(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】脂肪酸の前分画法による再生可能なベースオイルおよびディーゼルの製造
(51)【国際特許分類】
C10G 3/00 20060101AFI20230125BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230125BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20230125BHJP
B01J 23/883 20060101ALI20230125BHJP
B01J 29/85 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
B01J35/10 301G
B01J21/06 M
B01J23/883 M
B01J29/85 M
(21)【出願番号】P 2019569788
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2018065978
(87)【国際公開番号】W WO2018234189
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-21
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トッピネン、サミ
(72)【発明者】
【氏名】ヌルミ、ペッカ
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-518530(JP,A)
【文献】特表2009-518534(JP,A)
【文献】特表2010-529176(JP,A)
【文献】特表2017-533204(JP,A)
【文献】国際公開第2016/062868(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
フィードストックを提供する工程であって、前記フィードストックが、
i)少なくとも5wt%の飽和の遊離脂肪
酸と、
ii)不飽和の遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド
、脂肪酸アルコール、およ
び脂肪酸グリセロールからなる
群から選択される一または複数の化合物であ
って、ここで前記脂肪酸グリセロールはモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドである化合物と、
からなる混合物を含むフィードストックを提供する工程、
b)前記フィードストックを、少なくとも以下:
少なくとも90wt%の飽和のC
n遊離脂肪酸(nは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24である整数のうちの一つから選択される)を含み、かつ、3wt%より多くの不飽和遊離脂肪酸を含まない、飽和脂肪酸が富化されたフィード、および
一または複数の、飽和脂肪酸が枯渇したフィード、
へと分離する工程、
c)前記飽和脂肪酸が富化されたフィードを、ケトン化触媒の存在下、2n-1である炭素数を有する飽和ケトンを主に含むケトン流を得るために2つの脂肪酸が反応されるケトン化反応条件へと付す工程であって、前記ケトン化反応条件が、300~400℃の範囲である温度、5~30bargの範囲である圧力、0.25~3hr
-1の範囲であるWHSV、および、0.1~1.5ガス/フィード比(w/w)の範囲であるガスの存在を含み、ここで前記ガスは、CO
2、H
2、N
2、CH
4、H
2Oのうちの一または複数から選択され、さらに、前記ケトン化触媒が、TiO
2である工程、
d)再生可能なベースオイルを含む脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流を得るために、前記ケトン流を水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと、同時にまたは順次付す工程、
e)任意には、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために、前記工程d)の生成物を蒸留する工程
を含み、
ここで、水素化による、または加水分解による前処理が工程a)~c)中で、または工程a)~c)の工程間で行われない、
生物起源のフィードストックから再生可能なベースオイルを製造するための方法。
【請求項2】
前記方法が、ディーゼル燃料を製造することをさらに含む方法であって、
f)ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流を得るために、前記工程b)で得られた、前記一または複数の、前記飽和脂肪酸が枯渇したフィードを、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと、同時にまたは順次付す工程、
g)任意には、蒸留されたディーゼル燃料を得るために、前記工程f)から得られる流を蒸留する工程
を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フィードストックが、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセロール、またはそれらの混合物として、少なくとも10wt%の飽和脂肪酸の混合物を含み、および、一または複数の化合物は、少なくとも10wt%の不飽和脂肪酸を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
nが10、12、14、16である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
nが16である請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィードストックが、少なくとも30wt%の飽和脂肪酸の混合物を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィードストックの、少なくとも10wt%の不飽和脂肪酸を含む前記一または複数の化合物が、C
18不飽和脂肪酸を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィードストックが、パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)である請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分離が、蒸留および/または冷却による結晶化を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記フィードストックの分離が、少なくとも5つの理論段を有する蒸留カラム中での、100~300℃のあいだの温度、および0.5kPa~5kPaの蒸留圧力での蒸留を含む請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記分離が、少なくとも15個の理論段を有する蒸留カラム中での、150~285℃のあいだの温度、および0.9kPa~3.5kPaの蒸留圧力での蒸留を含む請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ケトン化触媒が、80~160Åの平均の細孔径、および/または40~140m
2/gのBET面積、および0.1~0.3cm
3/gの多孔度を有するアナターゼ型のTiO
2である請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記脱酸素化および異性化されたベースオイル流または前記蒸留された再生可能なベースオイルが、100ppm未満の酸素含有量、100℃で3~15cStである粘度、120より大きい、例えば120~170のあいだなどの粘度指数を有する請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記脱酸素化および異性化されたベースオイル流または前記蒸留された再生可能なベースオイルが、0℃未満の流動点を有する請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的オイルの水素化処理の分野に関し、特には、再生可能なベースオイル成分および再生可能なベースオイルを製造するための方法、例えば再生可能なベースオイルをプロセス効率のよい方法で製造するための方法、および特には、低下された水素消費を伴う、価額が増加された再生可能なベースオイルを得るためのエネルギー効率の良いプロセススキームに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば植物性オイルおよび動物性脂肪などの生物学的オイルの水素化処理に関連する技術は、植物性オイルの水素化脱酸素化および水素化異性化の組み合わせられたステップが改良された低温流動性を有する再生可能なディーゼルを与えることが20世紀の終わりに最初に発見されて以来多くの注目を集めてきた。21世紀の始めに、再生可能なベースオイルの製造もまた、再生可能なオイルの二重結合オリゴマー化または脂肪酸のケトン化反応などを含む多くの反応経路を通じて調べられてきた。
【0003】
生物学的オイルの水素化処理は、大部分において触媒化反応である。産業スケール(年間>100ktの生物学的オイル)における生物学的オイルの触媒的水素化処理は、メンテナンスが必要となる前にプラントまたはリアクターが操業状態でいられる時間などのいくつかの問題に直面している。操業時間の低下の原因の一つは、触媒の不活性化、または触媒床の物理的な詰まりであり、頻繁かつ望ましくない圧力低下を引き起こす。触媒の寿命は、フィードストックの質に大きく依存している。触媒的水素化処理の問題のひとつは、特には、例えば非常に少ない量の遊離脂肪酸しか含まない食用の菜種油などのより分解していない生物学的オイルと比較して、一定の量のより反応性である遊離脂肪酸(FFA)と共にグリセリドを含むより分解したフィードの処理と組み合わせた場合の触媒の寿命である。生物学的オイルの水素化処理における別の問題は、生物学的オイルを再生可能なディーゼルへとまたは再生可能なベースオイルへと変換するために必要とされる全体の水素量を減少させることである。
【0004】
特許文献1(Neste Oyjが特許権者)は、5wt%以上の遊離脂肪酸を含む生物学的オイルからのディーゼルの製造における望ましくない副反応に対する解法を提供している。遊離脂肪酸を含むフィードを大量の炭化水素希釈剤を用いて希釈することが望ましくない副反応を減少させ、改善された触媒の寿命を可能とし、そしてそれゆえより多くの操業時間を可能にすることが見出された。
【0005】
食用として使用することのできない再生可能なオイルを使用したいという欲求が存在している。再生可能なディーゼルおよび再生可能なベースオイルへと処理するために使用される生物学的オイルは、従来技術において時々参照されている純粋なトリグリセリドフィードまたは純粋な遊離脂肪酸フィードの例と比較して、ますますより分解されたものに、およびより複雑になり続けてきている。したがって、当該技術分野において、特には再生可能なディーゼルおよび再生可能なベースオイルの調製のための、様々な量の遊離脂肪酸を含むそのような分解されたおよび複雑な生物学的オイルまたはそれらの混合物を利用できるプロセスへの要求がある。
【0006】
特許文献2(Neste Oyjが特許権者)は、炭化水素を用いて希釈され、および、前水素化、ケトン化、水素化酸素化、ストリッピング、水素化異性化、任意の水素化仕上げ、および蒸留によって再生可能なベースオイルの、再生可能なディーゼルおよび再生可能なガソリンへと処理されている複雑なフィードについて記載している(例えば、文献の
図1を参照のこと)。
【0007】
例えばエネルギー効率、触媒の寿命および水素消費などに関して効率的である様式で、遊離脂肪酸および脂肪酸エステルを含む価値の低い生物学的オイルを再生可能なベースオイルおよび再生可能なディーゼルへと処理することのできるさらなるプロセスに対する要求が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1741768号明細書
【文献】国際公開第2007/068795号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上述の従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、一定の量の遊離脂肪酸を含む再生可能なオイルのより効率的な処理方法、特には、これらに限定される訳ではないが、より低い水素消費および/または向上された触媒寿命を有する処理方法を提供することである。
【0010】
本課題を解決するために、本発明は、生物起源のフィードストックからの再生可能なベースオイルを製造するための方法であって、
a)少なくとも5wt%の飽和の遊離脂肪酸の混合物、ならびに不飽和の遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、および脂肪酸アルコール、および例えば脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなどの脂肪酸グリセロールからなるリストから選択される一または複数の化合物である多くても残余物、を含むフィードストックを提供する工程、
b)フィードストックを、少なくとも以下:少なくとも90wt%の飽和のCn遊離脂肪酸を含む飽和脂肪酸フィードであって、3wt%より多くの不飽和遊離脂肪酸を含まず、nが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24である整数、例えば14~22のあいだの整数、例えば、14、16、18、20、22のうちの一つから選択される飽和脂肪酸フィード、および、一または複数の、飽和脂肪酸が枯渇したフィード、へと分離する工程、
