(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】導入遺伝子を保持する組換えアデノウイルス
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20230125BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20230125BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230125BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230125BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/861 Z
A61P35/00
A61K35/761
A61P1/04
(21)【出願番号】P 2019565347
(86)(22)【出願日】2018-05-29
(86)【国際出願番号】 US2018034888
(87)【国際公開番号】W WO2018218240
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518246958
【氏名又は名称】エピセントアールエックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】オロンスキー, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】リード, トニー アール.
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501695(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174200(WO,A1)
【文献】特表2008-507279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IX-E2挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列、L5-E4挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列、または前記IX-E2挿入部位に挿入された前記第1のヌクレオチド配列および前記L5-E4挿入部位に挿入された前記第2のヌクレオチド配列の両方を含む、組換えアデノウイルスであって、前記IX-E2挿入部位が、アデノウイルスIX遺伝子の終止コドンとアデノウイルスIVa2遺伝子の終止コドンとの間に位置しており、前記L5-E4挿入部位が、アデノウイルスファイバー遺伝子の終止コドンとアデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7の終止コドンとの間に位置して
おり、
前記IX-E2挿入部位に挿入された前記第1のヌクレオチド配列が、5’から3’の方向に、
(i)第1のIX-E2ポリアデニル化シグナル、
(iii)IX-E2プロモーター、
(iv)第1の導入遺伝子、
(v)第3のIX-E2ポリアデニル化シグナル、および
(vi)第4のIX-E2ポリアデニル化シグナルを含み、
前記第1のIX-E2ポリアデニル化シグナルが、前記IX遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第3のIX-E2ポリアデニル化シグナルが、前記第1の導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第4のIX-E2ポリアデニル化シグナルが、前記アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、
L5-E4挿入部位に挿入された前記第2のヌクレオチド配列が、5’から3’の方向に、
(i)第1のL5-E4ポリアデニル化シグナル、
(ii)第2のL5-E4ポリアデニル化シグナル、
(iii)L5-E4プロモーター、
(iv)第2の導入遺伝子、
(v)第3のL5-E4ポリアデニル化シグナル、および
(vi)第4のL5-E4ポリアデニル化シグナルを含み、
前記第2のL5-E4ポリアデニル化シグナルが、前記第1のL5-E4ポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にあり、前記第1のL5-E4ポリアデニル化シグナルが、前記ファイバー(L5)遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第3のL5-E4ポリアデニル化シグナルが、前記第2の導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第4のL5-E4ポリアデニル化シグナルが、前記アデノウイルスE4遺伝子のORF6もしくはORF6/7のポリアデニル化シグナルである、組換えアデノウイルス。
【請求項2】
前記第1のヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に、またはAd35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、請求項1に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項3】
前記第2のヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドから32916に対応するヌクレオチドの間に、またはAd35ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、請求項2に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項4】
前記第1のヌクレオチド配列が、
前記第1のIX-E2ポリアデニル化シグナルと前記IX-E2プロモーターの間に、第2の
IX-E2ポリアデニル化シグナ
ルをさらに含み、
前
記第2のポリアデニル化シグナルが、前記第1のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向に
ある、請求項
1に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項5】
E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項6】
過剰増殖性細胞において選択的に複製する、請求項1から
5のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項7】
過剰増殖性細胞において前記第1の導入遺伝子、前記第2の導入遺伝子、または前記第1の導入遺伝子および前記第2の導入遺伝子の両方を選択的に発現する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項8】
腫瘍成長の阻害を、それを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、前記組成物は、前記腫瘍の成長を阻害するための有効量の、請求項1から
7のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスを含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
アデノウイルスの製剤であって、
(a)請求項1から
7のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスと、
(b)少なくとも1つの緩衝剤と、
(c)少なくとも1つの張度改変剤と、
(d)少なくとも1つの糖もしくは少なくとも1つの安定剤、またはその両方とを含み、約7.0~約9.0の範囲のpHを有する、製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月26日に出願された米国仮特許出願第62/511,822号に対する優先権およびその利益を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願に付随する配列表は、書面の代わりにテキスト形式で提出され、ここに参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、EPRX_002_01WO_SeqList_ST25.txtである。テキストファイルは、約128KBであり、2018年5月29日に作成され、EFS-Webを通じて電子的に提出されている。
【0003】
発明の分野
本明細書に記載される発明は、概して、ウイルス学、ウイルス療法、および分子生物学の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
がんなどの疾患を処置するためのウイルス療法の使用は、治療用遺伝子または導入遺伝子を装備した複製選択的ウイルスの利用を包含する。ウイルス療法剤として開発された様々な感染性ウイルス種の中でも、アデノウイルスは、正常な非形質転換細胞に対する毒性が最小限であるだけでなく、複数の内在遺伝子から構成されるそのゲノムが、内在遺伝子の欠失および外来遺伝子の挿入という形式をとることが一般的である操作に適しているため、最も有望なものの1つとなっている。この操作の欠点は、内在遺伝子の欠失または外来遺伝子の付加のほとんどが、ウイルスの複製能および感染能を低下または減弱させることである。(Larsonら、Oncotarget、6巻(24号):19976~89頁(2015年))
【0005】
これらの領域に導入遺伝子を保持するウイルスの複製効率の低減は、がんの処置のための腫瘍溶解性ウイルスの場合などには、ウイルスが腫瘍内で増えて近隣のがん性細胞に感染する能力を損ない、感染細胞内のウイルスゲノムのコピー数が減少し、そのため治療用導入遺伝子の転写が低減されることが多く、ウイルスの製造に必要とされる産生培地のサイズが大きくなるため、望ましくない。したがって、標的とされる細胞または組織、たとえば、腫瘍において、高いレベルで複製するように組換えアデノウイルスの能力を改善し、それによって、標的とされる細胞または組織を、特定の外来遺伝子産物の産生のための「工場」へと急速に変化させるための新しい方法に対する必要性が存在する。
典型的には、腫瘍溶解性ウイルスに、2つまたはそれを上回る別個のタンパク質またはポリペプチド鎖を発現させるためには、1つを上回るウイルスベクターの使用、または2つの導入遺伝子間におけるリンカー、たとえば、内部リボソーム進入部位(IRES)の使用が必要である。いずれの方法も、大きな欠点を有する。2つまたはそれを上回るウイルスベクターは、必ずしも、単一の細胞または組織内で良好に発現しない場合がある。当該技術分野において公知のように、IRESの下流の配列は、上流の配列よりも大幅に低いレベルで発現される。(Mizuguchiら、Mol. Ther.、1巻(4号):376~82頁(2000年))加えて、内在性ではないリンカーは、免疫原性の可能性を有する。したがって、単一のウイルス内で1つを上回るペプチド鎖を発現させるための、より効率的なウイルスベクターに対する必要性が、存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Larsonら、Oncotarget、6巻(24号):19976~89頁(2015年)
【文献】Mizuguchiら、Mol. Ther.、1巻(4号):376~82頁(2000年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、部分的に、ウイルスゲノムにおいて2つのウイルス転写ユニット間に挿入された1つまたは複数のヌクレオチド配列を有する組換えアデノウイルスが、効率的に複製し、標的とされる細胞または組織においてそのヌクレオチド配列を発現することができ、ウイルスの腫瘍溶解活性に著しい影響を及ぼさないという発見に基づく。本発明のベクターは、同等なレベルの2つまたはそれを上回る導入遺伝子が所望される場合に、または二本鎖タンパク質から完全に天然の鎖を発現させるために、有利に使用することができる。
【0008】
一態様では、本発明は、挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列を含む、組換えアデノウイルスであって、挿入部位が、第1のウイルス転写ユニットの終止コドンと、第2のウイルス転写ユニットの終止コドンとの間に位置しており、第1のウイルス転写ユニットの終止コドンから第2のウイルス転写ユニットの終止コドンの方が、第1のウイルス転写ユニットの開始部位から第2のウイルス転写ユニットの終止コドンよりも近く、第2のウイルス転写の終止コドンから第1のウイルス転写ユニットの終止コドンの方が、第2のウイルス転写ユニットの開始部位から第1のウイルス転写ユニットの終止コドンよりも近く、ヌクレオチド配列が挿入される前は、第1のウイルス転写ユニットと第2のウイルス転写ユニットとの間にウイルス転写ユニットは存在しない、組換えアデノウイルスを提供する。
【0009】
ある特定の実施形態では、第1のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスIX遺伝子であり、第2のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスIVa2遺伝子である。ある特定の実施形態では、第1のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスファイバー遺伝子であり、第2のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7である。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5型アデノウイルス(Ad5)である。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、35型アデノウイルス(Ad35)である。
【0010】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入される。ある特定の実施形態では、IX-E2挿入部位は、アデノウイルスIX遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスIVa2遺伝子の終止コドンとの間に位置している。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の約4029に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4050に対応するヌクレオチドとの間、4050に対応するヌクレオチドと4070に対応するヌクレオチドとの間、または4070に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に、挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の約3899に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3920に対応するヌクレオチドとの間、3920に対応するヌクレオチドと3940に対応するヌクレオチドとの間、または3940に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に、挿入される。
【0011】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入される。ある特定の実施形態では、L5-E4挿入部位は、アデノウイルスファイバー遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7の終止コドンとの間に位置している。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドから32916に対応するヌクレオチドの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドと32800に対応するヌクレオチドとの間、32800に対応するヌクレオチドと32820に対応するヌクレオチドとの間、32820に対応するヌクレオチドと32840に対応するヌクレオチドとの間、32840に対応するヌクレオチドと32860に対応するヌクレオチドとの間、32860に対応するヌクレオチドと32880に対応するヌクレオチドとの間、32880に対応するヌクレオチドと32900に対応するヌクレオチドとの間、または約32901に対応するヌクレオチドと32916に対応するヌクレオチドとの間に、挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の約31799に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと32810に対応するヌクレオチドとの間、または32810に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。
【0012】
ある特定の実施形態では、前述の組換えアデノウイルスは、E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、Elb-19Kの開始部位と、Elb-55Kの開始部位との間に位置している。ある特定の実施形態では、E1b-19k挿入部位は、Elb-19Kの開始部位と、Elb-19Kの終止コドンとの間に位置している。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、アデノウイルスpVIII遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスファイバー遺伝子の開始部位との間に位置している。
【0013】
ある特定の実施形態では、本発明は、IX-E2挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列と、L5-E4挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列とを含む、組換えアデノウイルスを提供する。
【0014】
ある特定の実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の約4029に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4050に対応するヌクレオチドとの間、4050に対応するヌクレオチドと4070に対応するヌクレオチドとの間、または4070に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に、挿入される。ある特定の実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の約3899に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3920に対応するヌクレオチドとの間、3920に対応するヌクレオチドと3940に対応するヌクレオチドとの間、または3940に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に、挿入される。
【0015】
ある特定の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドから32916に対応するヌクレオチドの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドと32800に対応するヌクレオチドとの間、32800に対応するヌクレオチドと32820に対応するヌクレオチドとの間、32820に対応するヌクレオチドと32840に対応するヌクレオチドとの間、32840に対応するヌクレオチドと32860に対応するヌクレオチドとの間、32860に対応するヌクレオチドと32880に対応するヌクレオチドとの間、32880に対応するヌクレオチドと32900に対応するヌクレオチドとの間、または約32901に対応するヌクレオチドと32916に対応するヌクレオチドとの間に、挿入される。ある特定の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の約31799に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと32810に対応するヌクレオチドとの間、または32810に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。
【0016】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、および/または第2のヌクレオチド配列は、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、プロモーターをさらに含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0017】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)プロモーター、(iii)導入遺伝子、(iv)第2のポリアデニル化シグナル、および(v)第3のポリアデニル化シグナルを含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、および/または第2のヌクレオチド配列(1つまたは複数の導入遺伝子を含む)は、第1のポリアデニル化シグナルと第3のポリアデニル化シグナルとの間に挿入される。一部の実施形態では、1つまたは複数の導入遺伝子は、第1のポリアデニル化シグナルと第3のポリアデニル化シグナルとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。
【0018】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、ファイバー(L5)遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第2のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7のポリアデニル化シグナルである。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、IX遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第2のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルである。
【0019】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)第2のポリアデニル化シグナル、(iii)プロモーター、(iv)導入遺伝子、(v)第3のポリアデニル化シグナル、および(vi)第4のポリアデニル化シグナルを含み、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、および/または第2のヌクレオチド配列(1つまたは複数の導入遺伝子を含む)は、第1のポリアデニル化シグナルと第4のポリアデニル化シグナルとの間に挿入される。一部の実施形態では、1つまたは複数の導入遺伝子は、第1のポリアデニル化シグナルと第4のポリアデニル化シグナルとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第1のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、第4のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。
【0020】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、ファイバー(L5)遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第4のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7のポリアデニル化シグナルである。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、IX遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第4のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルである。
【0021】
ある特定の実施形態では、プロモーターは、遍在的プロモーター、組織特異的プロモーター、または腫瘍特異的プロモーターである。
【0022】
ある特定の実施形態では、IX-E2挿入部位は、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、または60個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、L5-E4挿入部位は、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、または130個のヌクレオチドの欠失を含む。
【0023】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、コンセンサスコザック配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、アデノウイルス死タンパク質(ADP)をコードするヌクレオチド配列の部分的または完全な欠失を含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、前述の組換えアデノウイルスは、E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、Elb-19Kの開始部位と、Elb-55Kの開始部位との間に位置している。ある特定の実施形態では、E1b-19k挿入部位は、Elb-19Kの開始部位と、Elb-19Kの終止コドンとの間に位置している。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、アデノウイルスpVIII遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスファイバー遺伝子の開始部位との間に位置している。
【0025】
ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約100~約305個、約100~約300個、約100~約250個、約100~約200個、約100~約150個、約150~約305個、約150~約300個、約150~約250個、または約150~約200個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約200個のヌクレオチド、たとえば、202個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号1)のヌクレオチド1714~1917に対応する欠失を含むか、または第1の治療用導入遺伝子は、Ad5ゲノム(配列番号1)の1714に対応するヌクレオチドと1917に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第1の治療用導入遺伝子は、CTGACCTC(配列番号3)とTCACCAGG(配列番号2)との間に挿入され、たとえば、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、CTGACCTC(配列番号3)、第1の治療用導入遺伝子、およびTCACCAGG(配列番号2)を含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、約500~約3185個、約500~約3000個、約500~約2500個、約500~約2000個、約500~約1500個、約500~約1000個、約1000~約3185個、約1000~約3000個、約1000~約2500個、約1000~約2000個、約1000~約1500個、約1500~約3185個、約1500~約3000個、約1500~約2000個、約2000~約3185個、約2000~約3000個、約2000~約2500個、約2500~約3185個、約2500~約3000個、または約3000~約3185個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、E3-10.5Kの終止コドンとE3-14.7Kの終止コドンとの間に位置している。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、E3-10.5Kの終止コドンに隣接する約500~約1551個、約500~約1500個、約500~約1000個、約1000~約1551個、約1000~約1500個、または約1500~約1551個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、E3-10.5Kの終止コドンに隣接する約1050個のヌクレオチドの欠失を含み、たとえば、E3挿入部位は、E3-10.5Kの終止コドンに隣接する1063個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、Ad5 dl309 E3欠失に対応する欠失を含む。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号1)のヌクレオチド29773~30836に対応する欠失を含むか、または第2の治療用導入遺伝子は、Ad5ゲノム(配列番号1)の29773に対応するヌクレオチドと30836に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、Ad35ゲノム(配列番号41)のヌクレオチド29119~30622に対応する欠失を含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、機能性Pea3結合部位の欠失を有するE1aプロモーターを含む。たとえば、ウイルスは、Elaの開始部位の上流約-300から約-250に対応するヌクレオチドの欠失、またはElaの開始部位の上流-305から-255に対応するヌクレオチドの欠失を含み得る。ある特定の実施形態では、欠失は、Ad5ゲノム(配列番号1)の195~244に対応するヌクレオチドの欠失を含み、かつ/またはE1aプロモーターは、配列GGTGTTTTGG(配列番号4)を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、機能性TATAボックスが欠如しており、過剰増殖性細胞における遺伝子の選択的な発現を可能にする、この遺伝子に作動可能に連結された改変されたTATAボックスに基づくプロモーター、および/または機能性CAATボックスが欠如しており、過剰増殖性細胞における遺伝子の選択的な発現を可能にする、この遺伝子に作動可能に連結された改変されたCAATボックスに基づくプロモーターを含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、改変されたTATAボックスに基づくプロモーターは、初期遺伝子プロモーターである。ある特定の実施形態では、改変されたTATAボックスに基づくプロモーターは、E1aプロモーター、E1bプロモーター、またはE4プロモーターである。ある特定の実施形態では、改変されたTATAボックスに基づくプロモーターは、E1aプロモーターである。
