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特許7216702分散液、層状体(1)、層状体(1)を製造する方法、層状体(1)の使用、および治療的送電システムまたは受電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】分散液、層状体(1)、層状体(1)を製造する方法、層状体(1)の使用、および治療的送電システムまたは受電システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/268 20210101AFI20230125BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230125BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20230125BHJP
   C09J 155/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A61B5/268
C09J7/38
C09J9/02
C09J155/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020501827
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2018069933
(87)【国際公開番号】W WO2019020571
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】17183580.4
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ザウター アーミン
(72)【発明者】
【氏名】アスムス ティム
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/115440(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/043025(WO,A1)
【文献】特開2000-060815(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0005667(US,A1)
【文献】特開2001-299713(JP,A)
【文献】Byeonggwan Kim et al.,Waterborne Polyacrylic/PEDOT Nanocomposites for Conducutive Transparent Adhesives,Journal of Nanoscience and Nanotechnology,2013年,Vol.13,p.7631-7636
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61N 1/04
C09J 7/00-7/50
C09J 9/02
C09J 155/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散液であって、
i)一般構造:-CH-CHR-COOR-を持つ繰返し単位を含む重合体の粒子A)、
式中、RはHまたはアルキル基を表し、かつ
は、置換されていてもよいC~C10アルキル基を表し、
この粒子A)の質量平均粒子径(d50)は、800~5000nmの範囲である、
ii)導電性重合体の粒子B)、
この粒子B)の質量平均粒子径は、25~150nmの範囲であ
前記導電性重合体の粒子B)は、陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子であり、
および
iii)少なくとも1つの分散剤、
を含み、
前記粒子B)の複合物の前記陽イオン性ポリチオフェンおよび前記重合性陰イオンの総重量に対する前記粒子A)の重合体の重量比は、15:1よりも大きく
前記分散液は、前記粒子A)の重合体を10~80重量%の範囲で、かつ前記粒子B)の導電性重合体を0.01~5重量%の範囲で、それぞれ前記分散液の全重量に対して、含む、分散液。
【請求項2】
前記粒子A)の重合体の重量:前記粒子B)の導電性重合体の重量は、少なくとも20:1である、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記粒子A)の重合体の重量:前記粒子B)の導電性重合体の重量は、少なくとも25:1である、請求項1に記載の分散液。
【請求項4】
前記粒子A)は、少なくとも900nmの質量平均粒子径(d50)を有する、請求項1に記載の分散液。
【請求項5】
前記粒子A)は、少なくとも1000nmの質量平均粒子径(d50)を有する、請求項1に記載の分散液。
【請求項6】
前記粒子A)の重合体のガラス転移温度は、35℃未満である、請求項1~のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項7】
はHであり、かつRは、-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項8】
前記粒子A)の重合体中の繰返し単位の総数に対して、前記粒子A)の重合体中の少なくとも25%の前記繰返し単位は、RがHであり、かつRが-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される単量体である、請求項1~のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項9】
前記粒子A)の重合体は、アクリル酸またはアクリル酸塩またはそれら両方と、アクリル酸エステルとの共重合体であり、前記アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸n-オクチルからなる群より選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項10】
前記粒子B)の導電性重合体は、PEDOT/PSS複合物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項11】
前記分散液はさらに、構成成分iv)として、(1013mbarで)少なくとも120℃の沸点を有する高沸点極性化合物を含み、前記高沸点極性化合物は、ジオール、トリオールおよびスルホキシドからなる群から選ばれる、請求項1~10のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項12】
前記高沸点極性化合物は、エチレングリコールである、請求項11に記載の分散液。
【請求項13】
層状体(1)であって、
I)基材(2)、
II)導電性粘着層(3)を含み、
前記導電性粘着層(3)は、前記基材(2)の少なくとも一表面の少なくとも一部分に重ね置かれ、
前記導電性粘着層(3)は、
IIa)一般構造:-CH-CHR-COOR-を持つ繰返し単位を含む重合体、
式中、RはHまたはアルキル基を表し、かつRは、置換されていてもよいC~C10アルキル基を表し、
前記重合体は、前記導電性粘着層(3)の母材を形成する、
IIb)前記母材中に分布した導電性重合体の粒子を含み、
前記導電性重合体の粒子は、陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子であり、
前記導電性粘着層は、断面方向の比抵抗(R断面)が100Ωm未満であり、幅方向の比抵抗(R)が5000Ωm未満であることを特徴とする、層状体(1)。
【請求項14】
前記導電性粘着層(3)は、ヒトの皮膚に自己粘着性である、請求項13に記載の層状体(1)。
【請求項15】
前記導電性重合体の粒子は、陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子であり、ヒトの皮膚に自己粘着性である、請求項13または14に記載の層状体(1)。
【請求項16】
前記母材は、前記重合体IIa)の複数の島部を含み、前記島部の寸法は少なくとも1×10-6mmである、請求項1315に記載のいずれか一項に記載の層状体(1)。
【請求項17】
重合体iia)は請求項2~5に規定され、粒子IIb)はPEDOT/PSS粒子である、請求項1316に記載のいずれか一項に記載の層状体(1)。
【請求項18】
層状体(1)を製造する方法であって、
α1)請求項1~12のいずれか一項に規定された分散液を用意する工程、
α2)基材(2)の少なくとも一表面の少なくとも一部分に前記分散液を塗布する工程、
α3)導電性粘着層を生成するように、分散剤iii)を少なくとも部分的に除去する工程を含み、前記分散剤の少なくとも部分的な除去は、前記基材に塗布された前記分散液を前記粒子A)の重合体のガラス転移温度を超える温度に加熱して達成される、方法。
【請求項19】
前記導電性粘着層(3)が前記皮膚と直接接触する電気物理的測定のための請求項1317のいずれか一項に記載の層状体(1)の使用。
【請求項20】
治療的送電システムまたは受電システムであって、
