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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】パーフルオロ基含有化合物エマルジョン
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/02 20060101AFI20230125BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20230125BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20230125BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C08J3/02 A CEZ
C08L71/00 Z
C08K5/02
C08K5/098
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019058253
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020158600
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】金海 吉山
(72)【発明者】
【氏名】宮田 桃香
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-516545(JP,A)
【文献】特開2018-173306(JP,A)
【文献】特開2018-137222(JP,A)
【文献】特開2018-044087(JP,A)
【文献】特開2011-063709(JP,A)
【文献】特開平11-269231(JP,A)
【文献】特表2004-514025(JP,A)
【文献】特開昭60-034730(JP,A)
【文献】特開平08-216538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28
C08L 1/00-101/14
B01J13/00
C09K23/00- 23/56
C07C43/00- 43/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式 RfCOOM(ここで、RfはC 4 ~C 10 のフルオロ炭化水素基またはC 3 ~C 12 の基中に1個以上のエーテル結合を有するフルオロアルコキシアルキル基であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基である)で表わされるパーフルオロカルボン酸塩または一般式 RfCH 2 CH 2 P(O)(OM 1 )(OM 2 )(ここで、Rfは上記と同じであり、M 1 は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基であり、M 2 はアルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基である)で表わされるホスホン酸塩である含フッ素乳化剤の存在下で、一般式 Rf′O(C 3 F 6 O) p (C 2 F 4 O) q (CF 2 O) r Rf′′(ここで、Rf′、Rf′′はC 1 ~C 5 のパーフルオロ低級アルキル基であり、C 3 F 6 O基、C 2 F 4 O基およびCF 2 O基はランダムに結合しており、p+q+r=2~200で、p,qまたはrは0であり得る)で表わされる化合物であるパーフルオロポリエーテル油をポリビニルピロリドン、水溶性有機溶剤およびフッ素系有機溶剤中で、分散乳化したパーフルオロ基含有化合物エマルジョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロ基含有化合物エマルジョンに関する。さらに詳しくは、保存安定性にすぐれたパーフルオロ基含有化合物エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、一般式
RfO(C3F6O)p(C2F4O)q(CF2O)rRf′
Rf、Rf′:C1~C5のパーフルオロアルキル基
p+q+r:2~200
または一般式
F(CF2CF2CF2O)nCF2CF3
n:2~100
で表わされるパーフルオロポリエーテル油またはパーフルオロカーボン化合物100重量部に対し、乳化剤として一般式
CnF2n+1CH2CH2P(O)(OM1)(OM2)
M1:水素原子、アンモニウム塩、有機アミン塩
M2:アンモニウム塩、有機アミン塩
n:1~6
で表わされるパーフルオロアルキルエチルホスホン酸塩0.01~30重量部を用いて形成させたエマルジョン(特許文献1)またはこれらを有効成分とする離型剤(特許文献2)を提案している。
【0003】
ここで用いられたパーフルオロエチルホスホン酸塩は、乳化性能にすぐれたペンタデカフルオロオクタン酸アンモニウムに匹敵する乳化性能を有するものの、水溶液または有機溶剤溶液として調製されているため、例えば40℃、1ヶ月経過後または6ヶ月経過後の保存安定性に欠けていることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-63708号公報
