(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】III-N半導体構造およびIII-N半導体構造の形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20230125BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20230125BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20230125BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20230125BHJP
H01L 33/04 20100101ALI20230125BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L29/80 H
H01L33/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019097624
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ・ミン
(72)【発明者】
【氏名】グオ・ウェイミン
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132607(JP,A)
【文献】特開2011-216823(JP,A)
【文献】特開2016-100508(JP,A)
【文献】特開2014-036231(JP,A)
【文献】特開2011-100772(JP,A)
【文献】国際公開第2015/015800(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/338
H01L 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III-N半導体構造であって、
セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板(100)と、
少なくとも第1の超格子ブロック(231)と、前記第1の超格子ブロック(231)上に形成された第2の超格子ブロック(232)とを含む超格子(230)を備えるバッファ構造(200)と、
前記バッファ構造(200)上に配置されたIII-N半導体チャネル層(300)と、を備え、
前記第1の超格子ブロック(231)は、第1の超格子ユニット(231-1,231-2)の繰り返しシーケンスを含み、各第1の超格子ユニット(231-1,231-2)は、AlGaNの層のスタックを含み、前記スタックの隣接する層は、異なるアルミニウム含有量を有し、
前記第2の超格子ブロック(232)は、第2の超格子ユニット(232-1,232-2)の繰り返しシーケンスを含み、各第2の超格子ユニット(232-1,232-2)は、AlGaNの層のスタックを含み、前記スタックの隣接する層は、異なるアルミニウム含有量を有し、
前記第2の超格子ブロック(232)の平均アルミニウム含有量は、前記第1の超格子ブロック(231)の平均アルミニウム含有量より大き
く、
前記超格子(230)は、前記第2の超格子ブロック(232)の上に形成され、前記第2の超格子ブロック(232)の平均アルミニウム含有量よりも少ない平均アルミニウム含有量を有する上部超格子ブロック(230U)を含む、
半導体構造。
【請求項2】
前記バッファ構造(200)の前記超格子(230)は、複数の超格子ブロック(230L,231,232,230U)を含み、前記第1および第2の超格子ブロック(231,232)は、前記超格子(230)の超格子ブロックの隣接対を形成する請求項1に記載の半導体構造。
【請求項3】
前記超格子(230)は、前記第1の超格子ブロック(231)の下に形成され、前記第1の超格子ブロック(231)の平均アルミニウム含有量よりも大きい平均アルミニウム含有量を有する下部超格子ブロック(230L)を含む請求項1
または2に記載の半導体構造。
【請求項4】
前記超格子(230)は、前記第2の超格子ブロック(232)上に形成された第3の超格子ブロック(233)と、前記第3の超格子ブロック(233)上に形成された第4の超格子(234)ブロックとを含み、
前記第4の超格子ブロック(234)の平均アルミニウム含有量は、前記第3の超格子ブロック(233)の平均アルミニウム含有量よりも大きく、かつ、前記第3の超格子ブロック(233)の平均アルミニウム含有量は、前記第2の超格子ブロック(232)の平均アルミニウム含有量よりも小さい請求項1ないし
3のうちいずれか1項に記載の半導体構造。
【請求項5】
前記セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板(100)は、下部ウエハ(110)、上部半導体層(130)、および前記下部ウエハと前記上部半導体層との間の絶縁体層(120)を含み、前記バッファ構造(200)とIII-N半導体チャネル層(300)とを合わせた厚さは、上部半導体層(130)の厚さより大きい請求項1ないし
4のうちいずれか1項記載の半導体構造。
【請求項6】
前記バッファ構造(200)は、前記セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板(100)上に形成されたAlN核形成層(210)を含む請求項1ないし
5のうちいずれか1項に記載の半導体構造。
【請求項7】
前記バッファ構造(200)は、(Al)GaNの下部遷移層(220)をさらに備え、前記超格子(230)は、前記下部遷移層(220)上に形成される請求項
6に記載の半導体構造。
【請求項8】
前記バッファ構造(200)は、前記超格子(230)上に形成された(Al)GaNの上部遷移層(240)をさらに備える請求項1ないし
7のうちいずれか1項に記載の半導体構造。
【請求項9】
III-N半導体構造を形成するための方法であって、
前記方法は、
セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板(100)上にバッファ構造(200)を形成するステップを含み、
前記バッファ構造(200)を形成するステップは、
第1の超格子ブロック(231)上に少なくとも第1の超格子ブロック(231)と第2の超格子ブロック(232)とを含む超格子(230)を形成するステップを含み、
前記方法は、
前記バッファ構造(200)上にIII-N半導体チャネル層(300)をエピタキシャル成長させるステップと、を含み、
