる。
【実施例2】
【0051】
図5は、本発明のシリンダ変位制御システムの実施例2の構成を示す図である。
【0052】
図5において、シリンダ変位制御システム100は、駆動液により駆動されるアクチュエータシリンダ130と、配管供給液量等を制御する制御装置110、駆動液が流れる配管120、後述する配管観測器140とから概略構成されている。
【0053】
アクチュエータシリンダ130は、シリンダ131とピストン132とからなり、シリンダ131はピストン132によって、伸長室131aと短縮室131bとの2つの室に分けられる。
【0054】
図5の例では、配管120から駆動液が伸長室131aに供給されることで、シリンダ131の端部131cとピストン132の頭部132aとの距離であるシリンダ変位Xは増加し、一方、駆動液が伸長室131aから配管120に排出されることで、シリンダ変位Xは減少する。ピストン132は、建設用機械や原子力ロボット等に接続されている。
【0055】
配管120は、制御装置110の制御に合致するように、駆動液をアクチュエータシリンダ130に供給する。
【0056】
配管観測器140は、配管条件観測器141と環境条件観測器142とからなり、配管条件観測器141の観測した配管120や駆動液の条件(後述する配管120の外径や配管120の内径、駆動液の液圧や液温、成分等)と、環境条件観測器142の観測した周囲環境の条件(後述する周囲環境の圧力や温度、湿度等、配管材料の硬化などの要因となる明度、紫外線強度、放射線強度、雰囲気成分等)とから、配管体積変化ΔVを演算して出力する。
【0057】
制御装置110は、シリンダ変位指令Xrと配管体積変化ΔVに基づき、シリンダ変位Xを変位指令Xrとする配管供給液量Qrを配管120に供給する。
【0058】
次に、配管観測器140において配管体積変化ΔVを観測する方法の一例を説明する。
【0059】
配管条件観測器141は、例えば、配管120の外径や配管120の内径、駆動液の液圧や液温、成分などうち1つ以上の物理量を観測する。一方、環境条件観測器142は、例えば、周囲環境の圧力や温度、湿度など、配管材料の硬化などの要因となる明度、紫外線強度、放射線強度、雰囲気成分(配管120の周囲の空気成分)などのうち1つ以上の物理量を観測する。
【0060】
例えば、上記の数7を用いて単位長さdLでの配管体積変化dVを演算する場合、配管条件観測器141の観測した液圧Pと、環境条件観測器142の観測した圧力P0とに基づいて配管体積変化dVが観測できる。環境条件観測器142により圧力P0を観測して用いることで、水中での駆動といった、大気圧と大きく異なる環境においても高精度に配管体積変化ΔVを観測できる。
【0061】
さらに、駆動液の成分及び液温などにより駆動液は、体積変化することがある。配管単体の配管体積変化から、この駆動液の体積変化の差をとるなどの方法で、駆動液の体積変化を考慮した実質的な配管体積変化ΔVを求めることができるので、この駆動液の体積変化を、例えば、実験的に求めておくことで、高精度に配管体積変化ΔVを観測できる。
【0062】
また、上記した数7における比例係数Kは、配管120の変形しやすさを表す係数であるため、配管120の材質によっては、駆動液の液温や周囲環境の温度などの条件により、変形しやすさが変わることがある。
【0063】
そこで、これら条件下での比例係数Kを、例えば、実験的に予め求めておくことで、様々な環境においても高精度に配管体積変化ΔVを観測できる。
【0064】
なお、配管観測器140は、配管120上に複数個配置されてもよい。また、1つの配管観測器140が、それぞれ複数の配管条件観測器141と環境条件観測器142とから構成されてもよい。
【0065】
配管120の複数個所、環境の複数個所の条件を観測することで、配管体積変化ΔVを高精度に推定でき、より精度の高いシリンダ変位制御が可能となる。
【0066】
このように本実施例によれば、液圧駆動されるアクチュエータシリンダの変位制御システムにおいて、アクチュエータシリンダの変位を観測できない場合にも、アクチュエータシリンダ変位を精度よく制御できる。
【0067】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
100…シリンダ変位制御システム、110…制御装置、111…弁制御器、112…流量計、113…弁、114…ポンプ、115…タンク、116…シリンジポンプ、1161…ポンプシリンダ、1162…ポンプピストン、117…ピストン駆動装置、118…ピストン変位観測器、119…ピストン変位制御器、120…配管、130…アクチュエータシリンダ、131…シリンダ、131a…伸長室、131b…短縮室、131c…シリンダの端部、132…ピストン、132a…ピストンの頭部、140…配管観測器、141…配管条件観測器、142…環境条件観測器。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5