【文献】特開2011-63709号公報
【文献】特開2000-72601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、パーフルオロポリエーテル油乳化剤として含フッ素化合物を用いた場合にあっても、そこに得られるパーフルオロ基含有化合物エマルジョンの保存安定性を改善したものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の目的は、一般式 RfCOOM(ここで、RfはC 4 ~C 10 のフルオロ炭化水素基またはC 3 ~C 12 の基中に1個以上のエーテル結合を有するフルオロアルコキシアルキル基であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基である)で表わされるパーフルオロカルボン酸塩または一般式 RfCH 2 CH 2 P(O)(OM 1 )(OM 2 )(ここで、Rfは上記と同じであり、M 1 は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基であり、M 2 はアルカリ金属、アンモニウム塩基または有機アミン塩基である)で表わされるホスホン酸塩である含フッ素乳化剤の存在下で、一般式 Rf′O(C 3 F 6 O) p (C 2 F 4 O) q (CF 2 O) r Rf′′(ここで、Rf′、Rf′′はC 1 ~C 5 のパーフルオロ低級アルキル基であり、C 3 F 6 O基、C 2 F 4 O基およびCF 2 O基はランダムに結合しており、p+q+r=2~200で、p,qまたはrは0であり得る)で表わされる化合物であるパーフルオロポリエーテル油をポリビニルピロリドン、水溶性有機溶剤およびフッ素系有機溶剤中で、分散乳化したパーフルオロ基含有化合物エマルジョンによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るパーフルオロ基含有化合物エマルジョンは、例えば40℃、1ヶ月経過後または6ヶ月経過後の保存安定性にすぐれており、その平均粒子径も殆ど変化しない。
【0008】
パーフルオロポリエーテル油は、相溶性が悪く、水系分散は困難であったが、本発明では水溶性有機溶剤とフッ素系有機溶剤とを併用することにより、水系分散を可能としている。
【0009】
パーフルオロポリエーテル油とのエマルジョンは、その良好な乳化安定性を保持したまま、表面処理剤、離型剤、化粧品等の用途に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
パーフルオロポリエーテル油乳化剤としては、一般式
RfCOOM
Rf:C4~C10のフルオロ炭化水素基
C3~C12の基中に1個以上のエーテル結合を有するフルオロアルコキシアル
キル基
M:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基、有機アミン塩基
で表わされるパーフルオロカルボン酸塩、例えばパーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロノナン酸アンモニウム、パーフルオロヘプタン酸アンモニウム、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-〔1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ〕プロパン酸アンモニウム等
RfCH2CH2P(O)(OM1)(OM2)
Rf:上記と同じ
M1:水素原子、アルカリ金属、アンモニウム塩基、有機アミン塩基
M2:アルカリ金属、アンモニウム塩基、有機アミン塩基
で表わされるホスホン酸塩、例えば有機アミン塩基はモノエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン、ピリジン、モルホリンまたはこれらから導かれるアミン塩基
RfCH2CH2OPO(OM1)(OM2)
で表わされるリン酸塩
Rf、M1、M2:上記と同じ
が挙げられる。
【0011】
乳化剤は、水または水溶性有機溶剤である水性媒体に溶解させた水性溶液または有機溶剤に溶解させた有機溶剤溶液として用いられる。有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶剤が用いられる。
【0012】
例えばパーフルオロアルキルエチルホスホン酸塩の乳化能力は、例えば2-(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸アンモニウム水溶液の場合、その臨界ミセル濃度〔CMC〕は乳化剤濃度が0.8重量%付近にみられ、乳化剤濃度が2.0重量%程度迄一定の低い表面張力が示される。
【0013】
