(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】電気機械変換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02N 1/00 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
H02N1/00
(21)【出願番号】P 2020507319
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037475
(87)【国際公開番号】W WO2019181026
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2018051205
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】池田 智夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 泉
(72)【発明者】
【氏名】白井 琢矢
(72)【発明者】
【氏名】星 雄大
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0241346(US,A1)
【文献】特開2014-107890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
H01G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
固定基板と、
前記固定基板との間で一定の距離を保って移動可能であり、前記固定基板との対向面に移動方向に互いに間隔を空けて複数の溝部が形成された可動部材と、
前記可動部材の前記対向面上に前記複数の溝部と交互に形成された複数の帯電部と、
前記固定基板の前記可動部材との対向面上において前記移動方向に配置された複数の対向電極と、
銅を含有し、少なくとも前記複数の溝部内の前記可動部材の側壁を被覆する被覆層と、
を有することを特徴とする電気機械変換器。
【請求項2】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
固定基板と、
前記固定基板との間で一定の距離を保って移動可能であり、前記固定基板との対向面に移動方向に互いに間隔を空けて複数の溝部が形成された可動部材と、
前記可動部材の前記対向面上に前記複数の溝部と交互に形成された複数の帯電部と、
前記固定基板の前記可動部材との対向面上において前記移動方向に配置された複数の対向電極と、
少なくとも前記複数の溝部内の前記可動部材の側壁を被覆し、少なくとも表面が絶縁層である被覆層と、
を有
し、
前記複数の帯電部は、前記可動部材の前記対向面上における前記複数の溝部同士の間を覆うように形成され、
前記複数の帯電部と前記被覆層の間では前記可動部材の基材が露出しておらず、
前記被覆層は、前記可動部材の前記対向面および前記側壁を被覆し、
前記複数の帯電部は、前記可動部材の前記対向面における前記被覆層の上に形成されている、
ことを特徴とする電気機械変換器。
【請求項3】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
固定基板と、
前記固定基板との間で一定の距離を保って移動可能であり、前記固定基板との対向面に移動方向に互いに間隔を空けて複数の溝部が形成された可動部材と、
前記可動部材の前記対向面上に前記複数の溝部と交互に形成された複数の帯電部と、
前記固定基板の前記可動部材との対向面上において前記移動方向に配置された複数の対向電極と、
少なくとも前記複数の溝部内の前記可動部材の側壁を被覆し、少なくとも表面が絶縁層である被覆層と、
を有し、
前記可動部材における前記複数の溝部に面する端部は、それぞれ前記可動部材の厚さ方向に突出する突状部になっており、
前記被覆層は前記可動部材の前記突状部を被覆していることを特徴とする電気機械変換器。
【請求項4】
前記被覆層はフッ素樹脂膜である、請求項2
または3に記載の電気機械変換器。
【請求項5】
前記被覆層は、前記可動部材の前記側壁および前記複数の帯電部を被覆している、請求項
4に記載の電気機械変換器。
【請求項6】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
固定基板と、
前記固定基板との間で一定の距離を保って移動可能であり、前記固定基板との対向面に移動方向に互いに間隔を空けて複数の溝部が形成された可動部材と、
前記可動部材の前記対向面上に前記複数の溝部と交互に形成された複数の帯電部と、
前記固定基板の前記可動部材との対向面上において前記移動方向に配置された複数の対向電極と、
少なくとも前記複数の溝部内の前記可動部材の側壁を被覆し、少なくとも表面が絶縁層である被覆層と、
を有し、
前記被覆層は銅を含有し、前記絶縁層は酸化銅である、
ことを特徴とする電気機械変換器。
【請求項7】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、
固定基板と、
前記固定基板との間で一定の距離を保って移動可能であり、前記固定基板との対向面に移動方向に互いに間隔を空けて複数の溝部が形成された可動部材と、
前記可動部材の前記対向面上に前記複数の溝部と交互に形成された複数の帯電部と、
前記固定基板の前記可動部材との対向面上において前記移動方向に配置された複数の対向電極と、
少なくとも前記複数の溝部内の前記可動部材の側壁を被覆し、少なくとも表面が絶縁層である被覆層と、
を有し、
前記被覆層はアルミニウム水和酸化皮膜である、
ことを特徴とする電気機械変換器。
【請求項8】
前記複数の溝部は、前記可動部材を厚さ方向に貫通しており、
前記被覆層は、前記可動部材の厚さ方向の全体にわたって前記複数の溝部内の前記側壁を覆っている、請求項1~
7のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
【請求項9】
前記可動部材は、回転軸の周りに回転可能な回転部材であり、
前記複数の溝部、前記複数の帯電部および前記複数の対向電極は、それぞれ前記回転軸を中心として放射状に配置されている、請求項1~
8のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
【請求項10】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器の製造方法であって、
第1基板上に互いに間隔を空けて複数の溝部を形成する工程と、
少なくとも前記複数の溝部内の前記第1基板の側壁に、銅を含有する被覆層を形成する工程と、
前記第1基板上の前記複数の溝部同士の間に複数の帯電部を形成する工程と、
複数の電極が配置された第2基板の前記複数の電極に前記複数の帯電部を対向させ、前記第2基板との間で一定の距離を保って移動可能に前記第1基板を設置する工程と、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項11】
前記複数の溝部および前記被覆層は、前記第1基板に対して放電加工を行うことにより同時に形成される、請求項
10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記被覆層は、前記複数の溝部の形成後であって前記複数の帯電部の形成前に、前記第1基板に銅を蒸着させることで形成される、請求項