エレクトログラフ(ECG)装置、脳波計装置、筋電図装置、経皮電気神経刺激装置、電気筋肉刺激装置、神経筋刺激装置、および機能的電気刺激装置からなる群から選ばれる治療的送電装置または受電装置、
前記治療的送電装置または受電装置に接続された少なくとも1本のケーブルコネクタ、
前記少なくとも1本のケーブルコネクタに接続された請求項1317のいずれか一項に記載の層状体(1)を含む少なくとも1個の電極を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自己粘着性電極貼付剤として使用できる層状体、この層状体を製造することができる分散液、この層状体の製造方法、その方法により得られる層状体、電気物理的測定への層状体の使用、および治療的送電システムまたは受電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚表面電極は、例えば心電図検査(ECG)、筋電図検査(EMG)、脳波検査(EEG)などの多くの医療診断システムで重要な構成部品である。これらシステムでは、電極は、ECG、EMG、EEGでのそれぞれ心臓、筋肉、脳などの生理的変数を電位に変換する変換器として重要な役割を果たす。測定された電位は、次に電子測定回路およびコンピュータなどの機器によって増幅かつ処理される。
【0003】
短期間の使用に最適化された導電性電極および/または放熱性電極の分野の最新技術としては、例えば特許文献1に開示される水性ゲル電解質に基づくシステムがある。しかしそのゲル系電極は、皮膚への電極の付着に関し、また長期の安定性に関して欠点がある。これらの電極を患者の皮膚に貼付ける場合には、電極の粘着特質およびその電極と皮膚の間の接触による悪影響を避けるために、液体電解質が粘着部に接触しないように注意する必要がある。さらにゲル電解質は、通常、例えばアスコルビン酸またはその誘導体を含む酸性の水性電解質である。この酸性化合物の存在は、しかし電極を長期間用途に使用する場合には、紅斑または皮膚刺激などの副作用を引き起こす。
【0004】
長期間用途での代替物として、特許文献2に開示される黒鉛担持重合体などの炭素含有重合体に基づく電極、または特許文献3に開示されるゴム組成物などの金属粒子を充填した導電性液状エラストマーに基づく電極が従来技術として公知である。ただしこれらの導電性重合体系に基づく電極では、信頼性の高い結果を得るために、皮膚にあてがった後に約30分の所定の待機時間を必要とする。この待機の必要性は、皮膚との界面での幾何学的な変化と湿気起因の変化との両方による過渡的な抵抗変化に対応するものである。
【0005】
先行技術において、PEDOT/PSSなどのドープされたチオフェンを身体電極での導電性材料として使用できることも公知である。非特許文献1は、長期の経皮記録用のイオン液体ゲル支援電極を開示しており、この電極では、AuとPEDOT/PSSからなる電極にイオン液体ゲルが組み込まれている。これらの電極を、パリレンCの薄膜上に堆積して皮膚に適合させている。
【0006】
しかしながら、これらの重合体系の電極システムには、それらの導電性が比較的低いという特徴がある。この理由の下に、例えば特許文献4に開示される複合金属導電構造が、可能な限りに最も均一な電位分布を得るために、最新技術では好適に使用されている。ただしこれらの金属導電構造の製造は複雑であり、それゆえに高コストとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9,050,451 B1号明細書
【文献】米国特許第7,136,691 B2号明細書
【文献】独国特許第10 2008 050 932 A1号明細書
【文献】米国特許第7,742,882号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Leleuxら(Adv.Healthcare Mater,2014,3,pages 1377-1380)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、皮膚表面電極に関連する先行技術に起因する欠点を克服する目的に基づく。
【0010】
特に本発明は、皮膚表面電極中の皮膚との接触部に使用でき、かつ皮膚に容易に貼付けることができ、また長期間の貼付けでも皮膚に悪影響を及ぼさない層状体を提供する目的に基づく。これらの皮膚表面電極の過渡的な抵抗は、電極の湿気吸収により変化しないことが望ましく、それにより長期測定に特に適するものとなる。
【0011】
本発明は、皮膚への電極の貼付け直後でも信頼できる結果を取得できる手段を用いて、皮膚表面電極での皮膚接触に使用できる層状体を提供する目的に基づく。さらにこの層状体は、長期間の用途に使用できること、ならびにその電気的特性、特に幅方向および断面方向の抵抗が体温または環境湿度などの条件の影響をあまり受けないことを特徴とする必要がある。これに関連して、もし液体電解質を添加する必要はなしに層状体を皮膚表面電極での皮膚接触に使用できるのなら、この層状体は特に有効なものとなる。
【0012】
本発明はまた、この層状体の製造に使用できる分散液を提供する目的に基づく。本発明の根底にあるさらなる目的は、この層状体を効率的かつ費用効率の高い方法、好ましくは自動化された大量生産法で製造できる工程による方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的のうちの1つ以上の達成には、本発明の特許請求の範囲を構成する範囲の主題が寄与する。本発明の特定の実施形態を表す従属請求項の主題がさらに寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態1:分散液であって、
i)一般構造:-CH-CHR-COOR-を持つ繰返し単位を含む重合体の粒子A)を含み、
式中、RはHまたはアルキル基、好ましくはHまたはCH、最も好ましくはHを表し、かつ
は、置換されていてもよいC~C10アルキル基、好ましくは-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される基を表し、
この粒子A)の質量平均粒子径(d50)は、少なくとも500nm、好ましくは少なくとも600nm、より好ましくは少なくとも700nm、より好ましくは少なくとも800nm、より好ましくは少なくとも900nm、最も好ましくは少なくとも1000nmであり、
ii)導電性重合体の粒子B)、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子B)を含み、
この粒子B)の質量平均粒子径は、150nm未満、好ましくは145nm未満、より好ましくは140nm未満、より好ましくは135nm未満、より好ましくは130nm未満、最も好ましくは125nm未満であり、および
iii)少なくとも1つの分散剤、好ましくは水を含み、
粒子A)の重合体:粒子B)の導電性重合体の重量比、好ましくは粒子A)の重合体:粒子B)の複合物の陽イオン性ポリチオフェンおよび重合性陰イオンの総重量の重量比は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも15:1、より好ましくは少なくとも20:1、最も好ましくは少なくとも25:1である、分散液。
【0015】
実施形態2:実施形態1に記載の分散液であって、粒子A)の重合体のガラス転移温度は、35℃未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは0℃未満である。
【0016】
実施形態3:実施形態1または2に記載の分散液であって、粒子A)の質量平均粒子径は、1000~5000nmの範囲、好ましくは1000~4000nmの範囲、最も好ましくは1000~3000nmの範囲である。
【0017】
実施形態4:実施形態1~3のいずれかの一形態に記載の分散液であって、RはHであり、Rは-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される。
【0018】
実施形態5:実施形態1~4のいずれかの一形態に記載の分散液であって、粒子A)の重合体中の繰り返し単位の総数に対して、粒子A)の重合体中の少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも45%、最も好ましくは少なくとも55%の繰返し単位は、RがHであり、かつRが-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される単量体である。
【0019】
実施形態6:実施形態1~5のいずれかの一形態に記載の分散液であって、粒子A)の重合体は、アクリル酸またはアクリル酸塩またはそれら両方と、アクリル酸エステルとの共重合体である。
【0020】
実施形態7:実施形態1~6のいずれかの一形態に記載の分散液であって、粒子A)の重合体は、アクリル酸またはアクリル酸塩またはそれら両方と、アクリル酸エステルとの共重合体であり、このアクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸n-オクチルからなる群より選択される。
【0021】
