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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】相変化物質を含むゲル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20230125BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20230125BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230125BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20230125BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C08L25/08
C08L53/02
C08K3/36
C08K5/00
C08K5/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020518609
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2018075237
(87)【国際公開番号】W WO2019068458
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】1715950.0
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506352278
【氏名又は名称】クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】アルタグ アルタイ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ マリーア アウエルバッハ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-122320(JP,A)
【文献】特表2018-515520(JP,A)
【文献】特開2004-079641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0290285(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00ー 5/20
C08L 25/00- 25/18
C08L 53/00- 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)相変化物質、
b)シリカ系ゲル化剤1~10質量%
c)スチレン共重合体系ゲル化剤、および
d)ジオール0.05~10質量%
を含む組成物であって、組成物はゲル状であり、組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比が0.6~5:1の範囲にあり、相変化物質が脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールエステル、脂肪酸アミドおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる、組成物。
【請求項2】
a)相変化物質、
b)シリカ系ゲル化剤1~10質量%、
c)スチレン共重合体系ゲル化剤、および
d)ジオール0.05~10質量%
を含む組成物であって、組成物はゲル状であり、組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比が0.6~5:1の範囲にあり、相変化物質がエステルを含む、組成物。
【請求項3】
少なくとも60質量%の相変化物質を含む請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
シリカ系ゲル化剤がヒュームドシリカである、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
スチレン共重合体系ゲル化剤が、スチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン(SEPS)トリブロック共重合体、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)トリブロック共重合体およびそれらの混合物から選択される、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ジオールが、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン共重合体およびそれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ジオールがポリエチレングリコールである、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
さらに核剤を含む請求項1~のいずれかに記載の組成物であって、核剤が有機物であり、核剤が相変化物質より少なくとも15℃高い融点を有する、組成物。
【請求項9】
核剤が相変化物質より少なくとも30℃高い融点を有する、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
密封された容器および容器の中に含まれる請求項1~のいずれかに記載の組成物を含む物品。
【請求項11】
容器がパウチまたはパネルである、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
請求項1~のいずれかに記載の組成物を含む製品であって、製品が、織物製品、発泡体製品、医療製品、電子製品、包装製品、自動車システム、冷却システム、HVACシステムおよび建設資材から選択される、製品。
【請求項13】
i)スチレン共重合体系ゲル化剤を組成物に完全に溶解させるのに十分な温度で十分な時間、組成物の成分を混合する工程、および
ii)混合を止めて、組成物を静止させ、ゲルを形成させる工程
を含む請求項1~のいずれかに記載の組成物を作る方法。
【請求項14】