c)前記飽和脂肪酸フィードを、2n-1である炭素数を有する飽和ケトンを主に含むケトン流を得るために2つの脂肪酸が反応されるケトン化反応条件へと付す工程
d)再生可能なベースオイルを含む脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流を得るために、ケトン流を水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと、同時にまたは順次付す工程、
e)任意には、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために、工程d)の生成物を蒸留する工程
を含み、
ここで、水素化による、または加水分解による前処理が工程a)~c)中で、または工程a)~c)の工程間で行われない方法を提供する。
【0011】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第一の形態において、遊離脂肪酸および脂肪酸エステルを含む分解した価値の低い生物学的オイルのフィードストックが、初めに、例えば飽和のC16遊離脂肪酸などの単一の炭素数のみを有する飽和遊離脂肪酸の少なくとも一部をフィードストックから分離すること、そしてその後、この飽和遊離脂肪酸を別個にケトン化反応中で処理し、続いて再生可能なベースオイル流を得るために水素化脱酸素化および水素化異性化反応させることによって、効率的な様式で再生可能なベースオイルおよび再生可能なディーゼルオイルへと処理され得ることを発見した。
【0012】
この価値の低い生物学的オイル、そこからの単一の炭素数である飽和遊離脂肪酸の分離というこの特定の組み合わせは、多くの優位点を提供する。一つの優位点は従来技術とは逆に、飽和遊離脂肪酸の前水素化または加水分解が必要でないことである。前水素化固定を省略することは、エネルギーおよび水素の両方を節約させる。ケトン流を得るためのケトン化工程と組み合わせた前水素化工程の省略は、ケトン化のあいだに脂肪酸の酸素含有量の75%が水素を消費することなくCO2およびH2Oとして除去され、そしてその結果、ケトン流を脱酸素化されたベースオイルへと変換するためにより少量の水素しか必要とされないため、合わせた水素量が減少されるという点で、有利である。
【0013】
追加で、飽和遊離脂肪酸を含む分離されたフィードのケトン化反応は、全体流のケトン化と比較して望ましくないオリゴマー化がより少ないため、ほぼ完全な(>90%、>95%、>99%、または99.5%以上でさえの)遊離脂肪酸のケトンへの変換を結果としてもたらす条件下で行われ得る。さらに、ケトンの水素化はより厳しくない条件しか必要としないために、このケトン流は、トリグリセリドまたは遊離脂肪酸も含むフィードと比較して、より温和な水素化脱酸素化条件下で対応するパラフィンへと変換され得る。例えば飽和のC16遊離脂肪酸などの単一の炭素数しかもたない飽和遊離脂肪酸フィードの再生可能なベースオイルへの処理は、より広い炭素数分布をもつベースオイルと比較して、価値の高いベースオイルであるほぼC31だけのベースオイルである再生可能なベースオイル生成物を提供する。したがって、方法は、背景技術で記載したようないくつかの従来技術よりも少ない量の水素しか使用しない、価値の低い生物学的オイルから価値の高いベースオイルを製造する効率的な方法を提供する。
【0014】
プロセスは、追加で、
f)ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流を得るために、一または複数の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードを、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと、同時にまたは順次付す工程、
g)任意には、蒸留されたディーゼル燃料を得るために、工程f)から得られる流を蒸留する工程
を含む、ディーゼル燃料を製造するためのものであってもよい。
【0015】
さらなる追加の利点として、脂肪酸が枯渇したフィードは、(始めの)フィードストックと比較してより少ない遊離脂肪酸しか含まず、したがって、全体のフィードストックの水素化と比較して、より少ない水素しか使用しないであろう。これは、ケトン化のあいだ、脂肪酸の酸素含有量の75%は、水素を消費することなくCO2およびH2Oとして除去され、そして結果としてより少ない水素がケトン流を変換するために必要とされるため、分離された遊離脂肪酸フィードのケトン化反応に起因してより少ない総計の水素消費を結果としてもたらす。したがって、フィードの分離は、本発明による分離なしでの炭化水素への変換と比較して、より少ない総計の水素消費量を結果としてもたらす。これはまた、完全なケトン化変換が達成され得る場合、すなわち過酷な反応条件を必要とする未変換の遊離脂肪酸がないかまたは非常に少量しかない場合、ケトン流のためのより温和な水素化脱酸素化条件を提供する。脂肪酸はまた、腐食性であり、およびHDOのあいだに副反応物を生成するかもしれない。したがって、前もっての分離が行われなかった同じフィードの水素処理と比較してより少ない遊離脂肪酸に暴露されているため、水素化脱酸素化触媒を含むリアクターにおけるより長時間の操業が達成され得る。
【0016】
フィードストックは、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセロール、またはそれらの混合物として、少なくとも10wt%の飽和脂肪酸の混合物、および、一または複数の化合物は、少なくとも10wt%の不飽和脂肪酸を含む。フィードストックは、例えば、20wt%以下の芳香族化合物、例えば20wt%以下、例えば10wt%以下、例えば5wt%以下、または1wt%以下の芳香族化合物を含み得る。
【0017】
飽和の脂肪酸フィードの飽和のCn遊離脂肪酸は、nが10、12、14、16である炭素数を持ち得、例えばそれはnが16であるパルミチン酸であってもよい。
【0018】
生物起源のフィードストックは、少なくとも30wt%の飽和脂肪酸の混合物を含んでいてもよい。少なくとも10wt%の不飽和脂肪酸を含む、生物起源のフィードストックの一または複数の化合物は、C18不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。フィードストックは、パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)であってもよい。
【0019】
生物起源のフィードストックの分離は、蒸留および/または冷却による結晶化を含んでいてもよい。
【0020】
分離は、少なくとも5つの理論段を有する蒸留カラム中での、100~300℃のあいだの温度、および0.5kPa~5kPaの蒸留圧力での蒸留を含み得る。分離は、少なくとも15個の理論段を有する蒸留カラム中での、150~285℃のあいだの温度、および0.9kPa~3.5kPaの蒸留圧力での蒸留を含んでいてもよい。
【0021】
ケトン化反応条件は、300~400℃の範囲である温度、5~30bargの範囲である圧力、0.25~3hr-1の範囲であるWHSV、ケトン化触媒の存在下を含み、ここで、ケトン化触媒は、金属酸化物触媒を含み、任意には条件は、0.1~1.5ガス/フィード比(w/w)であるガスの存在を含み、ここでガスは、CO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの一または複数から選択される。
【0022】
ケトン化触媒は、Ti、Mn、Mg、CaおよびZr含有の金属酸化物触媒のうちの一または複数からなるリストから選択される金属酸化物触媒であり得、好ましくは、ケトン化触媒は、Ti含有金属酸化物触媒である。例えば、ケトン化触媒は、任意には担体に担持されているTiO2であってもよい。例えば、80~160Åである平均の細孔径、および/または40~140m2/gであるBET面積、および/または0.1~0.3cm3/gである多孔度を有するアナターゼ型のTiO2。
【0023】
脱酸素化および異性化されたベースオイル流または蒸留された再生可能なベースオイルは、100ppm未満の酸素含有量、100℃で3~15cStである粘度、120より大きい、例えば120~170のあいだなどの粘度指数を有し得る。
【0024】
脱酸素化および異性化されたベースオイル流または蒸留された再生可能なベースオイルは、0℃未満の流動点を有し得る。
【0025】
飽和遊離脂肪酸が本質的にパルミチン酸からなる場合、効果なベースオイル成分が得られ得る。
【0026】
したがって、
60wt%より多いC31アルカン、
20wt%未満のC32以上のアルカン、
70wt%以上のイソ-アルカンを含むアルカン、
9wt%未満、好ましくは4.5wt%未満のシクロアルカン、
好ましくは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて測定される炭化水素の重量パーセント
を含むベースオイル成分が提供される。
【0027】
ベースオイル成分は、追加で
1wt%~10wt%のあいだのC20~C30アルカン、
好ましくは電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて測定される炭化水素の重量パーセント
を含んでいてもよい。
【0028】
本明細書中で記載される方法によって製造されるベースオイル成分は、さらに、
C29およびC30アルカンの総量のwt%は、C26およびC27アルカンの総量のwt%より小さい、および/または
C29およびC30シクロアルカンの総量のwt%は、C25、C26、C27、C28、C30シクロアルカンの総量のwt%よりも大きい、
という点において、フィンガープリントによって特徴付けられ得、
好ましくは、ここで、炭化水素の重量パーセントは電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて測定される。
【0029】
ベースオイル成分は追加で、
0.5wt%未満の芳香族炭化水素、
0.5wt%未満のジ-、トリ-、テトラ-またはより多置換のナフテン、
1wt%未満の酸素含有化合物、
ASTM D 3120を用いて測定された場合の、300ppm未満の硫黄含有量、
ASTM D 4629を用いて測定された場合の、100ppm未満の窒素含有量
を含んでいてもよく、
好ましくは、ここで、炭化水素の重量パーセントは電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて測定される。
【0030】
ベースオイル成分は追加で、一またはそれ以上の、以下の特性を有することによって特徴づけられ得る。
ASTM D 7500を用いて測定された場合の、350℃~650℃のあいだ、例えば380℃~650℃のあいだ、例えば420℃~650℃のあいだである沸点、
ASTM D 2270を用いて測定された場合の、140より大きい粘度指数(VI)、
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、
ASTM D 7346を用いて測定された場合の、-10℃未満の流動点
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1800cP未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-35℃)粘度、
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1300cP未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)。
【0031】
例えば、ベースオイル成分は、少なくとも以下の特性を有し得る。
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、および
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、再生可能なベースオイル、ディーゼルおよびナフサ生成物の概要図を示す。
【
図2】
図2は、例えば、サワーウォーターストリッパーおよびリサイクルガスループなどの形状などである、ベースオイルおよびディーゼル製造のための追加的な共有される支持ユニットを含む、再生可能なベースオイル製造、ならびに任意的なナフサおよび/またはディーゼル製造のための概略図である。
【
図3】
図3は、追加的なおよび任意的なサワーウォーターストリッパーおよびリサイクルガスループを含む、統合された再生可能なベースオイル、ディーゼルおよびナフサ製造の概略図である。
【
図4】
図4は、60wt%より多いC
31アルカンを有するC
31ベースオイルのサンプルの電解イオン化質量分析(FI-MS)分析を示す図である。C
31ベースオイル(図中、「異性化されたC
31生成物」で示されている)は、飽和のC
31イソ-パラフィン材料を
図1のC
31ベースオイルとして得るための、RFADの蒸留および続いての水素化脱酸素化(「水素化脱酸素化C
31生成物」)および水素化異性化反応(「異性化されたC
31生成物」)から得られるパルミチン酸の液相触媒ケトン化によって得られた。
【
図5】
図5は、本発明のC
31ベースオイルのFI-MS分析を示す図であり、ここで、パラフィンおよびモノ-ナフテンのwt%は、4~72である炭素数の関数として示されている。図より、C
31ベースオイルは60wt%はより多い、例えば80wt%より多いC
31アルカン(パラフィン)を有しており、および、モノ-ナフテンの量は少ない。
【
図6】
図6は、Neste Oyjからの典型的なAPIグループIIIオイル(「NEXBASE group III」、本発明のC