乳化剤の水性溶液または有機溶剤溶液は、パーフルオロポリエーテル油100重量部当り、その有効成分量が約0.01~100重量部、好ましくは約0.1~60重量部の割合でパーフルオロポリエーテル油に添加され、乳化処理されて、パーフルオロポリエーテル油エマルジョンを形成させる。乳化剤をこれ以上の割合で用いると、パーフルオロポリエーテル油自体の特性が十分に発揮されないようになる。乳化処理は、ホモジナイザ等を用い、約500~10,000rpmの回転数で予備乳化を行った後、さらに高圧ホモジナイザを用い、圧力約100~800kgf/cm2(約10~80MPa)で乳化処理されて行われる。
【0014】
エマルジョン化されるパーフルオロポリエーテル油としては、一般式
Rf′O(C3F6O)p(C2F4O)q(CF2O)rRf′′ 〔I〕
で表わされるものが使用される。ここで、Rf′、Rf′′はパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等の炭素数1~5のパーフルオロ低級アルキル基であり、C3F6O基、C2F4O基およびCF2O基はランダムに結合しており、p+q+r=2~200で、p,qまたはrは0であり得る。このような一般式で表わされるパーフルオロポリエーテル油の具体例としては、以下のようなものがある。
【0015】
RfO〔CF(CF3)CF2O〕mRf′ 〔Ia〕
ここで、mは2~200で、これはヘキサフルオロプロペンの光酸化重合で生成した先駆体を完全にふっ素化することにより、あるいはふっ化セシウム触媒の存在下にヘキサフルオロプロペンオキシドをアニオン重合させ、得られた末端-CF(CF3)COF基を有する酸フロリド化合物をふっ素ガス処理することにより得られる。
【0016】
RfO〔CF(CF3)CF2O〕m(CF2O)nRf′ 〔Ib〕
ここで、CF(CF3)CF2O基およびCF2O基はランダムに結合しており、m+n=3~200、m:n=(10:90)~(90:10)であり、これはヘキサフルオロプロペンの光酸化重合で生成した先駆体を完全にふっ素化することにより得られる。
【0017】
RfO(CF2CF2O)m(CF2O)nRf′ 〔Ic〕
ここで、m+n=3~200であり、m:n=(10:90)~(90:10)であり、これはテトラフルオロエチレンの光酸化重合で生成した先駆体を完全にふっ素化することにより得られる。
【0018】
前記一般式で表わされる以外のパーフルオロポリエーテル油も用いることができ、例えば次のようなパーフルオロポリエーテル油が用いられる。
F(CF2CF2CF2O)nCF2CF3 〔II〕
ここでn=2~100であり、これはふっ化セシウム触媒の存在下に2,2,3,3-テトラフルオロオキセタンをアニオン重合させ、得られた含ふっ素ポリエーテル(CH2CF2CF2O)nを160~300℃の紫外線照射下でふっ素ガス処理することにより得られる。
【0019】
具体例として挙げた以上のパーフルオロポリエーテル油は、単独もしくは混合して用いることができるが、コストパーフォーマンスの点からは、上記〔Ia〕または〔Ib〕、特に〔Ia〕のパーフルオロポリエーテル油が好んで用いられる。パーフルオロポリエーテル〔Ia〕としては、mが2~100の整数で、数平均分子量Mnが約300~50000、好ましくは約500~20000のものが用いられる。
【0020】
これらのパーフルオロポリエーテル油は、どのような値の動粘度のものでも使用できるが、潤滑剤としては5~2000mm2/秒(40℃)、高温条件下での使用を考慮すると、好ましくは100~1500mm2/秒(40℃)のものが用いられる。すなわち、約5mm2/秒以下のものは蒸発量が多く、耐熱用グリースの規格であるJIS転がり軸受用グリース3種で規定されている蒸発量1.5%以下という条件を満たさなくなる。また、2000mm2/秒以上の動粘度のものは、流動点(JIS K-2283)が10℃以上となり、通常の方法では低温起動時に軸受が回転せず、それを使用可能とするには加熱する必要がある。
【0021】
また、大量に酸素を溶解して運搬できるパーフルオロカーボン化合物は、パーフルオロアルキルエチルホスホン酸塩を含有するエマルジョンとして、酸素運搬媒体や摘出臓器保存液(特許文献3参照)としての有効な利用が図られる。
【0023】
パーフルオロポリエーテル油は、かかる乳化剤の存在下で、安定剤としてのポリビニルピロリドン、水溶性有機溶剤およびフッ素系有機溶剤を用いて乳化し、エマルジョンを形成させる。
【0024】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、エマルジョンの安定化のために用いることが好ましく、それの約0.01~10重量%水溶液として、パーフルオロポリエーテル油100重量部当り約0.1~20重量部、好ましくは約0.1~10重量部(PVPとして)用いられる。その分子量は、約1~200万程度である。
【0025】
水溶性有機溶剤は、乳化剤が水溶液として用いられるので、それとの相溶性のために、パーフルオロポリエーテル油100重量部当り約2~300重量%、好ましくは約5~150重量%の割合で用いられる。
【0026】
水溶性有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールまたはそのモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類などが用いられる。