10に記載の製造方法。
【請求項13】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器の製造方法であって、
第1基板上に互いに間隔を空けて複数の溝部を形成するとともに、前記第1基板上の前記複数の溝部同士の間に複数の帯電部を配置する工程と、
少なくとも前記複数の溝部内の前記第1基板の側壁に、少なくとも表面が絶縁層である被覆層を形成する工程と、
複数の電極が配置された第2基板の前記複数の電極に前記複数の帯電部を対向させ、前記第2基板との間で一定の距離を保って移動可能に前記第1基板を設置する工程と、
を有
し、
前記複数の溝部は、前記第1基板をプレス加工することで形成され、
前記被覆層は、前記第1基板における前記複数の溝部に面する端部にそれぞれ形成された前記第1基板の厚さ方向に突出する突状部を覆うように形成され、
前記被覆層の形成後に前記複数の帯電部を帯電させる、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器の製造方法であって、
第1基板上に互いに間隔を空けて複数の溝部を形成するとともに、前記第1基板上の前記複数の溝部同士の間に複数の帯電部を配置する工程と、
少なくとも前記複数の溝部内の前記第1基板の側壁に、少なくとも表面が絶縁層である被覆層を形成する工程と、
複数の電極が配置された第2基板の前記複数の電極に前記複数の帯電部を対向させ、前記第2基板との間で一定の距離を保って移動可能に前記第1基板を設置する工程と、
を有し、
前記被覆層として銅を含有する層が形成され、
前記絶縁層は、前記複数の帯電部を焼成して前記被覆層の銅を酸化させることで形成される、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器の製造方法であって、
第1基板上に互いに間隔を空けて複数の溝部を形成するとともに、前記第1基板上の前記複数の溝部同士の間に複数の帯電部を配置する工程と、
少なくとも前記複数の溝部内の前記第1基板の側壁に、少なくとも表面が絶縁層である被覆層を形成する工程と、
複数の電極が配置された第2基板の前記複数の電極に前記複数の帯電部を対向させ、前記第2基板との間で一定の距離を保って移動可能に前記第1基板を設置する工程と、
を有し、
前記第1基板はアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成され、
前記被覆層は、前記第1基板を高温水または加圧水蒸気中に保持することで形成される、
ことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半永久的に電荷を保持するエレクトレットを利用することで発生する静電的な相互作用により電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器が知られている。例えば、特許文献1には、金属などの導体基板を備える円板形状の回転子と、エレクトレットを備える円板形状の固定子とが対向して略平行に配置された発電機が記載されている。特許文献2には、円環状の基板上にエレクトレットからなる複数のパターン電極が形成されたロータと、別のパターン電極が形成されたステータとが互いに対向して配置された静電電動機が記載されている。特許文献3には、静電誘導型発電器の回転部材として、所定角度毎に帯電膜と帯電膜が設置されていない間隔部とが交互に配置されたものが記載されている。こうした電気機械変換器では、例えば、可動部材(回転子、ロータ)に複数の帯電部が形成され、固定基板(固定子、ステータ)に複数の対向電極が形成される。
【0003】
特許文献4には、エレクトレット膜の側端面の周囲を取り囲むように形成され、エレクトレット膜に蓄積された電荷が流出するのを抑制する電荷流出抑制膜を備えるエレクトレット素子が記載されている。特許文献5には、導体と相対的に運動するエレクトレットと、エレクトレットを覆う防湿膜とを備える静電誘導型変換素子が記載されている。特許文献6には、基板上でエレクトレット膜が形成されていない領域に導電性電極を有し、エレクトレット膜と導電性電極との間に凹構造を有することで、エレクトレット膜に保持された電荷の導電性電極への流出を防止するエレクトレット素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-64921号公報
【文献】特開2016-46837号公報
【文献】特開2017-28910号公報
【文献】特開2008-277473号公報
【文献】特開2011-91996号公報
【文献】特開2014-217178号公報
【発明の概要】
【0005】
帯電部が形成された可動部材を高温多湿の環境下に置くと、帯電部に蓄えられた電荷が抜けて、帯電量が低下する。電気機械変換器の変換効率を高めるためには、可動部材のうちで帯電部が形成されていない領域を溝部として可動部材を軽量化することが望ましく、そうした溝部が形成された可動部材では特に、溝部の側壁(側面)から電荷が抜け易い。また、軽量化のために比重が小さいアルミニウムを可動部材の基材として使用する場合には特に、帯電量の経時変化が顕著に見られる。静電的な相互作用を利用する電気機械変換器では、このように、可動部材の軽量化と帯電量の低下防止(耐湿性)を両立させることは難しい。
【0006】
そこで、本発明は、可動部材が軽量で動き易くかつ帯電部の帯電量が経時変化し難い電気機械変換器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、固定基板と、固定基板との間で一定の距離を保って移動可能であり、固定基板との対向面に移動方向に互いに間隔を空けて複数の溝部が形成された可動部材と、可動部材の対向面上に複数の溝部と交互に形成された複数の帯電部と、固定基板の可動部材との対向面上において移動方向に配置された複数の対向電極と、銅を含有し、少なくとも複数の溝部内の可動部材の側壁を被覆する被覆層とを有することを特徴とする電気機械変換器が提供される。
【0008】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器であって、固定基板と、固定基板との間で一定の距離を保って移動可能であり、固定基板との対向面に移動方向に互いに間隔を空けて複数の溝部が形成された可動部材と、可動部材の対向面上に複数の溝部と交互に形成された複数の帯電部と、固定基板の可動部材との対向面上において移動方向に配置された複数の対向電極と、少なくとも複数の溝部内の可動部材の側壁を被覆し、少なくとも表面が絶縁層である被覆層とを有することを特徴とする電気機械変換器が提供される。
【0009】
被覆層は銅を含有し、絶縁層は酸化銅であることが好ましい。あるいは、被覆層はアルミニウム水和酸化皮膜であることが好ましい。
【0010】
あるいは、被覆層はフッ素樹脂膜であることが好ましい。この場合、被覆層は、可動部材の側壁および複数の帯電部を被覆していることが好ましい。
【0011】
複数の帯電部は、可動部材の対向面上における複数の溝部同士の間を覆うように形成され、複数の帯電部と被覆層の間では可動部材の基材が露出していないことが好ましい。
【0012】
