(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】電気化学セルの品質を評価するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/3835 20190101AFI20230125BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20230125BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
G01R31/3835
G01R31/396
H01M10/48 P
H01M10/48 301
(21)【出願番号】P 2019524191
(86)(22)【出願日】2017-11-10
(86)【国際出願番号】 US2017061056
(87)【国際公開番号】W WO2018089763
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-09-23
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518275567
【氏名又は名称】カムエクス パワー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CAMX Power LLC
【住所又は居所原語表記】35 Hartwell Avenue, Lexington, MA 02421, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エイチ. マッコイ
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-145137(JP,A)
【文献】特開2003-157911(JP,A)
【文献】特開2010-231948(JP,A)
【文献】特開2013-185861(JP,A)
【文献】米国特許第4647860(US,A)
【文献】特表昭62-501580(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0167312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/48
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルにおける内部障害を検出する方法であって、
1分間から5日間までの測定時間にわたって、それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差変化率を
連続して測定するステップ、および、
前記測定に基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを受容するステップ、または、
前記電気化学セルにおける内部障害を測定するステップに基づいて、前記第1の電気化学セルもしくは前記第2の電気化学セルを廃棄するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、第2の測定時間にわたって、(A)前記第1の電気化学セルの前記テスト端子もしくは前記第2の電気化学セルの前記テスト端子と、(B)前記第1の電気化学セルの前記テスト端子もしくは前記第2の電気化学セルの前記テスト端子と同じ極性を有する第3の電気化学セルのテスト端子と、の間の電圧差変化率を測定するステップを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電気化学セルおよび前記第2の電気化学セルのそれぞれは、リチウムイオンセルである、
請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
前記内部障害は、短絡である、
請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記内部障害は、短絡でない自己放電である、
請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電気化学セルまたは前記第2の電気化学セルは、既知の内部障害を有する基準セルまたは内部障害が存在しないことが既知である基準セルである、
請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1の電気化学セルおよび前記第2の電気化学セルは、同じ温度、同じ充電状態、または、同じ温度および同じ充填状態の双方を有する、
請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
共通の端子は、正である、
請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
共通の端子は、負である、
請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
電気化学セルにおける内部障害を検出する方法であって、
第1の電気化学セルの端子を第2の電気化学セルの端子に共通に電気的に接続するステップであって、前記第1の電気化学セルの端子と前記第2の電気化学セルの端子とはそれぞれ正または負であるステップ、
1分間から5日間までの測定時間にわたって、前記第1の電気化学セルの電圧および前記第2の電気化学セルの電圧を
連続して測定するステップ、および、
測定時点で
0.1μV/時間未満の、前記第1の電気化学セルと前記第2の電気化学セルとの間の差動電圧変化率の有無を検出するステップ、
を含む方法。
【請求項11】
前記第1の電気化学セルと前記第2の電気化学セルとは、ほぼ同じ充電状態を有する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電気化学セルと前記第2の電気化学セルとは、温度に起因して、同等の端子電圧変化を受けるので、前記検出のステップは、温度に依存しない、
請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記差動電圧変化率は、10μA未満の内部短絡または300,000Ω超の抵抗に起因する、
請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記第1の電気化学セルおよび前記第2の電気化学セルのそれぞれは、リチウムイオンセルである、
