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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】複合型不織布ワイパーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/498 20120101AFI20230125BHJP
   D04H 1/26 20120101ALI20230125BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20230125BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20230125BHJP
   D04H 5/03 20120101ALI20230125BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
D04H1/498
D04H1/26
D04H1/732
D04H3/16
D04H5/03
A47L13/16 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018223629
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020084385
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
(72)【発明者】
【氏名】村田 剛
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-179545(JP,A)
【文献】特開平05-286100(JP,A)
【文献】特開2005-087638(JP,A)
【文献】特開平08-269858(JP,A)
【文献】特開平05-253160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
A47K7/00-7/08
A47L13/00-13/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し一体化してある複合型の不織布ワイパーであって、
前記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含んで形成されており、
前記スパンボンド不織布の流れ方向に対して平行である複数の縦方向ライン上および前記流れ方向に対して直角である複数の横方向ライン上のぞれぞれで、直線を成し同じ間隔として前記複数の融着点が配置され、
上記縦方向ライン上と前記横方向ライン上とにおける前記間隔は、更に互いに同じ長さとなるように設定されており、
上記縦方向ラインおよび横方向ライン上で互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第1距離と、斜め方向において互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第2距離とが、異なるようにして前記融着点が配置されており、
前記融着点1個の面積が0.10~0.50mmであり、且つ、当該融着点の面積率が7~20%に設定され、
前記第1距離と前記第2距離とのいずれか短い方の距離が0.70~1.80mmに設定されている、ことを特徴とする複合型不織布ワイパーの製造方法であって、
前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとを水流交絡処理する水流交絡工程を少なくも含み、
前記水流交絡工程でウォータジェットを噴射するウォータジェットノズルの穴直径φが0.06~0.15mmであり、且つ前記ウォータジェットノズルの間隔が0.4~1.0mmであり、
前記水流交絡工程の前段に繊維飛散防止用の水分を付与するプレウェット工程を更に含む、ことを特徴とする複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項2】
前記第1距離が前記第2距離よりも短い、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項3】
前記第1距離が前記第2距離よりも長い、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項4】
スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し一体化してある複合型の不織布ワイパーであって、
前記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含んで形成されており、
前記スパンボンド不織布の流れ方向に対して平行である複数の縦方向ライン上および前記流れ方向に対して直角である複数の横方向ライン上のぞれぞれで、直線を成し同じ間隔として前記複数の融着点が配置され、
上記縦方向ライン上と前記横方向ライン上とにおける前記間隔については、互いに異なる長さとなるように設定されており、
上記縦方向ライン上で互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第1距離と、上記横方向ライン上で互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第2距離と、斜め方向において互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第3距離とを含み、
