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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/00 20060101AFI20230125BHJP
   B63H 25/38 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
B63H25/00 Z
B63H25/38 B
B63H25/38 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018229624
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020090233
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000129851
【氏名又は名称】株式会社ケイセブン
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗林 定友
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 紀幸
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第5833278(JP,B1)
【文献】特開2009-120169(JP,A)
【文献】特開2003-26096(JP,A)
【文献】特開昭57-110598(JP,A)
【文献】M. Fukazawa, S. Turkmen, A. Marino, N. Sasaki,“Full-Scale GATE RUDDER Performance obtained from Voyage Data”,Paper presented at A. Yuecel Odabasi Colloquium Series, Istanbul, Turkey,TR,ISTANBUL TECHNICAL UNIVERSITY,2018年11月,p.71-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/00-25/38, 5/15- 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船のプロペラの左側に設けられる左舷側舵(2)と、前記プロペラの右側に設けられる右舷側舵(3)を備える操舵装置であって、
背面視において、前記左舷側舵(2)を上下方向に延在する第1左舵部(10)と、前記第1左舵部(10)の上部から右側に延在する第2左舵部(11)で形成し、前記第2左舵部(11)の右部に、上下方向に延在する左舵軸(12)を立設し、
背面視において、前記右舷側舵(3)を上下方向に延在する第1右舵部(20)と、前記第1右舵部(20)の上部から左側に延在する第2右舵部(21)で形成し、前記第2右舵部(21)の左部に、上下方向に延在する右舵軸(22)を立設し、
平面視において、前記左舵軸(12)と右舵軸(22)をプロペラの外周部又はプロペラの外周部よりも上流側に設け、
船を直進させる場合には、前記左舷側舵(2)と前記右舷側舵(3)を前後方向に延在する仮想線と平行な直進姿勢にし、船を緊急停止する場合には、前記左舷側舵(2)と右舷側舵(3)を前後方向に延在する仮想線に直交する緊急停止姿勢にする構成とし、
前記第2左舵部(11)の左端部から左右方向に延在する第1左スリット(14A)と第1左舵部(10)の上から下端部の上側に上下方向に延在する第2左スリット(14B)を設け、
前記第2右舵部(21)の右端部から左右方向に延在する第1右スリット(24A)と第1右舵部(20)の上から下端部の上側に上下方向に延在する第2右スリット(24B)を設けたことを特徴とする操舵装置。
【請求項2】
前記第2左スリット(14B)の左端部を、前記第2左スリット(14B)の右端部よりも前側に形成させ、前記第2右スリット(24B)の右端部を、前記第2右スリット(24B)の左端部よりも前側に形成させた請求項1記載の操舵装置。
【請求項3】
前記第2右舵部(21)の下面を第2左舵部(11)の上面よりも上方に位置させた請求項1又は2記載の操舵装置。
【請求項4】
背面視において、前記第1左舵部(10)の下部に、左側に延在する第1左延在部(30)を設け、前記第1右舵部(20)の下部に、右側に延在する第1右延在部(40)を設けた請求項1~のいずれか1項に記載の操舵装置。
【請求項5】
背面視において、前記第1左舵部(10)の下部に、左右方向の両側に延在する第2左延在部(31)を設け、前記第1右舵部(20)の下部に、左右方向の両側に延在する第2右延在部(41)を設けた請求項1~のいずれか1項に記載の操舵装置。
【請求項6】