被覆層は、可動部材の対向面および側壁を被覆し、複数の帯電部は、可動部材の対向面における被覆層の上に形成されていてもよい。
【0013】
複数の溝部は、可動部材を厚さ方向に貫通しており、被覆層は、可動部材の厚さ方向の全体にわたって複数の溝部内の側壁を覆っていることが好ましい。
【0014】
可動部材は、回転軸の周りに回転可能な回転部材であり、複数の溝部、複数の帯電部および複数の対向電極は、それぞれ回転軸を中心として放射状に配置されていることが好ましい。
【0015】
可動部材における複数の溝部に面する端部は、それぞれ可動部材の厚さ方向に突出する突状部になっており、被覆層は可動部材の突状部を被覆していることが好ましい。
【0016】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器の製造方法であって、第1基板上に互いに間隔を空けて複数の溝部を形成する工程と、少なくとも複数の溝部内の第1基板の側壁に、銅を含有する被覆層を形成する工程と、第1基板上の複数の溝部同士の間に複数の帯電部を形成する工程と、複数の電極が配置された第2基板の複数の電極に複数の帯電部を対向させ、第2基板との間で一定の距離を保って移動可能に第1基板を設置する工程とを有することを特徴とする製造方法が提供される。
【0017】
複数の溝部および被覆層は、第1基板に対して放電加工を行うことにより同時に形成されることが好ましい。
【0018】
あるいは、被覆層は、複数の溝部の形成後であって複数の帯電部の形成前に、第1基板に銅を蒸着させることで形成してもよい。
【0019】
帯電部と対向電極との間の静電的な相互作用を利用して電力と動力の間の変換を行う電気機械変換器の製造方法であって、第1基板上に互いに間隔を空けて複数の溝部を形成するとともに、第1基板上の複数の溝部同士の間に複数の帯電部を配置する工程と、少なくとも複数の溝部内の第1基板の側壁に、少なくとも表面が絶縁層である被覆層を形成する工程と、複数の電極が配置された第2基板の複数の電極に複数の帯電部を対向させ、第2基板との間で一定の距離を保って移動可能に第1基板を設置する工程とを有することを特徴とする製造方法が提供される。
【0020】
被覆層として銅を含有する層が形成され、絶縁層は、複数の帯電部を焼成して被覆層の銅を酸化させることで形成されることが好ましい。
【0021】
あるいは、第1基板はアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成され、被覆層は、第1基板を高温水または加圧水蒸気中に保持することで形成してもよい。
【0022】
複数の溝部は、第1基板をプレス加工することで形成され、被覆層は、第1基板における複数の溝部に面する端部にそれぞれ形成された第1基板の厚さ方向に突出する突状部を覆うように形成され、被覆層の形成後に複数の帯電部を帯電させることが好ましい。
【0023】
上記の電気機械変換器によれば、可動部材が軽量で動き易くかつ帯電部の帯電量が経時変化し難い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】(A)および(B)は、アクチュエータ10の模式的な斜視図および部分断面図である。
【
図3】(A)~(C)は、回転部材の例を示す平面図である。
【
図4】(A)~(C)は、回転部材の例を示す部分断面図である。
【
図5】(A)および(B)は、別のアクチュエータ10’およびそれに用いられる回転部材の例を示す部分断面図である。
【
図6】(A)~(E)は、被覆層の配置の例を示す部分断面図である。
【
図7】(A)~(D)は、被覆層の配置と帯電時の効果を説明するための図である。
【
図8】(A)~(C)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。
【
図9】(A)~(C)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。
【
図10】(A)~(C)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。
【
図11】(A)および(B)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。
【
図12】(A)~(C)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。
【
図13】(A)~(C)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。
【
図14】(A)~(C)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。
【
図15】(A)および(B)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。
【
図16】別の電気機械変換器2の概略構成図である。
【
図17】(A)~(C)は、さらに別の電気機械変換器3の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、電気機械変換器およびその製造方法について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0026】
図1は、電気機械変換器1の概略構成図である。
図1に示すように、電気機械変換器1は、アクチュエータ10および駆動部20を有する。アクチュエータ10は、回転軸11、回転部材12、固定基板13、帯電部14および対向電極15,16を有する。電気機械変換器1は、駆動部20に入力された電気信号をもとに、帯電部14と対向電極15,16との間の静電気力を利用して回転部材12を回転させることにより電力から動力を取り出す駆動装置(エレクトレットモータ)である。
【0027】
図2(A)および
図2(B)は、それぞれ、アクチュエータ10の模式的な斜視図および部分断面図である。
図2(A)に示すように、アクチュエータ10は、回転軸11の周りに回転可能な回転部材12の下面122と固定基板13の上面131とを対向させ、両者を平行に配置して構成される。
図2(B)では、回転部材12および固定基板13を円周方向に切断した断面を示しており、
図2(B)の横方向が
図2(A)の矢印C方向に相当する。
図1では、アクチュエータ10として、回転部材12の下面122と固定基板13の上面131を並べて示している。
【0028】
回転軸11は、回転部材12の回転中心となる軸であり、回転部材12の中心を貫通している。回転軸11の上下端は、軸受けを介して、図示しない電気機械変換器1の筐体に固定されている。
【0029】
回転部材12は、可動部材の一例であり、金属、ステンレス鋼(SUS:special use stainless steel)、ガラスまたはシリコンなどで構成される。軽量化のために、回転部材12の基材はアルミニウムまたはその合金であることが好ましい。例えば、回転部材12の直径は5~20mm程度であり、厚さは100~500μm程度である。回転部材12は、例えば円盤形状を有し、その中心で回転軸11に接続している。回転部材12は、駆動部20に入力された電気信号に応じて帯電部14と対向電極15,16との間で発生する静電気力により、回転軸11の周りを
図2(A)の矢印C方向(時計回りおよび反時計回り)に回転可能である。すなわち、回転部材12は、固定基板13との間で一定の距離を保って移動可能である。