【0030】
ある特定の実施形態では、改変されたTATAボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、TATAボックス全体の欠失を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1aプロモーターの-27から-24、-31から-24、-44から+54、または-146から+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、欠失は、Ad5ゲノム(配列番号1)の472から475、468から475、455から552、または353から552に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0031】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、配列CTAGGACTG(配列番号5)、AGTGCCCG(配列番号44)、および/またはTATTCCCG(配列番号45)を含むウイルスをもたらす、ポリヌクレオチド欠失を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターは、初期遺伝子プロモーターである。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターは、E1aプロモーター、E1bプロモーター、またはE4プロモーターである。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターは、E1aプロモーターである。
【0033】
ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、CAATボックス全体の欠失を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1aプロモーターの-76から-68に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0034】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、Ad5ゲノム(配列番号1)の423から431に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、配列TTCCGTGGCG(配列番号46)を含むウイルスをもたらす、ポリヌクレオチド欠失を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、Ad35ゲノム(配列番号41)の477から484に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、挿入されるヌクレオチド配列は、第1の導入遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列および第2の導入遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列を含み、ここで、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は、リンカーによって分離されている。ある特定の実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のプロテアーゼによって切断可能なペプチドをコードする。ある特定の実施形態では、リンカーは、内部リボソーム進入部位(IRES)または自己切断型2Aペプチドをコードする。IRESは、たとえば、脳心筋炎ウイルスIRES、口蹄疫ウイルスIRES、およびポリオウイルスIRESからなる群から選択され得る。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入またはL5-E4挿入部位に挿入され、組換えアデノウイルスは、E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入された第3の導入遺伝子を含む第3のヌクレオチド配列をさらに含む。
【0036】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、第2のヌクレオチド配列、および第3のヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の導入遺伝子を含む。
【0037】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、単量体、二量体、三量体、四量体、または多量体タンパク質、またはその一部をコードする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および/または第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、治療活性を有するRNAをコードする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および/または第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、少なくとも1つの結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする。
【0038】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、免疫調節性分子をコードする。ある特定の実施形態では、免疫調節性分子は、共刺激リガンド、サイトカイン、またはサイトカイン受容体である。ある特定の実施形態では、免疫調節性分子は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-7、IL-10、IL-10トラップ、IL-10R、IL-12A/p35、IL-12B/p40、IL-15、IL-15受容体融合タンパク質、IL-23A/p19、IL24、IL-27、IL-33、IL-35、IL-15、IL-15受容体融合タンパク質、TGF-β、TGF-βトラップ、IL-10トラップ、VEGF、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、誘導性T細胞共刺激リガンド(ICOS-L)、CD80、CD137L、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、またはGM-CSF、GITRリガンド(GITRL)、OX40リガンド(OX40L)、CD40リガンド(CD40L)、薬物誘導性CD40(iCD40)、CD154、CD70、CD86、CD137、CD137L、BORIS/CTCFL、TNFSF9、FGF、ICAM、ポドカリキシン、これらの機能性断片、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0039】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、抗原結合性分子をコードする。ある特定の実施形態では、抗原結合性分子は、抗PD-1抗体、抗TGF-β抗体、抗PD-L1抗体、および抗CTLA-4抗体、またはこれらの機能性断片である。
【0040】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、抗原または抗原に対するリガンドをコードする。ある特定の実施形態では、抗原は、CAIX、CEA、CD5、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD80、CD133、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、4-1BB、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erbB2、erbB3、erbB4、FBP、胎児性アセチルコリン受容体、KRAS、HPV E6、E7、BING-4、EphA3、カルシウム活性化クロライドチャネル-2、サイクリンB1、9D7、Ep-CAM、PRAME、SSX-2、未成熟ラミニン受容体、葉酸受容体-a、テロメラーゼ、チロシナーゼ、メラン-A、NY-ESO-1、GD2、GD3、hTERT、IL13R-a2、x-軽鎖、KDR、LeY、LI細胞接着分子、MAGE-A1、MAGE-A3、MART1、MART2、MUC1、メソテリン、HER-2/neu、EGFRvIII、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、gp100、TRP-1/-2、TRP-1/-2、Pポリペプチド、MC1R、前立腺特異的抗原、BRAF、アンドロゲン受容体、β-カテニン、BRCA1/2、CDK4、CML66、フィブロネクチン、p53、TGF-βRII、T細胞受容体、腫瘍胎児性抗原、5T4、PSCA、PSMA、ROR1、TAG-72、VEGF-R2、WT-1、これらの機能性断片、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0041】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、毒素をコードする。ある特定の実施形態では、毒素は、シュードモナス外毒素、リシン毒素、またはジフテリア毒素である。
【0042】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、酵素をコードする。ある特定の実施形態では、酵素は、ベータ-グルクロニダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、エステラーゼ、メタロプロテイナーゼ、リラキシン、コラゲナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルギナーゼ、NOS-2、これらの断片、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0043】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、細胞周期制御因子、増殖因子、抗凝血剤、プロドラッグ活性化遺伝子、腫瘍サプレッサー遺伝子、アポトーシス遺伝子、抗血小板剤、凝固因子、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質、これらの断片、またはこれらの誘導体をコードする。
【0044】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、アンジオスタチン、エンドスタチン、アセチルコリン、DKK1/Wnt、Ox40L、GITRL、分泌フラジェリン、チミジンキナーゼ、これらの機能性断片、またはこれらの誘導体をコードする。
【0045】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、腫瘍溶解性である。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、過剰増殖性細胞において選択的に複製する。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、過剰増殖性細胞において導入遺伝子を選択的に発現する。ある特定の実施形態では、過剰増殖性細胞は、腫瘍細胞である。
【0046】
別の態様では、本発明は、前述の組換えアデノウイルス配列のうちのいずれかを含む単離されたヌクレオチド配列であって、必要に応じて、このヌクレオチド配列がcDNAである、単離されたヌクレオチド配列を提供する。別の態様では、本発明は、アデノウイルスヌクレオチド配列を含む、単離されたベクターを提供する。別の態様では、本発明は、アデノウイルスヌクレオチド配列またはベクターを含む、単離された細胞を提供する。
【0047】
別の態様では、本発明は、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞を、有効量の、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかに曝露することであって、腫瘍細胞の増殖を阻害することを含む、方法を提供する。
【0048】
別の態様では、本発明は、対象における状態を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、状態は、がんである。本方法は、対象に、有効量の、本明細書に記載される組換えアデノウイルスを投与することであって、対象におけるがん疾患を処置することを含む。
【0049】
別の態様では、本発明は、腫瘍成長の阻害を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、有効量の、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかを投与することであって、腫瘍成長を阻害することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、腫瘍は、黒色腫、皮膚の扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肛門がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん、中皮腫、小細胞肺腫瘍、腎細胞癌、前立腺腫瘍、胃食道腫瘍、結腸直腸腫瘍、精巣腫瘍、膀胱腫瘍、卵巣腫瘍、肝細胞癌、胆管癌、脳腫瘍、子宮内膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、肉腫、および膵臓腫瘍からなる群から選択される。
【0050】
別の態様では、本発明は、疾患または状態の処置を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、有効量の、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかを投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、疾患または状態は、感染、糖尿病性網膜症、乾癬、リウマチ性関節炎、子宮内膜症、黄斑変性障害および良性成長障害、たとえば、前立腺肥大および脂肪腫、血管障害、心臓血管疾患、肝臓の硬変症、結合組織障害、腫瘍、血管病変、潰瘍性病変、炎症、血栓症、ならびに新内膜形成からなる群から選択される。
【0051】
ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物である。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、小児のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、成人のヒトである。
【0052】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、筋肉内、静脈内、動脈内、腫瘍内、皮内、吸入、経皮、局所、点眼、鼻内、経粘膜、および/または直腸投与によって投与される。
【0053】
ある特定の実施形態では、前述の方法は、対象に、外科手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、およびウイルス療法からなる群から選択される1つまたは複数の治療法を投与することをさらに含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、前述の方法は、対象に、1つまたは複数の免疫チェックポイント調節剤を投与することをさらに含む。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント調節剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、2B4、TIGIT、LAG3、Tim3、BTLA、CD160、GITR、KIR、4-1BB、およびCTLA4からなる群から選択される1つまたは複数の分子の阻害剤、アンタゴニスト、またはアゴニストである。
【0055】
別の態様では、本発明は、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、アデノウイルスの製剤であって、
a)前述の組換えアデノウイルスのいずれかのうちの1つまたは複数と、
b)少なくとも1つの緩衝剤と、
c)少なくとも1つの張度改変剤と、
d)少なくとも1つの糖もしくは少なくとも1つの安定剤、またはその両方とを含み、
約7.0~約9.0の範囲のpHを有する、製剤を提供する。
【0057】
ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかは、約200mOs/L~約800mOs/Lのモル浸透圧濃度を有する。ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかに含まれる組換えアデノウイルスは、約1×107vp/mL~1×1013vp/mLの濃度である。
【0058】
本発明のこれらおよび他の態様および利点は、以下の図面、詳細な説明、および特許請求の範囲によって例証される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列を含む、組換えアデノウイルスであって、前記挿入部位が、第1のウイルス転写ユニットの終止コドンと第2のウイルス転写ユニットの終止コドンとの間に位置しており、
前記第1のウイルス転写ユニットの終止コドンから前記第2のウイルス転写ユニットの終止コドンまでの方が、前記第1のウイルス転写ユニットの開始部位から前記第2のウイルス転写ユニットの終止コドンまでよりも近く、
前記第2のウイルス転写ユニットの終止コドンから前記第1のウイルス転写ユニットの終止コドンまでの方が、前記第2のウイルス転写ユニットの開始部位から前記第1のウイルス転写ユニットの終止コドンまでよりも近く、
前記ヌクレオチド配列が挿入される前は、前記第1のウイルス転写ユニットと前記第2のウイルス転写ユニットとの間にウイルス転写ユニットが存在しない、組換えアデノウイルス。
(項目2)
前記第1のウイルス転写ユニットが、アデノウイルスIX遺伝子であり、前記第2のウイルス転写ユニットが、アデノウイルスIVa2遺伝子である、項目1に記載の組換えアデノウイルス。
(項目3)
前記第1のウイルス転写ユニットが、アデノウイルスファイバー遺伝子であり、前記第2のウイルス転写ユニットが、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7である、項目1に記載の組換えアデノウイルス。
(項目4)
IX-E2挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列を含む、組換えアデノウイルスであって、前記IX-E2挿入部位が、アデノウイルスIX遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスIVa2遺伝子の終止コドンとの間に位置している、組換えアデノウイルス。
(項目5)
前記ヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目1、2、および4のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目6)
前記ヌクレオチド配列が、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目1、2、および4のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目7)
前記ヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4050に対応するヌクレオチドとの間、4050に対応するヌクレオチドと4070に対応するヌクレオチドとの間、または4070に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目1、2、4、および5のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目8)
前記ヌクレオチド配列が、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3920に対応するヌクレオチドとの間、3920に対応するヌクレオチドと3940に対応するヌクレオチドとの間、または3940に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目1、2、4、および6のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目9)
L5-E4挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列を含む、組換えアデノウイルスであって、前記L5-E4挿入部位が、アデノウイルスファイバー遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7の終止コドンとの間に位置している、組換えアデノウイルス。
(項目10)
前記ヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドから32916に対応するヌクレオチドの間に挿入されている、項目1、3、および9のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目11)
前記ヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドと32800に対応するヌクレオチドとの間、32800に対応するヌクレオチドと32820に対応するヌクレオチドとの間、32820に対応するヌクレオチドと32840に対応するヌクレオチドとの間、32840に対応するヌクレオチドと32860に対応するヌクレオチドとの間、32860に対応するヌクレオチドと32880に対応するヌクレオチドとの間、32880に対応するヌクレオチドと32900に対応するヌクレオチドとの間、または32900に対応するヌクレオチドと32916に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目1、3、9、および10のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目12)
前記ヌクレオチド配列が、Ad35ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目1、3、および9のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目13)
前記ヌクレオチド配列が、Ad35ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと32810に対応するヌクレオチドとの間、または32810に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目1、3、9、および12のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目14)
IX-E2挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列と、L5-E4挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列とを含む、組換えアデノウイルスであって、前記IX-E2挿入部位が、アデノウイルスIX遺伝子の終止コドンとアデノウイルスIVa2遺伝子の終止コドンとの間に位置しており、前記L5-E4挿入部位が、アデノウイルスファイバー遺伝子の終止コドンとアデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7の終止コドンとの間に位置している、組換えアデノウイルス。
(項目15)
前記第1のヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目14に記載の組換えアデノウイルス。
(項目16)
前記第1のヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4050に対応するヌクレオチドとの間、4050に対応するヌクレオチドと4070に対応するヌクレオチドとの間、または4070に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目14または項目15に記載の組換えアデノウイルス。
(項目17)
前記第1のヌクレオチド配列が、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目14に記載の組換えアデノウイルス。
(項目18)
前記第1のヌクレオチド配列が、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3920に対応するヌクレオチドとの間、3920に対応するヌクレオチドと3940に対応するヌクレオチドとの間、または3940に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目14または項目15に記載の組換えアデノウイルス。
(項目19)
前記第2のヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドから32916に対応するヌクレオチドの間に挿入されている、項目14から18のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目20)
前記第2のヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドと32800に対応するヌクレオチドとの間、32801に対応するヌクレオチドと32820に対応するヌクレオチドとの間、32821に対応するヌクレオチドと32840に対応するヌクレオチドとの間、32841に対応するヌクレオチドと32860に対応するヌクレオチドとの間、32861に対応するヌクレオチドと32880に対応するヌクレオチドとの間、32881に対応するヌクレオチドと32900に対応するヌクレオチドとの間、または32901に対応するヌクレオチドと32916に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目14から19のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目21)
前記第2のヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目14から18のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目22)
前記第2のヌクレオチド配列が、Ad35ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと32810に対応するヌクレオチドとの間、または32810に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入されている、項目14から18および21のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目23)
前記IX-E2挿入部位が、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、または60個のヌクレオチドの欠失を含む、項目4から8および14から22のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目24)
前記L5-E4挿入部位が、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、または130個のヌクレオチドの欠失を含む、項目9から23のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目25)
前記ヌクレオチド配列が、少なくとも1つの導入遺伝子を含む、項目1から24のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目26)
前記ヌクレオチド配列が、プロモーターをさらに含み、前記導入遺伝子が、前記プロモーターに作動可能に連結されている、項目25に記載の組換えアデノウイルス。
(項目27)
5’から3’の方向に、
(i)第1のポリアデニル化シグナル、
(ii)プロモーター、
(iii)導入遺伝子、
(iv)第2のポリアデニル化シグナル、および
(v)第3のポリアデニル化シグナルを含み、
前記導入遺伝子が、前記プロモーターに作動可能に連結されており、前記導入遺伝子が、前記第1のポリアデニル化シグナルと前記第3のポリアデニル化シグナルとの間に挿入されている、項目1から26のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目28)