背面視において、前記第1左舵部(10)の下部に、左側に湾曲して延在する第3左延在部(32)を設け、前記第1右舵部(20)の下部に、右側に湾曲して延在する第3右延在部(42)を設けた請求項1~のいずれか1項に記載の操舵装置。
【請求項7】
背面視において、前記第1左舵部(10)を上部から下方左側に向かって延在させて形成し、前記第1右舵部(20)を上部から下方右側に向かって延在させて形成させた請求項1~のいずれか1項に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船のプロペラの両側部に、左舷側舵と右舷側舵を備える操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船を直進させる場合には、左舷側舵と右舷側舵を前後方向に延在する仮想線と平行な直進姿勢に移動して大きな推進力を発生させ、船を大きく旋回させるには、一側の舵(左舷側舵又は右舷側舵)と他側の舵(右舷側舵又は左舷側舵)を対向させるように、一側の舵を前方に、他側の舵を後方に操舵する操舵装置が知られている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5833278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の手段では、船を直進させる場合には、大きな推進力を発生させ、船を旋回させる場合には、大きな旋回力を発生させることができる。しかし、船を旋回させる場合に、特に、前方に位置する一側の舵周りの流れの剥離によって生じる騒音や振動の低減が求まられていた。
【0005】
そこで、本発明の課題は、船を旋回させる場合に、前方に位置する一側の舵周りの流れの剥離によって生じる騒音や振動の低減することができる操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、船のプロペラの左側に設けられる左舷側舵(2)と、前記プロペラの右側に設けられる右舷側舵(3)を備える操舵装置であって、
背面視において、前記左舷側舵(2)を上下方向に延在する第1左舵部(10)と、前記第1左舵部(10)の上部から右側に延在する第2左舵部(11)で形成し、前記第2左舵部(11)の右部に、上下方向に延在する左舵軸(12)を立設し、背面視において、前記右舷側舵(3)を上下方向に延在する第1右舵部(20)と、前記第1右舵部(20)の上部から左側に延在する第2右舵部(21)で形成し、前記第2右舵部(21)の左部に、上下方向に延在する右舵軸(22)を立設し、平面視において、前記左舵軸(12)と右舵軸(22)をプロペラの外周部又はプロペラの外周部よりも上流側に設け、船を直進させる場合には、前記左舷側舵(2)と前記右舷側舵(3)を前後方向に延在する仮想線と平行な直進姿勢にし、船を緊急停止する場合には、前記左舷側舵(2)と右舷側舵(3)を前後方向に延在する仮想線に直交する緊急停止姿勢にする構成とし、前記第2左舵部(11)の左端部から左右方向に延在する第1左スリット(14A)と第1左舵部(10)の上から下端部の上側に上下方向に延在する第2左スリット(14B)を設け、前記第2右舵部(21)の右端部から左右方向に延在する第1右スリット(24A)と第1右舵部(20)の上から下端部の上側に上下方向に延在する第2右スリット(24B)を設けたことを特徴とする操舵装置である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記第2左スリット(14B)の左端部を、前記第2左スリット(14B)の右端部よりも前側に形成させ、前記第2右スリット(24B)の右端部を、前記第2右スリット(24B)の左端部よりも前側に形成させた請求項1記載の操舵装置である。
【0008】
【0009】
請求項に係る発明は、前記第2右舵部(21)の下面を第2左舵部(11)の上面よりも上方に位置させた請求項1又は2記載の操舵装置である。
【0010】
請求項に係る発明は、背面視において、前記第1左舵部(10)の下部に、左側に延在する第1左延在部(30)を設け、前記第1右舵部(20)の下部に、右側に延在する第1右延在部(40)を設けた請求項1~のいずれか1項に記載の操舵装置である。
【0011】
請求項に係る発明は、背面視において、前記第1左舵部(10)の下部に、左右方向の両側に延在する第2左延在部(31)を設け、前記第1右舵部(20)の下部に、左右方向の両側に延在する第2右延在部(41)を設けた請求項1~のいずれか1項に記載の操舵装置である。
【0012】
請求項に係る発明は、背面視において、前記第1左舵部(10)の下部に、左側に湾曲して延在する第3左延在部(32)を設け、前記第1右舵部(20)の下部に、右側に湾曲して延在する第3右延在部(42)を設けた請求項1~のいずれか1項に記載の操舵装置である。
【0013】
