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特許7216714ウイルス感染を予防および治療するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】ウイルス感染を予防および治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20230125BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230125BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230125BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P31/12
A61P43/00 121
A61K45/06
A61K31/192
A61K31/353
A61K31/7048
A61P31/14
A61P31/16
A61K47/22
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020511973
(86)(22)【出願日】2017-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2017048892
(87)【国際公開番号】W WO2019045677
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518407593
【氏名又は名称】グローバル バイオライフ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL BIOLIFE INC.
【住所又は居所原語表記】4800 Montgomery Lane, Suite 210, Bethesda, MD 20814, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ダリル
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0367517(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0119545(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331722(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0151000(US,A1)
【文献】国際公開第2014/138372(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0328593(US,A1)
【文献】Phytotherapy Research,2010年,24(9),pp.1292-1296
【文献】Memoras do Instituto Oswaldo Cruz,2008年,103(5),pp.437-442
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリセチンヘスペレチンまたはヘスペリジンおよび没食子酸を含む、ウイルス感染の発生を制限するか、またはウイルス感染を治療するための組成物。
【請求項2】
ミリセチンヘスペレチンまたはヘスペリジン、ICAM-1阻害剤および没食子酸を含む、ウイルス感染の発生を制限するか、またはウイルス感染を治療するための組成物。
【請求項3】
前記ウイルス感染がインフルエンザウイルス又はコロナウイルス感染である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ウイルス感染がエボラウイルス感染である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
浸透促進剤をさらに含む請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記浸透促進剤がピペリンである、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
スペレチンを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ICAM-1阻害剤がミリセチンであり、ヘスペレチンを含む、請求項2、又は請求項2を引用する請求項3~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ピペリンをさらに含む請求項又はに記載の組成物。
【請求項10】
約300~約700mgのミリセチン、約100~約500mgのヘスペレチン、約5~約100mgのピペリン、および約150mg~300mgの没食子酸を含む請求項に記載の組成物。
【請求項11】
約450~約600mgのミリセチン、約250~約400mgのヘスペレチン、約5~約50mgのピペリン、および約250~450mgの没食子酸を含む請求項に記載の組成物。
【請求項12】