相変化物質を含むゲル組成物を作るための、シリカ系ゲル化剤とスチレン共重合体系ゲル化剤の組み合わせの使用であって、ゲル組成物はa)相変化物質、b)シリカ系ゲル化剤1~10質量%、c)スチレン共重合体系ゲル化剤、およびd)ジオール0.05~10質量%を含み、ゲル組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比が0.6~5:1の範囲にあり、相変化物質が、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールエステル、脂肪酸アミドおよびそれらの混合物からなる群から選ばれるか、またはエステルを含み、ゲル組成物の25℃におけるずり流動化値(STV)が、ここで測定されたときに、比較のゲル組成物のそれの少なくとも2倍であり、ただし、比較のゲル組成物はスチレン共重合体のみからなる比較のゲル化剤を含み、ゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%と比較のゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%は等しい、使用。
【請求項15】
相変化物質を含むゲル組成物を作るための、シリカ系ゲル化剤とスチレン共重合体系ゲル化剤の組み合わせの使用であって、ゲル組成物はa)相変化物質、b)シリカ系ゲル化剤1~10質量%、c)スチレン共重合体系ゲル化剤、およびd)ジオール0.05~10質量%を含み、ゲル組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比が0.6~5:1の範囲にあり、相変化物質が、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールエステル、脂肪酸アミドおよびそれらの混合物からなる群から選ばれるか、またはエステルを含み、ゲル組成物の25℃におけるフロー・アット・レスト(FAR)時間が、ここで測定されたときに、比較のゲル組成物のそれの少なくとも2倍であり、ただし、比較のゲル組成物はスチレン共重合体のみからなる比較のゲル化剤を含み、ゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%と比較のゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%は等しい、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状の相変化物質(PCM)を含む組成物、前記ゲル組成物を作る方法、前記組成物を含む物品または製品、およびゲル組成物を作るためのシリカ系ゲル化剤とスチレン共重合体系ゲル化剤の組み合わせの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
相変化物質(PCM)は、潜熱蓄熱媒体、熱伝達媒体および/または温度調節媒体として使用され得る物質のクラスである。PCMは、多くの用途、例えば、断熱材または建築材料における蓄熱媒体として、または(例えば空気調節、冷凍または自動車用途における)加熱および冷却システムにおける熱伝達媒体として、または(例えば包装、衣類および寝具/マットレスのような温度の影響を受けやすい用途における)温度調節媒体としての用途を見つける。PCMが作動する方法は、固体から液相へのまたはその逆のPCMの遷移に伴う変換のエンタルピーに基づき、その結果、エネルギーが周囲から吸収されまたは周囲に放出される。このように、PCMは、決められた範囲内で一定温度を維持するために、および/または断熱を改善するために使用することができる。
【0003】
PCMの用途の1つは、建築および建設業にあり、暖房と空調の使用を減らし、かつ熱質量の低い軽量の建物の中で快適な温度を維持する可能性を提供する。他の用途としては、工業プロセスまたはエンジンのような機械類からの低品位の熱の捕獲および使用、太陽エネルギーの貯蔵、ならびに食品、人および動物のような生物、製薬材料および生物学的材料、移植臓器および繊細な電子機器を含む温度の影響を受けやすい材料の温度制御が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PCMの1つの相は液相であり、もう1つの相は固体であるので、PCMは漏れを回避するためにそれらの使用中に注意深い保管と封じ込めを必要とする。相変化物質を含む組成物の1つ以上の特性を改善し、その性能または封じ込めの容易さを改善する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、相変化物質を含む組成物をゲル化するためにゲル化剤の有利な組み合わせを使用することができるという出願人による認識に部分的に基づいている。理論に拘束されるものではないが、シリカ系ゲル化剤とスチレン共重合体系ゲル化剤の組み合わせは、これらのゲル化剤のゲル化効果を提供するメカニズムが異なることにより組成物に利点をもたらす。
【0006】
したがって、第1の態様から見ると、本発明は、
a)相変化物質、
b)シリカ系ゲル化剤1~10質量%、および
c)スチレン共重合体系ゲル化剤
を含む組成物であって、組成物はゲル状であり、組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比が0.6~5:1の範囲にある、組成物を提供する。
【0007】
第2の態様から見ると、本発明は、密封された容器および容器の中に含まれる第1の態様の組成物を含む物品を提供する。
【0008】
第3の態様から見ると、本発明は、
i)スチレン共重合体系ゲル化剤が組成物に完全に溶けることを可能にするのに十分な温度でおよび十分な時間、組成物の成分を混合する工程、および
ii)混合を止めて、組成物を静止させ、ゲルを形成させる工程
を含む第1の態様の組成物を作る方法を提供する。
【0009】
第4の態様から見ると、本発明は、相変化物質を含むゲル組成物を作るための、シリカ系ゲル化剤とスチレン共重合体系ゲル化剤の組み合わせの使用であって、ゲル組成物の25℃におけるフロー・アット・レスト(FAR)時間が、ここで測定されたときに、比較のゲル組成物のそれの少なくとも2倍であり、ただし、比較のゲル組成物はスチレン共重合体のみからなる比較のゲル化剤を含み、そこでは、ゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%と比較のゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%は等しい、使用を提供する。