前記第1距離または前記第2距離と、前記第3距離が同じとなるようにして前記融着点が配置されており、
前記融着点1個の面積が0.10~0.50mmであり、且つ、当該融着点の面積率が7~20%に設定され、
前記第1距離と前記第2距離とのいずれか短い方の距離が0.70~1.80mmに設定されている、ことを特徴とする複合型不織布ワイパーの製造方法であって、
前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとを水流交絡処理する水流交絡工程を少なくも含み、
前記水流交絡工程でウォータジェットを噴射するウォータジェットノズルの穴直径φが0.06~0.15mmであり、且つ前記ウォータジェットノズルの間隔が0.4~1.0mmであり、
前記水流交絡工程の前段に繊維飛散防止用の水分を付与するプレウェット工程を更に含む、ことを特徴とする複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項5】
前記融着点の形状は、円形状、楕円形状および多角形形状からなる群から選択された1つである、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項6】
前記融着点同士の最短間隔が0.50~1.20mmに設定されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項7】
前記融着点の個数が10~150個/cmである、ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項8】
前記スパンボンド不織布を構成する繊維の繊維径が0.6~5.6デシテックスである、こと特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項9】
前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとの重量構成比であるスパンボンド不織布/パルプ繊維ウエブは、40/60~10/90(wt%)である、こと特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の複合型不織布ワイパーの製造方法
【請求項10】
前記パルプ繊維ウエブの坪量は30~70g/mである、こと特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の複合型不織布ワイパーの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを水流交絡させることによって得られる複合型の不織布ワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを含む複合型不織布によるワイパーは、パルプ繊維に基づく吸液性とスパンボンド不織布に基づく強度との両方を具備してなる不織布となるので、ウエスなどの工業用ワイパー、或いは手ぬぐい、タオルなどの対人用のワイパーとして、様々な用途で広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1で開示するように、パルプ繊維ウエブとスパンボンド不織布とを重ねた後に、高圧のウォータジェット(水流)を吹き付ける水流交絡処理によって一体化されている。ここでスパンボンド不織布は強度に優れるので製造された複合型不織布ワイパーの裏打ち層的な機能を果たす。一方、パルプ繊維ウエブは優れた吸液機能を備えている。よって、このような複合型不織布ワイパーは、水性、油性のいずれの液体に対しても吸収性が良好なパルプ繊維ウエブと、強度に優れるスパンボンド不織布との利点を併有している優れたワイパーとして消費者に提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2533260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1などで使用されているスパンボンド不織布(特許文献1では、不織連続フィラメント支持体と称している)については、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂をスパンボンド処理して得たものが広く採用されている。スパンボンド処理では、紡糸された樹脂繊維同士を点状の融着部分(以下、融着点)によって複数の箇所で接続している。これにより、スパンボンド不織布はシート強度を発現させ外形を維持している。
【0006】
上記融着点は、樹脂繊維が溶融固化した部分であり、スパンボンド不織布の強度を得るために重要な構成部である。しかし、上述したようにスパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとを水流交絡させることにより得られる複合型の不織布ワイパーでは以下で指摘するような改善点がある。
強度が適度にあり(丈夫で)、使用時に繊維脱落が少なく、また拭き取り性に優れた使用感の良好な複合不織布を得るためには、隣り合う融着点の間隔を短くし(単位面積当たりの融着点数を増やし)、面積率の大きいスパンボンド不織布を用いることが考えられる。しかし、水流交絡処理により複合型の不織布ワイパーを製造する場合、スパンボンド不織布の融着点へのパルプ繊維の交絡が不十分になり易い(融着点にはパルプ繊維が絡み難い)。よって、スパンボンド不織布の融着点の1つの面積が大きい程に、パルプ繊維交絡が不十分な部分が、小穴のように見えるので、完成したワイパーの外観(面感とも称され、不織布表面の見ため)が劣ることになる。その一方で、融着点の1つの面積が小さいと製造時にスパンボンド不織布に伸びが生じ易く、また寸法安定性に劣るので使用感も低下してしまう。