ミリセチン、ヘスペレチン、ピペリンおよび没食子酸の合計重量に基づいて、約55~約75重量%のミリセチン、約30~約50%のヘスペレチン、約0.5~約5%のピペリン、および約10%~25%の没食子酸を含む請求項に記載の組成物。
【請求項13】
ピペリン、ミリセチン、ヘスペレチンおよび没食子酸の比が、約1:(30~60):(30~60):(30~60)である、請求項に記載の組成物。
【請求項14】
ミリセチン、ヘスペレチン、ピペリンおよび没食子酸の合計重量に基づいて、40%のミリセチン、30%のヘスペレチン、1%のピペリン、および29%の没食子酸を含む、エボラウイルス感染の発生を制限、またはエボラウイルス感染を治療するための組成物。
【請求項15】
ミリセチン、ヘスペレチン、ピペリンおよび没食子酸の合計重量に基づいて、50%のミリセチン、39%のヘスペレチン、1%のピペリン、および10%の没食子酸を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項16】
経口投与、静脈内注射、筋内注射、髄腔内注射、皮下投与、舌下、頬側投与、直腸投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、鼻腔内投与、口からの吸入、鼻からの吸入、経皮投与またはそれらの任意の組み合わせのための請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
ヒト患者の治療用である請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ウイルス感染の発生を制限および/またはウイルス感染を治療することに関し、より具体的には、ウイルス感染のリスクがあるか、またはウイルス感染と診断された患者に有利に投与される、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤、シアリダーゼ酵素阻害剤、ICM-1阻害剤および没食子酸を有する治療方法および治療組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのヒトの疾患は、ウイルスと呼ばれる微生物による感染に起因する。ウイルスによる感染は、軽度から重度までさまざまな症状を引き起こす可能性がある。ウイルス感染は、多数の死をもたらし得る。そのような全世界的流行の例としては、約4千万人が亡くなった1918年~1919年のスペインかぜと、ほぼ2百万人が亡くなったHIV/AIDSの流行がある。
【0003】
ウイルスは自己複製するために宿主生物を必要とし、ウイルスは感染した宿主から感染していない宿主に多くのメカニズムを介して伝染する。ウイルスは最初に宿主細胞に付着する。次に、細胞に入り、その遺伝コード(すなわち、RNAまたはDNA)を放出する。ウイルスは、自己複製するために宿主細胞の機能性タンパク質と酵素を利用する。宿主細胞が生き残るために必要な仕組みがウイルスによって制御されるため、最終的には宿主細胞が死ぬ可能性がある。細胞の死後、自己複製されたウイルスが放出され、それらが新しい宿主細胞を攻撃し、自己複製プロセスを継続できるようにする。一部のウイルスは、宿主細胞に、癌に導く改変を引き起こすが、他のウイルスは、感染が宿主で症状を示す前に、長期間宿主内で潜伏状態を保つことができる。
【0004】
ウイルス感染に起因する症状は、いずれのウイルスも概して、特定の種類の細胞にのみ感染するため、ウイルスごとに異なる可能性がある。この観察はまた、特定のウイルスは一般的には、特定の種のみに感染するが、ウイルスの変異により、任意の1つのウイルスが感染できる種の数を増やすことができることを意味する。
【0005】
宿主種は、ウイルス感染から自分自身を保護するためにいくつかの防御メカニズムを発達させてきた。防御の第一線は、ウイルスの宿主への侵入を防ぐメカニズムである。皮膚は、侵入に対する不透過性の障壁を提供する。ウイルスは通常、体腔から体内に入り、これらの腔を裏打ちしている粘膜表面を通過できる。ウイルスが一旦体内に存在し、体の免疫系によって検出されると、血液中のリンパ球と単球は侵入者を攻撃する方法を学習する。侵入された細胞は、インターロイキン(たとえば、IL 1、IL 6、IL 12、IL 16)、腫瘍壊死因子(TNF-a)、およびインターフェロン(通常はインターフェロンaおよびg)などのサイトカインを放出する。これらのサイトカインの役割は、侵入してくるウイルスに対する他の宿主細胞の耐性を高めることである。宿主が経験するウイルス感染の症状の多くは、一般的にサイトカインストームと呼ばれるサイトカインの大量放出に起因する。
【0006】
白血球は、以前に体に侵入したウイルスと闘う方法を覚えることができる。したがって、宿主がウイルスの最初の攻撃を生き延びた場合、その免疫系は同じウイルスのその後の感染に対してはるかに迅速に応答することができる。体はウイルスに対する免疫を発達させてきた。そのような免疫は、免疫化として知られている方法でウイルスの代替物(ワクチン)を免疫システムに提示することによっても誘発される。
【0007】