前記第1のポリアデニル化シグナルが、前記ファイバー(L5)遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第2のポリアデニル化シグナルが、前記導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第3のポリアデニル化シグナルが、前記アデノウイルスE4遺伝子のORF6もしくはORF6/7のポリアデニル化シグナルであるか、または前記第1のポリアデニル化シグナルが、前記IX遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第2のポリアデニル化シグナルが、前記導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第3のポリアデニル化シグナルが、前記アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルである項目27に記載の組換えアデノウイルス。
(項目29)
5’から3’の方向に、
(i)第1のポリアデニル化シグナル、
(ii)第2のポリアデニル化シグナル、
(iii)プロモーター、
(iv)導入遺伝子、
(v)第3のポリアデニル化シグナル、および
(vi)第4のポリアデニル化シグナルを含み、
前記導入遺伝子が、前記プロモーターに作動可能に連結されており、前記導入遺伝子が、前記第1のポリアデニル化シグナルと前記第4のポリアデニル化シグナルとの間に挿入されており、前記第2のポリアデニル化シグナルが、前記第1のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある、項目1から26のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目30)
前記第1のポリアデニル化シグナルが、前記ファイバー(L5)遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第3のポリアデニル化シグナルが、前記導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第4のポリアデニル化シグナルが、前記アデノウイルスE4遺伝子のORF6もしくはORF6/7のポリアデニル化シグナルであるか、または前記第1のポリアデニル化シグナルが、前記IX遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第3のポリアデニル化シグナルが、前記導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、前記第4のポリアデニル化シグナルが、前記アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルである項目29に記載の組換えアデノウイルス。
(項目31)
前記プロモーターが、遍在的プロモーター、組織特異的プロモーター、または腫瘍特異的プロモーターである、項目26から30のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目32)
E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列をさらに含む、項目1から31のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目33)
前記ヌクレオチド配列が、第1の導入遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列と、第2の導入遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列とを含み、前記第1のヌクレオチド配列および前記第2のヌクレオチド配列が、リンカーによって分離されている、項目1から32のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目34)
前記リンカーが、1つまたは複数のプロテアーゼによって切断可能なペプチドをコードする、項目33に記載の組換えアデノウイルス。
(項目35)
前記リンカーが、内部リボソーム進入部位(IRES)または自己切断型2Aペプチドをコードする、項目33または項目34に記載の組換えアデノウイルス。
(項目36)
前記E1b-19K挿入部位が、Elb-19Kの開始部位とElb-19Kの終止コドンとの間に位置している、項目32に記載の組換えアデノウイルス。
(項目37)
前記E1b-19K挿入部位が、E1b-19Kの開始部位に隣接する約100~約305個、約100~約300個、約100~約250個、約100~約200個、約100~約150個、約150~約305個、約150~約300個、約150~約250個、または約150~約200個のヌクレオチドの欠失を含む、項目32または項目36に記載の組換えアデノウイルス。
(項目38)
前記E1b-19K挿入部位が、E1b-19Kの開始部位に隣接する約200個のヌクレオチドの欠失を含む、項目32、36、および37のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目39)
前記E1b-19K挿入部位が、Ad5ゲノム(配列番号1)のヌクレオチド1714から1917に対応する欠失を含む、項目32、36、および37のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目40)
前記E1b-19K挿入部位が、Ad35ゲノム(配列番号41)のヌクレオチド1611から2153に対応する欠失を含む、項目32、36、および37のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目41)
前記E3挿入部位が、アデノウイルスpVIII遺伝子の終止コドンとアデノウイルスファイバー遺伝子の開始部位との間に位置している、項目32に記載の組換えアデノウイルス。
(項目42)
前記E3挿入部位が、前記E3挿入部位が、E3-10.5Kの終止コドンとE3-14.7Kの終止コドンとの間に位置している、項目32または項目41に記載の組換えアデノウイルス。
(項目43)
前記E3挿入部位が、約500~約3185個、約500~約3000個、約500~約2500個、約500~約2000個、約500~約1500個、約500~約1000個、約1000~約3185個、約1000~約3000個、約1000~約2500個、約1000~約2000個、約1000~約1500個、約1500~約3185個、約1500~約3000個、約1500~約2000個、約2000~約3185個、約2000~約3000個、約2000~約2500個、約2500~約3185個、約2500~約3000個、または約3000~約3185個のヌクレオチドの欠失を含む、項目32、41、および42のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目44)
前記E3挿入部位が、E3-10.5Kの終止コドンに隣接する約500~約1551個、約500~約1500個、約500~約1000個、約1000~約1551個、約1000~約1500個、または約1500~約1551個のヌクレオチドの欠失を含む、項目32および41から43のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目45)
前記E3挿入部位が、E3-10.5Kの終止コドンに隣接する約1,050個のヌクレオチドの欠失を含む、項目32および41から44のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目46)
前記E3挿入部位が、E3-10.5Kの終止コドンに続く1,063個のヌクレオチドの欠失を含む、項目32および41から44のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目47)
前記E3挿入部位が、Ad5 dl309 E3欠失に対応する欠失を含む、項目32および41から43のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目48)
前記E3挿入部位が、Ad5ゲノム(配列番号1)のヌクレオチド29773~30836に対応する欠失を含む、項目32および41から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目49)
前記E3挿入部位が、Ad35ゲノム(配列番号41)のヌクレオチド29119から30622に対応する欠失を含む、項目32および41から46のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目50)
機能性Pea3結合部位の1つまたは複数の欠失を有するE1aプロモーターを含む、項目1から49のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目51)
前記欠失が、Elaの開始部位の上流約-300から約-250に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目50に記載の組換えアデノウイルス。
(項目52)
前記欠失が、Elaの開始部位の上流-305から-255に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目50に記載の組換えアデノウイルス。
(項目53)
前記欠失が、Ad5ゲノム(配列番号1)の195から244に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目50に記載の組換えアデノウイルス。
(項目54)
前記E1aプロモーターが、配列GGTGTTTTGG(配列番号4)を含む、項目50に記載の組換えアデノウイルス。
(項目55)
E1A領域における1つまたは複数のE2F転写結合部位の欠失を有さない1つまたは複数のPea3転写結合部位の欠失を含む、項目1から54のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目56)
E1A領域における1つまたは複数のPea3転写結合部位の欠失を有さない1つまたは複数のE2F転写結合部位の欠失を含む、項目1から54のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目57)
機能性TATAボックスが欠如しており、過剰増殖性細胞における遺伝子の選択的な発現を可能にする、遺伝子に作動可能に連結された、改変されたTATAボックスに基づくプロモーター、および/または機能性CAATボックスが欠如しており、過剰増殖性細胞における前記遺伝子の選択的な発現を可能にする、前記遺伝子に作動可能に連結された、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターを含む、項目1から48のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目58)
前記改変されたTATAボックスに基づくプロモーターが、初期遺伝子プロモーターである、項目57に記載の組換えアデノウイルス。
(項目59)
前記改変されたTATAボックスに基づくプロモーターが、E1aプロモーター、E1bプロモーター、またはE4プロモーターである、項目58に記載の組換えアデノウイルス。
(項目60)
前記改変されたTATAボックスに基づくプロモーターが、E1aプロモーターである、項目59に記載の組換えアデノウイルス。
(項目61)
前記改変されたTATAボックスに基づくプロモーターに含まれる改変が、TATAボックス全体の欠失を含む、項目57から60のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目62)
前記E1aプロモーターの-27から-24に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目57から60のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目63)
前記E1aプロモーターの-31から-24に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目57から62のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目64)
前記E1aプロモーターの-44から+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目57から63のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目65)
前記E1aプロモーターの-146から+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目57から64のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目66)
Ad5ゲノム(配列番号1)の472から475に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目57から60のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目67)
Ad5ゲノム(配列番号1)の468から475に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目66に記載の組換えアデノウイルス。
(項目68)
Ad5ゲノム(配列番号1)の455から552に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目67に記載の組換えアデノウイルス。
(項目69)
Ad5ゲノム(配列番号1)の353から552に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目68に記載の組換えアデノウイルス。
(項目70)
配列CTAGGACTG(配列番号5)、AGTGCCCG(配列番号44)、および/またはTATTCCCG(配列番号45)を含むウイルスをもたらす、ポリヌクレオチド欠失を含む、項目57から69のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目71)
前記改変されたCAATボックスに基づくプロモーターが、初期遺伝子プロモーターである、項目57に記載の組換えアデノウイルス。
(項目72)
前記改変されたCAATボックスに基づくプロモーターが、E1aプロモーター、E1bプロモーター、またはE4プロモーターである、項目71に記載の組換えアデノウイルス。
(項目73)
前記改変されたCAATボックスに基づくプロモーターが、E1aプロモーターである、項目72に記載の組換えアデノウイルス。
(項目74)
前記改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変が、CAATボックス全体の欠失を含む、項目71から73のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目75)
前記E1aプロモーターの-76から-68に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目71から74のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目76)
Ad5ゲノム(配列番号1)の423から431に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目71から74のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目77)
配列TTCCGTGGCG(配列番号46)を含むウイルスをもたらす、ポリヌクレオチド欠失を含む、項目71から76のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目78)
Ad35ゲノム(配列番号41)の477から484に対応するヌクレオチドの欠失を含む、項目57から80のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目79)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、単量体、二量体、三量体、四量体、または多量体のタンパク質をコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目80)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、治療活性を有するRNAをコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目81)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、少なくとも1つの結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目82)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、免疫調節性分子をコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目83)
前記免疫調節性分子が、共刺激リガンド、サイトカイン、またはサイトカイン受容体である、項目82に記載の組換えアデノウイルス。
(項目84)
前記免疫調節性分子が、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-7、IL-10、IL-10トラップ、IL-10R、IL-12A/p35、IL-12B/p40、IL-15、IL-23A/p19、IL24、IL-27、IL-33、IL-35、IL-15、IL-15受容体融合タンパク質、TGF-β、TGF-βトラップ、IL-10トラップ、VEGF、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、誘導性T細胞共刺激リガンド(ICOS-L)、CD80、CD137L、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、またはGM-CSF、GITRリガンド(GITRL)、OX40リガンド(OX40L)、CD40リガンド(CD40L)、薬物誘導性CD40(iCD40)、CD154、CD70、CD86、CD137、CD137L、BORIS/CTCFL、骨形成タンパク質(BMP)、TNFSF9、FGF、ICAM、ポドカリキシン、これらの機能性断片、ならびにこれらの誘導体からなる群から選択される、項目82または項目83に記載の組換えアデノウイルス。
(項目85)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、抗原結合性分子をコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目86)
前記抗原結合性分子が、抗PD-1抗体、抗TGF-β抗体、抗PD-L1抗体、および抗CTLA-4抗体、またはこれらの機能性断片である、項目85に記載の組換えアデノウイルス。
(項目87)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、抗原または前記抗原に対するリガンドをコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目88)
前記抗原が、CAIX、CEA、CD5、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD80、CD133、CD135(Flt3)、Flt3I、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、4-1BB、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erbB2、erbB3、erbB4、FBP、胎児性アセチルコリン受容体、KRAS、HPV E6、E7、BING-4、EphA3、カルシウム活性化クロライドチャネル-2、サイクリンB1、9D7、Ep-CAM、SAP-1、PRAME、SSX-2、未成熟ラミニン受容体、葉酸受容体-a、テロメラーゼ、チロシナーゼ、メラン-A、NY-ESO-1、GD2、GD3、hTERT、IL13R-a2、x-軽鎖、KDR、LeY、LI細胞接着分子、MAGE-A1、MAGE-A3、MART1、MART2、MUC1、メソテリン、HER-2/neu、EGFRvIII、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、gp100、TRP-1/-2、TRP-1/-2、Pポリペプチド、MC1R、前立腺特異的抗原、BRAF、アンドロゲン受容体、β-カテニン、BRCA1/2、CDK4、CML66、フィブロネクチン、p53、TGF-βRII、T細胞受容体、腫瘍胎児性抗原、5T4、PSCA、PSMA、ROR1、TAG-72、VEGF-R2、WT-1、これらの機能性断片、およびこれらの誘導体からなる群から選択される、項目87に記載の組換えアデノウイルス。
(項目89)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、毒素をコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目90)
前記毒素が、シュードモナス外毒素、リシン毒素、またはジフテリア毒素である、項目89に記載の組換えアデノウイルス。
(項目91)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、酵素をコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目92)
前記酵素が、ベータ-グルクロニダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、エステラーゼ、メタロプロテイナーゼ、リラキシン、コラゲナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルギナーゼ、NOS-2、これらの断片、およびこれらの誘導体からなる群から選択される、項目91に記載の組換えアデノウイルス。
(項目93)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、細胞周期制御因子、増殖因子、抗凝血剤、プロドラッグ活性化遺伝子、腫瘍サプレッサー遺伝子、アポトーシス遺伝子、抗血小板剤、凝固因子、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質、これらの断片、またはこれらの誘導体をコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目94)
前記導入遺伝子、前記第1の導入遺伝子、および前記第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、アンジオスタチン、エンドスタチン、アセチルコリン、DKK1/Wnt、Ox40L、GITRL、分泌フラジェリン、チミジンキナーゼ、これらの機能性断片、またはこれらの誘導体をコードする、項目25から78のいずれか一項に記載の組換え
アデノウイルス。
(項目95)
5型アデノウイルス(Ad5)または35型アデノウイルス(Ad35)である、項目1から94のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目96)
腫瘍溶解性である、項目1から95のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目97)
過剰増殖性細胞において選択的に複製する、項目1から96のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目98)
過剰増殖性細胞において導入遺伝子を選択的に発現する、項目1から97のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルス。
(項目99)
前記過剰増殖性細胞が、腫瘍細胞である、項目97または項目98に記載の組換えアデノウイルス。
(項目100)
項目1から99のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスを含む、単離されたヌクレオチド配列であって、必要に応じて、前記ヌクレオチド配列がcDNAである、単離されたヌクレオチド配列。
(項目101)
項目100に記載のヌクレオチド配列を含む、単離されたベクター。
(項目102)
項目100に記載のヌクレオチド配列または項目101に記載のベクターを含む、単離された細胞。
(項目103)
腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、前記腫瘍細胞を、有効量の、項目1から99のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスに曝露することであって、前記腫瘍細胞の増殖を阻害することを含む、方法。
(項目104)
腫瘍成長の阻害を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の、項目1から99のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスを投与することであって、前記腫瘍の成長を阻害することを含む、方法。
(項目105)
前記腫瘍が、HER2/neu陽性腫瘍であり、前記組換えアデノウイルスが、機能性Pea3結合部位の1つ以下の欠失を有するE1aプロモーターを含む、項目104に記載の方法。
(項目106)
前記HER2/neu陽性腫瘍が、乳がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、唾液腺がん、子宮内膜がん、膵臓がん、または非小細胞肺がん(NSCLC)からのものである、項目105に記載の方法。
(項目107)
前記腫瘍が、黒色腫、皮膚の扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肛門がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん、中皮腫、小細胞肺腫瘍、腎細胞癌、前立腺腫瘍、胃食道腫瘍、結腸直腸腫瘍、精巣腫瘍、膀胱腫瘍、卵巣腫瘍、肝細胞癌、胆管癌、脳腫瘍、子宮内膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、肉腫、および膵臓腫瘍からなる群から選択される、項目103または項目104に記載の方法。
(項目108)
がんの処置を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の、項目1から99のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスを投与することであって、前記対象における前記がんを処置することを含む、方法。
(項目109)
前記がんが、黒色腫、皮膚の扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、頭頸部がん、乳がん、肛門がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん、中皮腫、小細胞肺がん、腎細胞癌、前立腺がん、胃食道がん、結腸直腸がん、精巣がん、膀胱がん、卵巣がん、肝細胞癌、胆管癌、脳がん、子宮内膜がん、神経内分泌がん、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、肉腫、前立腺がん、白血病、リンパ腫、および膵臓がんから選択される、項目108に記載の方法。
(項目110)
疾患または状態の処置を、それを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に、有効量の、項目1から99のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスを投与することを含む、方法。
(項目111)
前記疾患または状態が、感染、糖尿病性網膜症、乾癬、リウマチ性関節炎、子宮内膜症、黄斑変性障害および良性成長障害、たとえば、前立腺肥大および脂肪腫、血管障害、心臓血管疾患、感染、肝臓の硬変症、結合組織障害、腫瘍、血管病変、潰瘍性病変、炎症、血栓症、ならびに新内膜形成からなる群から選択される、項目110に記載の方法。
(項目112)
前記対象が、哺乳動物である、項目104から111のいずれか一項に記載の方法。
(項目113)
前記対象が、ヒトである、項目104から112のいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記対象が、小児のヒトである、項目113に記載の方法。
(項目115)
前記対象が、成人のヒトである、項目113に記載の方法。
(項目116)
前記組換えアデノウイルスが、筋肉内、静脈内、動脈内、腫瘍内、皮内、吸入、経皮、局所、点眼、鼻内、経粘膜、または直腸投与によって投与される、項目104から115のいずれか一項に記載の方法。
(項目117)
前記対象に、外科手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、およびウイルス療法からなる群から選択される1つまたは複数の治療法を投与することをさらに含む、項目104から116のいずれか一項に記載の方法。
(項目118)
前記対象に、1つまたは複数の免疫チェックポイント調節剤を投与することをさらに含む、項目104から117のいずれか一項に記載の方法。
(項目119)
前記免疫チェックポイント調節剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、2B4、TIGIT、LAG3、Tim3、BTLA、CD160、GITR、KIR、4-1BB、およびCTLA4からなる群から選択される1つまたは複数の分子の阻害剤、アンタゴニスト、またはアゴニストである、項目117に記載の方法。
(項目120)
項目1から99のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、医薬組成物。
(項目121)
アデノウイルスの製剤であって、
