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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】心拍解析装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20230125BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20230125BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20230125BHJP
   A61B 5/363 20210101ALI20230125BHJP
【FI】
A61B5/0245 100D
A61B5/33 110
A61B5/352
A61B5/363
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019075584
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020171534
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 匡章
(72)【発明者】
【氏名】関川 和広
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083415(JP,A)
【文献】米国特許第6216035(US,B1)
【文献】特表2012-525865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーシングパルスを出力して心臓を拍動させるペーシング装置が取り付けられた生体からの電気信号に基づいて生体の心拍を解析する心拍解析装置であって、
前記電気信号に基づいて生体の心拍を検出する心拍検出部と、
前記電気信号に基づいて前記ペーシングパルスの出力を検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部で検出された前記ペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、前記心拍検出部で検出された心拍が前記ペーシングパルスによるペーシング拍か否かを判定する心拍判定部と、
前記心拍判定部において判定されたペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍に含まれる場合に、生体において前記ペーシングパルスに起因するペーシング頻拍が発生したと判定する頻拍判定部と、
前記頻拍判定部の判定結果に基づいて前記ペーシング頻拍の発生を報知する報知部とを備える心拍解析装置。
【請求項2】
前記頻拍判定部は、前記心拍判定部において判定された前記ペーシング拍が所定の連続発生数以上で発生した場合に、前記ペーシング拍が前記所定の割合以上で心拍に含まれると判定する請求項1に記載の心拍解析装置。
【請求項3】
前記心拍判定部は、前記心拍検出部で検出された前記心拍の検出タイミングおよび前記パルス検出部で検出された前記ペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、前記ペーシングパルスによるペーシング部位に応じた前記ペーシング拍の種類を判別し、
前記頻拍判定部は、前記心拍判定部で判別された同じ種類の前記ペーシング拍が心拍に前記所定の割合以上で含まれる場合に、前記ペーシング頻拍が発生したと判定する請求項1または2に記載の心拍解析装置。
【請求項4】
前記頻拍判定部は、前記心拍判定部で判別された前記ペーシング拍の種類が予め指定されたペーシング拍の種類と同じである場合に、前記ペーシング拍が前記所定の割合以上で心拍に含まれるか否かを判定する請求項3に記載の心拍解析装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記心拍判定部で判別された前記ペーシング拍の種類を報知する請求項3または4に記載の心拍解析装置。
【請求項6】
前記所定の心拍数および前記所定の割合の少なくとも一方は、使用者により予め設定される請求項1~5のいずれか一項に記載の心拍解析装置。
【請求項7】
前記心拍判定部は、前記パルス検出部で検出された前記ペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、前記心拍検出部で検出された心拍が生体自身の自己拍か否かを判定し、
前記頻拍判定部は、前記心拍判定部において判定された前記自己拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍に含まれる場合に、生体自身による自己頻拍が発生したと判定し、