請求項に係る発明は、背面視において、前記第1左舵部(10)を上部から下方左側に向かって延在させて形成し、前記第1右舵部(20)を上部から下方右側に向かって延在させて形成させた請求項1~のいずれか1項に記載の操舵装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、第2左舵部(11)の左端部から左右方向に延在する第1左スリット(14A)と第1左舵部(10)の上から下端部の上側に上下方向に延在する第2左スリット(14B)を設け、第2右舵部(21)の右端部から左右方向に延在する第1右スリット(24A)と第1右舵部(20)の上から下端部の上側に上下方向に延在する第2右スリット(24B)を設けたので、第1左舵部(10)と第1右舵部(20)の後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生を抑制することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、第2左スリット(14B)の左端部を、第2左スリット(14B)の右端部よりも前側に形成させ、第2右スリット(24B)の右端部を、第2右スリット(24B)の左端部よりも前側に形成させたので、第1左舵部(10)と第1右舵部(20)の後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生をより抑制することができ、また、船の直進時においても、第1左舵部(10)と第1右舵部(20)の後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生をより抑制することができる。
【0016】
【0017】
請求項記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、第2右舵部(21)の下面を第2左舵部(11)の上面よりも上方に位置させたので、舵をプロペラ後方で交差させる場合に、第2左舵部(11)と第2右舵部(21)の干渉を防止して、左舷側舵(2)と右舷側舵(3)をスムーズにプロペラ後方に移動することができる。
【0018】
請求項記載の発明によれば、請求項1~のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、第1左舵部(10)の下部に、左側に延在する第1左延在部(30)を設け、第1右舵部(20)の下部に、右側に延在する第1右延在部(40)を設けたので、大きな舵力が発生して船を効率良く旋回させることができる。
【0019】
請求項記載の発明によれば、請求項1~のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、第1左舵部(10)の下部に、左右方向の両側に延在する第2左延在部(31)を設け、第1右舵部(20)の下部に、左右方向の両側に延在する第2右延在部(41)を設けたので、大きな舵力が発生して船を効率良く旋回させることができる。
【0020】
請求項記載の発明によれば、請求項1~のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、第1左舵部(10)の下部に、左側に湾曲して延在する第3左延在部(32)を設け、第1右舵部(20)の下部に、右側に湾曲して延在する第3右延在部(42)を設けたので、大きな舵力が発生して船を効率良く旋回させることができる。
【0021】
請求項記載の発明によれば、請求項1~のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、第1左舵部(10)を上部から下方左側に向かって延在させて形成し、第1右舵部(20)を上部から下方右側に向かって延在させて形成させたので、旋回モーメントをより大きくできて、船をより効率良く旋回させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の操舵装置の斜視図である。
図2】第1実施形態の操舵装置の背面図である。
図3】第1実施形態の操舵装置の平面図である。
図4】第1実施形態の操舵装置の右側面図である。
図5】第1実施形態の操舵装置の駆動を説明する平面説明図である。
図6】第2実施形態の操舵装置の背面図である。
図7】第2実施形態の操舵装置の平面図である。
図8】第2実施形態の操舵装置の右側面図である。
図9】第3実施形態の操舵装置の背面図である。
図10】第3実施形態の操舵装置の平面図である。
図11】第3実施形態の操舵装置の右側面図である。
図12】第4実施形態の操舵装置の背面図である。
図13】第4実施形態の操舵装置の平面図である。
図14】第4実施形態の操舵装置の右側面図である。
図15】第5実施形態の操舵装置の背面図である。
図16】第6実施形態の操舵装置の背面図である。