(a)項目1から99のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスと、
(b)少なくとも1つの緩衝剤と、
(c)少なくとも1つの張度改変剤と、
(d)少なくとも1つの糖もしくは少なくとも1つの安定剤、またはその両方とを含み、約7.0~約9.0の範囲のpHを有する、製剤。
(項目122)
前記安定剤が、グリセロールである、項目121に記載の製剤。
(項目123)
前記安定剤が、約2%~約5%(体積/体積)である、項目121または項目122に記載の製剤。
(項目124)
前記緩衝剤が、Trisである、項目121から123のいずれか一項に記載の製剤。
(項目125)
前記緩衝剤が、約1mM~約30mMの濃度である、項目121から123のいずれか一項に記載の製剤。
(項目126)
前記張度改変剤が、NaClである、項目119から123のいずれか一項に記載の製剤。
(項目127)
前記張度改変剤が、約10mM~約250mMの濃度である、項目119から124のいずれか一項に記載の製剤。
(項目128)
第1の張度改変剤および第2の張度改変剤を含み、前記第1の張度改変剤が、一価カチオンであり、前記第2の張度改変剤が、二価カチオンである、項目119から125のいずれか一項に記載の製剤。
(項目129)
前記張度改変剤または前記二価カチオンが、MgCl
2
である、項目119から128のいずれか一項に記載の製剤。
(項目130)
前記張度改変剤または前記二価カチオンが、約0.1mM~約5mMの濃度である、項目119から129のいずれか一項に記載の製剤。
(項目131)
前記糖が、スクロースである、項目119から130のいずれか一項に記載の製剤。
(項目132)
前記糖が、体積に対する重量の百分率で約2%~約8%である、項目119から131のいずれか一項に記載の製剤。
(項目133)
少なくとも1つの非イオン性界面活性剤をさらに含む、項目119から132のいずれか一項に記載の製剤。
(項目134)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリソルベート-80またはポリソルベート-40である、項目133に記載の製剤。
(項目135)
前記非イオン性界面活性剤が、約0.001%~約1%の濃度である、項目133または項目134に記載の製剤。
(項目136)
少なくとも1つのフリーラジカル酸化阻害剤をさらに含む、項目119から135のいずれか一項に記載の製剤。
(項目137)
前記フリーラジカル酸化阻害剤が、EDTAである、項目136に記載の製剤。
(項目138)
前記フリーラジカル酸化阻害剤が、約0.01mM~約5mMの濃度である、項目136または項目137に記載の製剤。
(項目139)
少なくとも1つの凍結保護剤をさらに含む、項目119から138のいずれか一項に
記載の製剤。
(項目140)
前記凍結保護剤が、EtOHである、項目139に記載の製剤。
(項目141)
前記凍結保護剤が、約0.5%の濃度である、項目139または項目140に記載の製剤。
(項目142)
約200mOs/L~約800mOs/Lのモル浸透圧濃度を有する、項目119から141のいずれか一項に記載の製剤。
(項目143)
前記組換えアデノウイルスが、約1×10
7
vp/mL~1×10
13
vp/mLの濃度である、項目119から142のいずれか一項に記載の製剤。
(項目144)
約20mMのTris、約25mMのNaCl、約2.5%のグリセロールを含み、約8.0のpHを有する、項目119から143のいずれか一項に記載の製剤。
(項目145)
約20mMのTris、約25mMのNaCl、約3~5%のスクロースを含み、約8.0のpHを有する、項目119から144のいずれか一項に記載の製剤。
(項目146)
約10mMのTris、約75mMのNaCl、約5%のスクロース、約0.02%のポリソルベート-80、約1mMのMgCl
2
、約0.1mMのEDTA、約0.5%のEtOHを含み、約8.0のpHを有する、項目119から145のいずれか一項に記載の製剤。
(項目147)
少なくとも1つのイムノアジュバントをさらに含む、項目119から146のいずれか一項に記載の製剤。
(項目148)
前記イムノアジュバントが、1)ミョウバン、2)サポニン、3)非イオン性ポリマー界面活性剤、4)モノホスホリルリピドA、5)ムラミルジペプチド、および6)サイトカインから選択される、項目147に記載の製剤。
(項目149)
少なくとも1つの色素をさらに含む、項目119から148のいずれか一項に記載の製剤。
(項目150)
少なくとも1つの可逆的プロテアーゼ阻害剤をさらに含む、項目119から149のいずれか一項に記載の製剤。
(項目151)
前記可逆的プロテアーゼ阻害剤が、L3/p23システインプロテアーゼの阻害剤である、項目150に記載の製剤。
(項目152)
少なくとも1つの抗酸化剤をさらに含む、項目119から151のいずれか一項に記載の製剤。
(項目153)
前記抗酸化剤が、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、または葉酸塩である、項目152に記載の製剤。
【0059】
本発明は、以下の図面を参照することによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、ヒトAd5のゲノム組成を示すグラフである。図の上部に、ゲノムが線として示されており、従来的な左端からの長さが、kbp単位で記入されている。太い矢印は、初期および後期転写ユニット(それぞれ、黒色および灰色)を表す。白抜きの囲みは、主要なイントロンを表す。E4遺伝子は、直線スケールとして拡大されており、長さがbp単位で示されている。一次転写産物は、5’から3’の方向に黒色の矢印として示され、潜在的なコードタンパク質のそれぞれが、白抜きの囲みで示されている。コーディング領域がイントロン配列によって分割されているタンパク質は、線で繋がれた囲みとして示されている。
【0061】
【
図2】
図2は、ウイルスTAV-(E1B-19K)mGMCSFもしくはTAV-(L5-E4)mGMCSFを感染させたか、または未感染対照として保持した、A549細胞、ADS-12細胞、およびWI-38細胞からのマウスGMCSF発現レベルを示す。マウスGMCSF発現は、それらの馴化培地において測定した。
【0062】
【
図3】
図3は、ウイルスTAV IX-WT L5-エンプティ、TAV IX-WT L5-IL7、TAV IX-WT L5-GMCSF、またはTAV IX-GMCSF L5-IL7を感染させたA549細胞からのGMCSF発現レベルを示す。GMCSF発現は、馴化培地において測定した。GMCSFを、IX-E2発現カセットから発現させた場合に、L5-E4発現カセットよりも高い発現が、確認された。
【0063】
【
図4】
図4は、IX-E2挿入部位の初期設計および修正された設計を示す。
【0064】
【
図5】
図5は、ウイルス(TAV-Δ19k、TAV-hIL12-フューリン、TAV-TAV-IXrL5-エンプティ、WT-IXrL5-hIL12、またはTAV-IXrL5-hIL12)を3連で感染させ、感染の4日後にクリスタルバイオレット(生存細胞を紫色に染色する)で染色した、A549細胞を示す。
【0065】
【
図6】
図6は、ウイルス(TAV-Δ19k、TAV-hIL12-フューリン、TAV-TAV-IXrL5-エンプティ、WT-IXrL5-hIL12、またはTAV-IXrL5-hIL12)を感染させた、A549細胞からのIL-12発現レベルを示す。A549細胞に、示されているウイルスを3連で感染させ、感染の4日後に、馴化培地中のIL12を、ELISAで測定した。
【0066】
【
図7】
図7は、TAV-(IXr)mIL7noPA-(L5SV40wt)KozakmGMCSF(SV40野生型と表記)またはTAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSF(hEF1Aと表記)のいずれかを感染させたA549細胞からのIL-17およびGMCSFの発現レベルを示す。
【0067】
【
図8】
図8は、ADP遺伝子インタクト型[TAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSF、+ADPと表記]または欠失型[TAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSF-ΔADP、ΔADPとして表記]を感染させたA549細胞からのIL-17およびGMCSFの発現レベルを示す。馴化培地を、感染後の示されている時点で採取し、IL-7およびGMCSFを、ELISAで測定した。
【0068】
【
図9】
図9は、ウイルス[TAV-mCD80(IRES)mCD137L(IRES)mICAM1、IRESと表記]、[TAV-(19k)mCD80-(IX)mCD137L-(L5)mICAM1、19K-IX-5と表記]、または対照ウイルス[TAV-(19k)エンプティ-(IX)エンプティ-(L5)エンプティ、エンプティと表記]を感染させたA549細胞におけるCD80、CD137L、およびICAM1染色を示す。
【0069】
【
図10】
図10は、ウイルス[TAV-mCD80(IRES)mCD137L(IRES)mICAM1、IRESと表記]、[TAV-(19k)mCD80-(IX)mCD137L-(L5)mICAM1、19K-IX-5と表記]、または対照ウイルス[TAV-(19k)エンプティ-(IX)エンプティ-(L5)エンプティ、エンプティと表記]を感染させたHT29細胞におけるCD80、CD137L、およびICAM1染色を示す。
【0070】
【
図11】
図11は、ウイルス[TAV-mCD80(IRES)mCD137L(IRES)mICAM1、IRESと表記]、[TAV-(19k)mCD80-(IX)mCD137L-(L5)mICAM1、19K-IX-5と表記]、または対照ウイルス[TAV-(19k)エンプティ-(IX)エンプティ-(L5)エンプティ、エンプティと表記]を感染させたADS12細胞におけるCD80、CD137L、およびICAM1の染色を示す。
【0071】
【
図12】
図12は、ウイルス[TAV-mCD80(IRES)mCD137L(IRES)mICAM1、IRESと表記]、[TAV-(19k)mCD80-(IX)mCD137L-(L5)mICAM1、19K-IX-5と表記]、または対照ウイルス[TAV-(19k)エンプティ-(IX)エンプティ-(L5)エンプティ、エンプティと表記]を感染させたF244細胞におけるCD80、CD137L、およびICAM1染色を示す。
【0072】
【
図13】
図13は、5のMOIでの感染後のA549細胞におけるウイルスTAV-IX5-エンプティ(「エンプティ」と表記)およびTAV-IX5-mIL12(「mIL12」と表記)の腫瘍溶解活性を示す。ウェルを、感染後の示されている日数で、クリスタルバイオレットで染色した。
【0073】
【
図14】
図14は、ウイルスTAV-IX5-mIL12の導入遺伝子の発現である。A549細胞に、5のMOIでTAV-IX5-エンプティ(「エンプティ」と表記)またはTAV-IX5-mIL12(「mIL12」と表記)を感染させ、感染の5日後に馴化培地を採取し、それをELISAに使用して、ヘテロ二量体マウスIL-12を測定した。高レベルのマウスIL-12は、TAV-IX5-mIL12ウイルスでは発現されたが、対照のTAV-IX5-エンプティウイルスでは発現されなかった。バーは、3連の試料の平均IL-12レベルを示し、エラーバーは、標準偏差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
詳細な説明
本発明は、部分的に、ウイルスゲノムにおいて2つのウイルス転写ユニット間に挿入された1つまたは複数のヌクレオチド配列を有する組換えアデノウイルスが、効率的に複製し、標的とされる細胞または組織においてそのヌクレオチド配列を発現することができるという発見に基づく。
【0075】
I.組換えアデノウイルス
アデノウイルスは、ヌクレオキャプシドおよび二本鎖線状DNAゲノムから構成される、エンベロープを持たない正十二面体ウイルスである。アデノウイルスは、宿主の複製機構を使用して、哺乳動物細胞の核内で複製する。「アデノウイルス」という用語は、Adenoviridiae属の任意のウイルスを指し、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウス、およびサルアデノウイルス亜属を含むがこれらに限定されない。具体的には、ヒトアデノウイルスは、亜属A~F、ならびにそれらの個々の血清型を含み、個々の血清型および亜属A~Fには、ヒトアデノウイルス1型、2型、3型、4型、4a型、5型、6型、7型、8型、9型、10型、11型(Ad11aおよびAd11p)、12型、13型、14型、15型、16型、17型、18型、19型、19a型、20型、21型、22型、23型、24型、25型、26型、27型、28型、29型、30型、31型、32型、33型、34型、34a型、35型、35p型、36型、37型、38型、39型、40型、41型、42型、43型、44型、45型、46型、47型、48型、および91型が含まれるが、これらに限定されない。ウシアデノウイルスという用語には、ウシアデノウイルス1型、2型、3型、4型、7型、および10型が含まれるが、これらに限定されない。イヌアデノウイルスという用語には、イヌ1型(株CLL、Glaxo、RI261、Utrect、Toronto 26-61)および2型が含まれるが、これらに限定されない。ウマアデノウイルスという用語には、ウマ1型および2型が含まれるが、これらに限定されない。ブタアデノウイルスという用語には、ブタ3型および4型が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
一部の実施形態では、ヒトアデノウイルス5型および35型に由来する組換えウイルスが、提供される。「ウイルスベクター」および「ウイルス」という用語は、本明細書において、タンパク質合成機構もエネルギー生成機構も有さない偏性細胞内寄生体のうちの任意のものを指して、互換可能に使用される。
【0077】
アデノウイルスの複製サイクルは、2つの段階を有し、初期段階では、転写ユニットE1A、E1B、E2A、E2B、E3、およびE4が発現される。これらの転写ユニット内の遺伝子によってコードされるタンパク質は、ほとんどが、ウイルス転写の調節、ウイルスDNAの複製、および感染に対する宿主応答の抑制に関与する。L1~L5転写ユニットは、ウイルス再生サイクルの後期に転写され、ほとんどが、ウイルスキャプシドの成分を構成するかまたはキャプシドのアセンブリーに関与するタンパク質をコードする。L1~L5転写ユニットは、主として、主要後期プロモーター(MLP)により発現される。
【0078】
成熟したアデノビリオン(Adenovirion)の一般構造は、異なるアデノウイルス種間で保存されている。アデノウイルスキャプシドは、3つのメジャータンパク質(II、III、およびIV)ならびに5つのマイナータンパク質、VI、VIII、IX、IIIa、およびIVa2から構成される。本明細書において使用される「IVa2遺伝子」は、IVa2タンパク質、その改変されたバージョン、および/または断片をコードする、遺伝子を指す。本明細書において使用される「IX遺伝子」は、IXタンパク質、その改変されたバージョン、および/または断片をコードする、遺伝子を指す。
【0079】
Ad5ゲノムの概略図およびE4遺伝子の詳細を、
図1に示す。E4由来の一次転写産物は、代替的なスプライシング事象に供され、7つの異なるポリペプチド:ORF1、ORF2、ORF3、ORF3/4、ORF4、ORF5、ORF6、およびORF6/7をコードすると予測されている。(Leppardら、Journal of General Virology、78巻:2131~8頁(1997年))「ORF」は、ポリペプチド、またはポリペプチド、その改変されたバージョン、および/もしくは断片をコードするヌクレオチド配列のいずれかを指して、本明細書において使用される。
【0080】
加えて、ファイバータンパク質(タンパク質IVまたはSPIKEとしても公知である)は、正十二面体キャプシドのそれぞれの頂点から突出するスパイクを形成する。本明細書において使用される「ファイバー遺伝子」は、L5遺伝子としても公知であるファイバータンパク質、その改変されたバージョン、および/または断片をコードする、遺伝子を指す。
【0081】
A.挿入部位
一態様では、本発明は、挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列を含む、組換えアデノウイルスであって、挿入部位が、第1のウイルス転写ユニットの終止コドンと、第2のウイルス転写ユニットの終止コドンとの間に位置しており、第1のウイルス転写ユニットの終止コドンから第2のウイルス転写ユニットの終止コドンの方が、第1のウイルス転写ユニットの開始部位から第2のウイルス転写ユニットの終止コドンよりも近く、第2のウイルス転写の終止コドンから第1のウイルス転写ユニットの終止コドンの方が、第2のウイルス転写ユニットの開始部位から第1のウイルス転写ユニットの終止コドンよりも近い、組換えアデノウイルスを提供する。一部の実施形態では、第1のウイルス転写ユニットおよび第2のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスゲノム内で互いに隣接しており、たとえば、ヌクレオチド配列が挿入される前は、第1のウイルス転写ユニットと第2のウイルス転写ユニットとの間にウイルス転写ユニットは存在しない。
【0082】
本明細書において使用される「ウイルス転写ユニット」という用語は、ウイルスゲノムにおいて、転写開始部位から転写終止部位に及ぶ、線形配列のヌクレオチド配列を指す。ウイルス転写ユニットは、天然に存在するものであってもよく、改変されていてもよく、またはその断片であってもよい。「ウイルス転写ユニット」および「ウイルス遺伝子」という用語は、本明細書において互換可能に使用される。
【0083】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルスである。一部の実施形態では、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス1型、2型、3型、4型、4a型、5型、6型、7型、8型、9型、10型、11型、12型、13型、14型、15型、16型、17型、18型、19型、19a型、20型、21型、22型、23型、24型、25型、26型、27型、28型、29型、30型、31型、32型、33型、34型、34a型、35型、35p型、36型、37型、38型、39型、40型、41型、42型、43型、44型、45型、46型、47型、48型、または91型である。一部の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5型アデノウイルス(Ad5)または35型アデノウイルス(Ad35)である。
【0084】
ある特定の実施形態では、第1のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスIX遺伝子であり、第2のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスIVa2遺伝子である。ある特定の実施形態では、第1のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスファイバー遺伝子であり、第2のウイルス転写ユニットは、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7である。
【0085】
ある特定の実施形態では、挿入部位は、IX-E2挿入部位である。ある特定の実施形態では、IX-E2挿入部位は、アデノウイルスIX遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスIVa2遺伝子の終止コドンとの間に位置している。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029に対応するヌクレオチドと4050に対応するヌクレオチドとの間、4051に対応するヌクレオチドと4070に対応するヌクレオチドとの間、または4071に対応するヌクレオチドと4093に対応するヌクレオチドとの間に、挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899に対応するヌクレオチドと3920に対応するヌクレオチドとの間、3920に対応するヌクレオチドと3940に対応するヌクレオチドとの間、または3940に対応するヌクレオチドと3970に対応するヌクレオチドとの間に、挿入される。
【0086】
一部の実施形態では、IX-E2挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号1)の4029および4093に対応するヌクレオチドに対して、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する。一部の実施形態では、IX-E2挿入部位は、Ad35ゲノム(配列番号41)の3899および3970に対応するヌクレオチドに対して、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0087】
ある特定の実施形態では、挿入部位は、L5-E4挿入部位である。ある特定の実施形態では、L5-E4挿入部位は、アデノウイルスファイバー遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7の終止コドンとの間に位置している。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドから32916に対応するヌクレオチドの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785に対応するヌクレオチドと32800に対応するヌクレオチドとの間、32801に対応するヌクレオチドと32820に対応するヌクレオチドとの間、32821に対応するヌクレオチドと32840に対応するヌクレオチドとの間、32841に対応するヌクレオチドと32860に対応するヌクレオチドとの間、32861に対応するヌクレオチドと32880に対応するヌクレオチドとの間、32881に対応するヌクレオチドと32900に対応するヌクレオチドとの間、または32901に対応するヌクレオチドと32916に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、Ad35ゲノム(配列番号41)の31799に対応するヌクレオチドと32810に対応するヌクレオチドとの間、または32810に対応するヌクレオチドと31821に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。
【0088】
一部の実施形態では、L5-E4挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号1)の32785から32916に対応するヌクレオチドに対して、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する。一部の実施形態では、L5-E4挿入部位は、Ad35ゲノム(配列番号41)の31799および31821に対応するヌクレオチドに対して、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性を有する。
【0089】
IX-E2挿入部位および/またはL5-E4挿入部位に外来ヌクレオチド配列の挿入を有する組換えアデノウイルスは、これまでに説明されていなかった。そのような組換えアデノウイルスは、予想外なことに、正常細胞と比較して、腫瘍細胞において非常に良好な腫瘍選択的発現を示す。一態様では、本発明は、天然タンパク質を発現する方法を提供する。別の態様では、本発明は、天然構造の、たとえば、二量体または多量体のタンパク質を発現する方法を提供する。
【0090】
別の態様では、本発明は、標的細胞において2つまたはそれを上回る治療用導入遺伝子を発現させる方法を提供する。本方法は、細胞を、有効量の本明細書に記載される組換えウイルスに曝露して、標的導入遺伝子を発現させることを含む。
【0091】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、プロモーターをさらに含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0092】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)プロモーター、(iii)導入遺伝子、(iv)第2のポリアデニル化シグナル、および(v)第3のポリアデニル化シグナルを含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、および/または第2のヌクレオチド配列は、第1のポリアデニル化シグナルと第3のポリアデニル化シグナルとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、ファイバー(L5)遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第2のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7のポリアデニル化シグナルである。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、IX遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第2のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルである。
【0093】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)第2のポリアデニル化シグナル、(iii)プロモーター、(iv)導入遺伝子、(v)第3のポリアデニル化シグナル、および(vi)第4のポリアデニル化シグナルを含み、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、および/または第2のヌクレオチド配列は、第1のポリアデニル化シグナルと第4のポリアデニル化シグナルとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第1のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、第4のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、ファイバー(L5)遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第4のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスE4遺伝子のORF6またはORF6/7のポリアデニル化シグナルである。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、IX遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第4のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルである。
【0094】
「プロモーター」という用語は、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域を指して、その通常の意味で本明細書において使用され、ここで、調節配列は、RNAポリメラーゼに結合し、下流の(3’方向の)コーディング配列の転写を開始することができる、遺伝子に由来する。
【0095】
「作動可能に連結されている」とは、そのように記載される構成要素が、それらの通常の機能を行うことができるように構成されている、エレメントの配置を指す。したがって、コーディング配列に作動可能に連結されている制御エレメントは、コーディング配列の発現に影響を及ぼすことができる。制御エレメントは、コーディング配列の発現を指示するように機能する限り、必ずしもコーディング配列と連続している必要はない。したがって、たとえば、翻訳されないが転写はされる介在配列が、プロモーター配列とコーディング配列との間に存在してもよく、プロモーター配列は、依然として、コーディング配列に「作動可能に連結されている」と考えることができる。
【0096】
ある特定の実施形態では、プロモーターは、遍在的プロモーター、組織特異的プロモーター、または腫瘍特異的プロモーターである。
【0097】
一部の実施形態では、導入遺伝子は、遍在的プロモーター、たとえば、βActプロモーター、EF1プロモーター、EGR1プロモーター、eIF4A1プロモーター、FerHプロモーター、FerLプロモーター、GAPDHプロモーター、GRP78プロモーター、GRP94プロモーター、HSP70プロモーター、β-Kinプロモーター、PGK-1プロモーター、ROSAプロモーター、ユビキチンBプロモーター、SV40プロモーター、またはCMVプロモーターに作動可能に連結されている。一実施形態では、高レベルの構成的発現が、所望されるであろう。有用な構成的プロモーターの例としては、限定することなく、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(必要に応じて、RSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(必要に応じて、CMVエンハンサーを有する)(たとえば、Boshartら、Cell、41巻:521~530頁(1985年)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーター(Invitrogen)が挙げられる。外来で供給される化合物によって調節される誘導性プロモーターもまた、有用であり、これには、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(metallothionine)(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO 98/10088)、エクジソン昆虫プロモーター(Noら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻:3346~3351頁(1996年))、テトラサイクリン抑制系(Gossenら、Proc. Natl. Acad Sci. USA、89巻:5547~5551頁(1992年))、テトラサイクリン誘導系(Gossenら、Science.、268巻:1766~1769頁(1995年)、Harveyら、Curr. Opin. Chem. Biol.、2巻:512~518頁(1998年)もまた参照されたい)、RU486誘導系(Wangら、Nat. Biotech.、15巻:239~243頁(1997年)およびWangら、Gene Ther.、4巻:432~441頁(1997年))、ならびにラパマイシン誘導系(Magariら、J. Clin. Invest.、100巻:2865~2872頁(1997年))が含まれる。この状況において有用であり得る他の種類の誘導性プロモーターには、特定の生理学的状態、たとえば、温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって、または複製細胞のみにおいて、調節されるものがある。