31再生可能なベースオイル(RBO)(「NEXBASE RBO」)、典型的なポリ-アルファオレフィンオイル(「PAO typical」)、典型的なガス-液ベースオイル(「GTL」)、および水素化分解装置の底油の水素-異性化からの典型的なAPIグループIII+タイプのパラフィン系ベースオイル(「Yubase+」)を含む、多数の低粘度ベースオイルの-30℃におけるコールドクランキングシミュレータ粘度(CCS-30℃)の関数としてのノアク揮発度に対する混合性能を示す図である。低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方が、低粘度ベースオイルにおいて望ましい。しかしながら、
図6中のダイアグラムが示すように、これらの2つの特性のあいだには、典型的には、トレードオフがあり、すなわち、低いノアク揮発度は典型的には高いCCS-30℃粘度をもたらし、そして、反対に、低いCCS-30℃粘度は典型的には高いノアク揮発度をもたらす。本発明のC
31RBOを他の典型的な低粘度ベースオイルと比較すると、同じノアク揮発度において、本発明のC
31RBOと比較して他のベースオイルははるかに高いCCS-30℃粘度をもっており、そして、同じCCS-30℃粘度では、本発明のC
31RBOは他のベースオイルと比較してはるかに低いノアク揮発度を有していることがわかる。
図6から、本発明のC
31RBOが、他の低粘度ベースオイルと比較してはるかにより低いノアク揮発度の範囲(5~9wt%のあいだ)およびCCS-30℃粘度(900~1200 mPas)を有していることが明らかにわかり、したがってより明確に規定された生成物であると考えられ得る。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施態様を記載するにあたり、明確性を目的として特定の用語が使用されるであろう。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されるわけではなく、そして、それぞれの特定の用語は、類似の目的を達成するために類似の様式で操作される全ての技術的な等価物を含むものと理解される。
【0034】
本発明の目的は、一定の量の遊離脂肪酸を含む再生可能なオイルのより効率的な処理方法、特には、これらに限定される訳ではないが、より低い水素消費および/または向上された触媒寿命を有する処理方法を提供することである。
【0035】
本発明は、上述の従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、一定の量の遊離脂肪酸を含む再生可能なオイルのより効率的な処理方法、特には、これらに限定される訳ではないが、より低い水素消費および/または向上された触媒寿命を有する処理方法を提供することである。
【0036】
本課題を解決するために、本発明は、生物起源のフィードストックからの再生可能なベースオイルを製造するための方法であって、
a)少なくとも5%の飽和の遊離脂肪酸の混合物、ならびに不飽和の遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、および脂肪酸アルコール、および例えば脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなどの脂肪酸グリセロールからなるリストから選択される一または複数の化合物である多くても残余物、を含むフィードストックを提供する工程、
b)フィードストックを、少なくとも以下:少なくとも90wt%の飽和のCn遊離脂肪酸を含む飽和脂肪酸フィードであって、3wt%より多くの不飽和遊離脂肪酸を含まず、nが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24である整数、例えば14~22のあいだの整数、例えば、14、16、18、20、22のうちの一つから選択され飽和脂肪酸フィード、ならびに、一または複数の、飽和脂肪酸が枯渇したフィード、へと分離する工程、
c)前記飽和脂肪酸フィードを、2n-1である炭素数を有する飽和ケトンを主に含むケトン流を得るために2つの脂肪酸が反応されるケトン化反応条件へと付す工程
d)再生可能なベースオイルを含む脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流を得るために、ケトン流を水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと、同時にまたは順次付す工程、
e)任意には、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために、工程d)の生成物を蒸留する工程
を含み、
ここで、水素化による、または加水分解による前処理が工程a)~c)中で、または工程a)~c)の工程間で行われない方法を提供する。
【0037】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第一の形態において、遊離脂肪酸および脂肪酸エステルを含む分解した価値の低い生物学的オイルのフィードストックが、初めに、例えば飽和のC16遊離脂肪酸などの単一の炭素数のみを有する飽和遊離脂肪酸の少なくとも一部をフィードストックから分離すること、そしてその後、この飽和遊離脂肪酸を別個にケトン化反応中で処理し、続いて再生可能なベースオイル流を得るために水素化脱酸素化および水素化異性化反応させることによって、効率的な様式で再生可能なベースオイルおよび再生可能なディーゼルオイルへと処理され得ることを発見した。
【0038】
この価値の低い生物学的オイル、そこからの単一の炭素数である飽和遊離脂肪酸の分離というこの特定の組み合わせは、多くの優位点を提供する。一つの優位点は従来技術とは逆に、飽和遊離脂肪酸の前水素化または加水分解が必要でないことである。前水素化固定を省略することは、エネルギーおよび水素の両方を節約させる。ケトン流を得るためのケトン化工程と組み合わせた前水素化工程の省略は、ケトン化のあいだに脂肪酸の酸素含有量の75%が水素を消費することなくCO2およびH2Oとして除去され、そしてその結果、ケトン流を脱酸素化されたベースオイルへと変換するためにより少量の水素しか必要とされないため、合わせた水素量が減少されるという点で、有利である。
【0039】
追加で、飽和遊離脂肪酸を含む分離されたフィードのケトン化反応は、全体流のケトン化と比較して望ましくないオリゴマー化がより少ないため、ほぼ完全な(>90%、>95%、>99%、または99.5%以上でさえの)遊離脂肪酸のケトンへの変換を結果としてもたらす条件下で行われ得る。さらに、ケトンの水素化はより厳しくない条件しか必要としないために、このケトン流は、トリグリセリドまたは遊離脂肪酸も含むフィードと比較して、より温和な水素化脱酸素化条件下で対応するパラフィンへと変換され得る。例えば飽和のC16遊離脂肪酸などの単一の炭素数しかもたない飽和遊離脂肪酸フィードの再生可能なベースオイルへの処理は、より広い炭素数分布をもつベースオイルと比較して、価値の高いベースオイルであるほぼC31だけのベースオイルである再生可能なベースオイル生成物を提供する。したがって、方法は、背景技術で記載したようないくつかの従来技術よりも少ない量の水素しか使用しない、価値の低い生物学的オイルから価値の高いベースオイルを製造する効率的な方法を提供する。
【0040】
プロセスは、追加で、
f)ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流を得るために、一または複数の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードを、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと、同時にまたは順次付す工程、
g)任意には、蒸留されたディーゼル燃料を得るために、工程f)から得られる流を蒸留する工程
を含む、ディーゼル燃料を製造するためのものであってもよい。
【0041】
さらなる追加の利点として、脂肪酸が枯渇したフィードは、(始めの)フィードストックと比較してより少ない遊離脂肪酸しか含まず、したがって、全体のフィードストックの水素化と比較して、より少ない水素しか使用しないであろう。これは、ケトン化のあいだ、脂肪酸の酸素含有量の75%は、水素を消費することなくCO2およびH2Oとして除去され、そして結果としてより少ない水素がケトン流を変換するために必要とされるため、分離された遊離脂肪酸フィードのケトン化反応に起因してより少ない総計の水素消費を結果としてもたらす。したがって、フィードの分離は、本発明による分離なしでの炭化水素への変換と比較して、より少ない総計の水素消費量を結果としてもたらす。これはまた、完全なケトン化変換が達成され得る場合、すなわち過酷な反応条件を必要とする未変換の遊離脂肪酸がないかまたは非常に少量しかない場合、ケトン流のためのより温和な水素化脱酸素化条件を提供する。脂肪酸はまた、腐食性であり、およびHDOのあいだに副反応物を生成するかもしれない。したがって、前もっての分離が行われなかった同じフィードの水素処理と比較してより少ない遊離脂肪酸に暴露されているため、水素化脱酸素化触媒を含むリアクターにおけるより長時間の操業が達成され得る。
【0042】
本発明の、生物起源のフィードストックから再生可能なベースオイルを製造するための方法、および、追加でディーゼル燃料を生成するための方法が、以下により詳細に記載されるであろう。
【0043】
本発明のよる再生可能なベースオイルは、脂肪酸のケトン化から得られることにより高度にパラフィン化されているものであり得る。したがって、再生可能なベースオイルは、非常に少量の芳香族化合物または酸素化物のみを含み得る。ベースオイルであるので、それは、例えば380℃より高い温度などのベースオイル沸点範囲内で沸騰する。
【0044】
再生可能なディーゼル燃料(または再生可能なディーゼル燃料成分)は、生物学的オイルであるモノアルキル脂肪酸エステルである例えば酸素含有バイオディーゼルなどとは異なり、炭化水素ディーゼル製品である。ディーゼル燃料であるため、例えば180℃と350℃とのあいだなどの、例えば、180℃と350℃とのあいだなどの、ディーゼル沸点範囲内で沸騰する。例として、例えばEN15940によるディーゼル燃料、または例えばEN590によるディーゼル燃料のためのディーゼル燃料成分。
【0045】
再生可能なベースオイル、ディーゼルまたはナフサに共通して、それらは、高度にパラフィン化されているものであり得、したがって、それらにおける芳香族化合物および/または酸素化物の含有量は非常に低く、例えば0.5vol%未満である。
【0046】
再生可能な成分含有量は、原料から決定され得るとともに、生成物においてもASTM D6866に記載されているような14C、13C、および/または12Cを含む同位体分布によって決定され得る。
【0047】
フィードストック
フィードストックが提供される。フィードストックは、主要部分として、遊離脂肪酸および例えば脂肪酸グリセロールなどの脂肪酸エステルの混合物を含む。これはケトン化反応が遊離脂肪酸を必要とするためであり、および、分解したまたは価値の低い生物学的オイルは典型的には遊離脂肪酸および例えばトリグリセリドまたは部分的なグリセリドなどの脂肪酸グリセロールの混合物であるためである。遊離脂肪酸および脂肪酸エステルの主要部分は、50wt%より多い、例えば、70wt%より多い、90wt%より多いと考えられ得る。
【0048】
分解された生物学的オイルにおいては、高価な食用オイルとして使用され得るトリグリセリドの一部は、遊離脂肪酸および例えばモノ-およびジ-グリセリドなどの部分的なグリセリドへと分解されている。価値の低い生物学的オイルはしたがって、グリセリド含有量(モノ-、ジ-、およびトリ-グリセリドの量を合わせた量)と比較してより多い量の遊離脂肪酸を有する。例えば、粗パーム油の精製においては、パーム油ストリッパーが粗パーム油を価値の高い食用パーム油と価値の低いパーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)とに分離するために使用され得る。価値の低いPFADは、ヒトの食用には適さず、本発明による方法において優位に使用され得る。
【0049】
したがって、フィードストックは、パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)であってもよく、これは、主要部分として、遊離脂肪酸を含む。PFADは、遊離脂肪酸および例えば部分的なグリセリドなどの脂肪酸エステルを含む価値の低い生物学的オイルの一つの例である。このような分解した脂肪は、食品製造には適しておらず、そして、パーム油精製プロセスのあいだに、パーム油が食品産業の品質基準に合う前に、除去される必要がある。PFADの脂肪酸成分は、供給源によって異なる。典型的には、例えばパーム油などの主要部分としてトリグリセリドを含む食用オイル中において分解した遊離脂肪酸含有量を低く保つことが望ましい。PFADは、食品製造に不適である副産物である。それは、トリグリセリドよりも高い含有量である遊離脂肪酸を含み(なぜならば、パーム油トリグリセリドは食用パーム油として使用されるためである)、例えば脂肪酸エステル含有量と比較してより多くの量の遊離脂肪酸を含む。
【0050】
パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)は、粗パーム油を精製することからの副産物である。それは、室温で、薄茶色の半固体状であり、加熱により茶色の液体へと融解する。PFADの成分は様々であるが、PFADの最少の遊離脂肪酸(FFA)含有量は、60wt%であり得る。PFADのプロバイダーが満たすように求められる契約上の仕様書は、しばしば、70wt%以上のFFAを明示しており、これは、FFA含有量がしばしば80wt%以上であることを意味している。FFA含有量は、65~95wt%のあいだの範囲、例えば80~90のあいだであり得る。
【0051】
PFADはまた、脂肪酸の、モノ-グリセリド、ジ-グリセリドおよびトリ-グリセリドから選択される脂肪酸グリセロールを含む。例えば、脂肪酸グリセロールの含有量は、2wt%より多く、または20wt%より低く、例えば2~15wt%の範囲などであり得る。