前記報知部は、前記頻拍判定部の判定結果に基づいて前記自己頻拍の発生を報知する請求項1~6のいずれか一項に記載の心拍解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、心拍解析装置に係り、特に、ペーシング装置が取り付けられた生体からの電気信号に基づいて生体の心拍を解析する心拍解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体に配置された電極から電気信号を入力し、その電気信号に基づいて生体の心拍を解析する心拍解析装置が提案されている。心拍解析装置は、例えば、電気信号に基づいて生体の心拍数を算出することで頻拍などの不整脈を判定することができる。不整脈は、早急な治療が必要になる場合も多く、その発生を正確に判定することが求められている。
【0003】
そこで、不整脈を正確に判定する技術として、例えば、特許文献1には、不整脈が基準波形とされる不具合を防ぐ心電図解析装置が提案されている。この心電図解析装置は、生体の一拍毎の心電図波形を基準波形と比較して不整脈か否かを判定するため、不整脈を正確に判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-150826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ペーシングパルスを出力して心臓を拍動させるペースメーカーなどのペーシング装置が生体に取り付けられている場合に、特許文献1の心電図解析装置は、心電図に表示された頻拍がペーシングパルスに起因するペーシング頻拍であるか否かを判定しない。そのため、ペーシング頻拍と生体自身の自己頻拍とを区別することに改良の余地が残されていた。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、ペーシング頻拍をより明確に判別する心拍解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る心拍解析装置は、ペーシングパルスを出力して心臓を拍動させるペーシング装置が取り付けられた生体からの電気信号に基づいて生体の心拍を解析する心拍解析装置であって、電気信号に基づいて生体の心拍を検出する心拍検出部と、電気信号に基づいてペーシングパルスの出力を検出するパルス検出部と、パルス検出部で検出されたペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、心拍検出部で検出された心拍がペーシングパルスによるペーシング拍か否かを判定する心拍判定部と、心拍判定部において判定されたペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍に含まれる場合に、生体においてペーシングパルスに起因するペーシング頻拍が発生したと判定する頻拍判定部と、頻拍判定部の判定結果に基づいてペーシング頻拍の発生を報知する報知部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、頻拍判定部が、心拍判定部において判定されたペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍に含まれる場合に、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定するので、ペーシング頻拍をより明確に判別する心拍解析装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る心拍解析装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1の動作を示すフローチャートである。
図3】ペーシングパルスにより調整される心拍波形の様子を示す図である。
図4】実施の形態2に係る心拍解析装置の要部を示すブロック図である。
図5】実施の形態2の動作を示すフローチャートである。
図6】実施の形態3に係る心拍解析装置の要部を示すブロック図である。
図7】実施の形態3の動作を示すフローチャートである。
図8】実施の形態4の動作を示すフローチャートである。
図9】実施の形態5の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る心拍解析装置1の構成を示す。心拍解析装置1は、電極2に接続された検出部3を有し、この検出部3に心拍判定部4、頻拍判定部5および報知部6が順次接続されている。また、検出部3、心拍判定部4および頻拍判定部5に解析制御部7が接続され、この解析制御部7に操作部8および格納部9が接続されている。
【0011】
電極2は、ペーシング装置が取り付けられた生体に配置され、生体からの電気信号を入力する。ここで、ペーシング装置は、生体の心臓に向けてペーシングパルス(作用パルスの一種)を順次出力することで心臓を拍動させるものである。このため、電極2には、心臓の動きを示す電気信号だけでなく、ペーシング装置から出力されたペーシングパルスも入力されることになる。
なお、ペーシング装置としては、例えばペースメーカーなどが挙げられる。
【0012】
検出部3は、電極2にそれぞれ接続された心拍検出部3aおよびパルス検出部3bを有する。
心拍検出部3aは、電極2に入力された電気信号に基づいて生体の心拍を検出するものである。例えば、心拍検出部3aは、電極2に入力される電気信号の波形を予め保存された心拍の基準波形と比較して、その類似性に基づいて生体の心拍を検出することができる。ここで、心拍検出部3aは、生体自身で心臓を拍動させた自己拍だけでなく、ペーシングパルスに起因して生体の心臓が拍動したペーシング拍も検出する。
