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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】マルチゾーンヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/74 20060101AFI20230125BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H05B3/74
H05B3/10 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020508165
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2019008815
(87)【国際公開番号】W WO2019181500
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-08-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2018055520
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海野 豊
(72)【発明者】
【氏名】近藤 暢之
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】マキロイ 寛済
【審判官】西村 泰英
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-133195(JP,A)
【文献】特開2004-6242(JP,A)
【文献】特開2005-197074(JP,A)
【文献】特開2003-272805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
H05B 3/10
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を有する円盤状のセラミック基体と、
前記セラミック基体の中央部に設けられたコイル状又はメッシュ状の中央部ゾーンヒータと、
前記中央部ゾーンヒータと同一平面上で前記セラミック基体の外周部の1以上の外周部ゾーンのそれぞれに対応して設けられ、前記外周部ゾーン内で一方の端部から他方の端部まで一筆書きの要領で前記外周部ゾーンの全域にわたって配線されたコイル状又はメッシュ状の外周部ゾーンヒータと、
前記セラミック基体の前記中央部に配置された第1端子から前記中央部に設けられた前記中央部ゾーンヒータの間を通過して前記外周部ゾーンヒータの一方の端部に接続され、平面視したときの形状が蛇行した形状である第1素線部と、
前記セラミック基体の前記中央部に配置された第2端子から前記中央部に設けられた前記中央部ゾーンヒータの間を通過して前記外周部ゾーンヒータの他方の端部に接続され、平面視したときの形状が蛇行した形状である第2素線部と、
を備え、
前記第1素線部及び前記第2素線部は、それぞれ複数の湾曲部を有し、互いに平行になるように設けられ、曲率半径が小さい部分での発熱量は曲率半径が大きい部分での発熱量より高い、
マルチゾーンヒータ。
【請求項2】
ウエハ載置面を有する円盤状のセラミック基体と、
前記セラミック基体の中央部に設けられたコイル状又はメッシュ状の中央部ゾーンヒータと、
前記中央部ゾーンヒータと同一平面上で前記セラミック基体の外周部の1以上の外周部ゾーンのそれぞれに対応して設けられ、前記外周部ゾーン内で一方の端部から他方の端部まで一筆書きの要領で前記外周部ゾーンの全域にわたって配線されたコイル状又はメッシュ状の外周部ゾーンヒータと、
前記セラミック基体の前記中央部に配置された第1端子から前記中央部に設けられた前記中央部ゾーンヒータの間を通過して前記外周部ゾーンヒータの一方の端部に接続され、平面視したときの形状が蛇行した形状である第1素線部と、
前記セラミック基体の前記中央部に配置された第2端子から前記中央部に設けられた前記中央部ゾーンヒータの間を通過して前記外周部ゾーンヒータの他方の端部に接続され、平面視したときの形状が蛇行した形状である第2素線部と、
を備え、
前記第1素線部及び前記第2素線部は、それぞれ複数の湾曲部を有し、前記第1素線部及び前記第2素線部の周辺箇所には、それらが互いに接近している部分と離間している部分とが存在し、
前記互いに接近している部分での前記第1素線部と前記第2素線部との間隔は、前記互いに離間している部分での前記第1素線部と前記第2素線部との間隔より小さく構成され、前記互いに接近している部分での発熱量は、前記互いに離間している部分での発熱量より高い、
マルチゾーンヒータ。
【請求項3】
前記外周部ゾーンは、前記セラミック基体の前記外周部に複数設けられている、
請求項1又は2に記載のマルチゾーンヒータ。
【請求項4】
