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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】電流検出用抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 13/00 20060101AFI20230125BHJP
   H01C 1/14 20060101ALI20230125BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20230125BHJP
   G01R 15/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H01C13/00 J
H01C1/14 Z
H01C7/00 320
G01R15/00 500
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019078735
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020178014
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 進
(72)【発明者】
【氏名】松原 周平
(72)【発明者】
【氏名】仲村 圭史
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/194413(WO,A1)
【文献】特開2012-1402(JP,A)
【文献】特開2004-31849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 13/00
H01C 1/14
H01C 7/00
G01R 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出用抵抗器であって、
扁平な抵抗体と、
導電性の金属材からなり前記抵抗体の下面に積層される第1電極ブロックと、
導電性の金属材からなり前記抵抗体の上面に積層される第2電極ブロックと、を備え、
前記第2電極ブロックは、前記抵抗体に接続される電極部と、前記電極部の側面から下方に向かって延びる延出部と、を有するブロック体である、
電流検出用抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載の電流検出用抵抗器であって、
前記延出部の下端面及び前記第1電極ブロックの下面は、互いに異なる配線にそれぞれ接続され、
前記延出部の前記下端面の面積は、前記第1電極ブロックの前記下面の面積よりも小さい、
電流検出用抵抗器。
【請求項3】
請求項2に記載の電流検出用抵抗器であって、
前記延出部の前記下端面と、前記第1電極ブロックの前記下面とは、同一平面上にある、
電流検出用抵抗器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電流検出用抵抗器であって、
前記延出部の前記下端面の面積は、前記電極部の前記側面の面積よりも大きい、
電流検出用抵抗器。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の電流検出用抵抗器であって、
前記延出部のうち積層方向と平行に延びる部分における前記積層方向に直交する断面の面積は、前記下端面まで同じ大きさである、
電流検出用抵抗器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の電流検出用抵抗器であって、
前記電極部の厚さは、前記電極部の抵抗値が前記抵抗体の抵抗値の10分の1以下となるように設定される、
電流検出用抵抗器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の電流検出用抵抗器であって、
前記抵抗体の比抵抗は、200μΩ・cm以上30000μΩ・cm以下である、
電流検出用抵抗器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の電流検出用抵抗器であって、
前記抵抗体は、
アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも一つにより形成された絶縁粒子と、
ニクロム、銅マンガン、及び銅ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つにより形成された金属体と、を含む、
電流検出用抵抗器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の電流検出用抵抗器であって、
前記抵抗体と、前記第1電極ブロックと、前記第2電極ブロックと、は、絶縁材によりモールド成形される、
電流検出用抵抗器。
【請求項10】
請求項9に記載の電流検出用抵抗器であって、
前記第2電極ブロックは、少なくとも一部が露出した状態でモールド成形される、
電流検出用抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出用抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1端子と、第2端子と、第1端子と第2端子との間に配置された抵抗体と、が厚み方向に積層された電流検出用抵抗器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-170478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような縦型の電流検出用抵抗器においては、上側の端子はボンディングワイヤを介して配線に接続されるが、比較的大きな電流の検出に電流検出用抵抗器が用いられる場合には、複数本のボンディングワイヤを接続する必要がある。このように複数本のボンディングワイヤを支障なく端子に接続するためには、端子の面積を大きくする必要があり、結果として電流検出用抵抗器が大型化するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、比較的大きな電流の検出に用いられる電流検出用抵抗器を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、電流検出用抵抗器は、扁平な抵抗体と、導電性の金属材からなり抵抗体の下面に積層される第1電極ブロックと、導電性の金属材からなり抵抗体の上面に積層される第2電極ブロックと、を備え、第2電極ブロックは、抵抗体に接続される電極部と、電極部の側面から下方に向かって延びる延出部と、を有するブロック体である。