【0098】
別の実施形態では、導入遺伝子の天然のプロモーターが使用されるであろう。天然のプロモーターは、導入遺伝子の発現が、天然の発現を模倣すべきことが所望される場合に、好まれる場合がある。天然のプロモーターは、導入遺伝子の発現を、時間的もしくは発達的に、または組織特異的様式で、または特定の転写刺激に応答して、調節しなければならない場合に、使用され得る。さらなる実施形態では、他の天然の発現制御エレメント、たとえば、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位、またはコザックコンセンサス配列もまた、天然の発現を模倣するために使用され得る。
【0099】
導入遺伝子の別の実施形態には、組織特異的プロモーター、たとえば、B29プロモーター(B細胞)、CD14プロモーター(単核球細胞)、CD43プロモーター(白血球および血小板)、CD45プロモーター(造血細胞)、CD68プロモーター(マクロファージ)、デスミンプロモーター(筋肉)、エラスターゼ-1プロモーター(膵腺傍細胞)、エンドグリンプロモーター(内皮細胞)、エンドグリンプロモーター(内皮細胞)、Flt-1プロモーター(内皮細胞)、GFAPプロモーター(星状細胞)、GPIIbプロモーター(巨核球)、ICAM-2プロモーター(内皮細胞)、マウスINF-βプロモーター(造血細胞)、Mbプロモーター(筋肉)、NphsIプロモーター(有足細胞)、OG-2プロモーター(骨芽細胞、象牙芽細胞(Odonblast))、SP-Bプロモーター(肺)、SYN1プロモーター(ニューロン)、WASPプロモーター(造血細胞)、SV40/bAlbプロモーター(肝臓)、またはSV40/hAlbプロモーター(肝臓)に作動可能に連結された導入遺伝子が含まれる。組織特異的プロモーターは、特定の種類の細胞または組織において活性である。たとえば、骨格筋における発現が所望される場合、筋肉において活性なプロモーターを、使用すべきである。これらには、骨格α-アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、ならびに天然に存在するプロモーターよりも高い活性を有する合成の筋プロモーターが含まれる(Liら、Nat. Biotech.、17巻:241~245頁(1999年)を参照されたい)。組織特異的なプロモーターの例は、とりわけ、肝臓(アルブミン、Miyatakeら、J. Virol.、71巻:5124~32頁(1997年);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandigら、Gene Ther.、3巻:1002~9頁(1996年);アルファ-フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnotら、Hum. Gene Ther.、7巻:1503~14頁(1996年))、骨オステオカルシン(Steinら、Mol. Biol. Rep.、24巻:185~96頁(1997年))、骨シアロタンパク質(Chenら、J. Bone Miner. Rep.、11巻:654~64頁(1996年))、リンパ球(CD2、Hansalら、J. Immumnol.、161巻:1063~8頁(1998年);免疫グロブリン重鎖;T細胞受容体a鎖)、神経細胞、たとえば、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersenら、Cell. Mol. Neurobiol.、13巻:503~15頁(1993年))、神経フィラメント軽鎖遺伝子(Piccioliら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:5611~5頁(1991年))、およびニューロン特異的vgf遺伝子(Piccioliら、Neuron.、15巻:373~84頁(1995年))が公知である。
【0100】
導入遺伝子の別の実施形態としては、腫瘍特異的プロモーター、たとえば、AFPプロモーター(肝細胞癌)、CCKARプロモーター(膵臓がん)、CEAプロモーター(上皮がん)、c-erbB2プロモーター(乳がんおよび膵臓がん)、COX-2プロモーター(腫瘍)、E2F-1プロモーター(腫瘍)、HE4プロモーター(腫瘍)、LPプロモーター(腫瘍)、MUC1プロモーター(癌細胞)、PSAプロモーター(前立腺および前立腺がん)、サバイビンプロモーター(腫瘍)、TRP1プロモーター(メラニン細胞および黒色腫)、Tyrプロモーター(メラニン細胞および黒色腫)、CXCR4プロモーター(腫瘍)、またはAFP/hAFPプロモーター(肝細胞癌)に作動可能に連結された導入遺伝子が挙げられる。腫瘍特異的プロモーターは、腫瘍細胞において特異的に活性である。
【0101】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、コンセンサスコザック配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、アデノウイルス死タンパク質(ADP)をコードするヌクレオチド配列の部分的または完全な欠失を含む。
【0102】
ある特定の実施形態では、本発明は、IX-E2挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列と、L5-E4挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列とを含む、組換えアデノウイルスを提供する。これらの実施形態は、アデノウイルスが、2つまたはそれを上回る別個の外来導入遺伝子を発現することを可能にする。このアプローチは、自己切断型リンカーにより結合された2つの導入遺伝子を含む融合タンパク質を発現するアデノウイルスでは切断されたリンカーが免疫原性となる可能性があるため、それよりも優れたある特定の利点を有する。
【0103】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)プロモーター、(iii)第1の導入遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列、(iv)リンカー、(v)第2の導入遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列、(vi)第2のポリアデニル化シグナル、および(vii)第3のポリアデニル化シグナルを含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)第2のポリアデニル化シグナル、(iii)プロモーター、(iv)第1の導入遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列、(v)リンカー、(vi)第2の導入遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列、(vii)第3のポリアデニル化シグナル、および(viii)第4のポリアデニル化シグナルを含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第1のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、第4のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。
【0104】
ある特定の実施形態では、IX-E2挿入部位は、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、または60個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、L5-E4挿入部位は、約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、105個、110個、115個、120個、125個、または130個のヌクレオチドの欠失を含む。
【0105】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入されたヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、Elb-19Kの開始部位と、Elb-55Kの開始部位との間に位置している。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、アデノウイルスpVIII遺伝子の終止コドンと、アデノウイルスファイバー遺伝子(L5)の開始部位との間に位置している。ある特定の実施形態では、E4挿入部位は、アデノウイルスE4遺伝子のORF1の開始コドンからORF6/7の終止コドンの間に位置している。
【0106】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、IX-E2挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列およびE1b-19K挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、IX-E2挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列およびE3挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、IX-E2挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列およびE4挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列をさらに含む。
【0107】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、L5-E4挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列およびE1b-19K挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、L5-E4挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列およびE3挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、L5-E4挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列およびE4挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列をさらに含む。
【0108】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、IX-E2挿入部位に挿入された第1のヌクレオチド配列およびL5-E4挿入部位に挿入された第2のヌクレオチド配列、ならびにE1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入された第3のヌクレオチド配列を、さらに含む。
【0109】
アデノウイルスElb-19k遺伝子は、主として、抗アポトーシス遺伝子として機能し、細胞内抗アポトーシス遺伝子BCL-2のホモログである。子孫ウイルス粒子の成熟前の宿主細胞の死により、ウイルス複製が制限されることになるため、Elb-19kは、成熟前の細胞死を防止し、それによって、感染が進行し成熟したビリオンを生成することを可能にするように、Elカセットの一部として発現される。したがって、ある特定の実施形態では、Elb-19K挿入部位を含む組換えウイルスが、提供され、たとえば、このアデノウイルスは、Elb-19K挿入部位に挿入された外来ヌクレオチド配列を有する。ある特定の実施形態では、挿入部位は、Elb-19Kの開始部位と、Elb-19Kの終止コドンとの間に位置している。
【0110】
ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約100~約305個、約100~約300個、約100~約250個、約100~約200個、約100~約150個、約150~約305個、約150~約300個、約150~約250個、または約150~約200個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約200個のヌクレオチド、たとえば、202個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号1)のヌクレオチド1714~1917に対応する欠失を含むか、または導入遺伝子をコードする外来ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号1)の1714に対応するヌクレオチドと1917に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、導入遺伝子をコードする外来ヌクレオチド配列は、CTGACCTC(配列番号3)とTCACCAGG(配列番号2)との間に挿入され、たとえば、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、CTGACCTC(配列番号3)、導入遺伝子をコードする外来ヌクレオチド配列、およびTCACCAGG(配列番号2)を含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、Ad35ゲノム(配列番号41)のヌクレオチド1611~2153または1611~1915に対応する欠失を含む。
【0111】
ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約100~約305個、約100~約300個、約100~約250個、約100~約200個、約100~約150個、約150~約305個、約150~約300個、約150~約250個、または約150~約200個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約200個のヌクレオチド、たとえば、202個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E1b-19K挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号1)のヌクレオチド1714~1917に対応する欠失を含むか、または第1の治療用導入遺伝子は、Ad5ゲノム(配列番号1)の1714に対応するヌクレオチドと1917に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第1の治療用導入遺伝子は、CTGACCTC(配列番号3)とTCACCAGG(配列番号2)との間に挿入され、たとえば、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、CTGACCTC(配列番号3)、第1の治療用導入遺伝子、およびTCACCAGG(配列番号2)を含む。
【0112】
ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、約500~約3185個、約500~約3000個、約500~約2500個、約500~約2000個、約500~約1500個、約500~約1000個、約1000~約3185個、約1000~約3000個、約1000~約2500個、約1000~約2000個、約1000~約1500個、約1500~約3185個、約1500~約3000個、約1500~約2000個、約2000~約3185個、約2000~約3000個、約2000~約2500個、約2500~約3185個、約2500~約3000個、約3000~約3185個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、E3-10.5Kの終止コドンとE3-14.7Kの終止コドンとの間に位置している。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、E3-10.5Kの終止コドンに隣接する約500~約1551個、約500~約1500個、約500~約1000個、約1000~約1551個、約1000~約1500個、約1500~約1551個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、E3-10.5Kの終止コドンに隣接する約1050個のヌクレオチドの欠失を含み、たとえば、E3挿入部位は、E3-10.5Kの終止コドンに隣接する1063個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、Ad5 dl309 E3欠失に対応する欠失を含む。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号1)のヌクレオチド29773~30836に対応する欠失を含むか、または第2の治療用導入遺伝子は、Ad5ゲノム(配列番号1)の29773に対応するヌクレオチドと30836に対応するヌクレオチドとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、E3挿入部位は、Ad35ゲノム(配列番号41)のヌクレオチド27199~30622に対応する欠失を含む。
【0113】
ある特定の実施形態では、E4挿入部位は、E4遺伝子のORF、すなわち、ORF1の開始コドンからORF6/7の終止コドンの間のうちのいずれか1つを含む。たとえば、ヌクレオチド配列は、E4 ORF1および/またはE4 ORF2に挿入され得る。ある特定の実施形態では、E4領域の一部分または全体が、欠失していてもよい。ある特定の実施形態では、前述のウイルスのいずれにおいても、組換えアデノウイルスは、E4欠失をさらに含む。ある特定の実施形態では、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位(すなわち、E4-ORF6/7の開始コドン、たとえば、配列番号1のヌクレオチド34075~34077に対応するものをコードするヌクレオチド配列)と、右側の末端逆位反復(ITR、たとえば、配列番号1のヌクレオチド35836~35938に対応する)との間に位置している。ある特定の実施形態では、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位と、E4-ORF1の開始部位との間(すなわち、E4-ORF1の開始コドン、たとえば、配列番号1のヌクレオチド35524~35526に対応するものをコードするヌクレオチド配列)に位置している。ある特定の実施形態では、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位とE4-ORF1の開始部位との間のヌクレオチド配列の欠失を含む。ある特定の実施形態では、E4欠失は、約500~約2500個、約500~約2000個、約500~約1500個、約500~約1000個、約1000~約2500個、約1000~約2000個、約1000~約1500個、約1500~約2500個、約1500~約2000個、または約2000~約2500個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位に隣接する約250~約1500個、約250~約1250個、約250~約1000個、約250~約750個、約250~約500個、500~約1500個、約500~約1250個、約500~約1000個、約500~約750個、750~約1500個、約750~約1250個、約750~約1000個、約1000~約1500個、または約1000~約1250個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位に隣接する約1450個のヌクレオチドの欠失を含み、たとえば、E4欠失は、E4-ORF6/7の開始部位に隣接する約1449個のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E4欠失は、Ad5ゲノム(配列番号1)のヌクレオチド34078~35526または34083~35541に対応する欠失を含む。ある特定の実施形態では、E4欠失は、Ad35ゲノム(配列番号41)のヌクレオチド33004~34422または31827~34415に対応する欠失を含む。
【0114】
B.改変された転写制御領域
これまでに開発された腫瘍溶解性ウイルスとしては、PCT公開第WO2010/101921号においてTAV-255と称される腫瘍溶解性5型血清型アデノウイルス(Ad5)が挙げられ、これは、正常細胞においては転写が減弱されるが、がん細胞においては転写が活性である。TAV-255ベクターがこの腫瘍選択性を達成する機構は、特定のDNA配列への結合を通じて、ウイルスが宿主細胞に進入した後に転写される最初の遺伝子であるE1aのアデノウイルス発現を調節するタンパク質である、転写因子Pea3およびE2Fに対する3つの転写因子(TF)結合部位の標的化された欠失によるものであると考えられる。これら3つのPea3およびE2F欠失により、成長が停止された正常な細胞における複製は減弱されるが、悪性のものにおいては減弱されず、これらのDNA配列が、がん細胞における転写調節および成長についてのみ必要とされないことが示される。
【0115】
ある特定の実施形態では、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかは、改変されたE1a調節配列を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、機能性Pea3結合部位の欠失を有するE1aプロモーターを含む。たとえば、ウイルスは、Elaの開始部位の上流約-300から約-250に対応するヌクレオチドの欠失、またはElaの開始部位の上流-305から-255に対応するヌクレオチドの欠失を含み得る。ある特定の実施形態では、欠失は、Ad5ゲノム(配列番号1)の195~244に対応するヌクレオチドの欠失を含み、かつ/またはE1aプロモーターは、配列GGTGTTTTGG(配列番号4)を含む。
【0116】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、機能性TATAボックスが欠如しており、過剰増殖性細胞における遺伝子の選択的な発現を可能にする、この遺伝子に作動可能に連結された改変されたTATAボックスに基づくプロモーター、および/または機能性CAATボックスが欠如しており、過剰増殖性細胞における遺伝子の選択的な発現を可能にする、この遺伝子に作動可能に連結された改変されたCAATボックスに基づくプロモーターを含む。
【0117】
ある特定の実施形態では、改変されたTATAボックスに基づくプロモーターは、初期遺伝子プロモーターである。ある特定の実施形態では、改変されたTATAボックスに基づくプロモーターは、E1aプロモーター、E1bプロモーター、またはE4プロモーターである。ある特定の実施形態では、改変されたTATAボックスに基づくプロモーターは、E1aプロモーターである。
【0118】
ある特定の実施形態では、改変されたTATAボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、TATAボックス全体の欠失を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1aプロモーターの-27から-24、-31から-24、-44から+54、または-146から+54に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、欠失は、Ad5ゲノム(配列番号1)の472から475、468から475、455から552、または353から552に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、欠失は、Ad35ゲノム(配列番号41)の477~484に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0119】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、配列CTAGGACTG(配列番号5)、AGTGCCCG(配列番号44)、および/またはTATTCCCG(配列番号45)を含むウイルスをもたらす、ポリヌクレオチド欠失を含む。
【0120】
ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターは、初期遺伝子プロモーターである。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターは、E1aプロモーター、E1bプロモーター、またはE4プロモーターである。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターは、E1aプロモーターである。
【0121】
ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、CAATボックス全体の欠失を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1aプロモーターの-76から-68に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0122】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、Ad5ゲノム(配列番号1)の423から431に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、配列TTCCGTGGCG(配列番号46)を含むウイルスをもたらす、ポリヌクレオチド欠失を含む。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、Ad35ゲノム(配列番号41)の477から484に対応するヌクレオチドの欠失を含む。
【0123】
ある特定の実施形態では、本発明は、2つの治療用導入遺伝子であって、発現されると、単一のポリペプチド鎖を産生し、これが、翻訳後に切断されて2つのポリペプチド鎖となり得る、2つの治療用導入遺伝子を発現させる方法を提供する。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、第1の導入遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列および第2の導入遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド配列をさらに含み、ここで、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は、リンカーによって分離されている。ある特定の実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のプロテアーゼによって切断可能なペプチドをコードする。ある特定の実施形態では、リンカーは、内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする。IRESは、たとえば、脳心筋炎ウイルスIRES、口蹄疫ウイルスIRES、およびポリオウイルスIRESからなる群から選択され得る。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入またはL5-E4挿入部位に挿入され、ここで、組換えアデノウイルスは、E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入された第3のヌクレオチド配列をさらに含む。
【0124】
ある特定の実施形態では、ウイルスは、調節配列またはプロモーターに対する1つまたは複数の改変を有する。調節配列またはプロモーターに対する改変は、調節配列またはプロモーターの野生型配列と比較して、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、置換、または付加を含む。
【0125】
一実施形態では、調節配列またはプロモーターの改変は、転写因子に対する親和性を低減させるような、転写因子結合部位の配列の、たとえば、その一部分を欠失させることによるか、または結合部位に単一点突然変異を挿入することによる、改変を含む。ある特定の実施形態では、追加の改変された調節配列は、新生物細胞における発現を強化するが、正常細胞における発現は減弱させる。
【0126】
Ela調節配列は、Pea3 I、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IV、およびPea3 Vと表記される、転写因子Pea3に対する5つの結合部位を含み、ここで、Pea3 Iが、Ela開始部位に最も近接するPea3結合部位であり、Pea3 Vが、最も遠位である。Ela調節配列はまた、本明細書にE2F IおよびE2F IIと表記される、転写因子E2Fに対する結合部位も含み、ここで、E2F Iが、Ela開始部位に最も近接するE2F結合部位であり、E2F IIは、より遠位にある。Ela開始部位から、結合部位は、以下のように並んでいる:Pea3 I、E2F I、Pea3 II、E2F II、Pea3 III、Pea3 IV、およびPea3 V。
【0127】