前記第1素線部及び前記第2素線部の単位長さあたりの抵抗値は、前記外周部ゾーンヒータの単位長さあたりの抵抗値よりも小さい、
請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチゾーンヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチゾーンヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置においては、ウエハを加熱するためのセラミックヒータが採用されている。こうしたセラミックヒータとしては、いわゆる2ゾーンヒータが知られている。この種の2ゾーンヒータとしては、特許文献1に開示されているように、セラミック基体中に、中央部ゾーンヒータと外周部ゾーンヒータとを同一平面に埋設し、各ゾーンヒータにそれぞれ独立して電圧を印加することにより、各ゾーンヒータからの発熱を独立して制御するものが知られている。各ゾーンヒータは、コイルで構成されている。外周部ゾーンヒータの2つの端子は、セラミック基体の中央部に設けられている。各端子は、導電接続部を介して外周部ゾーンヒータに接続されている。導電接続部は、端子から中央部を通過して外周部に至るように形成されている。特許文献1には、中央部において導電接続部の周辺の温度が相対的に低下する傾向があるため、導電接続部の周辺のコイルの単位面積あたりの発熱量を増大させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3897563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導電接続部をコイルで構成した場合、そのコイルが発熱して中央部ゾーンヒータによる中央部の温度制御に影響を与えることがある。一方、導電接続部を素線(ワイヤ)で構成した場合、発熱量が少ないため中央部ゾーンヒータによる中央部の温度制御に大きな影響を与えることはない。しかしながら、導電接続部を素線にすると、例えば中央部ゾーンヒータと外周部ゾーンヒータとのパワー比を変更した場合や設定温度の変更により両ゾーンヒータへ供給するパワーが増減した場合には、導電接続部の周辺にクールスポット又はホットスポットを生じることがあった。一方、セラミックヒータを繰り返し熱サイクルが生じる環境下で使用すると、セラミック基体に埋設されたコイルとセラミック基体との間で熱膨張差が生じるが、素線が直線状だとその熱膨張差を吸収しきれず、素線の両端に生じる熱応力によってセラミック基体が破損することがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、使用環境が変化したときにクールスポットやホットスポットが発生するのを防止すると共にヒータの破損を防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマルチゾーンヒータは、
ウエハ載置面を有する円盤状のセラミック基体と、
前記セラミック基体の中央部に設けられたコイル状又はメッシュ状の中央部ゾーンヒータと、
前記中央部ゾーンヒータと同一平面上で前記セラミック基体の外周部の1以上の外周部ゾーンのそれぞれに対応して設けられ、前記外周部ゾーン内で一方の端部から他方の端部まで一筆書きの要領で前記外周部ゾーンの全域にわたって配線されたコイル状又はメッシュ状の外周部ゾーンヒータと、
前記セラミック基体の前記中央部に配置された第1端子から前記中央部を通過して前記外周部ゾーンヒータの一方の端部に接続され、平面視したときの形状が蛇行した形状である第1素線部と、
前記セラミック基体の前記中央部に配置された第2端子から前記中央部を通過して前記外周部ゾーンヒータの他方の端部に接続され、平面視したときの形状が蛇行した形状である第2素線部と、
を備えたものである。
【0007】
このマルチゾーンヒータでは、各ゾーンヒータにそれぞれ独立して電圧を印加することにより、各ゾーンヒータからの発熱を独立して制御することができる。また、中央部の第1端子から中央部を通過して外周部ゾーンヒータの一方の端部とを接続する第1素線部と、中央部の第2端子から中央部を通過して外周部ゾーンヒータの他方の端部とを接続する第2素線部は、いずれもコイル状でもメッシュ状でもない素線(つまりワイヤ状)である。そのため、第1及び第2素線部は、発熱量が少なく、中央部ゾーンヒータによる中央部の温度制御を妨げない。一方、第1及び第2素線部は、いずれも平面視したときの形状が蛇行した形状であるため、使用環境が変化したときにクールスポットが発生しやすい箇所では形状を曲線的にして発熱量を増やすことができ、ホットスポットが発生しやすい箇所では形状を直線的にして発熱量を抑えることができる。また、マルチゾーンヒータを繰り返し熱サイクルが生じる環境下で使用すると、セラミック基体に埋設されたヒータとセラミック基体との間で熱膨張差が生じるが、第1及び第2素線部は蛇行した形状であるためその熱膨張差を吸収する。そのため、第1及び第2素線部の両端に生じる熱応力が緩和される。このように、本発明のマルチゾーンヒータによれば、使用環境が変化したときに、クールスポットやホットスポットが発生するのを防止すると共にセラミック基体が破損するのを防止することができる。