実施形態8:実施形態1~7のいずれかの一形態に記載の分散液であって、分散液中の粒子A)の重合体の量は、各場合において分散液の全重量に対して、10~80重量%の範囲、好ましくは15~75重量%の範囲、より好ましくは20~70重量%の範囲、最も好ましくは25~65重量%の範囲である。
【0022】
実施形態9:実施形態1~8のいずれかの一形態に記載の分散液であって、粒子B)の質量平均粒子径は、25~125nmの範囲、好ましくは50~125nmの範囲、最も好ましくは、75~125nmの範囲である。
【0023】
実施形態10:実施形態1~9のいずれかの一形態に記載の分散液であって、粒子B)の導電性重合体は、PEDOT/PSS複合物を含む。
【0024】
実施形態11:実施形態1~10のいずれかの一形態に記載の分散液であって、分散液は、導電性重合体、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンおよび重合性陰イオン、最も好ましくはPEDOT/PSSを、各場合において分散液の総重量に対して、0.01~5重量%の範囲、好ましくは0.025~3.5重量%の範囲、より好ましくは0.05~2重量%の範囲、最も好ましくは0.1~1重量%の範囲で含む。
【0025】
実施形態12:実施形態1~11のいずれかの一形態に記載の分散液であって、分散液はさらに、構成成分iv)として、(1013mbarで)少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃、最も好ましくは少なくとも160℃の沸点を有する高沸点極性化合物を含む。
【0026】
実施形態13:実施形態12に記載の分散液であって、高沸点極性化合物は、好ましくはアルキレングリコールであるジオール、好ましくはグリセロールであるトリオール、好ましくはDMSOであるスルホキシドからなる群から選択される。
【0027】
実施形態14:実施形態13に記載の分散液であって、高沸点極性化合物は、エチレングリコールである。
【0028】
実施形態15:実施形態12~14のいずれかの一形態に記載の分散液であって、分散液は、高沸点極性化合物、好ましくはエチレングリコールを、各場合において分散液の全重量に対して、0.1~20重量%の範囲、好ましくは0.5~17.5重量%の範囲、より好ましくは1~15重量%の範囲、最も好ましくは5~12.5重量%の範囲の量で含む。
【0029】
実施形態16:実施形態12~15のいずれかの一形態に記載の分散液であって、粒子B)中の陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの総重量に対する高沸点極性化合物の重量比(高沸点極性化合物:(陽イオン性ポリチオフェン+重合性陰イオン))は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも3:1、より好ましくは少なくとも6:1、最も好ましくは少なくとも9:1である。
【0030】
実施形態17:実施形態1~16のいずれかの一形態に記載の分散液であって、分散液は、分散剤として水を含む水性分散液である。
【0031】
実施形態18:層状体であって、
I)基材、
II)導電性粘着層、好ましくはヒトの皮膚に自己粘着性であり、かつ基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に重ね置かれる導電性粘着層を含み、この導電性粘着層は、
IIa)一般構造:-CH-CHR-COOR-を持つ繰返し単位を含む重合体を含み、
式中、RはHまたはアルキル基、好ましくはHまたはCH、最も好ましくはHを表し、かつRは、置換されていてもよいC~C10アルキル基、好ましくは-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される基を表し、
この重合体は導電性粘着層の母材を形成し、
IIb)この母材中に分布した導電性重合体粒子、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子を含み、
この導電性粘着層は、断面方向の比抵抗(R断面)が500Ωm未満、好ましくは100Ωm未満、最も好ましくは50Ωm未満であり、幅方向の比抵抗(R)が5000Ωm未満、好ましくは50Ωm未満、最も好ましくは5Ωm未満であることを特徴とする、層状体。
【0032】
実施形態19:実施形態18に記載の層状体であって、基材は、非導電性重合体層および非導電性重合体層の少なくとも一表面の少なくとも一部分に接触するさらなる導電層を含み、導電性粘着層は、このsらなる導電層の少なくとも一部分に接触している。
【0033】
実施形態20:実施形態18または19に記載の層状体であって、非導電性重合体層は、厚さが1~50μmの範囲、好ましくは3~40μmの範囲、より好ましくは6~30μmの範囲、最も好ましくは10~20μmの範囲にあるポリイミド層である。
【0034】
実施形態21:実施形態18~20のいずれかの一形態に記載の層状体であって、さらなる導電層は銀の格子である。
【0035】
実施形態22:実施形態18~21のいずれかの一形態に記載の層状体であって、重合体IIa)のガラス転移温度は、35℃未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは0℃未満である。
【0036】
実施形態23:実施形態16~20のいずれかの一形態に記載の層状体であって、RはHであり、Rは、-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される。
【0037】
実施形態24:実施形態18~23のいずれかの一形態に記載の層状体であって、重合体IIa)中の繰返し単位の総数に対して、重合体IIa)中の少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも45%、最も好ましくは少なくとも55%の繰返し単位は、RがHであり、かつRが-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される単量体である。
【0038】
実施形態25:実施形態18~24のいずれかの一形態に記載の層状体であって、重合体IIa)は、アクリル酸またはアクリル酸塩またはそれらの両方と、アクリル酸エステルとの共重合体である。
【0039】
実施形態26:実施形態18~25のいずれかの一形態に記載の層状体であって、重合体IIa)は、アクリル酸またはアクリル酸塩またはそれらの両方と、アクリル酸エステルとの共重合体であり、このアクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸n-オクチルからなる群より選択される。
【0040】
実施形態27:実施形態18~26のいずれかの一形態に記載の層状体であって、母材は、重合体IIa)の複数の島部を含み、この島部の寸法は、少なくとも1×10-6mm、好ましくは少なくとも1×10-5mm、より好ましくは少なくとも1×10-4mm以上、最も好ましくは少なくとも1×10-3mmである。
【0041】
実施形態28:実施形態18~27のいずれかの一形態に記載の層状体であって、粒子IIb)はPEDOT/PSS粒子である。
【0042】
実施形態29:実施形態18~28のいずれかの一形態に記載の層状体であって、導電性粘着層中の粒子IIb)中の陽イオン性ポリチオフェンおよび重合性陰イオンの総重量に対する重合体IIa)の重量比(重合体IIa):(陽イオン性ポリチオフェンおよび重合性陰イオン))は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも15:1、より好ましくは少なくとも20:1、最も好ましくは少なくとも25:1である。
【0043】
実施形態30:実施形態16~28のいずれかの一形態に記載の層状体であって、導電性粘着層の厚さは、1~500μmの範囲、好ましくは3~250μmの範囲、より好ましくは4~150μmの範囲、最も好ましくは5~50μmの範囲である。
【0044】
実施形態31:層状体を製造する方法であって、
α1)実施形態1~17のいずれかで規定された分散液を提供する工程、好ましくは実施形態12~16のいずれかで規定された分散液を提供する工程、
α2)基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に分散液を塗布する工程、および
α3)導電性粘着層を生成するように、好ましくはヒトの皮膚に対し自己粘着性があり、かつ基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に重ね置かれる導電性粘着層を生成するように、分散剤iii)を少なくとも部分的に除去する工程を含み、この分散剤の少なくとも部分的な除去を、基材に塗布された分散液を粒子A)の重合体のガラス転移温度を超える温度に加熱して達成する、方法。
【0045】
実施形態32:実施形態31に記載の方法であって、粒子A)の重合体のガラス転移温度は、35℃未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましく0℃未満である。
【0046】
実施形態33:実施形態31または32に記載の方法であって、基材は実施形態19~21に規定されている。