前記第1の超格子ブロック(231)は、第1の超格子ユニット(231-1,231-2)の繰り返しシーケンスをエピタキシャル成長させることによって形成され、各第1の超格子ユニット(231-1,231-2)は、AlGaN層のスタックを含み、前記スタックの隣接層は、異なるアルミニウム含有量を有し、
前記第2の超格子ブロック(232)は、第2の超格子ユニット(232-1,232-2)の繰り返しシーケンスをエピタキシャル成長させることによって形成され、各第2の超格子ユニット(232-1,232-2)は、AlGaN層のスタックを含み、前記スタックの隣接層は、異なるアルミニウム含有量を有し、
前記第2の超格子ブロック(232)の平均アルミニウム含有量は、前記第1の超格子ブロック(231)の平均アルミニウム含有量より大き
く、
前記超格子(230)を形成するステップは、前記第2の超格子ブロック(232)上に前記第2の超格子ブロック(232)の平均アルミニウム含有量よりも少ない平均アルミニウム含有量を有する上部超格子ブロック(230U)を形成するステップを含む、
方法。
【請求項10】
前記超格子(230)を形成するステップは、複数の超格子ブロック(230L,231,232,230U)を形成するステップを含み、前記第1および第2の超格子ブロック(231,232)は、前記超格子(230)の隣接する対を形成するステップを含む請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板(100)は、下部ウエハ(110)と、上部半導体層(130)と、前記下部ウエハと前記上部半導体層との中間にある絶縁体層(120)とを含み、前記バッファ構造(200)および前記III-N半導体チャネル層(300)は、上部半導体層(130)の厚さよりも大きい合計厚さで形成される請求項
9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の超格子ブロック(232)のインサイチュ曲率の時間変化率が0以下になるように、前記第2の超格子ブロック(232)を成長させる請求項
9ないし
11のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記超格子(230)の少なくとも1つの隣接する対の層の間に少なくとも部分的な歪み緩和が生じるように、前記超格子(230)を成長させる請求項
9ないし
12のうちいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は、III-N半導体構造に関する。本発明の概念はさらに、III-N半導体構造を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などのIII-N半導体は、高度な半導体デバイスの製造のための有望な候補である。III-N半導体デバイスは、高出力および高周波数用途での使用に特に重要である。III-N系デバイスは、典型的には、例えば、Si、サファイアおよびSiCなどの異種基板上にヘテロエピタキシによって成長させられる。エピタキシプロセスの例には、有機金属気相エピタキシ(MOVPE)および分子線エピタキシ(MBE)が含まれる。
【0003】
基板と活性III-Nデバイス層との間の格子および熱的不整合によって誘発される応力を管理し、したがって、満足できる材料品質および電気特性を有する活性層の成長を可能にするために、AlN/AlxGa1-xNの2層の多重繰り返しの超格子を含む中間バッファ構造を使用することができる。活性層と基板との間の漏れ防止能力に関しては、比較的厚いバッファを形成することが一般に有利である。しかしながら、厚いバッファを成長させることは、基板の塑性変形を回避し、またエピタキシ後冷却中に熱的不整合が導入された凹状ウエハの反りを補償するために、インサイチュ曲率に注意を払う必要がある。
【0004】
現在、III-N系デバイスは、一般に、Si、サファイアまたはSiCの基板上に形成されている。しかしながら、セミコンダクタ・オン・インシュレータ(SOI)タイプの基板上にIII-Nデバイスを形成することが望ましいであろう。SOI基板は、ボトムアップ方向に、ボトムハンドリングウエハ(例えば、Si、MoまたはAlN)、埋め込み酸化物(BOX)、および上部半導体層(例えば、Si、Ge、SiGeまたはSiC)を含む。
【0005】
従来のバルク基板と比較して、SOI基板の1つの特別な挙動は、格子および熱の不整合誘起応力に対するそれらの変形応答である。依然としていくつかの議論の対象となっているが、この現象は、SOI基板の半導体層の厚さがエピ成長したIII-N層または層スタックの厚さと同程度またはそれ以下であるときに生じる“歪分配効果”によって説明することができる。導入された応力の比較的大きくそして大部分でさえも、SOI基板の半導体層内の歪みによって対処される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バルク基板上で成長させるための一般的なIII-N超格子ベースのバッファ構造は、通常、成長中に圧縮応力を連続的に導入し、したがってエピタキシ後冷却中に熱的不整合導入引張応力を補償するように設計される。しかしながら、発明者らによって理解されるように、(III-N層の厚さと比較して)薄い半導体層を有するSOI基板上にこのようなバッファ構造を成長させると、歪分配効果による成長中のはるかに強いウエハ変形は、比較的薄い厚さを有するIII-Nスタックに対してさえも、最終的なウエハのワープ(warp)/ボウ(bow)を制御することを困難にする可能性がある。さらに、十分な漏れ防止能力を提供することは、より厚いバッファ構造は、歪分配効果のために、SOI基板の塑性変形(ボウ)および亀裂を生じさせる可能性があるため、より困難であり得る。
【0007】
したがって、本発明の概念の目的は、これらの課題を少なくとも部分的に軽減し、それによって、SOI基板上により厚いIII-N系デバイスを形成することを可能にすることである。さらなる目的および代替の目的は、以下から理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概念の一態様によれば、III-N半導体構造は、
セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板と、
少なくとも第1の超格子ブロックと、前記第1の超格子ブロック上に形成された第2の超格子ブロックとを含む超格子を備えるバッファ構造と、
前記バッファ構造上に配置されたIII-N半導体チャネル層と、を備え、
前記第1の超格子ブロックは、第1の超格子ユニットの繰り返しシーケンスを含み、各第1の超格子ユニットは、AlGaNの層のスタックを含み、前記スタックの隣接する層は、異なるアルミニウム含有量を有し、