【0052】
PFADの残余の成分は、例えばトコフェノール、トコトリエノール、ステロール、スクアラン、および揮発性物質などのけん化不能な物質であり得る。例えば、けん化不能な物質の含有量は、0.5wt%より多く、また、3wt%より少なく、例えば、0.5~2.5wt%の範囲などであり得る。
【0053】
PFADは、追加で、痕跡量の金属、例えば、Cr、Ni、Cu、Feなどを含んでいてもよい。
【0054】
Bonnie Tay Yen PingおよびMohtar Yusofは、2009年に、「Characteristics and Properties of Fatty Acid Distillates form Palm Oil」をOil Palm Buletin 59巻、5~11頁に発表しており、ここで、PFADの成分に関するアップデートされた情報を適用しており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
本発明の生物起源のフィードストックの一例がPFADである一方、例えば、遊離脂肪酸を含む他の植物オイルまたは動物性脂肪、植物オイルまたは動物性脂肪の様々なグレードおよび精製工程からの生成物、廃棄食用油、トール油精製工程からの様々なグレードおよび生成物、粗トール油(CTO)、トール油、トール油ヘッド、トール油脂肪酸(TOFA)、黄色油脂、鶏油、魚油、または例えば油脂化学製品製造の酸性油分副生成物などの他の多くの良好に適した生物起源のフィードストックが存在している。
【0056】
生物起源のフィードストックはさらに、生物起源のいくつもの種々のフィードストックの混合物であってもよい。例えば、脂肪酸エステルと比べてより少しの遊離脂肪酸しか含まない一またはそれ以上の種類の植物オイルまたは動物性脂肪と混合された、脂肪酸エステルと比べてより多くの遊離脂肪酸を含む一またはそれ以上の種類の植物オイルまたは動物性脂肪。
【0057】
フィードストックが、主要部分として、遊離脂肪酸と例えば脂肪酸グリセロールなどの脂肪酸エステルとの混合物を含んでいてもよく、FFAおよび脂肪酸エステルの量は、顕著に変わっていてもよく、これは、多く種々の種類の脂肪酸含油量、および脂肪酸エステルフィードストックおよび上記の混合物からも明らかである。
【0058】
実際上の目的として、フィードストックは、少なくとも2wt%の、例えば少なくとも5wt%の、遊離脂肪酸を含む。例えば、例えば蒸留などのいくつかの分離方法は、遊離脂肪酸の混合物が少なくとも5wt%、例えば少なくとも7wt%、または10wt%である場合により効率的である。脂肪酸含有量は、98wt%未満、例えば95wt%未満、または90wt%未満などであり得る。
【0059】
実際上の目的として、フィードストックは、少なくとも2wt%の、例えば少なくとも5wt%の、脂肪酸エステルを含む。例えば、例えば蒸留などのいくつかの分離方法は、脂肪酸エステルの含有量が少なくとも5wt%、例えば少なくとも7wt%、または10wt%である場合により効率的である。脂肪酸エステル含有量は、98wt%未満、例えば95wt%未満、または90wt%未満などであり得る。
【0060】
例えば、遊離脂肪酸の混合物は、遊離脂肪酸の混合物の2~95wt%、例えば5~95wt%、例えば5~90wt%であり得る。いくつかのフィードストックにおいて、遊離脂肪酸の含有量は、比較的高く、例えば50wt%より多く、または70wt%より多い。
【0061】
例えば、脂肪酸のモノ-グリセリド、ジ-グリセリド、およびトリ-グリセリドから選択される脂肪酸グリセロールの混合物は、遊離脂肪酸混合物の5~98wt%、例えば5~95wt%、例えば5~90wt%であり得る。いくつかのフィードストックにおいて、遊離脂肪酸含量は、比較的高く、例えば、50wt%より多く、または70wt%より多い。
【0062】
フィードストックは、例えば、5~90wt%の遊離脂肪酸、5~90wt%の脂肪酸グリセロール、および0~20wt%の、非グリセロールタイプの脂肪酸エステル、脂肪アミド、および脂肪アルコールからなるリストから選択される一またはそれ以上の化合物を含んでいてもよく、ここで、フィードストックは、50wt%より多くの、例えば70wt%以上、例えば80wt%以上の、遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールを含む。
【0063】
フィードストックはまた、少なくとも5%の飽和の遊離脂肪酸の混合物、ならびに、不飽和の遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸アルコール、および例えば脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなどの脂肪酸グリセロールからなるリストから選択される一または複数の化合物である、例えば95wt%などである多くても残りの残余物を含み得る。生物起源のフィードストック中の脂肪酸が、飽和脂肪酸であることであることが有利であり、例として、例えば生物起源のフィードストックは、少なくとも30wt%の飽和脂肪酸の混合物、例えば例としてはパーム油のいくつかの留分など、を含み得る。
【0064】
フィードストックはまた、例えば少なくとも10wt%の飽和脂肪酸の混合物、および、一または複数の化合物は、少なくとも10wt%の、遊離脂肪酸としての不飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセロールまたはそれらの混合物を含む。飽和のおよび不飽和の脂肪酸の両方が生物起源のフィードストック中に存在する場合、フィードストックは存在する二重結合を飽和するためのいかなる完全な前水素化反応にも付されない。
【0065】
少なくとも10wt%の、生物起源のフィードストックの不飽和脂肪酸を含む一または複数の化合物は、例えば例としてはパーム油のいくつかの留分などであるC18不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。
【0066】
フィードストックの脂肪酸含有量を増加させ、それによって、該方法の工程a)に先立ってプロセス中でより多くの再生可能なベースオイルを提供させることは可能であり、脂肪酸エステルを含む最初のフィードストックは少なくとも加水分解工程において前処理されてもよくこれによって脂肪酸エステルに対する遊離脂肪酸の比率が最初のフィードストックと比較して増大されているフィードストックが製造され得る。
【0067】
用語脂肪酸は、当該技術分野における当業者にとって公知であり、そして、炭化水素鎖および末端のカルボキシ基からなるカルボン酸、とりわけ脂肪およびオイル中のエステルとして生成される任意のカルボン酸として特徴付けるために使用されてきた。
【0068】
脂肪酸は、飽和されていても、および不飽和であってもよい。ケトン化反応において二量体生成物を製造することが望まれる場合、脂肪酸が飽和脂肪酸であるか、減少された不飽和の量をもつことが有利であるが、これは、タール質の生成物をもたらし得る二重結合オリゴマー化が避けられるまたは減少されるためである。飽和の遊離脂肪酸フィードは、少なくとも90wt%の飽和の遊離脂肪酸を含み、フィード中のこれらの飽和遊離脂肪酸は、単一の炭素数しか有さず、すなわち、飽和脂肪酸フィードは、少なくとも90wt%の飽和のCn遊離脂肪酸を含む飽和脂肪酸フィード(ここで、nは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24である整数)を含む。例えば、飽和脂肪酸フィードは、少なくとも90wt%の飽和の、例えばnが16であるC16遊離脂肪酸、例えば90wt%のパルミチン酸、または、nが18である場合少なくとも90wt%のC18飽和遊離脂肪酸、例えば90wt%のステアリン酸を含み得る。好ましくは、nは14~22のあいだの整数、例えば14、16、18、20、22、であり、好ましくは、nは14または16である。例えば、それはnが16であるパルミチン酸であってもよい。
【0069】
上述のように、飽和脂肪酸フィードが少なくとも90wt%の、例えば95wt%以上、98wt%以上、例えば99wt%以上などの飽和遊離脂肪酸を含むことが優位である。PFADの98.66wt%および99.72wt%の飽和遊離脂肪酸(パルミチン酸)への分離を示している実施例1が参照される。
【0070】
飽和の脂肪酸は、フィードストックが遊離脂肪酸フィードと一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードとに分離させる前のフィードストックの二重結合水素化反応、または、分離後の遊離脂肪酸フィードの二重結合水素化のどちらかからも得られ得るであろう。これは、水素を使用するという不利益点を有する前水素化工程を必要とするであろう。例えば、前水素化工程は、水素化触媒、例えば以下の「ケトン流の水素化脱酸素化」の題のもとに記載されている、例えばアルミナ担体に担持されているNiMo触媒などを利用し得るが、好ましくは、二重結合水素化は、二重結合水素化において効率的である傾向のある、担持された貴金属、例えば、シリカまたは炭素担体に担持されたPdまたはPtなどを用いて行われる。前水素化は、水素化脱酸素化反応を避けるために、300℃未満の温度で、例えば280℃未満、または260℃未満の温度で行われ得る。前水素化はまた、二重結合の十分な水素化を確実なものとするために十分な高温であるために、90℃より高い温度、例えば110℃より高い、または120℃より高い温度である。例えば、前水素化の温度は、90~300℃、例えば110~280℃、例えば120~260℃などであり得る。圧力は、10~70barg、例えば20~60barg、例えば30~50bargなどであり得る。WHSVは、0.5~3.0h-1、例えば1.0~2.5h-1、例えば1.0~2.0h-1などであり得る。H2/オイル比は、100~500nl/l、例えば150~450nl/l、例えば200~400nl/lなどであり得る。したがって、前水素化は、好ましくは、90~300℃、10~70barg、0.5~3.0h-1のWHSV、および100~500nl/lのH2/オイル比、より好ましくは、110~280℃、20~60barg、1.0~2.5h-1のWHSV、および150~450nl/lのH2/オイル比、さらにより好ましくは、120~260℃、30~50barg、1.2~2.0h-1のWHSV、および200~400nl/lのH2/オイル比で行われ得る。
【0071】
飽和脂肪酸はまた、優位には、フィードストック自身の中にも存在しており、分離は、飽和している遊離脂肪酸の部分をさらに増大させ得る。例えば、PFADは典型的には、約30~40wt%のC16飽和脂肪酸を、約50wt%のC18飽和のおよび不飽和の脂肪酸、ならびに5wt%未満のC14以下の脂肪酸と共に含む。これは、多くの量のC16飽和脂肪酸が残余のフィードストックから分離され得、それによって、より多くの量の遊離脂肪酸、特には、ケトン化反応において二量体生成物を製造することを望んでいる場合に有利であるより多くの量の飽和の遊離脂肪酸を含む遊離脂肪酸フィードを得ることができるため、PFADまたはPFADを含む混合物を有利なフィードストックにしている。
【0072】
フィードストックの分離
方法はフィードストックを少なくとも、フィードストックよりも高い濃度の遊離脂肪酸を含む飽和脂肪酸フィードに分離するための工程b)を含む。
【0073】
分離工程は、例えば、蒸留であってもよいが、他の方法、例えば冷却による結晶化、または、蒸留よび結晶化の組み合わせなども使用され得る。蒸留は、蒸留物がより少量の金属混入物しか含まないという点で優位である。
【0074】
分離は、例えば、例えば、100℃~300℃のあいだの温度における、および、0.5kPa~5kPaの蒸留圧力での蒸留であってもよい。例えば、分離は、少なくとも15個の理論段を有する蒸留カラム中での、150~285℃のあいだの温度、および0.9kPa~3.5kPaの蒸留圧力での蒸留を含んでいてもよい。このような条件は、パルミチン酸とC18遊離脂肪酸とのあいだの分離を提供し得る。
【0075】
飽和遊離脂肪酸フィードの飽和遊離脂肪酸は、C10~C24脂肪酸、好ましくはC14~C22、例えば一または複数の、C14、C16、C18、C20およびC22脂肪酸、例えばC16飽和遊離脂肪酸であり得る。
【0076】
一またはそれ以上の、飽和脂肪酸が枯渇されたフィードは、生物起源のフィードストックと比較して、より高い濃度の、不飽和遊離脂肪酸、脂肪酸のモノ-グリセリド、ジ-グリセリド、トリ-グリセリを含む。
【0077】
一またはそれ以上の、脂肪酸が枯渇されたフィードは、遊離脂肪酸ビードよりも高い沸点、および/または、より大きな平均分子量を有し得る。例えば、より高い沸点は、遊離脂肪酸フィードと比較して、より高い最終沸点であり得、より大きな平均分子量は、重量平均として測定され得る。沸点は、例えば、ASTM D 2887にしたがい、SimDist GC 沸点プロットを用いて測定され得る。
【0078】
フィードストックは通常、C16およびC18の脂肪酸の両方を含み、これらは、例えば蒸留で分離され得る。遊離脂肪酸フィードの主な部分は、C16脂肪酸であり得る。
【0079】
ケトン化
フィードストックから分離された飽和脂肪酸フィードは、工程c)においてケトン化反応条件に付され、ここで、2つの脂肪酸が、主な部分としてケトンを含むケトン流を生成するために反応される。具体的には、飽和脂肪酸フィードが少なくとも90wt%の飽和のCn遊離脂肪酸を含む場合、結果として得られるケトン流は、2n-1である炭素数を有する飽和ケトンを主に含み、すなわち、飽和脂肪酸フィードが少なくとも90wt%の飽和のCn遊離脂肪酸であってnが16であるならば、飽和のケトンフィードは主に飽和のC31ケトンを主に含むであろう。
【0080】
ケトン化反応は、水および二酸化炭素の両方を生成し、これらは、油分の留分から分離され得、例えば、水は傾斜法によって分離され得、および、二酸化炭素よび他のガス状の成分はフラッシュドラム中で分離され得る。