図17】第7実施形態の操舵装置の背面図である。
図18】第8実施形態の操舵装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明について図面を参照しつつ説明する。なお、操舵者から見て、前方を前側、後方を後側、右手側を右側、左手側を左側として便宜的に方向を示して説明する。
【0024】
図1~4に示すように、第1実施形態の操舵装置は、船のプロペラ1の左舷側には左舷側舵2が設けられ、右舷側には右舷側舵3が設けられている。
【0025】
背面視において、左舷側舵2は、略逆L字形状に形成され、上下方向に延在する第1左舵部10と、第1左舵部10の上部からプロペラ1に向かって左右方向に延在する第2左舵部11から形成されている。また、第2左舵部11の右部には、上下方向に延在する左舵軸12が設けられている。同様に、背面視において、右舷側舵3は、略逆L字形状に形成され、上下方向に延在する第1右舵部20と、第1右舵部20の上部からプロペラ1に向かって左右方向に延在する第2右舵部21から形成されている。また、第2右舵部21の右部には、上下方向に延在する右舵軸22が設けられている。
【0026】
平面視において、第1左舵部10の右部は、プロペラ1側である右側に向かって凸状に形成され、第1左舵部10の左部は、左側に向かって凸状に形成されている。同様に、平面視において、第1右舵部20の左部は、プロペラ1側である左側に向かって凸状に形成され、第1右舵部20の右部は、右側に向かって凸状に形成されている。これにより、第1左舵部10と第1右舵部20に揚力が発生して、船を前方に効率良く推進することができる。
【0027】
なお、前述の形態に替えて、平面視において、第1左舵部10の右部は、プロペラ1側である右側に向かって凸状に形成し、第1左舵部10の左部は、直線状に形成することもできる。同様に、平面視において、第1右舵部20の左部は、プロペラ1側である左側に向かって凸状に形成され、第1右舵部20の右部は、直線状に形成することもできる。これにより、第1左舵部10に前方右側に向かう揚力が発生して、第1右舵部20に前方右側に向かう揚力が発生して、船を前方に効率良く推進すると共に、保針性能を向上させることができる。
【0028】
平面視において、第1左舵部10は、プロペラ1の側方か上流側に設けられ、すなわち、第1左舵部10の前端部が、プロペラ1よりも前側に設けられ、左舵軸12が、プロペラ1の前部に重なるように設けられている。同様に、第1右舵部20は、プロペラ1の側方か上流側に設けられ、すなわち、第1右舵部20の前端部が、プロペラ1よりも前側に設けられ、右舵軸22が、プロペラ1の前部に重なるように設けられている。これにより、第1左舵部10と第1右舵部20に発生した揚力が左舵軸12と右舵軸22を介して船体に働き、船体を前方に効率良く推進することができる。
【0029】
操舵機室内に延在した左舵軸12の上部には、左舵軸12を回動させる左操舵機(図示省略)が接続されている。同様に、操舵機室内に延在した右舵軸22の上部には、右舵軸22を回動させる右操舵機(図示省略)が接続されている。なお、操舵機としては、シリンダから形成されたラプソンスライド式操舵機、ベーン付きローターから形成されたロータリーベーン式操舵機を使用することができる。
【0030】
図5に示すように、左舵軸12を回動させる左操舵機と右舵軸22を回動させる右操舵機は、制御装置(図示省略)によって、相互いに独立して駆動されている。
【0031】
船を直進させる場合には、平面視において、左操舵機によって左舷側舵2の第1左舵部10は、第1左舵部10の後部が前部の後側に位置し、第1左舵部10の前部と後部を通る直線が前後方向に延在する仮想線と平行になる直進姿勢に移動する。同様に、平面視において、右操舵機によって右舷側舵3の第1右舵部20は、第1右舵部20の後部が前部の後側に位置し、第1右舵部20の前部と後部を通る直線が前後方向に延在する仮想線と平行になる直進姿勢に移動する。
【0032】
舵を取舵に操作して船の進路を左旋回させる場合には、平面視において、左操舵機によって左舵軸12が時計方向に前方限界まで回転し、同様に、平面視において、右操舵機によって右舵軸22が時計方向に航海時の最大舵角まで回転し、これにより、船を前方左側に効率良く旋回させることができる。
【0033】
舵を面舵に操作して船の進路を右旋回させる場合には、平面視において、右操舵機によって右舵軸22が反時計方向に前方限界まで回転し、同様に、平面視において、左操舵機によって左舵軸12が反時計方向に航海時の最大舵角まで回転し、これにより、船を前方右側に効率良く旋回させることができる。
【0034】