一実施形態では、これらの7つの結合部位のうちの少なくとも1つ、または機能性結合部位が、欠失される。本明細書において使用されるとき、「機能性結合部位」とは、それぞれの結合パートナー、たとえば、転写因子に結合することができる結合部位、たとえば、対応する野生型結合部位配列の結合活性のうち少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、または少なくとも40%を有する結合部位を指す。本明細書において使用されるとき、「非機能性結合部位」は、たとえば、対応する野生型結合部位配列の30%未満、20%未満、10%未満、または0%の結合活性を有する、結合部位を指す。
【0128】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、機能性Pea3結合部位の欠失、たとえば、Pea3結合部位全体の欠失を有するE1aプロモーターを含む。本明細書において使用されるとき、「機能性Pea3結合部位」とは、それぞれの転写因子(たとえば、Pea3)に結合することができるPea3結合部位、たとえば、対応する野生型Pea3結合部位配列の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、または少なくとも40%のPea3結合活性を有するPea3結合部位を指す。本明細書において使用されるとき、「非機能性Pea3結合部位」は、対応する野生型Pea3結合部位配列の30%未満、20%未満、10%未満、または0%のPea3結合活性を有する、Pea3結合部位を指す。Pea3結合部位が、Pea3に結合するかどうかを判定するためのアッセイは、当該技術分野において公知である。例示的な結合アッセイとしては、電気泳動移動度シフトアッセイ、クロマチン免疫沈降アッセイ、およびDNAseフットプリントアッセイが挙げられる。
【0129】
一実施形態では、少なくとも1つのPea3結合部位または機能性Pea3結合部位が、欠失される。欠失されるPea3結合部位は、Pea3 I、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IV、および/またはPea3 Vであり得る。一実施形態では、欠失されるPea3結合部位は、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IV、および/またはPea3 Vである。別の実施形態では、欠失されるPea3結合部位は、Pea3 IVおよび/またはPea3 Vである。別の実施形態では、欠失されるPea3結合部位は、Pea3 IIおよび/またはPea3 IIIである。別の実施形態では、欠失されるPea3結合部位は、Pea3 IIおよびPea3 IIIの両方である。別の実施形態では、Pea3 I結合部位または機能性Pea3 I結合部位は、保持される。
【0130】
一実施形態では、少なくとも1つのE2F結合部位または機能性E2F結合部位が、欠失される。別の実施形態では、少なくとも1つのE2F結合部位または機能性E2F結合部位は、保持される。一実施形態では、保持されるE2F結合部位は、E2F Iおよび/またはE2F IIである。別の実施形態では、保持されるE2F結合部位は、E2F IIである。別の実施形態では、全欠失は、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IV、および/またはPea3 Vのうちの1つまたは複数から本質的になる。一実施形態では、ウイルスは、たとえば、Ad5ゲノム(配列番号1)の195~244に対応し、本明細書において以降TAV-255欠失と称される、Ela開始部位の上流-305から-255に位置する50塩基対の領域の欠失を有する。ある特定の実施形態では、TAV-255欠失は、配列GGTGTTTTGG(配列番号4)を含むE1aプロモーターをもたらす。
【0131】
一実施形態では、組換えアデノウイルスは、PCT公開第WO2010101921号および米国公開第20160017294号A1において記載されるTAV-255と称される腫瘍溶解性血清型5型アデノウイルス(Ad5)におけるものと同じかまたは類似するE1a改変を有し、これらの文献のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。TAV-255ベクターがこの腫瘍選択性を達成する機構は、特定のDNA配列への結合を通じて、ウイルスが宿主細胞に進入した後に転写される最初の遺伝子であるE1aのアデノウイルス発現を調節するタンパク質である、転写因子Pea3およびE2Fに対する3つの転写因子(TF)結合部位の標的化された欠失によるものであると考えられる。これら3つのPea3およびE2F欠失により、成長が停止された正常な細胞における複製は減弱されるが、悪性のものにおいては減弱されず、これらのDNA配列が、がん細胞における転写調節および成長についてのみ必要とされないことが示される。
【0132】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、機能性Pea3結合部位の1つまたは複数の欠失を有するE1aプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、欠失は、Elaの開始部位の上流約-300から約-250に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、欠失は、Elaの開始部位の上流-305から-255に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、欠失は、Ad5ゲノム(配列番号1)の195~244に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、E1aプロモーターは、配列GGTGTTTTGG(配列番号4)を含む。
【0133】
一実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1A領域における1つまたは複数のE2F転写結合部位の欠失を有さない1つまたは複数のPea3転写結合部位の欠失を含む。他の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1A領域における1つまたは複数のPea3転写結合部位の欠失を有さない1つまたは複数のE2F転写結合部位の欠失を含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、機能性TATAボックスが欠如しており、過剰増殖性細胞および/または非成長停止細胞における遺伝子の選択的な発現を可能にする、その遺伝子に作動可能に連結された改変されたTATAボックスに基づくプロモーターを含む。本明細書において使用されるとき、「機能性TATAボックス」とは、TATAボックス結合タンパク質(TBP)に結合することができるTATAボックス、たとえば、対応する野生型TATAボックス配列の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、または少なくとも40%のTBP結合活性を有するTATAボックスを指す。本明細書において使用されるとき、「非機能性TATAボックス」とは、たとえば、対応する野生型TATAボックス配列の30%未満、20%未満、10%未満、または0%のTBP結合活性を有する、TATAボックスを指す。TBPがTATAボックスに結合するかどうかを判定するためのアッセイは、当該技術分野において公知である。例示的な結合アッセイとしては、電気泳動移動度シフトアッセイ、クロマチン免疫沈降アッセイ、およびDNAseフットプリントアッセイが挙げられる。
【0135】
本明細書において使用されるとき、「改変されたTATAボックス」とは、野生型TATAボックス配列と比べて、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、置換、または付加を有するTATAボックスを指す。
【0136】
たとえば、ウイルスは、E1aの開始部位の上流-29から-26、-33から-26、-44から+52、または-148から+52に対応するヌクレオチドの欠失を含み得る。ある特定の実施形態では、欠失は、Ad5ゲノム(配列番号1)の353~552に対応するヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、TATAボックスの欠失は、配列CTAGGACTG(配列番号5)、AGTGCCCG(配列番号44)、および/またはTATTCCCG(配列番号45)を含むE1aプロモーターをもたらす。
【0137】
ある特定の実施形態では、組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、機能性CAATボックスが欠如しており、過剰増殖性細胞および/または非成長停止における遺伝子の選択的な発現を可能にする、その遺伝子に作動可能に連結された改変されたCAATボックスに基づくプロモーターを含む。TATAボックスに基づくプロモーターおよびCAATボックスに基づくプロモーターは、同じプロモーター(たとえば、Ad5 E1aプロモーター)であってもよく、または異なるプロモーターであってもよい。
【0138】
本明細書において使用されるとき、「CAATボックス」とは、C/EBPまたはNF-Yタンパク質に結合することができる、ヌクレオチド配列を指す。CAATボックスは、典型的に、GG(T/C)CAATCTのコンセンサス配列を含む。
【0139】
本明細書において使用されるとき、「改変されたCAATボックス」とは、野生型CAATボックス配列と比べて、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、置換、または付加を有するCAATボックスを指す。
【0140】
本明細書において使用されるとき、「機能性CAATボックス」とは、C/EBPまたはNF-Yタンパク質に結合することができるCAATボックス、たとえば、対応する野生型CAATボックス配列の少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、または少なくとも40%のC/EBPまたはNF-Y結合活性を有するCAATボックスを指す。本明細書において使用されるとき、「非機能性CAATボックス」とは、たとえば、対応する野生型CAATボックス配列の30%未満、20%未満、10%未満、または0%のC/EBPまたはNF-Y結合活性を有する、CAATボックスを指す。C/EBPまたはNF-Yタンパク質がCAATボックスに結合するかどうかを判定するためのアッセイは、当該技術分野において公知である。例示的な結合アッセイとしては、電気泳動移動度シフトアッセイ、クロマチン免疫沈降アッセイ、およびDNAseフットプリントアッセイが挙げられる。
【0141】
本明細書において使用されるとき、「CAATボックスに基づくプロモーター」とは、CAATボックスを含む任意の遺伝子プロモーターを指す。
【0142】
本明細書において使用されるとき、「改変されたCAATボックスに基づくプロモーター」とは、野生型CAATボックスに基づくプロモーターと比べて、1つまたは複数のヌクレオチドの欠失、置換、または付加によって改変されている、CAATボックスに基づくプロモーターを指す。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックスに基づくプロモーター配列の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失を含む。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックスに基づくプロモーター配列の1つまたは複数のヌクレオチドの欠失からなる。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックスに基づくプロモーター配列のCAATボックス全体の欠失を含む。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、野生型CAATボックスに基づくプロモーター配列のCAATボックス全体の欠失からなる。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、CAATボックスに基づくプロモーター全体の欠失を含む。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、CAATボックスに基づくプロモーター全体の欠失からなる。ある特定の実施形態では、改変されたCAATボックスに基づくプロモーターに含まれる改変は、別個の機能性プロモーター配列の付加もそれとの置換も含まない。
【0143】
ウイルス遺伝子をコードする核酸は、従来的なトランスフェクションまたは形質転換の技法を通じて、プラスミドに組み込むことができ、宿主細胞に導入することができる。具体的な産生および精製の条件は、ウイルスおよび利用される産生系に応じて変動するであろう。アデノウイルスについては、ウイルス粒子の生成のための従来的な方法は、コトランスフェクション、ならびにそれに続くシャトルプラスミド(通常、アデノウイルスゲノムの小さなサブセットを含み、必要に応じて可能性のある導入遺伝子および発現カセットを含む)およびアデノウイルスヘルパープラスミド(アデノウイルスゲノム全体のほとんどを含む)のin vivoでの組換えである。アデノウイルスの生成のための代替的な技術は、細菌人工染色体(BAC)系、相補的なアデノウイルス配列を含む2つのプラスミドを利用したrecA+細菌株におけるin vivo細菌組換え、ならびに酵母人工染色体(YAC)系が挙げられる。
【0144】
ある特定の実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスは、腫瘍溶解性ウイルス、たとえば、腫瘍選択的複製および/またはウイルスに媒介される溶解を呈するウイルスである。ある特定の実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスは、非過剰増殖性細胞と比べて、過剰増殖性細胞、たとえば、がん細胞、腫瘍細胞における治療用導入遺伝子の選択的な発現を呈する。ある特定の実施形態では、非過剰増殖性細胞における治療用導入遺伝子の発現は、過剰増殖性細胞における遺伝子の発現の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約5%である。ある特定の実施形態では、ウイルスは、非過剰増殖性細胞において治療用導入遺伝子の検出可能な発現を呈さない。治療用導入遺伝子の発現は、当該技術分野において公知の任意の適切な方法、たとえば、ウエスタンブロットまたはELISAによって、判定することができる。過剰増殖性細胞は、がん細胞、たとえば、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、前立腺がん、肺がん、消化管がん、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃がん、甲状腺がん、中皮腫、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、または脳がんの細胞であり得る。
【0145】
C.導入遺伝子
本明細書に開示される組換えアデノウイルスは、前述の挿入部位、たとえば、IX-E2挿入部位、L5-E4挿入部位、E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位のうちのいずれかに挿入された、1つまたは複数の外来ヌクレオチド配列を含む。
【0146】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの導入遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、プロモーターをさらに含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0147】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)プロモーター、(iii)導入遺伝子、(iv)第2のポリアデニル化シグナル、および(v)第3のポリアデニル化シグナルを含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、および/または第2のヌクレオチド配列は、第1のポリアデニル化シグナルと第3のポリアデニル化シグナルとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、L5転写ユニットのポリアデニル化シグナルであり、第2のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、E4転写ユニットのポリアデニル化シグナルである。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、IX転写ユニットのポリアデニル化シグナルであり、第2のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルである。
【0148】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)第2のポリアデニル化シグナル、(iii)プロモーター、(iv)導入遺伝子、(v)第3のポリアデニル化シグナル、および(vi)第4のポリアデニル化シグナルを含み、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、および/または第2のヌクレオチド配列は、第1のポリアデニル化シグナルと第4のポリアデニル化シグナルとの間に挿入される。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第1のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、第4のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、L5転写ユニットのポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第4のポリアデニル化シグナルは、E4転写ユニットのポリアデニル化シグナルである。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入され、第1のポリアデニル化シグナルは、IX転写ユニットのポリアデニル化シグナルであり、第3のポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子のポリアデニル化シグナルであり、第4のポリアデニル化シグナルは、アデノウイルスIVa2遺伝子のポリアデニル化シグナルである。
【0149】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、第1の導入遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列および第2の導入遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド配列をさらに含み、ここで、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は、リンカーによって分離されている。
【0150】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)プロモーター、(iii)第1の導入遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列、(iv)リンカー、(v)第2の導入遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列、(vi)第2のポリアデニル化シグナル、および(vii)第3のポリアデニル化シグナルを含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、5’から3’の方向に、(i)第1のポリアデニル化シグナル、(ii)第2のポリアデニル化シグナル、(iii)プロモーター、(iv)第1の導入遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列、(v)リンカー、(vi)第2の導入遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列、(vii)第3のポリアデニル化シグナル、および(viii)第4のポリアデニル化シグナルを含み、ここで、導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、第2のポリアデニル化シグナルは、第1のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。ある特定の実施形態では、第4のポリアデニル化シグナルは、第3のポリアデニル化シグナルとは逆の転写方向にある。
【0151】
ある特定の実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のプロテアーゼによって切断可能なペプチドをコードする。ある特定の実施形態では、リンカーは、内部リボソーム進入部位(IRES)または自己切断型2Aペプチドをコードする。IRESは、たとえば、脳心筋炎ウイルスIRES、口蹄疫ウイルスIRES、およびポリオウイルスIRESからなる群から選択され得る。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、IX-E2挿入またはL5-E4挿入部位に挿入され、ここで、組換えアデノウイルスは、E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、またはE4挿入部位に挿入された第3のヌクレオチド配列をさらに含む。
【0152】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、第2のヌクレオチド配列、および第3のヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の導入遺伝子を含む。
【0153】
ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列、第1のヌクレオチド配列、第2のヌクレオチド配列、および第3のヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数は、
a)転写開始領域、
b)導入遺伝子を含むヌクレオチド配列であって、導入遺伝子が、転写開始領域の転写制御下にある、ヌクレオチド配列、および
c)転写終止領域を含む。
【0154】
一部の実施形態では、転写開始領域は、プロモーターを含む。
【0155】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数が、単量体、二量体、三量体、四量体、または多量体のタンパク質、またはその一部をコードする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、治療活性を有するRNAをコードする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、少なくとも1つの結合ドメインを含む融合タンパク質をコードする。
【0156】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、免疫調節性分子をコードする。ある特定の実施形態では、免疫調節性分子は、共刺激リガンド、サイトカイン、またはサイトカイン受容体である。ある特定の実施形態では、免疫調節性分子は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-7、IL-10、IL-10トラップ、IL-10R、IL-12A/p35、IL-12B/p40、IL-15、IL-23A/p19、IL-24、IL-27、IL-33、IL-35、IL-15、IL-15受容体融合タンパク質、TGF-β、TGF-βトラップ、IL-10トラップ、VEGF、VEGFトラップ、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、誘導性T細胞共刺激リガンド(ICOS-L)、CD80、CD137L、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、GM-CSF、GITRリガンド(GITRL)、OX40リガンド(OX40L)、CD40リガンド(CD40L)/CD154、CD70、CD86、CD137、CD137L、BORIS/CTCFL、骨形成タンパク質(BMP)、TNFSF9、FGF、ICAM、ポドカリキシン、これらの機能性断片、ならびにこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0157】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子は、N末端からC末端の方向に、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分、アミノ酸リンカー、免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域、および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含む、融合タンパク質をコードする。一部の実施形態では、サイトカイン受容体は、TGFβ II型(TβRII)受容体である。
【0158】
ある特定の実施形態では、CD80またはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入され、CD137Lまたはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入される。ある特定の実施形態では、CD137Lまたはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位に挿入され、CD80またはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列は、L5-E4挿入部位に挿入される。
【0159】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、IL-12A/p35もしくはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列、IL-12B/p40もしくはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列、およびIFN-αもしくはその機能性断片をコードするヌクレオチド配列を含む。これらのヌクレオチド配列は、IX-E2挿入部位、L5-E4挿入部位、E1b-19K挿入部位、E3挿入部位、および/またはE4挿入部位に挿入され得る。
【0160】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および/または第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、抗原結合性分子をコードする。ある特定の実施形態では、抗原結合性分子は、抗PD-1抗体、抗TGF-β抗体、抗PD-L1抗体、および抗CTLA-4抗体、またはこれらの機能性断片である。例示的な抗PD-1抗体としては、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、Merck & Co.)、ならびにアテゾリズマブ(以前のMPDL3280A)、MEDI4736、アベルマブ、およびPDR001が挙げられる。
【0161】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、抗原または抗原に対するリガンドをコードする。ある特定の実施形態では、抗原は、CAIX、CEA、CD5、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD80、CD133、CD135(Flt3)、Flt3I、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、4-1BB、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erbB2、erbB3、erbB4、FBP、胎児性アセチルコリン受容体、KRAS、HPV E6、E7、BING-4、EphA3、カルシウム活性化クロライドチャネル-2、サイクリンB1、9D7、SAP-1、PRAME、SSX-2、未成熟ラミニン受容体、葉酸受容体-a、テロメラーゼ、チロシナーゼ、メラン-A、NY-ESO-1、GD2、GD3、hTERT、IL13R-a2、x-軽鎖、KDR、LeY、LI細胞接着分子、MAGE-A1、MAGE-A3、MART1、MART2、MUC1、メソテリン、HER-2/neu、EGFRvIII、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、gp100、TRP-1/-2、TRP-1/-2、Pポリペプチド、MC1R、前立腺特異的抗原、BRAF、アンドロゲン受容体、β-カテニン、BRCA1/2、CDK4、CML66、フィブロネクチン、p53、TGF-βRII、T細胞受容体、腫瘍胎児性抗原、5T4、PSCA、PSMA、ROR1、TAG-72、VEGF-R2、WT-1、これらの機能性断片、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0162】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、毒素をコードする。ある特定の実施形態では、毒素は、シュードモナス外毒素、リシン毒素、またはジフテリア毒素である。
【0163】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、酵素をコードする。ある特定の実施形態では、酵素は、ベータ-グルクロニダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、エステラーゼ、メタロプロテイナーゼ、リラキシン、コラゲナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルギナーゼ、NOS-2、これらの断片、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0164】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、細胞周期制御因子、増殖因子、抗凝血剤、プロドラッグ活性化遺伝子、腫瘍サプレッサー遺伝子、アポトーシス遺伝子、抗血小板剤、凝固因子、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)タンパク質、これらの断片、またはこれらの誘導体をコードする。
