(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/15 20230101AFI20230125BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230125BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20230125BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H05B33/14 A
H05B33/22 B
(21)【出願番号】P 2020500497
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2019004948
(87)【国際公開番号】W WO2019159919
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2018025363
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】駿河 和行
(72)【発明者】
【氏名】高 相原
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛史
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105778891(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0021293(KR,A)
【文献】国際公開第2015/190400(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/008718(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006629(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104289(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0110347(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が下記一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化40】
(式中、R
1~R
10およびR
13は相互に同一でも異なってもよく、
R
1
~R
10
はそれぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基および縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表し、
R
13
は水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または、置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、
R
1
~R
10
およびR
13
はそれぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
R
1~R
10およびR
13が結合しているベンゼン環と、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R
11
およびR
12
は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
R
14
およびR
15
は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
ここで、R
14
およびR
15
が置換された芳香族炭化水素基である場合における置換基は、重水素原子;炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基;炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;または芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基および芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基から選択される。
ここで、R
11とR
12またはR
14とR
15は、それぞれの基同士で単結合、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
A
1は単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表す。)
【化41】
(式中、R
1~R
10およびR
16は相互に同一でも異なってもよく、
R
1
~R
10
はそれぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基および縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表し、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
R
16
は水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または、置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、
R
1~R
10およびR
16が結合しているベンゼン環と、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R
11、R
12、R
17およびR
18は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
ここで、R
11とR
12またはR
17とR
18は、それぞれの基同士で単結合、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
A
2は単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表す。)
【請求項2】
前記R
14、R
15、R
17およびR
18がそれぞれ置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記A
1およびA
2が単結合である、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記電子輸送層が下記一般式(2)で表されるピリミジン環構造を有する化合物を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化42】
(式中、Ar
1は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
Ar
2およびAr
3は相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
Ar
4は、置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表し、
R
19~R
22は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。
ここで、Ar
2およびAr
3は同時に水素原子となることはないものとする。)
【請求項5】
前記電子輸送層が下記一般式(3)で表されるベンゾアゾール環構造を有する化合物を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化43】
(式中、Ar
5およびAr
6は相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、
Y
1は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、
Xは酸素原子または硫黄原子を表し、
Z
1およびZ
2は、相互に同一でも異なっていてもよく、炭素原子または窒素原子を表す。)
【請求項6】
前記正孔輸送層と前記発光層との間に電子阻止層を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記電子阻止層が下記一般式(4)で表されるアリールアミン化合物を含有する、請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化44】
(式中、Ar
7~Ar
10は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【請求項8】
前記陽極と前記正孔輸送層との間に正孔注入層を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記正孔注入層が前記一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物および電子アクセプターを含有し、かつ該電子アクセプターがトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)、およびラジアレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つの電子アクセプターである、請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と呼ぶことがある。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であることから、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体と正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるようになった(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、積層構造の各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、および陰極を設けた電界発光素子によって高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、発光効率の更なる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光性化合物の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
そして、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されている。2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって5.3%の外部量子効率を実現させた。(例えば、非特許文献3参照)
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光性化合物や燐光発光性化合物または遅延蛍光を放射する材料をドープして作製することもできる。前記非特許文献に記載されているように、有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。(例えば、非特許文献2参照)
【0007】