【0008】
本発明のマルチゾーンヒータにおいて、前記第1素線部及び前記第2素線部は、互いに接近している部分と離間している部分とを有していてもよい。使用環境が変化したときにクールスポットが発生しやすい箇所では互いに接近させて発熱量を増やすようにし、ホットスポットが発生しやすい箇所では互いに離間させて発熱量を抑えるようにする。こうすれば、使用環境が変化したときにクールスポットやホットスポットが発生するのを一層防止しやすくなる。
【0009】
本発明のマルチゾーンヒータにおいて、前記第1素線部及び前記第2素線部は、それぞれ複数の湾曲部を有していてもよい。こうすれば、湾曲部が1箇所しかない場合に比べて各素線部の周辺の発熱量を細かく変化させることができる。
【0010】
本発明のマルチゾーンヒータにおいて、前記外周部ゾーンは、前記セラミック基体の前記外周部に複数設けられていてもよい。こうすれば、外周部ゾーンごとに設けられた外周部ゾーンヒータからの発熱を独立して制御することができるため、外周部の温度を精度よく制御しやすくなる。
【0011】
本発明のマルチゾーンヒータにおいて、前記第1素線部及び前記第2素線部の単位長さあたりの抵抗値は、前記外周部ゾーンヒータの単位長さあたりの抵抗値よりも小さくしてもよい。こうすれば、第1素線部及び第2素線部の単位長さあたりの発熱量を外周部ゾーンヒータの単位長さあたりの発熱量よりも小さくすることができる。例えば、第1素線部及び第2素線部の線径を、外周部ゾーンヒータの線径よりも大きくしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】マルチゾーンヒータ10の平面図。
図2図1のA-A断面図。
図3】第1及び第2素線部41,42の説明図。
図4】マルチゾーンヒータ110の平面図。
図5】第1及び第2素線部241,242の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態を以下に図面を参照しながら説明する。図1はマルチゾーンヒータ10の平面図、図2図1のA-A断面図、図3は第1及び第2素線部41,42の説明図である。なお、図1は、マルチゾーンヒータ10の平面図であるため、内部に埋設されている部材(中央部ゾーンヒータ30や外周部ゾーンヒータ40など)は隠れ線(点線)で示すべきであるが、ここでは説明の便宜上、実線で示した。
【0014】
マルチゾーンヒータ10は、半導体の製造工程で半導体ウエハを加熱するための台として使用するものである。このマルチゾーンヒータ10は、円盤状のセラミック基体20と、中央部ゾーンヒータ30と、外周部ゾーンヒータ40と、第1素線部41と、第2素線部42と、中空シャフト50とを備えている。
【0015】
セラミック基体20は、窒化アルミニウムや炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料からなる円盤状のプレートである。このセラミック基体20の厚みは、例えば0.5mm~30mmである。また、セラミック基体20の表面はウエハ載置面22となっている。ウエハ載置面22には、エンボス加工により複数の凹凸が形成されていてもよいし、複数の溝が形成されていてもよい。セラミック基体20には、中央部20aと外周部20bとがある。中央部20aは、セラミック基体20と同心の円である仮想境界線26の内側の円形領域である。外周部20bは、仮想境界線26の外側の環状領域である。
【0016】
中央部ゾーンヒータ30は、セラミック基体20の中央部20aに埋設されている。この中央部ゾーンヒータ30は、セラミック基体20の中央付近に配設された一対の端子31,32の一方の端子31から他方の端子32まで中央部20aの全域にわたって一筆書きの要領で配線されたコイルである。両端子31,32は、それぞれ給電部材33,34を介して、中央部ゾーンヒータ用電源35に接続されている。この電源35は、コントローラ52によって制御される。中央部ゾーンヒータ30は、一方の端子31から他方の端子32に至るまですべてコイル(図1ではコイルを太線で示す)で構成されている。コイルは、中央部20a内の場所に応じて適宜単位長さあたりの巻き数が変更されていることがある。例えばウエハへのプラズマ入熱が部分的に異なることによりウエハに温度ムラが生じることがあるが、この温度ムラを解消するために場所に応じて単位長さあたりの巻き数を変更することがある。コイルは、単位長さあたりの巻き数が多いほど発熱量が多くなり高温になりやすい。コイルの巻き数を変更する代わりに、巻き径を変更したり線間距離(隣接するコイルの間隔)を変更したりしてもよい。コイルの材質は、例えば、モリブデン、タングステン又はモリブデン/タングステン化合物などが挙げられる。給電部材33,34は、金属製であることが好ましく、Ni製であることがより好ましい。また、給電部材33,34の形状としては、ロッド形状、ワイヤ形状などが挙げられる。各端子31,32と各給電部材33,34との接続は、ネジ、かしめ、嵌合、ろう付け、溶接、共晶はんだ付け等を適用すればよい。