そして、融着点の単位面積当たりの面積率を変えないよう、1つ1つの融着点の面積を大きくし、隣り合う融着点の間隔を長く設計することも考えられる。しかし、スパンボンド不織布は、融着点やその近傍は強度が高いので寸法安定性が高く、これに対して融着点から遠い非融着領域では寸法安定性が相対的に低いという傾向がある。よって、融着点の間隔が長くなると寸法安定性の悪い領域が拡大し、また使用時において繊維脱落が増加して使用感も劣化してしまう。
【0007】
そして更に、ワイパーに対しては、水、油等を確実に拭き取ることができる吸液性について強い要請があるので、十分なパルプ繊維ウエブを含んでいる複合型不織布ワイパーに設計されていることが望ましい。
上述したように、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとによる複合型不織布ワイパーでは、複数の構成要素が複雑に影響し合っているので、従来にあっては外観および使用感が共に優れるワイパーを設計することが困難であった。
【0008】
よって、本発明の目的は、優れた外観および使用感が両立した新規な複合型不織布ワイパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し一体化してある複合型の不織布ワイパーであって、
前記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含んで形成されており、
前記スパンボンド不織布の流れ方向に対して平行である複数の縦方向ライン上および前記流れ方向に対して直角である複数の横方向ライン上のぞれぞれで、直線を成し同じ間隔として前記複数の融着点が配置され、
上記縦方向ライン上と前記横方向ライン上とにおける前記間隔は、更に互いに同じ長さとなるように設定されており、
上記縦方向ラインおよび横方向ライン上で互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第1距離と、斜め方向において互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第2距離とが、異なるようにして前記融着点が配置されており、
前記融着点1個の面積が0.10~0.50mmであり、且つ、当該融着点の面積率が7~20%に設定され、
前記第1距離と前記第2距離とのいずれか短い方の距離が0.70~1.80mmに設定されている、ことを特徴とする複合型不織布ワイパーにより達成できる。
【0010】
ここで、前記第1距離が前記第2距離よりも短いものとしてもよい。
また、前記第1距離が前記第2距離よりも長いものとしてもよい。
【0011】
また上記目的は、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し一体化してある複合型の不織布ワイパーであって、
前記スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含んで形成されており、
前記スパンボンド不織布の流れ方向に対して平行である複数の縦方向ライン上および前記流れ方向に対して直角である複数の横方向ライン上のぞれぞれで、直線を成し同じ間隔として前記複数の融着点が配置され、
上記縦方向ライン上と前記横方向ライン上とにおける前記間隔については、互いに異なる長さとなるように設定されており、
上記縦方向ライン上で互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第1距離と、上記横方向ライン上で互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第2距離と、斜め方向において互いに隣接している前記融着点同士の重心間の距離である第3距離とを含み、
前記第1距離または前記第2距離と、前記第3距離が同じとなるようにして前記融着点が配置されており、
前記融着点1個の面積が0.10~0.50mmであり、且つ、当該融着点の面積率が7~20%に設定され、
前記第1距離と前記第2距離とのいずれか短い方の距離が0.70~1.80mmに設定されている、ことを特徴とする複合型不織布ワイパーによっても達成される。
【0012】
そして、前記融着点の形状は、円形状、楕円形状および多角形形状からなる群から選択された1つとすることができる。
【0013】
前記融着点同士の最短間隔が0.50~1.20mmに設定されているのが好ましい。
【0014】
また、前記融着点の個数が10~150個/cmとするのが好ましい。
また、前記スパンボンド不織布を構成する繊維の繊維径が0.6~5.6デシテックスであるのが好ましい。
また、前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとの重量構成比であるスパンボンド不織布/パルプ繊維ウエブは、40/60~10/90(wt%)であるのが好ましい。
そして、前記パルプ繊維ウエブの坪量は30~70g/mであるのが好ましい。
【0015】
上記目的は、上記いずれかに記載の複合型不織布ワイパーを製造する方法であって、
前記スパンボンド不織布と前記パルプ繊維ウエブとを水流交絡処理する水流交絡工程を少なくも含み、