有機EL素子は両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られる。高発光効率を得るには、正孔、電子の両電荷の発光層への効率の良い受け渡しや、発光層に注入される両電荷のバランス、生成した励起子の閉じ込めなどが重要となる。正孔輸送層から発光層への正孔注入性を高め、発光層から正孔輸送層への電子の漏れを防ぐ正孔輸送層の電子阻止性を高めると、発光層内での正孔と電子が再結合する確率が向上し、効率よく励起子を生成させることができる。更にこの発光層内で生成した励起子を輸送層に漏らさず、発光層に閉じ込めることで高発光効率を得ることができる。そのため、正孔輸送材料の果たす役割は重要であり、正孔注入性が高く、正孔の移動度が大きく、電子阻止性が高く、さらには電子に対する耐久性が高い正孔輸送材料が求められている。
【0008】
また、素子の寿命に関しては材料の耐熱性やアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料では、素子駆動時に生じる熱により、低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料では、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。そのため使用する材料には耐熱性が高く、アモルファス性が良好な性質が求められる。
【0009】
これまで有機EL素子に用いられてきた正孔輸送材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)や種々の芳香族アミン誘導体が知られていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。NPDは良好な正孔輸送能力を持っているが、耐熱性の指標となるガラス転移点(Tg)が96℃と低く、高温条件下では結晶化による素子特性の低下が起こってしまう(例えば、非特許文献4参照)。また、前記特許文献に記載の芳香族アミン誘導体の中には、正孔の移動度が10-3cm2/Vs以上と優れた移動度を有する化合物が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。しかし、当該化合物は電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できない。更なる高効率化のため、より電子阻止性が高く、薄膜がより安定で耐熱性の高い材料が求められていた。また、耐久性の高い芳香族アミン誘導体の報告がある(例えば、特許文献3参照)。しかし、電子写真感光体に用いられる電荷輸送材料として用いたもので、有機EL素子として用いた例はなかった。
【0010】
耐熱性や正孔注入性などの特性を改良した化合物として、置換カルバゾール構造を有するアリールアミン化合物が提案されている(例えば、特許文献4および特許文献5参照)。しかし、これらの化合物を正孔注入層または正孔輸送層に用いた素子では、耐熱性や発光効率などの改良はされているものの、未だ十分とはいえず、さらなる低駆動電圧化や、さらなる高発光効率化が求められている。
【0011】
上記のように、有機EL素子の素子特性の改善や素子作製の歩留まり向上が求められている。正孔および電子の注入・輸送性能、薄膜の安定性や耐久性に優れた材料を組み合わせることで、正孔および電子が高効率で再結合できる、発光効率が高く、駆動電圧が低く、長寿命な素子が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】日本国特開平8-048656号公報
【文献】日本国特許第3194657号公報
【文献】日本国特許第4943840号公報
【文献】日本国特開2006-151979号公報
【文献】国際公開第2008/062636号
【文献】国際公開第2014/009310号
【非特許文献】
【0013】
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【文献】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【文献】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【文献】有機EL討論会第三回例会予稿集13~14ページ(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、高効率、高耐久性の有機EL素子用の材料として、正孔の注入・輸送性能、電子阻止能力、薄膜状態での安定性、耐久性、に優れた有機EL素子用の材料を用いた有機EL素子を提供することにある。さらには、該材料ならびに、正孔および電子の注入・輸送性能、電子阻止能力、薄膜状態での安定性、耐久性、に優れた有機EL素子用の各種材料を、それぞれの材料が有する特性が効果的に発現できるように組み合わせることで、高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を提供することにある。
【0015】
本発明が提供しようとする有機EL素子が具備すべき物理的な特性としては、(1)発光効率および電力効率が高いこと、(2)発光開始電圧が低いこと、(3)実用駆動電圧が低いこと、特に、(4)長寿命であることをあげることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、インデノフェナントレン骨格を有するアミン系材料が、正孔の注入・輸送能力、薄膜の安定性および耐久性に優れている点に着目した。そして、種々のインデノフェナントレン化合物を選択して、有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。その結果、本発明者らは、特定の構造を有するインデノフェナントレン化合物を正孔輸送層の材料として選択すると、陽極側から注入された正孔を効率良く輸送できるという知見を得た。更に、特定の構造を有する電子輸送材料等を組み合わせた種々の有機EL素子を作製し、素子の特性評価を鋭意行った。その結果、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち本発明によれば、以下の有機EL素子が提供される。
少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が下記一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0018】
【0019】
(式中、R1~R10およびR13は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基および縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表し、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R1~R10およびR13が結合しているベンゼン環と、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R11、R12、R14およびR15は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
ここで、R11とR12またはR14とR15は、それぞれの基同士で単結合、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
A1は単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表す。)
【0020】
【0021】
(式中、R1~R10およびR16は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基および縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表し、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R1~R10およびR16が結合しているベンゼン環と、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R11、R12、R17およびR18は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
ここで、R11とR12またはR17とR18は、それぞれの基同士で単結合、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
A2は単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表す。)
【発明の効果】
【0022】
本発明の有機EL素子は、正孔の注入・輸送の役割を効果的に発現できる特定のインデノフェナントレン化合物を選択したことにより、正孔輸送層から発光層へ正孔を効率良く注入・輸送でき、薄膜の安定性や耐久性に優れ、従来の有機EL素子より高効率、低駆動電圧、長寿命の有機EL素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例12~22、比較例1~4の有機EL素子の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、本実施形態について、その態様を列挙して説明する。なお、本願において「ないし」との用語は範囲を表す用語である。例えば「5ないし10」との記載は、「5以上10以下」を意味し、「ないし」の前後に記載される数値自体も含む範囲を表す。
【0025】
1)少なくとも陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び陰極をこの順に有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記正孔輸送層が下記一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物を含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0026】
【0027】
(式中、R1~R10およびR13は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基および縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表し、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R1~R10およびR13が結合しているベンゼン環と、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R11、R12、R14およびR15は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
ここで、R11とR12またはR14とR15は、それぞれの基同士で単結合、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
A1は単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表す。)
【0028】
【0029】
(式中、R1~R10およびR16は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基および縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基を表し、それぞれの基同士で単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよく、R1~R10およびR16が結合しているベンゼン環と、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