パルス検出部3bは、電極2に入力された電気信号に基づいてペーシング装置からのペーシングパルスの出力を検出するものである。例えば、パルス検出部3bは、電極2に差動信号として入力される電気信号をペーシングパルスとして検出することができる。
【0013】
心拍判定部4は、心拍検出部3aおよびパルス検出部3bにそれぞれ接続され、パルス検出部3bで検出されたペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、心拍検出部3aで検出された心拍がペーシングパルスによるペーシング拍か否かを判定する。
【0014】
頻拍判定部5は、心拍判定部4において判定されたペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍検出部3aにおいて検出される心拍に含まれる場合に、生体においてペーシングパルスに起因して心拍が速められたペーシング頻拍が発生したと判定する。
ここで、ペーシング拍の心拍数は、1分あたりのペーシング拍の数を示すもので、例えば、ペーシング拍のR-R間隔に基づいて求めることができ、一定時間内におけるペーシング拍の数に基づいて求めることもできる。また、ペーシング拍の割合は、ペーシング拍の発生率を示すもので、例えば直近数拍~数十拍または一定時間内の心拍に占めるペーシング拍の発生数から求めることができる。
【0015】
報知部6は、頻拍判定部5の判定結果に基づいてペーシング頻拍の発生を報知する。報知部6は、例えば、液晶ディスプレイなどのディスプレイ装置、プリンタ、スピーカーおよび警告灯などから構成することができる。
解析制御部7は、使用者により操作部8から入力された指令に基づいて心拍解析装置1内の各部の制御を行うものである。
【0016】
操作部8は、使用者からの指令を入力するためのもので、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
格納部9は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD-ROM、DVD-ROM、SDカード、CFカード、USBメモリ等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
ここで、心拍判定部4、頻拍判定部5および解析制御部7は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0017】
なお、心拍解析装置1は、心拍を解析する装置で利用することができ、例えば、心電図モニタ、診断用心電計、ホルター心電計、運動負荷心電図測定装置、心臓カテーテルポリグラフ、除細動器、ペースメーカー、植込み型除細動器(ICD)およびテレメータなどに内蔵して利用することができる。
【0018】
次に、図2のフローチャートを参照して実施の形態1の動作について説明する。
まず、図1に示す電極2が生体表面に配置され、生体から入力される電気信号が電極2から心拍検出部3aとパルス検出部3bにそれぞれ出力される。ここで、生体には、図示しないペーシング装置が取り付けられており、心臓を拍動させるためのペーシングパルスがペーシング装置から心臓に向けて出力される。
【0019】
電極2から心拍検出部3aに生体からの電気信号が入力されると、ステップS1で、心拍検出部3aがその電気信号に基づいて生体の心拍を検出する。例えば、心拍検出部3aは、生体からの電気信号を予め保存された心拍の基準波形と比較して、生体からの電気信号に含まれるQRS波、すなわち心室の興奮を示す波形を心拍として検出する。このようにして、心拍検出部3aは、自己拍とペーシング拍を含む心拍を検出することができる。
また、電極2からパルス検出部3bに生体からの電気信号が入力されると、ステップS2で、パルス検出部3bがその電気信号に基づいてペーシング装置からのペーシングパルスの出力を検出する。例えば、パルス検出部3bは、互いに異なる位置に配置された複数の電極2から差動信号として入力される電気信号をペーシングパルスとして検出することができる。
【0020】
このようにして、心拍検出部3aで検出された心拍の検出タイミングとパルス検出部3bで検出されたペーシングパルスの検出タイミングとが心拍判定部4に出力される。そして、ステップS3で、心拍判定部4が、パルス検出部3bで検出されたペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、心拍検出部3aで検出された心拍がペーシング拍および自己拍のどちらであるかを判定する。
例えば、心拍判定部4は、ペーシングパルスの検出タイミングから所定の時間以内に検出された心拍をペーシング拍と判定し、ペーシングパルスの検出タイミングから所定の時間を越えて検出された心拍を自己拍と判定することができる。この判定結果が、心拍判定部4から頻拍判定部5に出力される。
【0021】