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記内部障害は、短絡である、
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記第1の電気化学セルまたは前記第2の電気化学セルは、測定された既知の内部障害を有する基準セルまたは内部障害が存在しないことが既知である基準セルである、
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
請求項10から16までのいずれか1項記載の方法により、電気化学セルにおける内部障害を検出するシステムであって、
少なくとも2つの電気化学セルを有する電気化学セルアレイと、
電圧測定装置と、
を含み、
前記アレイは、第1の端子および第1の
対向端子を有する第1の電気化学セルと、第2の端子および第2の
対向端子を有する第2の電気化学セルと、を含み、前記第1の端子と前記第2の端子とは、共通の極性を有し、
前記第1の端子と前記第2の端子とは、共通に、単一のバスに接続されており、
前記第1の
対向端子と前記第2の
対向端子とは、それぞれ開放回路にあり、
前記電圧測定装置は、前記第1の
対向端子と前記第2の
対向端子とに電気的に接続可能であるかまたは電気的に接続されている、
システム。
【請求項18】
前記アレイは、2個から10個の電気化学セルを含む、
請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記アレイはさらに、基準端子および対向基準端子を有する基準セルを含む、
請求項17または18記載のシステム。
【請求項20】
前記第1の端子、前記第2の端子および前記基準端子は、共通に接続されており、
前記電圧測定装置は、前記第1の
対向端子と前記
対向基
準端子とに電気的に接続可能であるかもしくは電気的に接続されている、または、
前記電圧測定装置は、前記第2の
対向端子と前記
対向基
準端子とに電気的に接続可能であるかもしくは電気的に接続されている、
請求項19記載のシステム。
【請求項21】
前記電圧測定装置は、1μV以下の分解能を有する高分解能の電圧測定装置を含む、
請求項17または18記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年11月10日付提出の米国仮特許出願第62/420053号(U.S. Provisional Patent Application Serial No.62/420,053)の優先権を主張し、この出願は引用により全体として本願に組み込まれるものとする。
【0002】
政府の資金提供の記載
本開示は、アメリカミサイル防衛局による、契約番号HQ014715C8004の政府支援を受けてなされたものである。当局は、本発明に所定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本開示は、広くは、電気化学セルの評価、例えば1つまたは複数の内部障害の有無の評価に関しており、より具体的には、電気化学セルにおける回路内部短絡を検出する目的での、セルの評価に関する。
【背景技術】
【0004】
リチウムイオンセルは、コンシューマエレクトロニクスからHEV/PHEV/EVのドライブトレインまでにわたる広範囲の用途において電源として用いられている。当該バッテリの化学的性質に関する安全性のリスクは、セルにおける回路内部短絡に発する破局的なセル障害の可能性を含む。こうした安全性障害の確率を低減すべく、セルメーカは、内部障害、例えば内部短絡を示唆しうる異常に高い自己放電の存在をスクリーニングするため、数日間もしくは数週間にわたってセルの保管を許容される、セルの品質監視の特徴規定を利用している。こうしたエージングの規定は、セルの組立てに直接に続いて、工場において管理されている。
【0005】
エージングステップは、現在、セルの品質を評価するため、かつセルのパフォーマンスを低下させるのみならず稀には後に激甚なセル障害を生じうる回路内部短絡をスクリーニングするために、必要である。エージングステップは、典型的には、エージング期間の経過にわたって、単一のセルの端子間の開放回路電圧における変化を検査することを含む。所定のレベルより大きな電圧減退を示したセルは、拒絶することができる。内部短絡の存在を示唆可能な開放回路電圧の変化を観察するテスト方法は、比較的感度が鈍く、したがって、回路内部短絡の一義的な検出には長い期間(例えば7日間から28日間)が必要となる。安定した開放回路電圧は、セルに重大な回路内部短絡がないことを示唆するが、予め定められた何らかの閾値より大きい開放回路電圧の減退は、異常に高いレートでの自己放電の存在または内部短絡の存在を示唆するものと見なされる。
【0006】
検出を可能とするために、内部短絡は、従来の検出プロセスを用いて、検出の閾値を超過するセル電圧の低下への充分な作用を形成しなければならず、すなわち、短絡のない正常なセルに認められるよりも格段に大きな電圧の低下を形成しなければならない。こうしたスクリーニングプロセスには時間がかかり、リチウムイオンセルの製造においてつねに全サイクル時間の大部分を占める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気化学セルにおける内部短絡を迅速かつ効率的に検出するシステムおよびスクリーニング方法を創出することには、継続的な需要が存在する。内部障害のスクリーニングのテストには数週間もしくは数ヶ月かかることがあり、テストプロシージャはセルの電位の流出を生じうる。現行の電気化学セルのテストプロシージャの問題に対処する一解決手段として、2つ以上のセル間の差電圧を測定し、内部短絡、自己放電または他の障害の有無を判定することが挙げられる。本開示におけるシステムおよび方法は、1つまたは複数の回路内部短絡または許容不能に高いレートでのバッテリの自己放電の存在を識別することを含む、セル品質の評価を提供し、任意の化学的性質および任意の容量を有するセルに適用可能である。本開示のシステムおよび方法のいくつかの実施形態により、セルにおける内部障害、例えば内部短絡を、より迅速に、例えば通常使用されている従来の方法で必要な期間の1%未満で、かつ従来技術を用いる場合よりも大きな感度で、検出することができる。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いくつかの実施形態では、電気化学セルにおける1つまたは複数の内部障害を検出する方法は、それぞれ同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差または電圧差変化率を測定することを含む。電圧差または電圧差変化率はテスト期間にわたって測定されるが、このテスト期間は、測定時間または電圧が測定される時間とも称することができる。電圧差の測定に基づいて、第1の電気化学セルまたは第2の電気化学セルが受容される。電圧差の測定によって電気化学セルにおける内部障害が検出されると、電気化学セルは拒絶される。