前記第2の超格子ブロックは、第2の超格子ユニットの繰り返しシーケンスを含み、各第2の超格子ユニットは、AlGaNの層のスタックを含み、前記スタックの隣接する層は、異なるアルミニウム含有量を有し、
前記第2の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、前記第1の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量より大きい
半導体構造。
【0009】
したがって、超格子は、第1および第2の超格子ブロックによって形成された一対の超格子ブロックを含む。第2の超格子ブロックは、第1の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも大きい平均アルミニウム含有量を有する。これにより、(さらなる)圧縮応力を構造に導入することなく、または構造に引張応力をさらに与えることなく、製造中に一対の超格子ブロックをIII-N半導体構造に提供することが可能になる。したがって、一対の超格子ブロックは、エピタキシ中に、さらなる圧縮応力の増大を少なくとも打ち消すように、または構造内に既存の圧縮歪みをさらに低減するように作用することができる。したがって、第1および第2の超格子ブロックは、“非圧縮応力誘起対(non-compressive stress inducing pair)”の超格子ブロックと呼ばれることがある。
【0010】
この一対の超格子ブロックは、構造内に導入された応力、特にセミコンダクタ・オン・インシュレータ基板内に誘起された応力を制御するための手段を提供する。これにより、成長中のセミコンダクタ・オン・インシュレータ基板の変形の塑性変形を回避する範囲内に保つことが可能になる。したがって、漏れ防止能力を高めた比較的厚いバッファ構造を成長させることが可能となる。
【0011】
本明細書で使用するとき、表記“AlGaN”または“(Al)GaN”は、AlxGa1-xN、ここで、0≦x≦1を指すものとして理解されるべきである。したがって、AlGaNの層は、様々な割合のAlNとGaNの半導体合金とすることができる。しかしながら、AlGaNの層は、AlN(Gaを含まない)またはGaN(Alを含まない)の化合物半導体でもあり得る。AlGaN/(Al)GaN表記が異なる層に使用される場合、異なる層は異なる組成、すなわち、異なるxの値を示し得ることを理解されたい。
【0012】
“超格子(superlattice)”は、好ましくはそれからなる、多数の超格子ブロック、少なくとも2つの超格子ブロックを含む複合層構造であるが、3つ、4つまたはそれ以上のようなそれ以上も可能である。
【0013】
“超格子ブロック”は、複数回繰り返される超格子ユニットを含む、好ましくはそれからなる複合層構造であり、少なくとも2つ、しかしながら、それ以上、例えば3、4またはそれ以上も可能である。好ましくは、各それぞれの超格子ブロックの超格子ユニットは、互いに同一である。すなわち、第1超格子ブロックの超格子ユニットは、互いに同一であり、第2超格子ブロックの超格子ユニットは、互いに同一である。
【0014】
“超格子ユニット”は、好ましくは、AlGaNの層のスタックまたはラミネートからなる複合層構造であり、スタックの各層はアルミニウム含有量、すなわち、スタックの隣接層のアルミニウム含有量とは異なる、アルミニウムの割合を有する。2つの層が共通の界面を有する場合、それらは隣接していると言える。
【0015】
超格子ブロックの“平均アルミニウム含有量”とは、本明細書では超格子ブロック中のアルミニウムの割合を意味する。数学的には、AlGaNのj層の2つ以上の超格子ユニットの超格子ブロックの平均アルミニウム含有量AL%は、厚さDjおよびAlxjGa1-xjNの組成を有する各層jで、次のように表すことができる。
【0016】
【数1】
ここで、合計は、インデックスjを超える。
【0017】
セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板は、下部ウエハ、上部半導体層、および下部ウエハと上部半導体層との中間にある絶縁層を含むことができる。上部半導体層は能動素子層を形成することができる。これにより、半導体構造を論理および/または無線周波数(RF)回路で使用することができる。バッファ構造は、上部半導体層、より具体的には上部半導体層の上面に形成することができる。
【0018】
構造に“圧縮応力”を与える層またはブロックとは、これにより、層またはブロックが構造の下層によって圧縮応力を受けている/下にあることを意味する。逆に、“引張応力”を提供する層またはブロックとは、それにより、その層またはブロックが構造の下層によって引張応力を受けている/下にあることを意味する。
【0019】
本開示では、構造(SOI基板、超格子ブロックまたは層など)の“曲率”という用語は、構造の半径の逆数を指すのに使用される。“インサイチュ(In situ)”曲率は、III-N半導体構造のエピタキシャル成長中の曲率を指す。“エクスサイチュ(Ex situ)”ワープは、エピタキシャル成長の完了およびIII-N半導体構造の冷却後のウエハのワープを指す。
【0020】
正または凸の曲率は、原点がSOI基板の下にあることを意味する(SOI基板上の層積層方向に見て、すなわち、SOI基板に対して垂直)。反対に、負または凹の曲率は、原点がSOI基板の上にあることを意味する。
【0021】
曲率の特徴(例えば、凸/正または凹/負)の記載がなされるとき、曲率は、表面に沿った方向に延びる任意の経路に沿った全ての位置においてこの特性を示し得る。
【0022】
バッファ構造の超格子は複数の超格子ブロックを含むことができ、第1および第2の超格子ブロックは超格子の隣接する対の超格子ブロックを形成することができる。このように、超格子は、3つ以上の超格子ブロックを含んでもよく、そのうちの第1および第2の超格子ブロックは、互いに隣接して形成された対または超格子ブロックを形成する。より多くの超格子ブロックは、とりわけインサイチュ(in situ)曲率およびエピ後のウエハのワープを制御する目的で、バッファ構造の特性を調整する際の自由度が増す。超格子の各超格子ブロックは、繰り返しシーケンスの超格子ユニットを含み、各ユニットはAlGaNの層のスタックを含み、スタックの隣接する層は異なるアルミニウム含有量を有する。
【0023】
特に、超格子は、第2の超格子ブロックの上に形成され、第2の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも少ない平均アルミニウム含有量を有する上部超格子ブロックを含み得る。上部超格子ブロックは、第2の超格子ブロックの上に直接形成されてもよい。