【0081】
ケトン化反応条件は、以下の:
300~400℃の範囲の温度、5~30bargの範囲の圧力、0.25~3.0h-1の範囲のWHSV
のうちの一またはそれ以上を含み得る。
【0082】
例えば、ケトン化反応条件は、300~400℃の範囲の温度、5~30bargの範囲の圧力、0.25~3.0h-1の範囲のWHSVを含んでいてもよい。好ましくは、ケトン化反応条件は、330~370℃の範囲の温度、10~25bargの範囲の圧力、0.5~2h-1の範囲のWHSVを含んでいてもよい。より好ましくは、ケトン化反応条件は、340~360℃の範囲の温度、15~25bargの範囲の圧力、1.0~1.5h-1の範囲のWHSVを含み得る。
【0083】
ケトン化反応は、通常、ケトン化触媒の存在下で行われ、ここで、ケトン化触媒は、金属酸化物触媒を含む。例えば、ケトン化触媒は、Ti、Mn、Mg、CaおよびZr含有の金属酸化物触媒のうちの一または複数からなるリストから選択される金属酸化物触媒であり得る。例えば、ケトン化触媒は、TiO2、例えば、80~160Åである平均の細孔径、および/または40~140m2/gであるBET面積、および/または0.1~0.3cm3/gである多孔度を有するアナターゼ型のTiO2であってもよい。
【0084】
ケトン化反応は、ガスによって加圧されていてもよい。例えば、ケトン化は、0.1~1.5ガス/フィード比(w/w)の範囲でガスの存在下で行われ得、ここで、ガスとしては、以下の:CO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの一またはそれ以上から選択される。加圧に使用されるガスは、それがケトン化反応の副生成物として製造され、および加圧のためのガスとしてリサイクルされ得るため、CO2であることが優位であり得る。
【0085】
ケトン化反応条件は、例えば液相ケトン化を確実にするように、または、少なくともケトン化工程へのフィードの導入が液体形状であることを確実にするように、選択され得る。液相でのケトン化を確実なものとすることで、触媒、圧力および温度の組み合わせの適切な選択により、反応は、ガス相ケトン化と比較して、より望ましくない副生成物をより少なくもたらす。
【0086】
ケトン流は、飽和遊離脂肪酸フィードの二量体を含む。例えば、飽和遊離脂肪酸フィードが、パルミチン酸(C16:0脂肪酸)のみであれば、ケトン流は、C31ケトンを生成するであろう。もし例えば脂肪酸フィードがC16およびC18脂肪酸の混合物であったならば、ケトン流は、C31、C33、およびC35ケトンの混合物を生成するであろう。ガス相ケトン化は通常、脂肪酸の高い沸点に起因して、脂肪酸を固体/液体形状からガス相へと移動させるために高いガスリサイクルを必要とする。これは、ガス相ケトン化のためのリアクターシステムがより大きくおよびより複雑であらねばならないことを意味しており、これは投資コストを顕著に増加させるであろう。
【0087】
上述されるように、遊離脂肪酸流は、飽和の遊離脂肪酸フィードであってもよい。これは望ましくないオリゴマー化された生成物の量を減少させる。遊離脂肪酸が不飽和の遊離脂肪酸を含んでいる場合、これらの遊離脂肪酸は、水素化によって飽和され得る。このような前水素化工程は、通常、温和な条件下で、水素化触媒の存在下、50~400℃のあいだの温度で、0.1~20MPaの範囲の水素圧下で、好ましくは、150~300℃のあいだの温度で、1~10MPaの範囲の水素圧下で、行われる。前水素化触媒は、元素周期表のグループVIIIおよび/またはVIAの金属を含む。前水素化触媒は、好ましくは、担持されたPd、Pt、Rh、Ru、Ni、Cu、CuCr、NiMoまたはCoMo触媒であり、担体は活性炭素、アルミナおよび/またはシリカである。
【0088】
しかしながら、遊離脂肪酸の前水素化が行われないことが望ましい。とりわけ、PFAD中のパルミチン酸(飽和脂肪酸)は蒸留によって分離され得、したがって、何らの水素化も必要とすることなく、パルミチン酸である飽和の遊離脂肪酸フィードをもたらす。
【0089】
したがって、本発明の好ましい変形において、水素化によるまたは加水分解による前処理は、工程a)~c)中または工程a)~c)のそれぞれのあいだに行われない。
【0090】
遊離脂肪酸フィードのケトン化反応は、全体流のケトン化と比較して望ましくないオリゴマー化反応がより少なくしか起こらないため、遊離脂肪酸のケトンへのほぼ完全な変換(>90%、>95%、>99%、または99.5%以上もの)をもたらす条件下で行われ得る。このことは、明確な優位性を下流にもたらし、それは、ケトン流の水素化脱酸素化は、例えば遊離脂肪酸および脂肪酸グリセロールの両方を含み得る遊離脂肪酸が枯渇されたフィードなどと比較して、ケトンフィードの完全な脱酸素化を確実なものとするためにそれほど厳しくない水素化脱酸素化反応条件を必要とすることである。それほど厳しくない要件、例えば水素化脱酸素化工程におけるより低い反応温度は、より少ないエネルギーの使用および例えばコーキングなどの望ましくない副反応の減少、および、より長い触媒寿命をもたらす。
【0091】
ケトン流の水素化脱酸素化
ケトン化反応から得られるケトン流は、水をオイルから傾斜させることによって、および、および例えばフラッシュドラム中などで液体生成物からガス状生成物を分離することによって、単離され得る。ケトン流は、その後、工程d)において水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方へと付される。
【0092】
水素化脱酸素化および水素化異性化反応条件は、同時にまたは順番でのどちらで行われてもよい。生成物は、再生可能なベースオイルを含む脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流である。
【0093】
水素化脱酸素化反応は、例えば、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoなどの水素化脱酸素化触媒の存在下で行われ得る。水素化脱酸素化触媒は、当該技術分野における典型的な水素化脱酸素化触媒であってよく、例えば、それは、担体上に担持された水素添加金属、例えば、Pd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される触媒などを含む。水素化脱酸素化工程は、ベースオイル生成物を提供するための水素化脱酸素化条件下で行われる。水素化脱酸素化工程は例えば、250~400℃の温度、および20~80bargの圧力で行われ得る。水素化処理工程は、例えば、250~400℃の温度、および20~80bargの圧力、0.5~3h-1のWHSV、および350~900nl/lのH2/オイル比で行われ得る。
【0094】
上述されるように、水素化脱酸素化反応条件は、以下の:250~400℃の範囲の温度、20~80bargの範囲の圧力、0.5~3h-1の範囲のWHSV、および350~900nl H2/lフィードのH2フロー、を含み得る。触媒は、アルミナ担体に担持されたNiMoであり得る。
【0095】
好ましくは、水素化脱酸素化条件は、280~350℃の範囲である温度;30~60bargの範囲である圧力;1.0~2.5h-1の範囲であるWHSV;および350~750nl H2/lフィードのH2フロー含み得る。触媒は、アルミナ担体に担持されたNiMoであり得る。
【0096】
さらに好ましくは、水素化脱酸素化条件は、300~330℃の範囲である温度;40~50bargの範囲である圧力;1.0~2.0h-1の範囲であるWHSV;および350~500nl H2/lフィードのH2フローを含み得る。触媒は、アルミナ担体に担持されたNiMoであり得る。
【0097】
さらにプロセスにおいて、ケトン流は、炭化水素流を用いて希釈されてもよい。希釈は、30wt%の炭化水素および70wt%のケトン流、例えば、30~85wt%の炭化水素および15~70wt%のケトン流などであってもよい。希釈に用いられる炭化水素流は、部分的にまたは全て生成物リサイクルであってもよい。
【0098】
生成物リサイクルは、リサイクルされる前に分画に付されていてもよく、例えば、リサイクルされる留分は380℃より高い温度で沸騰する留分、本明細書中に記載されるベースオイル混合物の任意の他の留分であり得る。
【0099】
上述されるように、水素化脱酸素化触媒は、例えば、典型的には例えばAl2O3などの担体上に担持されている、モリブデンまたはウォルフラム触媒であり得る。触媒は、活性化されていても、されていなくてもよい。典型的な活性化剤は、Niおよび/またはCoである。活性化された水素化脱酸素化触媒は、例えば、NiMo、CoMo、NiW、CoW、NiCoMoなどである。例えばNiWなどのウォルフラムベースの触媒またはPdもしくはPt触媒が使用される場合、それは異性化反応もまた触媒でき、したがって、同時の水素化脱酸素化および水素化異性化反応が可能であるという点においてさらに有利である。したがって、水素化脱酸素化および異性化触媒は、同じであってもよく、例えば、NiW,または例えば担体上に担持されている活性化されたMo触媒、例えばアルミナに担持されたNiMoなど、との混合物中のPt/SAPOなどのPt触媒などであってもよい。
【0100】
水素化脱酸素化は、固定相リアクタ-内の触媒床である、水素化脱酸素化ゾーン中で、水素ガスの存在下で行われる。
【0101】
工程d)の水素化脱酸素化および水素化異性化が順番に行われる場合、水素化脱酸素化と水素化異性化とのあいだにストリッピング工程が存在していてもよく、ここで、ガスが液体から分離される。これは、例えば300~330℃のあいだである温度および40~50bargのあいだである圧力などの、高温および高圧の分離公知絵において起こる。
【0102】
ケトン流の水素化異性化
水素化脱酸素化工程の生成物は、水素および異性化触媒の存在下で異性化工程へと付される。水素化工程および異性化工程の両方が、同じリアクターで、および同じ反応床ででも行われ得る。異性化触媒は、Pt含有の市販の触媒などの貴金属二元機能触媒、例えば、Pt-SAPOまたはPt-ZSM-触媒など、または、例えば非貴金属触媒例えばNiWなどであり得る。水素化脱酸素化および水素化異性化工程は、水素化処理および異性化段階の両方において例えばNiW触媒などを用いて同じ触媒床中で行われてもよい。NiW触媒は、追加で、ディーゼルおよびナフサ生成物へさらなる水素化分解をもたらし得、そして、もしこのような生成物もまた再生可能なベースオイル生成物とともに望ましいものである場合に有意な触媒であり得る。異性化段階は、例えば、250~400℃の温度および10~60bargの圧力で行われ得る。本明細書で記載されているように、再生可能なベースオイル生成物の分解を避けるまたはその量を減らすために、異性化反応の苛酷さを減少させることが望ましい。異性化段階は、例えば、250~400℃の温度、10~60bargのあいだの圧力、0.5~3h-1のWHSV、および100~800nl/lのH2/オイル比で行われ得る。
【0103】
水素化酸素化および水素化異性化反応は、順番に行われてもよい。順序は、典型的には、水素化脱酸素化、それに続いて水素化異性化であるが、この順序はまた反対とされてもよい。
【0104】
異性化反応条件は、以下のうちの一またはそれ以上を含んでいてもよい。250~400℃の範囲の温度、10~60bargの範囲の圧力、0.5~3h-1の範囲のWHSV、100~800nl H2/lフィードのH2フロー。
【0105】
好ましくは、異性化反応条件は、280~370℃の範囲の温度、20~50bargの範囲の圧力、0.5~2.0h-1の範囲のWHSV、200~650nl H2/lフィードのH2フローを含む。
【0106】
より好ましくは、異性化反応条件は、300~350℃の範囲の温度、25~45bargの範囲の圧力、0.5~1.0h-1の範囲のWHSV、300~500nl H2/lフィードのH2フローを含む。
【0107】
水素化異性化反応は、任意には担体に担持されていてもよい、好ましくはPtなどのグループVIII金属、およびモレキュラーシーブを含む触媒などの異性化触媒の存在下であってもよい。担体は、例えば、単独でまたは混合物として用いられて得る、シリカ、アルミナ、クレイ、酸化チタン、酸化ボロン、ジルコニアから選択され得、好ましくはシリカおよび/またはアルミナから選択され得る。モレキュラーシーブは、例えば、例えばZSMなどのゼオライト、または、例えばSAPOなどの、例えばSAPO-11、MeAPO、MeAPSO(ここで、Meは例えばFe、Mg、Mn、Co、またはZnである)などのアルミノリン酸モレキュラーシーブ、または他のエレメント(EI)モレキュラーシーブEIAPOまたはEIAPSOであってもよい。例えば、シリカアルミナ、Y瀬尾ライト、SAPO-11、SAPO-41、ZSM-22、フェリエライト、ZSM-23、ZSM-48、ZBM-30、IZM-1、COK-7などが挙げられる。適切なモレキュラーシーブおよび水素化異性化適用に適したモレキュラーシーブの特性は、当該技術分野における当業者にとって公知である、そして、例えば、Handbook of heterogeneous catalysis from VCH Verlagsgesellschaft mbH with editiors Ertl, Knoezinger and Weitkamp, volume 4, pages 2036-2037などの文献に記載されており、これは参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0108】
脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流または蒸留された再生可能なベースオイルは、0℃未満、例えば-15℃未満などの流動点を有し得る。
【0109】
ベースオイルの精製
方法の工程d)およびe)のあいだに、ストリッピング工程が存在していてもよく、ここで、ガスが液体から分離される。これは、320~350℃のあいだである温度および3~6bargのあいだである圧力において行われ得る。