抗ウイルス薬は、免疫系が患者のウイルス感染を克服するのを助けることが当技術分野で知られている。ほとんどの抗ウイルス薬は、感染した患者の体内でのウイルスの自己複製を遅らせることによって機能し、病気の症状の重症度が低いときに、体の免疫系が効果的な反応を開始できるようにする。抗ウイルス薬は、具体的には1つまたは2つのウイルスに作用する場合と、幅広いウイルスに効果がある場合がある。抗ウイルス剤がウイルスの自己複製を遅らせることができる多くの公知のメカニズムがある。抗ウイルス戦略の1つは、たとえばウイルスが標的細胞に侵入するのに必要な標的細胞上の受容体に結合することによって、または標的の受容体に結合する能力を妨げるようにウイルスをコーティングすることによって、標的細胞へのウイルスの潜入を遅らせる、または防止することである。他の抗ウイルス剤は、ウイルス粒子が標的細胞に侵入すると、ウイルスの自己複製を遅くすることができる。このようなメカニズムは、当技術分野でよく知られている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、天然に存在する化合物の組み合わせを用いて、ウイルス感染を治療するための方法および組成物に関する。一実施形態では、この方法は、ウイルス感染のリスクがあるかまたはウイルス感染と診断された患者に、治療有効量のヘリカーゼATPアーゼ阻害剤、シアリダーゼ酵素阻害剤、ICAM-1阻害剤および没食子酸を含む組成物を投与することを含む。該組成物は、浸透促進剤をさらに含み得る。
【0009】
本組成物は、ウイルスの自己複製速度を低下させることにより、および宿主の免疫応答を刺激するウイルスの能力を低下させ、それにより細胞の完全な状態を維持することにより、ウイルス感染と闘うのに有効である。具体的には、本組成物は、ドッキング部位の競合により細胞表面で複製酵素ヘリカーゼのATPアーゼ活性を阻害するのに効果的である。さらに、この組成物は、細胞間ウイルス粒子の侵入および放出段階に関与するシアリダーゼおよびICAM-1酵素の阻害に効果的である。1つの機能に限定されることを望まないが、没食子酸は、たとえばTNF-aおよび侵害受容器をそれぞれ標的とする炎症および疼痛阻害剤として機能すると考えられている。
【0010】
本発明の一観点では、ウイルス感染のリスクがある、またはウイルス感染と診断された患者に、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤、シアリダーゼ組成物酵素阻害剤、ICAM-1阻害剤および没食子酸の治療有効量を投与することを含む、ウイルス感染を予防および治療する方法が提供される。
【0011】
本発明の別の観点では、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤、シアリダーゼ酵素阻害剤、ICAM-1阻害剤および没食子酸の治療有効量を含む、ウイルス感染を治療するための組成物が提供される。
【0012】
一実施形態では、組成物は、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、くも膜下注射、皮下投与、舌下、頬側投与、直腸投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、鼻腔内投与、口からの吸入、鼻からの吸入、経皮またはそれらの任意の組み合わせにより患者に投与される。
【0013】
別の実施形態では、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤は、天然に存在する化合物、天然に存在する化合物の合成誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。
【0014】
別の実施形態では、天然に存在するATPアーゼ阻害剤化合物は、フラボノイド、フラボノイド誘導体またはそれらの組み合わせを含む。
【0015】
別の実施形態では、フラボノイドATPアーゼ阻害剤はミリセチンである。
【0016】
別の実施形態では、I-CAM1阻害剤は、フラボノイド、フラボノイド誘導体またはそれらの組み合わせを含む。
【0017】
別の実施形態では、ICAM-1阻害剤はミリセチンである。
【0018】
別の実施形態では、シアリダーゼ酵素阻害剤は、天然に存在する化合物、天然に存在する化合物の合成誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。
【0019】
別の実施形態では、天然に存在するシアリダーゼ酵素阻害剤化合物は、フラボノイド、フラボノイド誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
別の実施形態では、フラボノイドシアリダーゼ酵素阻害剤は、ヘスペレチンまたはヘスペリジンである。
【0021】
別の実施形態では、ウイルス感染はエボラウイルスである。
【0022】
別の実施形態では、患者はヒトである。
【0023】
別の実施形態では、組成物は浸透促進剤をさらに含む。
【0024】
別の実施形態では、浸透促進剤はピペリンである。
【0025】
別の実施形態では、ヘリカーゼATPアーゼおよびICAM-1阻害剤はミリセチンであり、シアリダーゼ酵素阻害剤はヘスペレチンである。
【0026】
別の実施形態では、組成物はピペリンをさらに含む。
【0027】