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、抵抗体の上面は、下方に向かって延びる延出部を有する第2電極ブロックにより基板上の配線パターンに接続される。このように抵抗体と配線パターンとの接続にボンディングワイヤではなくブロック体が用いられるため、比較的大きな電流の検出に用いられる縦型の電流検出用抵抗器を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る電流検出用抵抗器の実装構造を示す斜視図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿う断面を示す断面図である。
図3図3は、図2のB-B線に沿う断面を示す断面図である。
図4図4は、図2のC-C線に沿う断面を示す断面図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る電流検出用抵抗器の実装構造の変形例を示す図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る電流検出用抵抗器の実装構造を示す図である。
図7図7は、図6のD-D線に沿う断面を示す断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る電流検出用抵抗器の実装構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1~4を参照して、本発明の第1実施形態に係る電流検出用抵抗器10(以下、「シャント抵抗器10」という。)についてについて説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態におけるシャント抵抗器10が回路基板30上に実装された実装構造100を示す斜視図であり、図2は、図1のA-A線に沿う断面を示す断面図であり、図3は、図2のB-B線に沿う断面を示す断面図であり、図4は、図2のC-C線に沿う断面を示す断面図である。
【0012】
シャント抵抗器10は、電流を検出するために用いられる抵抗器であり、例えば、パワーモジュールに搭載され、例えば、数十アンペアから数百アンペア程度の比較的大きな電流を検出するために使用される。図1に示される実装構造100において、シャント抵抗器10は、比較的大きな電流が流れる回路を有する回路基板30上に実装される。
【0013】
回路基板30は、例えばガラスエポキシ基板やセラミック基板、メタルコア基板などからなる基板31と、基板31の一面に例えば銅箔などの導電性パターンにより形成される配線としての第1配線パターン32及び第2配線パターン33と、を有する。第1配線パターン32と第2配線パターン33とは、所定の隙間をあけて互いに対向する方向に延びて形成される。第1配線パターン32及び第2配線パターン33には、シャント抵抗器10の後述の電極ブロック12,13がそれぞれ接続され、図1に矢印で示される方向に電流が流れる。なお、これは電流方向の例示であり、これに限定されず、逆方向に流すものでもよい。
【0014】
シャント抵抗器10は、上下方向に扁平な抵抗体11と、導電性を有する金属材により形成される第1電極ブロック12及び第2電極ブロック13と、を備える。図2に示すように、抵抗体11の下面11aには、第1電極ブロック12が積層され、抵抗体11の上面11bには第2電極ブロック13が積層される。
【0015】
このように、扁平な抵抗体11に対して上下に電極を積層することによって、シャント抵抗器10は縦型構造の抵抗器となる。この実施例では、抵抗体11には、図2に矢印で示されるように、下方に配置される第1電極ブロック12から上方に配置される第2電極ブロック13へと向かう電流が流れる。
【0016】
縦型構造のシャント抵抗器10は、下面が平坦であるため、回路基板30への実装が容易であり、また、下面の面積を小さくし実装面積を小さくすることで実装密度を向上させることが可能である。また、縦型構造のシャント抵抗器10では、抵抗体11が金属製の第1電極ブロック12を介して基板31に近接して配置されることになるため、基板31を介して抵抗体11で生じた熱を容易に放熱させることができる。
【0017】
また、縦型構造のシャント抵抗器10では、電流が流れる方向における抵抗体11の厚さH1を薄くすることによって自己インダクタンスを小さくすることが可能であり、インダクタンスに起因する高周波電流の検出誤差を抑制することもできる。
【0018】
抵抗体11は、図2及び図3に示されるように、積層方向に直交する断面形状が略正方形であり、積層方向における厚さH1が比較的薄い直方体状に形成される。なお、抵抗体11は、積層方向に直交する断面形状が円形である円柱状に形成されたものであってもよい。
【0019】
抵抗体11の厚さH1は、シャント抵抗器10の自己インダクタンス値が小さくなるように、数mm(ミリメートル)以下、例えば、0.2mm程度に設定される。一方、抵抗体11の一辺の長さL1は、回路基板30への実装を容易とするために、抵抗体11の厚さH1よりも大きい数mm、例えば3mm程度に設定される。
【0020】
また、シャント抵抗器10における電流経路は、抵抗体11の厚さH1方向となるため、一般的なシャント抵抗器の電流経路に比べて短くなる。このため、抵抗体11の比抵抗(体積抵抗値)は、一般的なシャント抵抗器の抵抗材料として用いられる合金単体の比抵抗に比べて大きな値に設定される。
【0021】
シャント抵抗器10が比較的大きな電流を検出するために用いられる場合は、抵抗体11の抵抗値を50μΩ以上1,000μΩ以下の範囲内の値に設定することが想定される。それゆえ、抵抗体11を構成する抵抗材料としては、比抵抗(体積抵抗率)が、一般的なシャント抵抗器における抵抗体の比抵抗(50μΩ・cm~100μΩ・cm)に比べて大きい200μΩ・cm(マイクロオームセンチメートル)以上、30000μΩ・cm以下の範囲内に設計可能なものが用いられる。