舵を緊急停止させる場合には、平面視において、左操舵機によって左舵軸12が反時計方向に90度回転して、第1左舵部10の後部が前部の右側に位置し、第1左舵部10の前部と後部を通る直線が前後方向に延在する仮想線と交差角度90度で交差する緊急停止姿勢に移動する。同様に、平面視において、右操舵機によって右舵軸22が時計方向に90度回転して、第1右舵部20の後部が前部の左側に位置し、第1右舵部20の前部と後部を通る直線が前後方向に延在する仮想線と交差角度90度で交差する緊急停止姿勢に移動する。これにより、プロペラ1の後流側で大きな制動力を発生させて舵を迅速に緊急停止させることができる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の操舵装置について説明する。なお、第1実施形態の操舵装置と同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図6~8に示すように、第2左舵部11の左部に、左右方向に延在する第1左スリット14Aが形成され、第1左舵部10の上部から上下方向に延在する第2左スリット14Bが形成されている。同様に、第2右舵部21の右部に、左右方向に延在する第1右スリット24Aが形成され、第1右舵部20の上部から上下方向に延在する第2右スリット24Bが形成されている。平面視において、第2右スリット24Bは、第1右舵部20の右面から後方左側に向かって形成されている。すなわち、第2右スリット24Bの右端部が、第2右スリット24Bの左端部よりも前方に形成されている。これにより、舵を操作して船の進路を大きく左旋回させた場合には、第1左舵部10と第1右舵部20における前側に位置する左部から後側に位置する右部に水を流すことができるので、第1左舵部10と第1右舵部20の右部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生を抑制することができる。同様に、舵を操作して船の進路を大きく右旋回させた場合には、第1左舵部10と第1右舵部20における前側に位置する右部から後側に位置する左部に水を流すことができるので、第1左舵部10と第1右舵部20の左部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生を抑制することができる。
【0037】
平面視において、第2左スリット14Bは、第1左舵部10の左面から後方右側に向かって形成されて第1左舵部10の右面まで至っている。すなわち、第2左スリット14Bの左端部が、第2左スリット14Bの右端部よりも前方に形成されている。同様に、平面視において、第2右スリット24Bは、第1右舵部20の右面から後方左側に向かって形成されて第1右舵部20の左面まで至っている。すなわち、第2右スリット24Bの右端部が、第2右スリット24Bの左端部よりも前方に形成されている。
【0038】
これにより、舵を操作して船の進路を大きく左旋回させた場合には、第2左スリット14Bを介して第1左舵部10における前側に位置する左部から後側に位置する右部に水を効率良く流すことができ、第1左舵部10の右部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生をより抑制することができる。同様に、第2右スリット24Bを介して第1右舵部20における前側に位置する左部から後側に位置する右部に水を効率良く流すことができるので、第1右舵部20の右部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生をより抑制することができる。
【0039】
また、舵を操作して船の進路を大きく右旋回させた場合には、第2左スリット14Bを介して第1左舵部10における前側に位置する右部から後側に位置する左部に水を効率良く流すことができ、第1左舵部10の左部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生をより抑制することができる。同様に、第2右スリット24Bを介して第1右舵部20における前側に位置する右部から後側に位置する左部に水を効率良く流すことができるので、第1右舵部20の左部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生をより抑制することができる。
【0040】
さらに、船を直進させる場合には、第2左スリット14Bを介して第1左舵部10の左側から右側に水を流すことができ、第1左舵部10の右部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生を抑制することができる。同様に、第2右スリット24Bを介して第1右舵部20の右側から左側に水を流すことができるので、第1右舵部20の右部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生を抑制することができる。
【0041】