【0030】
図2(B)に示すように、回転部材12には、軽量化のために、円周方向(回転部材12の回転方向、移動方向、矢印C方向)に沿って等間隔に、複数の溝部124が形成されている。図示した例では、溝部124は、回転部材12を厚さ方向に貫通している。
【0031】
固定基板13は、ガラスエポキシ基板などの周知の基板材料で構成される。
図2(A)に示すように、固定基板13は、例えば円盤形状を有し、回転部材12の下面122に対向して回転部材12の下側に配置されている。回転軸11が固定基板13の中心を貫通しているが、固定基板13は、回転部材12とは異なり、電気機械変換器1の筐体に固定されている。
【0032】
帯電部14は、エレクトレット材料で構成された薄膜であり、固定基板13との対向面である回転部材12の下面122に、回転軸11の周辺の中央部分を除いて、回転軸11を中心として放射状に形成されている。帯電部14は、溝部124同士の間を覆う略台形の複数の部分領域で構成され、回転部材12の円周方向に溝部124と交互かつ等間隔に配置されている。帯電部14は、静電荷を保持し、すべて同一の極性(例えば負)に帯電している。帯電部14のエレクトレット材料としては、例えば、CYTOP(登録商標)などの樹脂材料、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)もしくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子材料、または、二酸化ケイ素もしくは窒化ケイ素などの無機材料が用いられる。帯電部14の厚さは、例えば15~40μm程度である。
【0033】
対向電極15,16は、それぞれ略台形の複数の電極で構成され、回転部材12との対向面である固定基板13の上面131において、円周方向に交互に、かつ回転軸11を中心として放射状に形成されている。対向電極15同士および対向電極16同士は、回転部材12の溝部124および帯電部14と同様に、円周方向に間隔を空けて形成され、かつ等間隔に配置されている。回転軸11を中心とする同一円周上では、対向電極15および対向電極16の幅は同じであり、その大きさは溝部124および帯電部14の幅と同じかほぼ同じであることが好ましい。また、帯電部14、対向電極15および対向電極16の個数も同じであることが好ましい。
【0034】
被覆層19は、空気中の湿気により帯電部14の帯電量が低下するのを防ぐための保護層であり、
図2(B)に示すように、溝部124内における回転部材12の側壁、すなわち、帯電部14が形成された回転部材12の下面122に接する溝部124の側面を被覆する。被覆層19は回転部材12の厚さ方向の全体にわたって溝部124内の側壁を覆い、帯電部14は回転部材12の下面122において溝部124の縁まで広がっているため、帯電部14と被覆層19の間では、回転部材12の基材は露出していない。
【0035】
被覆層19の少なくとも表面は、金属の酸化物や樹脂などの絶縁物で構成される。被覆層19は、例えば樹脂材料で構成され、その厚さ方向の全体が絶縁層であってもよいし、あるいは金属材料で構成され、その表面が酸化されることで表面だけが絶縁層になっていてもよい。すなわち、被覆層19は単層でもよいし、表面の絶縁層とその下にある別の層との複数層で構成されるものでもよい。一例として、被覆層19は銅または銅を含有する材料で構成され、少なくともその表面が酸化銅になっている。この場合、被覆層19は、厚さ方向の全体が酸化銅であってもよいし、銅層(金属層)と酸化銅層(絶縁層)の2層になっていてもよい。溝部124内の側壁を面状に覆うには少なくとも0.2μm以上の膜厚が必要であるため、被覆層19の絶縁層の厚さは、0.2μm以上であることが好ましい。
【0036】
駆動部20は、アクチュエータ10を駆動するための回路であり、クロック21および比較器22,23を有する。
図1に示すように、クロック21の出力は比較器22,23の入力に接続され、比較器22の出力は対向電極15に、比較器23の出力は対向電極16に、それぞれ電気配線を介して接続されている。比較器22,23は、それぞれクロック21からの入力信号の電位と接地電位とを比較し、その結果を2値で出力するが、比較器22,23の出力信号は互いに逆の符号である。クロック21からの入力信号がHのときには、対向電極15は+V、対向電極16は-Vの電位になり、入力信号がLのときには、対向電極15は-V、対向電極16は+Vの電位になる。
【0037】
駆動部20は、アクチュエータ10の駆動時に、一方の対向電極15には帯電部14の静電荷と同じ符号の電圧を印加し、他方の対向電極16には帯電部14の静電荷とは異なる符号の電圧を印加して、それらの電圧の符号を交互に反転させる。このように電圧が印加されると、帯電部14が作る電界と対向電極15,16が作る電界との相互作用により、帯電部14と対向電極15,16との間に引力または斥力が発生する。駆動部20は、極性が交互に切り替わる電圧を対向電極15,16に印加することで、帯電部14と対向電極15,16の間で発生する静電気力により回転部材12を回転させる。
【0038】
図3(A)~
図3(C)は、回転部材の例を示す平面図である。
図4(A)~
図4(C)は、回転部材の例を示す部分断面図である。
図3(A)~
図3(C)では、花弁型、車輪型および円盤型の3つの回転部材12A~12Cについて、帯電部14が形成されている下面(
図2(A)の下面122)を示している。
図4(A)~
図4(C)では、それぞれ、
図3(A)~
図3(C)のIVA-IVA線、IVB-IVB線およびIVC-IVC線に沿った回転部材12A~12Cの断面を示している。
図4(A)~
図4(C)では、図の下側が回転部材の上面121であり、図の上側が回転部材の下面122に相当する。
【0039】
図3(A)および
図4(A)に示す回転部材12Aは、その面内で回転軸11を中心として放射状に突出する略台形の24本の突出部123Aを有する。突出部123Aは、互いに同じ形状および大きさを有し、回転部材12Aの円周方向に等間隔に配置されている。突出部123A同士の間には、回転部材12Aを厚さ方向に貫通する溝部124Aが形成されており、これが
図2(B)の溝部124に相当する。回転軸11を中心とする同一円周上では、突出部123Aと溝部124Aの幅は同じである。回転部材12Aの帯電部14は、突出部123Aから回転軸11付近にまで延びる略台形の24個の部分領域で構成され、突出部123Aの下面全体を覆っている。
【0040】
図3(B)および
図4(B)に示す回転部材12Bは、回転軸11を中心として放射状に形成された略台形の18個の貫通孔124Bを有する。貫通孔124Bは、
図2(B)の溝部124に相当し、互いに同じ形状および大きさを有し、回転部材12Bの円周方向に等間隔に配置されている。回転軸11を中心とする同一円周上では、貫通孔124B同士の間の部分である平坦部(スポーク部分)123Bと貫通孔124Bの幅は同じである。回転部材12Bの帯電部14は、略台形の18個の部分領域で構成され、回転部材12Bの下面における平坦部123Bを覆っている。
【0041】
図3(C)および
図4(C)に示す回転部材12Cは、その下面に、回転軸11を中心として放射状に形成された略台形の18個の凹部124Cを有する。凹部124Cは、