心拍判定部4から頻拍判定部5に心拍の判定結果が入力されると、ステップS4で、頻拍判定部5が、心拍判定部4において判定されたペーシング拍が予め定められた所定の心拍数以上の心拍数を有するか否かを判定する。頻拍判定部5は、例えば、直近の数拍~数十拍または一定時間内に含まれるペーシング拍の一部または全てを用いて心拍数の平均値または中央値を算出し、その値が所定の心拍数以上か否かを判定することができる。ここで、所定の心拍数は、15bpm~300bpmの間で設定することが好ましく、例えば100bpmに設定することができる。また、頻拍判定部5は、心電図モニタの心電図解析およびアラーム機能などにおいて生体自身の自己頻拍、例えば心室性頻拍(VT)、上室性頻拍(SVT)および頻拍全般(TACHY)などを検出するために予め設定された心拍数に基づいて設定することもできる。
【0022】
頻拍判定部5は、ペーシング拍が所定の心拍数以上と判定された場合には、ステップS5に進み、ペーシング拍が予め定められた所定の割合以上で心拍に含まれるか否かを判定する。頻拍判定部5は、例えば、直近数拍~数十拍または一定時間内の心拍のうちペーシング拍が半分以上を占める場合に、ペーシング拍が所定の割合以上で心拍に含まれると判定することができる。また、頻拍判定部5は、直近数拍~数十拍または一定時間内の心拍のうちペーシング拍が最多数、すなわち自己拍より多い場合に、ペーシング拍が所定の割合以上で心拍に含まれると判定することもできる。
【0023】
このようにして、頻拍判定部5は、ペーシング拍が所定の割合以上で心拍に含まれると判定した場合には、ステップS6に進み、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定する。
ここで、頻拍判定部5は、ペーシング拍の心拍数のみに基づいてペーシング頻拍か否かを判定すると、例えばペーシング拍が自己拍を挟んである程度の広い間隔を空けて発生、すなわちペーシング拍の発生した割合が少ない場合でもペーシング頻拍が発生したと判定するおそれがある。そこで、頻拍判定部5は、ペーシング拍の心拍数とペーシング拍の割合とに基づいてペーシング頻拍を判定することにより、ペーシング頻拍の発生を高精度に判定することができる。
【0024】
続いて、頻拍判定部5が判定結果を報知部6に出力し、報知部6が、ステップS7で、頻拍判定部5の判定結果に基づいてペーシング頻拍の発生を使用者に報知する。報知部6は、例えば、生体自身の自己頻拍を報知する「Tachy」との表示に対してペーシング頻拍である旨の「P」を追加した「Tachy[P]」を表示してペーシング頻拍の発生を報知することができる。また、報知部6は、ペーシング頻拍を示す新たなマークなどを表示してペーシング頻拍の発生を報知することもできる。
【0025】
従来、図3に示すように、例えば生体の体温の変化などに応じてペーシング装置がペーシングパルスPの出力間隔を短くした場合に、その心拍波形Sを確認した使用者がペーシング頻拍と生体自身により拍動が速められた自己頻拍とを区別するためには医学的知識が要求される。
そこで、報知部6が、ペーシング頻拍の発生を使用者に報知することにより、使用者がペーシング頻拍の発生をより明確に判別することができ、心拍波形Sの把握における使用者の負担を軽減することができる。
【0026】
一方、ステップS4においてペーシング拍が所定の心拍数より小さいと判定された場合には、頻拍判定部5は、ステップS8に進み、生体においてペーシング頻拍が発生していないと判定する。また、頻拍判定部5は、ステップS5においてペーシング拍が所定の割合より低い割合で心拍に含まれると判定された場合にも、ステップS8に進み、生体においてペーシング頻拍が発生していないと判定する。
【0027】
本実施の形態によれば、頻拍判定部5が、心拍判定部4において判定されたペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍に含まれる場合に、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定するため、ペーシング頻拍をより明確に判別することができる。
【0028】
実施の形態2
上記の実施の形態1において、頻拍判定部5は、心拍判定部4において判定されたペーシング拍が所定の連続発生数以上で発生した場合に、ペーシング拍が所定の割合以上で心拍に含まれると判定することが好ましい。
例えば、図4に示すように、実施の形態1の頻拍判定部5に換えて頻拍判定部21を配置することができる。
【0029】
頻拍判定部21は、心拍判定部4において判定されたペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の連続発生数以上で心拍に含まれる場合に、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定する。このとき、所定の連続発生数は、例えば、予め装置内に設定されていてもよく、使用者により設定されてもよい。また、所定の連続発生数は、心電図モニタの心電図解析およびアラーム機能などにおいて自己頻拍、例えば心室性頻拍(VT)、上室性頻拍(SVT)、頻拍全般(TACHY)を検出するために予め設定された連続発生数に基づいて設定することもできる。ここで、所定の心拍数および所定の連続発生数は、使用者により操作部8を介して設定されることが好ましい。なお、ペーシング拍の連続発生数は、ペーシング拍が自己拍を挟まずに連続して発生した数を示すものである。