【0024】
代替的または追加的に、超格子は、第1の超格子ブロックの下に形成され、第1の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも大きい平均アルミニウム含有量を有する下部超格子ブロックを含み得る。第1の超格子ブロックは、下部超格子ブロック(存在する場合)の上に直接形成されてもよい。
【0025】
第1の場合、超格子は、第2の超格子ブロックよりも平均アルミニウム含有量が少ない少なくとも1つの上部超格子ブロックを含み得る。第2の場合、超格子は、第1の超格子ブロックよりも大きい平均アルミニウム含有量を有する少なくとも1つの下部超格子ブロックを含み得る。
【0026】
いずれの場合も、少なくとも2つの隣接する超格子ブロック間の平均アルミニウム含有量を徐々に減少させることによって、非圧縮応力誘起対の第1および第2超格子ブロックの上下に圧縮応力を導入することができる。圧縮歪みは、III-N半導体とSOI基板の半導体層との間の熱的不整合のためにエピ後に導入された引張歪みを補償することを可能にする。
【0027】
一実施形態によれば、超格子は、第2の超格子ブロック上に形成された第3の超格子ブロックと、第3の超格子ブロック上に形成された第4の超格子ブロックとを含む。
【0028】
ここで、第4の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、第3の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも大きく、第3の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、第2の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも小さい。したがって、超格子は、構造に圧縮応力と引張応力を交互に導入する超格子ブロックを含み得る。これは、インサイチュ曲率およびエピ後のウエハのワープを制御するためのさらに大きな自由度を提供する。
【0029】
第4の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量はまた、第2の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも小さくてもよい。
【0030】
セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板は、下部ウエハ、上部半導体層、および下部ウエハと上部半導体層との間の絶縁体層を含むことができ、バッファ構造とIII-N半導体チャネル層とを合わせた厚さは、上部半導体層の厚さよりも大きくなり得る。バッファ構造の超格子の独創的な設計により、そのような構成を有し、過度のインサイチュ曲率およびエピ後ウエハのワープのない半導体構造を得ることができる。
【0031】
第1および第2の超格子ブロックのうちの1つまたは複数の隣接する対の層は、擬似同型層であり得る。疑似同型層対とは、これにより、上層の(面内)格子定数が下層の(面内)格子定数と一致する下層と上層の対を意味する。
【0032】
少なくとも部分的な歪み緩和が第1および第2の超格子ブロックの少なくとも1つの隣接する対の層の間に存在するように超格子を形成することも可能である。
【0033】
歪み緩和は、部分歪み緩和から全歪み緩和までの範囲内の任意の程度のものであり得る。歪み緩和とは、これにより面内歪みの緩和を意味する。2つの互いに隣接する層の間に少なくとも部分的な歪み緩和を有することは、バッファ構造をより大きな厚さで形成することを可能にする。バッファ構造の成長中に圧縮歪みが蓄積し、SOI基板のインサイチュ曲率が増大し得る。インサイチュ曲率が臨界量(正確な値は基板特有である)を超えて増加すると、SOI基板の塑性変形が生じる可能性がある。少なくとも1つの超格子ブロックにおいて少なくとも部分的な歪み緩和を有することによって、インサイチュ曲率の増加率は、塑性変形の限界に達することなくより厚いバッファ層構造が形成され得るように減少され得る。
【0034】
チャネル層は、BxInyAlzGawN(0≦x≦1、0≦y≦1;0≦z≦1、0≦w≦1、およびx+y+z+w=1)の1つまたは複数の層を含むことができる。チャネル層は超格子の上に直接形成することができる。しかしながら、バッファ構造が1つまたは複数の上部遷移層のようなさらなる層を含む場合、チャネル層は上部遷移層の上に直接形成されてもよい。
【0035】
バッファ構造は、セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板上に形成されたAlN核形成層を含むことができる。
【0036】
核形成層は、バッファ構造の最下層を形成してもよい。AlN核形成層は、いわゆる“メルトエッチバック”効果をもたらし得る、SOIの半導体層とGaとの間の共晶反応を防止し得る。AlN核形成層はまた、バッファ構造のさらなる材料層のエピタキシャル成長を容易にし得る。
【0037】
バッファ構造は、(Al)GaNの下部遷移層をさらに含むことができ、超格子は下部遷移層上に形成される。下部遷移層は、インサイチュウエハの曲率およびウエハのワープ制御においてさらなる柔軟性を提供し得、さらに上部の超格子のより高い材料品質の成長のための基礎を提供し得る。下部遷移層は、均一な組成を有する単一層であってもよく、または異なる組成を有する(Al)GaNの2つ以上の副層を含む複合層であってもよい。
【0038】
バッファ構造は、超格子上に形成された(Al)GaNの上部遷移層をさらに含むことができる。上部遷移層は、インサイチュウエハの曲率およびウエハのワープ制御においてさらなる柔軟性を提供し得、さらに上部のチャネル層のより高い材料品質の成長のための基礎を提供し得る。上部遷移層は、均一な組成を有する単一層であってもよく、または異なる組成を有する(Al)GaNの2つ以上の副層を含む複合層であってもよい。
【0039】
第2の態様によれば、III-N半導体構造を形成するための方法が提供される。
前記方法は、
セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板上にバッファ構造を形成するステップを含み、
前記バッファ構造を形成するステップは、
前記第1の超格子ブロック上に少なくとも第1の超格子ブロックと第2の超格子ブロックとを含む超格子を形成するステップを含み、
前記方法は、
前記バッファ構造上にIII-N半導体チャネル層をエピタキシャル成長させるステップと、を含み、