【0009】
実施形態では、電気化学セルにおける1つまたは複数の内部障害を検出するシステムが提供され、当該システムは、第1の端子および第1の対抗端子を有する第1の電気化学セルと、第2の端子および第2の対抗端子を有する第2の電気化学セルとを含む。第1の端子と第2の端子とは、正または負のいずれかである共通の極性を有する。当該システムは任意にさらに電圧測定装置を含み、この電圧測定装置では、第1の端子と第2の端子とが、共通に、任意に単一のバスに接続されている。第1の対抗端子と第2の対抗端子とは開放回路に含まれており、電圧測定装置は第1の対抗端子と第2の対抗端子とに電気的に接続可能であるかまたは電気的に接続されている。
【0010】
各図に示す各実施形態は、図示および例示のためのものであり、特許請求の範囲によって規定される主題を限定する意図のものでない。図示の態様の以下の詳細な説明は、次の各図に関連して読まれる場合に理解可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】共通に接続された負の端子と開放回路の正の端子とを有する6個のセルのアレイを示す図である。
【
図2】Aは、テストセル1の正の端子間の電圧が、内部短絡がほぼないものとして初期的にスクリーニングされている基準セルの正の端子に対して測定される、6個のテストセルおよび基準セルのアレイを示す図である。Bは、テストセル2の正の端子間の電圧が、内部短絡がほぼないものとして初期的にスクリーニングされている基準セルの正の端子に対して測定される、6個のテストセルおよび基準セルのアレイを示す図である。
【
図3】市販の2つのセルの負の端子が接続されており、高分解能の電圧計がセルの正の端子間に接続されている、本開示において説明する方法およびシステムを用いたグラフであり、内部短絡をシミュレートする負荷抵抗が125kΩ、250kΩ、500kΩおよび1MΩであり、セル対に対する短絡なしの条件が下方のトレース線として示されている試行について得られたデータを記している。
【
図4】短絡抵抗の関数としての各トレース線の勾配と、log(短絡抵抗)に対するlog(勾配)の線形回帰とを示した
図3と同様に収集されたデータのグラフである。
【
図5】市販入手可能な8個のセルにつき、160分の時点で内部短絡をシミュレートする100,000Ωの抵抗をセルDに配置して、時間の関数としての差動電圧を測定したグラフである。
【
図6】
図2A,Bに示した基準セルに対し、スクリーニングすべき個別セルの差動電圧を測定したグラフである。
【
図7】Aは、メーカAから取得した6個のセルにつき、時間の関数としてここで説明する方法を用いて測定した差動電圧を示す図であり、セルFでの内部障害が示されており、Bは、メーカBから取得した6個のセルにつき、時間の関数としてここで説明する方法を用いて測定した差動電圧を示す図であり、内部短絡のほぼないセルに関連して、時間に関して、差動電圧変化の低い値が示されている。
【
図8】周囲温度の通常の僅かな変動にともなってセル電圧が増減する場合の、時間の関数としてのセル電圧のグラフである。
【0012】
各図に示す各実施形態は、図示のためのものであり、特許請求の範囲を限定する意図のものでない。さらに、各図の個別の特徴は、詳細な説明に照らしてより完全に明らかとなり理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、例示のためのものに過ぎず、けっして本開示の範囲、もちろん変化しうるその用途もしくは使用を限定する意図のものでない。当該説明は、ここに含まれる非限定の規定および語句に関連して提示している。当該規定および語句は、本開示の範囲または実施についての限定として機能することを想定しておらず、図示および説明の目的のためのみに提示している。方法またはシステムを、所定の順序の個別ステップまたは特定の材料を使用するものとして説明するが、各ステップまたはシステム内の各部品は交換可能であり、これにより、当該分野の技術者にただちに理解される多様な手法で配置された複数の部材またはステップが、当該説明に含まれうる。
【0014】
「第1の」「第2の」「第3の」などの語を、種々の素子、部品、領域、層および/またはセクションを記述するためにここで用いているが、これらの素子、部品、領域、層および/またはセクションは、これらの語句によって限定されてはならない。これらの語句は、1つの素子、部品、領域、層またはセクションを別の素子、部品、領域、層またはセクションから区別するために用いているのみである。したがって、以下の各段落で検討する「第1の」素子、部品、領域、層および/またはセクションは、ここでの教説から逸脱することなく、第2の(または他の)素子、部品、領域、層および/またはセクションとも称することができる。
【0015】
ここで使用しているように、「1つの」「或る」「前記1つの」なる単数形は、内容が明らかに別のことを示唆してしないかぎり、「少なくとも1つの」を含む複数形を含むことを意図している。ここで使用しているように、「および/または」なる語は、関連して列挙された項目の1つまたは複数のいずれかおよびそのすべての組み合わせを含む。さらに、「から成る」および/または「から成っている」または「含む」および/または「含んでいる」なる語が本明細書において使用されている場合、記述されている特徴、領域、完全体、ステップ、演算、素子および/または部品の存在が規定されるのであって、1つまたは複数の他の特徴、領域、完全体、ステップ、演算、素子、部品および/またはこれらの任意のグループの存在または追加が排除されるものではないことを理解されたい。なお「またはその組み合わせ」なる語は、上掲した要素の少なくとも1つを含む組み合わせを意味する。