前後方向において、第2左スリット14Bは、第1左舵部10の中間部よりも後側に形成されている。これにより、第1左舵部10における後部の右部後方に水を効率良く流すことができるので、第1左舵部10の後部の右部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生をさらに抑制することができる。また、本実施形態においては、第1左スリット14Aは、左右方向に延在して形成しているが、第2左舵部11の左部から後方右側に向かって形成することもできる。
【0042】
前後方向において、第2右スリット24Bは、第2右舵部20の中間部よりも後側に形成されている。これにより、第2右舵部20における後部の右部後方に水を効率良く流すことができるので、第2右舵部20の後部の右部後方の流れの剥離によって発生する渦に起因する騒音と振動の発生をさらに抑制することができる。また、本実施形態においては、第1右スリット24Aは、左右方向に延在して形成しているが、第2右舵部21の右部から後方左側に向かって形成することもできる。
【0043】
なお、左舷側舵2を形成する第1左舵部10と第2左舵部11や右舷側舵3を形成する第1右舵部20と第2右舵部21は、鋼、NiAlBr等の材料を鋳造して製造することができる。
【0044】
<第3参考形態>
次に、第3実施形態の操舵装置について説明する。なお、第1実施形態の操舵装置と同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図9~11に示すように、左舷側舵2は、略逆L字形状に形成され、上下方向に延在する第1左舵部10と、第1左舵部10に上部からプロペラ1に向かって上方右側に向かって延在する第3左舵部13と、第3左舵部13の上部からプロペラ1に向かって左右方向に第2左舵部11から形成されている。また、第1左舵部10に上部と第3左舵部13の下部の連結部である肩部には、前後方向に延在する左紡錐体16が設けられている。同様に右舷側舵3は、略逆L字形状に形成され、上下方向に延在する第1右舵部20と、第1右舵部20の上部からプロペラ1に向かって上方右側に向かって延在する第3右舵部23と、第3右舵部23の上部からプロペラ1に向かって左右方向に第2右舵部21から形成されている。また、第12舵部10に上部と第3右舵部23の下部の連結部である肩部には、前後方向に延在する右紡錐体26が設けられている。これにより、舵を操作して船の進路を大きく左旋回させた場合には、第1左舵部10と、第3左舵部13と、それらに対向するプロペラの左部に生じる流れの剥離に起因する騒音と振動の発生を抑制することができる。同様に、舵を操作して船の進路を大きく右旋回させた場合には、第2右舵部20と、第3右舵部23と、それらに対向するプロペラの右側に生じる流れの剥離に起因する騒音と振動の発生を抑制することができる。
【0046】
平面視において、左紡錐体16は、第3左舵部13の前部から前側に突出する半円弧状部16Aと、半円弧状部16Aの後部から後側に向かって延在する円筒部16Bと、円筒部16Bの後部から後側に向かって延在する円錐形状部16Cから形成され、円筒部16Bは、左舵軸12とプロペラ1を超えて後側に延在している。また、側面視において、左紡錐体16は、第3左舵部13の前部から前側に突出する半円弧状部16Aと、半円弧状部16Aの後部から後側に向かって延在する円筒部16Bと、円筒部16Bの後部から後側に向かって延在する円錐形状部16Cから形成され、円筒部16Bは、左舵軸12とプロペラ1を超えて後側に延在している。これにより、第1左舵部10と第3左舵部13の連結部の剛性を高めると同時に、第3左舵部13の形状を曲がりの少ない2次元的な構造にすることができる。
【0047】
平面視において、右紡錐体26は、第3右舵部23の前部から前側に突出する半円弧状部26Aと、半円弧状部26Aの後部から後側に向かって延在する円筒部26Bと、円筒部26Bの後部から後側に向かって延在する円錐形状部26Cから形成され、円筒部26Bは、右舵軸22とプロペラ1を超えて後側に延在している。また、側面視において、右紡錐体26は、第3右舵部23の前部から前側に突出する半円弧状部26Aと、半円弧状部26Aの後部から後側に向かって延在する円筒部26Bと、円筒部26Bの後部から後側に向かって延在する円錐形状部26Cから形成され、円筒部26Bは、右舵軸22とプロペラ1を超えて後側に延在している。これにより、第1右舵部20と第3右舵部23の連結部の剛性を高めると同時に、第3右舵部23の形状を曲がりの少ない2次元的な構造にすることができる。
【0048】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態の操舵装置について説明する。なお、第1実施形態の操舵装置と同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