前記第1の超格子ブロックは、第1の超格子ユニットの繰り返しシーケンスをエピタキシャル成長させることによって形成され、各第1の超格子ユニットは、AlGaN層のスタックを含み、前記スタックの隣接層は、異なるアルミニウム含有量を有し、
前記第2の超格子ブロックは、第2の超格子ユニットの繰り返しシーケンスをエピタキシャル成長させることによって形成され、各第2の超格子ユニットは、AlGaN層のスタックを含み、前記スタックの隣接層は、異なるアルミニウム含有量を有し、
前記第2の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、前記第1の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量より大きい
方法。
【0040】
本発明の方法は、概して、第1の態様と同じまたは対応する利点を提示する。したがって、第1の態様の利点に関する上記の説明が参照される。
【0041】
さらに、超格子を形成するステップは、複数の超格子ブロックを形成するステップを含むことができ、第1および第2の超格子ブロックは、超格子の隣接する対の超格子ブロックを形成する。超格子の各超格子ブロックは、繰り返しシーケンスの超格子ユニットを含み、各ユニットはAlGaNの層のスタックを含み、スタックの各層は異なるアルミニウム濃度を有する。
【0042】
超格子を形成するステップは、第2の超格子ブロックの上に上部超格子ブロックを形成するステップ、および第2の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも少ない平均アルミニウム含有量を有することを含み得る。
【0043】
超格子を形成するステップは、第1の超格子ブロックの下に下部超格子ブロックを形成するステップ、および第1の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも大きい平均アルミニウム含有量を有することを含み得る。
【0044】
超格子を形成するステップは、第2の超格子ブロック上に第3の超格子ブロックを形成し、第3の超格子ブロック上に第4の超格子ブロックを形成するステップを含み、第4の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、第3の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量より大きく、第3の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、第2の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも小さい。
【0045】
セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板は、下部ウエハ、上部半導体層、および下部ウエハと上部半導体層との間の絶縁体層を含むことができ、バッファ構造およびIII-N半導体チャネル層は、上部半導体層の厚さよりも大きい合計厚さで形成される。
【0046】
この方法によれば、第2の超格子ブロックは、第2の超格子ブロックのインサイチュ曲率の時間的変化率が0以下となるように形成されてもよい。インサイチュ曲率の時間的変化率(すなわち、経時的な変化)は、成長時間の関数として(または等価的に第2の超格子ブロックの厚さの関数として)インサイチュ曲率の勾配に対応する。
【0047】
超格子は、超格子の少なくとも1つの隣接する対の層の間に少なくとも部分的な歪み緩和が生じるように成長させることができる。
【0048】
第2の態様の前述の実施形態は、概して、第1の態様の対応する実施形態と同じまたは対応する利点を提示する。第1の態様のさらなる実施形態または変形はまた、第2の態様にも同様に適用可能である。したがって、上記の説明を参照する。
【0049】
本発明概念の上記ならびに追加の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明を介してよりよく理解されるであろう。図面では、特に明記しない限り、類似の参照番号が類似の要素に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図3】III-N半導体構造を形成する方法のフローチャートである。
【
図4a】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図4b】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図4c】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図5a】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図5b】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図5c】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図6a】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図6b】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図6c】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図7a】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図7b】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【
図7c】様々な例示的III-N半導体構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
III-N半導体構造およびIII-N半導体構造を形成する方法が、ここで
図1~
図3を参照して説明される。
【0052】
図1は、層のスタックを含む半導体構造を概略断面図で示す。層の積層方向は“Z”で示され、以下ではSOI基板に対する垂直方向、ボトムアップ方向、または法線方向とも呼ばれることがある。図示の要素の相対寸法、特に、層の相対厚さは単に概略的なものであり、説明を明確にする目的で物理的構造とは異なる場合があることに留意されたい。
【0053】
半導体構造は、ボトムアップ方向に、セミコンダクタ・オン・インシュレータ基板100(以下、SOI基板100と略す)、バッファ構造200、およびIII-N半導体チャネル層300を含む。