【0016】
別の規定がないかぎり、ここで使用している(技術用語および学術用語を含む)すべての語句は、本開示の属する分野の通常の知識を有する者が共通に理解するのと同じ意味を有する。さらに、例えば共通に使用されている辞書に規定されている語句は、関連分野の文脈および本開示における意味に一致する意味を有するものと解釈すべきであり、本開示において明示的に規定されていないかぎり、観念的なまたは過度に形式的な意味で解釈されてはならない。
【0017】
ここで使用しているように、「差動電圧」なる語は、同じ極性の端子で測定される、第1のセルと第2のセルとの間の電圧差として規定される。
【0018】
図1を参照しながら、以下では、電気化学セルの内部障害を測定するシステムの実施形態を説明する。1つまたは複数の実施形態によれば、例示のシステムは、電気化学セルの1つまたは複数の内部障害を測定するように構成されている。システム100は、セル1-6のセルアレイ50を示している。セル1は、第1の端子41および第1の対抗端子31を含む。いくつかの実施形態では、第1の端子41は負であり、第1の対抗端子31は正である。他の実施形態では、第1の端子41が正であり、第1の対抗端子31が負である。
【0019】
アレイ50内の電気化学セルのそれぞれは、正および負の端子を有する。負の端子は、集合的に負の端子41,42,43,44,45,46とも称することができる。端子(例えば負の端子)は、代替的に、第1の端子41、第2の端子42、第3の端子43、第4の端子44、第5の端子45および第6の端子46と称することもできる。正の端子は、集合的に、正の端子31,32,33,34,35,36と称することができる。反対極性を有する端子(例えば正の端子)は、代替的に、第1の対抗端子31、第2の対抗端子32、第3の対抗端子33、第4の対抗端子34、第5の対抗端子35および第6の対抗端子36と称することもできる。
【0020】
1つまたは複数の実施形態では、システム100は、共通102に接続された負の端子41,42,43,44,45,46と、開放回路101にある正の端子31,32,33,34,35,36と、を含む。電圧測定装置20は、回路10を介して第1の端子31および第2の端子32に電気的に接続可能であるかまたは電気的に接続されている。第1の端子31および第2の端子32は、正または負のいずれかである同じ極性を有する。システム100は、電圧測定装置20により電圧差を検出する。当該差は、所定の期間にわたって追跡可能である。いくつかの実施形態では、アレイ50のいずれか2つのセルが、回路10を介して電気的に接続されているかまたは電気的に接続可能である。例えば、セル2は、第2の端子42と第5の端子45とを回路10を介して電気的に接続することで、セル5に接続可能である。電圧差または電圧変化率は、テストアレイ50におけるいずれか2つのセル間で得ることができ、隣り合うセルに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示によるシステムおよび方法は、基準セルを使用している。任意に基準セルを用いると、システムは、(任意にシミュレートされた内部短絡または実際の内部短絡の尺度としての)125,000Ωの負荷に起因する異常な自己放電を、従来の方法を用いた場合の約14日間に比べ、約15分間で検出することができる。スクリーニングの前に、基準セルは任意にテストされており、内部短絡がほぼないことまたは代替的に既知のレベルの内部短絡を有することが判別されている。方法において標準的な基準セルを用いると、さらに、1時間未満で1,000,000Ωのシミュレートされた短絡を検出することができる。こうした高い抵抗のセル内部短絡は、従来の方法によっては検出されない。
【0022】
図2A,Bを参照しながら、以下では、電気化学セルの1つまたは複数の内部障害の有無を測定するシステムの実施形態を説明する。1つまたは複数の実施形態によれば、システムの例示の実施形態は、電気化学セルの内部障害を測定するために構成可能である。システム200は、共通102に接続された負の端子41,42,43,44,45,46と開放回路101にある正の端子31,32,33,34,35,36とを有するセル1-6および基準セルを含むセルアレイ50と、電圧測定装置20と、を示している。
図2Aでは、電圧測定装置20は、回路10を介して、基準セルの基準端子30と第1の端子31とに電気的に接続されているかまたは電気的に接続可能である。
図2Bでは、電圧測定装置20は、回路10を介して、基準セルの基準端子30と第2の端子32とに電気的に接続されているかまたは電気的に接続可能である。
図2Aでは、回路10が基準セルとセル1とを接続しているのに対して、
図2Bでは、回路10は基準セルとセル2とを接続しており、それぞれ個別のセルが回路10を介して基準セルに接続可能である。
図2A,Bでは、システム200が、基準セルの正の端子30に比較した、セル1-6の1つの正の端子31,32,33,34,35,36との電圧差をテストする。
図2A,Bでの基準セルの使用は、図示の目的のために挙げたに過ぎないことを理解されたい。当該方法はいずれも基準セルでない2つのセル間で実行可能であるので、基準セルは任意であって必須ではない。
【0023】
他の実施形態では、セル1-6の正の端子31,32,33,34,35,36は、バスに統合可能であるか、または開放回路101の残りの負の端子41,42,43,44,45,46に共通102に接続可能である。電圧測定装置20は、上述したように回路内部短絡の存在を検出するため、回路10を介して、負の端子41,42,43,44,45,46のうち2つの端子間に接続される。
【0024】
1つまたは複数の実施形態では、システム200は、既知のステータスを有する少なくとも1つの基準セル、例えば内部障害が存在しないことが既知である基準セルまたは特定のタイプもしくは特定の規模の内部障害を有することが既知である基準セルを含む。システム200では、アレイ50内のセル1-6のうち1つまたは複数のセルが基準セルに対して比較される。いくつかの実施形態では、必須ではないが、基準セルと、テストセルすなわちセル1-6のうち1つのセルと、は、テスト前、ほぼ同じ容量、ほぼ同じ化学的性質およびほぼ同じ端子電圧を有する。いくつかの実施形態では、基準セルは、1つまたは複数の方法を用いた従来の判別により、例えばセルの安定した開放回路電圧を延長期間、例えば6ヶ月間にわたって観察することにより、検出可能な短絡または他の内部障害が存在しないことが既知となっている。