前記水流交絡工程でウォータジェットを噴射するウォータジェットノズルの穴直径φが0.06~0.15mmであり、且つ前記ウォータジェットノズルの間隔が0.4~1.0mmである、こと特徴とする複合型不織布ワイパーの製造方法によっても達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、外観および使用感に優れる複合型不織布ワイパーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る複合型不織布ワイパーに用いるスパンボンド不織布における融着点の配置パターンを説明するために模式的に示した図であり、(a)は完全整列タイプの配置パターン図、(b)は市松模様タイプの配置パターン図である。
図2】融着点の形状を楕円形状とした場合について、図1と同様に示した図である。
図3】本発明に係る複合型不織布ワイパーに用いるスパンボンド不織布における融着点の他の配置パターンを説明するために模式的に示した図であり、(a)は第1の正六角形タイプの配置パターン図、(b)は第2の正六角形タイプの配置パターン図である。
図4】本発明に係る複合型不織布ワイパーの製造装置について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る複合型の不織布ワイパーについて、図を参照して説明する。本発明による複合型不織布ワイパーは、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウエブを積層し、一体化された不織布である。採用するスパンボンド不織布が特徴的な構成を備えているので、図1を参照して、先ずこの点の構成について説明する。
【0019】
本発明者は、上記した融着点による問題を詳細に検討し、スパンボンド不織布SWに形成する融着点MPの配置パターンや性状を所定範囲に設計することで、外観および使用感に優れた複合型不織布を得られることを確認して本発明に至ったものである。
図1(a)及び(b)は、本発明に係る複合型の不織布ワイパーで用いるスパンボンド不織布が満すのが好ましい、融着点の配置パターン例を説明するために拡大して示した模式図である。
図1では、スパンボンド不織布SWのスパンボンド製造時の流れ方向(搬送方向)MDと、この流れ方向MDに対して直角な幅方向CDを示してある。また複数の符号MPは、個々の融着点を示している。ここでは、本発明ポイントの理解を容易とするため、説明便宜上、図1(a)のスパンボンド不織布をSW-1そしてその融着点をMP-1、また図1(b)のスパンボンド不織布をSW-2そしてその融着点をMP-2として区別して図示している。
【0020】
図1(a)及び(b)で示すように、スパンボンド不織布SW(SW-1、SW-2)上のいずれの融着点MP-1、融着点MP-2も、流れ方向MDに対して平行である複数の縦方向ラインLL及び幅方向CDに対して平行である複数の横方向ラインTL上のぞれぞれで、直線を成し同じ間隔で融着点MP(MP-1とMP-2のいずれに関しても)が配置されている。しかも、縦方向ラインLL及び幅方向CDにおける、間隔(縦方向ラインLL及び横方向ラインTLにおいて隣接している融着点間の距離)は互いに同じ長さとなっている。
図1(a)及び(b)に示すいずれの融着点の配置パターンも、線対称性および点対称性を有し、平面全体に亘り均一に複数の融着点MPが配置されているという点で共通しており、このような融着点配置パターンを有するスパンボンド不織布を用いて、複合型不織布を形成してあることが本発明の特徴の1つとなっている。
更に図1(a)、(b)で示しているそれぞれのパターンについてより詳細に説明する。
【0021】
図1(a)で示す配置パターンは、融着点MPが縦および横方向で列がずれること無く完全に整列している完全整列タイプの配置パターンであり、例えば1つの融着点MP-1aに着目すると、その上下、左右に隣接する4つの融着点MP-1とは第1の距離FDを持って配置されている。ここでの距離は、所定の形状に設計される融着点(例示しているのは円形形状)の重心間の距離である。
【0022】
更に、融着点MP-1aの斜め4方向ADにおいて隣接する4つの融着点MP-1に着目すると、融着点MP-1aと融着点MP-1とは第2の距離SDを持って配置されている。
図1(a)で示す完全整列タイプの配置パターンでは第1の距離FDが第2の距離SDよりも短いという特徴をもって特定されることになる。
【0023】
次に、上記図1(a)の完全整列タイプの配置パターンに対して、図1(b)で示す融着点配置パターンは、直前、直後の融着点MPの位置が半距離分ずれた状態にして整列された市松模様タイプの配置パターンである。図1(a)の場合と同様に、1つの融着点MP-2aに着目し、その上下、左右に隣接する4つの融着点MP-2との距離を第1の距離FDとし、また融着点MP-2aの斜め4方向ADにおいて隣接する4つの融着点MP-2との距離を第2の距離SDとする。図1(b)で示す市松模様タイプの配置パターンでは、第1の距離FDが第2の距離SDよりも長いという特徴をもって特定されることになる。
【0024】
本発明に係る複合型不織布ワイパーでは、一例として示した、図1(a)の完全整列タイプまたは図1(b)の市松模様タイプの配置パターンに基づいて融着点が配置されているスパンボンドSWを好適に用いていることができる。
そして、前記融着点MP、1個の面積が0.10~0.50mmであり、且つ、当該融着点の面積率が7~20%に設定されており、更に、前記第1距離FDと前記第2距離SDとで短い方の距離が0.70~1.80mmに設定されていること、即ち図1(a)の完全整列型の場合は第1距離FDが0.70~1.80mm、また図1(b)の市松模様型の場合は第2距離SDが0.70~1.80mmに設定してあるとスパンボンド不織布SWとされている。