R11、R12、R17およびR18は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表す。
ここで、R11とR12またはR17とR18は、それぞれの基同士で単結合、酸素原子、硫黄原子または連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
A2は単結合、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表す。)
【0030】
2)前記R14、R15、R17およびR18がそれぞれ置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基である、1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0031】
3)前記A1およびA2が単結合である、1)または2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0032】
4)前記電子輸送層が下記一般式(2)で表されるピリミジン環構造を有する化合物を含有する、1)~3)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0033】
【0034】
(式中、Ar1は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
Ar2およびAr3は相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、
Ar4は、置換もしくは無置換の芳香族複素環基を表し、
R19~R22は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。
ここで、Ar2およびAr3は同時に水素原子となることはないものとする。)
【0035】
5)前記電子輸送層が下記一般式(3)で表されるベンゾアゾール環構造を有する化合物を含有する、1)~3)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0036】
【0037】
(式中、Ar5およびAr6は相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、
Y1は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、
Xは酸素原子または硫黄原子を表し、
Z1およびZ2は、相互に同一でも異なっていてもよく、炭素原子または窒素原子を表す。)
【0038】
6)前記正孔輸送層と前記発光層との間に電子阻止層を有する、1)~5)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0039】
7)前記電子阻止層が下記一般式(4)で表されるアリールアミン化合物を含有する、6)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0040】
【0041】
(式中、Ar7~Ar10は相互に同一でも異なってもよく、それぞれ置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【0042】
8)前記陽極と前記正孔輸送層との間に正孔注入層を有する、1)~7)のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0043】
9)前記正孔注入層が前記一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物および電子アクセプターを含有し、かつ該電子アクセプターがトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)、およびラジアレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つの電子アクセプターである、8)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0044】
一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0045】
一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基などの炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などの炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基および芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに、前記例示した置換基が置換していても良い。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0046】
一般式(1a)および(1b)中のR1~R10、R13およびR16で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」における「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」または「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基などをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0047】
一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。「芳香族炭化水素基」または「縮合多環芳香族基」の炭素原子数としては、例えば6~30が挙げられる。「芳香族複素環基」の炭素原子数としては、例えば2~20が挙げられる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0048】
一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができ、これらの基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0049】
一般式(1a)および(1b)中のR1~R10、R13およびR16で表される「芳香族炭化水素基、芳香族複素環基および縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」に関して示したものと同様のものをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0050】
R1~R10、R13およびR16は、R1~R10、R13およびR16が結合しているベンゼン環と、連結基を介して互いに結合して環を形成している場合の連結基としては、置換もしくは無置換のメチレン基、一置換アミノ基などが挙げられる。また、R11とR12、R14とR15またはR17とR18は、それぞれの基同士で連結基を介して互いに結合して環を形成している場合の、連結基としては、置換もしくは無置換のメチレン基、一置換アミノ基などが挙げられる。
【0051】
一般式(1a)中のA1および一般式(1b)中のA2で表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」における「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族」の「芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」または「縮合多環芳香族」としては、具体的に、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラキスフェニル、スチレン、ナフタレン、アントラセン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、インダン、ピレン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドリン、カルバゾール、カルボリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフチリジン、フェナントロリン、アクリジンなどをあげることができる。
そして、一般式(1a)中のA1および一般式(1b)中のA2で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」は、上記「芳香族炭化水素」、「芳香族複素環」または「縮合多環芳香族」から水素原子を2個取り除いてできる2価基を表す。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)および(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0052】
一般式(1a)および一般式(1b)中のR1~R10、R13およびR16は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると好ましく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると更に好ましく、それぞれ同一で水素原子であると特に好ましい。
【0053】
一般式(1a)および一般式(1b)中のR11およびR12は、それぞれ同一でも異なってもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると更に好ましく、相互に同一で無置換の炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または無置換の炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると更に一層好ましく、相互に同一でメチル基またはフェニル基であると特に好ましい。
【0054】
一般式(1a)および一般式(1b)中のR14、R15、R17およびR18は、それぞれ同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると好ましく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると好ましく、置換された芳香族炭化水素基、または置換された縮合多環芳香族基であると更に好ましく、置換された芳香族炭化水素基であると特に好ましい。
R14、R15、R17およびR18における置換基としては、重水素原子;炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基;炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;芳香族複素環基;ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミノ基;ジピリジルアミノ基、ジチエニルアミノ基などの芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基;または芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基および芳香族複素環基から選択される置換基で置換されたジ置換アミノ基であると好ましく、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると更に好ましく、無置換の炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または無置換の炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると特に好ましい。