【0110】
方法の工程d)およびe)のあいだに、もし存在するのであれば好ましくは、ストリッピング工程の後に、任意の水素化仕上げ工程また存在していてもよく、ここで、生成物は、例えば上の「ケトン流の水素化脱酸素化」の題のもとで記載されているように、例えばアルミナ担体に担持されたNiMoなどの水素化触媒の存在下でさらなる水素化工程を行うことによって安定化される。しかしながら、例えばアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持されている、元素周期表のグループVIIIの金属を含む他の水素化仕上げ触媒もまた使用され得る。水素化仕上げ触媒は、好ましくは、担持されたPd、Pt、Ni触媒であり、ここで、担体はアルミナおよび/またはシリカである。
【0111】
水素化仕上げ工程は、反応条件に関して前水素化段階と類似している、しかしながら、水素化仕上げ段階では、典型的には、より高い圧力およびある程度のより高い温度が利用される。これは、フィードが、この段階では、可能な前水素化段階と比較して、完全に脱酸素化されているためである。水素化仕上げ段階は、生成物を安定化させるために存在しており、これは、特に、存在しているまたは例えば水素化異性化などのあいだなどの先の段階のあいだに形成された二重結合または芳香族化合物の水素化を含んでいる。水素化仕上げ工程は、300℃未満、例えば280℃未満、または260℃未満の温度で行われ得る。水素化仕上げは、また、180℃より高い、例えば190℃より高いまたは200℃より高い温度で行われ得る。例えば、前水素化の温度は、180~300℃、例えば、190~280℃、例えば、200~250℃などであってもよい。圧力は、100~200barg、例えば120~180barg、例えば140~160bargなどであってもよい。WHSVは、0.5~3h-1、例えば0.75~2.5h-1、例えば1.0~2.0h-1などであってもよい。H2/オイル比は、100~500nl/l、例えば150~450nl/l、例えば200~400nl/lなどであってもよい。したがって、前水素化は、好ましくは、90~300℃、10~70barg、0.5~3h-1のWHSV、および100~500nl/lのH2/オイル比で、より好ましくは、110~280℃、20~60barg、1.0~2.5h-1のWHSV、および150~450nl/lのH2/オイル比で、さらにより好ましくは、120~260℃、30~50barg、1.0~2.0h-1のWHSV、および200~400nl/lのH2/オイル比で、行われ得る。
【0112】
工程d)から得られる、脱酸素化されたおよび異性化ベースオイル流は、再生可能なベースオイルを含む。それは、任意には、工程e)において、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために蒸留されてもよい。
【0113】
例えば、脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流は、再生可能なベースオイルを得るために、380℃より高い、例えば450℃より高い、例えば460℃より高い、例えば470℃より高い、例えば480℃より高い、または、500℃より高いなどの沸点を有する留分に蒸留され得る。例えば、蒸留は、再生可能なベースオイルの一または複数の留分、例えば380℃より高い温度の留分、例えば380~450℃のあいだの留分、および450℃より高い温度の留分、をもたらし得る。
【0114】
蒸留のあいだ、例えばナフサ留分および/またはディーゼル留分などの他の留分もまた単離され得る。これらの留分は、水素化脱酸素化および水素化異性化反応のあいだの分解の結果、ならびに、非常に少量の、ケトン化工程からの未変換の遊離脂肪酸である。
【0115】
脱酸素化されたおよび異性化ベースオイル流または蒸留された再生可能なベースオイルは、10ppm未満の酸素含有量、100℃で3~15cStの粘度、120より高い、例えば120~170のあいだなどの粘度指数を有し得る。
【0116】
FFAが枯渇したフィードの水素化脱酸素化および異性化
一または複数の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードは、工程f)において、ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたかつ異性化されたディーゼル流を得るために、同時にまたは順次、水素化脱酸素化反応条件および水素化異性化反応条件の両方に付され得、任意には、蒸留されたディーゼル燃料を得るために工程f)から得られる流を蒸留することに付され得る。
【0117】
これは、「ケトン流の水素化脱酸素化および異性化」の題のもとで記載されている様式と同じ様式で行われ得る。一またはそれ以上の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードもまた、水素化脱酸素化および水素化異性化の前に、炭化水素流を用いて希釈されてもよい。希釈は、30wt%の炭化水素および70wt%の流、例えば、30~85wt%の炭化水素(希釈剤)および15~70wt%の遊離脂肪酸が枯渇したフィード(新鮮なフィード)などであってもよい。希釈はまた、高い希釈度(炭化水素:新鮮なフィードの比で)例えば、3:1~20:1まで、例えば4:1~20:1まで、例えば5:1~20:1であってもよい。希釈に用いられる炭化水素流は、部分的にまたは全て生成物リサイクルであってもよい。
【0118】
生成物リサイクルは、リサイクルされる前に分画に付されていてもよく、例えば、リサイクルされる留分は、約180~350℃、例えば210~380℃であるディーゼル範囲で沸騰する留分であり得る。
【0119】
再生可能なベースオイル、ディーゼル、およびナフサ
本発明の方法は、再生可能なベースオイルおよび再生可能なディーゼルを製造する。製造中に、再生可能なベースオイルは、また、上記で説明されているように、少量の再生可能なディーゼルおよびナフサを含むであろう。脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流は、再生可能なベースオイルから分離され、そして再生可能なナフサをともにプールされ得る再生可能なディーゼルに加えて、少量の再生可能なナフサを含んでおり、そして、脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流の蒸留から得られる再生可能なディーゼルは、再生可能なベースオイル留分からの再生可能なディーゼルとともにプールされ得る。
【0120】
したがって、プロセスは、追加で、ナフサ燃料を製造するためのものであり得、ここで、ナフサ燃料は、脱酸素化されたおよび異性化された工程d)のベースオイル流と脱酸素化されたおよび異性化された工程f)のディーゼル流との両方の蒸留から得られる。
【0121】
例えば、生物起源のフィードストックから得られる再生可能なナフサ、ディーゼルおよびベースオイルの合わせた量は、5~95wt%の再生可能なベースオイル、5~95wt%のディーゼル、および0~30wt%のナフサであり、例えば、5~95wt%のあいだの再生可能なベースオイル、5~95wt%のあいだのディーゼル、および5~30wt%のあいだのナフサである。
【0122】
再生可能なベースオイル生成物の例
飽和遊離脂肪酸フィードが本質的にパルミチン酸からなるとき、高い価値のベースオイル成分が得られ得る。
【0123】
例えば
図6および実施例6の表2に示されるように、C31ベースオイルは、他の低粘度ベースオイル、例えばポリアルファオレフィン(PAO)またはフィッシャー・トロプシュ法によるベースオイル(GTLs)などの特性に匹敵するおよびそれに勝る特性を有している。
【0124】
C31ベースオイルは、60wt%より多いC31アルカンを含む、パラフィン系ベースオイルである。C31ベースオイルは、本明細書中に記載されるように、飽和のC16パルミチン酸から製造され得る。C31含有量が70wt%より多い、および表1から明らかであるように、80wt%より多いC31アルカン、例えば60wt%~95wt%のあいだであるC31アルカンであることが好ましい。
【0125】
もしパルミチン酸が実施例1よりもより低い純度であるならば、C
31ベースオイルが20wt%までのC
32以上のアルカンを含むという状況があり得る。C
32以上とは、C
32~C
46、例えばC
32~C
35を含み、これはC
18脂肪酸不純物を含むパルミチン酸のための結果として生じる範囲であろう。不純物のレベルは低いものであるべきことが望まれ、そして、どのような場合でも、C
31ベースオイルは、20wt%未満のC
32以上のアルカン、好ましくは10wt%未満のC
32以上のアルカンのみを含むべきである。これはまた、実施例1のパルミチン酸から得られるものであり、ここで、結果として得られるC
31ベースオイルは、表1および
図5から明らかなように、5wt%未満の、および1wt%未満でさえのC
32以上のアルカンしか含まない。
【0126】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明の発明者らによって、例えばC16の炭素原子をもつパルミチン酸などの液相のケトン化反応はまた、ガス相のケトン化反応とは反対に、少ない量のナフテンをもたらす。したがって、C31ベースオイルは、表1に示されているモノ-ナフテン量からもまた明らかであるように、9wt%未満のシクロアルカン、好ましくは4.5wt%未満のシクロアルカンを含むであろう。例えば、8wt%未満のC25~32シクロアルカン(すなわち、モノ-ナフテン、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、およびそれより多置換のナフテン)または4.5wt%未満のC25~32シクロアルカン。
【0127】
最後に、C31ベースオイルが高度にイソ-パラフィン系であることが重要であり、これは、ベースオイルのアルカンが70wt%以上、例えば80wt%以上、90wt%以上ほど高い、95wt%以上、または99wt%以上のイソ-アルカンを含んでいるべきであることを意味している。単一のメチル分岐のC31ベースオイルからより高度に分岐されたC31ベースオイルまで多くの種々のイソ-アルカンがある。イソ-アルカンの分岐の程度は、結果として得られる異性化されたC31ベースオイルの流動点と相関する。したがって、異性化の程度もまた、流動点を特定することによる機能的な方法で本発明のC31ベースオイルのために与えられ得る。特には、水素化異性化反応のあいだ、異性化の程度は、しばしば、所望の流動点が得られるまで行われる。異性化の程度はしたがって、イソ-アルカンのwt%での量として、または、C31ベースオイルの流動点とし、または、好ましくは、イソ-アルカンの量と流動点との組み合わせとして与えられ得る。例えば、C31ベースオイルの流動点は、ASTM D7346を用いて測定された場合で、実施例6で提供されるようにおよび表2に示されるように、-5℃未満、例えば-10℃未満、または-15℃未満、または-19度未満でさえある高さ、または-25℃未満であり得る。分解に起因して水素化異性化反応のあいだにC31ベースオイルのいくらかの損失があるので、C31ベースオイルの収率と異性化の程度とのあいだにはしばしば妥協点があり、例えば、流動点は-5℃~-35℃、例えば-10℃~-30℃である。
【0128】
再生可能なC
31ベースオイルを製造するための出発材料がほぼ完全にパルミチン酸であること、上述されるようなケトン化反応の種類および異性化の程度に起因して、C
31ベースオイル成分は、非常に少量の分解生成物しか含まず、これは典型的にはより高いノアク揮発度の値をもたらす。したがって、C
31ベースオイル成分はさらに、少量のC
20~30アルカンを含むこと、表1および
図5に示されている結果から明らかであるように1wt%~15wt%のあいだのC
20~30アルカンを含むこと、例えば30wt%未満、例えば20wt%未満、または15wt%未満のC
20~30アルカン、たとえば10wt%未満のC
20~30アルカン、または7wt%未満ほどに低いC
20~30アルカン、例えば1wt%~10wt%のあいだのC
20~30アルカンを含むことで特徴付けられ得る。
【0129】
実施例1~3で記載されるように、C
31ベースオイルを製造するための、PFADからパルミチン酸を得ること、液粗ケトン化反応、水素化脱酸素化および水素化異性化を含む具体的な方法は、少なくとも2つの「フィンガープリント」識別子を有するC
31ベースオイル成分を提供し、これは、使用された特定の方法およびフィードを識別するために使用され得る。したがって、ベースオイル成分はさらに、C
29および/またはC
30アルカンのwt%での量が、表1および
図5から明らかであるように、C
26およびC
27アルカンのwt%での合計量より少ないという第1の「フィンガープリント」識別子によって特徴づけられ得る。
【0130】
C31ベースオイル成分は、追加で、C29およびC31アルカンのwt%での合計量は、表1から明らかであるように、C25、C26、C27、C28、C30のシクロアルカンの合計量よりも多いという第2の「フィンガープリント」識別子によって特徴づけられてもよい。
【0131】
本明細書中で記載されるように、好ましくは、C31ベースオイルは、再生可能な起源のものであり、これはベースオイルブレンダー業への供給のより強力な補償を提供することに加え、また、例えば化石由来のベースオイルなどと比較して、C31ベースオイルが非常に少量の不純物しか含まないという明確な優位点を提供する。
【0132】
特には、ベースオイル成分は、主に、少しのおよび定量の不純物いしか含まないパラフィン系である、したがって、再生可能なベースオイル成分は、さらに、少なくとも一または複数の(しかしながら好ましくは全ての)不純物が、もし存在するのであれば、