【0047】
実施形態34:実施形態31~33のいずれかの一形態に記載の方法によって得られる層状体。
【0048】
実施形態35:実施形態34に記載の層状体であって、導電性粘着層は、その内部に導電性重合体の粒子B)、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子が分布している粒子A)の重合体の母材を含む。
【0049】
実施形態36:実施形態34または35に記載の層状体であって、導電性粘着層は、
断面方向の比抵抗(R断面)が500Ωm未満、好ましくは100Ωm未満、最も好ましくは50Ωm未満であり、
幅方向の比抵抗(R)が5000Ωm未満、好ましくは50Ωm未満、最も好ましくは5Ωm未満であることを特徴とする。
【0050】
実施形態37:実施形態34~36のいずれかの一形態に記載の層状体であって、導電性粘着層の厚さは、1~500μmの範囲、好ましくは3~150μmの範囲、より好ましくは4~150μmの範囲、最も好ましくは5~50μmの範囲である。
【0051】
実施形態38:導電性粘着層を皮膚に直接接触させる電気物理的測定のための実施形態18~30および34~37のいずれかの一形態に記載の層状体の使用。
【0052】
実施形態39:実施形態38に記載の使用であって、電気物理的測定は、心電図検査法(ECG)、脳波検査法(EEG)、電気インピーダンス断層撮影法(EIT)、筋電図検査法(EMG)、および眼電図検査法(EOG)を含む。
【0053】
実施形態40:治療的送電システムまたは受電システムは、
治療的送電装置または受電装置、
治療的送電装置または受電装置に接続された少なくとも1本のケーブルコネクタ、
少なくとも1本のケーブルコネクタに接続された実施形態18~30および34~37のいずれかの一形態に記載の層状体を含む少なくとも1個の電極を含む。
【0054】
上記の目的の達成には分散液が寄与し、この分散液は、
i)一般構造:-CH-CHR-COOR-を持つ繰返し単位を含む重合体の粒子A)を含み、
式中、RはHまたはアルキル基、好ましくはHまたはCH、最も好ましくはHを表し、かつ
は、置換されていてもよいC~C10アルキル基、好ましくは-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される基を表し、
粒子A)の質量平均粒子径(d50)は、少なくとも500nm、好ましくは少なくとも600nm、より好ましくは少なくとも700nm、より好ましくは少なくとも800nm、より好ましくは少なくとも900nm、最も好ましくは少なくとも1000nmであり、
ii)導電性重合体の粒子B)、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子B)を含み、
粒子B)の質量平均粒子径は、150nm未満、好ましくは145nm未満、より好ましくは140nm未満、より好ましくは135nm未満、より好ましくは130nm未満、最も好ましくは125nm未満であり、および
iii)少なくとも1つの分散剤、好ましくは水を含み、
粒子A)中の重合体:粒子B)中の導電性重合体の重量比、好ましくは粒子A)中の重合体:粒子B)の複合物中の陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの総重量の重量比は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも15:1、より好ましくは少なくとも20:1、最も好ましくは少なくとも25:1である。
【0055】
驚くべきことに、d50値が150nm未満のより微細な粒子径を有する導電性重合体粒子、特にPEDOT/PSS粒子と、d50値が500nm以上のポリアクリル酸系粒子との非常に特別な組合せにより、ヒトの皮膚に自己粘着性であり、かつ顕著な電気的特性、特に純粋なオーム性挙動を特徴とする導電性粘着層を生成することができることが見出された。これらの導電性粘着層は、液状電解質の添加を必要とせず、当該抵抗はまた既知の電解質系の電極システムよりも低くなる。またこれらの導電性粘着層は、湿潤環境に保管された場合の水の吸収は無視できる程度しか起こらず、これにより、過渡的な抵抗は皮膚との界面での湿分起因の変化による影響を受けないので、身体電極の接点材料としても特に適するものとなる。
【0056】
構成成分i)
本発明による分散液は、構成成分i)として、一般構造:-CH-CHR-COOR-を持つ繰返し単位を含む重合体の粒子A)を含み、
式中、RはHまたはアルキル基、好ましくはHまたはCH、最も好ましくはHを表し、かつ
は、置換されていてもよいC~C10アルキル基、好ましくは-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される基を表し、
粒子A)の質量平均粒子径(d50)は、少なくとも500nm、好ましくは少なくとも600nm、より好ましくは少なくとも700nm、より好ましくは少なくとも800nm、より好ましくは少なくとも900nm、最も好ましくは少なくとも1000nmである。本発明の分散液の特に好ましい実施形態によれば、粒子A)の質量平均粒子径は、1000~5000nmの範囲、好ましくは1000~4000nmの範囲、最も好ましくは1000~3000nmの範囲である。
【0057】
粒子A)の重合体は、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの重合体、または(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸エステルに共重合可能な1つ以上のエチレン性不飽和単量体との共重合体である。本明細書での「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタクリル酸およびアクリル酸、好ましくはアクリル酸を表す。粒子A)の適切な重合体として、重合体、例えばポリ((メタ)アクリル酸メチル)(PMMAもしくはPMA)、ポリ((メタ)アクリル酸エチル)、ポリ((メタ)アクリル酸ブチル)、ポリ((メタ)アクリル酸イソブチル)、ポリ((メタ)アクリル酸ヘキシル)、ポリ((メタ)アクリル酸イソデシル)、ポリ((メタ)アクリル酸ラウリル)、ポリ((メタ)アクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)(本明細書では「ポリアクリル酸」と総称する)、またはそれらの共重合体および混合物が挙げられる。
【0058】
粒子A)の特に好ましい重合体は、上述の一般構造の繰返し単位で、RがHであり、かつRが-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される重合体、すなわちアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、またはこれらの化合物の混合物を単量体として形成される重合体または共重合体である。これに関連して、粒子A)の重合体中の繰返し単位の総数に対して、粒子A)の重合体中での繰返し単位の少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも45%、最も好ましくは少なくとも55%は、RがHであり、かつRが-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される単量体であることが特に好ましい。これに関連して、さらに好ましくは、粒子A)の重合体は、アクリル酸またはアクリル酸塩またはそれら両方と、アクリル酸エステルとの共重合体であり、特に好ましくは、アクリル酸またはアクリル酸塩またはそれら両方と、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチルからなる群より選択されるアクリル酸エステルとの共重合体である。
【0059】
粒子A)の重合体は、本発明の分散液のさらなる実施形態によれば僅かに架橋されているか、または特に好ましい実施形態によれば全く架橋されていないかのいずれかである。これに関連して、さらにNWSP240.0.R2(15)に準拠した重量測定法で測定される粒子A)の重合体の生理食塩水自由膨潤倍率は、10g/g未満、より好ましくは1g/g未満、最も好ましくは0.1g/g未満であることが好ましい。
【0060】
粒子A)の特に好ましい重合体は、ガラス転移温度が35℃未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは0℃未満の重合体である。
【0061】
粒子A)の適切な重合体は、Rudolf GmbH(Geretsried,Germany)から入手可能なRUCO-COAT(登録商標)AC 1010もしくはRUCO-COAT(登録商標)AC 2510などの市販のポリアクリル酸分散液、またはAlberdingk Boley GmbH(Krefeld,Germany)から入手可能なAQUA POLYMER AQP 275などの市販のポリアクリル酸分散液中の重合体粒子である。
【0062】