【0055】
A1およびA2としては、単結合または無置換の芳香族炭化水素もしくは縮合多環芳香族基の二価基であると好ましく、単結合または無置換の炭素数6ないし20の芳香族炭化水素もしくは縮合多環芳香族基の二価基であると更に好ましく、単結合またはフェニレン基であると更に一層好ましく、単結合であると特に好ましい。
【0056】
一般式(2)中のAr1~Ar3で表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基のような基をあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)、(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0057】
一般式(2)中のAr4で表される、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」における「芳香族複素環基」としては、具体的に、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基のような基をあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)、(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0058】
一般式(2)中のR19~R22で表される、「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、3-メチルブチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基およびtert-ヘキシル基をあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)、(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0059】
一般式(2)中のR19~R22で表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基のような基をあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)、(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0060】
一般式(2)中のAr1は、炭素数6~20の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると好ましい。
Ar1における置換基としては、重水素原子、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または芳香族複素環基であると好ましく、重水素原子または炭素原子数6ないし20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると更に好ましく、重水素原子または無置換の炭素原子数6ないし20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると更に一層好ましく、無置換の炭素原子数6ないし20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると特に好ましい。
【0061】
一般式(2)中のAr2およびAr3は、一方が水素原子であると好ましい。Ar2およびAr3の一方が水素原子である場合の他方は、炭素原子数6ないし20の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると好ましく、炭素原子数6ないし20の置換された芳香族炭化水素基もしくは無置換の縮合多環芳香族基であるとさらに好ましい。
Ar2およびAr3における置換基としては、重水素原子、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または芳香族複素環基であると好ましく、炭素原子数6ないし20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると更に好ましく、無置換の炭素原子数6ないし20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると特に好ましい。
【0062】
一般式(2)中のAr4は、置換もしくは無置換の含窒素芳香族複素環基であると好ましく、無置換の含窒素芳香族複素環基であると更に好ましく、炭素原子数5ないし10の無置換の含窒素芳香族複素環基であると更に一層好ましく、炭素原子数5ないし10であって窒素原子を1つ含有する無置換の芳香族複素環基であると特に好ましい。
【0063】
一般式(2)中のR19~R22は、水素原子、重水素原子、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると好ましく、水素原子、重水素原子、または炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であると更に好ましく、それぞれ同一で水素原子であると特に好ましい。
【0064】
一般式(3)中のAr5、Ar6、Y1で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などの他に、炭素数6~30からなるアリール基、または炭素数2~20からなるヘテロアリール基から選択される。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)、(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0065】
一般式(3)中のAr5、Ar6、Y1で表される「置換もしくは無置換のアルキル基」における「アルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基などをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)、(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0066】
一般式(3)中のAr5およびAr6は相互に同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると好ましく、炭素原子数6ないし30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または炭素原子数2ないし20の置換もしくは無置換の芳香族複素環基であると更に好ましく、炭素原子数6ないし20の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると特に好ましい。
Ar5およびAr6における置換基としては、炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または炭素原子数2ないし20の芳香族複素環基であると好ましく、炭素原子数6ないし20の無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または炭素原子数2ないし10の無置換の芳香族複素環基であると更に好ましい。
【0067】
一般式(3)中のY1は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基であると好ましく、炭素原子数6ないし30の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または炭素原子数2ないし20の置換もしくは無置換の芳香族複素環基であると更に好ましく、炭素原子数6ないし20の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると特に好ましい。
Y1における置換基としては、炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または炭素原子数2ないし20の芳香族複素環基であると好ましく、炭素原子数6ないし20の無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または炭素原子数2ないし10の無置換の芳香族複素環基であると更に好ましい。
【0068】
一般式(3)中のXは酸素原子であると好ましい。また、一般式(3)中のZ1およびZ2は、相互に同一で炭素原子であると好ましい。
【0069】
一般式(4)中のAr7~Ar10で表される「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。
また、これらの基は置換基を有していてよく、置換基として、前記一般式(1a)、(1b)中のR1~R18で表される「置換基を有する炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」に関して示したものと同様のものをあげることができ、とりうる態様も、同様のものをあげることができる。
【0070】
一般式(4)中のAr7~Ar10はそれぞれ同一でも異なってもよく、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると好ましく、置換もしくは無置換の炭素数6ないし20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基であると更に好ましい。
Ar7~Ar10における置換基としては、炭素原子数6ないし30の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基または炭素原子数2ないし20の芳香族複素環基であると好ましい。
【0071】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1a)、(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物は、有機EL素子の正孔注入層または正孔輸送層の構成材料として使用することができる。前記一般式(1a)、(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物は、正孔の移動度が高く正孔注入層または正孔輸送層の材料として好ましい化合物である。
【0072】
本実施形態の有機EL素子は、従来の正孔輸送材料より正孔の移動度が大きく、優れた電子の阻止能力を有し、優れたアモルファス性を有し、かつ薄膜状態が安定な、インデノフェナントレン化合物を用いているため、高効率、低駆動電圧であって、特に長寿命の有機EL素子を実現することが可能である。
【0073】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1a)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0074】
【0075】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0076】
【0077】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(2)で表されるピリミジン環構造を有する化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