図2(B)の溝部124に相当し、固定基板13に対して窪んでいるが、回転部材12Cを厚さ方向に貫通していない。凹部124Cは、互いに同じ形状および大きさを有し、回転部材12Cの円周方向に等間隔に配置されている。凹部124C同士の間は、固定基板13に向けて相対的に突出した凸部123Cであり、回転軸11を中心とする同一円周上では、凸部123Cと凹部124Cの幅は同じである。回転部材12Cの帯電部14は、略台形の18個の部分領域で構成され、凸部123Cを覆っている。固定基板13とは反対側の面である回転部材12Cの上面は、凹凸のない平坦面であり、回転部材12Cでは、固定基板13との対向面のみに凹凸(溝部)が形成されている。
【0042】
回転部材12A~12Cのいずれでも、回転軸11を取り囲む円環状の中央部121cは、帯電部も溝部も形成されていない平坦な領域である。なお図中では、中央部121cの平坦な領域には帯電部が形成されていないが、平坦な領域に帯電部が形成されていてもかまわない。突出部123A、平坦部123Bまたは凸部123Cの個数(すなわち、帯電部14の個数)は、図示した24個または18個に限らず、何個でもよい。
【0043】
図5(A)および
図5(B)は、別のアクチュエータ10’およびそれに用いられる回転部材の例を示す部分断面図である。アクチュエータ10’は、回転軸(
図2(A)の回転軸11と同じもの)、回転部材12’、固定基板13,13’、帯電部14,14’および対向電極15,16,15’,16’を有する。
図5(A)では、
図2(B)と同様に、回転部材12’および固定基板13,13’を円周方向に切断した断面を示しており、
図5(A)の横方向が
図2(A)の矢印C方向に相当する。
図5(B)は、
図4(A)と同様に回転部材12’を切断したときの断面を示す。
【0044】
アクチュエータ10’の固定基板13、帯電部14および対向電極15,16は、上記したアクチュエータ10のものと同じである。回転部材12’は、溝部124同士の間における下面に帯電部14を、溝部124同士の間における上面に帯電部14と同様の帯電部14’をそれぞれ有し、帯電部14’が追加されている点のみがアクチュエータ10の回転部材12と異なる。回転部材12’は、
図3(A)~
図3(C)に示した回転部材12A~12Cのいずれの形状を有してもよい。固定基板13’および対向電極15’,16’は固定基板13および対向電極15,16と同じものであるが、固定基板13’は、固定基板13とは上下を逆にして配置されている。アクチュエータ10’は、固定基板13’、回転部材12’および固定基板13をこの順に互いに一定の間隔を空けて平行に配置して構成される。
【0045】
対向電極15’,16’には、対向電極15,16とそれぞれ同じ電圧が印加される。これにより、アクチュエータ10’では、回転部材12’の下面側では帯電部14と対向電極15,16の間で、回転部材12’の上面側では帯電部14’と対向電極15’,16’の間でそれぞれ静電気力が発生するので、取り出される動力がアクチュエータ10と比べて大きくなる。
【0046】
回転部材12A~12Cでは、
図4(A)~
図4(C)に示すように、被覆層19は、溝部124A、貫通孔124Bおよび凹部124C(回転部材の溝部)の側壁に形成されている。回転部材12’でも、
図5(B)に示すように、被覆層19は溝部124Aの側壁に形成されている。しかしながら、被覆層は、少なくとも回転部材の溝部に形成されていればよく、溝部の側壁に加えて、回転部材の上面、下面またはその両方にも形成されていてもよい。
【0047】
図6(A)~
図6(E)は、被覆層の配置の例を示す部分断面図である。
図6(A)に示す被覆層19aは、上面、下面および溝部124Aの側壁を含む回転部材の全面に形成されている。この例では、帯電部14は被覆層19aの上に形成され、固定基板13との対向面では、被覆層19aは帯電部14により覆われている。
図6(B)に示す被覆層19bは、回転部材の帯電部14とは反対側の面および溝部124Aの側壁に、すなわち、帯電部14が形成される側の面を除く回転部材の全面に形成されている。
図6(C)に示す被覆層19cは、回転部材の全面に形成され、かつ帯電部14を被覆している。すなわち、
図6(C)では被覆層と帯電部14との位置関係が
図6(A)とは逆であり、被覆層の材質および製法によっては、このように被覆層が帯電部を被覆することもある。回転部材12は、被覆層19に替えて、被覆層19a~19cのいずれかを有してもよい。
【0048】
回転部材の両面に帯電部14,14’が形成された場合も、
図6(D)および
図6(E)に符号19a,19cで示すように、被覆層は、上面、下面および溝部124Aの側壁を含む回転部材の全面に形成されていてもよい。この場合も、被覆層は、
図6(D)の被覆層19aのように帯電部14,14’の下に形成されていてもよいし、
図6(E)の被覆層19cのように帯電部14,14’の上に形成されていてもよい。
図6(A)~
図6(E)の例では、回転部材の中央部121cを除く全面が帯電部14および被覆層19a,19bで覆い尽くされてもよいし、中央部121cのみ回転部材の基材が露出してもよい。また、
図6(A)~
図6(E)では回転部材が
図3(A)の花弁型である場合の例を示しているが、
図3(B)の車輪型および
図3(C)の円盤型の場合も、被覆層19a~19cのいずれかを有してもよい。
【0049】
アクチュエータ10,10’の製造時には、まず回転部材12,12’が形成される。以下では、回転部材12,12’の製造工程の例を2つ説明する。
【0050】
(工程1-1)1つ目の例では、まず、回転部材12,12’となる基板(第1基板)上に互いに間隔を空けて複数の溝部124が形成される。例えば、回転部材12,12’の基材がアルミニウムなどの金属材料の場合には、溝部124は、プレス加工、レーザ加工または放電加工により形成される。あるいは、回転部材12,12’の基材がシリコンまたはステンレス鋼の場合には、溝部124は、深掘りRIE(D-RIE:Deep Reactive Ion Etching)またはエッチング加工により形成される。
【0051】
(工程1-2)また、溝部124が形成された基板における少なくとも溝部124の側壁に被覆層19(または被覆層19a,19b)が形成される。溝部124を放電加工により形成する場合には、金属材料の被覆層19を溝部124と同時に形成することができる。すなわち、放電加工の場合には、工程1-1を行うことで、工程1-2が同時に行われたことになる。例えば、銅ワイヤを使用して放電加工を行うと、ワイヤの成分である銅が、回転部材12,12’となる基板の金属と合金化して、加工面である溝部124の側壁に、酸素と銅を多く含む変質層(銅合金の皮膜)ができ、この変質層が被覆層19として機能する。
【0052】
溝部124を放電加工以外の方法で形成する場合には、溝部124が形成された基板に銅などの金属材料を蒸着させることで被覆層19を形成してもよい。蒸着を行う場合には、溝部124の側壁に加えて、基板の上面、下面またはその両方を覆う被覆層19a,19bを形成してもよい。あるいは、回転部材12,12’の基材がアルミニウムまたはその合金の場合には、溝部124が形成された基板に対して熱酸化処理またはベーマイト処理を行うことで、その表面(上面、下面および溝部124の側壁)に被覆層として酸化膜(酸化アルミニウム膜)またはベーマイト処理膜(アルミニウム水和酸化皮膜)を形成してもよい。ベーマイト処理膜は、溝部124が形成された基板を90~100℃以上の高温水または加圧水蒸気中に保持することで形成される。