好ましくは、本発明の分散液は、粒子A)の重合体を、各場合において分散液の総重量に対して10~80重量%の範囲、好ましくは15~75重量%の範囲、より好ましくは20~70重量%の範囲、最も好ましくは25~65重量%の範囲で含む。
【0063】
構成成分ii)
本発明の分散液は、構成成分ii)として、導電性重合体の粒子B)、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンとの複合物の粒子B)を含み、粒子B)の質量平均粒子径は、150nm未満、好ましくは145nm未満、より好ましくは140nm未満、より好ましくは135nm未満、より好ましくは130nm未満、最も好ましくは125nm未満である。
【0064】
本発明の分散液の特に好ましい実施形態によれば、粒子B)の質量平均粒子径は、25~125nmの範囲、好ましくは50~125nmの範囲、最も好ましくは75~125nmの範囲である。
【0065】
導電性重合体は、置換されていてもよいポリチオフェン、任意にポリアニリン、および置換されていてもよいポリピロールからなる群より選択される重合体であってもよく、置換されていてもよいポリチオフェンが導電性重合体として特に好ましい。
【0066】
好ましいポリチオフェンは、一般式:
【化1】
を持つポリチオフェンであり、式中、
Aは、置換されていてもよいC~Cアルキレン基を表し、
Rは、直鎖または分岐鎖の置換されていてもよいC~C18アルキルラジカル、置換されていてもよいC~C12シクロアルキルラジカル、置換されていてもよいC~C14アリールラジカル、置換されていてもよいC~C18アラルキルラジカル、置換されていてもよいC~Cヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、0~8個のラジカルRがAに結合でき、2個以上のラジカルの場合には、同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
ポリチオフェンは、いずれの場合にも、末端基にHを持つことが好ましい。
【0068】
本発明に関連して、C~CアルキレンラジカルAは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、またはn-ペンチレンが好ましい。C~C18アルキルRは、好ましくは、メチル、エチル、nまたはイソプロピル、n、イソ、sec-またはtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、またはn-オクタデシルなどの直鎖または分岐鎖C~C18アルキルラジカルを表し、C~C12シクロアルキルラジカルRは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、またはシクロデシルを表し、C~C14アリールラジカルRは、例えば、フェニルまたはナフチルを表し、およびC~C18アラルキルラジカルRは、例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリルまたはメシチルを表す。上記のリストは、例として本発明を説明するのに役立つものであり、確定的なものと見做すべきではない。
【0069】
本発明に関連して、ラジカルAおよび/またはラジカルRのさらなる任意の置換基としては、多数の有機基が可能であり、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、炭酸、カルボン酸、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン、ならびにカルボキサミドの各基が挙げられる。
【0070】
Aが置換されていてもよいC~Cアルキレンラジカルを表すポリチオフェンが、特に好ましい。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)は、ポリチオフェンとして特に極めて好ましい。
【0071】
ポリチオフェンは中性または陽イオン性であってもよく、陽イオン性ポリチオフェンが特に好ましい。「陽イオン性」という用語は、ポリチオフェン主鎖の電荷のみに関連付けられる。ポリチオフェンは、ラジカルRでの置換基に応じて、構造単位内で正電荷および負電荷を移動させることができ、正電荷はポリチオフェンの主鎖に存在し、負電荷はスルホン酸基またはカルボン酸基で置換されたラジカルRに存在してもよい。これに関連して、ポリチオフェン主鎖の正電荷は、ラジカルRに存在してもよい陰イオン性基によって部分的にまたは完全に満たされ得る。全体的には、これらの場合にポリチオフェンは、陽イオン性、中性となり、または陰イオン性となってもよい。それでも、本発明に関連して、ポリチオフェン主鎖の正電荷が決定因子となるので、これらすべては陽イオン性ポリチオフェンと見做される。これら正電荷は、正確な数と位置を確実に判断できないので、式中には示されていない。ただし正電荷の数は1~nであり、このnはポリチオフェン内の(同一または異なる)すべての繰返し単位の総数である。
【0072】
陽イオン性ポリチオフェンの正電荷を補償するために、粒子B)は好ましくは酸基で官能化された重合体に基づく重合性陰イオンをさらに含むことが好ましい。ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、もしくはポリマレイン酸などの重合性カルボン酸の陰イオン、またはポリスチレンスルホン酸、およびポリビニルスルホン酸などの重合性スルホン酸の陰イオンは、特に重合性陰イオンとして可能性が高い。これらのポリカルボン酸およびポリスルホン酸は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と、アクリル酸エステルおよびスチレンなど他の重合性単量体との共重合体であってもよい。さらに可能な重合性陰イオンとしては、例えばNafion(登録商標)の名称で市販されている過フッ素化されたコロイドを生成する重合性陰イオンである。酸基で官能化され重合性陰イオンを供給する重合体の分子量は、好ましくは1,000~2,000,000、特に好ましくは2,000~500,000である。酸基またはそれらのアルカリ金属塩で官能化された重合体として、例えばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸などが市販されており、またこれらは公知の方法によって調製できる(例えば、Houben Weyl,Methoden der organischen Chemie,vol.E 20 Makromolekulare Stoffe,part 2,(1987),p.1141 et seq.を参照)。特に好ましい重合性陰イオンは、ポリスチレンスルホン酸の陰イオンである。
【0073】
粒子B)は、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物、特に好ましくはPEDOT/PSS複合物を含む。この複合物は、チオフェン単量体、好ましくは3,4-エチレンジオキシチオフェンを、重合性陰イオンが存在する水溶液中で酸化重合して、好ましくは3,4-エチレンジオキシチオフェンをポリスチレンスルホン酸の陰イオンの存在で酸化重合して得られる。
【0074】
好ましくは、本発明の分散液は、導電性重合体、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオン、好ましくはPEDOT/PSSを、各場合において分散液の総重量に対して、総量として0.01~5重量%の範囲、好ましくは0.025~3.5重量%の範囲、より好ましくは0.05~2重量%の範囲、最も好ましくは0.1~1重量%の範囲で含む(陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の場合には、上記の総量とは、陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの合計重量を指す)。
【0075】
構成成分iii)
本発明の分散液は、構成成分iii)として、少なくとも1種の分散剤を含む。
【0076】
好ましい分散剤は、水、水混和性溶媒であり、特にメタノール、エタノール、n-プロパノール、およびイソプロパノールなどの脂肪族アルコール、ジアセトンアルコール、アセトンおよびメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン、またはこれら溶媒の少なくとも2種の混合物からなる群から選択される。しかし最も好ましい溶媒は水であり、これは本発明の分散液として水性分散液が好ましいことを意味する。これに関連して、分散液中の分散剤の総量の少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%が、水であることが特に好ましい。
【0077】
構成成分iv)