【0054】
SOI基板100は、下部ウエハ110と、上部半導体層130と、下部ウエハ110と上部半導体層130との中間にある絶縁体層120とを含む。SOI基板100は、酸化物絶縁体層120上に形成され、例えば、Si、MoまたはAlNの下部ハンドリングウエハ110によって支持された単結晶Si、Ge、SiGeまたはSiC上部層130などの任意の従来型のものでよい。上部半導体層130は、上部主面として{111}面を示してもよい。SOI基板100は、上部半導体層が結合酸化物層120によって下部ウエハ110に結合され、続いて切断または研削されて最終的な薄化上部半導体層130を形成する層転写プロセスなどの従来の方法で製造され得る。
【0055】
バッファ構造200は、SOI基板100上に形成されている。バッファ構造200は、ボトムアップ方向に、AlN核形成層210と、下部遷移層220と、超格子230と、上部遷移層240とを含む。上部遷移層240はいずれも任意選択の層であり、省略することができる。
【0056】
AlN核形成層210(以下“核形成層210”)がSOI基板100の上面上にそれと接触して形成される(
図3のフローチャート400のステップ402)。核形成層210は、気相堆積、例えば、TMAlのような従来のAl前駆体を用いたMOCVDによってエピタキシャル成長させることができる。しかしながら、AlN核形成層のエピタキシャル成長に適した他の従来型の蒸着プロセスも可能である。核形成層210は、250nm以下、好ましくは、少なくとも50nmの厚さで形成することができる。核形成層210は、一般に、後続の層の成長に十分な結晶品質を達成するための厚さで形成することができる。Siベースの上部半導体層130が存在する場合、核形成層210はまた、Gaの拡散を防止して上部半導体層130と反応するのに十分な厚さで有利に形成することができる。核形成層210は、上部主面としてC面を呈するように形成されてもよい。
【0057】
下部遷移層220は、核形成層210の上部主面上にこれと接触して形成される(
図3のステップ404)。下部遷移層220は、均一な組成を有する単層として形成することができる。例えば、下部遷移層220は、20%~90%の範囲のAl含有量を有する(Al)GaN層とすることができる。あるいは、下部遷移層220は、異なる組成を有する(Al)GaNの2つ以上の副層を含む複合層として形成されてもよい。下部遷移層220は、上部主面としてC面を呈するように形成されてもよい。
【0058】
下部遷移層220は、気相堆積、例えば、TMGa、TEGaおよびTMAlなどの従来のIII族元素前駆体を用いたMOCVD、または、例えば、分子線エピタキシ(MBE)、物理気相成長法(PVD)または水素化物気相エピタキシ(HVPE)などの(Al)GaNのエピタキシャル成長に適した他の従来のタイプの蒸着プロセスによってエピタキシャル成長させることができる。下部遷移層220は、200nm以下の(合計)厚さで形成することができる。
【0059】
超格子230は、互いの上に積み重ねられたいくつかの超格子ブロックによって形成される(
図3のステップ406)。
図1において、超格子ブロックは、第1の超格子ブロック231の上に形成された第1の超格子ブロック231および第2の超格子ブロック232を含む。図示されるように、超格子230は、少なくとも1つの下部超格子ブロック230Lおよび/または少なくとも1つの上部超格子ブロック230Uなどのさらなる超格子ブロックを含み得る。したがって、超格子230の形成は、少なくとも第1の超格子ブロック231(ステップ406-1)および第2の超格子ブロック232(ステップ406-2)を形成することを含み得るが、必要に応じてさらなる下部および/または上部超格子ブロックを形成することを含み得る(
図3のステップ406-Lおよび406-Uによって表される)。
【0060】
超格子の各超格子ブロックは、同一の連続して形成された超格子ユニットの繰り返しによって形成されてもよい。第1の超格子ブロック231について
図1に示されるように、超格子ブロック231は、m個の超格子ユニット231-1、231-2、…、231-mのスタックからなり、mは、2以上である。第2の超格子ブロック232は、第1の超格子ブロック231の上部主面上に形成される。超格子ブロック232は、n個の超格子ユニット232-1、232-2、…、232-nのスタックからなり、nは、2以上である。超格子ユニットの数は、超格子ブロック間で同じでも異なっていてもよい。例えば、第2の超格子ブロック232の超格子ユニットの数nは、mに等しくてもよく、またはmと異なってもよい。
【0061】
図2に示すように、第1の超格子231の各超格子ユニットは、AlGaNのj層(jは、2以上)のスタックまたはラミネートから形成され、スタックの各層は、スタックの隣接層のアルミニウム含有量とは異なるアルミニウム含有量を有する(すなわち、2≦i≦j-1の場合、x[i-1]≠xi≠x[i+1])。必要に応じて、スタックの各層は、スタックの他の各層のアルミニウム含有量とは異なるアルミニウム含有量を有してもよい(すなわち、x1≠x2≠…xj)。各超格子ユニット231-1、231-2、…、231-mのi番目の層の厚さD1iは、
図2に示すように同一であり得る。したがって、超格子ユニット231-1、231-2、…、231-mは、同一/同じ組成を有することができる。
【0062】
第2の超格子232の各超格子ユニットは、AlGaNのk層(kは、2以上)のスタックまたはラミネートから形成され、スタックの各層は、スタックの隣接層のアルミニウム含有量とは異なるアルミニウム含有量を有する(すなわち、2≦i≦k-1の場合、y[i-1]≠yi≠y[i+1])。必要に応じて、スタックの各層は、スタックの他の各層のアルミニウム含有量とは異なるアルミニウム含有量を有してもよい(すなわち、y1≠y2≠…≠yk)。各超格子ユニット232-1、232-2、…、232-nのi番目の層の厚さD2iは、
図2に示すように同一であり得る。したがって、超格子ユニット232-1、232-2、…、232-nは、同一/同じ組成を有することができる。
【0063】
超格子ブロック231、232の超格子ユニットの各層は、下部遷移層220に関して説明した技術のいずれかを使用してエピタキシャル成長させることができる。超格子ブロック231、232の超格子ユニットの各層は、100nm未満の厚さで形成されてもよい。
【0064】
超格子ブロック231、232の層は、シュードモルフィック層として(すなわち、各層を臨界層厚未満の厚さで形成することによって)形成することができる。しかしながら、超格子230はまた、1つまたは複数の部分的または完全歪み緩和層を含むように(すなわち、層を臨界層厚よりも大きい厚さで形成することによって)形成されてもよい。