【0053】
(工程1-3)そして、溝部124と被覆層が形成された基板における溝部124同士の間の平面(片面)に、帯電部14となるエレクトレット材料の領域が形成され、回転部材12’の場合には、さらにその反対側の面にも、帯電部14’となるエレクトレット材料の領域が形成される。帯電部14、14’のエレクトレット材料としては、例えば、CYTOP(登録商標)などの樹脂材料または二酸化ケイ素もしくは窒化ケイ素などの無機材料が用いられる。
【0054】
(工程1-4)次に、こうして得られた基板が、例えば280℃の高温で焼成される。被覆層として工程1-2で金属材料を蒸着させた場合には、この焼成により被覆層が酸化することで、その表面に絶縁層が形成される。
【0055】
(工程1-5)その後、帯電部14,14’となる領域を、例えばコロナ放電により帯電させる。その際は、基板上のエレクトレット材料に対向させて針電極またはワイヤ電極が配置され、その電極に例えば数千V程度の高電圧が掛けられる。こうして、針電極から基板に向けて電子を放出させることにより、負に帯電した帯電部14,14’が形成される。これにより、回転部材12,12’が完成する。
【0056】
(工程2-1)2つ目の例では、回転部材12,12’の基材としてアルミニウムまたはその合金の基板(第1基板)が用意され、まず、PTFEなどの材料で予め作製されたシート状のエレクトレット材料がその基板の片面または両面に貼り付けられる。
【0057】
(工程2-2)そして、エレクトレット材料のシート付きの基板に対してプレス加工を行うことで、複数の溝部124が形成される。これにより、エレクトレット材料のシートが基板の片面または両面で複数の部分領域に分割されて、基板上の溝部124同士の間に帯電部14,14’となる領域が配置される。
【0058】
(工程2-3)さらに、溝部124が形成された基板に、被覆層としてフッ素樹脂などの樹脂膜またはベーマイト処理膜が形成される。樹脂膜の場合には、
図6(C)および
図6(E)に示すように、被覆層は基板の全面に形成されて、帯電部14,14’となる領域を被覆する。ベーマイト処理膜の場合には、基板のアルミニウムが露出しているところだけに成膜されるため、被覆層は、回転部材12’では、
図5(B)に示すように溝部124の側壁だけに形成され、回転部材12’では、
図6(B)に示すように、さらに帯電部14とは反対側の面にも形成される。
【0059】
(工程2-4)被覆層が樹脂膜の場合には、さらに被覆層を室温乾燥させる。被覆層がベーマイト処理膜の場合には、室温乾燥は行われない。
【0060】
(工程2-5)その後、帯電部14,14’となる領域を、例えばコロナ放電により帯電させる。その際は、基板上のエレクトレット材料に対向させて針電極またはワイヤ電極が配置され、その電極に例えば数千V程度の高電圧が掛けられる。こうして、針電極から基板に向けて電子を放出させることにより、負に帯電した帯電部14,14’が形成される。これにより、回転部材12,12’が完成する。
【0061】
その後は、回転部材12,12’が回転軸11に取り付けられ、アクチュエータ10の場合には、固定基板13の対向電極15,16と回転部材12の帯電部14とを対向させ、一定の間隔を空けて回転部材12と固定基板13が平行に配置される。アクチュエータ10’の場合も、回転部材12’および固定基板13,13’の3枚が同様に平行に配置される。これにより、アクチュエータ10,10’が完成する。なお上述のコロナ放電による帯電工程は、回転軸11への取り付け後におこなってもかまわない。
【0062】
放電加工では、溝部124の側壁にしか被覆層19が形成されないが、溝部124を形成するための基板加工と同時に被覆層19を形成することができる。したがって、被覆層19の形成のために製造工程が増えない点で、放電加工を利用することが好ましい。また、蒸着の場合には被覆層19,19a,19bの膜厚は高々1μm程度であるが、放電加工の場合には、数十μm程度の厚さの被覆層19を容易に形成することができる。このため、被覆層19の厚さを確保する点でも、放電加工を利用することが好ましい。
【0063】
図7(A)~
図7(D)は、被覆層の配置と帯電時の効果を説明するための図である。
図7(A)は、
図3(A)に示した花弁型の回転部材12Aの平面図であり、
図7(B)~
図7(D)は、回転部材12Aにおける1つの突出部123Aの断面を示している。
図7(B)は被覆層19がない場合、
図7(C)は突出部123Aの側面に被覆層19が形成された場合、
図7(D)は突出部123Aの下端の尖った角部(突状部)125のみに被覆層19dが形成された場合の断面図である。ここでは回転部材12Aの両面に帯電部14,14’が形成された場合を図示しているが、
図7(A)では帯電部14,14’と被覆層19の図示は省略している。
図7(C)が
図7(A)のVIIC-VIIC線に沿った回転部材12Aの断面図に相当する。
【0064】
回転部材12,12’の基材が金属材料の場合には、プレス加工の方が、溝部124を一度に形成できるため、放電加工やレーザ加工よりも生産性が高い。しかしながら、プレス加工を行うと、
図7(B)~
図7(D)に符号125で示すように、基板の一方の面における角部が尖った形状になる。すなわち、回転部材12,12’となる基板における複数の溝部124に面する角部が、それぞれ厚さ方向(図中の下方向)に突出する突状部(カエリ部)になる。この状態で帯電部14,14’となる樹脂膜を基板上に形成して高電圧を掛ける(上記の工程1-3)と、
図7(B)に示すように、突状部125がアンテナのように作用してそこに電荷(電子E)が引き付けられるため、エレクトレット材料に電荷が溜まり難くなる。その結果、突状部125が形成された側の面における帯電部14’の表面電位が低くなり、帯電量が少なくなるという不具合がある。
【0065】
そこで、回転部材12,12’をプレス加工で形成する場合には、
図7(C)に示すように、プレス加工によって個々の突状部125を被覆層19により覆うことが好ましい。被覆層19の厚さは、突状部125が電気的に絶縁されればよいので、高々1μmあれば十分である。
図7(A)~
図7(D)では回転部材が
図3(A)の花弁型である場合の例を示しているが、
図3(B)の車輪型および
図3(C)の円盤型の場合も同様である。
【0066】
突状部125を絶縁性の被覆層19により覆った後に帯電部14,14’を帯電させることで、コロナ放電時の電荷が突状部125に引き付けられることがなくなり、エレクトレット材料に効率よく電荷が叩き込まれる。これにより、被覆層19がない場合と比べて帯電効率が上がり、エレクトレット材料に蓄えられる帯電量が多くなるので、突状部125が形成された側の面における帯電部14’の表面電位を高くすることができる。したがって、得られた回転部材をエレクトレットモータとして使用したときに、より大きなトルクを発生させることができる。帯電時の帯電量の減少を抑えるには、
図7(D)に符号19dで示すように突状部125だけを絶縁膜で覆えばよいが、帯電後の帯電量の経時変化を防ぐには、