【0030】
次に、図5のフローチャートを参照して実施の形態2の動作について説明する。
実施の形態1と同様に、ステップS3で、心拍判定部4において心拍検出部3aで検出された心拍がペーシング拍か否かを判定し、その判定結果が心拍判定部4から頻拍判定部21に入力される。ここで、頻拍判定部21には、使用者によりペーシング拍の心拍数が予め設定されている。そこで、頻拍判定部21が、ステップS21で、心拍判定部4で判定されたペーシング拍が使用者により設定された心拍数以上か否かを判定する。なお、頻拍判定部21は、使用者が設定可能な心拍数を15bpm~300bpmの範囲に制限することが好ましい。
【0031】
頻拍判定部21は、ペーシング拍が使用者により設定された心拍数以上と判定した場合には、ステップS22に進み、ペーシング拍が所定の連続発生数以上か否かを判定する。ここで、頻拍判定部21には、使用者によりペーシング拍の連続発生数が予め設定、例えば6つ以上に設定されており、頻拍判定部21は、使用者により設定された連続発生数に基づいて判定する。なお、頻拍判定部21は、使用者が設定可能な連続発生数を3つ以上の値に制限することが好ましい。
そして、頻拍判定部21は、ペーシング拍が所定の連続発生数以上と判定した場合には、ステップS6に進み、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定する。
【0032】
このように、頻拍判定部21が、ペーシング拍の連続発生数に基づいてペーシング頻拍を判定するため、実施の形態1のようにペーシング拍の割合に基づいて判定する場合と比較して、ペーシング頻拍の発生をより高精度に判定することができる。また、頻拍判定部21は、使用者により予め設定された心拍数および連続発生数に基づいてペーシング頻拍を判定するため、生体にそれぞれ応じた判定を行うことができ、ペーシング頻拍の発生を正確に判定することができる。
【0033】
一方、ステップS21においてペーシング拍が使用者により設定された心拍数より小さいと判定され、またステップS22においてペーシング拍が使用者により設定された連続発生数より少ないと判定された場合には、実施の形態1と同様に、頻拍判定部21は、ステップS8で、生体においてペーシング頻拍が発生していないと判定する。
【0034】
本実施の形態によれば、頻拍判定部21が、心拍判定部4において判定されたペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の連続発生数以上で発生した場合に、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定するため、ペーシング頻拍の発生をより高精度に判定することができる。
【0035】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2において、頻拍判定部は、ペーシングパルスによるペーシング部位が同じペーシング拍同士が所定の割合以上で心拍に含まれる場合に、ペーシング頻拍が発生したと判定することが好ましい。
例えば、図6に示すように、実施の形態1の心拍判定部4および頻拍判定部5に換えて心拍判定部31および頻拍判定部32をそれぞれ配置することができる。
【0036】
心拍判定部31は、心拍検出部3aで検出された心拍の検出タイミングおよびパルス検出部3bで検出されたペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、ペーシングパルスによるペーシング部位に応じたペーシング拍の種類を判別する。ペーシング拍の種類としては、例えば、心房ペーシング、心房心室ペーシングおよび心室ペーシングによるペーシング拍が挙げられる。
頻拍判定部32は、心拍判定部31で判別された同じ種類のペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍に含まれる場合に、ペーシング頻拍が発生したと判定する。このとき、頻拍判定部32は、実施の形態2と同様に、所定の連続発生数以上で同じ種類のペーシング拍が発生した場合に、ペーシング拍が所定の割合以上で心拍に含まれると判定する。
【0037】
次に、図7のフローチャートを参照して実施の形態3の動作について説明する。
実施の形態1と同様に、ステップS2で、パルス検出部3bが電極2から入力される電気信号に基づいてペーシング装置からのペーシングパルスの出力を検出する。続いて、ステップS31で、心拍判定部31が、心拍検出部3aで検出された心拍の検出タイミングおよびパルス検出部3bで検出されたペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、ペーシング拍の種類を判別する。
【0038】