本発明による分散液は、構成成分iv)として、(1013mbarで)少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃、最も好ましくは少なくとも160℃の沸点を有する高沸点極性化合物をさらに含んでもよい。構成成分iv)として使用できる好ましい化合物は、ジオール、好ましくはアルキレングリコール、トリオール、好ましくはグリセロール、およびスルホキシド、好ましくはDMSOである。特に好ましいアルキレングリコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、またはこれらアルキレングリコールの少なくとも2種の混合物であり、エチレングリコールが最も好ましい。好ましくは、粒子B)中の陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの総重量に対する高沸点極性化合物の重量比(高沸点極性化合物:(陽イオン性ポリチオフェン+重合性陰イオン))は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも3:1、より好ましくは少なくとも6:1、最も好ましくは少なくとも9:1である。
【0078】
本発明の分散液中の高沸点極性化合物、好ましくはエチレングリコールの量は、各場合において分散液の総重量に対して、好ましくは0.1~20重量%の範囲、より好ましくは0.5~17.5重量%の範囲、より好ましくは1~15重量%の範囲、最も好ましくは5~12.5重量%の範囲である。
【0079】
構成成分v)
本発明による分散液は、構成成分v)として、構成成分i)~iv)とは異なる少なくとも1つの追加の添加剤をさらに含んでもよい。適切な添加剤v)は、
界面活性物質として、例えばアルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、パラフィンスルホン酸塩、アルコールスルホン酸塩、エーテルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸、またはカルボン酸塩などの陰イオン性界面活性剤、例えば四級アルキルアンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、例えば直鎖アルコールエトキシラート、オキソアルコールエトキシラート、アルキルフェノールエトキシラート、またはアルキルポリグルコシドなどの非イオン性界面活性剤、特に商標Dynol(登録商標)およびZonyl(登録商標)で市販されている界面活性剤であり、
粘着促進剤として、例えば有機官能性シランまたはそれらの加水分解物、例えば3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、またはオクチルトリエトキシシランであり、
架橋剤として、例えばメラミン化合物、マスクドイソシアナート、テトラエトキシシランなどの官能性シラン、例えばテトラエトキシシランを基にしたアルコキシシラン加水分解物、3-グリシドキシプロピル-トリアルコキシシランなどのエポキシシランであり、
導電率向上剤として、例えばテトラヒドロフランなどのエーテル基を含む化合物、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン基を含む化合物、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチル-アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン、ピロリドンなどのアミドまたはラクタム基を含む化合物、スルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホンおよびスルホキシド、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトースなどの糖または糖誘導体、ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸などのフラン誘導体、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、またはテトラグリセロールである。
【0080】
本発明の分散液中のこの追加の添加剤の量は、各場合において分散液の総重量に対して、好ましくは0.1~15重量%の範囲、より好ましくは0.5~12.5重量%の範囲、より好ましくは0.75~10重量%の範囲、最も好ましくは1~5重量%の範囲である。
【0081】
本発明の分散液は、上述の粒子A)を含む分散液、好ましくは水性分散液、例えばRUCO-COAT(登録商標)AC 1010およびAQUA POLYMER AQP 275などの分散液を、上述の粒子B)を含む分散液、好ましくは水性分散液と単純に混合して調製でき、この粒子B)を含む分散液は、例えば、Heraeus Clevios(商標)P HC V6 Screen、Heraeus Clevios(商標)P、Heraeus Clevios(商標)P HC V4、Heraeus Clevios(商標)P Jet、Heraeus Clevios(商標)P Jet 700、Heraeus Clevios(商標)P Jet HC、Heraeus Clevios(商標)P Jet HC V2、Heraeus Clevios(商標)P Jet N、Heraeus Clevios(商標)P Jet N V2、Heraeus Clevios(商標)P Jet UA、Heraeus Clevios(商標)P T2、Heraeus Clevios(商標)P VP AI 4083、Heraeus Clevios(商標)P VP CH 8000、Heraeus Clevios(商標)PH 1000、Heraeus Clevios(商標)PH 500、Heraeus Clevios(商標)PH 510、Heraeus Clevios(商標)PH、Heraeus Clevios(商標)S HAT、Heraeus Clevios(商標)S V3、Heraeus Clevios(商標)S V3 HV、またはHeraeus Clevios(商標)S V4などのPEDOT/PSS分散液である。このPEDOT/PSS分散液は、Heraeus Deutschland GmbH(Hanau,Germany)から市販されている。任意に、アルキレングリコール(構成成分iv))および追加の添加剤(構成成分v))を、これらの混合前にこれら分散液の一方もしくは両方に加えるか、またはこれら分散液の混合物に別途加えることでもよい。
【0082】
上記の目的の達成には層状体も寄与し、この層状体は、
(I)基材、
(II)導電性粘着層、好ましくはヒトの皮膚に自己粘着性であり、かつこの基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に重ね置かれる導電性粘着層を含み、この導電性粘着層は、
IIa)一般構造:-CH-CHR-COOR-を持つ繰返し単位を含む重合体を含み、
式中、RはHまたはアルキル基、好ましくはHまたはCH、最も好ましくはHを表し、かつRは、置換されていてもよいC~C10アルキル基、好ましくは-CH、-CHCH、-C、-CHCH(C)(C)、および-C17からなる群より選択される基を表し、
この重合体は導電性粘着層の母材を形成し、さらに
IIb)母材中に分布した導電性重合体の粒子、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子を含み、
この導電性粘着層は、断面方向の比抵抗(R断面)が500Ωm未満、好ましくは100Ωm未満、最も好ましくは50Ωm未満であり、幅方向の比抵抗(R)が5000Ωm未満、好ましくは50Ωm未満、最も好ましくは5Ωm未満であることを特徴とする。
【0083】
この層状体は、例えば、本発明による分散液を基材上に塗布し、続いて導電性粘着層の形成のために分散剤の少なくとも一部分を除去して得られる。
構成要素(I)
【0084】
本発明の層状体は、構成要素(I)として基材を含む。
【0085】
この基材は、好ましくは、ヒトの皮膚に対して満足に適応できることを特徴とする可撓性の基材である。基材として好ましい材料はプラスチックフィルムであり、その厚さは、通常、2~200μmの範囲、好ましくは3~150μmの範囲、より好ましくは4~100μmの範囲、最も好ましくは5~100μmの範囲である。このプラスチックフィルムは、例えば、ポリカルボナート、PETおよびPEN(テレフタル酸ポリエチレンおよびナフタレンジカルボン酸ポリエチレン)などのポリエステル、カーボナート共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは環状ポリオレフィンもしくは環状オレフィン共重合体(COC)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、水素化スチレン重合体または水素化スチレン共重合体などの重合体から構成できる。基材に特に適する材料は、myclar、flex PC、Kapton、または重合体厚膜(PTF)などの材料である。本発明の積層体の特に好ましい実施形態によれば、市販のKapton箔などのポリイミドフィルムを可撓性の基材として使用する。あるいは、薄い重合体層を、適切な重合体前駆体から(ガラスなどの)無機保持基材に堆積させてもよい。ポリイミドフィルムは、例えば、ポリアミドカルボン酸の熱重縮合によってガラス保持基材に形成できる。これにより、約10μmの範囲の特に薄い基材層が得られ、この層は機械的な剛性が殆ど無く、皮膚表面への順応性が良好となることを特徴にする。