【0025】
1つまたは複数の実施形態では、基準セルは、安定した基準電圧を供給できるように定量化可能である。例えば基準セルが6ヶ月の期間にわたって1mVの開放回路電圧の低下を示す場合、当該基準セルは、1mVの電圧変化が例えば0.1%の充電状態の変化、すなわち容量にしてセル当たり2.6Ahの変化に相当し、1mVの損失が6ヶ月の期間にわたる0.026Ahの放電または0.026Ah/(4320時間)=6μAの電流に相当することが判別されるように特徴づけられている。したがって、当該基準セルは、平均値で6μAの内部短絡を有することを判別することができる。
【0026】
1つまたは複数の実施形態では、電気化学セルの内部短絡を判別するための電圧差または電圧差変化率を測定する方法は、
図1のシステム100に示したようなアレイ50上で実行される。一方の極性を有するセル端子(例えば負の端子41,42,43,44,45,46)の全部もしくは一部が共通102に接続されているのに対して、残りのすべての、反対の極性を有する正の端子31,32,33,34,35,36は、接続されていないかまたは開放回路101内にある。電圧測定装置20は、回路10を介して、セル1の正の端子31およびセル2の正の端子32間に、電圧差または電圧差変化率を測定する測定時間にわたって、電気的に接続されているかまたは電気的に接続可能である。図示の通り、当該測定時間中、セル1の正の端子31とセル2の正の端子32との間の電圧差が監視され、当該電圧差変化率に関する判別が行われる。いくつかの実施形態では、当該方法は、電圧測定装置をセル2の正の端子32およびセル3の正の端子33に接続して、ついでセル3の正の端子33およびセル4の正の端子34に接続して、さらに以降同様に、セルの各隣接対が測定され終えるまで反復される。内部短絡の存在は、グループ内の他のセルに対して負の度合が増大する正の端子電圧を示すセルによって示唆される。なお、当該測定は、セル1に対するセル2-6のそれぞれの正の端子(すなわちセル1対セル2の正の端子、セル1対セル3の正の端子、セル1対セル4の正の端子、以降同様)間の電圧を測定することにより、実行可能である。
【0027】
他の実施形態では、セル1-6のすべての負の端子41,42,43,44,45,46を接続するかまたはバスに統合し、正の端子間の電圧差を測定することに代えて、セル1-6のすべての正の端子31,32,33,34,35,36を共通102に接続するかまたはバスに統合して、セル1-6の負の端子41,42,43,44,45,46間に回路10を形成することにより電圧差を測定することができ、この場合にも当該システムおよび当該方法を同等に適用可能であることを理解されたい。測定電圧の電気的応答は相補的となり、内部短絡を有するテストセルの負の端子は、短絡を有さないセルの負の端子に対して正の度合が増大することになる。
【0028】
1つまたは複数の実施形態では、テストアレイ50は少なくとも2つのセルを含む。セルの最大数は、特に制限されない。いくつかの実施形態では、セル数は2個から1000個までであり、またはその間の任意の値もしくは領域である。テストアレイは、任意に、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個以上のセルを含む。
図1には6個のセルを含むアレイが示されており、
図2A,Bには7個のセルを含むアレイが示されている。
【0029】
本開示において説明しているのは、電気化学セル、例えばバッテリもしくはバッテリシステム内で使用されるセルにおける内部障害を検出する方法である。当該方法は、各セルの同じ電気極性を有する第1の端子が共通に接続されており、各セルの反対の電気極性を有する第2の端子が開放回路にある、テストアレイ内に配置された2つ以上のセルを使用する。当該方法は、第2の端子対間に電圧測定装置を接続し、所定の測定時間にわたって、開放回路端子間の電圧差または電圧差変化率を測定することを含む。所定の時間にわたり、第2のセルに対する第1のセルの電圧差が任意に予め定められた閾値を上回って増大することは、第1のセルにおける障害を示唆する。
【0030】
実施形態では、方法は、所定の測定時間にわたって、少なくとも2つのセルの電圧または電圧変化率を測定することを含む。測定時間は、任意に1分間から5日間までである。いくつかの実施形態では、測定時間は、24時間以下であり、任意に12時間以下、任意に10時間以下、任意に9時間以下、任意に8時間以下、任意に7時間以下、任意に6時間以下、任意に5時間以下、任意に4時間以下、任意に3時間以下、任意に2時間以下、任意に1時間以下である。いくつかの実施形態では、測定時間は1分間から60分間までであり、任意に10分間から60分間まで、任意に20分間から60分間まで、任意に30分間から60分間までである。数日間以下、例えば5日間以下の測定時間により、従来の方法に対する、テストスループットの大幅な改善が達成される。
【0031】
1つまたは複数の実施形態では、複数の電圧測定装置を用いていずれか2つのセル間の測定を同時に実行できるか、または複数のセル端子間に多重化された電圧測定装置を用いて、迅速に連続して実行することができる。ここで使用しているように、「迅速」なる語は、1つの測定の開始から第2の測定の開始までの時間が5秒間以下であることを表すために用いている。いくつかの実施形態では、1つの測定の開始から次の測定の開始までの時間は1秒間以下であり、任意に1秒間未満である。
【0032】
本開示のいずれか1つの実施形態による方法の構成に対して、(図示の)6μA未満の内部短絡を有するセルの正の端子は、基準セルの正の端子に対し、時間経過にともなって増大する電圧差を示しうる。テストセルと基準セルとの間の電圧差は、時間経過にともなって増大する。なぜなら、テストセルの内部短絡は、存在するならば、基準セルの内部短絡よりも小さな規模を有するからである。テストセルが6μAよりも大きな内部短絡を有する場合、テストセルの正の端子と基準セルの正の端子との間の電圧は、基準セルの正の端子がテストセルに対して正の度合を増大させるように変化することになる。
【0033】