例えば、心拍判定部31は、ペーシング拍のQRS波とその直前に検出されたペーシングパルスとの時間間隔に基づいてペーシング拍の種類を判別することができる。具体的には、心拍判定部31は、ペーシングパルスとQRS波との時間間隔が長い、例えば0.1秒~0.2秒の場合には心房ペーシングによるペーシング拍と判別することができる。また、心拍判定部31は、ペーシングパルスとQRS波との時間間隔が短い、例えば0.1秒未満の場合には心室ペーシングによるペーシング拍と判別することができる。さらに、心拍判定部31は、QRS波に対する時間間隔が長い、例えば0.1秒~0.2秒の時間間隔のペーシングパルスと、QRS波に対する時間間隔が短い、例えば0.1秒未満の時間間隔のペーシングパルスとがQRS波の直前に連続して検出された場合には、心房心室ペーシングによるペーシング拍と判別することができる。
【0039】
この判別結果が心拍判定部31から頻拍判定部32に出力されると、頻拍判定部32は、ステップS32で、同じ種類のペーシング拍が予め定められた所定の心拍数以上で心拍に含まれるか否かを判定する。頻拍判定部32は、例えば、心房ペーシング、心房心室ペーシングおよび心室ペーシングによるペーシング拍がそれぞれ所定の心拍数以上か否かを判定する。
【0040】
頻拍判定部32は、同じ種類のペーシング拍が所定の心拍数以上で心拍に含まれると判定した場合に、ステップS33に進み、同じ種類のペーシング拍が予め定められた所定の連続発生数以上で心拍に含まれるか否かを判定する。頻拍判定部32は、例えば、心房ペーシング、心房心室ペーシングおよび心室ペーシングによるペーシング拍がそれぞれ所定の連続発生数以上で発生しているか否かを判定する。
そして、頻拍判定部32は、同じ種類のペーシング拍が所定の連続発生数以上で発生していると判定した場合には、ステップS6に進み、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定する。
【0041】
このように、頻拍判定部32が、同じ種類のペーシング拍毎に判定するため、ペーシング頻拍を詳細に判定することができる。なお、頻拍判定部32は、実施の形態2と同様に、使用者によりペーシング拍の種類毎に設定された心拍数および連続発生数に基づいてペーシング頻拍を判定することが好ましい。
一方、ステップS32において同じ種類のペーシング拍が所定の心拍数より小さいと判定され、またステップS33において同じ種類のペーシング拍が所定の連続発生数より少ないと判定された場合には、頻拍判定部32は、ステップS8に進み、生体においてペーシング頻拍が発生していないと判定する。
【0042】
本実施の形態によれば、頻拍判定部32が、心拍判定部31で判別された同じ種類のペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の連続発生数以上で心拍に含まれる場合に、ペーシング頻拍が発生したと判定するため、ペーシング頻拍を詳細に判定することができる。
なお、本実施の形態では、頻拍判定部32は、ペーシング拍の連続発生数に基づいてペーシング頻拍の発生を判定したが、実施の形態2と同様に、ペーシング拍の発生した割合に基づいてペーシング頻拍の発生を判定してもよい。
【0043】
実施の形態4
上記の実施の形態3において、頻拍判定部32は、心拍判定部31で判別されたペーシング拍の種類が予め指定されたペーシング拍の種類と同じである場合に、ペーシング拍が心拍に所定の割合以上で含まれるか否かを判定することが好ましい。
例えば、図8に示すように、実施の形態3と同様に、ステップS31で、心拍判定部31がペーシング拍の種類を判別し、その判別結果が心拍判定部31から頻拍判定部32に出力される。ここで、頻拍判定部32には、ペーシング拍の種類が使用者により予め指定されている。使用者は、例えば、心房ペーシング、心房心室ペーシングおよび心室ペーシングによるペーシング拍のうち1つ以上を指定することができる。そこで、頻拍判定部32は、ステップS41で、心拍判定部31で判別されたペーシング拍の種類が使用者により予め指定されたペーシング拍の種類と同じか否かを判定する。
【0044】
頻拍判定部32は、心拍判定部31で判別されたペーシング拍の種類が使用者により指定されたペーシング拍の種類と同じと判定した場合には、ステップS42に進み、心拍判定部31で判別されたペーシング拍が所定の心拍数以上か否かを判定する。そして、頻拍判定部32は、ペーシング拍が所定の心拍数以上と判定した場合には、ステップS43に進み、ペーシング拍が所定の連続発生数以上か否かを判定する。続いて、頻拍判定部32は、ペーシング拍が所定の連続発生数以上と判定すると、ステップS6に進み、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定する。
そして、報知部6が、ペーシング頻拍の発生と共に心拍判定部31で判別されたペーシング拍の種類を報知する。
【0045】
このように、頻拍判定部32は、予め指定された種類のペーシング拍についてペーシング頻拍の発生を判定するため、ペーシング頻拍をより詳細に判定することができる。また、報知部6が、ペーシング頻拍の発生と共にペーシング拍の種類を報知するため、使用者がペーシング頻拍をより的確に把握することができる。
なお、頻拍判定部32は、使用者により設定された心拍数および連続発生数に基づいてペーシング頻拍を判定することが好ましい。
【0046】