上記条件を満たすスパンボンド不織布SWを用い、水流交絡により複合型不織布を形成すると、外観および使用感に優れる複合型不織布ワイパーを得ることができる。
【0025】
ところで、スパンボンド不織布について、紡糸された樹脂繊維同士を留めるため、熱エンボス装置等の加熱装置を用いて、樹脂繊維の一部をスポット的に加熱溶融した後に固化させた部分が上述した融着点である。本発明で用いるスパンボンド不織布SWにおける融着点については上述した様に好ましい配置が規定され、その形状についても好ましい形状がある。
しかながら、実際に製造されたスパンボンド不織布に配置された融着点の様子を微視的に観察すると、予定した位置から若干ずれた位置に融着点が確認される場合もある。そこで、上述した短い方の距離(図1(a)の完全整列タイプでは第1の距離FD、図1(b)の市松模様タイプでは第2の距離SD)を次にように算出するのが好ましい。例えば隣接する融着点に欠損がない融着点25個について、その周囲の融着点4か所との距離(合計100か所)を測定し、その100か所中での最大値と最小値との誤差範囲が例えば0.30mm以下に収まっている場合に、上述した完全整列型あるいは市松模様型の配置パターンとなっていると見なす。そして、上記100か所の平均値が0.70~1.80mmであることをスパンボンド不織布の条件とする。
また、使用する加熱装置によっては予定した融着点形状(例えば、円形形状)とは異なる欠損、一部欠けが生じた形状(例えば三日月形状)の融着点が確認される場合もある。そこで、例えば単位面積で隣り合う融着点100個(単位面積はスパンボンド不織布毎に変動する)を観察し、7割以上が予定した正規の形状であることを更なる条件とするのが好ましい。
上記のような条件を満たすスパンボンド不織布は全体の外観として(視覚的に見て)、完全整列型或いは市松模様型の配置パターンと認めることができ、融着点が設計した適正な形状を有しているスパンボンド不織布と見なすことができる。
【0026】
図2は融着点MPの形状を図1に示した円形形状から楕円形状に変更した場合を示しており、図2(a)は図1(a)に対応した完全整列タイプの配置パターン、図2(b)は図1(b)に対応した市松模様タイプの配置パターンである。
図2に示すように融着点MPの形状を楕円形状に変更しても、円形形状の場合と同様の効果を期待できる。楕円形状の場合には重心(図形中心)の周りに回転することで楕円の姿勢が変化する(図2では楕円形状の長軸が約30度傾いた状態を示している)が、図1と同様に中心間の距離が一定であれば、融着点MPの傾き(回転角)の影響は無視することができる。
図2では、融着点MPの形状を楕円形状とした場合を例示したが、他に正方形形状、五角形、六角形、星形形状等の多角形形状に形成してもよい。
【0027】
更に、図3を参照して、スパンボンド不織布に採用できる、融着点の配置パターンの他の例について説明する。図3は、図1と同様に示した、融着点の配置パターンの他の例を説明するために拡大して示した模式図である。
図3で示す配置パターンは、図1(b)で示している市松模様タイプの配置パターンの変形例の一種と見ることができる。すなわち、直前、直後の融着点MPの位置MPが半距離分ずれた状態にある。
【0028】
しかし、その一方で、図3(a)見ると、縦方向ラインLL上と前記横方向ラインTL上とにおける、隣接する融着点の間隔については、互いに異なる長さに設定されている。より具体的には、例えば1つの融着点MP-3aに着目すると、縦方向ラインLLでの第1の距離FDと、横方向ラインTLでの第2の距離SDとの長さが異なっている。より詳細には第1の距離FDが第2の距離SDよりも短い。
そして、融着点MP-3aの斜め4方向ADにおいて隣接する4つの融着点MP-3に着目すると、融着点MP-3aと融着点MP-3とは第3の距離TDを持って配置されている。そして、ここでは短い方の第1の距離FDと第3の距離TDとが同じ距離となっている。
このような条件を満たす配置パターンは、図3(a)中において破線で示すように、融着点MP-3aを中心として、短い距離にある周囲の融着点6個が等しい中心角とされた第1の正六角形状タイプの配置パターンとなる。
【0029】
そして、図3(b)は、図3(a)と第1の距離FDおよび第2の距離SDの長短関係が逆の場合を例示している。具体的には、図3(b)は第2の距離SDが第1の距離FDがより短い、第2の正六角形タイプの配置パターン図を示している。
融着点MP-4aの斜め4方向ADにおいて隣接する4つの融着点MP-4に着目すると、融着点MP-4aと融着点MP-4とは第3の距離TDを持って配置されている。そして、ここでは短い方の第2の距離SDと第3の距離TDとが同じ距離となっている。
このような条件を満たす配置パターンも、図3(b)中において破線で示すように、融着点MP-4aを中心として、短い距離にある周囲の融着点6個が等しい中心角とされた正六角形状を形成するように融着点が配置されている。
図3(b)で示される正六角形状は、図3(a)に示される正六角形状を90度回転させた図形に等しい。
【0030】
なお、図3で示す正六角型のパターン配置の場合、ある1つの融着点MPに対して、周囲に接近した短い距離にある6点が存在している。
前述したように、融着点間の距離の特定条件に関して、図1で例示した配置の場合は例えば融着点25個について、接近した短い距離にある融着点4か所との距離(合計100か所)の距離を測定し、距離100点間の最大値-最小値の値(誤差範囲)が0.30mm以下に収まっていることを条件とした。