別の実施形態では、約300~約700mgのミリセチン、約100~約500mgのへスペレチン、約5~約100mgのピペリンおよび約150mg~300mgの没食子酸が組成物中に存在する。
【0028】
別の実施形態において、約450~約600mgのミリセチン、約250~約400mgのへスペレチン、約5~約50mgのピペリン、および約250-450 mgの没食子酸が組成物中に存在する。
【0029】
別の実施形態では、後記混合物の総重量に基づいて約55~約75重量%のミリセチン、約30~約50%のへスペレチン、約0.5~約5%のピペリン、および約10%~25%の没食子酸が組成物中に存在する。
【0030】
別の実施形態では、組成物中に存在するピペリン、ミリセチン、ヘスペレチンおよび没食子酸の比は、約1:(30~60):(30~60):30~60である。
【0031】
本発明の別の観点では、後記混合物の総量に基づいて40%のミリセチン、30%のヘスペレチン、1%のピペリンおよび29%の没食子酸を含む組成物を、エボラウイルスのリスクがある、またはエボラウイルスと診断されたヒトに投与することを含む、ヒトにおけるエボラウイルスを予防および治療する方法が提供される。
【0032】
本発明の別の観点では、後記混合物の総重量に基づいて60%のミリセチン、39%のヘスペレチンおよび1%のピペリンを含む、エボラウイルスを予防および治療するための組成物が提供される。
【0033】
詳細な説明
本明細書で使用される場合、以下の用語および語句は、以下に示される意味を有するものとする。
【0034】
化合物に言及する際の語句「天然に存在する」は、それが天然に見出され得る形態である化合物を意味する。例えば、化合物が精製され、その化合物とともに自然界で見られる少なくともいくつかの他の分子から分離されている場合、その化合物は、天然に存在する形態ではない。「天然に存在する化合物」とは、自然界に見出される化合物、すなわち、人によって創出または改変されていない化合物を指す。
【0035】
病的状態または疾患を「治療する」とは、その病的状態または疾患の少なくとも1つの症状を治癒することおよび改善することを指す。
【0036】
用語「治療効果」は、当該分野で認識されており、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる動物、特に哺乳類、より具体的にはヒトにおける局所的または全身的効果を指す。語句「治療有効量」は、任意の治療に適用可能な妥当な便益/リスク比で、いくらかの望ましい局所的または全身的効果を生み出す薬理学的に活性な物質の量を意味する。当該物質の治療有効量は、患者および治療される疾患または病的状態、患者の体重および年齢、疾患または病的状態の重症度、投与方法などに応じて異なり、これらは当業者(one of ordinary skill in the art)によって容易に決定することができる。例えば、本明細書に記載される特定の組成物は、当該治療に適用可能な妥当な便益/リスク比で望ましい効果を生み出すのに十分な量で投与されてもよい。
【0037】
用語「医薬的に許容される担体」という用語は、生物に刺激を与えず、投与された化合物の性質および生物活性を破壊しない担体または希釈剤を意味する。
【0038】
本発明は、治療有効量のヘリカーゼATPアーゼ阻害剤、シアリダーゼ酵素阻害剤、ICAM-1阻害剤、および没食子酸を含む組成物を、ウイルス感染のリスクがあるか、またはウイルス感染と診断された患者に投与することに関する。
【0039】
一実施形態では、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤、シアリダーゼ酵素阻害剤、ICAM-1阻害剤および没食子酸の重量基準での混合物からなる組成物の有効濃度は、その組成物の約250mg~約1000mgの範囲である。一実施形態では、一日の初めに服用される1日あたりの単回用量は、約750mg、または約1500mgである。別の実施形態では、組成物は、1用量あたり約750mgの量で1日3回の用量として投与される。一実施形態では、毎日投与される組成物の総量は、少なくとも500mg、または少なくとも750mg、または少なくとも1000mgまたは少なくとも2500mgである。
【0040】
本発明のヘリカーゼATPアーゼ阻害剤は、ドッキング部位の競合により細胞表面で複製酵素ヘリカーゼのATPアーゼ活性を阻害することにより、細胞複製阻害剤として機能する。この阻害は、ウイルスのアンパッケージングおよび自己複製速度を低下させ、細胞外で起こる阻害活性に起因するウイルス株の変異を減少させる。
【0041】
一実施形態では、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤は、天然に存在する化合物、天然に存在する化合物の合成誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。ウイルス感染に影響を与えるいくつかの天然に存在する化合物がある。
【0042】