1.5wt%未満、好ましくは0.5wt%、例えば0.3wt%未満、例えば0.1wt%以下の芳香族炭化水素
1.0wt%未満、好ましくは0.5wt%未満のジ-、トリ-、テトラ-またはより多置換のナフテン、
1wt%未満、好ましくは0.5wt%未満、例えば0.3wt%未満、たとえば0.1wt%以下の酸素含有化合物、
ASTM D 3120を用いて測定された場合の、300ppm未満、例えば100ppm未満または50ppm未満の硫黄含有量
ASTM D 4629を用いて測定された場合の、100ppm未満、または10ppm未満、例えば1ppm未満の窒素含有量
であることに特徴づけられ得る。
【0133】
C31ベースオイル成分は、さらに、以下の特性のうちの一または複数を有することによって機能的に特徴づけられ得る。
ASTM D 7500を用いて測定された場合の、350℃~650℃のあいだである沸点、
ASTM D 2270を用いて測定された場合の、140より大きい粘度指数(VI)、
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、
ASTM D 7346を用いて測定された場合の、-10℃未満の流動点
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1800mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1300mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)。
【0134】
ベースオイル成分はさらに、ASTM D 7500を用いて測定された場合の、380℃より高い沸点、例えばASTM D 7500を用いて測定された場合の、420℃より高い沸点を有することによって機能的に特徴づけられ得る。ベースオイル成分はさらに、650℃未満の沸点、例えば600℃未満の沸点を有することによって機能的に特徴づけられ得る。いくつかの場合において、上記の沸点は、ASTM D 7500の5%沸点として定義される。例えば、C31ベースオイルの沸点範囲は、初留点(IBP)および最終沸点(FBP)のあいだの範囲として、または、5%蒸留点および95%蒸留点のあいだの範囲のどちらかとして、380~650℃、400~620℃、420~600℃であり得る。C31ベースオイルに関するこれらの蒸留範囲は、狭い。例えば、サンプルの30%より多くが、10℃の温度範囲内(例えば、ASTM D7500の50%および90%沸点の値が10℃しか離れていない)で沸騰し得るか、または、ASTM D7500の10%および90%沸点の値のあいだの沸点範囲を70℃未満、例えば50℃未満、例えば40℃未満の温度範囲内に有する。
【0135】
C
31ベースオイルの低いCCS-30℃粘度と組み合わされた低いノアク揮発度という混合性能は、C
31ベースオイルがそれ自身を他の低粘度ベースオイルと区別する別のパラメータである。低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方が、低粘度ベースオイルにおいて望ましい。しかしながら、
図5のダイアグラムが示しているように、典型的には、これらの2つの特性のあいだには、典型的には、トレードオフがあり、すなわち、低いノアク揮発度は典型的には高いCCS-30℃粘度をもたらし、そして、反対に、低いCCS-30℃粘度は典型的には高いノアク揮発度をもたらす。本発明のC
31RBOを他の典型的な低粘度ベースオイルと比較すると、同じノアク揮発度において、本発明のC
31RBOと比較して他のベースオイルははるかに高いCCS-30℃粘度をもっており、そして、同じCCS-30℃粘度では、本発明のC
31RBOは他のベースオイルと比較してはるかに低いノアク揮発度を有していることがわかる。
図5から、本発明のC
31RBOが、他の低粘度ベースオイルと比較してはるかにより狭い範囲のノアク揮発度の範囲(5~9wt%のあいだ)およびCCS-30℃粘度(900~1200 mPas)を有していることが明らかにわかり、したがってより明確に規定された生成物であると考えられ得る。
【0136】
したがって、C31ベースオイル成分は、さらに、以下の特性の両方:
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満、例えば9wt%未満であるノアク揮発度、および
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1600mPas未満、例えば1300mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
を有することによって機能的に特徴づけられ得る。
【0137】
C31ベースオイル成分は、ノアク揮発度およびCCS-30℃粘度に加えて、
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)
によって機能的に特徴づけられ得る。
【0138】
ベースオイル成分はまた、以下の特性のうちの一または複数:
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、および
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)
を有することによって機能的に特徴づけられ得る。
【0139】
本発明はここで、図面を参照して記載される。
図1は、生物起源のフィードストック(「PFAD」と表されている)からの再生可能なベースオイルを製造するための方法を記載している。
図1における生物起源のフィードストックはPFADと表されているが、
図1の方法は、PFADに限定されるわけではなく、本明細書中で記載される任意の生物起源のフィードストックであり得る。
【0140】
方法は、本明細書中で、具体的には「フィードストック」の題のもとで記載されるように生物起源のフィードストックを提供する工程a)を含む。PFADと表される生物起源のフィードストックは、その後、工程b)において、蒸留によって(「FFA蒸留」と表されている)少なくとも遊離脂肪酸流へと分離され、ここで、フィードストックよりも遊離脂肪酸の濃度が高い蒸留物が得られる。「フィードストックの分離」と題されている上記の段落が参照される。「FFA蒸留」から得られた遊離脂肪酸流は、その後、工程c)において、ケトン化反応条件(「ケトン化」と表されている)に付され、ここで、2つの脂肪酸が、主要部分としてケトンを含むケトン流を与えるために反応される。ケトン化段階についての追加の詳細については、「ケトン化」と題されている上記の段落が参照される。
【0141】
ケトン流はその後、工程d)において、水素化脱酸素化反応条件(「HDO」と表されている)へと付され、ここでは水素も供給される。水素化脱酸素化段階と水素化異性化段階とが同時にではなく順次行われる場合、脱酸素化されたベースオイル流において、ストリッピング工程で水およびガスのストリッピングが行われ得る(「中間ストリッパー」と表されている)。HDO工程は、「ケトン流の水素化脱酸素化」の題のもとで記載され得、そして、ストリッピング工程は、「ベースオイルの精製」の題のもとで記載され得る。脱酸素化されたベースオイルは、その後、水素化異性化反応条件(「異性化」と表されている)に付され得、ここでは水素も供給され得、再生可能なベースオイルを含む脱酸素化および異性化されたベースオイル流を与える。水素化異性化条件は、「ケトン流の水素化異性化」の題のもとで上記されているものであり得る。例として「ケトン流の水素化異性化」の題のもとで記載されているように、水素化脱酸素化および水素化異性化が同時に起こる場合、「HDO」および「異性化」は一つかつ同一のリアクターであり、そして、「中間ストリッパー」は、水素化脱酸素化および水素化異性化の下流に置かれる。脱酸素化されたおよび異性化されたベースオイル流は、任意には、例えば「ベースオイルの精製」の題のもとで記載されているように安定化されてもよく、これは「生成物安定化」と表されている。
【0142】
方法はまた、蒸留された再生可能なベースオイルを得るために、例えば「ベースオイルの精製」の題のもと上記で記載されているように、典型的には減圧下で、工程d)の生成物を蒸留する工程e)(「減圧蒸留」と表されている)を含んでいてもよい。蒸留は、例えば380℃より高い温度の再生可能なベースオイルの一または複数の留分、例えば380~450℃のあいだの留分、および450℃より高い温度の留分などを与え、これはまとめて「RBO」と表される。
【0143】
生成物安定化からの副生成物および減圧蒸留からのRBO留分以外の留分は、例えば「再生可能なベースオイル、ディーゼル、およびナフサ」の題のもと上記で記載されているように、例えば、例えば180度未満などのナフサ蒸留範囲および180~350℃のディーゼル沸点範囲である一または複数の留分の製造のためなど、燃料製造のための流(「燃料製造のための流」と表される)として送られ得る。
【0144】
図2は、
図1の「PFAD」、「FFA蒸留」、「ケトン化」、「HDO」、「中間ストリッパー」、「異性化」、「生成物安定化」、「減圧蒸留」、および「RBO」に加えて、方法とともに単独でまたは組み合わせて使用され得る3つの要素を記載している。
【0145】
第1の要素は、ベースオイルおよびディーゼル製造のための共有される支持ユニット(「ベースオイルおよびディーゼル製造のための共有される支持ユニット」)であり、これは、ケトン化反応および水素化脱酸素化のあいだに形成される水をストリッピングまたは傾斜法で除去することを含む(例えば、サワーウォーターストリッピングの形でなど、
図3において「サワーウォーターストリッパー」と表されている)。共有される支持ユニットは、追加で、水素化脱酸素化工程(「HDO」)からまたはディーゼル燃料製造(「ディーゼル燃料製造」)から、水素をリサイクルするために、リサイクルガスをループさせる、任意には、ケトン化工程(「ケトン化」)へと送られる前のストリッパー中での例えば流などの除去により、例えば「ケトン化」の題のもと上記で記載されている、ケトン化反応のための加圧ガスとしての水素ガスを精製する可能性を提供する。
【0146】
第2の要素は、「ベースオイルの精製」の題のもと上記で記載されている、生成物を安定化するための、含まれる可能性のある芳香族化合物または二重結合の飽和のための水素化仕上げ工程である。生成物安定化は、また、水素化異性化のあいだの分解に起因して、および/または、ケトン化反応において反応せずかつ次の工程に運ばれたFFA由来の、再生可能なベースオイル中に存在する可能性のあるナフサ沸点範囲(「ナフサ安定化」)およびディーゼル沸点範囲(「ディーゼル安定化」)の化合物も安定化する。再生可能なベースオイルの減圧蒸留(「減圧蒸留」)はしたがって、「再生可能なベースオイル、ディーゼルおよびナフサ」の題のもと上記で記載されているように、再生可能なベースオイルの、例えば380℃より高い温度である一または複数の留分、例えば380~450℃のあいだの留分および450℃より高い温度の留分、ならびに、例えば180℃未満などのナフサ沸点範囲および180~350℃ディーゼル沸点範囲の一または複数の留分(まとめて「RBO」と表されている)をもたらす。
【0147】
第3の要素は、分離工程(「FFA蒸留」)である。生物起源のフィードストック(「PFAD」)の、ケトン化を経て再生可能なベースオイル(「RBO」)へと処理される遊離脂肪酸、および、例えばディーゼル燃料へとさらに処理され得る(「ディーゼル燃料製造」)底流(「底流」)への分離。分離工程(「FFA蒸留」)は、RBOの品質および量の両方の点において、再生可能なベースオイル(「RBO」)のより多目的な製造を可能にする。品質に関して、FFA蒸留は、実施例1に示されるように、本質的に例えばパルミチン酸のみからなる遊離脂肪酸フィードを製造することができる。この単一の炭素脂肪酸は、その後ケトン化を経て、それらがベースオイルに必要とされる特定の特性を微調整することができるという点でベースオイル製造社にとって産業関連製品である、本質的にC31ベースオイルからなる、明確に定義された組成を有する再生可能なベースオイルへと処理され得る。
【0148】
量に関して、分離工程はまた、もしより多くのディーゼルがベースオイルよりも要求されるのであれば、分離工程は、例えばパルミチン酸のみのより狭いカット値を採用し、そして非常に明確に定義された組成をもつベースオイルを製造することができ、一方、もし市場によってより少ない量の再生可能なディーゼルが要求されるのであれば、分離工程は、例えば、例えばC16およびC18脂肪酸の両方を含み得、C31、C33およびC35ベースオイルを含むRBO混合物をもたらすケトン化を経て再生可能ベースオイル製品へと処理され得る、生物起源のフィードストックのより広いカット値を採用し得る、ということで、再生可能なベースオイルまたは再生可能なディーゼルのどちらに関しても市場の要求にしたがって調整され得るRBO製造を提供する。本明細書中で定義される(例えば「フィードストック」と題される箇所を参照のこと)生物起源のフィードストック通の遊離脂肪酸の量は、さらに、本発明の方法の工程a)より前に増加されていてもよく、ここで、脂肪酸エステルを含む最初のフィードストックは、少なくとも加水分解工程で前処理されてフィードストックを製造していてもよく、ここで、遊離脂肪酸の脂肪酸エステルに対する比が、最初のフィードストックと比較して増加されている。
【0149】
図3は、
図1および2に追加で、
図2の底流はここでは、一または複数の、遊離脂肪酸が枯渇したフィードを、「ケトン化」の題のもとで記載されるように、水素化触媒の存在下の温和な条件で行われる任意の前水素化段階(「前処理」)へと付す工程f)においてディーゼルの製造のための遊離脂肪酸が枯渇したフィード(「再生可能なディーゼルライン」)であることを記載している。前水素化は、残存している脂肪酸および脂肪酸エステル中の二重結合を飽和することを意図しており、それは、次の工程(「HDO」)におけるより激しい水素化脱水素化条件の使用を可能にする。