【0027】
フッ素系有機溶剤としては、取扱いの簡便性といった観点から、例えば1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,1,2,2-ペンタフルオロ-3,3-ジクロロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロ-1,3-ジクロロプロパン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン等が、パーフルオロポリエーテル油100重量部当り約1~1000重量部、好ましくは約10~500重量部の割合で用いられる。フッ素系有機溶剤が用いられないと、保存安定性を欠くようになる。実際には、市販品、例えば3M社製品ノベックシリーズやAGC製AE-3000のものをそのまま使用できる。
【0028】
フッ素系有機溶剤として、ハイドロフルオロカーボン系またはハイドロフルオロエーテル系溶剤を用いることもできる。
【0029】
ハイドロフルオロカーボン系溶剤としては、具体的には次のような化合物が挙げられる。
また、ハイドロフルオロエーテル系溶媒としては、次のようなものが例示される。
ハイドロクロロフルオロカーボン系溶剤としては、次のようなものが例示される。
CF3CF2CHCl2/CClF2CF2CHClF
【0030】
乳化処理は、以上の各成分を用い、ホモジナイザ等を用い、約500~10,000rpmの回転数で予備乳化を行った後、さらに高圧ホモジナイザを用い、圧力約100~800kgf/cm2(約10~80MPa)で乳化処理することによって行われる。
【0031】
形成されるエマルジョンが各種用途に用いられる場合、その固形分濃度が約0.01~60重量%、好ましくは約0.05~30重量%を占める量となるように、水、前記水溶性有機溶剤で希釈した水性溶液または有機溶剤溶液として用いられる。有機溶剤としては、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはこれらのメチル、エチル置換体である脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のフッ素化芳香族炭化水素等が用いられる。
【実施例
【0032】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0033】
実施例1
攪拌装置および滴下装置を備えた容量1000mlの反応装置内に、40℃の加熱水450gを保温しながら仕込み、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-〔1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ〕プロパン酸 〔PO-3-CA〕
CF3CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOH
30gを加えた後、1.4重量%アンモニア水溶液20gを加え、1時間攪拌を続けて中和反応を行った。これにより、pH8のPO-3-CAアンモニウム塩水溶液(乳化剤水溶液、有効成分濃度6.0重量%)が得られた。
【0034】
同様の反応装置内に、40℃に加熱された上記乳化剤水溶液418.5g、ヘキシレングリコール〔HG〕60gおよびポリビニルピロリドン10%水溶液〔PVP 10%K90〕1.5gを保温しながら仕込み、1時間攪拌を続けた。
【0035】
そこに、一般式 C3F7〔CF(CF3)CF2O〕mC2F5 (m:2~100)で表わされるパーフルオロポリエーテル油(NOKクリューバー製品BARRIERTA J400 FLUID、動粘度(40℃)390mm2/秒)60gとフッ素系有機溶剤(3M社製品ノベック 7300)60gを加えた後(以上合計量600g)、ホモジナイザを用いて、回転数3000rpmで2分間予備乳化を行い、さらに高圧ホモジナイザ(日本精機製)を用いて、圧力600kgf/cm2(58.8MPa)で乳化処理し、パーフルオロポリエーテル油エマルジョンを565g(回収率94%)得た。
【0036】
得られたパーフルオロポリエーテル油エマルジョンを、室温条件下または40℃で1ヶ月経過後の沈殿発生状態を、下記基準で評価した。
(保存安定性評価)
◎:沈殿がほぼゼロ
○:沈殿が底面に微量析出している
△:沈殿が底面ほぼ一面に薄く析出しているが、底面から液の表面全体がみえる
×:沈殿が底面全体に析出しており、底面からは液の表面全体がみえない
あるいは沈殿が大量に析出しており、分層している
【0037】
実施例2~12
実施例1において、乳化剤水溶液、PVP 10%K90、水溶性有機溶剤、フッ素系有機溶剤およびパーフルオロポリエーテル油の種類、使用量(合計600g)が種々変更された。
IPA:イソプロパノール
ノベック 7200:3M社製品
AK-225: AGC製品
MTF-TFM:セントラル硝子製品
AE-3000:AGC製品
J100:NOKクリューバー製品、動粘度(40℃)95mm2/秒