一実施形態では、天然に存在するATPアーゼ阻害剤化合物は、フラボノイド、フラボノイド誘導体またはそれらの組み合わせを含む。フラボノイドは天然に存在する抗酸化化合物であり、糖尿病、神経障害、トロンビン阻害、癌、抗ウイルス薬を含む、いくつかの治療用途が実証されている。一般に、フラボノイドは投与時にほとんど副作用を発生せず、患者に安全に大量に提供できる。有用なフラボノイドの2つのタイプは、フラバノンとフラボンである。フラバノンは以下に示す構造(I)を有し、フラボンは以下に示す同様の構造(II)を有し、
【化1】
ここで、R、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ルチノシル基、ラムノシル基、置換アルコキシ基または置換アシルオキシ基であり、前記置換基はヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、フェニル、ハロゲン、およびアミド基から選択される。式(I)および(II)のフラボノイドのいくつかの例を以下の表1に示す。
【0043】
【表1】
aラムノース-グルコース、L-ラムノースはα1→2でD-グルコースに連結されている
bラムノース-グルコース、L-ラムノースはα1→6でD-グルコースに連結されている
【0044】
一実施形態では、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤は、フラボノイドミリセチンである。
【0045】
ミリセチンは、サクランボ、クランベリーおよびコケモモを含むほとんどのベリー、ならびにパセリおよびルタバガを含む他の植物に見られるフラボノイドである。酵素ヘリカーゼを阻害することに加えて、ミリセチンは強力で幅広いサイトカインのシグナル伝達阻害剤および免疫調節因子として機能する。ミリセチンはサイトカイン活性とTNF-Aをダウンレギュレートする。これには、例えば、リンホカイン、インターロイキンおよびケモカイン、特にインターロイキンIL-IL-36およびTNF-Aが含まれる。
【0046】
ミリセチンなどの天然に存在するフラボノイドは、一般に、主にヒドロキシル基、メトキシル基、イソプレニル基およびグリコシル基によって可変位置で置換されている。これらの分子へのハロゲンの導入は、抗ウイルス特性を含む強力な生物学的活性を示す。
【0047】
本発明のICAM-1阻害剤は、細胞間ウイルス粒子の侵入および放出段階に関与するICAM-1酵素を阻害することにより、細胞内のウイルスの自己複製を遅延させるように機能する。
【0048】
一実施形態では、ICAM-1阻害剤はフラボノイドミリセチンである。
【0049】
本発明のシアリダーゼは、細胞間ウイルス粒子の侵入および放出段階に関与するシアリダーゼ酵素を阻害することにより、細胞内のウイルスの自己複製を遅延させるように機能する。
【0050】
一実施形態では、シアリダーゼ酵素阻害剤は、天然に存在する化合物、天然に存在する化合物の合成誘導体またはそれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、天然に存在するシアリダーゼ酵素阻害剤化合物は、フラボノイド、フラボノイド誘導体またはそれらの組み合わせを含む。
【0051】
一実施形態では、シアリダーゼ酵素阻害剤は、フラボノイドのヘスペレチンまたはヘスペリジンである。ヘスペリジンは、植物、主に柑橘類の果皮に見られるフラボノイドである。
【0052】
ヘスペレチンはヘスペリジンのアグリコン型である。シアリダーゼ酵素を阻害することに加えて、ヘスペレチンおよびヘスペリジンは、過剰なヒスタミンおよびヒスタジン濃度による細胞層の酸性化を阻害することにより、細胞を完全な状態にする物質として機能する。ヘスペレチンとヘスペリジンはさらに、細胞内H202生成の阻害、ならびに核因子kBの活性化、IkB(アルファ)のリン酸化、およびP-38 MAPK(有糸分裂促進物質活性化キナーゼ)の阻害によるインテグリン損失を防ぐ。ヘスペレチンとヘスペリジンは、線維芽細胞のコラーゲン合成を刺激し、それに関連する移動と増殖を促進することにより、細胞の完全な状態をさらに高める。
【0053】
ミリセチン、ヘスペレチンまたはヘスペリジンをそれらの元の植物源から得ることができるいくつかの方法がある。1つの方法では、例えば、植物源からの抽出は、ブドウの種またはトマトの種、松の樹皮または柑橘類の外皮などの適切な種子材料から始まる。原材料を浸軟させ、水で洗い流して、水溶性フラボノイドを原材料のよりかさばるペクチンおよび繊維から分離する。次に、このパルプウォッシュを、当技術分野で知られているように適切な酸および塩基で処理して、沈殿を引き起こす。次にその沈殿物を再度洗浄し、乾燥させてから濃縮し、ある程度の純粋なフラボノイド組成物を得る。この組成物をさらに清澄化して、望ましいフラボノイド生成物を含む画分を得ることができる。
【0054】
別の方法では、逆浸透を用いて、飲料製造工程からのジュース流から標的フラボノイドを濾過することにより、取り出すことができる。柑橘類などの果汁を製造する工程では、フラボノイドを外皮から遊離させ、ジュース製品に懸濁させる。ジュース製品に苦味または異臭を生じる傾向があるため、これらの水溶性フラボノイドを除去することはしばしば望ましいことである。
【0055】