図7(C)に示すように、回転部材の溝部の側面全体を被覆層で覆う必要がある。
【0067】
図8(A)~
図15(B)は、帯電部の帯電量の経時変化を示すグラフである。各グラフの横軸は時間tを表し、その単位は時間(h:hour)である。各グラフの縦軸は帯電部14,14’の表面電位Vを表し、その単位はボルト(V)である。各グラフでは、両面に帯電部が形成された2つまたは3つの回転部材12’についての測定結果と、その測定結果の近似直線を重ねて示している。帯電部14,14’の帯電量は時間とともに低下(経時変化)するので、近似直線の傾きΔV/Δln(t)は負の値になる(lnは自然対数である)。この傾きが緩やかなほど、すなわち、傾きの絶対値が小さいほど、帯電量が低下し難いことを意味する。
【0068】
図8(A)~
図10(C)は、基材がアルミニウムで、帯電部14,14’が厚さ15μmのフッ素樹脂材料のCYTOP(登録商標)で構成された回転部材12’を気温30℃、湿度60%の環境に置いたときの帯電量の経時変化を示す。回転部材12’の形状は、
図8(A)~
図10(B)が
図3(A)の花弁型、
図10(C)が
図3(B)の車輪型である。
【0069】
図8(A)は、直径12mm、帯電部14,14’がそれぞれ24個であり、プレス加工で溝部124Aが形成され、被覆層19がない場合の結果を示す。
図8(B)は、直径11.5mm、帯電部14,14’がそれぞれ30個であり、レーザ加工で溝部124Aが形成され、被覆層19がない場合の結果を示す。
図8(C)は、直径12mm、帯電部14,14’がそれぞれ24個であり、プレス加工で溝部124Aが形成され、厚さ0.1μm以下の酸化膜(酸化アルミニウム膜)の被覆層19aが全面に形成された場合の結果を示す。
図8(C)の場合には、被覆層19aの厚さが薄いため、被覆層で覆われていない領域が部分的に残っている。
【0070】
図9(A)~
図9(C)は、直径12mm、帯電部14,14’がそれぞれ24個であり、プレス加工で溝部124Aが形成された場合の結果を示す。
図9(A)は、厚さ0.3μmの銅の被覆層19aが蒸着で全面(上面、下面および溝部の側面)に形成された場合の結果を示す。
図9(B)は、厚さ0.3μmの銅の被覆層19bが蒸着で底面(帯電部14とは反対側の面)と溝部の側面に形成された場合の結果を示す。
図9(A)と
図9(B)の場合、被覆層19a,19bの表面は、焼成されることで酸化銅になっている。
図9(C)は、厚さ1~2μmのベーマイト処理膜の被覆層19aが全面に形成された場合の結果を示す。
【0071】
図10(A)は、直径12mm、帯電部14,14’がそれぞれ24個であり、放電加工で溝部124Aと銅を含有する被覆層19(側面のみ)とが形成された場合の結果を示す。
図10(B)は、直径11.5mm、帯電部14,14’がそれぞれ30個であり、放電加工で溝部124Aと銅を含有する被覆層19(側面のみ)とが形成された場合の結果を示す。
図10(C)は、直径12mm、帯電部14,14’がそれぞれ24個であり、プレス加工で貫通孔124Bが形成され、厚さ0.4μmのフッ素樹脂膜の被覆層19cが全面に形成された場合の結果を示す。
図8(A)~
図10(C)の結果を表1にまとめて示す。
【0072】
【0073】
被覆層19がない
図8(A)および
図8(B)の場合、ならびに被覆層19aの厚さが0.1μm以下である
図8(C)の場合には、帯電直後(時間0)に160V程度であった表面電位が、約1000時間後に100V以下に低下する。しかしながら、
図9(A)~
図10(C)では、
図8(A)~
図8(C)と比べて近似直線の傾きが緩やかになっており、厚さが0.3μm以上の被覆層19,19a~19cを溝部の側面または全面に形成することで、帯電量が経時変化し難くなることが分かる。
【0074】
図11(A)および
図11(B)は、基材がシリコンで、帯電部14,14’が厚さ15μmのCYTOP(登録商標)で構成された
図3(B)の車輪型の回転部材12Bを気温30℃、湿度90%の環境に置いたときの帯電量の経時変化を示す。これらの図は、直径8.9mm、帯電部14,14’がそれぞれ30個であり、深掘りRIE(D-RIE)で貫通孔124Bが形成された場合の結果を示す。
図11(A)は被覆層19がない場合の、
図11(B)は厚さ0.3μmの銅の被覆層19aが蒸着で全面に形成された場合の結果である。
図11(B)の場合、被覆層19aの表面は、焼成されることで酸化銅になっている。
図11(A)および
図11(B)の結果を表2にまとめて示す。
図11(B)では、
図11(A)と比べて近似直線の傾きが緩やかになっており、厚さ0.3μmの被覆層19aを形成することで帯電量が経時変化し難くなることが分かる。
【0075】
【0076】
図12(A)~
図12(C)は、基材がステンレス鋼で、帯電部14,14’が厚さ15μmのCYTOP(登録商標)で構成された
図3(B)の車輪型の回転部材12Bを気温30℃、湿度90%の環境に置いたときの帯電量の経時変化を示す。これらの図は、直径8.9mm、帯電部14,14’がそれぞれ30個であり、エッチングで貫通孔124Bが形成された場合の結果を示す。
図12(A)は被覆層19がない場合の、
図12(B)は厚さ0.3μmの銅の被覆層19aが蒸着で全面に形成された場合の、
図12(C)は厚さ0.1μm以下の酸化膜(陽極酸化によるもの)の被覆層19aが全面に形成された場合の結果である。
図12(B)の場合、被覆層19aの表面は、焼成されることで酸化銅になっている。
図12(C)の場合には、被覆層19aの厚さが薄いため、被覆層で覆われていない領域が部分的に残っている。これらの結果を表3にまとめて示す。
【0077】
【0078】
図12(C)の場合、帯電量の経時変化は
図12(A)の場合とほとんど変わらないが、
図12(B)では、
図12(A)と比べて近似直線の傾きが緩やかになっており、厚さ0.3μmの被覆層19aを形成することで帯電量が経時変化し難くなることが分かる。
【0079】
図13(A)~
図14(C)は、基材がアルミニウムで、帯電部14,14’が厚さ25μmのPTFEで構成された回転部材12’を気温30℃、湿度60%の環境に置いたときの帯電量の経時変化を示す。回転部材12’の形状は、
図13(A)および
図13(B)が花弁型、
図13(C)~
図14(C)が車輪型である。これらの図は、直径12mm、帯電部14,14’がそれぞれ24個であり、プレス加工で溝部124Aまたは貫通孔124Bが形成された場合の結果を示す。
図13(A)および
図13(C)は被覆層19がない場合の、
図13(B)は厚さ0.5μmのフッ素樹脂膜の被覆層19cが全面に形成された場合の結果である。
図14(A)および
図14(B)はそれぞれ厚さ0.2μmおよび0.4μmのフッ素樹脂膜の被覆層19cが、
図14(C)は厚さ1~2μmのベーマイト処理膜の被覆層19が側面のみに形成された場合の結果である。
【0080】
図15(A)および
図15(B)は、基材がアルミニウムで、帯電部14,14’が厚さ38μmのPTFEで構成された車輪型の回転部材12Bを気温30℃、湿度60%の環境に置いたときの帯電量の経時変化を示す。これらの図は、直径12mm、帯電部14,14’がそれぞれ24個であり、プレス加工で貫通孔124Bが形成された場合の結果を示す。
図15(A)は被覆層19がない場合の、