図12~14に示すように、左舷側舵2の第2左舵部11の右部には、上下方向に延在する左舵軸12が設けられている。同様に、右舷側舵3の第2右舵部21の右部には、上下方向に延在する右舵軸28が設けられている。また、右舵軸28における船体の下部から第2右舵部21までの上下方向の長さは、左舵軸12における船体の下部から第21舵部21までの上下方向の長さよりも短く形成されている。これにより、両舷の舵をプロペラ後方で交差させる場合に、左舷側舵2の左舷側舵2と右舷側舵3の2右舵部21の干渉を防止できるので、効率的でかつ安価な操舵装置とすることができる。なお、第4実施形態においては、右舷側舵3を左舷側舵2よりも上方に設けているが、左回転のプロペラの場合には左舷側舵2を右舷側舵3よりも上方に設けることが望ましい。
【0050】
<第5実施形態>
第5実施形態の操舵装置について説明する。なお、第1実施形態の操舵装置と同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図15に示すように、左舷側舵2の第1左舵部10の下部にプロペラ1と反対側に延在する第1左延在部30が形成され、右舷側舵3の第1右舵部20の下部にプロペラ1と反対側に延在する第1右延在部40が形成されている。これにより、舵を操作して船の進路を緩やかに旋回させる場合には、大きな舵力を発生するので船を前方左側又は前方右側に効率良く旋回させることができる。
【0052】
<第6実施形態>
第6実施形態の操舵装置について説明する。なお、第1実施形態の操舵装置と同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
図16に示すように、左舷側舵2の第1左舵部10の下部に左右方向の両側部に延在する第2左延在部31が形成され、右舷側舵3の第1右舵部20の下部に左右方向の両側部に延在する第2右延在部41が形成されている。これにより、舵を操作して船の進路を緩やかに旋回させる場合には、より大きな舵力を発生するので、船を前方左側又は前方右側により効率良く旋回させることができる。
【0054】
<第7実施形態>
第7実施形態の操舵装置について説明する。なお、第1実施形態の操舵装置と同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
図17に示すように、左舷側舵2の第1左舵部10の下部にプロペラ1と反対側に湾曲して延在する第3左延在部32が形成され、右舷側舵3の第1右舵部20の下部にプロペラ1と反対側に湾曲して延在する第3右延在部42が形成されている。これにより、舵を操作して船の進路を緩やかに旋回させる場合には、大きな舵力を発生するので船を前方左側又は前方右側に効率良く旋回させることができ、また、大きな力が作用する第3左延在部32と第3右延在部42の変形を防止することができる。
【0056】
<第8実施形態>
第8実施形態の操舵装置について説明する。なお、第1実施形態の操舵装置と同一部品には同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
図18に示すように、背面視において、左舷側舵2は、上部から下方に向かうに従ってプロペラ1から遠ざかる下方左側に向かって延在する第1左舵部35と、第1左舵部35の上部からプロペラ1に向かって左右方向に延在する第2左舵部11から形成され、第2左舵部11の右部には、上下方向に延在する左舵軸12が設けられている。同様に、背面視において、右舷側舵3は、上部から下方に向かうに従ってプロペラ1から遠ざかる下方右側に向かって延在する第1右舵部45と、第1右舵部45の上部からプロペラ1に向かって左右方向に延在する第2右舵部21から形成され、第2右舵部21の右部には、上下方向に延在する右舵軸22が設けられている。これにより、舵を操作して船の進路を緩やかに旋回させる場合には、舵力が左舵軸12から離間距離が大きい第1左舵部35等に作用するので、船を前方左側又は前方右側に効率良く旋回させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、船のプロペラの両側に設けられる左舷側舵と右舷側舵を備えた操舵装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
2 左舷側舵
3 右舷側舵
10 第1左舵部
11 第2左舵部
12 左舵軸
13 第3左舵部
14A 第1左スリット
14B 第2左スリッ
16 左紡錐体
20 第1右舵部
21 第2右舵部
22 右舵軸
23 第3右舵部
24A 第1右スリット
24B 第2右スリッ
26 右紡錐体
30 第1左延在部
31 第2左延在部
32 第3左延在部
40 第1右延在部
41 第2右延在部
42 第3右延在部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18