【0017】
外周部ゾーンヒータ40は、セラミック基体20の外周部20bに埋設されている。外周部ゾーンヒータ40は、中央部ゾーンヒータ30と同一平面となるように設けられている。本実施形態では、外周部20bは1つの外周部ゾーンを有している。そのため、外周部20bと外周部ゾーンとは一致する。外周部ゾーンヒータ40は、外周部20b内で一方の端部40aから他方の端部40bまで一筆書きの要領で外周部20bの全域にわたって配線されたコイルである。このコイルも、内周部ゾーンヒータ30と同様、外周部20b内の場所に応じて適宜単位長さあたりの巻き数や巻き径、線間距離(隣接するコイルの間隔)を変更してもよい。コイルの材質は、例えば、モリブデン、タングステン又はモリブデン/タングステン化合物などが挙げられる。
【0018】
第1素線部41は、セラミック基体20の中央部20aに並んで配置された第1及び第2端子43,44のうちの第1端子43から中央部20aを通過して外周部ゾーンヒータ40の一方の端部40aに接続されたワイヤである。この第1素線部41は、平面視したときの形状が蛇行した形状(つまり曲がりくねった形状)である。第2素線部42は、第2端子44から中央部20aを通過して外周部ゾーンヒータ40の他方の端部40bに接続されたワイヤである。この第2素線部42も、平面視したときの形状が蛇行した形状である。ワイヤの材質は、例えば、モリブデン、タングステン又はモリブデン/タングステン化合物などが挙げられる。ワイヤの線径は、特に限定するものではないが、例えば0.3mm以上1.0mm以下が好ましい。第1及び第2端子43,44は、それぞれ給電部材45,46を介して、外周部ゾーンヒータ用電源47に接続されている。この電源47は、コントローラ52によって制御される。給電部材45,46は、金属製であることが好ましく、Ni製であることがより好ましい。また、給電部材45,46の形状としては、ロッド形状、ワイヤ形状などが挙げられる。各端子43,44と各給電部材45,46との接続は、ネジ、かしめ、嵌合、ろう付け、溶接、共晶はんだ付け等を適用すればよい。
【0019】
第1及び第2素線部41,42は、図3に示すように、互いに接近している部分Paと互いに離間している部分Pbとやや接近している部分Pcとを有している。使用環境が変化したときに第1及び第2素線部41,42の周辺でクールスポットが発生しやすい箇所では互いに接近させて発熱量を増やすようにする。また、使用環境が変化したときに第1及び第2素線部41,42の周辺でホットスポットが発生しやすい箇所では互いに離間させて発熱量を抑えるようにする。使用環境が変化したときの温度の変化は、シミュレーション又は実験により把握することができる。そのため、シミュレーションや実験の結果に基づいてどこを接近させどこを離間させるかを設計することができる。
【0020】
第1及び第2素線部41,42は、図3に示すように、それぞれ複数の湾曲部を有している。ここでは、第1素線部41は、4つの湾曲部を有しており、それぞれの曲率半径は第1端子43側から5mm、30mm、9mm、14mmとなっている。湾曲部の曲率半径は、曲率半径が5mm以上が好ましい。第2素線部42は、第1素線部41と線対称の形状であるが、特にこれに限定されるものではなく、別の形状であってもよい。第1及び第2素線部41,42は、このように複数の湾曲部を有しているため、湾曲部が1箇所しかない場合に比べて第1及び第2素線部41,42の周辺の発熱量を細かく変化させることができる。例えば、湾曲部が1箇所しかない場合、第1及び第2素線部41,42の互いに接近した箇所(又は離間した箇所)は1つしかないが、湾曲部が複数ある場合、互いに接近した箇所や離間した箇所を複数設けることができるため温度を細かく制御することができる。
【0021】
中空シャフト50は、セラミック基体20と同じセラミック材料からなる円筒体であり、セラミック基体20のウエハ載置面22とは反対側の面(背面)24に一体的に接合されている。この中空シャフト50の内部には、給電部材33,34,45,46が配置されている。
【0022】
こうしたマルチゾーンヒータ10は、例えば特許文献1に記載された製造方法に準じて製造することができる。そのため、ここではマルチゾーンヒータ10の製造方法については説明を省略する。
【0023】