【0022】
具体的には、抵抗体11の厚さH1を0.2mm、抵抗体11の一辺の長さL1を3mm、とした場合に、抵抗体11の抵抗値を50μΩとするには、抵抗体11の比抵抗は約225μΩ・cmとなる。また、抵抗体11の厚さH1を0.2mm、抵抗体11の一辺の長さL1を3mm、とした場合に、抵抗体11の抵抗値を1,000μΩとするには、抵抗体11の比抵抗は約4,500μΩ・cmとなる。また、抵抗体11の比抵抗を大きくすることによって、同じ抵抗値を有する抵抗体11の厚さH1を薄くすることが可能である。このように、抵抗体11の厚さH1は、比抵抗の大きさを変えることによって適宜変更することが可能である。
【0023】
このような抵抗材料としては、導電性を有する金属体の粉末と絶縁性を有する絶縁粒子とを混合して形成されたものが用いられる。より具体的には、抵抗材料は、金属体を形成するための金属粉と絶縁粒子とを焼結した焼結体であり、絶縁粒子とこの絶縁粒子を囲む三次元網目状の金属体とによって構成される。
【0024】
焼結前の金属粉としては、アスペクト比が1.0以上2.0以下の範囲内にある粒子を用いるのが好ましい。また、金属粉としては粒径が0.5μm以上20μm以下の範囲内にある粒子を用い、絶縁粒子としては粒径が0.1μm以上10μm以下の範囲内にある粒子を用いることができる。
【0025】
ここで、抵抗体11の抵抗材料を構成する金属体と絶縁粒子とについて説明する。
【0026】
<金属体>
抵抗体11の抵抗材料の金属体としては、一般的なシャント抵抗器の抵抗材料を用いることができる。抵抗特性の安定性を確保する観点から、大電流の検出に適した金属材料、例えば抵抗体11の温度変化による抵抗値の変化の割合が小さな合金が好ましい。
【0027】
具体例としては、ニクロムや、マンガニン(登録商標)、ゼラニン(登録商標)、銅ニッケルなどの抵抗材料から選択される少なくとも一つの合金が挙げられる。特に、抵抗材料の抵抗値を確保する観点からニクロムを用いるのが好ましい。また、加工性の観点からはマンガニン(登録商標)を用いることが好ましい。このように、抵抗体11の抵抗材料の金属体としては、ニクロム、銅マンガン、及び銅ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つを用いて形成するのが好ましい。
【0028】
ここにいうニクロムは、Ni-Cr系合金、又はこれを主成分とする合金であり、銅マンガンは、Cu-Mn系合金、又はこれを主成分とする合金であり、銅ニッケルは、Cu-Ni系合金、又はこれを主成分とする合金である。なお、マンガニン(登録商標)は、Cu-Mn-Ni系合金、又はこれを主成分とする合金であり、ゼラニン(登録商標)は、Cu-Mn-Sn系合金、又はこれを主成分とする合金である。
【0029】
<絶縁粒子>
一方、抵抗体11の抵抗材料の絶縁粒子としては、絶縁性に加えて耐熱性に優れたセラミックス材料を用いることができる。例えば、熱応力による接合部のクラックの発生を抑制する観点から、酸化アルミニウム(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si34)及びジルコニア(ZrO2)からなる群から選択される少なくとも一つのセラミックス材料が挙げられる。
【0030】
上述のセラミックス材料の中では、放熱性とヒートサイクル耐久性の観点から、絶縁材料として広く利用されている酸化アルミニウム(アルミナ)を用いることが好ましい。また、より高い放熱性が要求される用途では、熱伝導度の大きい窒化アルミニウム(窒化アルミ)を選択することが好ましく、高いヒートサイクル耐久性が要求される用途では、窒化ケイ素を選択することが好ましい。
【0031】
次に、抵抗体11の抵抗材料の製造方法について説明する。
【0032】
抵抗体11の抵抗材料の製造方法は、導電性を有する金属粉(金属の粉末)と絶縁性を有する絶縁粉(絶縁体の粉末)とを混合する混合工程と、混合により得られた混合粉末を所定の温度において一軸加圧法により混合粉体を加圧しながら焼結する焼結工程と、を有する。
【0033】
混合工程においては、金属粉として融点が絶縁粉の融点よりも低い金属の粉末が用いられ、金属粉の粒径は絶縁粉の粒径に対して同等又は小さくなるように造粒するのが好ましい。
【0034】
焼結工程においては、例えば、混合粉体の容器を真空に近い状態にすることで混合粉体をプレスする。なお、不活性雰囲気で混合粉体をプレスしてもよい。プレス圧を高くするほど、抵抗体11の抵抗材料の比抵抗は低下するものの、電流が流れる導通経路(電流経路)を確保しやすくなる傾向がある。このため、プレス圧を高めに設定するのが好ましい。また、所定の温度は、金属塊の融点よりも低い温度であり、金属塊の融点よりも15%程度低い温度に設定するのが好ましい。
【0035】
上述の製造方法により、抵抗体11の抵抗材料において絶縁粒子間を金属体が三次元網目状に形成される。
【0036】
上記構成の抵抗体11に積層される第1電極ブロック12及び第2電極ブロック13は、無酸素銅やアルミ合金といった導電性の高い金属材により形成されるブロック体である。第1電極ブロック12は、抵抗体11の下面11aと第1配線パターン32とを接続可能な形状に形成され、第2電極ブロック13は、抵抗体11の上面11bと第2配線パターン33とを接続可能な形状に形成される。
【0037】
第1電極ブロック12は、抵抗体11と同様に、積層方向に直交する断面形状が略正方形であり、積層方向における厚さH2が比較的薄い直方体状に形成される。
【0038】
第1配線パターン32に接合される第1電極ブロック12の下面12aには、めっき層16が形成される。めっき層16としては、実装時のはんだ濡れ性を向上させるためにスズ(Sn)めっきが施される。なお、実装する際のはんだによって第1電極ブロック12が侵食されることを抑制するために、ニッケル(Ni)めっき層をさらに設けてもよい。また、めっき層16としては、スズ(Sn)やニッケル(Ni)以外に、銅(Cu)や銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銀-パラジウム(Ag-Pd)合金、金(Au)、金-パラジウム(Au-Pd)等のめっきが施されてもよい。
【0039】