内部障害、任意に短絡もしくは自己放電の有無を検出するステップは、2つの電気化学セル間の差動電圧もしくは差動電圧変化率の有無を検出することにより実行され、ここで、当該は任意に1ミリボルト(mV)未満であり、または差動電圧変化率は1時間当たり0.1マイクロボルト(μV/時間)である。電圧差が測定される場合、測定時間の終了時の電圧差は、任意に900マイクロボルト(μV)未満、任意に800μV未満、任意に700μV未満、任意に600μV未満、任意に500μV未満、任意に400μV未満、任意に300μV未満、任意に200μV未満、任意に100μV未満、任意に50μV未満、任意に10μV未満、任意に1μV未満である。差動電圧変化率が測定される場合、測定時間にわたる検出勾配を求めることができ、当該検出勾配は、任意に0.1μV/時間未満、0.05μV/時間未満、任意に0.04μV/時間未満、任意に0.03μV/時間未満、任意に0.02μV/時間未満、任意に0.01μV/時間未満である。差動電圧変化率を検出する測定時間は、任意に2時間以下、任意に1時間以下、任意に30分間以下、任意に20分間以下、任意に10分間以下である。
【0034】
実施形態では、電圧差または電圧差変化率の測定は、電圧測定装置20を用いて実現される。任意の適切な電圧測定装置を使用可能である。いくつかの実施形態では、電圧測定装置20は、当該分野において認識されている語としての高分解能の電圧測定装置である。高分解能の電圧測定装置の図示の例には、任意のサブマイクロボルト領域、任意のサブナノボルト領域の可能電圧分解能を有する装置が含まれる。1つまたは複数の実施形態では、電圧測定装置20は、1μV以下の分解能を有する高分解能の測定装置である。こうした電圧測定装置の例には、Hewlett-Packard社のHP34401Aマルチメータ(1μV分解能)およびKeithley社のDMM7510マルチメータ(10nV分解能)が含まれる。
【0035】
いくつかの主要属性が、きわめて高い感度をもたらす上述した方法から生じる。電圧測定装置20は、おそらく数ミリボルト以下のみの比較的小さい電圧を測定する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、任意に、等しい充電状態もしくはほぼ同じ充電状態を有するセルによって実行され、これにより、テストアレイ50内の各セルから同等の電圧出力が得られる。電圧測定装置の分解能の度合にかかわらず、当該電圧測定装置は、小さな測定領域の全体に集中して動作可能である。2つのセルの電気的に共通の(例えば正または負の)2つの端子間の差電圧を測定することにより、単一のセルの電圧の測定、すなわち同じセルの負の電圧に対する正の電圧の測定に比べ、より高い感度を提供することができる。高いパフォーマンスを有する電圧計により、1ミリボルト(mV)フルスケールでの2オーダーから4オーダーの規模の大きな電圧測定分解能を提供することができる。
【0036】
1つまたは複数の実施形態では、電圧測定装置20は、サブナノボルト(nV)領域の電圧測定分解能を提供可能な、1mVから2mVの最大フルスケール示度に対して設計された電圧測定回路を含むことができる。例えば、2mVのフルスケール測定での有意な(産業において「雑音」と見なされるものを上回る)16ビットの測定データは、31ピコボルト(pV)の分解能に相当する。個別セルの電圧のきわめて小さな変化は、きわめて高い抵抗に関連しており、小さな電流短絡は、高分解能の構成であってもその測定分解能を超える。対して、個別セルの全体電圧の測定には、例えば5ボルトから10ボルト(V)のフルスケールが要求される。目的に適合する電圧測定装置は、1mVの最大電圧を測定するように設計されており、4.2Vまでの全体セル電圧を用意しなければならない装置の分解能の4200倍までを提供可能である。ただし、本開示において説明する方法を利用することで、抵抗が大きくても、小さな電流短絡を検出して定量化することができる。
【0037】
本開示において説明する方法の付加的属性は、温度にともなうセル電圧の変化が、実質的にコモンモードパラメータとして現れることである(測定によって実質的に拒絶されることを意味する)。したがって、本開示の方法を用いれば、これ以外の場合には温度に起因するセル電圧の変化によって隠されてしまう内部障害、例えば内部短絡から生じるセルの電圧変化を識別することができる。各テストセルは温度に起因しては実質的に同等の正対負の端子電圧変化を受けるので、負の端子に接続されたセルの正の端子で測定される電圧は、温度変動に起因しては、低下する(または主としてゼロの)変化量を有する。ただし、限定を意図するものでないが、本開示のシステムおよび方法を使用する場合、制御された熱環境において保存およびテストされるセルは、典型的には温度変動を受けないことに注意されたい。当該方法は、電圧変化をもたらす障害が温度変化に起因するセルの電圧変化に比べて小さいために従来技術の方法では隠れてしまう、内部障害に起因する電圧変化への感度を提供する。本開示のシステムおよび方法は、種々のセルの反対極性の端子を共通に接続し、同じ極性を有する端子間の電圧を測定する測定構造を利用することによってこうした欠点を克服しており、これにより、温度にともなうセル電圧の変化は、当該測定構造によって実質的に拒絶されるコモンモード信号となる。
【0038】
ここで説明しているシステムおよび方法は、限定的ではないが、種々の用途、すなわち、リチウムイオンセル製造の形成プロセスもしくはエージングプロセスの一部としての内部短絡のセルスクリーニング、こうしたセルをバッテリパックとして組み立てる前の内部短絡のセルスクリーニング、ラボでの研究における内部短絡の有無のセルテスト、安全性に関するセルのステートオブヘルスSOHの測定、またはリチウムイオン、酸化鉛、ニッケル金属水素化物およびニッケルカドミウムの化学物質を含むセルでの内部短絡の検出および/または自己放電の測定を含む用途に利用可能である。当該説明は基本的にはリチウムイオンセルについて行うが、任意の化学反応のセルをここで提供する方法もしくはシステムにおいて使用できることを理解されたい。
【0039】
例示の態様
以下に、バッテリにおける内部障害を検出する方法およびバッテリにおける内部障害を検出するシステムの種々の態様を説明するが、こうした態様は他の種々の他の態様と組み合わせて利用可能であることを理解されたい。