【0010】
第5の態様から見ると、本発明は、相変化物質を含むゲル組成物を作るための、シリカ系ゲル化剤とスチレン共重合体系ゲル化剤の組み合わせの使用であって、ゲル組成物の25℃におけるずり流動化値(STV)が、ここで測定されたときに、比較のゲル組成物のそれの少なくとも2倍であり、ただし、比較のゲル組成物はスチレン共重合体のみからなる比較のゲル化剤を含み、ゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%と比較のゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%は等しい、使用を提供する。
【0011】
本発明のいかなる態様も、本発明のその態様または本発明の他の任意の態様に関して、ここに記載された特徴のいずれかを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで使用される量または範囲のいかなる上限または下限も別々に組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0013】
ここで使用するときは、「質量%」という用語は、成分がその一部である指定された物の合計質量を基準とした指定された成分の質量百分率のことをいうことが理解されるであろう。
【0014】
置換基の中の炭素原子の数(例えば「C1~C6」)を記載する場合、その数は、任意の分岐基の中に存在するものも含めて、置換基の中に存在する炭素原子の総数のことをいうことが理解されるであろう。さらに、例えば脂肪酸中の炭素原子の総数を記載する場合、これは、カルボン酸の炭素原子および任意の分岐基の中に存在するすべての炭素原子を含む炭素原子の総数のことをいう。
【0015】
本発明を生成するために使用され得る化学薬品の多くは天然資源から得られる。そのような化学薬品は、典型的には、それらの天然起源に起因する化学種の混合物を含む。そのような混合物の存在により、ここで定義された様々なパラメーターは平均値であることができ、整数でなくてもよい。
【0016】
成分a) 相変化物質(PCM)
PCMは有機物であってもよい。PCMはポリマーであってもよいし、ポリマーでなくてもよい。好ましくは、PCMは有機物であり、かつポリマーではない。PCMは炭化水素を含まなくてもよい。PCMはアルカンを含まなくてもよい。PCMはテトラデカン、ヘキサデカンまたはオクタデカンを含まなくてもよい。
【0017】
好ましくは、相変化物質は、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールエステル、脂肪酸アミドおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0018】
PCMはエステルを含んでもよく、好ましくはエステルからなる。PCMは、第1のエステルと第2のエステルの混合物を含んでもよい。PCMエステルは直鎖状アルコール反応物を含んでもよい。PCMエステルは直鎖状カルボン酸反応物を含んでもよい。好ましくは、PCMエステルは直鎖状アルコール反応物と直鎖状カルボン酸反応物を含む。PCMエステルはモノアルコール反応物を含んでもよい。PCMエステルはモノカルボン酸反応物を含んでもよい。好ましくは、PCMエステルはモノアルコール反応物とモノカルボン酸反応物を含む。好ましくは、PCMは脂肪酸エステルまたは脂肪族アルコールエステルを含み、より好ましくは脂肪酸エステルを含む。PCMは、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物を含んでもよく、好ましくは脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物からなる。
【0019】
PCMは、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、ウンデカン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、アラキジン酸メチル、ベヘン酸メチル、オクタン酸エチル、デカン酸エチル、ウンデカン酸エチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0020】
PCMは、オクタン酸プロピル、デカン酸プロピル、ウンデカン酸プロピル、ラウリン酸プロピル、ミリスチン酸プロピル、パルミチン酸プロピル、ステアリン酸プロピル、アラキジン酸プロピル、ベヘン酸プロピル、オクタン酸ブチル、デカン酸ブチル、ウンデカン酸ブチル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、アラキジン酸ブチル、ベヘン酸ブチルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0021】
PCMは、オクタン酸ペンチル、デカン酸ペンチル、ウンデカン酸ペンチル、ラウリン酸ペンチル、ミリスチン酸ペンチル、パルミチン酸ペンチル、ステアリン酸ペンチル、アラキジン酸ペンチル、ベヘン酸ペンチル、オクタン酸ヘキシル、デカン酸ヘキシル、ウンデカン酸ヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ヘキシル、パルミチン酸ヘキシル、ステアリン酸ヘキシル、アラキジン酸ヘキシル、ベヘン酸ヘキシルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0022】
PCMは、オクタン酸ヘプチル、ペラルゴン酸ヘプチル、デカン酸ヘプチル、ウンデカン酸ヘプチル、ラウリン酸ヘプチル、ミリスチン酸ヘプチル、パルミチン酸ヘプチル、ステアリン酸ヘプチル、アラキジン酸ヘプチル、ベヘン酸ヘプチル、へプタン酸オクチル、オクタン酸オクチル、ペラルゴン酸オクチル、デカン酸オクチル、ウンデカン酸オクチル、ラウリン酸オクチル、ミリスチン酸オクチル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチル、アラキジン酸オクチル、ベヘン酸オクチルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0023】