例えば、グレープフルーツジュースの製造中に、主要なグレープフルーツフラボノイドのナリンギンがジュース流に放出される。ナリンギンは非常にはっきりとした苦味があるため、グレープフルーツジュースの適切な風味プロファイルを復元するには、樹脂コーティングされた逆浸透装置を用いて、製品流からナリンギンを取り除く必要がある。得られたフラボノイドは最終的に収集され、乾燥されてある程度の純粋な生成物が得られる。
【0056】
フラボノイドはまた、合成法によって製造されてもよい。そのような方法は、フラバノンを形成するための芳香族無水物とo-ヒドロキシルアリールケトンの化学反応であるアラン・ロビンソン反応を含み得る。別の例は、ベンズアルデヒドと3-オキシペンタノンからo-ヒドロキシカルコンへの酸触媒アルドール縮合を必要とする手順である、アウヴェルス合成である。さらにアルケン基を臭素化すると、水酸化カリウムとの反応によってフラバノールに転位するジブロモ付加物が得られる。さらなる例は、2-アセトキシアセトフェノンと塩基との反応による1,3-ジケトンの形成を伴うベーカー・ベンカタラマン転位である。その転位反応は、エノラート形成とそれに続くアシル転移を介して進行し、フラバノンを形成する。アルガー・フリン・大山田反応も使用し得る。この反応では、カルコンは酸化的環化を受けてフラバノールを形成する。
【0057】
本発明は、牛痘ウイルス、ヘルペスウイルス科、単純疱疹ウイルス、エプスタイン・バールウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、レトロウイルス科(ヒト免疫不全ウイルスなど)、ロタウイルス、フィロウイルス科(マールブルグウイルスやエボラウイルスなど)、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、ハンタウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、肝炎ウイルス、ノロウイルス、ノーウォークウイルス、アルファウイルス、チクングニアウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルボウイルス、フラビウイルス、およびRNAウイルスを含むが、これらに限定されない多種多様なウイルス感染を予防および治療する。
【0058】
一実施形態では、ウイルス感染はエボラウイルスである。ウイルス性エボラの致死性は、宿主の自己免疫反応を過剰に刺激するウイルスの能力によって引き起こされる。結果として生じる宿主のサイトカイン化学物質の飽和は、インテグリンに対するサイトカインの不安定化活性により、急速な細胞接着の喪失を引き起こす。その結果、細胞の完全性が失われ、最終的には血管組織や臓器の致命的な出血が起こる。
【0059】
エボラは、細胞表面上の特定の受容体と相互作用して免疫シグナル伝達応答を刺激する特定のグリコールタンパク質(例えば、分泌グリコールタンパク質(sGP))を分泌することによってこれを達成する。過剰なシグナル伝達はサイトカイン応答を開始し、次にそれがケモカイン放出を開始する。結果として生じる圧倒的な濃度のケモカインは、細胞レベルでのインテグリンの喪失につながる。
【0060】
本発明は、ウイルスの自己複製速度を低下させ、宿主の免疫応答を刺激するウイルスの能力を低下させ、それにより細胞の完全性を維持することにより、エボラウイルスと闘う。
【0061】
本発明の組成物は、感染後の症状を予防またはその重症度を軽減するために、および/または感染後の重篤な症状や死亡の可能性を低減するために、たとえばウイルス性疾患を有することが知られているか、または疑われる患者への曝露を通じてのウイルス感染のリスクがある患者に投与され得る。
【0062】
本発明の組成物は、症状の重症度を軽減し、および/または重篤な症状または死亡の可能性を低減するために、ウイルス性疾患を有することが知られているか、または疑われる患者に投与され得る。
【0063】
一実施形態では、患者はヒトである。他の実施形態では、患者は、イヌなどのヒト以外の哺乳類であってもよい。
【0064】
一実施形態では、組成物は、浸透促進剤をさらに含む。本発明の浸透促進剤は、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤、ICAM-1酵素阻害剤およびシアリダーゼ酵素阻害剤の経口摂取または細胞取込を高めるように機能する。
【0065】
一実施形態では、浸透促進剤はピペリンである。ピペリンはアルカロイドであり、黒コショウとヒハツの辛味の原因である。ピペリンは市販されているか、または黒コショウからジクロロメタンを用いて抽出できる。ピペリンは栄養素の生物学的利用能を増大させる。
【0066】
一実施形態では、ヘリカーゼATPアーゼ阻害剤およびICAM-1阻害剤はミリセチンであり、シアリダーゼ酵素阻害剤はヘスペレチンであり、その組成物はピペリンおよび没食子酸をさらに含む。
【0067】
一実施形態では、組成物は、約300~約700mgのミリセチン、約100~約500mgのヘスペレチン、および約5~約100mgのピペリンを含む。別の実施形態では、組成物は、約450~約600mgのミリセチン、約250~約400mgのヘスペレチン、約5~約50mgのピペリン、および約100~約300mgの没食子酸を含む。