尚、上述したピリミジン環構造を有する化合物は、それ自体公知の方法に準じて合成することができる。
【0085】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(3)で表されるベンゾオキサゾール化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(3)で表されるベンゾチアゾール化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
本実施形態の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(4)で表されるアリールアミン化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
一般式(1a)、(1b)および(2)~(4)で表される化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行い、最終的には、昇華精製などによる精製を行う。化合物の同定は、NMR分析によって行う。物性値として、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定を行う。ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となり、仕事関数は正孔輸送性の指標となるものである。
【0109】
融点とガラス転移点(Tg)は、粉体を用いて高感度示走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって測定する。正孔輸送層に含まれる一般式(1a)または(1b)で表される化合物の融点は、200℃以上であると好ましく、240℃以上であると更に好ましい。融点の上限は特に限定されるものではないが、例えば400℃以下の化合物を採用できる。また、正孔輸送層に含まれる一般式(1a)または(1b)で表される化合物のガラス転移点は、形成された薄膜の安定性の観点から100℃以上であると好ましく、130℃以上であると更に好ましい。ガラス転移点の上限は特に限定されるものではないが、例えば250℃以下の化合物を採用できる。
【0110】
仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって求める。正孔輸送層に含まれる一般式(1a)または(1b)で表される化合物を用いてITO基板の上に作成した、膜厚100nmの蒸着膜における仕事関数は、正孔輸送能力の観点から5.4eVよりも大きいと好ましく、5.5eV以上であると更に好ましい。この蒸着膜の仕事関数の上限は特に限定されるものではないが、例えば6.0eV以下の蒸着膜とすることができる。
【0111】
本実施形態の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び陰極からなるもの、また、正孔輸送層と発光層の間に電子阻止層を有するもの、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略あるいは兼ねることが可能であり、例えば正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすること、などもできる。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることが可能であり、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成、などもできる。
【0112】
本実施形態の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。本実施形態の有機EL素子の正孔注入層として、前記一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物を用いることができる。そのほか、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料;銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料、などを用いることができる。また、電子アクセプターとして、トリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)、およびラジアレン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つの電子アクセプターを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で異なる化合物を混合して成膜した層としてもよい。例えば一般式(1a)で表される化合物と、一般式(1b)で表される化合物とを混合して使用してもよいし、一般式(1a)で表される化合物の中で異なる化合物を混合して使用してもよい。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で異なる化合物をそれぞれ単層として形成して積層させてもよい。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で異なる化合物を混合して成膜した層と、異なる化合物のうちの1種類で形成した層とを積層してもよい。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で異なる化合物を混合する場合の、その混合比は適宜設定可能である。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物とその他の材料を併用する場合、これらの混合比としては、一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物:その他の材料=100:1~1:1とすることができ、好ましくはインデノフェナントレン化合物:その他の材料=100:1~4:1とすることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0113】
本実施形態の有機EL素子の正孔輸送層としては、前記一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物が用いられる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で異なる化合物を混合して成膜した層としてもよい。例えば一般式(1a)で表される化合物と、一般式(1b)で表される化合物とを混合して使用してもよいし、一般式(1a)で表される化合物の中で異なる化合物を混合して使用してもよい。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で異なる化合物をそれぞれ単層として形成して積層させてもよい。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で異なる化合物を混合して成膜した層と、異なる化合物のうちの1種類で形成した層とを積層してもよい。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物の中で異なる化合物を混合する場合の、その混合比は適宜設定可能である。一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物とその他の材料を併用する場合、これらの混合比としては、一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物:その他の材料=100:1~1:1とすることができ、好ましくはインデノフェナントレン化合物:その他の材料=100:1~4:1とすることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0114】
本実施形態の有機EL素子の正孔輸送層として、前記一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物と混合もしくは同時に使用できる、正孔輸送性の材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)などの、分子中にトリフェニルアミン構造を2個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、分子中にトリフェニルアミン構造を4個単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、種々のトリフェニルアミン3量体などを用いることができる。また、正孔の注入・輸送層として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリ(スチレンスルフォネート)(PSS)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。
【0115】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(例えば、特許文献6参照)などをPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0116】
本実施形態の有機EL素子の電子阻止層として、前記一般式(4)で表されるアリールアミン化合物を用いることができる。そのほか、分子中にトリフェニルアミン構造を4個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、分子中にトリフェニルアミン構造を2個、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン(Ad-Cz)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。一般式(4)で表されるアリールアミン化合物とその他の材料を併用する場合、これらの混合比としては、一般式(4)で表されるアリールアミン化合物:その他の材料=100:1~1:100とすることができ、好ましくは一般式(4)で表されるアリールアミン化合物:その他の材料=100:1~1:1とすることができ、さらに好ましくは一般式(4)で表されるアリールアミン化合物:その他の材料=100:1~4:1とすることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0117】
本実施形態の有機EL素子の発光層として、Alq3をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成しても良く、ホスト材料として、アントラセン誘導体が好ましく用いられるが、そのほか、前記発光材料に加え、インドール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、ピレン誘導体、フルオレン環を縮合環の部分構造として有するアミン誘導体が好ましく用いられるが、そのほか、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン、およびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、インデノフェナントレン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。
【0118】