これに対して図3で例示している配置の場合は、接近した短い距離にある融着点6か所との距離(合計150か所)の距離を測定し、距離150点間の最大値-最小値の値(誤差範囲)が0.30mm以下に収まっていることを条件とするのが好ましい。
【0031】
融着点MP-3、MP-4に関する他の条件は、前述した融着点MP-1、MP-2と同様でよい。上記条件を満たすスパンボンド不織布SW-3、SW-4を用い、水流交絡により複合型不織布を形成すると、外観および使用感に優れる複合型不織布ワイパーを同様に得ることができる。
【0032】
更に以下において、上記融着点MPに関して、好ましい条件について説明する。
上記融着点MPについて、互いに最接近している融着点MPの最短間隔(一方の融着点MPの表面から隣接する他方の融着点MPの表面までの距離)が0.50~1.20mmに設定されているのが好ましい。
そして、融着点は単位面積当たり、10~150個/cmとするのが好ましい。
【0033】
本発明の複合型不織布ワイパーでは、上記で説明した条件を満たすスパンボンド不織布の上に、パルプ繊維ウエブを積層して一体化されている。そして、本複合型不織布ワイパーで使用されているパルプ繊維ウエブについては、坪量が30~70g/mに設定されている。これにより本発明の複合型不織布ワイパーは、外観や使用感に優れるだけでなく、十分な吸液性も具備している複合型不織布ワイパーとすることができる。
そして、上記スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとの重量構成比(スパンボンド不織布/パルプ繊維ウエブ)は40/60~10/90(wt%)とするのが好ましい。
前記スパンボンド不織布を構成する繊維の繊維径は0.6~5.6デシテックスとするのが更に好ましい。
なお、上記本発明に係る複合型不織布ワイパーでは、例えば、パルプ平均繊維長1.0~5.0mmであるパルプを用いて、パルプ繊維ウエブを形成するのが好ましい。具体的には、パルプ繊維ウエブをラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファーからなる群から選択された針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の繊維を用いて形成するのが好ましい。いずれか1つのパルプ繊維によるパルプ繊維ウエブとしてもよいし、2つ以上を混合して形成したパルプ繊維ウエブとしてもよい。
また、スパンボンド不織布を構成する合成繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等から選択することができ、ポリプロピレンを用いるのが好ましい。
【0034】
(実施例)
更に、図1で例示している配置パターンと所定条件に従った融着点が設定されているスパンボンド不織布を用いて製造した実施例1~5の複合型不織布ワイパーおよびその比較例1~4について、外観と使用感について下記の基準で評価した。
外観評価:複合型不織布ワイパー表面の小穴(スパンボンド不織布の融着点がむき出し
ている部分)の有無で評価した。
特に優れたもの(優◎)、問題のない外観(良〇)、小穴が目立ち外観不良なもの(不可×)とした。
使用感:1)拭き取り易さ、及び2)繊維脱落の状態から評価した。
1)拭き取り易さ:上記条件のスパンボンド不織布を用いた複合型不織布ワイパーの、拭き取り易さに基づいて評価した。適度に柔らかく拭き取りやすい(優◎)、問題のない拭き取りやすさ(良〇)、強度が弱く破れ易い、または強過ぎて拭き取り難い(不可×)とした。
2)繊維脱落の状態:目視による判断で、繊維の脱落が少ない(良〇)、繊維の脱落が多く、拭き取り後対象物に残る(不可×)とした。
【0035】
実施例1~5及び比較例1~4について、融着点の配置、融着点の1つの面積(mm)、面積率(%)、短い方の融着点間距離、そして融着点の形状について、下記表1、表2のように設定してあるスパンボンド不織布を用い、エアレイド装置により製造したパルプ繊維ウエブを載せて複合型不織布ワイパーを製造した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
上記表1に示すように、実施例1~5は製品ワイパーとして提供できるものであるが、表2に示す比較例1~4では外観評価、使用感の官能評価のいずれかで不可であった。
上記実施例1~5によると、融着点の配置パターンが完全整列型或いは市松模様型のいずれかであり、そして融着点1個の面積が0.10~0.50mmであり、且つ、当該融着点の面積率が7~20%、また第1距離FDと前記第2距離SDとのいずれかの短い方の距離が0.70~1.80mmの範囲に設定されている。
なお、融着点の形状を円形、楕円、また正方形、長方形、五角形等の多角形としたが、形状についての有意差は確認されなかった。
なお、図3に例示した融着点の配置パターンが正六角型となる場合についても、上記完全整列型および市松模様型と同様の効果を期待することができる。
【0038】
以下、更に、上述した本発明に係る複合型不織布ワイパーを製造するのに好適は製造装置について、図を参照して説明する。
先ず、不織布ワイパー製造装置1の概略構成を説明する。図4に示す製造装置1は、上流側にエアレイド装置2、スパンボンド不織布を供給するスパンボンド不織布供給装置3、そしてサクション装置4が配設されている。サクション装置4はエアレイド装置2の下側に対向するように配置されている。