【0086】
本発明の層状体の好ましい実施形態によれば、この基材は非導電性重合体層と、非導電性重合体の少なくとも一表面の少なくとも一部分と接触するさらなる導電層とを含み、導電性粘着層は、さらなる導電層の少なくとも一部分と接触している。このさらなる導電層は、層状体の幅方向の導電性を改善するのに役立つ。好ましくは、さらなる導電層は、炭素、金属、または金属粒子に基づく層であり、これら導電性の材料は、格子形状での存在が好ましい。これに関連して可能性のある金属は、電子部品で、例えばアルミニウム、銀、金、または銅などの線状の金属構造(いわゆる「バスバー」)を製造するのに通常使用されるあらゆる金属である。金属粒子を含むさらなる導電層の場合には、10μm未満の粒径を持つこれら金属粒子を含むペースト状で塗布されるのが好ましい。これに関連して、導電性銀粒子または銅粒子が非常に特に好ましい。金属粒子に加えて、特に溶媒および結合剤を含むことができるペーストが使用される場合には、これらのペーストはスクリーン印刷法により塗布されるのがさらに好ましい。またさらなる導電層の形成には、真空蒸着によって非導電性重合体層上に堆積できる銅層、金層、またはアルミニウム層などの金属層が適している。さらには、さらなる導電層は、金属有機材料に基づくインク、例えば、金属カルボン酸塩を含むインク、および/または金属ナノ粒子もしくはナノワイヤを含むインクによって形成することもできる。これらインクは、例えば、デジタルインクジェット印刷法によって基材上に塗布できる。
【0087】
本発明の積層体の特に好ましい実施形態によれば、非導電性重合体層は、厚さが1~50μmの範囲、好ましくは3~40μmの範囲、より好ましくは6~30μmの範囲、最も好ましくは10~20μmの範囲であるポリイミド層である。さらなる導電層は、好ましくは銀の格子、より好ましくは銀ペーストによってこのポリイミド層上に塗布された銀の格子である。
【0088】
構成要素(II)
本発明による層状体は、構成要素II)として、導電性粘着層、好ましくはヒトの皮膚に自己粘着性であり、かつ基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に重ね置かれた導電性粘着層を含む。この導電性粘着層は、重合体IIa)を含み、その化学組成に関し、またそのガラス転移温度に関しては、本発明による分散液に関して上記で詳細に説明した粒子A)の重合体に対応することが好ましい。本発明の層状体の導電性粘着層において、重合体IIa)は、導電性重合体の粒子IIb)、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子IIb)が分布する導電性粘着層の母材を形成する。好ましい導電性重合体および陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンとの好ましい複合物は、再び、粒子B)の好ましい導電性重合体および複合物として、本発明の分散液に関連して既に上で述べた導電性重合体およびそれらの複合物である。
【0089】
本発明の層状体の特に好ましい実施形態によれば、導電性粘着層の母材は、重合体IIa)の複数の島部を含み、これら島部の寸法は、少なくとも1×10-6mm、好ましくは少なくとも1×10-5mm、より好ましくは少なくとも1×10-4mm、最も好ましくは少なくとも1×10-3mmである。この構造は、例えば、導電性粘着層の形成のために、構成成分i)、ii)およびiii)に加えて、構成成分iv)としてエチレングリコールなどのアルキレングリコールを含む本発明の分散液を基材に塗布し、その後分散剤iii)を粒子A)の重合体のガラス転移温度より高い温度で乾燥して除去することにより形成できる。いかなる理論にも縛られることを望まないが、この分散液が基材上で重合体IIa)のガラス転移温度を超える温度で乾燥される場合に、分散液中のエチレングリコールなどの高沸点極性溶媒の存在により隣接する粒子A)のアニール処理を何らかの形態で促進し、重合体IIa)のより大きな島部を形成して、これにより導電性重合体の粒子IIb)、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンとの複合物を含む粒子IIb)が、その乾燥段階中にも湿潤状態で依然流動性があり、その後の乾燥中に重合体IIa)のこれらアニール処理された重合体の島部間の中間空隙部を充填するものと考えられる。この構造により、垂直方向の電気伝導度C垂直に対する幅方向の導電率Cの比が特に高くなる。この高沸点極性溶媒が存在しない場合には、重合体IIa)の粒子は比較的速く乾燥し、この乾燥工程ではこれら粒子はを表面に何らかの形態で固定され、隣接粒子のアニール処理をほぼ不可能にする。
【0090】
本発明の層状体での導電性粘着層の厚さは、好ましくは1~500μmの範囲、好ましくは3~250μmの範囲、より好ましくは4~150μmの範囲、最も好ましくは5~50μmの範囲である。
【0091】
本発明の層状体の好ましい実施形態によれば、粒子IIb)中の陽イオン性ポリチオフェンおよび重合性陰イオンの総重量に対する導電性粘着層中の重合体IIa)の重量比(重合体IIa):(陽イオン性ポリチオフェン+重合性陰イオン))は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも15:1、より好ましくは少なくとも20:1、最も好ましくは少なくとも25:1である。
【0092】
本発明の層状体のさらなる好ましい実施形態によれば、この層状体は、25℃、相対湿度80%で22時間保存された場合に、導電性粘着層が10重量%未満、好ましくは7.5重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満の水分を吸収することを特徴とする。
【0093】
上記の目的の達成には、層状体を製造する方法も寄与し、この方法は、
α1)本発明による分散液を用意する工程、
α2)基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分にこの分散液を塗布する工程、および
α3)導電性粘着層の生成のために、好ましくはヒトの皮膚に自己粘着性であり、かつこの基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に重ね置かれる導電性粘着層の生成のために、分散剤iii)を少なくとも部分的に除去する工程を含み、この分散剤の少なくとも部分的な除去は、基材に塗布された分散液を粒子A)の重合体のガラス転移温度を超える温度に加熱して達成される。
【0094】
本発明の方法の工程α1)では、本発明による分散液を用意する。この関連において、粒子A)の重合体のガラス転移温度は、35℃未満、好ましくは20℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは0℃未満であることが特に好ましい。この関連において、この分散液は、構成成分iv)として、エチレングリコールなどのアルキレングリコールを含むことがさらに好ましい。上述のように、この分散液は、例えば、上述の粒子A)を含む分散液、好ましくは水性分散液、例えばRUCO-COAT(登録商標)AC 1010およびAQUA POLYMER AQP 275などの分散液を、上述の粒子B)を含む分散液、好ましくは水性分散液、例えばHeraeus Holding GmbH(Hanau,Germany)から市販されているPEDOT/PSS分散液のうちの1つの分散液と混合して調製できる。好ましくは、特にアルキレングリコールである上述の高沸点極性化合物および任意の追加の添加剤は、これら分散液を混合する前にこれらの一方または両方に、またはこれら分散液の混合物に別途添加してもよい。
【0095】
本発明の方法の工程α2)では、分散液は、基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に塗布される。分散液を基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に塗布する工程は、公知の方法、例えば、スピンコーティング、浸漬、流込み、滴下、注入、噴霧、フィルム転写塗布、ナイフ塗布、散布、または例えばインクジェット、スクリーン、凹版、オフセット、もしくはパッド印刷などの印刷によって達成でき、その塗布厚さは、湿潤状態で0.1μm~250μmの範囲、好ましくは0.5μm~50μmの範囲である。
【0096】
本発明の方法で使用できる好ましい基材は、本発明の層状体に関連して好ましい基材であると既に述べた基材である。
【0097】
本発明の方法の工程α3)では、分散剤は、導電性粘着層の生成のために、好ましくはヒトの皮膚に自己粘着性であり、かつ基材の少なくとも一表面の少なくとも一部分に重ね置かれる導電性粘着層の生成のために、少なくとも部分的に除去され、分散剤の少なくとも部分的な除去は、基材上に塗布された分散液を粒子A)の重合体のガラス転移温度を超える温度に加熱して達成される。分散剤iii)の部分的除去は、重ね置かれた層を単に乾燥して、好ましくは、例えば35~200℃、好ましくは75~150℃の範囲の温度に基材を加熱して達成できる。