【0150】
HDO工程は、「FFAが枯渇したフィードの水素化脱酸素化および異性化」の題の下で記載されているようなものであってもよい。RBOラインで共有されてもよいストリッパーで水が分離され(「サワーウォーター分離」)、追加で、水素が、リサイクルガスループ(これもRBOラインと共有されていてもよい)を介してリサイクルされ得る。脱酸素化されたディーゼル流は、その後、水素化異性化反応条件(「異性化」と表される)へと付され得、ここでは水素もまた供給され、ディーゼル燃料を含む脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流をもたらす。
【0151】
「FFAが枯渇したフィードの水素化脱酸素化および異性化」の箇所で記載されているように、水素化脱酸素化および水素化異性化は、同時にまたは順番に行われてもよい。脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流は、任意には、例えば、「ベースオイルの精製」の題のもとで上述されているような水素化仕上げ工程の形状で、安定化されてもよく、これは、「ディーゼル安定化」および「ナフサ安定化」として表される。脱酸素化されたおよび異性化されたディーゼル流の減圧蒸留(「減圧蒸留」)は、したがって、例えば「再生可能なベースオイル、ディーゼルおよびナフサ」の題のもとで記載されているように、まとめて「ディーゼル」と表される、例えば180~350℃の沸点範囲などである一または複数のディーゼル燃料留分、および、例えば180℃未満などのナフサ沸点範囲である一または複数の留分をもたらす。
【0152】
本発明の実施形態が記載されるとき、全ての可能な実施例の組み合わせおよび順列が明示されているわけではない。それどころか、特定の方法が互いに異なる従属クレームに列挙されている、または異なる実施形態において記載されているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利には使用されないということを示しているわけではない。本発明は、記載されている実施形態の全ての可能な組み合わせおよび順列を想定している。
【0153】
本明細書中において用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、どのような場合においても、発明者らによって、それぞれ、「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」の用語と任意には置換可能であることが意図されている。
【実施例】
【0154】
実施例1 PFADの、パルミチン酸およびパルミチン酸が枯渇したフィードへの分離
パーム脂肪酸蒸留物(PFAD)が、約250~275℃の温度および0.01~0.05bar圧力での蒸留によってパルミチン酸およびパルミチン酸が枯渇したフィードへと分離された。
【0155】
これは、C18脂肪酸(0.42wt%)、C14脂肪酸(2.5wt%)である少量の不純物を伴う97.0wt%純度であるパルミチン酸フィードを結果としてもたらした。
【0156】
【0157】
実施例2 パルミチン酸フィードのケトン化
パルミチン酸フィードは、250gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床(パイロット)リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約18bargの圧力、約360℃の温度、約1.0h-1のWHSV、および131 l/h窒素の追加のガスフローで行われた。ケトン化反応条件は、85%の脂肪酸変換を結果として与え、したがってケトン流が得られた。
【0158】
実施例2a パルミチン酸フィードのケトン化
パルミチン酸フィードは、20gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約25bargの圧力、約360℃の温度、約0.5h-1のWHSVで、追加のガスフローなしで行われた。ケトン化反応条件は、99.9%の脂肪酸変換を結果として与え、したがってケトン流が得られた。
【0159】
実施例2b パルミチン酸フィードのケトン化
パルミチン酸フィードは、250gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床(マイクロ)リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約10bargの圧力、約360℃の温度、約1.0h-1のWHSV、および5 l/h水素の追加のガスフローで行われた。ケトン化反応条件は、99.9%の脂肪酸変換を結果として与え、したがってケトン流が得られた。
【0160】
実施例2c パルミチン酸フィードのケトン化
パルミチン酸フィードは、20gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約10bargの圧力、約360℃の温度、約1.0h-1のWHSVで、および5 l/h二酸化炭素の追加のガスフローで行われた。ケトン化反応条件は、99.4%の脂肪酸変換を結果として与え、したがってケトン流が得られた。
【0161】
実施例3 ケトン流の水素化脱酸素化および異性化
得られたケトンがNiMo/Al2O3触媒上で、約310℃の温度、約40barの圧力、約1.5h-1のWHSV、および900nl/lのH2/オイル比で、水素化脱酸素化された生成物を得るために水素化脱酸素化された。酸素除去の効率はHDO工程として99.9%であった。
【0162】
結果として得られた水素化脱酸素化された生成物は、水素化異性触媒としてアルミナ担体に担持されたPt/SAPO-11上で、約350℃の温度、約40barの圧力、および約1.0h-1のWHSVで、水素化異性化されたベースオイル生成物を得るために水素化異性化された。
【0163】
水素化異性化されたベースオイル生成物は、ナフサ留分(180℃未満)、ディーゼル留分(180~350℃)へと分画され、そして380+℃の留分が再生可能なベースオイル生成物として単離された。
【0164】
実施例3a ケトン流の水素化脱酸素化および異性化
得られたケトンがNiMo/Al2O3触媒上で、約310℃の温度、約40~50barの圧力、約1.5h-1のWHSV、および900nl/lのH2/フィードオイル比で、水素化脱酸素化された生成物を得るために水素化脱酸素化された。酸素除去の効率はHDO工程として99.9%であった。
【0165】
結果として得られた水素化脱酸素化された生成物は、水素化異性触媒としてアルミナに担持されたPt/SAPO-11上で、約348℃の温度、約40barの圧力、約1.0h-1のWHSVで、および800nl/lのH2/フィードオイル比で、水素化異性化されたベースオイル生成物を得るために水素化異性化された。
【0166】
水素化異性化されたベースオイル生成物は、ナフサ留分(180℃未満)、ディーゼル留分(180~350℃)へと分画され、そして380+℃の留分が再生可能なベースオイル生成物(59.9wt%)、再生可能なディーゼル(22.9wt%)、35~180℃の範囲の沸点の再生可能なナフサ(1.3wt%)、生成物ガスである残余物(11.9wt%)、および350~380℃の間の沸点のプロセスオイル(4.0wt%)として単離された。
【0167】
再生可能なベースオイル生成物は、以下の特性を有していた:17.7mm2/sである40℃での動粘度、4.2mm2/sである100℃での動粘度、151の粘度指数(VI)、-1.1℃の曇り点、-17℃の流動点、および0.1wt未満の芳香族化合物含有量。動粘度は、ENISO3104を用いて、粘度指数は、ASTM D 2270を用いて、曇り点は、ASTM D 5771を用いて、および流動点はASTM D 5950を用いて、芳香族化合物の含有量はASTM D 7419を用いて測定された。
【0168】
実施例4 残余の、パルミチン酸が枯渇した流れの水素化脱酸素化および異性化
残余の、パルミチン酸が枯渇したフィードが、NiMo/Al2O3触媒上で、約310℃の温度、約50barの圧力、約1.0~1.5h-1のWHSV、および900nl/lのH2/オイル比で、水素化脱酸素化された生成物を得るために水素化脱酸素化された。酸素除去の効率はHDO工程として99.9%であった。
【0169】
結果として得られた水素化脱酸素化された生成物は、水素化異性触媒として還元されたプラチナモレキュラーシーブ/Al2O3上で、約300~350℃の温度、約20~40barの圧力、および約0.8~1.0h-1のWHSVで、水素化異性化されたベースオイル生成物を得るために水素化異性化された。
【0170】
水素化異性化されたディーゼル生成物は、ナフサ留分(180℃未満)、ディーゼル留分(180~350℃)へと分画された。
【0171】
実施例5 PFADから得られる再生可能なC31ベースオイルの特性
実施例3の380+℃留分が。再生可能なベースオイル生成物として単離された。
【0172】
再生可能なベースオイル生成物の成分が、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析された。表1を参照のこと(「FIMS方法」)。
【0173】
ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-ナフテンは検出されなかった。芳香族化合物は検出されなかった。
【0174】
ASTM D 7500を用いて測定された場合の、サンプルIの蒸留範囲は、IBP(355℃)、5%(395℃)、10%(421℃)、20%(435℃)、30%(440℃)、40%(443℃)、50%(445℃)、60%(448℃)、70%(450℃)、80%(452℃)、90%(454℃)、95%(456℃)、FBP(583℃)であった。
【0175】
電解イオン化質量分析(FI-MS)
FI-MS分析に先立ち、含有されている全ての芳香族化合物は飽和の留分から分離され、そして、両方の留分が別々にFIMSを用いて分析される。
【0176】
FI-MS法において、飽和炭化水素は、以下のように、電解イオン化質量分析(FI-MS)によって、炭素および水素原子に基づく以下の分子量にしたがって分類される:
CnH2n+2は、パラフィンとして分類される、
CnH2nは、モノ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-2は、ジ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-4は、トリ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-6は、テトラ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-8は、ペンタ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-10は、ヘキサ-ナフテンとして分類される。
【0177】
全てのFIマススペクトルは、FIモードで操作された、液体注入電界脱離イオン化(LIFDI、Linden ChroMasSpec GmbH社製)源を備えた、Thermo Fisher Scientific社製の二重収束セクター型(DFS)質量分析計を用いたセントロイドモードで得られた。FFS MSは、2000(±50)の分解能で磁気走査モードで操作された。イオン源パラメータは以下の通りである:加速電圧、5 kV;対電極圧力、-5 kV;参照インレット温度、80℃;イオン源温度、50℃;フラッシュ持続時間、150ms;および走査間遅延、150ms。2つの種類のFIエミッターが使用された:50mAでのLinden ChroMasSpec GmbH FI-エミッター 10μm、20mAタイプ、および、90mAでのCarbo Tec 10μM Allgroundエミッター。新しいエミッターは、サンプル検定の前に、エミッター加熱電流を2時間適用することにより、予め調整された。DFS MAは、7.5 s/decayの速さで、m/z 50~1000で走査された。直接導入プローブ(DIP)は、試験のあいだ、50℃から360℃まで、25℃/minのランプレートで加熱された。2μLの体積のサンプル溶液は、サンプルホルダー(坩堝、低粘度ベースオイルのためのMascom GmbH 0568770S-0568780S、ならびに、他のベースオイルおよびモデル化合物混合物のためのMascom GmbH 0568760S)に注入され、そして、溶媒は分析に先立って室温にて蒸発された。サンプルホルダーは、DIP中に配置され、そして、真空交換ロックを経てイオン源中へと導入された。サンプル検定は、サンプルがイオン源中へと導入された直後に開始された。Xcalibur 2.2 プログラム(Thermo Fisher Scientific,Inc.,SanJose,CA)がMSデータの獲得および分析に使用された。
【0178】
方法はまた、Jinら、 “Comparison of Atmospheric Pressure Chemical Ionization and Field Ionization Mass Spectrometry for the Analysis of Large Saturated Hydrocarbons” Anal. Chem. 2016, 88(21) 10592-10598の文献に記載されている。
【0179】
【0180】
実施例6
図5は、表1の再生可能なC
31ベースオイルのFIMS分析を示している。多くの再生可能なC
31ベースオイルが測定され、そして、他の市販のベースオイルと比較された、表2を参照のこと(ここで、流動点はASTM D5950を用いて、粘度はEN ISO 3104を用いて、パラフィンおよびナフテンはFIMS法を用いて、粘度指数はASTM D2270を用いて、CCS粘度はASTM D5293を用いて、ノアク指数はCECL-40-93-Bを用いて、測定された)。
【0181】