ウエブの搬送方向TDで、これらの装置2、3、4より下流には、上流側から順に、水流交絡処理を行うためのウォータジェットを噴射する水流交絡装置5、サクション装置6、乾燥装置7が配置されている。上記乾燥装置7の下流には連続して製造される複合型不織布ワイパーWPを巻き取るための巻取装置8が更に設けてある。
【0039】
上記エアレイド装置2は、繊維同士が密集しシート状となっている原料パルプRPをパルプ繊維に解繊する解繊機21や、図示しない送風機を備えて解繊されたパルプ繊維PFをエアレイドホッパ23へと搬送するダクト22を有している。
【0040】
また、上記ダクト22よりも下流側にはエアレイドホッパ23が配置されている。このエアレイドホッパ23の内部では、解繊状態にあるパルプ繊維が分散しながら降下し、下面に設定した積層位置24に徐々に積み上りパルプ繊維ウエブPFWが形成されるように設計してある。
上記積層位置24の下側にはサクション装置4が対向配備してある。より詳細には、サクション装置4は装置本体41の上面にサクション部42を有しており、サクション部42が上記パルプ繊維ウエブPFWに吸引力(負圧)を作用させるべく積層位置24に対して設定してある。
なお、図4では、エアレイドホッパ23とサクション装置本体41とを1つずつ一段での配置として、パルプ繊維ウエブPFWを形成する場合を例示している。しかし、これに限らず、上記パルプ繊維ウエブPFWの目付(坪量)や製造速度に応じて、上記エアレイドホッパ23とサクション装置本体41を2つ以上の多段とする配置に変更してもよい。
【0041】
また、サクション装置4の周囲にはウエブ搬送用の搬送ワイヤ43が配設してある。搬送ワイヤ43は、積層位置24においてパルプ繊維PFが堆積したパルプ繊維ウエブPFWが載置可能で、これを下流側に搬送するように配置されている。ただし、パルプ繊維ウエブPFWは直接、搬送ワイヤ43上に載置されない。これについては、後述の説明で明らかとなる。
搬送ワイヤ43はサクション部42の吸引力が、反対側(上側)に及ぶような目開き形態(メッシュ)で形成されている。
【0042】
上記エアレイド装置2の下側で、サクション装置4よりも上流側に、スパンボンド不織布供給装置3が配置してある。このスパンボンド不織布供給装置3には、予め準備されたスパンボンド不織布SWがロール状とされてセットされている。すなわち、前述したように、従来のスパンボンド不織布よりも相対的に面積が小さく、しかも、面積率が所定範囲内にあるという条件を満している融着点により繊維同士が接続されているスパンボンド不織布SWがロール状とされており、これがスパンボンド不織布供給装置3から引出され、上述した搬送ワイヤ43に乗って上記積層位置24へと搬送されるようになっている。
また、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウエブとの重量構成比である、スパンボンド不織布/前記パルプ繊維ウエブは40/60~10/90(wt%)に調整しておくのが好ましい。
【0043】
積層位置24に位置した、スパンボンド不織布SWの上に、前述したパルプ繊維ウエブPFWが載置される。その際に、積層位置24ではサクション装置4のサクション部42による吸引力が搬送ワイヤ43を通過し、その上のスパンボンド不織布SWおよびパルプ繊維ウエブPFWに作用する。よって、スパンボンド不織布SWとパルプ繊維ウエブPFWとが積層された状態となっている予備的積層体PWeb(積層ウエブ)が下流側へと搬送される。
上記のように予備的積層体PWebが形成されるときに、スパンボンド不織布SW上へのパルプ繊維ウエブPFWの供給量を制御することで、本装置で製造される複合型不織布ワイパーに含まれるパルプ繊維ウエブPFWの坪量が30~70g/mとなるように設計してある。パルプ繊維ウエブPFWの坪量は、ウエブの搬送速度やパルプ繊維ウエブPFWの時間当たりの供給量などを適宜に調整し、製造された複合型不織布ワイパーのパルプ繊維ウエブPFWの坪量を確認することで、坪量が所望の範囲となるように設定すればよい。
【0044】
上記した予備的積層体PWebは、サクション装置4の吸引力によって、吸引圧縮されたことにより積層状態が維持されている。このとき上側のパルプ繊維ウエブPFWの繊維が密にされた状態ではある。しかし、このまま予備的積層体PWebを下流側の水流交絡装置5内に搬送投入すると、ウォータジェット(高圧の水流)によってパルプ繊維PFの一部が舞い上がるおそれがある。
そこで、本製造装置1では、予備的積層体PWebを上下から挟んでスパンボンド不織布SW上でのパルプ繊維ウエブPFWの載置状態を安定化させる為の挟持ローラ28、そして水流交絡装置5の上流側に繊維飛散防止用に水分を付与するプレウエット装置30が配備してある。プレウエット装置30は、好適には、予備的積層体PWebの上方からウォータミストを吹き付ける噴霧ノズル31と予備的積層体PWebの下側(すなわち、パルプ繊維ウエブPFWの下面)から吸引力を印加するサクション装置32とを含んで構成されている。
【0045】
なお、図4では、上記のように水流交絡装置5前にプレウエット装置30を新たな装置として設ける場合を例示しているが、これに限らない。水流交絡装置5に含まれる後述するウォータジェットヘッド51とサクション装置52とからなるセットの複数について、先頭に位置するセットを上記プレウエット装置30として流用するような設計変更をしてもよい。この場合には先頭のウォータジェットヘッド51から低圧のウォータミストが噴霧されるように調整すればよい。
水流交絡処理を行うのに十分な、ウォータジェットヘッド51とサクション装置52とのセット数が確保されている水流交絡装置5の場合、上記のように先頭のウォータジェットヘッド51とサクション装置52をプレウエット装置として活用することは、装置設備コストの抑制に効果的である。