【0165】
ある特定の実施形態では、導入遺伝子、第1の導入遺伝子、および第2の導入遺伝子のうちの1つまたは複数は、アンジオスタチン、エンドスタチン、アセチルコリン、DKK1/Wnt、Ox40L、GITRL、分泌フラジェリン、チミジンキナーゼ、これらの機能性断片、またはこれらの誘導体をコードする。
【0166】
II.処置の方法
別の態様では、本発明は、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞を、有効量の、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかに曝露して、腫瘍細胞の増殖を阻害することを含む、方法を提供する。
【0167】
別の態様では、本発明は、腫瘍成長の阻害を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、有効量の、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかを投与して、腫瘍成長を阻害することを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、腫瘍は、HER2/neu陽性腫瘍であり、組換えアデノウイルスは、機能性Pea3結合部位の1つ以下の欠失を有するE1aプロモーターを含む。一部の実施形態では、HER2/neu陽性腫瘍は、乳がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、唾液腺がん、子宮内膜がん、膵臓がん、または非小細胞肺がん(NSCLC)からのものである。
【0168】
ある特定の実施形態では、腫瘍は、黒色腫、皮膚の扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肛門がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん、中皮腫、小細胞肺腫瘍、腎細胞癌、前立腺腫瘍、胃食道腫瘍、結腸直腸腫瘍、精巣腫瘍、膀胱腫瘍、卵巣腫瘍、肝細胞癌、胆管癌、脳腫瘍、子宮内膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、肉腫、および膵臓腫瘍からなる群から選択される。
【0169】
本明細書に開示される組換えアデノウイルスは、様々な医療適応症、たとえば、がんを処置するために使用することができる。本明細書において使用されるとき、「処置する」、「処置すること」、および「処置」とは、対象、たとえば、ヒトにおける疾患の処置を意味する。これには、(a)疾患を阻害すること、すなわち、その発達を停止させること、および(b)疾患を軽減すること、すなわち、疾患状態の退縮を引き起こすことが含まれる。本明細書において使用されるとき、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載される方法および組成物によって処置される生物を指す。そのような生物には、好ましくは、哺乳動物(たとえば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が含まれるがこれらに限定されず、より好ましくは、ヒトが含まれる。
【0170】
一態様では、本発明は、対象における過剰増殖性疾患を処置する方法を提供する。本方法は、対象に、有効量の、本明細書に記載される組換えウイルスを投与することであって、対象における過剰増殖性疾患を処置することを含む。ある特定の実施形態では、過剰増殖性疾患は、がん、アテローム性動脈硬化症、リウマチ性関節炎、乾癬、ループス、特発性肺線維症、強皮症、および肝硬変からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、過剰増殖性疾患は、がんである。
【0171】
一部の実施形態では、本発明は、対象におけるがんを処置する方法を提供する。本方法は、対象に、有効量の、本明細書に記載される組換えアデノウイルスを投与することであって、対象におけるがん疾患を処置することを含む。
【0172】
がんの例としては、固形腫瘍、軟組織腫瘍、造血腫瘍、および転移病変が挙げられる。造血腫瘍の例としては、白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞、もしくはFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄球性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、たとえば、変質(transformed)CLL、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、有毛細胞性白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、またはリヒター症候群(リヒター変質(Richter's Transformation))が挙げられる。固形腫瘍の例としては、様々な器官系の悪性腫瘍、たとえば、肉腫、腺癌、および癌腫、たとえば、頭頸部(咽頭を含む)、甲状腺、肺(小細胞もしくは非小細胞肺癌(NSCLC))、乳房、リンパ系、消化管(たとえば、口腔、食道、胃、肝臓、膵臓、小腸、結腸および直腸、肛門管)、生殖器および泌尿生殖管(たとえば、腎臓、尿路上皮、膀胱、卵巣、子宮、子宮頸、子宮内膜、前立腺、精巣)、CNS(たとえば、神経細胞もしくはグリア細胞、たとえば、神経芽細胞腫もしくは神経膠腫)、または皮膚(たとえば、黒色腫)に罹患するものが挙げられる。
【0173】
ある特定の実施形態では、がんは、黒色腫、皮膚の扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、頭頸部がん、乳がん、肛門がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん、中皮腫、小細胞肺がん、腎細胞癌、前立腺がん、胃食道がん、結腸直腸がん、精巣がん、膀胱がん、卵巣がん、肝細胞癌、胆管癌、脳がん、子宮内膜がん、神経内分泌がん、および膵臓がんから選択される。
【0174】
ある特定の実施形態では、がんは、鼻咽頭がん、基底細胞癌、滑膜がん、肝細胞がん、腎臓がん、結合組織のがん、黒色腫、肺がん、腸がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、脳がん、咽喉がん、口腔がん、肝臓がん、骨がん、膵臓がん、絨毛腫、ガストリノーマ、神経内分泌、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞性白血病/リンパ腫、神経腫、フォンヒッペル・リンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎がん、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、尿管がん、脳がん、乏突起神経膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨がん、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明のがん、カルチノイド、消化管のカルチノイド、線維肉腫、乳がん、ページェット病、子宮頸がん、結腸直腸がん、直腸がん、食道がん、胆嚢がん、頭部がん、眼がん、頸部がん、腎臓がん、ウィルムス腫瘍、肝臓がん、カポジ肉腫、前立腺がん、肺がん、精巣がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔がん、皮膚がん、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、膵臓内分泌がん、グルカゴノーマ、膵臓がん、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、軟部組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸がん、胃がん、胸腺がん、甲状腺がん、絨毛がん、胞状奇胎、子宮がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、聴神経腫、菌状息肉腫、膵島細胞腺腫、カルチノイド症候群、ソマトスタチン産生腫瘍、歯肉がん、心臓がん、口唇がん、髄膜がん、口腔がん(mouth cancer)、神経がん、口蓋がん、耳下腺がん、腹膜がん、咽頭がん、胸膜がん、唾液腺がん、舌がん、および、扁桃がんから選択される。
【0175】
一部の態様では、本発明は、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、腫瘍細胞を、有効量の、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかに曝露することを含む、方法を提供する。
【0176】
別の態様では、本発明は、腫瘍成長の阻害を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、有効量の、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかを投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、腫瘍は、黒色腫、皮膚の扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、頭頸部腫瘍、乳房腫瘍、肛門がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん、中皮腫、小細胞肺腫瘍、腎細胞癌、前立腺腫瘍、胃食道腫瘍、結腸直腸腫瘍、精巣腫瘍、膀胱腫瘍、卵巣腫瘍、肝細胞癌、胆管癌、脳腫瘍、子宮内膜腫瘍、神経内分泌腫瘍、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、肉腫、および膵臓腫瘍からなる群から選択される。
【0177】
別の態様では、本発明は、疾患または状態の処置を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、有効量の、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかを投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、疾患または状態は、感染、糖尿病性網膜症、乾癬、リウマチ性関節炎、子宮内膜症、黄斑変性障害および良性成長障害、たとえば、前立腺肥大および脂肪腫、血管障害、心臓血管疾患、感染、肝臓の硬変症、結合組織障害、腫瘍、血管病変、潰瘍性病変、炎症、血栓症、および新内膜形成からなる群から選択される。
【0178】
ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物である。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、小児のヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、成人のヒトである。
【0179】
ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、筋肉内、静脈内、動脈内、または腫瘍内注射によって投与される。ある特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、皮内、吸入、経皮、局所、点眼、鼻内、経粘膜、および直腸投与によって投与される。
【0180】
ある特定の実施形態では、前述の組換えアデノウイルスは、外科手術、放射線、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、およびウイルス療法からなる群から選択される1つまたは複数の治療法と組み合わせて、対象に投与される。
【0181】
ある特定の実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスは、チロシンキナーゼ阻害剤、たとえば、エルロチニブと組み合わせて投与される。
【0182】
ある特定の実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスは、1つまたは複数の免疫チェックポイント調節剤と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント調節剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、2B4、TIGIT、LAG3、Tim3、BTLA、CD160、GITR、KIR、4-1BB、およびCTLA4からなる群から選択される1つまたは複数の分子の阻害剤、アンタゴニスト、またはアゴニストである。一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、2B4、TIGIT、LAG3、Tim3、BTLA、CD160、GITR、KIR、4-1BB、および/またはCTLA4に対する抗体である。例示的な抗PD-1抗体としては、ニボルマブ(Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、Merck & Co.)、ならびにアテゾリズマブ(以前のMPDL3280A)、MEDI4736、アベルマブ、およびPDR001が挙げられる。
【0183】
医薬製剤は、好ましくは、滅菌される。滅菌は、任意の好適な方法、たとえば、滅菌濾過膜を通じた濾過によって、達成することができる。組成物が凍結乾燥される場合、濾過滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後に行われ得る。
【0184】
「有効量」という用語は、本明細書において使用されるとき、有益または所望される結果を達成するのに十分な活性成分の量(たとえば、本発明の組換えウイルスの量)を指す。有効量は、1つまたは複数の投与、適用、または投薬量で、投与され、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図するものではない。
【0185】
ある特定の実施形態では、活性成分の治療有効量は、0.1mg/kg~100mg/kg、たとえば、1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~10mg/kgの範囲である。ある特定の実施形態では、組換えウイルスの治療有効量は、102~1015プラーク形成単位(pfu)、たとえば、102~1010、102~105、105~1015、105~1010、または1010~1015プラーク形成単位の範囲である。投与される量は、処置される疾患または適応症の種類および程度、患者の全般的な健康状態、抗体のin vivo効力、医薬製剤、ならびに投与の経路といった変数に依存するであろう。初期投薬量は、所望される血液レベルまたは組織レベルを急速に達成するために、上位レベルを上回って増加させてもよい。あるいは、初期投薬量は、最適値よりも少なくてもよく、1日投薬量を、処置過程の間に徐々に増加させてもよい。ヒト投薬量は、たとえば、0.5mg/kg~20mg/kgで実行するように設計される従来的なフェーズIの用量漸増研究において、最適化することができる。投薬頻度は、投与の経路、投薬量、ウイルスの血清半減期、および処置されている疾患などの要因に応じて、変動し得る。例示的な投薬頻度は、1日に1回、1週間に1回、および2週間に1回である。1つの投与経路は、非経口、たとえば、静脈内注入である。ウイルスに基づく薬物の製剤化は、当業者の技能の範囲内である。ある特定の実施形態では、組換えウイルスは、凍結乾燥された後、投与の時点で、緩衝食塩水中で再構成される。
【0186】
「組み合わせて」投与されるという用語は、本明細書において使用されるとき、対象が障害に罹患している過程で、2つ(またはそれを上回る)異なる処置が対象に送達され、その結果、患者に対する処置の効果が、ある時点でオーバーラップすることを意味すると理解される。ある特定の実施形態では、1つの処置の送達は、第2の送達が開始するときに依然として生じており、そのため、投与という点で、オーバーラップが存在する。これは、本明細書において、「同時」または「並行送達」と称されることがある。他の実施形態では、一方の処置の送達は、他方の処置の送達が開始する前に終了する。いずれの事例でも一部の実施形態では、処置は、投与を組み合わせたため、より有効である。たとえば、第2の処置がより有効である、たとえば、第2の処置を第1の処置なしで投与した場合に見出されるであろうものよりも、より少ない第2の処置で同等の効果が見出されるか、または第2の処置は症状を低減させる程度がより大きいか、あるいは類似の状況が、第1の処置で見出される。ある特定の実施形態では、送達は、症状、または障害に関連する他のパラメーターにおける低減が、一方の処置を他方が存在しない状態で送達した場合に観察されるであろうものよりも大きくなるようなものである。2種類の処置の効果は、部分的に相加性、全体的に相加性、または相加性を上回るものであってもよい。送達は、送達される第1の処置の効果が、第2のものが送達されたときに依然として検出可能となるようなものであり得る。
【0187】
III.医薬組成物/製剤
本開示はまた、前述の組換えアデノウイルスのうちのいずれかと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、医薬組成物を提供する。本明細書において使用されるとき、「薬学的に許容される担体」は、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに好適であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは併発症を有さず、妥当な利益/危険性比に釣り合う、緩衝剤、担体、および賦形剤を意味する。担体は、製剤中の他の成分と適合性があり、レシピエントにとって有害でないという意味で、「許容される」必要がある。薬学的に許容される担体としては、医薬の投与に適合性がある、緩衝剤、溶媒、分散媒、コーティング剤、等張剤、および吸収遅延剤などが挙げられる。
【0188】
本明細書に開示される組換えアデノウイルスを含む医薬組成物および製剤は、その意図される投与経路との適合性を有するように製剤化され得る。投与経路の例は、筋肉内、静脈内、動脈内、または腫瘍内、皮内、吸入、経皮、局所、経粘膜、および直腸投与である。
【0189】
一態様では、本開示は、組換えアデノウイルスの安定化および保管のためのアデノウイルス製剤を提供する。一部の実施形態では、本発明は、アデノウイルスの製剤であって、
e)前述の組換えアデノウイルスのいずれかのうちの1つまたは複数と、
f)少なくとも1つの緩衝剤と、
g)少なくとも1つの張度改変剤と、
h)少なくとも1つの糖もしくは少なくとも1つの安定剤、またはその両方と、を含み、
約7.0~約9.0の範囲のpHを有する、製剤を提供する。
【0190】
ある特定の実施形態では、安定剤は、グリセロールである。ある特定の実施形態では、安定剤は、約2%~約5%(体積/体積)である。
【0191】
ある特定の実施形態では、緩衝剤は、Tris(Tris-HClおよび/もしくはモノ-Trisを含む)、TES、HEPES、ブルシン四水和物、EPPS、トリシン、またはヒスチジンである。ある特定の実施形態では、緩衝剤は、約1mM~約30mMの濃度である。
【0192】
一部の実施形態では、張度改変剤は、MgCl2、MnCl2、CaCl2、ZnCl2、NaCl、またはKClである。一実施形態では、張度改変剤は、NaClである。一実施形態では、張度改変剤は、約0.1mM~約5mMの濃度である。一実施形態では、張度改変剤は、約10mM~約250mMの濃度である。一実施形態では、張度改変剤は、約25mM~約100mMの濃度である。一実施形態では、張度改変剤は、約25mMの濃度である。
【0193】
ある特定の実施形態では、本製剤は、第1の張度改変剤および第2の張度改変剤を含み、ここで、第1の張度改変剤は、一価カチオンであり、第2の張度改変剤は、二価カチオンである。ある特定の実施形態では、一価カチオンは、NaClまたはKClである。ある特定の実施形態では、二価カチオンは、MgCl2、MnCl2、CaCl2、またはZnCl2である。ある特定の実施形態では、張度改変剤または二価カチオンは、約0.1mM~約5mMの濃度である。
【0194】
一部の実施形態では、糖は、スクロースまたはトレハロースである。一実施形態では、糖は、スクロースである。一実施形態では、糖は、体積に対する重量の百分率で約2%~約8%である。一実施形態では、糖は、体積に対する重量の百分率で約3%~約5%である。一実施形態では、糖は、体積に対する重量の百分率で約5%である。
【0195】
ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかは、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート-80またはポリソルベート-40である。一実施形態では、非イオン性界面活性剤は、約0.001%~約1%の濃度である。一実施形態では、非イオン性界面活性剤は、約0.02%の濃度である。
【0196】
ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかは、少なくとも1つのフリーラジカル酸化阻害剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、フリーラジカル酸化阻害剤は、EDTAである。一実施形態では、フリーラジカル酸化阻害剤は、約0.01mM~約5mMの濃度である。一実施形態では、フリーラジカル酸化阻害剤は、約0.05mM~約2mMの濃度である。一実施形態では、フリーラジカル酸化阻害剤は、約0.1mMの濃度である。
【0197】
ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかは、少なくとも1つの凍結保護剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、凍結保護剤は、EtOHである。一部の実施形態では、凍結保護剤は、約0.01%~5%の濃度である。一部の実施形態では、凍結保護剤は、約0.1%~2%の濃度である。一実施形態では、凍結保護剤は、約0.5%の濃度である。
【0198】
一部の実施形態では、製剤は、約200mOs/L~約800mOs/Lのモル浸透圧濃度を有する。一部の実施形態では、製剤は、約300mOs/L~約600mOs/Lのモル浸透圧濃度を有する。一部の実施形態では、製剤は、約400mOs/L~約500mOs/Lのモル浸透圧濃度を有する。
【0199】
ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかに含まれる組換え腫瘍溶解性アデノウイルスは、約1×107vp/mL~1×1013vp/mLの濃度である。
【0200】
ある特定の実施形態では、製剤は、約20mMのTris、約25mMのNaCl、約2.5%のグリセロールを含み、約8.0のpHを有する。ある特定の実施形態では、製剤は、約20mMのTris、約25mMのNaCl、約3~5%のスクロースを含み、約8.0のpHを有する。ある特定の実施形態では、製剤は、約10mMのTris、約75mMのNaCl、約5%のスクロース、約0.02%のポリソルベート-80、約1mMのMgCl2、約0.1mMのEDTA、約0.5%のEtOHを含み、約8.0のpHを有する。
【0201】
ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかは、少なくとも1つのイムノアジュバントをさらに含む。ある特定の実施形態では、イムノアジュバントは、1)ミョウバン、2)サポニン、3)非イオン性ポリマー界面活性剤、4)モノホスホリルリピドA、5)ムラミルジペプチド、および6)サイトカインから選択される。
【0202】
ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかは、少なくとも1つの色素をさらに含む。ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかは、少なくとも1つの可逆的プロテアーゼ阻害剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、可逆的プロテアーゼ阻害剤は、L3/p23システインプロテアーゼの阻害剤である。ある特定の実施形態では、前述の製剤のうちのいずれかは、抗酸化剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、抗酸化剤は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、または葉酸塩である。
【0203】
「のうちの少なくとも1つ」という表現は、この表現の前に列挙された対象物のそれぞれを独立して含み、文脈および使用により別途理解されない限り、列挙された対象物のうちの2つまたはそれを上回るものの様々な組合せを含むことを、理解されたい。3つまたはそれを上回る列挙される対象物と併用される「および/または」という表現は、文脈により別途理解されない限り、同じ意味を有することを理解されたい。
【0204】
「含む(include)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」「有する(have)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」、または「含むこと(containing)」という用語の使用は、これらの文法上の同等物を含め、概して、拡張可能かつ非限定的であるとして、たとえば、文脈により別途具体的に言及または理解されない限り、列挙されていない追加の要素またはステップを排除しないとして、理解されるべきである。
【0205】
「約」という用語が、定量値の前に使用されている場合、本発明は、別途具体的に示されない限り、その具体的な定量値自体も含む。本明細書において使用されるとき、「約」という用語は、別途指示または推定されない限り、公称値から±10%の変動を指す。
【0206】
ステップの順序またはある特定の動作を行う順序は、本発明が実行可能である限り、重要ではないことが理解される。さらに、2つまたはそれを上回るステップまたは動作は、同時に行われてもよい。
【0207】
本明細書におけるあらゆる例または例示的な語法、例として、「たとえば」または「を含む」の使用は、単に、本発明をより良好に例示することを意図するものであり、特許請求されていない限り、本発明の範囲に対して制限を課すものではない。本明細書におけるいずれの語法も、任意の特許請求されていない要素を本発明の実施に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0208】
以下の作業例は、例示であり、制限することを意図するものではなく、当業者であれば他の実施形態を利用することができることを容易に理解するであろう。
【0209】
(実施例1)
【0210】
例示的なIX-E2挿入部位(NCBI参照配列AC_000008.1(配列番号1)による番号付けでヌクレオチド4029~4093)のヌクレオチド配列は、以下の通りである。アデノウイルスIX遺伝子の終止コドン(左側の「TAA」、配列番号8)およびアデノウイルスIVa2遺伝子の終止コドン(右側の「TTA」、配列番号9)を、下線で示す。
【化1】
【0211】
(実施例2)
【0212】
例示的なL5-E4挿入部位(NCBI参照配列AC_000008.1(配列番号1)による番号付けでヌクレオチド32785~32916)のヌクレオチド配列は、以下の通りである。アデノウイルスファイバー遺伝子の終止コドン(左側の「TAA」、配列番号8)およびアデノウイルスE4遺伝子のORF6/7の終止コドン(右側の「TCA」、配列番号10)を、下線で示す。
【化2】
【0213】
(実施例3)
【0214】
発現カセットにクローニングされた導入遺伝子をL5-E4部位に有するウイルスを生成するために、アデノウイルスヌクレオチド配列(E3領域におけるRIDα、RIDβ、および14.7k遺伝子、ならびにE4領域におけるORF1~ORF4遺伝子の欠失を含む)を有するプラスミドを、SV40プロモーターおよびターミネーターとともに介在SwaI制限部位(「ATTTAAAT」、配列番号11)を有する発現カセットをL5-E4部位に挿入することによって改変した。この改変形態のヌクレオチド配列の、L5転写ユニットのポリアデニル化シグナル(「AATAAA」、配列番号12)から、E4転写ユニットのポリアデニル化シグナル(「TTTATT」、配列番号13)までは、以下の通りである。
【化3】
【0215】
配列番号14において、L5およびE4転写ユニットのポリアデニル化シグナル、ならびにSwaI制限部位のヌクレオチドを、下線で示す。
【0216】
マウスGMCSFをコードする導入遺伝子を、次いで、SwaI部位にクローニングして、以下の配列を生成した。
【化4】
【0217】
配列番号15において、L5およびE4転写ユニットのポリアデニル化シグナル、ならびにSwaI制限部位の残りのヌクレオチドを下線で示し、マウスGMCSFをコードする導入遺伝子を、太字で示す。
【0218】
以下の改変(アデノウイルス5型のdl309株と比較して)を保持するウイルスTAV-(L5-E4)mGMCSFを生成した:がん性細胞における選択的な複製を付与するためのE1AプロモーターにおけるTAV-255欠失、ウイルスE1B-55K遺伝子までは及ばないウイルスE1B-19K遺伝子の5’末端の欠失、E3 RIDα、RIDβ、および14.7k遺伝子の欠失、配列番号15の配列、ならびにE4 ORF1-ORF4遺伝子の欠失。
【0219】