【0068】
一実施形態では、組成物は、後記混合物の総重量に基づいて、約50~約80重量%のミリセチン、約25~約55%のヘスペレチン、約0.5~約10%のピペリン、および約10~30%の没食子酸の混合物を含む。別の実施形態では、組成物は、後記混合物の総重量に基づいて、約55~約75重量%のミリセチン、約30~約50%のヘスペレチン、約0.5~約5%のピペリン、および約20~40%の没食子酸の混合物を含む。さらに別の実施形態では、組成物は、後記混合物の総重量に基づいて、約40%のミリセチン、約30%のヘスペレチン、1%のピペリン、および29%没食子酸の混合物を含む。
【0069】
一実施形態では、組成物は、ピペリンとミリセチンとヘスペレチンを約1:(2~4):(2~4)の比、または約1:(2~3):(2~3)の比、あるいは約1:3:3の比で含む。別の実施形態では、組成物は、ピペリンとミリセチンとヘスペレチンと没食子酸を約1:(20~75):(20~75):(20~75)の比、または約1:(30~60):(30~60):(30~60)の比、あるいは約1:(40~55):(40~55)の比で含む。
【0070】
一実施形態では、組成物は、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、くも膜下注射、皮下投与、舌下、頬側投与、直腸投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与、鼻腔内投与、口からの吸入、鼻からの吸入、経皮またはそれらの任意の組み合わせにより患者に投与される。
【0071】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ、粉末、顆粒の形態、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型または油中水型の液体エマルジョン、またはエリキシル剤もしくはシロップとして、それぞれが活性成分として本発明の化合物の所定量を含む。
【0072】
経口投与のための本発明の固体剤形において、活性成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または(1)澱粉、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤、(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、および/またはアラビアゴムなどの結合剤、(3)グリセロールなどの保湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの溶解遅延剤、(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(7)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(8)カオリンやベントナイト粘土などの吸湿剤、(9)例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、およびそれらの混合物、ならびに(10)着色剤のいずれかの、1以上の医薬的に許容される担体と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、医薬組成物は緩衝剤も含み得る。
【0073】
本発明の組成物および方法の実施形態は、以下の実施例において説明される。これらの実施例は、例示の目的で提供されており、本発明の組成物および方法の範囲に対する制限とは見なされない。
【実施例
【0074】
実施例
【0075】
実施例1:
【0076】
300mgのミリセチン、195mgのヘスペレチン、5mgのピペリンおよび200mgの没食子酸を含有するゼラチンカプセルを、食物と一緒に1日2回患者に経口投与する。
【0077】
実施例2:
【0078】
クエン酸ナトリウム、500mgのミリセチン、300mgのヘスペレチン、10mgのピペリンおよび300mgの没食子酸を含有する錠剤を、起床時に1日1回経口投与する。
【0079】
実施例3:
【0080】
600mgのミリセチン、390mgのヘスペレチン、10mgのピペリンおよび200mgの没食子酸を含有する粉末を、例えばスクランブルエッグなどの食品に、調理後、摂取する前に振りかける。
【0081】
実施例4:
【0082】
50重量%のミリセチン、25重量%のヘスペレチン、10重量%のピペリンおよび15%の没食子酸の混合物を含有する組成物を食塩水に混合し、食塩水1gあたり組成物が1mgになるようにして、静脈内に注射する。
【0083】
本発明の原理の理解を促進する目的で、様々な実施形態に関して本発明を説明してきたが、その様々な変更は、明細書を読めば当業者に明らかであることを理解されたい。本明細書に記載される物品の様々な実施形態の特徴は、1つの物品内で組み合わせることができる。したがって、本明細書に記載されている本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる変更を包含することを意図していることを理解されたい。