第1電極ブロック12の上面12bには、抵抗体11が接合される。上面12bと抵抗体11の接合は、抵抗体11とCu等の金属材を圧接したり、所定の接合層を介在させて抵抗体11と金属材を接合したり、等の方法が採用できる。
【0040】
第2電極ブロック13は、抵抗体11の上面11bに接続される電極部14と、電極部14の側面14aから下方に向かって延びる延出部15と、が一体的に形成されたブロック体であり、図2に示される断面視において略L字状に形成される。
【0041】
電極部14は、抵抗体11と同様に、積層方向に直交する断面形状が略正方形であり、積層方向における厚さH3が比較的薄い直方体状に形成された部分である。電極部14の下面14bには、抵抗体11が接合される。下面14bと抵抗体11の接合は、抵抗体11とCu等の金属材を圧接したり、所定の接合層を介在させて抵抗体11と金属材を接合したり、等の方法が採用できる。
【0042】
延出部15は、第2配線パターン33に接合される平坦な下端面15aを有し、積層方向に沿う下端面15aからの高さH4が、抵抗体11の厚さH1と第1電極ブロック12の厚さH2と電極部14の厚さH3とを足し合わせた高さとなる直方体状に形成される部分である。つまり、第2電極ブロック13は、延出部15の下端面15aが、第1電極ブロック12の下面12aと同一平面上に位置するように形成される。
【0043】
延出部15の下端面15aには、第1電極ブロック12の下面12aと同様に、めっき層17が形成される。めっき層17としては、実装時のはんだ濡れ性を向上させるためにスズ(Sn)めっきが施される。なお、実装する際のはんだによって第2電極ブロック13が侵食されることを抑制するために、ニッケル(Ni)めっき層をさらに設けてもよい。また、めっき層17としては、スズ(Sn)やニッケル(Ni)以外に、銅(Cu)や銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銀-パラジウム(Ag-Pd)合金、金(Au)、金-パラジウム(Au-Pd)等のめっきが施されてもよい。
【0044】
また、延出部15は、抵抗体11及び第1電極ブロック12と延出部15との間に所定の大きさの隙間C1が形成されるように、電極部14の側面14aから積層方向に対して直交する方向に延びる部分を有する。この部分には、隙間C1の大きさが所定の大きさよりも小さくなることを防止するために、抵抗体11の上面11b側の側面が当接可能な規制面15bが設けられる。なお、規制面15bは、図2に示すように、段差によって形成される面であってもよいし、下方に突出する突起によって形成される面であってもよい。また、規制面15bは、抵抗体11と第2電極ブロック13とを接合する際に、位置決めガイドとして利用されてもよい。隙間C1の大きさは、シャント抵抗器10に要求される耐電圧に応じて設定される。
【0045】
上記形状の第2電極ブロック13は、板材を折り曲げて形成されるのではなく、例えば棒状の素材を圧延加工等により電極部14及び延出部15を有する形状に成形することによってブロック状に形成される。
【0046】
例えば、板材を折り曲げることによって電極部14と延出部15とを形成した場合、スプリングバックが生じることにより、電極部14と延出部15とが成す角度が安定せず、延出部15の下端面15aの位置がばらつくことになる。このように延出部15の下端面15aの位置がばらついてしまうと、延出部15の下端面15aを、第1電極ブロック12の下面12aと同一平面上に位置させることができず、端子平坦度が大きくなる。この結果、はんだ付け強度の低下などによって延出部15の下端面15aと第2配線パターン33との接触状態が不安定となり、シャント抵抗器10に比較的大きい電流を流すことが困難になるおそれがある。
【0047】
これに対して圧延加工等によって電極部14と延出部15とをブロック状に形成した場合、電極部14と延出部15とが成す角度を安定して形成することが容易である。このため、延出部15の下端面15aを、第1電極ブロック12の下面12aと同一平面上に位置させることも容易であり、端子平坦度を小さくすることができる。この結果、第1電極ブロック12の下面12aと第1配線パターン32との接触状態及び延出部15の下端面15aと第2配線パターン33との接触状態が安定し、シャント抵抗器10に比較的大きい電流を流すことが可能となる。なお、第2電極ブロック13の成形方法は、圧延加工に限定されず、スプリングバックを生じさせることなく上記形状を成形することができればどのような方法であってもよく、例えば切削加工やプレス加工であってもよい。
【0048】
また、第2電極ブロック13を上記形状とすることにより、抵抗体11は、第2電極ブロック13を介して第2配線パターン33に接続される。このようにシャント抵抗器10が縦型の構造であったとしても、抵抗体11を第2配線パターン33に接続するために複数本のボンディングワイヤを接続する必要がなくなることによって、シャント抵抗器10の実装性を向上させることができる。また、複数本のボンディングワイヤを接続する必要がなくなることによって、電極端子の面積を小さくすることが可能となり、結果としてシャント抵抗器10を小型化することができる。
【0049】
また、ボンディングワイヤを使用した場合と比べ、上記形状の第2電極ブロック13を用いた場合の方が、抵抗体11及び電極部14を通過した電流が流れる部分の抵抗を小さくすることができるため、比較的大きな電流をシャント抵抗器10に流すことが可能となる。
【0050】
また、シャント抵抗器10では、抵抗体11、第1電極ブロック12及び第2電極ブロック13が、樹脂等の絶縁材19によってモールド成形される。具体的には、第1電極ブロック12の下面12aと、第2電極ブロック13の上面13aと、延出部15の下端面15aと、が露出されるようにこれらはモールド成形される。
【0051】
このようにモールド成形することによって、抵抗体11、第1電極ブロック12及び第2電極ブロック13の側面が全周に渡って絶縁材19により被覆され、また、抵抗体11及び第1電極ブロック12と延出部15との間の隙間C1に絶縁材19が充填される。
【0052】
シャント抵抗器を縦型の構造とした場合、シャント抵抗器を実装する際に生じるはんだフィレットによって、上側の電極と下側の電極とが短絡してしまうおそれがある。本実施形態のシャント抵抗器10では、上述のように抵抗体11、第1電極ブロック12及び第2電極ブロック13の側面が絶縁材19により被覆されているため、はんだフィレットが形成されず、第1電極ブロック12と第2電極ブロック13とが短絡することを防止することができる。