次に、マルチゾーンヒータ10の使用例について説明する。ここでは、マルチゾーンヒータ10を用いてプラズマCVDによりウエハに半導体薄膜を形成する工程について説明する。マルチゾーンヒータ10は、図示しない半導体製造装置の密閉されたチャンバ内部に配置される。チャンバには、シランガスなどの原料ガスを供給するガス供給ポートやチャンバ内の気体を排気する真空ポートなどが装備されている。
【0024】
プラズマCVDでは、まず、目標温度を~700℃に設定し、コントローラ52によるセラミック基体20の温度制御を行う。コントローラ52は、図示しない熱電対からセラミック基体20の中央部20a及び外周部20bの温度を入力し、各温度が各目標温度になるように中央部ゾーンヒータ30及び外周部ゾーンヒータ40への供給電力を電源35,47を介して調節することにより、セラミック基体20の温度制御を行う。また、チャンバ内を真空にすると共にチャンバ内に原料ガスを供給する。そして、セラミック基体20の中央部20a及び外周部20bの温度が目標温度と略一致した後、セラミック基体20の温度制御を継続したまま、セラミック基体20のウエハ載置面22にウエハを載置する。ウエハを載置した直後は、ウエハ自身の温度が目標温度よりも低いため、測定温度は数℃低下するが、コントローラ52による温度制御により再び目標温度まで上昇する。この状態でプラズマを発生させてウエハ上に原料ガスから半導体薄膜を形成する。
【0025】
ここで、マルチゾーンヒータ10の第1及び第2素線部41,42は、コイルではなく素線(つまりワイヤ状)であるため、発熱量が少なく、中央部ゾーンヒータ30によるセラミック基体20の中央部20aの温度制御を妨げない。一方、第1及び第2素線部41,42は、いずれも平面視したときの形状が蛇行した形状であるため、使用環境が変化したときにクールスポットが発生しやすい箇所では形状を曲線的にして発熱量を増やすことができ、ホットスポットが発生しやすい箇所では形状を直線的にして発熱量を抑えることができる。
【0026】
以上説明したマルチゾーンヒータ10によれば、使用環境が変化した場合(例えば中央部ゾーンヒータ30と外周部ゾーンヒータ40とのパワー比を変更した場合や設定温度の変更により両ゾーンヒータ30,40へ供給するパワーが増減した場合など)であっても、第1及び第2素線部41,42の周辺にクールスポットやホットスポットが発生するのを防止することができる。
【0027】
また、マルチゾーンヒータ10を繰り返し熱サイクルが生じる環境下で使用すると、セラミック基体20に埋設された中央部及び外周部ゾーンヒータ30,40とセラミック基体20との間で熱膨張差が生じるが、第1及び第2素線部41,42は蛇行した形状であるためその熱膨張差を吸収する。そのため、第1及び第2素線部41,42の両端に生じる熱応力が緩和される。したがって、セラミック基体20が破損するのを防止することができる。
【0028】
また、第1及び第2素線部41,42は、互いに接近している部分と離間している部分とを有している。そのため、使用環境が変化したときにクールスポットが発生しやすい箇所では互いに接近させて発熱量を増やすようにし、ホットスポットが発生しやすい箇所では互いに離間させて発熱量を抑えるようにすることができる。したがって、使用環境が変化したときにクールスポットやホットスポットが発生するのを一層防止しやすくなる。
【0029】
更に、第1及び第2素線部41,42は、それぞれ複数の湾曲部を有している。そのため、湾曲部が1箇所しかない場合に比べて各素線部41,42の周辺の発熱量を細かく変化させることができる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0031】
例えば、上述した実施形態では、セラミック基体20の外周部20bが1つの外周部ゾーンを有している場合を例示したが、外周部20bは複数の外周部ゾーンを有していてもよい。図4は、環状の外周部20bに2つの外周部ゾーン(第1及び第2外周部ゾーン20b1,20b2)を設けたマルチゾーンヒータ110の平面図を示す。図4中、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
第1外周部ゾーンヒータ140は、半円環状の第1外周部ゾーン20b1に中央部ゾーンヒータ30と同一平面となるように設けられている。第1外周部ゾーンヒータ140は、第1外周部ゾーン20b1内で一方の端部140aから他方の端部140bまで一筆書きの要領で第1外周部ゾーン20b1の全域にわたって配線されたコイルである。第1素線部141は、セラミック基体20の中央部20aに配置された第1及び第2端子143,144のうちの第1端子143から中央部20aを通過して第1外周部ゾーンヒータ140の一方の端部140aに接続されたワイヤである。この第1素線部141は、平面視したときの形状が蛇行した形状である。第2素線部142は、第2端子144から中央部20aを通過して第1外周部ゾーンヒータ140の他方の端部140bに接続されたワイヤである。この第2素線部142も、平面視したときの形状が蛇行した形状である。
【0033】