【0065】
上記の範囲内で、第1および第2の超格子ブロック231、232の組成は、第2の超格子ブロック232の平均アルミニウム含有量が第1の超格子ブロック231の平均アルミニウム含有量よりも大きくなるようなものである。第2の超格子ブロック232の平均アルミニウム含有量は、第1の超格子ブロック231の平均アルミニウム含有量より少なくとも1%大きくてもよい。言い換えれば、第2の超格子ブロック232のAL%は、第1の超格子ブロック231のAL%よりも1パーセントユニット大きい。
【0066】
超格子230の1つまたは複数のさらなる超格子ブロック230L、230Uは、一般に、第1および第2の超格子ブロック231、232として対応する組成を示す。(存在する場合)より下部の超格子ブロック230Lは、第1の超格子ブロック231の平均アルミニウム含有量よりも大きい平均アルミニウム含有量を示し得る。一方、(存在する場合)上部超格子ブロック230Uは、第2の超格子ブロック232の平均アルミニウム含有量よりも少ない平均アルミニウム含有量を提示することができる。
【0067】
さらなる変形によれば、超格子230は、第2の超格子ブロック232上に形成された第3の超格子ブロックと、第3の超格子ブロック上に形成された第4の超格子ブロックとを含み得る。第3および第4の超格子ブロックは、第1および第2の超格子ブロック231、232によって形成された第1の“非圧縮応力誘起対”の上に、第2の“非圧縮応力誘起対”を形成することができる。したがって、第4の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、第3の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも大きくてもよい。第3の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、第2の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量より小さくてもよい。超格子230は、第3の対などのさらなる“非圧縮応力誘起対”を含むことができる。第3の対は、第4の超格子ブロック上に形成された第5の超格子ブロックと、第5の超格子ブロック上に形成された第6の超格子ブロックとを含み、第6の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、第5の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量より大きく、第5の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量は、第4の超格子ブロックの平均アルミニウム含有量よりも小さい。このスキームは、4つ、5つ、またはそれ以上のそのような“非圧縮応力誘起対”を含むようにさらに拡張することができると考えられる。
【0068】
上部遷移層240は超格子230の上部主面上にそれと接触して形成される(
図3のステップ408)。上部遷移層240は、均一な組成を有する単層として形成することができる。例えば、上部遷移層240は、0%~20%の範囲のAl含有量を有する(Al)GaN層であり得る。あるいは、上部遷移層240は、異なる組成を有する(Al)GaNの2つ以上の副層を含む複合層として形成されてもよい。上部遷移層240はまた、(InAlGa)Nの1つまたは複数の層を含み得る。上部遷移層240は、1500nm以下の(合計)厚さで形成することができる。上部遷移層240は、上部主面としてC面を呈するように形成されてもよい。上部遷移層240は、下部遷移層220に関連して説明した技術のうちのいずれかを使用してエピタキシャル成長させることができる。
【0069】
III-N半導体チャネル層300(以下“チャネル層300”)は、図示のように(上部主面のいずれかによって形成された)バッファ構造200の上部主面上に接触して形成される(
図3のステップ410)(上部遷移層240の上部主面または超格子230の上部主面のいずれかによって形成される)。
【0070】
チャネル層300は、BxInyAlzGawN(0≦x≦1、0≦y≦1;0≦z≦1、0≦w≦1、およびx+y+z+w=1)で形成することができる。チャネル層300は、トリメチルインジウム(TMIn)およびトリエチルボロン(TEB)、TMGa、TEGaおよびTMAlなどの従来のIII族元素前駆体を使用するMOCVDによって、または他の従来の気相堆積技術によってエピタキシャル成長させることができる。チャネル層は、0.1~1μmの範囲の合計厚さまで成長させることができる。
【0071】
チャネル層300を形成した後、完全なデバイスを形成するために、半導体構造上にさらなる層および構造を形成することができる。例えば、BaInbAlcGadN層(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、およびa+b+c+d=1)の電子供給層をチャネル層300上に形成してもよい。チャネル層300と電子供給層との間には、AlNスペーサ層が形成されていてもよい。GaN層またはSi3N4層などのキャップ層を電子供給層の上に形成することができる。スペーサ層、電子供給層、およびキャップ層は、チャネル層300と同じ堆積技術を使用して形成することができる。ソース電極、ドレイン電極、およびゲート電極は、従来の方法で電子供給層(または存在する場合はキャップ層)上に形成することができる。
【0072】
バッファ構造200の層の材料および組成に関する上記の説明に加えて、不純物原子でドープされた層として層を形成することが可能である。例えば、1つまたは複数の下部遷移層220、超格子230の層、および/または上部遷移層220は、1×1018(原子/cm3)以上の濃度にドープされてもよい。これにより、バッファ構造200の耐圧を向上させることができる。ドーパント/不純物原子は、C原子、Fe原子、Mn原子、Mg原子、V原子、Cr原子、Be原子およびB原子からなる群から選択される1つまたは複数の種とすることができる。ドーパントは、ドープされる層のエピタキシャル成長中に、意図されたドーパント種の供給源を成長チャンバに加えることによって導入することができる。例えば、炭素ドーピングは、メタン(CH4)、エチレン(C2H4)、アセチレン(C2H2)、プロパン(C3H8)またはイソブタン(i-C4H10)などの炭素源を成長チャンバに加えることによって達成できる。
【0073】
図4aは、第1の実施例によるIII-N半導体構造を概略的に示す。