【0053】
ここで、第1電極ブロック12と抵抗体11とを基板31に実装した後に、上記形状の第2電極ブロック13に相当する部材を、取り付けることによっても、複数のボンディングワイヤを用いることなく比較的大きな電流を抵抗体11に流すことが可能になると考えられる。しかしながら、この場合、実装工程が多くなることで製造コストの増加や品質のばらつきが生じるおそれがある。
【0054】
これに対して、本実施形態のシャント抵抗器10は、上述のようにモールド成形によって一体的な構成となっているため、基板31上にシャント抵抗器10を設置し、はんだ付けを行うことで容易に実装することができる。このように、シャント抵抗器10は、実装性が良好であるとともに、扱いや管理が容易であることから実装構造100の製造コストを低減させることができる。
【0055】
また、モールド成形によって一体的な構成とする際、抵抗体11及び第1電極ブロック12と延出部15との間の隙間C1にも絶縁材19が充填されるため、第1電極ブロック12と第2電極ブロック13との絶縁性を向上させることができる。
【0056】
絶縁材19から露出している第2電極ブロック13の上面13aには、めっき層18が形成される。めっき層18としては、ワイヤーボンディング時に第2電極ブロック13が侵食されることを抑制するためにニッケル(Ni)めっきが施される。なお、めっき層17としては、ニッケル(Ni)以外に、スズ(Sn)や銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銀-パラジウム(Ag-Pd)合金、金(Au)等のめっきが施されておもよい。
【0057】
このように、第2電極ブロック13の上面13aは、ワイヤーボンディングが可能なボンディング面となっている。具体的には、第2電極ブロック13の上面13aにはワイヤーボンディングによって接続ワイヤ36が形成され、この接続ワイヤ36を介して、シャント抵抗器10における電圧降下を検出するための電位が出力される。
【0058】
一方、図1に示されるように、上記構成のシャント抵抗器10が実装される回路基板30の基板31には、シャント抵抗器10における電圧降下を検出するために、シャント抵抗器10の上流側の電位が導かれる第1電圧端子34と、シャント抵抗器10の下流側の電位が導かれる第2電圧端子35と、が設けられる。
【0059】
第1電圧端子34は、第2配線パターン33との間に所定の隙間をあけて隣接して配置され、第1配線パターン32から斜め方向に延びる接続配線34aを介して第1配線パターン32に接続される。
【0060】
第2電圧端子35は、第1配線パターン32との間に所定の隙間をあけて隣接して配置され、ワイヤーボンディングにより形成される接続ワイヤ36を介してシャント抵抗器10の第2電極ブロック13に接続される。
【0061】
第1電圧端子34及び第2電圧端子35には、第1電圧端子34と第2電圧端子35との間の電圧信号に基づいてシャント抵抗器10における電圧降下を検出し、検出された電圧降下に基づいてシャント抵抗器10を流れる電流値を演算する図示しない電流検出装置が接続される。なお、電流検出装置には、電圧信号を処理するためのオペアンプやマイコン等の信号処理手段が含まれる。
【0062】
ここで、基板31上に設けられる接続配線34aと、シャント抵抗器10と基板31とを接続する接続ワイヤ36と、は、回路基板30を上方から見たときに交差するように配置される。
【0063】
このように、検出用の電圧信号を引き出す引出線である接続配線34aと接続ワイヤ36とを空間において交差させることにより、これらを交差させない場合と比較して、接続配線34aと接続ワイヤ36との間に形成されるループ面積が小さくなり、接続配線34a及び接続ワイヤ36において生じる寄生インダクタンスを抑制することが可能となる。この結果、電流検出装置による電流の検出精度を向上させることができる。
【0064】
上記構成のシャント抵抗器10をさらに小型化するには、電極部14の厚さH3を薄くすることが考えられる。しかし、電極部14の厚さH3を薄くすると抵抗が増大し、電流検出精度が低下してしまうおそれがあることから電極部14の厚さH3は、所定の厚さ以上とする必要がある。
【0065】
以下に、電極部14の厚さH3の適正値について検討する。
【0066】
抵抗体11の抵抗値は、上述のように、50μΩ以上1,000μΩ以下の範囲に設定することが想定される。電流検出精度を向上させるためには、電極部14の抵抗値は、可能な限り低く、具体的には抵抗体11の抵抗値の10分の1以下となるように設定されることが好ましい。
【0067】
抵抗体11を通過し電極部14を流れる電流は、図2に矢印で示すように、延出部15に向かう。このため、電極部14の抵抗値Rは、図4に示すように、側面14aの面積をA1とした場合、以下の式(1)から求められる。
[数1]
R=ρ*L/A1 ・・・(1)
【0068】
上記式(1)におけるLは、側面14aに向かう電極部14の長さ、すなわち、電極部14の一辺の長さL1であり、ρは、電極部14を構成する銅の比抵抗(1.7μΩ・cm)である。
【0069】
抵抗体11の抵抗値が50μΩであり、電極部14の抵抗値Rを5μΩ以下にする場合、電極部14の一辺の長さL1を3mmとすると、電極部14の厚さH3は、3.4mm以上とする必要がある。また、抵抗体11の抵抗値が1,000μΩであり、電極部14の抵抗値Rを100μΩ以下にする場合、電極部14の一辺の長さL1を3mmとすると、電極部14の厚さH3は、0.17mm以上とする必要がある。
【0070】
このように、電極部14の厚さH3を抵抗体11の抵抗値に応じて適宜変更することによって、上記構成のシャント抵抗器10を用いた電流検出精度を向上させることができる。
【0071】
また、上記構成のシャント抵抗器10では、電流検出精度をさらに向上させるために、電極部14に続く延出部15の抵抗値も低減させている。具体的には、図3に示される積層方向と平行に延びる延出部15の積層方向に直交する断面における断面積A2は、下端面15aに至るまで同じ大きさであり、側面14aの断面積A1よりも大きく設定されている。
【0072】