【0040】
第1の態様では、本開示は、電気化学セルにおける内部障害、任意に短絡もしくは自己放電を検出する方法を提供する。当該方法は、測定時間にわたって、同じ極性を有する、第1の電気化学セルのテスト端子と第2の電気化学セルのテスト端子との間の電圧差もしくは電圧差変化率を測定すること、および当該測定に基づいて第1の電気化学セルもしくは第2の電気化学セルを受容すること、または第1の電気化学セルもしくは第2の電気化学セルにおける1つまたは複数の内部障害を識別する測定のステップに基づいて、第1の電気化学セルもしくは第2の電気化学セルを廃棄することを含む。
【0041】
第2の態様では、本開示は、第1の態様の方法を提供する。当該方法はさらに、第2の測定時間にわたって、(A)第1の電気化学セルもしくは第2の電気化学セルのテスト端子と、(B)同じ極性を有する、第3の電気化学セルのテスト端子との間の、電圧差もしくは電圧差変化率を測定することを含む。
【0042】
第3の態様では、本開示は、第1の態様または第2の態様の方法を提供する。ここでは、測定時間が1秒間から24時間であり、任意に2時間から3時間である。
【0043】
第4の態様では、本開示は、第1の態様から第3の態様までまたは第5の態様から第15の態様までのいずれかの方法を提供する。ここでは、第1の電気化学セルおよび第2の電気化学セルのそれぞれはリチウムイオンセルである。
【0044】
第5の態様では、本開示は、第1の態様から第4の態様までのいずれかの方法を提供する。ここでは、内部障害は短絡である。
【0045】
第6の態様では、本開示は、第1の態様から第4の態様までのいずれかの方法を提供する。ここでは、内部障害は短絡でない。
【0046】
第7の態様では、第1の態様から第6の態様までのいずれかの方法を提供する。ここでは、第1の電気化学セルまたは第2の電気化学セルは、任意に測定された既知の内部障害を有する基準セルまたは内部障害が存在しないことが既知である基準セルである。
【0047】
第8の態様では、第1の態様から第7の態様までのいずれかの方法を提供する。ここでは、第1の電気化学セルおよび第2の電気化学セルは、同じ温度、同じ充電状態、または同じ温度および同じ充填状態の双方を有する。
【0048】
第9の態様では、第1の態様から第8の態様までのいずれかの方法を提供する。ここでは、正の端子が共通である。
【0049】
第10の態様では、第1の態様から第8の態様までのいずれかの方法を提供する。ここでは、負の端子が共通である。
【0050】
第11の態様では、本開示は、電気化学セルにおける内部障害を検出するシステムを提供し、当該システムは、第1の端子および第1の対抗端子を有する第1の電気化学セル、第2の端子および第2の対抗端子を有する第2の電気化学セル、ならびに電圧測定装置を含む。第1の端子と第2の端子とは共通の極性を有する。第1の端子と第2の端子とは、共通に、任意には単一のバスに接続されている。第1の対抗端子と第2の対抗端子とは、それぞれ開放回路にある。電圧測定装置は、第1の対抗端子と第2の対抗端子とに電気的に接続可能であるかまたは電気的に接続されている。
【0051】
第12の態様では、第11の態様のシステムを提供する。ここでは、アレイは、2個から10個の電気化学セルを含む。
【0052】
第13の態様では、第11の態様から第12の態様のシステムを提供する。ここでは、アレイはさらに、基準端子および対向基準端子を有する基準セルを含む。
【0053】
第14の態様では、第13の態様のシステムを提供する。ここでは、第1の端子、第2の端子および基準端子は、共通に接続されており、電圧測定装置が、第1の端子と基準端子とに電気的に接続可能であるかもしくは電気的に接続されている、または電圧測定装置が、第2の端子と基準端子とに電気的に接続可能であるかもしくは電気的に接続されている。
【0054】
第15の態様では、第11の態様から第14の態様のシステムを提供する。ここでは、電圧測定装置は、1μV以下の分解能を有する高分解能の電圧測定装置を含む。
【0055】
本発明の種々の実施形態を、以下に、非限定の各例により説明する。例示は説明のためのものであり、本開示のいかなる実施についても限定するものではない。本開示の使用および範囲から逸脱することなく、変更および修正が可能であることを理解されたい。
【0056】
実験例
先の詳細な説明において説明したいくつかの実施形態は、さらに、以下の例によって明確となるであろう。以下の各例は、詳細な説明において説明したまたは特許請求の範囲において言及される各実施形態の範囲を限定する意図のものでないことを理解されたい。
【0057】
例1
例1では、市販入手可能な2個の2.6Ah 18650セルにおいて、2セルテストアレイを形成するために負の端子を共通に接続し、残りの正の端子が開放回路にある、例示のシステムおよび方法を使用して、データを取得した。セルの正の端子間の電圧は、Keithley DMM7510 マルチメータを使用して測定し、約2時間までの期間にわたって追跡した。
【0058】
回路内部短絡は、いずれかのセルを挟んで負荷抵抗を配置することでシミュレートし、所定の期間にわたってセルの正の端子間の電圧を追跡した。試行に対して得られたデータを記しているが、この試行では、内部短絡をシミュレートする負荷抵抗は125キロオーム(kΩ)、250kΩ、500kΩおよび1メガオーム(MΩ)である。セル対に対する短絡なしの条件は下方のトレース線である。
図3のグラフに記されたデータは、短絡なしの条件に対する「短絡なし」と標示された平坦な線の応答と、検出困難な低レベルの回路内部短絡に相当する抵抗領域に対する応答とを示している。
【0059】
検出困難な抵抗レベル、例えば1MΩ、500kΩ、250kΩおよび125kΩの
図3のグラフの結果は、上述したシステムおよび方法を使用して即座にかつ迅速に検出される。収集され
図3のグラフに示されているデータは、2個のセル内部の自己放電レベルの相対測定として認識される。例1による方法は感度が高いので、セル内部での自己放電のきわめて小さいレベルの差も検出可能である。
【0060】
比較上、化学的劣化プロセスがセル内部の電荷を消費することがあるが、例1の当法は、セパレータを超えた直接の電子の伝導には関与しない。内部短絡の場合、当該プロセスはセルの開放回路電圧の低下を生じさせる。比較可能な、自己放電が正常レベルにあるセルは、比較的平坦な応答を送出し、