また、発光材料として燐光発光体を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)3などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、Btp2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては正孔注入・輸送性のホスト材料として4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBI)などを用いることができ、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0119】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0120】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(例えば、非特許文献3参照)
【0121】
これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0122】
本実施形態の有機EL素子の正孔阻止層として、バソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(BAlq)などのキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の希土類錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0123】
本実施形態の有機EL素子の電子輸送層として、前記一般式(2)で表されるピリミジン環構造を有する化合物、前記一般式(3)で表されるベンゾアゾール環構造を有する化合物またはその両方を用いることができる。そのほか、Alq3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、ピリドインドール誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。一般式(2)で表されるピリミジン環構造を有する化合物とその他の材料を併用する場合、これらの混合比としては、一般式(2)で表されるピリミジン環構造を有する化合物:その他の材料=100:1~1:100とすることができ、好ましくは一般式(2)で表されるピリミジン環構造を有する化合物:その他の材料=4:1~1:4とすることができる。また、一般式(3)で表されるベンゾアゾール環構造を有する化合物とその他の材料を併用する場合、これらの混合比としては、一般式(3)で表されるベンゾアゾール環構造を有する化合物:その他の材料=100:1~1:100とすることができ、好ましくは一般式(3)で表されるベンゾアゾール環構造を有する化合物:その他の材料=4:1~1:4とすることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0124】
本実施形態の有機EL素子の電子注入層として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、あるいはイッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)などの金属などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0125】
本実施形態の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【0126】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0127】
<N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-4)の合成>
窒素置換した反応容器に、ビスビフェニルアミン18.9g、11-ブロモ-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン20.0g、t-ブトキシナトリウム6.2g、トルエン200mLを入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、酢酸パラジウム0.24g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.43mLを加えて、当該溶液を加熱し、100℃で4時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、水を加え分液した後、濃縮を行った。続いて、テトラヒドロフラン、アセトンで再結晶を行い、固体をろ過によって採取し、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-4)の黄白色粉体20.8g(収率63%)を得た。
【0128】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の35個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.87-8.92(3H)、8.34-8.37(2H)、7.26-7.79(24H)、1.79(6H)。
【実施例2】
【0129】
<N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-7)の合成>
窒素置換した反応容器に、N-(ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチルフルオレン-2-アミン5.0g、11-ブロモ-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン5.9g、t-ブトキシナトリウム1.6g、トルエン50mLを入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、酢酸パラジウム0.1g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.2mLを加えて、当該溶液を加熱し、100℃で3時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、80℃でセライトを用いて熱濾過を行い、濾液を濃縮した。続いて、カラムクロマトグラフィーで精製し、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-7)の黄白色粉体4.8g(収率53%)を得た。
【0130】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の39個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.87-8.92(3H)、8.34-8.37(2H)、7.26-7.79(22H)、1.78(6H)、1.50(6H)。
【実施例3】
【0131】
<N-(ビフェニル-4-イル)-N-{4-(ナフタレン-2-イル)フェニル}-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-10)の合成>
窒素置換した反応容器に、N-(2-ナフチルフェニル)ビフェニルアミン5.4g、11-ブロモ-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン6.0g、t-ブトキシナトリウム1.7g、トルエン54mLを入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、酢酸パラジウム0.1g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.2mLを加えて、当該溶液を加熱し、100℃で3時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、80℃でセライトを用いて熱濾過を行い、濾液を濃縮した。続いて、カラムクロマトグラフィーで精製し、N-(ビフェニル-4-イル)-N-{4-(ナフタレン-2-イル)フェニル}-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-10)の黄白色粉体5.8g(収率60%)を得た。
【0132】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の37個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.87-8.93(3H)、8.34-8.39(2H)、7.94(1H)、7.28-7.84(25H)、1.81(6H)。
【実施例4】
【0133】
<N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-14)の合成>
窒素置換した反応容器に、ビスビフェニルアミン5.7g、11-ブロモ-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン8.0g、t-ブトキシナトリウム1.9g、トルエン80mLを入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、酢酸パラジウム0.1g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.13mLを加えて、当該溶液を加熱し、100℃で5時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、水を加えトルエンで抽出し、有機層を濃縮した。続いて、トルエン、アセトンで再結晶し、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-14)の黄白色粉体7.5g(収率63%)を得た。
【0134】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の39個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.99-9.00(1H)、8.90-8.97(1H)、8.76-8.79(1H)、8.34-8.37(1H)、7.78-7.85(3H)、7.18-7.66(32H)。
【実施例5】
【0135】
<N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-17)の合成>
窒素置換した反応容器に、N-(ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチルフルオレン-2-アミン6.4g、11-ブロモ-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン8.0g、t-ブトキシナトリウム1.9g、トルエン80mLを入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、酢酸パラジウム0.1g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.13mLを加えて、当該溶液を加熱し、100℃で6時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、水を加えトルエンで抽出し、有機層を濃縮した。続いて、トルエン、アセトンで再結晶し、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン(化合物1a-17)の黄白色粉体9.8g(収率78%)を得た。