【0046】
そして、水流交絡装置5では、前処理部となる挟持ローラ28およびプレウエット装置30の処理を受けた予備的積層体PWebに高圧のウォータジェットを吹き付けることによりパルプ繊維同士の交絡を促進する。これにより上側に位置するパルプ繊維ウエブPFW層と下側に位置するスパンボンド不織布SW層との一体化が促進される(水流交絡処理)。
図4で例示的に示している水流交絡装置5は、搬送方向TDに沿って多段(図4では例示しているのは4段)にウォータジェットヘッド51が配置されている。
なお、図4では、搬送方向TDに対して直角な方向(ウエブの幅方向)において延在しているウォータジェットヘッド51に設けたノズルの様子は図示していないが、幅方向において複数のウォータジェットノズルが適宜の位置に配置してある。このウォータジェットノズルの穴直径φは、好ましくは0.06~0.15mmである。また、ウォータジェットノズルの間隔は0.4~1.0mmとするのが好ましい。
【0047】
上記水流交絡処理をする際の水圧は、パルプ繊維ウエブPFWとスパンボンド不織布SWとの坪量を勘案して設定するのが望ましい。例えば、1~30MPaの範囲において選択するのが好ましい。
【0048】
そして、上記ウォータジェットヘッド51と対向するように、サクション装置52が配設してある。ウォータジェットヘッド51から出る高圧のウォータジェットを上側に位置しているパルプ繊維ウエブPFWに吹き付けつつ、下側に位置しているスパンボンド不織布SWの下側にサクション装置52の吸引力を作用させる。ウォータジェットヘッド51とサクション装置52との協働作用によって、パルプ繊維ウエブPFW側のパルプ繊維が下側のスパンボンド不織布SWに入り込んだ状態や、スパンボンド不織布SWを貫通して反対側にまで至った状態などが形成されると推定される。その作用により2つの層の一体
化が促進される。
【0049】
水流交絡装置5にも、搬送ワイヤ55が配設してある。搬送ワイヤ55は前処理部28、30の下流で予備的積層体PWebを受けて、水流交絡装置5内へと搬送する。搬送ワイヤ55は水流交絡装置5のウォータジェットヘッド51とサクション装置52との間を、上流側から下流に向かって通過するように配設されている。
よって、搬送ワイヤ55上を搬送される予備的積層体PWebは、搬送方向TDで下流に向かう程に、より多くの水流交絡処理を受けることになり、水流交絡装置5を出るときには上側のパルプ繊維ウエブPFW層と下側のスパンボンド不織布SW層との十分な交絡処理が実現される。
水流交絡装置5を出た直後の不織布にあっては、ウエット状態にあり、パルプ繊維同士などの結合は十分に確立されてはいない。
【0050】
そこで、図4で示すように、水流交絡装置5の下流側にはウエブに残留する水分を吸引除去し、その後に乾燥を行って、不織布ワイパーWPの製造を完了するためのサクション装置6および乾燥装置7が配備してある。このように不織布ワイパーWPの製造の後段で、サクション装置6および乾燥装置7による脱水、乾燥を行うと効率よく不織布を製造でき、また、製造される水流交絡後の不織布に大きな外圧を掛けることなく乾燥した不織布を製造できるので、嵩高感のある製品に仕上げることができる。
サクション装置6は、例えばバキューム式で水流交絡後の不織布を脱水する。乾燥装置7は非圧縮型のドライヤ、好適にエアスルードライヤを採用することが好ましい。図4で、エアスルードライヤの回転可能なドライヤ本体71は筒状体であり、その周表面には多数の貫通孔が設けてあり、図示しない熱源で加熱された熱風がドライヤ本体の外周から中心部側に向かって吸い込む構成とするのがよい。
このように連続的に製造される複合型の不織布ワイパーWPは巻取装置8のロール81に巻取られて一連の工程が完了する。
【0051】
以上で説明した不織布ワイパー製造装置1によると、外観や使用感に優れると共に、十分な吸液性も備えた、本発明に係る複合型不織布ワイパーを効率良く製造することができる。
なお、図4による製造装置では、エアレイド装置2を用いて、パルプ繊維を解繊して徐々に積層することによりパルプ繊維ウエブを得ている。パルプ繊維ウエブは湿式抄紙シートの製造法を応用して製造することができるが、上記のようにエアレイド装置2を用いた乾式によりパルプ繊維ウエブを製造すると製造設備を簡素化して、より効率良く本発明に係る複合型不織布ワイパーを製造できる。
【0052】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 不織布ワイパー製造装置
2 エアレイド装置
3 スパンボンド不織布供給装置
4 サクション装置
5 水流交絡装置
6 サクション装置
7 乾燥装置
8 巻取装置
21 解繊機
22 ダクト
23 エアレイドホッパ
24 積層位置
28 挟持ローラ
30 プレウエット装置
31 噴霧ノズル
32 サクション装置
41 サクション装置本体
42 サクション部
43 搬送ワイヤ
51 ウォータジェットヘッド
52 サクション装置
55 搬送ワイヤ
SW(SW-1、SW-2、SW-3、SW-4) スパンボンド不織布
MP(MP-1、MP-2、MP-3、MP-4) 融着点
PF パルプ繊維
PFW パルプ繊維ウエブ
PWeb 予備的積層体(積層ウエブ)
WP 複合型不織布ワイパー
TD 搬送方向
MD 流れ方向
CD 幅方向
LL 縦方向ライン
TL 横方向ライン
FD 第1の距離
SD 第2の距離
TD 第3の距離
図1
図2
図3
図4