このように電極部14を通過した電流が流れる延出部15の抵抗値も低減させることで上記構成のシャント抵抗器10を用いた電流検出精度を向上させることができる。なお、延出部15の下端面15aに向かって断面積A2を徐々に大きくすることによって延出部15の抵抗値をさらに低減させてもよい。ただし、断面積A2を徐々に大きくするとシャント抵抗器10の実装面積が大きくなってしまうため、シャント抵抗器10の実装性を向上させるためには、断面積A2は下端面15aまで同じ大きさであることが好ましい。
【0073】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0074】
シャント抵抗器10では、第1電極ブロック12と第2電極ブロック13との間に配置された抵抗体11は、下面11aに積層された第1電極ブロック12と、下方に向かって延びる延出部15を有する第2電極ブロック13とにより基板31上の配線パターン32,33に接続される。特に、抵抗体11の上面11bと第2配線パターン33との接続は、ワイヤーボンディングによって形成される接続ワイヤではなく、ブロック体である第2電極ブロック13によって行われる。
【0075】
このように抵抗体11の上面11bと第2配線パターン33との接続に、断面積の小さい接続ワイヤではなく、断面積の大きいブロック体を用いることによって、比較的大きな電流を流すことが可能な電流経路を確保することができる。この結果、シャント抵抗器10に比較的大きな電流を流すことが可能となる。
【0076】
また、抵抗体11の上面11bに設けられる電極に複数の接続ワイヤをボンディングする必要がないことから、抵抗体11の断面積や抵抗体11の上面11bに設けられる電極の面積を小さくすることで、比較的大きな電流の検出に用いられるシャント抵抗器10であっても小型化することが可能である。このようにシャント抵抗器10を小型化することによって、回路基板30へのシャント抵抗器10の実装性を向上させることができる。
【0077】
続いて、図5を参照して、第1実施形態に係るシャント抵抗器10の他の実装構造について説明する。
【0078】
図5には、上述の実装構造100とは異なる実装構造200が示されており、この実装構造200では、上記構成のシャント抵抗器10が、上述の回路基板30とは異なる回路基板130上に実装されている。
【0079】
回路基板130は、基板131と、基板131に設けられた第1配線パターン132及び第2配線パターン133と、を有する。第2配線パターン133は、直線状に延びる第1配線パターン132を挟んで第1配線パターン132と平行に延びる一対の分岐パターン133a,133bと、一対の分岐パターン133a,133bを接続する接続パターン133cと、を有する。
【0080】
また、基板131には、一対の分岐パターン133a,133bの一方の分岐パターン133aと第1配線パターン132との間に、第1配線パターン132から分岐された第1電圧端子134が設けられ、一対の分岐パターン133a,133bの他方の分岐パターン133bと第1配線パターン132との間に、第2電圧端子135が設けられる。
【0081】
シャント抵抗器10は、第1電極ブロック12の下面12aが第1配線パターン132に接続され、延出部15の下端面15aが第2配線パターン133の接続パターン133cに接続され、ワイヤーボンディングによって形成される接続ワイヤ136を介して第2電極ブロック13と第2電圧端子135とが接続されることにより、回路基板130に実装される。
【0082】
上記第1実施形態と同様に、第1電圧端子134及び第2電圧端子135には、図示しない電流検出装置が接続され、図5に矢印で示されるようにシャント抵抗器10を流れる電流の値が電流検出装置によって演算される。
【0083】
この変形例では、シャント抵抗器10に向かう電流が流れる第1配線パターン132とシャント抵抗器10を通過した電流が流れる第2配線パターン133とが平行に配置される。
【0084】
このため、第1配線パターン132を流れる電流により生じる磁束と、一対の分岐パターン133a,133bを流れる電流により生じる磁束と、が互いに打ち消し合うことで第1配線パターン132及び第2配線パターン133が有するインダクタンス成分が低減される。このように、シャント抵抗器10の周辺のインダクタンス成分を低減させることにより、例えば、20kHz以上の高周波電流がシャント抵抗器10に流れる場合であっても電流検出精度を向上させることができる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、図6及び図7を参照して、第2実施形態に係るシャント抵抗器110について説明する。図6は、第2実施形態におけるシャント抵抗器110が回路基板230上に実装された実装構造300を示す図であり、図7は、図6のD-D線に沿う断面を示す断面図である。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0086】
シャント抵抗器110の基本的な構成は、第1実施形態に係るシャント抵抗器10と同様である。シャント抵抗器110は、抵抗体11の上面に積層される第2電極ブロック113の延出部115の形状が異なっている点でシャント抵抗器10と相違する。
【0087】
図6及び図7に示すように、シャント抵抗器110が実装される回路基板230は、基板231と、基板231に設けられた第1配線パターン232及び第2配線パターン233と、を有する。第1配線パターン232と第2配線パターン233とは、所定の隙間をあけて互いに対向する方向に延びて形成される。第1配線パターン232には、シャント抵抗器110の第1電極ブロック12が、第2配線パターン233には、シャント抵抗器110の第2電極ブロック113がそれぞれ接続され、図6に矢印で示される方向に電流が流れる。
【0088】
また、基板231には、第1配線パターン232から分岐された第1電圧端子234と、第2配線パターン233と平行に延びる第2電圧端子235と、が設けられる。
【0089】
シャント抵抗器110の第2電極ブロック113の延出部115は、図7に示されるように、その下方において、第2配線パターン233に接続される第1延出部115aと、第2電圧端子235に接続される第2延出部115cと、に分岐される。
【0090】