図15(B)は厚さ0.2μmのフッ素樹脂膜の被覆層19cが全面に形成された場合の結果である。
図13(A)~
図15(B)の結果を表4にまとめて示す。
【0081】
【0082】
図13(B)では
図13(A)と比べて、
図14(A)~
図14(C)では
図13(C)と比べて、
図15(B)では
図15(A)と比べて、それぞれ近似直線の傾きが緩やかになっている。このため、厚さ0.2μm以上の被覆層19,19cを形成することで帯電量が経時変化し難くなることが分かる。また、
図14(B)では
図14(A)と比べてさらに近似直線の傾きが緩やかになっており、フッ素樹脂膜の厚さを大きくするほど帯電量の経時変化を抑える効果がより大きくなることが分かる。
【0083】
以上説明したように、回転部材12,12’における帯電部14,14’が形成された面と接する溝部124の側壁(側面)にその側壁を覆い尽くせる0.2μm以上の厚さの被覆層19,19a~19cを形成することで、高湿度の環境下でも、帯電部14,14’の帯電量が低下し難くなる。
図8(A)~
図15(B)には示していないが、
図3(C)の円盤型の回転部材12Cでも、被覆層19,19a~19cを設けることで同様の効果が得られる。また、回転部材12,12’の基材として比重が小さいアルミニウムまたはその合金などを使用し、かつ溝部124を設ければ、軽量化されることにより慣性モーメントが小さくなる。このため、電気機械変換器1は、小さなトルクでも安定して駆動でき、高湿度の環境下でも高い発生トルクを維持できるので、軽量化と耐湿性を両立させた信頼性の高いエレクトレットモータになる。
【0084】
図16は、別の電気機械変換器2の概略構成図である。
図16に示すように、電気機械変換器2は、発電部30および蓄電部40を有する。発電部30は、アクチュエータ10と同様に、回転軸11、回転部材12、固定基板13、帯電部14および対向電極15,16を有する。電気機械変換器2は、外部環境の運動エネルギーを用いて回転部材12を回転させ、発電部30内で静電誘導により静電気を発生させることで動力から電力を取り出す発電装置(エレクトレット発電機)である。
【0085】
回転軸11、回転部材12、固定基板13、帯電部14および対向電極15,16はアクチュエータ10のものと同じであるが、発電部30では、回転部材12または回転部材12とは別に、重量バランスの偏りを有する図示しない回転錘が取り付けられる。発電部30では、例えば電気機械変換器2を携帯する人体の運動または電気機械変換器2が取り付けられた機械などの振動を動力源として、回転錘が回転することで回転部材12がその円周方向に回転する。回転部材12が回転すると、それに伴い、帯電部14と対向電極15,16の間の重なり面積が増減する。例えば、帯電部14の内面に負電荷が保持されているとすると、回転部材12の回転に伴い、対向電極15,16に引き寄せられる正電荷が増減して、対向電極15と対向電極16の間に交流電流が発生する。このようにして電流を発生させることにより、発電部30は静電誘導を利用した発電を行う。
【0086】
蓄電部40は、整流回路41および二次電池42を有し、回転部材12の回転に応じて帯電部14と対向電極15,16との間の静電誘導により発生した電力を蓄積する。電気機械変換器2の対向電極15,16は、電気配線を介して整流回路41に接続され、整流回路41は二次電池42に接続されている。整流回路41は、4個のダイオードを有するブリッジ式の回路であり、対向電極15と対向電極16の間で生成された電流を整流する。二次電池42は、リチウム二次電池などの充放電可能な電池であり、発電部30によって発電された電力を蓄積し、図示しない駆動対象の回路にその電力を供給する。
【0087】
発電部30でも、回転部材12として、上記した被覆層19(または被覆層19a~19c)を有するものが使用される。これにより、発電部30の回転部材12でも、帯電部14の帯電量が低下し難くなり、軽量化と耐湿性を両立させた信頼性の高いエレクトレット発電機が実現される。
【0088】
図17(A)~
図17(C)は、さらに別の電気機械変換器3の概略構成図である。
図17(A)に示すように、電気機械変換器3は、アクチュエータ50および駆動部20を有する。アクチュエータ50は、筐体51、スライド板52、固定基板53、帯電部54および対向電極55,56を有する。
図17(B)および
図17(C)は、帯電部54および対向電極55,56の配置、ならびにスライド板52の移動方向を示す平面図である。電気機械変換器3は、駆動部20に入力された電気信号をもとに、帯電部54と対向電極55,56との間の静電気力を利用してスライド板52を直線上で往復移動させることにより電力から動力を取り出すエレクトレットモータである。電気機械変換器の可動部材は、回転軸の周りに回転するものに限らず、スライド板52のように往復移動するものであってもよい。
【0089】
スライド板52は、可動部材の一例であり、アルミニウムまたはシリコンなどの基材で構成され、図示しない可動支持部により箱型の筐体51内に支持されている。スライド板52は、筐体51の底面に配置された固定基板53との間で一定の距離を保って、固定基板53に平行な方向(水平方向、矢印A方向)に往復移動可能である。スライド板52の下面には、例えば、複数の凸部523および凹部524(溝部の一例)が、スライド板52の移動方向に交互に、かつその移動方向と直交する方向に帯状(直線状)に形成されている。凸部523同士および凹部524同士はそれぞれ等間隔に配置されており、それらの幅は同じであることが好ましい。図示した形態とは異なり、凹部524はスライド板52を厚さ方向に貫通していてもよい。
【0090】
帯電部54は、エレクトレット材料で構成された薄膜であり、スライド板52の下面における凸部523の上を覆うように、帯状に形成されている。対向電極55,56は、固定基板53の上面において、スライド板52の移動方向に交互に、かつその移動方向と直交する方向に帯状に形成されている。対向電極55同士および対向電極56同士はそれぞれ等間隔に配置されており、それらの幅は同じであることが好ましい。また、対向電極55,56の幅は、凸部523および凹部524の幅と同じかほぼ同じであることが好ましく、帯電部54、対向電極55および対向電極56の個数も同じであることが好ましい。
【0091】
駆動部20は、アクチュエータ50を駆動するための回路であり、対向電極55,56に電気配線を介して接続されている。駆動部20は、電気機械変換器1のものと同様の構成を有し、極性が交互に切り替わる電圧を対向電極55,56に印加することにより、
図17(B)および
図17(C)に示すように、スライド板52を筐体51内で矢印A方向に往復移動させる。
【0092】
アクチュエータ50でも、スライド板52の凹部524の側壁には、上記した回転部材12の被覆層19(または被覆層19a~19c)と同様の被覆層が形成される。これにより、アクチュエータ50のスライド板52でも、帯電部54の帯電量が低下し難くなり、軽量化と耐湿性を両立させた信頼性の高いエレクトレットモータが実現される。
【0093】
発電部30およびアクチュエータ50でも、
図5(A)に示したアクチュエータ10’のように、回転部材12またはスライド板52の両面に帯電部を形成し、回転部材12またはスライド板52の両面に対向電極付きの固定基板を対向させてもよい。