J800:NOKクリューバー製品、動粘度(40℃)800mm2/秒
【0038】
得られた結果は、実施例1と共に、次の表1-1~1-2に示される。
実施例3のエマルジョンの平均粒子径は100nmであり、また保存安定性は◎であり、安定なエマルジョンが形成されていることが確認された。このエマルジョンを、室温条件下(20~25℃)および40℃でそれぞれ1ヶ月間静置した後の平均粒子径は、それぞれ105nm、110nmという値が得られ、また保存安定性は○であった。同様に、実施例10~11についても、経時的平均粒子径が測定された。
【0039】
なお、平均粒子径の測定は、日機装製マイクロドラック粒度分布計UPA 150を用い、動的光散乱法によって行われた。

表1-1
実施例
〔組成;g〕
乳化剤水溶液 418.5 297 357 357 357 390
PVP 10%K90 1.5 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
HG 60 60 60 60 60 30
ノベック 7300 60
ノベック 7200 60
AK-225 180 60 60 57
J400 60 60 120 120 120
J800 120
〔エマルジョン〕
回収量 (g) 565 563 555 568 565 565
回収率 (%) 94 94 93 95 94 94
〔保存安定性〕
初期 ○ ○ ◎ ○ ○ ○
室温、1ヶ月経過後 ○ ○ ○ ○ ○ ○
40℃、1ヶ月経過後 △ ○ ○ ○ ○ ○
〔平均粒子径、nm〕
初期 100
室温、1ヶ月経過後 105
40℃、1ヶ月経過後 110

表1-2
実施例 10 11 12
〔組成;g〕
乳化剤水溶液 357 357 357 357 297.5 297.5
PVP 10%K90 3.0 3.0 3.0 3.0 2.5 2.5
IPA 25
HG 60 60 60 30 25
ノベック 7300 30 60 50 50
MTF-TFM 60
AE-3000 60 30 30 125 125
J100 120
J800 120 120 120 100 100
〔エマルジョン〕
回収量 (g) 570 556 550 553 553 550
回収率 (%) 95 93 92 92 92 92
〔保存安定性〕
初期 ○ ○ ○ ◎ ◎ ○
室温、1ヶ月経過後 ○ ○ ○ ○ ○ ○
40℃、1ヶ月経過後 △ △ ○ ○ ○ ○
〔平均粒子径、nm〕
初期 131 108
室温、1ヶ月経過後 135 110
40℃、1ヶ月経過後 140 111
【0040】
比較例1~4
実施例1において、フッ素系有機溶剤が用いられず、他の成分が種々変更された。得られた結果は、次の表2に示される。
PPG400:ポリプロピレングリコール(日油製品ユニオール D-400)
J10:NOKクリューバー製品、動粘度(40℃)約10mm2/秒

表2
比較例
〔組成;g〕
乳化剤水溶液 420 480 480 480
PVP 10%K90 60
IPA 60
HG 60
PPG 60
J10 60
J400 120 60 60
〔保存安定性〕
初期 ○ ○ ○ ○
室温、1ヶ月経過後 △ △ △ △
40℃、1ヶ月経過後 × × × ×
【0041】
実施例13~17、比較例5
実施例3において、含フッ素化合物、25%NH3水溶液、水溶性有機溶剤、フッ素系有機溶剤およびパーフルオロポリエーテル油の種類、使用量が種々変更された。得られた結果は、次の表3に示される。なお、保存安定性は、40℃、6ヶ月経過後についても評価された。
FHP-2-OH:F(CF2)6CH2CH2PO(OH)2
25%NH3水溶液:25重量%アンモニア水溶液

表3
実-13 実-14 実-15 実-16 実-17 比-5
〔組成;g〕
FHP-2-OH 3.5 9.9 16.1 17.5 10.5 3.5
25%NH3水溶液 2.3 6.6 10.7 11.7 7.0 2.3
水 142.9 174.3 216.4 161.6 120.5 204.9
PVP 10%K90 1.8 1.8 1.8 1.8 1.8
HG 17.5 17.5 17.5 17.5 17.5
ノベック 7300 35.1 35.1 35.1 35.1 35.1
AE-3000 17.6 17.6 17.6 17.6 17.6
J800 130 87.8 35.1 87.8 140.4 140.4
(合計) 350.7 350.6 350.3 350.5 350.4 351.1
〔エマルジョン〕
回収量 (g) 299 305 306 322 308 321
回収率 (%) 85 87 87 92 88 91
〔保存安定性〕
初期 ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○
室温、1ヶ月経過後 ◎ ○ ○ ○ ◎ ○
40℃、1ヶ月経過後 ○ ○ ○ ○ ○ ×
40℃、6ヶ月経過後 ○ ○ ○ ○ ○ ×
〔平均粒子径、nm〕
初期 198 125 55 132 167
室温、1ヶ月経過後 203 128 57 130 165
40℃、1ヶ月経過後 193 136 61 128 163