【0098】
上記の目的の達成には、本発明の方法により得られる層状体も寄与する。好ましくは、この層状体の特性は、上述した本発明の層状体の特性と同一である。
【0099】
したがって、本発明の方法によって得られる層状体は、好ましくは、導電性粘着層が粒子A)の重合体の母材を含み、その中に導電性重合体の粒子B)、好ましくは陽イオン性ポリチオフェンと重合性陰イオンの複合物の粒子が分布することを特徴とする。これに関連して、導電性粘着層は、重合体IIa)の複数の島部を含み、これら島部の寸法は、少なくとも1×10-6mm、好ましくは少なくとも1×10-5mm、より好ましくは少なくとも1×10-4mm、最も好ましくは少なくとも1×10-3mmであることがまた好ましい。
【0100】
さらに、本発明の方法により得られる層状体では、好ましくは、導電性粘着層は、
断面方向の比抵抗(R断面)が500Ωm未満、好ましくは100Ωm未満、最も好ましくは50Ωm未満であり、かつ
幅方向の比抵抗(R)が5000Ωm未満、好ましくは50Ωm未満、最も好ましくは5Ωm未満であることを特徴とする。
【0101】
これに加えて、本発明の方法により得られる層状体では、好ましくは、層状体を25℃、相対湿度80%で22時間保存した場合に、導電性粘着層は10重量%未満、好ましくは7.5重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2.5重量%未満の水分を吸収することを特徴とする。
【0102】
上記の目的の達成には、導電性粘着層が皮膚に直接接触する電気物理的測定への本発明の層状体の使用、または本発明の方法によって得られる層状体の使用も寄与する。好ましい電気物理的測定として、心電図検査(ECG)、脳波検査(EEG)、電気インピーダンス断層撮影検査(EIT)、筋電図検査(EMG)、および眼電図検査(EOG)が挙げられる。
【0103】
上記の目的の達成には、治療的送電システムまたは受電システムも寄与して、これらシステムは、
治療的送電装置または受電装置、
治療的送電装置または受電装置に接続された1本以上のケーブルコネクタ、および
本発明の層状体、または本発明の方法によって得られる層状体から作製された1個以上の電極を含む。
【0104】
この治療的送電装置または受電装置は、例えば、エレクトログラフ(ECG)装置、脳波計装置、筋電図装置、経皮電気神経刺激装置、電気筋肉刺激装置、神経筋刺激装置、または機能的電気刺激装置など、当業者に公知のいずれの検査装置または刺激装置であってもよい。
【0105】
ここで本発明を、試験方法、ならびに非限定的な図および実施例を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1図1は、本発明による好ましい層状体の断面図を示す。
図2図2は、本発明による好ましい層状体の形成に使用できる基材を最上部から示す。
【0107】
図1および図2に見るように、本発明の層状体1は、本発明の導電性粘着層3がその上部に重ね置かれた基材2を含む。基材2は、好ましくは非導電性重合体層2aを含み、この基材は本出願の例ではポリイミド薄膜であり、その上部にさらなる導電層2bが重ね置かれる。本出願の例では、さらなる導電層2bは、銀ペーストによってポリイミド膜上に塗布された銀の格子である。
【0108】
試験方法
粒子A)および粒子B)のd 50 値の測定
粒子A)および粒子B)のd50値は、超遠心分離法によって測定される。この方法の詳細は、Schlotanら(Kolloid-Z und Z Polymer;250(1972)page 782,”Bestimmung der Teilchengroeszenverteilung von Latices mit der Ultrazentrifuge“)、およびMuller(Colloid & Polymer Science;267(1989)page 1113)に記載されている。必要に応じて、密度勾配遠心分離法、ゲル浸透クロマトグラフィー法、またはゲル電気泳動法などの当業者に公知の方法によって、粒子A)および/または粒子B)をd50値の測定に干渉する可能性がある他の粒子から分離できる。
【0109】
ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度は、示差熱量測定法(DSC)(ISO11357-2)によって測定される。厳密に言えば、この温度は、ある温度範囲にまたがるガラス転移領域である。本発明で指すガラス転移温度は、平均値のことである。
【0110】
吸湿度の測定
8~9gの本発明の分散液をアルミ容器に入れて、この容器を120℃の温度で135分間、空気を再循環しながら炉内で乾燥させる。乾燥膜が容器内に残り、その容器の重量を計量する(容器重量保管前)。
【0111】
続いてアルミ容器を、25℃の温度、かつ飽和食塩水溶液を用いて生成した相対湿度80%の密閉型デシケーター内に保管する。22時間後に、アルミ容器を再度計量し(容器重量保管後)、吸湿量(重量%)を以下の式で計算する。
吸湿量=100%×(容器重量保管後-容器重量保管前)/容器重量保管前
【0112】
幅方向および断面方向の抵抗測定
導電性粘着層の幅方向の比抵抗(R)は、ACL 800 Digital Megohmmeter(ACL Staticide,Chicago,IL,USA)を使用して表面抵抗(Ω/□)を測定して決定する。比抵抗を、表面抵抗に導電性粘着層の厚さ(m)を掛けて計算する。導電性粘着層の厚さは、導電性粘着層の作製に使用される分散液の固形分含量と、分散液を基材上に塗布した湿潤膜の厚さに基づいて計算する。
【0113】
導電性粘着層の断面方向の比抵抗(R断面)は、SP-300 potentiostat/galvanostat(Bio-Logic SAS,Claix,France)を使用するインピーダンス分光法により測定する。導電性粘着層の表面に白金電極を貼付けて、導電性粘着層の下部にある銀の格子電極の対向電極として機能させる。断面方向の導電性粘着層の比抵抗は、1kHzの周波数で測定する。
【実施例
【0114】
実施例1:導電性粘着組成物の作製
導電性重合体と、陰イオン性アクリル酸エステル共重合体分散液と、任意にエチレングリコールとの混合物を調製した。そのために、高導電性の水性PEDOT/PSS分散液(Clevios(商標)P HC V6 Screen;固形分含量は1重量%)をビーカーに入れた。続いて、水性アクリル酸分散液としてRucocoat AC 1010(固形分含量は65重量%)、AQP 275(固形分含量は60重量%)およびAcronal S728(固形分含量は50重量%)を滴下し、その後にエチレングリコールを添加した。続いてこの混合物を30分間撹拌した。
【0115】
【表1】
【0116】
特性評価のために、手動スキージを用いてMelinexPETフィルム基材上に試料を40μmの湿潤膜厚さで被覆し、強制空気乾燥室内で120℃、5分間乾燥させた。表面電気抵抗(Ω/□;ACL 800,Staticide)を測定し、接着力を指(約20cm×30cmの寸法の膜を持ち上げるのに必要となる指の圧力/指の本数)により定性的に測定した。さらにこれら試料で調製された粘着層で、これらの試料で調整した乾燥膜の吸湿量について分析した。
【0117】
【表2】
【0118】
実施例2:電極の作製
ガラス支持基材をPAA(ポリアミドカルボン酸)で被覆し、続いて熱重縮合してPI(ポリイミド)を得た。得られた重合体膜の厚さは10μmである。次に図2に示すように、電位を均一化するようにPI基材上に銀ペーストをスクリーン印刷した。
【0119】
続いて、この系を実施例1で得た試料A~Gで被覆した。そのために、ポリイミド電極基材にラッカー塗料によって、各試料を90μmの湿潤フィルム厚さで被覆し、その後循環空気乾燥室中で120℃、5分間乾燥した。この操作を2回実施して、厚い導電性粘着層を得た。こうして得た試料に、5MHz~100mHzの範囲のインピーダンス挙動を試験するために、Pt箔製の無極性電極を備えた。すべての試料は、リード線に起因する僅かな誘導成分を有するものの、純粋なオーム性挙動を示していた。
【0120】
比較基準として1kHzでの抵抗の実数部を使用し、これは生体系に対する適応性の指標値となる。この測定値を、44×51mmの電極表面積によってさらに表面積で正規化した。以下の数値を測定した。
【0121】
【表3】
【0122】
以下の表には、試料A、B、C、D、およびEで作製された導電性粘着層の幅方向と断面方向の両方の比抵抗を示す。
【0123】
【表4】
【0124】
この表から分かるように、エチレングリコールの添加は、幅方向の導電性と直交する異方性からのPEDOT/PSSの配向に影響を与える。したがってエチレングリコールの添加により、可撓性の基材上に必要となる金属の格子の割合を低減できる。
【0125】
従来技術の電極に対比して、本発明による電極は、純粋なオーム性挙動を示し、かつ当該抵抗も公知の電解質系の電極構成よりも低い。
【0126】
参照記号の明細
1:層状体
2:基材
2a:非導電性重合体層
2b:さらなる導電層
3:導電性粘着層
図1
図2