図3のグラフでは短絡がトレースされていない。より大きな自己放電を有するセルは、内部短絡における、セパレータを超えた電子の伝導または他のメカニズムによって電荷を消費する電気化学的プロセスのどちらの源からであっても、例1のシステムおよび方法を使用して識別可能であり、したがって拒絶可能である。
【0061】
回路内部短絡を監視する従来のアプローチは、同じセルの対向し合う端子間の開放回路電圧を測定することから成るが、
図3のグラフに示した測定期間にわたっていかなる変化も記録しなかった。
図3のグラフの結果により、例1の方法の、リチウムイオンセルにおける回路内部短絡の迅速かつ正確な検出という1つの利益が強調される。
【0062】
図4のグラフに記された各データ点は、記されている各トレース線の勾配対短絡抵抗であり、log(短絡抵抗)の関数としてのlog(勾配)の線形回帰である。データは
図3に示した応答から導出したものである。当該データは、勾配の度合が抵抗の規模に依存することを示している。図示の勾配は短絡抵抗の規模に良好に依存するので、
図4に示すように、勾配を用いて、所定のセルタイプについての内部短絡の規模を定量化することができる。
【0063】
例2
例2では、市販入手可能な8個の2.6Ah 18650セルにおいて、8セルテストアレイを形成するために負の端子を共通に接続し、残りの正の端子が開放回路にある、
図1に示したシステムに類似した例示のシステムおよび方法を使用して、データを取得した。セルの正の端子間の電圧は、Keithley DMM7510 マルチメータを使用して測定し、約4.5時間の期間にわたって追跡した。
【0064】
例2では、各セルと当該セルに直接に隣接するセルとの間の差動電圧(電圧差)を監視し、結果を
図5のグループとして記録して示した。テストの最初の約160分間では、100,000Ωの抵抗なしでセルをテストした。
図5のグラフで発生している差動電圧(電圧差)の変動は、
図8のグラフに示している周囲温度の小さな変動による典型的なものである。
【0065】
図5のグラフでは、約160分の時点で、100,000Ωの抵抗を、セルDを挟んで配置した。100,000Ωの抵抗は、内部短絡をシミュレートするためにシステムに組み込んだ。上述したように、内部短絡の存在は、グループ内の他のセルに対して負の度合が増大する正の端子電圧を示すセルによって示唆される。
図5のグラフでは、セルDの電圧をセルEに比較して(セルD対セルEで)測定した場合に、差動電圧(電圧差)が時間の関数として負の度合を増大させており、これは、セルDの電圧がセルEに比較して降下または低下しているからである。比較上、セルCをセルDに比較して測定した場合には、差動電圧は所定の期間にわたって正の度合を増大させている。当該差動電圧が増大するのは、セルCの電圧がセルDに比較して増大しているからである。
【0066】
セルA,B,C,E,F,G,Hは、(セルDを含まない)隣接するセルに対してテストした場合には、差動電圧の増大または低下が存在せず、内部短絡の存在は示唆されなかった。
【0067】
例3
例3では、
図2A,Bに示したコンフィグレーションを用いて市販の5個のリチウムイオンセルをテストした。基準セルに対する各セルの差動電圧を測定している。セル5が、所定の時間にわたる、基準セルに対するセル5の差動電圧の負の勾配により、異常な自己放電を有するセルとして識別されている。10ヶ月の期間にわたり、セル5を保管(室温保管)して観察した。当該セルが3.78ボルト(V)の初期電圧から10ヶ月間の期間にわたって1.5V未満の電圧まで緩慢に放電することを示唆するテスト結果により、高抵抗の内部短絡の存在が確認される。当該セルは、販売前のメーカによる品質管理テストに合格したと見なされる。ただし、セル5は、本開示において説明した方法の1つを使用して、内部短絡を含むセルとして迅速に診断される。
【0068】
例4
図7A,Bの棒グラフでは、異なるメーカから購入された2つのグループのセルを、本開示のシステムおよび方法によりテストした。メーカAのセルは、メーカBのセルの差動電圧の勾配に比べ、時間の関数として差動電圧のより大きな勾配を示した。比較上、メーカAのセルは、メーカBのセルの差動電圧の勾配より1000倍大きい差動電圧の勾配を有している。差動電圧の勾配の増大は、メーカAのいくつかのセルでの軟性の短絡の存在を示唆する。メーカAのセルに軟性の短絡が存在することおよびメーカBのセルにこうした短絡がないことは、10ヶ月間の期間にわたるセル電圧の追跡によって確認される。例えば、メーカAのセルは、テスト位置Fにおいて、10ヶ月間で3.78Vから1.3Vまで放電した(約25,000Ωの予測短絡抵抗に相当する)。対して、メーカBのセルFは、12ヶ月間で1mV未満の損失であった。
【0069】
例5
例5では、
図8のグラフに示したように、1日を通した時間の関数としてセル電圧を研究した。セル電圧は、周囲温度(摂氏22.5度±2.0度[℃])での通常の小さな変動で増減している。セル電圧の小さな変動は、セル電圧のコモンモード変動を拒絶するための、2つのセル間の差の測定の能力を示している。よって、温度に起因するセル電圧の降下は、短絡のないセルでの内部短絡の存在を表すため、回避される。
【0070】
本開示の種々の修正形態は、図示およびここで説明した修正形態に加え、上述の説明により当該分野の技術者に明らかとなるであろう。なお、こうした各修正形態は、添付の特許請求の範囲に該当することも意図されている。
【0071】
すべての材料および器具は、別の規定がないかぎり、当該分野において周知のソースから取得可能である。
【0072】
本明細書中で言及した特許文献、刊行物および出願は、本発明が属する分野の技術者のレベルを表す。当該特許文献、刊行物および出願は、これらのそれぞれが引用により本明細書に固有かつ個別に組み込まれるのと同様に、引用により本明細書に組み込まれる。
【0073】
説明した実施形態に対して、特許請求の範囲の主題の思想および範囲から逸脱することなく種々の修正を行えることは、当該分野の技術者に明らかなはずである。したがって、説明した実施形態の修正形態および変形形態が添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲に該当するかぎり、本明細書がこうした修正形態および変形形態をカバーすることも意図されている。