【0136】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の43個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.99-9.03(1H)、8.92-8.97(1H)、8.76-8.79(1H)、8.34-8.37(1H)、7.16-7.82(33H)、1.40(6H)。
【実施例6】
【0137】
<N-(ビフェニル-4-イル)-N-{4-(ナフタレン-2-イル)フェニル}-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-20)の合成>
窒素置換した反応容器に、N-(2-ナフチルフェニル)ビフェニルアミン6.6g、11-ブロモ-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン8.0g、t-ブトキシナトリウム1.9g、トルエン80mLを入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、酢酸パラジウム0.1g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.19mLを加えて、当該溶液を加熱し、100℃で7時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、水を加えトルエンで抽出し、有機層を濃縮した。続いて、トルエン、アセトンで再結晶し、N-(ビフェニル-4-イル)-N-{4-(ナフタレン-2-イル)フェニル}-13,13-ジフェニルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-アミン(化合物1a-20)の黄白色粉体8.6g(収率68%)を得た。
【0138】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の41個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.99-9.03(1H)、8.89-8.95(1H)、8.76-8.79(1H)、8.35-8.38(1H)、8.09(1H)、7.20-7.98(36H)。
【実施例7】
【0139】
<N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-{2-(13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-イル)フェニル}アミン(化合物1a-23)の合成>
窒素置換した反応容器に、ビス(ビフェニル-4-イル)[2-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]アミン5.2g、11-ブロモ-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン4.0g、トルエン35mL、エタノール20mL、炭酸カリウム2.2gを水15mLに溶解した溶液を入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.3gを加えて、当該溶液を加熱し、75℃で12時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、室温でメタノール100mLを加え、析出した固体を濾過により採取した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製し、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-{2-(13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-11-イル)フェニル}アミン(化合物1a-23)の白色粉体2.7g(収率37%)を得た。
【0140】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の39個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.85-8.93(3H)、8.26-8.35(2H)、7.68-7.77(4H)、6.98-7.56(24H)、1.64(6H)。
【実施例8】
【0141】
<N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-3-アミン(化合物1b-4)の合成>
窒素置換した反応容器に、9-フェナントレンボロン酸30.0g、2-ブロモ安息香酸メチル34.9g、トルエン240mL、エタノール120mL、炭酸カリウム28.0gを水95mLに溶解した溶液を入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム3.1gを加えて、当該溶液を加熱し、72℃で6時間撹拌した。撹拌後、反応液を分液し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾過により除き、濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、2-(9-フェナントレニル)安息香酸メチルの黄白色粉体35.4g(収率81.2%)を得た。
【0142】
反応容器に2-(9-フェナントレニル)安息香酸メチル35.0g、エタノール280mL、水酸化ナトリウム5.4gを入れて加熱し、70℃で5時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、2M塩酸を加え、中和し、室温で1時間撹拌した。析出した固体を濾過により採取し、水、メタノールで順次洗浄し2-(9-フェナントレニル)安息香酸の黄色粉体27.4g(収率94.5%)を得た。
【0143】
反応容器に2-(9-フェナントレニル)安息香酸32.0g、メタンスルホン酸260mLを入れて加熱し、50℃で3日間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、氷水にゆっくり加え、析出した固体を濾過により採取した。得られた固体にクロロベンゼン640mLを加え、加熱し、水を除いた後にシリカゲルを加えて1時間撹拌した。80℃で熱濾過により、シリカゲルを除去し、濾液を濃縮した。残渣をクロロベンゼン、アセトンの再結晶により精製し、インドロ[1,2-l]フェナントレン-13-オンのオレンジ色粉体27.3g(収率90.7%)を得た。
【0144】
窒素置換した反応容器にインドロ[1,2-l]フェナントレン-13-オン27.0g、ジクロロメタン216mLを入れて、氷浴で冷却した。臭素18.5gとジクロロメタン54mLを混合した溶液を30分かけて滴下し、室温で1日撹拌した。撹拌後、チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、1時間撹拌した。析出した固体を濾過により採取し、クロロベンゼン、アセトンの再結晶により精製し、3-ブロモインドロ[1,2-l]フェナントレン-13-オンの黄色粉体33.6g(収率100%)を得た。
【0145】
反応容器に酢酸240mL、ヨウ素19.6g、次亜リン酸83.0gを入れて、80℃まで加熱した。そこに、3-ブロモインドロ[1,2-l]フェナントレン-13-オン33.6gを酢酸35mLに溶かした溶液を滴下し、100℃で1日撹拌した。撹拌後、室温まで冷却し、水200mLを加え、析出した固体を濾過により採取した。固体を水、メタノールで順次洗浄し、3-ブロモインドロ[1,2-l]フェナントレンの黄色粉体30.5g(収率94.4%)を得た。
【0146】
窒素置換した反応容器に3-ブロモインドロ[1,2-l]フェナントレン30.0g、テトラヒドロフラン300mLを入れて、氷浴で冷却した。カリウムt-ブトキシド34.1gをゆっくり加え、室温までゆっくり昇温し2時間撹拌した。撹拌後、再び氷浴で冷却し、ヨードメタン49.3gをゆっくり適下した。室温まで昇温し、一晩撹拌した。撹拌後、反応液を分液し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾過により除き、濾液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、3-ブロモ-13,13-ジメチルインドロ[1,2-l]フェナントレンの黄白色粉体22.1g(収率68.1%)を得た。
【0147】
窒素置換した反応容器に、ビスビフェニルアミン4.3g、3-ブロモ-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン5.5g、t-ブトキシナトリウム1.5g、トルエン43mLを入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、酢酸パラジウム0.06g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.20mLを加えて、当該溶液を加熱し、100℃で3時間撹拌した。撹拌後、反応液を80℃まで冷却し、シリカゲル8.2g、トルエン50mLを加え、熱濾過により固体を除去した。ろ液を濃縮し、残渣をトルエン、アセトンの再結晶により精製し、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-3-アミン(化合物1b-4)の黄白色粉体4.5g(収率55%)を得た。
【0148】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の35個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.96-8.98(1H)、8.66(1H)、8.55-8.58(1H)、8.46-8.49(1H)、8.30-8.33(1H)、7.36-7.76(24H)、1.84(6H)。
【実施例9】
【0149】
<N-(ビフェニル-4-イル)-N-{4-(ナフタレン-2-イル)フェニル}-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-3-アミン(化合物1b-10)の合成>
窒素置換した反応容器に、N-(2-ナフチルフェニル)ビフェニルアミン5.0g、3-ブロモ-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン5.5g、t-ブトキシナトリウム1.5g、トルエン50mLを入れて、30分間超音波を照射しながら窒素ガスを通気した。窒素ガスを通気した溶液に、酢酸パラジウム0.06g、t-ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液0.2mLを加えて、当該溶液を加熱し、100℃で3時間撹拌した。撹拌後、反応液を冷却し、80℃でセライトを用いて熱濾過を行い、濾液を濃縮した。残渣をトルエン、アセトンの再結晶により精製し、N-(ビフェニル-4-イル)-N-{4-(ナフタレン-2-イル)フェニル}-13,13-ジメチルインデノ[1,2-l]フェナントレン-3-アミン(化合物1b-10)の黄白色粉体5.6g(収率63%)を得た。
【0150】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の37個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.99-9.02(1H)、8.71(1H)、8.59-8.61(1H)、8.49-8.52(1H)、8.33-8.36(1H)、8.13(1H)、7.39-7.98(25H)、1.86(6H)。