つまり、シャント抵抗器110の第2電極ブロック113は、ワイヤーボンディングによって形成される接続ワイヤを介することなく、延出部115に形成された第2延出部115cを介して第2電圧端子235に直接接続される。
【0091】
このため、シャント抵抗器110では、第2電極ブロック113の上面をワイヤーボンディングのために露出させる必要がないことから、第2電極ブロック113の上面も絶縁材119により覆われている。
【0092】
第1延出部115aの第1下端面115bと第2延出部115cの第2下端面115dとには、第1電極ブロック12の下面12aと同様に、それぞれ、めっき層117a,117bが形成される。
【0093】
また、第1電圧端子234及び第2電圧端子235には、上記第1実施形態と同様に、図示しない電流検出装置が接続され、図6に矢印で示されるようにシャント抵抗器110を流れる電流の値が電流検出装置によって演算される。
【0094】
以上の第2実施形態によれば、上記第1実施形態による効果を奏するとともに、以下に示す効果を奏する。
【0095】
シャント抵抗器110では、第2電極ブロック113と第2電圧端子235との接続が、ワイヤーボンディングによって形成される接続ワイヤではなく、延出部115を分岐することにより形成された第2延出部115cを介して行われる。このように、回路基板230にシャント抵抗器110をはんだ付けすることで、第2電極ブロック113と第2電圧端子235との接続が行われることから、ワイヤーボンディングを行う必要がなくなるため、回路基板230へのシャント抵抗器110の実装性を向上させることができる。
【0096】
続いて、図8を参照して、第2実施形態に係るシャント抵抗器110の他の実装構造について説明する。
【0097】
図8には、上述の実装構造300とは異なる実装構造400が示されており、この実装構造400では、上記構成のシャント抵抗器110が、上述の回路基板230とは異なる回路基板330上に実装されている。
【0098】
回路基板330は、基板331と、基板331に設けられた第1配線パターン332及び第2配線パターン333と、を有する。第1配線パターン332と第2配線パターン333とは、互いに平行に延びて形成される。
【0099】
また、基板331には、第1配線パターン332から分岐された第1電圧端子334が設けられるとともに、上記構成のシャント抵抗器110の第2延出部115cに対向する位置から延びる第2電圧端子335が設けられる。
【0100】
シャント抵抗器110は、第1電極ブロック12の下面12aが第1配線パターン332に接続され、延出部115の第1下端面115bが第2配線パターン333に接続され、延出部115の第2下端面115dが第2電圧端子135に接続されることにより、回路基板330に実装される。
【0101】
上記第2実施形態と同様に、第1電圧端子334及び第2電圧端子335には、図示しない電流検出装置が接続され、図8に矢印で示されるようにシャント抵抗器110を流れる電流の値が電流検出装置によって演算される。
【0102】
この変形例では、シャント抵抗器110に向かう電流が流れる第1配線パターン332とシャント抵抗器10を通過した電流が流れる第2配線パターン333とが平行に配置される。
【0103】
このため、第1配線パターン332を流れる電流により生じる磁束と、第2配線パターン333を流れる電流により生じる磁束と、が互いに打ち消し合うことで第1配線パターン332及び第2配線パターン333が有するインダクタンス成分が低減される。このように、シャント抵抗器110の周辺のインダクタンス成分を低減させることにより、例えば、20kHz以上の高周波電流がシャント抵抗器110に流れる場合であっても電流検出精度を向上させることができる。
【0104】
以下に、上記各実施形態におけるシャント抵抗器10,110の作用効果について説明する。
【0105】
本実施形態によれば、シャント抵抗器10,110は、扁平な抵抗体11と、導電性の金属材からなり抵抗体11の下面11aに積層される第1電極ブロック12と、導電性の金属材からなり抵抗体11の上面11bに積層される第2電極ブロック13,113と、を備え、第2電極ブロック13,113は、抵抗体11に接続される電極部14と、電極部14の側面から下方に向かって延びる延出部15,115と、を有するブロック体である。
【0106】
この構成では、特に、抵抗体11の上面11bと第2配線パターン33,133,233,333との接続が、ワイヤーボンディングによって形成される接続ワイヤではなく、ブロック体である第2電極ブロック13,113によって行われる。
【0107】
このように抵抗体11の上面11bと第2配線パターン33,133,233,333との接続に、断面積の小さい接続ワイヤではなく、断面積の大きいブロック体を用いることによって、比較的大きな電流を流すことが可能な電流経路を確保することができる。この結果、シャント抵抗器10,110に比較的大きな電流を流すことが可能となる。
【0108】
また、抵抗体11の上面11bに設けられる電極に複数の接続ワイヤをボンディングする必要がないことから、抵抗体11の断面積や抵抗体11の上面11bに設けられる電極の面積を小さくすることで、比較的大きな電流の検出に用いられるシャント抵抗器10,110であっても小型化することが可能である。このようにシャント抵抗器10,110を小型化することによって、回路基板30,130,230,330へのシャント抵抗器10,110の実装性を向上させることができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、延出部15,115の下端面15a,115b及び第1電極ブロック12の下面12aは、互いに異なる配線パターンにそれぞれ接続され、延出部15,115の下端面15a,115bの面積は、第1電極ブロック12の下面12aの面積よりも小さい。
【0110】
このように、第2配線パターン33,133,233,333に接続される延出部15,115の下端面15a,115bの面積を、第1配線パターン32,132,232,332に接続される第1電極ブロック12の下面12aの面積よりも小さくすることにより、第1電極ブロック12と延出部15,115とが並ぶ方向におけるシャント抵抗器10,110の長さを短くすることが可能となる。この結果、シャント抵抗器10,110が小型化され、回路基板30,130,230,330へのシャント抵抗器10,110の実装性を向上させることができる。