図4bは、インサイチュウエハの曲率およびエピ後のウエハのワープを示す。曲線の鋭いスパイクと短範囲の高周波振動は、測定システムの影響である。
図4cは、ウエハに沿った2つの直交方向に沿って測定されたエピ前後のウエハのワープを示す。
【0074】
構造は次のとおりである。
【0075】
・厚さ1μmの酸化物層によって厚さ1071μmのSi{100}ハンドリングウエハに結合された厚さ1.5μmのSi{111}のSOI基板100
・200nm厚のAlN核形成層210
・50nmのAl0.75GaN下部遷移層220
・超格子230:
・[5nmのAlN/28nmのAl0.15GaN]2層の超格子ユニットの50回の繰り返しによって形成された1.65μm厚の第1の超格子ブロック231(平均アルミニウム含有量AL%=28%に対応)
・[10nmのAlN/28nmのAl0.3GaN]2層の超格子ユニットを40回繰り返すことによって形成された1.5μm厚の第2の超格子ブロック232(平均アルミニウム含有量AL%=48%に対応)
・1μm厚の炭素ドープGaN上部遷移層240
・300nmのGaNチャネル層300
【0076】
見て分かるように、他の超格子ブロックの上に平均アルミニウム含有量AL%がより高い超格子ブロックを導入することによって、引張応力を導入することができ、それはインサイチュ曲率ならびにエクスサイチュウエハのワープ(ピーク間の差として測定される)を低下させる。チャートから分かるように、第2の超格子ブロック232は、インサイチュ曲率の時間変化率が0未満になるように成長する。これは、第2のブロック232の平均アルミニウム含有量が第1のブロック231の平均アルミニウムの含有量よりも大きいためである。チャートはまた、インサイチュ曲率が正(凸形状)であるときおよびインサイチュ曲率が負(凹形状)であるときの構造のインサイチュ形状を概略的に示す。バッファ全体の厚さは~4.9μmである。以下に示されるように、他の方法では、基板の塑性変形限界に達することなく、>4μmの厚さのIII-N構造を成長させることは難しいかもしれない。
【0077】
図5は、開示された構造および方法の利点をさらに示す第2の例を概略的に示す。構造は次のとおりである。
【0078】
・厚さ1μmの酸化物層によって厚さ1071μmのSi{100}ハンドリングウエハに結合された厚さ1.5μmのSi{111}のSOI基板100
・200nm厚のAlN核形成層210
・50nmのAl0.75GaN下部遷移層220
・超格子230:
・[5nmのAlN/28nmのAl0.15GaN]2層の超格子ユニットの50回の繰り返しによって形成された1.65μm厚の第1の超格子ブロック231(平均アルミニウム含有量AL%=28%に対応)
・[7nmのAlN/28nmのAl0.15GaN]2層の超格子ユニットを15回繰り返して形成された0.5μm厚の第2の超格子ブロック232(平均アルミニウム含有量AL%=32%に対応)
・[4nmのAlN/30nmのAl0.1GaN]2層の超格子ユニットの50回の繰り返しによって形成された1.65μm厚の第3の超格子ブロック233(平均アルミニウム含有量AL%=20.6%に対応)
・[5nmのAlN/30nmのAl0.1GaN]2層の超格子ユニットの15回の繰り返しによって形成された0.5μm厚の第4の超格子ブロック234(平均アルミニウム含有量AL%=22.9%に対応)
・1μm厚の炭素ドープGaN上部遷移層240
・400nmのGaNチャネル層300
【0079】
したがって、構造中に合計4つの超格子ブロックがある。各超格子ブロック中の平均アルミニウム含有量Al%を交互にすることによって、圧縮歪みおよび引張歪みの両方を導入することができ、その結果、~4.3μmのかなり厚いSL構造を成長させるときにインサイチュウエハ曲率を比較的低い値で増減することができる。結果として生じる最大のインサイチュ曲率は、この場合も、~6μmのこの構造に対するウエハ塑性変形の限界を依然として下回っている。最終的なウエハのワープは、厚さがわずか~3μmである基準1と比較してはるかに低いレベルにある。
【0080】
図6は、Siバルク基板用に設計されたバッファを直接SOI基板に転写する第1の比較例を概略的に示す。SOI基板610は、先の実施例と同じ構成であった。この構造はさらに、200nmのAlN核形成層620と、40nmのAl
0.3GaN下部遷移層630と、[5nmのAlN/28nmのAl0.1GaN]2層の超格子ユニットの50回の繰り返しによって形成された超格子640と、1μmの炭素ドープGaNチャネル層650と、300nmのGaN層660と、18nmのAl
0.175GaN層670と、70nmのpドープGaN層680と、を含む。
【0081】
図6に示すように、合計スタックは~3.3μmである。インサイチュウエハ曲率およびエクスサイチュエハのワープを2回の実行について要約する。各実験(“#1”および“#2”)において、1つのSOIおよび1つのSi基準基板を同時に反応器に入れた。SOI基板のインサイチュウエハ曲率は、Si基準基板と比較して著しく増加することが分かる。基板が塑性変形(すなわち、クラック)したとき、それはSOI基板について~80km
-1の非常に高い値に達した。SOI基板のエクスサイチュウエハのワープもまた、Si基板と比較してはるかに高い。
【0082】
図7は、従来の緩衝スキームを使用してより厚いエピ層を成長させるための課題を示す第2の比較例を概略的に示す。この例では、同じ実行でSOI基板とSi基板の上にわずか~2.8μmの段階的なバッファを成長させた。SOI基板710は、先の例と同じ構成であった。構造はさらに、200nmのAlN層720と、300nmのAl
0.44GaN層730と、2μmのCドープAl
0.08GaN層740と、300nmのGaN層750と、12.5nmのAl
0.25GaN層760と、70nmpドープGaN層770と、を含む。
図7bのチャートでは、ポケットはエピタキシャルプロセス中のキャリア上のウエハの位置を示すラベルである。また、SOI基板のインサイチュ曲率は、Si基板よりもずっと高い。同じバッファスキームに従って、単に層の厚さを増すと、それはすぐに必然的に基板の塑性変形に対するインサイチュ曲率の限界に達するであろう。2つの標準(STD)Siは非常に類似した曲線を有するので、表はSTDSiに対する単一のワープ値のみを示す。
【0083】
上記において、本発明の概念は、限られた数の例を参照して主に説明された。しかし、当業者には容易に理解されるように、添付の請求の範囲によって定義されるように、本発明の概念の範囲内で、上に開示されたもの以外の他の例も同様に可能である。