一方、ステップS41において指定種類のペーシング拍でないと判定され、またステップS42において指定種類のペーシング拍が所定の心拍数より小さいと判定され、またステップS43において指定種類のペーシング拍が所定の連続発生数より少ないと判定された場合には、頻拍判定部32は、ステップS8に進み、生体においてペーシング頻拍が発生していないと判定する。
【0047】
本実施の形態によれば、頻拍判定部32は、心拍判定部31で判別されたペーシング拍の種類が予め指定されたペーシング拍の種類と同じである場合にペーシング頻拍の発生を判定するため、ペーシング頻拍をより詳細に判定することができる。
【0048】
実施の形態5
上記の実施の形態1~4では、頻拍判定部は、ペーシング頻拍の発生のみを判定したが、ペーシング頻拍と共に自己頻拍の発生を判定することもできる。
例えば、図9に示すように、実施の形態1と同様に、ステップS8で、頻拍判定部5が、ペーシング頻拍でないと判定する。ここで、実施の形態1に示すように、図示しないステップS3において、心拍判定部4が、パルス検出部3bで検出されたペーシングパルスの検出タイミングに基づいて、心拍検出部3aで検出された心拍が生体自身の自己拍か否かを判定している。
【0049】
そこで、頻拍判定部5が、ステップS51で、心拍判定部4において判定された自己拍が予め定められた所定の心拍数以上か否かを判定する。頻拍判定部5は、自己拍が所定の心拍数以上と判定した場合には、ステップS52に進み、自己拍が予め定められた所定の割合以上で心拍に含まれるか否かを判定する。
なお、自己拍の心拍数は、1分あたりの自己拍の数を示すもので、例えば、自己拍のR-R間隔に基づいて求めることができ、一定時間内における自己拍の数に基づいて求めることもできる。また、自己拍の割合は、自己拍の発生率を示すもので、例えば直近数拍~数十拍または一定時間内の心拍に占める自己拍の発生数から求めることができる。
【0050】
続いて、頻拍判定部5は、自己拍が所定の割合以上で心拍に含まれると判定した場合には、ステップS53に進み、生体において自己頻拍が発生したと判定する。そして、報知部6が、ステップS7で、頻拍判定部5の判定結果に基づいて自己頻拍の発生を報知する。また、報知部6は、実施の形態1と同様に、ステップS6でペーシング頻拍が発生したと頻拍判定部5において判定された場合には、ペーシング頻拍の発生を報知する。
【0051】
このように、報知部6が、ペーシング頻拍の発生だけでなく、自己頻拍の発生も報知するため、使用者がペーシング頻拍と自己頻拍をより明確に判別することができる。
【0052】
一方、ステップS51において自己拍が所定の心拍数より小さいと判定され、またステップS52において自己拍が所定の割合より低い割合で心拍に含まれると判定された場合には、頻拍判定部5は、ステップS54で、生体において自己頻拍が発生していない、すなわち通常の自己拍であると判定する。
なお、報知部6は、頻拍判定部5の判定結果に基づいて通常の自己拍である旨を報知してもよい。
【0053】
本実施の形態によれば、頻拍判定部5が、自己拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍に含まれる場合に、生体自身による自己頻拍が発生したと判定するため、ペーシング頻拍と自己頻拍をより明確に判別することができる。
【0054】
なお、上記の実施の形態1~5において、頻拍判定部は、心拍判定部において順次判定されるペーシング拍の複数の間隔の差異が所定の範囲内か否かをさらに判定し、ペーシング拍の複数の間隔の差異が所定の範囲内と判定された場合には、生体においてペーシング頻拍が発生したと判定することが好ましい。ここで、頻拍判定部は、例えば、ペーシング拍のR-R間隔の差異に基づいて判定することができる。例えば、頻拍判定部は、ペーシング拍の間隔の標準偏差が所定の範囲内か否か、ペーシング拍の最大値と最小値の差が所定の範囲内か否か、またはペーシング拍の間隔とそれらの平均値との差が所定の範囲内か否かなどに基づいて判定することができる。
これにより、頻拍判定部は、例えばノイズなどを除くことができ、ペーシング頻拍の発生をより高精度に判定することができる。
【0055】
また、上記の実施の形態1~5では、頻拍判定部は、ペーシング拍が所定の心拍数以上か否かを判定した後に、ペーシング拍が所定の割合以上で心拍に含まれるか否かを判定したが、ペーシング拍が所定の心拍数以上で且つ所定の割合以上で心拍に含まれているか否かを判定できればよく、これに限られるものではない。例えば、頻拍判定部は、ペーシング拍が所定の割合以上で心拍に含まれるか否かを判定した後に、ペーシング拍が所定の心拍数以上か否かを判定することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 心拍解析装置、2 電極、3 検出部、3a 心拍検出部、3b パルス検出部、4,31 心拍判定部、5,21,32 頻拍判定部、6 報知部、7 解析制御部、8 操作部、9 格納部、P ペーシングパルス、S 心拍波形。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9