【0111】
また、本実施形態によれば、延出部15,115の下端面15a,115bと、第1電極ブロック12の下面12aとは、同一平面上にある。
【0112】
延出部15,115を有する第2電極ブロック13,113はブロック体であるため、折り曲げ加工により延出部15,115を形成する場合と比較し、延出部15,115の下端面15a,115bの位置を第1電極ブロック12の下面12aの位置に精度よく合わせることが可能である。このように、延出部15,115の下端面15a,115bと第1電極ブロック12の下面12aとを同一平面上に位置させ、端子平坦度を小さくすることによって、回路基板30,130,230,330へのシャント抵抗器10,110の実装性を向上させることができる。
【0113】
また、本実施形態によれば、延出部15,115の下端面15a,115bの面積は、電極部14の側面14aの面積よりも大きい。
【0114】
このように、延出部15,115の下端面15a,115bの面積を、電極部14の側面14aの面積よりも大きくし、抵抗体11及び電極部14を通過した電流が流れる延出部15,115における抵抗値を低減させることでシャント抵抗器10,110を用いた電流検出精度を向上させることができる。
【0115】
また、本実施形態によれば、延出部15,115のうち積層方向と平行に延びる部分における積層方向に直交する断面の面積は、下端面15a,115bまで同じ大きさである。
【0116】
このように、積層方向と平行に延びる部分の延出部15,115の積層方向に直交する断面の面積を下端面15a,115bまで同じ大きさとすることにより、延出部15,115の抵抗値が極端に大きくなることを抑制しつつ、シャント抵抗器10,110を小型化することが可能である。この結果、回路基板30,130,230,330へのシャント抵抗器10,110の実装性を向上させることができる。
【0117】
また、本実施形態によれば、電極部14の厚さは、電極部14の抵抗値が抵抗体11の抵抗値の10分の1以下となるように設定される。
【0118】
このように、電極部14の厚さを、電極部14の抵抗値が抵抗体11の抵抗値の10分の1以下となるように設定し、抵抗体11を通過した電流が流れる電極部14における抵抗値を所定の大きさに制限することでシャント抵抗器10,110を用いた電流検出精度を向上させることができる。
【0119】
また、本実施形態によれば、抵抗体11の比抵抗は、200μΩ・cm以上30000μΩ・cm以下である。
【0120】
このように、抵抗体11の比抵抗を200μΩ・cm以上30000μΩ・cm以下の範囲内に設定することにより、抵抗体11の厚さが薄い縦型構造のシャント抵抗器10,110においても、抵抗体11の抵抗値を電流の検出に必要な抵抗値とすることができる。また、このように抵抗体11の比抵抗を比較的大きい値とすることによって、検出される電圧の信号レベルが上昇して検出電圧のS/N比(Signal/Noise比)が高くなり、結果として、シャント抵抗器10,110を用いた電流検出精度を向上させることができる。
【0121】
また、本実施形態によれば、抵抗体11は、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素及びジルコニアからなる群から選択される少なくとも一つにより形成された絶縁粒子と、ニクロム、銅マンガン、及び銅ニッケルからなる群から選択される少なくとも一つにより形成された金属体と、を含む。
【0122】
このように、温度変化による抵抗値の変化が小さい金属体と、熱膨張係数が低い絶縁性粒子と、から抵抗体11を構成することにより、抵抗体11の抵抗値を電流の検出に必要な抵抗値とすることができるとともに、熱応力を基板31,131,231,331の熱応力に近づけることでヒートサイクルにより抵抗体11と基板31,131,231,331との間にクラックが生じることを抑制することができる。
【0123】
また、本実施形態によれば、抵抗体11と、第1電極ブロック12と、第2電極ブロック13,113と、は、絶縁材19,119によりモールド成形される。
【0124】
このように、抵抗体11、第1電極ブロック12及び第2電極ブロック13,113の側面を絶縁材19,119により被覆することによって、縦型構造のシャント抵抗器10,110であっても、実装する際に生じるはんだフィレットによって、第1電極ブロック12と第2電極ブロック13,113とが短絡することを防止することができる。
【0125】
また、モールド成形によってシャント抵抗器10,110を一体的な構成とすることによって、シャント抵抗器10,110を基板31,131,231,331上に設置し、はんだ付けを行うことでシャント抵抗器10,110を容易に実装することが可能となる。このように、シャント抵抗器10,110は、実装性が良好であるとともに、扱いや管理が容易であることから実装構造100,200,300,400の製造コストを低減させることができる。
【0126】
また、本実施形態によれば、第2電極ブロック13は、少なくとも一部が露出した状態でモールド成形される。
【0127】
このように、第2電極ブロック13の少なくとも一部を露出させた状態でモールド成形することにより、第2電極ブロック13の表面に接続ワイヤ36をボンディングすることが可能となる。このため、シャント抵抗器10を流れる電流を検出するための電圧信号を第2電極ブロック13から容易に取り出すことができる。
【0128】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0129】
10,110 シャント抵抗器(電流検出用抵抗器)
11 抵抗体
12 第1電極ブロック
13,113 第2電極ブロック
14 電極部
15,115 延出部
19,119 絶縁材
30,130,230,330 回路基板
32,132,232,332 第1配線パターン(配線)
33,133,233,333 第2配線パターン(配線)
34,134,234,334 第1電圧端子
35,135,235,335 第2電圧端子
100,200,300,400 実装構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8