【実施例10】
【0151】
一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によって融点とガラス転移点を求めた。
融点 ガラス転移点
実施例1の化合物 観測されず 130℃
実施例2の化合物 観測されず 148℃
実施例3の化合物 観測されず 137℃
実施例4の化合物 281℃ 153℃
実施例5の化合物 290℃ 163℃
実施例6の化合物 観測されず 157℃
実施例7の化合物 305℃ 136℃
実施例8の化合物 245℃ 139℃
実施例9の化合物 観測されず 142℃
【0152】
一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物は100℃以上のガラス転移点を有している。これは、薄膜状態が安定であることを示すものである。
【実施例11】
【0153】
一般式(1a)または(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202型)で仕事関数を測定した。
仕事関数
実施例1の化合物 5.58eV
実施例2の化合物 5.53eV
実施例3の化合物 5.57eV
実施例4の化合物 5.58eV
実施例5の化合物 5.54eV
実施例6の化合物 5.59eV
実施例7の化合物 5.69eV
実施例8の化合物 5.61eV
実施例9の化合物 5.60eV
【0154】
一般式(1a)、(1b)で表されるインデノフェナントレン化合物はNPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.4eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していることが分かる。
【実施例12】
【0155】
本実施例における有機EL素子は、
図1に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものを用意し、その上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、電子阻止層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、および陰極(アルミニウム電極)9をこの順に蒸着して作製した。
【0156】
具体的には、以下の手順により有機EL素子を作製した。膜厚50nmのITOを成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、200℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥した。その後、UVオゾン処理を15分間行った後、このITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。続いて、下記構造式の電子アクセプター(Acceptor-1)と実施例1の化合物(1a-4)を、蒸着速度比が(Acceptor-1):化合物(1a-4)=3:97となる蒸着速度で透明陽極2の上に二元蒸着した。これにより、透明陽極2を覆う正孔注入層3を、膜厚10nmとなるように形成した。この正孔注入層3の上に実施例1の化合物(1a-4)を蒸着し、正孔輸送層4を膜厚50nmとなるように形成した。この正孔輸送層4の上に下記構造式の化合物(4-158)を蒸着し、電子阻止層5を膜厚5nmとなるように形成した。この電子阻止層5の上に、下記構造式の化合物(EMD-1)と下記構造式の化合物(EMH-1)を、蒸着速度比が(EMD-1):(EMH-1)=5:95となる蒸着速度で二元蒸着した。これにより、発光層6を膜厚20nmとなるように形成した。この発光層6の上に、下記構造式の化合物(2-125)と下記構造式の化合物(ETM-1)を、蒸着速度比が化合物(2-125):(ETM-1)=50:50となる蒸着速度で二元蒸着した。これにより、電子輸送層7を膜厚30nmとなるように形成した。この電子輸送層7の上にフッ化リチウムを蒸着し、電子注入層8を膜厚1nmとなるように形成した。最後に、アルミニウムを蒸着して、陰極9を膜厚100nmとなるように形成した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0157】
【実施例13】
【0158】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例2の化合物(1a-7)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例14】
【0159】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例3の化合物(1a-10)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例15】
【0160】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例4の化合物(1a-14)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例16】
【0161】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例5の化合物(1a-17)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例17】
【0162】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例6の化合物(1a-20)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例18】
【0163】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例7の化合物(1a-23)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例19】
【0164】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例8の化合物(1b-4)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例20】
【0165】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例7の化合物(1b-10)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例21】
【0166】
実施例12において、電子輸送層7の材料として化合物(2-125)に代えて化合物(3a-118)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0167】
【実施例22】
【0168】
実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて実施例4の化合物(1a-14)を用いて、かつ電子輸送層7の材料として化合物(2-125)に代えて化合物(3a-118)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0169】
[比較例1]
比較のために、実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて下記構造式の化合物(HTM-1)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0170】
【0171】
[比較例2]
比較のために、実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて下記構造式の化合物(HTM-2)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0172】
【0173】
[比較例3]
比較のために、実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて上記構造式の化合物(HTM-1)を用いて、かつ電子輸送層7の材料として化合物(2-125)に代えて化合物(3a-118)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0174】
[比較例4]
比較のために、実施例12において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として実施例1の化合物(1a-4)に代えて上記構造式の化合物(HTM-2)を用いて、かつ電子輸送層7の材料として化合物(2-125)に代えて化合物(3a-118)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0175】
実施例12~22および比較例1~4で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した結果を表1にまとめて示した。素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を2000cd/m2として定電流駆動を行った時、発光輝度が1900cd/m2(初期輝度を100%とした時の95%に相当:95%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0176】
【0177】
表1に示すように、電流密度10mA/cm2の電流を流したときの発光効率は、比較例1~4の有機EL素子では7.10~7.49cd/Aであった。これに対し、実施例12~22の有機EL素子では発光効率は7.59~8.80cd/Aであり、いずれも高効率であった。
また、電力効率は、比較例1~4の有機EL素子では5.94~6.39lm/Wであった。これに対し、実施例12~22の有機EL素子では電力効率は6.71~7.78lm/Wであり、高効率であった。
一方、素子寿命(95%減衰)は、比較例1~4の有機EL素子では115~147時間であった。これに対し、実施例12~22の有機EL素子では素子寿命は186~302時間であり、長寿命化していることが分かる。
【0178】
本発明の有機EL素子は、正孔注入層の材料として特定のインデノフェナントレン化合物を選択することによって、電極から正孔輸送層へ正孔を効率良く注入・輸送できる。これにより、有機EL素子内部のキャリアバランスを改善し、従来の有機EL素子と比較して、高発光効率、かつ長寿命の有機EL素子を実現できることが分かった。
【0179】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願は、2018年2月15日付で出願された日本国特許出願(特願2018-25363)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の、特定のインデノフェナントレン化合物を正孔輸送層の材料として用いた有機EL素子は、発光効率が向上するとともに、有機EL素子の耐久性を改善させることができ、例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能である。
【符号の説明】
【0181】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 電子阻止層
6 発光層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極