mGMCSF発現を試験するために、A549細胞(ヒトがん細胞株)、ADS-12細胞(マウスがん細胞株)、およびWI38細胞(ヒト正常細胞株)に、5のMOI(感染多重度)で、TAV-(L5-E4)mGMCSFを感染させた。対照として、追加の細胞は、感染なしで培養したか、またはアデノウイルス5型のdl309株と比較して以下の改変を保持するウイルスTAV-(E1B-19K)mGMCSFを感染させた:E1AプロモーターにおけるTAV-255欠失、およびE1B-55K遺伝子を破壊することなく、E1B-19K遺伝子の5’末端を置き換えるmGMCSF遺伝子。感染の4日後に、馴化培地を、ELISAで使用して、マウスGMCSF発現を測定した。結果を、
図2に示すが、いずれのウイルスも、A549細胞では高いレベルの発現、ADS-12では中等度のレベルの発現、およびWI38細胞では低いレベルの発現をもたらした。
【0220】
(実施例4)
【0221】
IX-E2部位における発現カセット挿入を調査するために、まず、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMVプロモーター)およびウシ成長ホルモンの転写ターミネーター(BGHターミネーター)を有し、導入遺伝子の挿入を促進するためにプロモーターとターミネーターとの間にNotI制限部位(「GCGGCCGC」、配列番号16)を含む、発現カセットを挿入した。IXのポリアデニル化シグナル(「AATAAA」、配列番号12)からE2転写ユニットのポリアデニル化シグナル(「TTTATT」、配列番号13)までのヌクレオチド配列は、以下の通りである。
【化5】
【化6】
【0222】
IXおよびE2転写産物のポリアデニル化シグナル、ならびにNotI制限部位を、下線で示す。
【0223】
ウイルスTAV IX-WT L5-エンプティは、E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、IX-E2部位に野生型ウイルス配列を保持し、配列番号14の配列(L5-E4部位における空の発現カセット)を保持していた。ウイルスTAV IX-WT L5-IL7は、E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、IX-E2部位に野生型ウイルス配列を保持し、配列番号14のL5-E4カセットにクローニングされた配列番号18の配列を保持していた(以下を参照されたく、マウスIL-7遺伝子を大文字で示し、下線で示されているSwaI制限部位からの残りのヌクレオチドを含むL5-E4発現カセットからの隣接するヌクレオチドを小文字で表す)。
【化7】
【0224】
ウイルスTAV IX-WT L5-GMCSFは、E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、IX-E2部位に野生型ウイルス配列を保持し、配列番号14のL5-E4カセットにクローニングされた配列番号19の配列を保持していた(マウスGMCSF遺伝子を大文字で示し、下線で示されているSwaI制限部位からの残りのヌクレオチドを含むL5-E4発現カセットからの隣接するヌクレオチドを小文字で表す)。このウイルスは、配列番号15に示されるウイルスTAV-(L5-E4)mGMCSFに使用されているコドン最適化形態のマウスGMCSFではなく、野生型マウスGMCSFを保持している。
【化8】
【化9】
【0225】
ウイルスTAV IX-GMCSF L5-IL7は、E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、配列番号17のIX-E2カセットにクローニングされた配列番号20の配列(マウスGMCSF遺伝子を大文字で示し、下線で示されるNotI制限部位からの残りのヌクレオチドを含むIX-E2発現カセットの隣接するヌクレオチドを小文字で表す)を保持し、配列番号18および配列番号14に示されるL5-E4カセットにクローニングされたマウスIL-7を保持していた。マウスGMCSFの配列は、ウイルスTAV IX-WT L5-GMCSFおよびTAV IX-GMCSF L5-IL7で同一であるが、一方のウイルスではIX-E2発現カセットに挿入され、他方のウイルスにおいてはL5-E4発現カセットに挿入されていた。
【化10】
【0226】
これらのウイルスによる導入遺伝子の発現を試験するために、A549細胞に、5のMOIでウイルスを感染させ、4日後に、馴化培地を採取し、馴化培地を、IL-7およびGMCSFのELISAに使用した。GMCSFについてのELISAにより、
図3に示されるように、CMVプロモーターによって作動されるIX-E2部位におけるカセットから、SV40プロモーターによって作動されるL5-E4部位のカセットからのものよりも実質的に高い発現が示された。
【0227】
(実施例5)
【0228】
初期IX-E2設計のウイルス(
図4)において、本発明者らは、CMVプロモーターが意図していたものとは逆の方向に転写を作動させる可能性があればそれを遮断することによって、ウイルスの成長をさらに最適化することができるのではないかと考えた(Seilaら、Science.、(2008年)、322巻(5909号):1849~51頁)。本発明者らは、したがって、この部位のインサートを、インサートの5’末端および3’末端の両方が、通常のウイルス遺伝子からインサートへおよびインサートから通常のウイルス遺伝子への両方に転写産物のポリアデニル化を進めるように指向されたポリアデニル化シグナルを含むように、修正した。
図4の修正されたIX-E2設計を参照されたい。
【0229】
修正されたインサートのヌクレオチド配列は、IX転写産物のポリアデニル化シグナルから、E2転写産物のポリアデニル化シグナルまで、以下の通りである。
【化11】
【0230】
フォワードポリアデニル化シグナル(「AATAAA」、配列番号12)およびリバースポリアデニル化シグナル(「TTTATT」、配列番号13)のそれぞれ、ならびにNotI部位(「GCGGCCGC」、配列番号16)を、下線で示す。修正されたIX-E2設計を有する発現カセットを保持するウイルスは、初期IX-E2設計を有するウイルスよりも、効率的に成長した。
【0231】
(実施例6)
【0232】
ウイルスTAV-IXrL5-エンプティは、ウイルスE1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、配列番号21(修正されたIX-E2設計の空の発現カセット)を保持し、配列番号14(L5-E4部位における空の発現カセット)を保持していた。ウイルスTAV-IXrL5-hIL12は、ウイルスE1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、修正されたIX-E2発現カセットにヒトIL12A鎖をコードする遺伝子(配列番号22に示される)を保持し、L5-E4発現カセットにヒトIL12B鎖をコードする遺伝子(配列番号23に示される)を保持していた。配列番号22において、フォワードポリアデニル化シグナル(「AATAAA」、配列番号12)およびリバースポリアデニル化シグナル(「TTTATT」、配列番号13)のそれぞれ、ならびにNotI部位からの残りのヌクレオチドを、下線で示し、ヒトIL12A鎖をコードする遺伝子を、太字で示す。配列番号23において、L5およびE4転写ユニットのポリアデニル化シグナル、ならびにSwaI制限部位の残りのヌクレオチドを、下線で示し、ヒトIL12B鎖をコードする遺伝子を、太字で示す。
【化12】
【化13】
【0233】
ウイルスWT-IXrL5-hIL12を、TAV-IXrL5-hIL12と同一のゲノム構造で作製したが、ただし、このウイルスは、E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持するのではなく、野生型E1Aプロモーターを保持していることを除く。これらのウイルスのそれぞれはまた、E3 RIDα、RIDβ、および14.7k遺伝子の欠失、ならびにE4 ORF1-ORF4遺伝子の欠失を有する。
【0234】
この設計アプローチを、IL12を腫瘍溶解性アデノウイルスに組み込む別の戦略と比較するために、本発明者らは、E1B-19K部位に保持される、フューリン切断部位(アミノ酸RAKR、配列番号24)によって連結されたヒトIL12A鎖およびIL12B鎖をコードする遺伝子を保持するアデノウイルスを試験した。融合タンパク質が細胞によって合成されると、フューリン部位は、ゴルジ内の酵素フューリンによって、RAKR配列の最後のRと、次のアミノ酸(成熟IL12Aの最初のアミノ酸)との間で切断される。本発明者らは、フューリン切断部位をリンカーとして使用することにより、ヘテロ二量体IL12タンパク質の高レベルな発現がもたらされることをこれまでに見出していた。その融合遺伝子(大文字で示す)、クローニングに使用される隣接するSalIおよびXhoI制限部位(下線で示す)、ならびにそれがアデノウイルスゲノムに挿入された部位を示すアデノウイルスヌクレオチド(小文字)の核酸配列は、以下である。
【化14】
【0235】
ウイルスTAV-hIL12-フューリンは、E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、E1B-19K領域に配列番号25を保持する。対照ウイルスTAV-Δ19kは、E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、E1B-19K領域の欠失を保持する。
【0236】
腫瘍溶解活性およびIL12発現を試験するために、A549細胞に、TAV-Δ19k、TAV-hIL12-フューリン、TAV-TAV-IXrL5-エンプティ、およびTAV-IXrL5-hIL12を、5のMOIで3連に感染させた。感染の4日後に、馴化培地を採取し、IL12を、アセンブリーされたIL12A-IL12Bヘテロ二量体のみを検出するELISAで測定し、残りの細胞を、クリスタルバイオレットで染色した。
図5において示されるように、TAV-hIL12-フューリンは、対応する対照ウイルスTAV-Δ19kよりもわずかに溶解性が低かったが、これは、導入遺伝子をE1B-19K領域に挿入した場合の本発明者らの一般的な経験と整合性があり、一方で、TAV-IXrL5-hIL12は、TAV-IXrL5-エンプティおよびTAV-Δ19kと同程度に溶解性であった。これは、IX-E2領域およびL5-E4領域への発現カセットの挿入が、ウイルスの適合性に対して最小限の影響しか有さず、この点に関して、E1B-19K領域への導入遺伝子の挿入に勝り得ることを示す。
【0237】
図6に示されるように、TAV-hIL12-フューリンは、IX-E2およびL5-E4カセットを使用したウイルスよりも高いレベルのIL12を発現した。これは、2つの発現カセットのうちの少なくとも一方が、最適以下であり得ることを示唆し、この設計の改善に関するさらなる調査が促された。しかしながら、TAV-hIL12-フューリンから生成されたIL12タンパク質は、IL12B鎖のC末端に非天然のRAKR配列(残るフューリン認識部位)を含み、これは、導入遺伝子または天然のIL12に対する免疫原性などの望ましくないin vivo作用をもたらす可能性があるが、TAV-IXrL5-hIL12によって生成されたIL12は、完全に天然であるという利点を有する。
【0238】
(実施例7)
【0239】
L5-E4カセットからは、IX-E2カセットと比較して相対的に低い発現が観察されたことに基づいて、本発明者らは、L5-E4カセットが、IL-12ヘテロ二量体の低い発現の原因であるという仮説を立てた。本発明者らは、IX-E2領域に使用したアプローチと同様に、L5-E4領域を、両方の末端に二方向ポリアデニル化シグナルを含むように修正した。
【0240】
配列番号26のヌクレオチド配列を、L5-E4領域にクローニングし、5’末端および3’末端におけるL5およびE4転写産物のポリアデニル化シグナル、ならびにすべてのポリアデニル化シグナル、ならびにSwaI制限部位を下線で示す。
【化15】
【化16】
【0241】
E1AプロモーターにTAV-255欠失を有し、配列番号21に示されるIX-E2領域に導入遺伝子を有さない修正IX-E2カセットを有し、配列番号26に示されるL5-E4領域に導入遺伝子を有さない修正L5-E4カセットを有する、ウイルスTAV-(IXr)エンプティ-(L5r)エンプティを、作製した。
【0242】
ウイルスTAV-(IXr)mIL7-(L5r)mGMCSFは、E1AプロモーターにTAV-255欠失を含み、配列番号20に示されるようなNotI部位にクローニングされたマウスGMCSF遺伝子を有する配列番号21に示される修正されたIX-E2カセットを含み、配列番号18に示されるようなSwaI部位にクローニングされたマウスIL-7遺伝子を有する配列番号26に示される修正されたL5-E4カセットを含んでいた。
【0243】
ウイルスTAV-(IXr)mGMCSF-(L5r)mIL7は、E1AプロモーターにTAV-255欠失を含み、配列番号27に示されるようなNotI部位にクローニングされたマウスIL-7遺伝子を有する配列番号21に示される修正されたIX-E2カセットを含み、配列番号19に示されるようなSwaI部位にクローニングされたマウスGMCSF遺伝子を有する配列番号26に示される修正されたL5-E4カセットを含んでいた。したがって、ウイルスTAV-(IXr)mGMCSF-(L5r)mIL7およびTAV-(IXr)mIL7-(L5r)mGMCSFは、IL-7およびGMCSFの遺伝子が、修正されたIX-E2部位または修正されたL5-E4部位のどちらの部位に挿入されたかだけが異なる。
【化17】
【0244】
これらのウイルスによる導入遺伝子の発現を試験するために、A549細胞に、それぞれのウイルスを、5のMOIで3連に感染させた。4日後に、馴化培地を採取し、GMCSFおよびIL-7を、ELISAで測定した。IL-7およびGMCSFの両方について、修正されたL5-E4部位よりも、修正されたIX-E2部位に遺伝子を保持するウイルスによる発現が、高かった。これにより、CMVプロモーターを使用したIX-E2における発現カセットでは、SV40プロモーターを使用したL5-E4におけるカセットよりも高いレベルで発現され、このことは、L5-E4部位を二方向ポリアデニル化シグナルを含むように修正することによって影響を受けないというこれまでの発見が確認された。
【0245】
(実施例8)
【0246】
本発明者らは、次に、L5-E4部位におけるプロモーターを改善することをさらに調査した。初期に使用していたSV40プロモーターは、主要転写開始部位に、G(野生型SV40配列)からT(L5-E4インサート)への点突然変異を有していたため、配列番号28に示されるように、そのヌクレオチドを野生型のGに変更したL5-E4インサートを生成した。以前に突然変異させたヌクレオチド、ポリアデニル化シグナル、およびSwaI制限部位を下線で示す。異なるプロモーターを使用することについても調査し、SV40プロモーターの代わりにヒトEF1Aプロモーターを使用したL5-E4インサートを生成した。配列番号29は、ヒトEF1Aプロモーターを使用したL5-E4インサートを示し、L5転写産物からのポリアデニル化シグナルから、E4転写産物のポリアデニル化シグナルまでを、ポリアデニル化シグナルおよびSwaI制限部位に下線を付けて示す。
【化18】
【0247】
L5-E4におけるこれらの修正された発現カセットを試験するために、本発明者らは、IX-E2部位にマウスIL-7遺伝子を保持し、新しいL5-E4部位にマウスGMCSF遺伝子を保持するウイルスを生成した。IX-E2部位に使用したマウスIL-7遺伝子は、遺伝子の3’末端の付近の2つの領域に、発現の低減をもたらすように、ポリアデニル化シグナルとしてプロセシングされ得る配列AATAAAを用いてサイレント突然変異を導入し、コードされるタンパク質配列を変化させることはないが、内部AATAAA配列を排除する同義配列で置換することによって、改変した。配列番号30は、ヌクレオチド配列を示すが、IL-7コーディングヌクレオチドを大文字で示し、突然変異を下線で示し、IX-E2カセットの隣接するヌクレオチドを小文字で示し、NotI部位の残りのヌクレオチドを下線で示す。L5-E4部位におけるマウスGMCSF遺伝子の発現を改善するよう試みるために、コンセンサスコザック配列(ヌクレオチドGCCACC)を、SwaI部位の残りのヌクレオチドと、GMCSF遺伝子の開始コドンとの間に含めた。配列番号31は、ヌクレオチド配列を示すが、マウスGMCSF遺伝子およびコザック配列を大文字で示し、コザック配列を下線で示し、L5-E4カセットの隣接するヌクレオチドを小文字で示し、SwaI部位の残りのヌクレオチドを下線で示す。
【化19】
【0248】
ウイルスTAV-(IXr)mIL7noPA-(L5SV40wt)KozakmGMCSFは、E1AプロモーターにTAV-255欠失を含み、配列番号30に示されるようなNotI部位にクローニングされた可能性のある内部ポリアデニル化部位に同義突然変異を有するマウスIL-7遺伝子を有する、配列番号21に示される修正されたIX-E2インサートを含み、配列番号31に示されるようなSwaI部位にクローニングされたコンセンサスコザック配列を含むマウスGMCSF遺伝子を有する、配列番号28に示される野生型SV40プロモーターを有するL5-E4インサートを含んでいた。ウイルスTAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSFは、E1AプロモーターにTAV-255欠失を含み、配列番号30に示されるようなNotI部位にクローニングされた可能性のある内部ポリアデニル化部位に同義突然変異を有する、マウスIL-7遺伝子を有する配列番号21に示される修正されたIX-E2インサートを含み、配列番号31に示されるようなSwaI部位にクローニングされたコンセンサスコザック配列を含むマウスGMCSF遺伝子を有する、配列番号29に示されるヒトEF1Aプロモーターを有するL5-E4インサートを含んでいた。
【0249】
導入遺伝子発現についてこれらのウイルスを試験するために、A549細胞に、2つのウイルスを5のMOIで3連に感染させた。4日後に、馴化培地を採取し、IL-7およびGMCSFの発現を測定するためにELISAで使用した。結果を、
図7に示す。ヒトEF1Aプロモーターが、中等度に高い発現を有し、さらなる開発のために選択した。ウイルスTAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSFを、SF-BMAdR 281細胞(A549細胞に由来する)の無血清懸濁培養においてウイルスを増幅させ、細胞を溶解させ、クロマトグラフィーによってウイルスを精製し、25mMのNaCl、20mMのTris、2.5%のグリセロールを含むpH8の緩衝液中に透析することによって、マウス実験のための医薬剤として調製した。このようにして調製したウイルスは、5.8×10
11vp/mlのウイルス粒子濃度および3.0×10
10IU/mlの感染力価を有していた。
【0250】
(実施例9)
【0251】
本発明者らは、さらに、アデノウイルス死タンパク質(ADP)の欠失により、導入遺伝子の発現を改善することができるかどうかを調査した。ADPは、ウイルス複製の後期に発現され、宿主細胞を溶解して、子孫ビリオンを放出するため、その除去により、細胞が殺滅される前に、より長く生存し、導入遺伝子を発現することが可能となり得る。TAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSFウイルスにおいて使用されるE3 RIDα、RIDβ、および14.7K欠失の状況のADP遺伝子のヌクレオチド配列を、配列番号32に示すが、ADPをコードするヌクレオチドを大文字で示し、E3 RIDα、RIDβ、および14.7K欠失の部位をハイフンで示し、隣接するアデノウイルスヌクレオチドを小文字で示す。ΔADP欠失を作製するために、配列番号32内の下線で示したヌクレオチドを、欠失させた。
【化20】
【0252】
ウイルスTAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSF-ΔADPは、TAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSFと同一のゲノムで作製したが、このウイルスは、配列番号32に下線で示されるADP遺伝子のヌクレオチドの欠失も含むことを除く。
【0253】
ADPの欠失が、より長期かつ高度な導入遺伝子発現をもたらすかどうかを試験するために、A549細胞に、5のMOIで、TAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSFおよびTAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSF-ΔADPを感染させ、感染後3日ごとに、馴化培地を採取して、IL-7およびGMCSFをELISAで測定した。結果を、
図8に示す。2つのウイルスの間に、導入遺伝子の発現レベルに関して、説得力のある違いは存在しなかったが、実験の過程で細胞を観察し、細胞死が、TAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSFでの感染約3日後から、TAV-(IXr)mIL7noPA-(L5EF1A)KozakmGMCSF-ΔADPでは感染約9日後に遅延された。したがって、この実験にあるように可溶性サイトカインの発現は、強化されなかったが、感染した細胞の表面上での共刺激分子の発現など、一部の適用については、細胞がより長く生存し、細胞表面上の共刺激分子がより長期間にわたって標的細胞を活性化することができるように、ADPを欠失させることが有利であり得る。
【0254】
(実施例10)
【0255】
本発明者らは、次に、IX-E2部位およびL5-E4部位を、共刺激分子であるCD80およびCD137L、ならびに接着分子であるICAM1という3つの導入遺伝子を発現させるウイルスの設計の一部として使用した。本発明者らは、これまでに、ウイルスE1B-19K遺伝子の5’末端の代わりに、これらの導入遺伝子を3つすべて保持し、3つの導入遺伝子のそれぞれの間にIRESを有する、ウイルスを作製した。クローニングに使用した5’隣接アデノウイルスヌクレオチド配列およびSalI制限部位(小文字)、マウスCD80(大文字)、脳心筋炎ウイルスに由来するIRES(小文字)、マウスCD137L(大文字)、口蹄疫ウイルスに由来するIRES(小文字)、マウスICAM1(大文字)、ならびにクローニングに使用したXhoI制限部位を含む3’隣接アデノウイルスヌクレオチド配列を有する、E1B-19K領域におけるそのウイルスのヌクレオチド配列を、配列番号33に示す。このウイルスTAV-mCD80(IRES)mCD137L(IRES)mICAM1は、E1AプロモーターにTAV-255欠失を含み、E1B-19K部位に配列番号33を含み、E3領域のADP、RIDα、RIDβ、および14.7K遺伝子の欠失を含み、E4領域のORF1~4遺伝子の欠失を含む。
【化21】
【化22】
【0256】
IRESの後の遺伝子の発現が、翻訳がIRESによって開始されない遺伝子と比較して、概して不良であることを見出したため、IX-E2部位およびL5-E4部位を代替的な戦略として使用して、調査した。本発明者らは、配列番号34に示されるようにE1B-19K部位にマウスCD80を保持し(CD80遺伝子を大文字で示し、隣接するアデノウイルス配列および制限部位を小文字で示す(今回は、他のウイルスで使用したSalIおよびXhoI制限部位の代わりにBsu36I制限部位を使用した))、配列番号21のIX-E2部位にマウスCD137L遺伝子を保持し(配列番号35に示されるようにCD137L遺伝子がNotI部位に挿入されており、CD137L遺伝子を大文字で示し、隣接する発現カセット配列および残りのNotI制限部位を小文字で示す)、配列番号29のL5-E4部位にマウスICAM1遺伝子を保持する(配列番号36に示されるようにICAM1遺伝子がSwaI部位に挿入されており、ICAM1遺伝子を大文字で示し、隣接する発現カセット配列および残りのSwaI部位を小文字で示す)、ウイルスTAV-(19k)mCD80-(IX)mCD137L-(L5)mICAM1を生成した。このウイルスはまた、E1AプロモーターにTAV-255欠失を含み、E3領域のADP、RIDα、RIDβ、および14.7K遺伝子の欠失を含み、E4領域のORF1~4遺伝子の欠失を含む。
【化23】
【化24】
【化25】
【0257】
これらの2つのウイルスによる発現を試験するために、A549細胞、HT29細胞、ADS12細胞、およびF244細胞に、3のMOIで、TAV-mCD80(IRES)mCD137L(IRES)mICAM1、TAV-(19k)mCD80-(IX)mCD137L-(L5)mICAM1、またはTAV-(19k)mCD80-(IX)mCD137L-(L5)mICAM1と同じ構造を有するが導入遺伝子を有さない対照ウイルスTAV-(19k)エンプティ-(IX)エンプティ-(L5)エンプティを感染させた。2日後に、細胞を、CD80、CD137L、およびICAM1に関して染色し、結果を、
図9~
図12に示す。TAV-mCD80(IRES)mCD137L(IRES)mICAM1においてIRESの後に発現される場合、CD137LおよびICAM1遺伝子の発現の不良が存在するが、TAV-(19k)mCD80-(IX)mCD137L-(L5)mICAM1では、IX-E2部位およびL5-E4部位からのこれらの遺伝子の強力な発現があった。
【0258】
(実施例11)
【0259】
上に記載される実験は、ヒトアデノウイルス5型に基づくアデノウイルスを使用したが、他のアデノウイルスは、非常に類似する構造を有し、上に記載されるIX-E2およびL5-E4部位に相同な明確に特定可能な部位を有する。たとえば、ヒトアデノウイルス35型は、配列番号37に示されるIX-E2部位の配列を有し、配列番号38に示されるL5-E4部位の配列を有し、ここで、ポリアデニル化シグナルが、それぞれの配列において下線で示されている。
【化26】
【0260】
発現カセットをこれらの部位に挿入することができるかどうかを判定するために、IX-E2部位を、配列番号39に示されるようにアデノウイルス5型の修正されたIX-E2部位において使用した同じ配列で改変し(発現カセットは、アデノウイルス5型とは反対の方向で挿入したため、小文字で示されている隣接するウイルス配列は、配列番号37に示されている従来的なアノテーションの逆相補体である)、またL5-E4部位を、配列番号40に示されるようにEF1Aプロモーターを有するアデノウイルス5型部位で使用した同じ配列で改変した。IX-E2およびL5-E4部位に発現カセットの両方を保持し、E3 RIDα、RIDβ、および14.7K遺伝子ならびにE4 ORF1~4遺伝子における欠失を保持するアデノウイルス35型をレスキューし、これらの部位が、他の血清型のアデノウイルスにおいて発現カセットの挿入に使用され得ることを示す。互いに対向するポリアデニル化部位を有する2つの隣接する転写ユニット間に発現カセットを挿入する戦略は、原理上、アデノウイルスに限定されず、他のウイルスにも同様に適用できる可能性がある。
【化27】
【0261】
(実施例12)
【0262】
本発明者らは、修正されたIX-E2部位およびL5-E4部位を使用して、前臨床実験においてモデルとして使用するためのマウスIL12AおよびIL12B遺伝子を保持するウイルスを生成した。マウスIL12Aの遺伝子を、配列番号21に示される発現カセットを有する修正されたIX-E2部位のNotI制限部位にクローニングして、配列番号42の配列を生成した。NotI制限部位の残りのヌクレオチドを、下線で示す。マウスIL12Bの遺伝子を、配列番号29に示されるEF1Aプロモーターを使用して発現カセットを有するL5-E4部位のSwaI制限部位にクローニングして、配列番号43の配列を生成した。SwaI制限部位の残りのヌクレオチドを、下線で示す。
【化28】
【0263】
E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、配列番号21に示される導入遺伝子を有さないIX-E2発現カセットを保持し、配列番号29に示される導入遺伝子を有さないL5-E4発現カセットを保持する、ウイルスTAV-IX5-エンプティを生成した。E1AプロモーターにTAV-255欠失を保持し、配列番号42のマウスIL12A遺伝子を含むIX-E2発現カセットを保持し、配列番号43のマウスIL12B遺伝子を含むL5-E4発現カセットを保持する、ウイルスTAV-IX5-mIL12を生成した。
【0264】
腫瘍溶解についてこれらのウイルスを試験するために、A549細胞に、TAV-IX5-エンプティまたはTAV-IX5-mIL12のウイルスを、5のMOIで感染させたか、または未感染対照として保ち、ウェルを、感染後2日ごとにクリスタルバイオレットで染色した。
図13に示されるように、エンプティ対照ウイルスおよびマウスIL-12を保持するウイルスの両方が、4~6日以内に溶解性であった。
【0265】
導入遺伝子の発現について試験するために、A549細胞に、TAV-IX5-エンプティまたはTAV-IX5-mIL12ウイルスを、5のMOIで3連に感染させ、馴化培地を感染の5日後に採取して、マウスIL12A鎖およびマウスIL12B鎖の両方を有するヘテロ二量体のみを検出するELISAでマウスIL-12を測定した。
図14に示されるように、TAV-IX5-mIL12は、高レベルのIL-12ヘテロ二量体の発現を誘導した。
【0266】
ヒトアデノウイルス5、完全ゲノム
NCBI参照配列:AC_000008.1(配列番号1)
>AC_000008.1、ヒトアデノウイルス5、完全ゲノム
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0267】
ヒトアデノウイルス35、完全ゲノム
NCBI参照配列:AC_000019.1(配列番号41)
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【0268】
参照による組込み
本明細書において参照される特許文書および科学論文のそれぞれの全開示が、あらゆる目的で参照により組み込まれる。
【0269】
均等物
本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。前述の実施形態は、したがって、本明細書に記載される本発明を制限するのではなく、あらゆる点に関して、例示的であるとみなされるべきである。本発明の範囲は、したがって、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の均等性の意味および範囲内に入るすべての変化は、そこに含まれることが意図される。
【配列表】