第2外周部ゾーンヒータ150は、半円環状の第2外周部ゾーン20b2に中央部ゾーンヒータ30と同一平面となるように設けられている。第2外周部ゾーンヒータ150は、第2外周部ゾーン20b2内で一方の端部150aから他方の端部150bまで一筆書きの要領で第2外周部ゾーン20b2の全域にわたって配線されたコイルである。第1素線部151は、セラミック基体20の中央部20aに配置された第1及び第2端子153,154のうちの第1端子153から中央部20aを通過して第2外周部ゾーンヒータ150の一方の端部150aに接続されたワイヤである。この第1素線部151は、平面視したときの形状が蛇行した形状である。第2素線部152は、第2端子154から中央部20aを通過して第2外周部ゾーンヒータ150の他方の端部150bに接続されたワイヤである。この第2素線部152も、平面視したときの形状が蛇行した形状である。
【0034】
図4のマルチゾーンヒータ110によっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。また、外周部20bを第1及び第2外周部ゾーン20b1,20b2に分けて、第1外周部ゾーン20b1に第1外周部ゾーンヒータ140、第2外周部ゾーン20b2に第2外周部ゾーンヒータ150を設けたため、上述した実施形態に比べてセラミック基体20の外周部20bの温度制御をより細かく行うことができる。
【0035】
上述した実施形態の第1及び第2素線部41,42の代わりに、図5に示す第1及び第2素線部241,242を採用してもよい。第1素線部241は第1素線部41と同じであり、第2素線部242は第1素線部241と平行になるように設けられている。この場合、第1及び第2素線部241,242の周辺を、長さが同じである4つの区間A1~A4に分けたとき、区間A1では他の区間A2~A4に比べて第1及び第2素線部241,242の湾曲部の曲率半径が小さいため、区間A1の素線長さが他の区間A2~A4より長くなる。そのため、区間A1の発熱量が他の区間A2~A4よりも大きくなる。なお、この点は上述した実施形態でも同様である。また、例えば、区間A3,A4を比べると、第1及び第2素線部241,242によって加熱される領域は区間A3では図5において左寄りの領域、区間A4では右寄りの領域となる。
【0036】
上述した実施形態では、中央部ゾーンヒータ30や外周部ゾーンヒータ40の形状をコイル状としたが、これに限定されるものではなく、例えば、メッシュ状(網状)であってもよい。網状の発熱体密度を変更するには、例えば網の目の細かさを変更したり線径を変更したり発熱体の面積を変更したりすればよい。
【0037】
上述した実施形態において、セラミック基体20に更に静電チャック用の静電電極やプラズマ発生用の高周波電極を埋設してもよい。また、中央部ゾーンヒータ30や外周部ゾーンヒータ40をセラミック基体20に埋設する代わりに、セラミック基体20の表面に設けてもよい。
【0038】
上述した実施形態において、第1及び第2素線部41,42のワイヤの線径は中央部及び外周部ゾーンヒータ30,40のコイル(ワイヤと同じ材料)の線径よりも大きくしてもよい。つまり、ワイヤの断面積をコイルの断面積よりも大きくしてもよい。こうすれば、第1及び第2素線部41,42の単位長さあたりの抵抗値は、外周部ゾーンヒータ40の単位長さあたりの抵抗値よりも小さくなる。そのため、第1及び第2素線部41,42の単位長さあたりの発熱量を中央部及び外周部ゾーンヒータ30,40の単位長さあたりの発熱量よりも小さくすることができる。
【0039】
本出願は、2018年3月23日に出願された日本国特許出願第2018-55520号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、半導体製造装置においてウエハを加熱するためのヒータに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 マルチゾーンヒータ、20 セラミック基体、20a 中央部、20b 外周部、20b1 外周部ゾーン、20b2 外周部ゾーン、22 ウエハ載置面、24 背面、26 仮想境界線、30 中央部ゾーンヒータ、31,32 端子、33,34 給電部材、35 中央部ゾーンヒータ用電源、40 外周部ゾーンヒータ、40a,40b 端部、41 第1素線部、42 第2素線部、43 第1端子、44 第2端子、45,46 給電部材、47 外周部ゾーンヒータ用電源、50 中空シャフト、52 コントローラ、110 マルチゾーンヒータ、140 第1外周部ゾーンヒータ、140a,140b 端部、141 第1素線部、142 第2素線部、143 第1端子、144 第2端子、150 第2外周部ゾーンヒータ、150a,150b 端部、151 第1素線部、152 第2素線部、153 第1端子、154 第2端子、241 第1素線部、242 第2素線部。
図1
図2
図3
図4
図5