PCMは、プロピオン酸ノニル、ブタン酸ノニル、ペンタン酸ノニル、ヘキサン酸ノニル、へプタン酸ノニル、オクタン酸ノニル、ペラルゴン酸ノニル、デカン酸ノニル、ウンデカン酸ノニル、ラウリン酸ノニル、ミリスチン酸ノニル、パルミチン酸ノニル、ステアリン酸ノニル、アラキジン酸ノニル、ベヘン酸ノニル、酢酸デシル、プロピオン酸デシル、ブタン酸デシル、ペンタン酸デシル、ヘキサン酸デシル、へプタン酸デシル、オクタン酸デシル、ペラルゴン酸デシル、デカン酸デシル、ウンデカン酸デシル、ラウリン酸デシル、ミリスチン酸デシル、パルミチン酸デシル、ステアリン酸デシル、アラキジン酸デシル、ベヘン酸デシルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0024】
PCMは、ギ酸ラウリル、酢酸ラウリル、プロピオン酸ラウリル、ブタン酸ラウリル、ペンタン酸ラウリル、ヘキサン酸ラウリル、へプタン酸ラウリル、オクタン酸ラウリル、ペラルゴン酸ラウリル、デカン酸ラウリル、ウンデカン酸ラウリル、ラウリン酸ラウリル、ミリスチン酸ラウリル、パルミチン酸ラウリル、ステアリン酸ラウリル、アラキジン酸ラウリル、ベヘン酸ラウリルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0025】
PCMは、ギ酸ミリスチル、酢酸ミリスチル、プロピオン酸ミリスチル、ブタン酸ミリスチル、ペンタン酸ミリスチル、ヘキサン酸ミリスチル、へプタン酸ミリスチル、オクタン酸ミリスチル、ペラルゴン酸ミリスチル、デカン酸ミリスチル、ウンデカン酸ミリスチル、ラウリン酸ミリスチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸ミリスチル、ステアリン酸ミリスチル、アラキジン酸ミリスチル、ベヘン酸ミリスチルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0026】
PCMは、ギ酸セチル、酢酸セチル、プロピオン酸セチル、ブタン酸セチル、ペンタン酸セチル、ヘキサン酸セチル、へプタン酸セチル、オクタン酸セチル、ペラルゴン酸セチル、デカン酸セチル、ウンデカン酸セチル、ラウリン酸セチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸セチル、アラキジン酸セチル、ベヘン酸セチルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0027】
PCMは、ギ酸ステアリル、酢酸ステアリル、プロピオン酸ステアリル、ブタン酸ステアリル、ペンタン酸ステアリル、ヘキサン酸ステアリル、へプタン酸ステアリル、オクタン酸ステアリル、ペラルゴン酸ステアリル、デカン酸ステアリル、ウンデカン酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、アラキジン酸ステアリル、ベヘン酸ステアリルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0028】
PCMは、デカン酸ブチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸オクチル、ラウリン酸ラウリル、ペラルゴン酸ラウリル、ミリスチン酸オクチル、ペラルゴン酸ミリスチル、ラウリン酸ノニル、ミリスチン酸メチル、ラウリン酸デシル、パルミチン酸オクチル、カプリン酸ラウリル、オクタン酸セチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸デシル、ペラルゴン酸ステアリル、ミリスチン酸ラウリル、ステアリン酸デシル、カプリン酸ステアリル、パルミチン酸セチル、ベヘン酸ベヘニルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれてもよい。
【0029】
成分b) シリカ系ゲル化剤
シリカ系ゲル化剤は1つ以上の種類のシリカを含んでもよい。シリカ系ゲル化剤はポリマーシリカ、ヒュームドシリカおよび/または沈降シリカを含んでもよい。シリカ系ゲル化剤は親水性シリカおよび/または疎水性シリカを含んでもよい。
【0030】
本発明において有用なシリカは、ポリマーシリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、コロイド状シリカおよび/またはサーマルシリカである。これらの合成シリカは非晶質であってもよい。好ましいシリカは疎水性および親水性ヒュームドシリカならびにそれらの混合物を含む。好ましくは、シリカ系ゲル化剤はヒュームドシリカである。
【0031】
商業上入手可能なヒュームドシリカの例としては、Aerosil(登録商標)シリーズ(エボニック社(Evonik Corporation)、ニュージャージー州パーシパニー(Parsippany))およびCab-O-Sil(登録商標)シリーズ(キャボット社(Cabot Corporation)、マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica))およびHDK(登録商標)シリーズ(ワッカー・ケミカル社(Wacker Chemical Corporation)、ミシガン州エイドリアン(Adrian))製品種目が挙げられる。
【0032】
ここに記載されるシリカの粒子サイズはレーザー回折によって決定されるようなメジアン粒子径(d50)を示す。ヒュームドシリカ粒子は一般に沈降シリカより小さいが、それは10μmよりはるかに大きい凝集体を形成することができるので、必ずしもそうとは限らない。より小さな粒子サイズを有し、表面積が増加したシリカは、一般に増加した増粘能力を有する。ヒュームドシリカと沈降シリカの主な違いの1つは、沈降シリカの表面により高い密度のシラノール基が存在することである。
【0033】
様々な粒子サイズのシリカが本発明に有用である。有用なシリカ粒子サイズとしては、約0.01μm~約200μm、約0.01μm~約100μm、約0.01μm~約60μm、約0.1μm~約200μm、約0.1μm~約100μm、約0.1μm~約60μm、約0.5μm~約200μm、約0.5μm~約100μm、約0.5μm~約60μm、約1μm~約200μm、約1μm~約100μm、約1μm~約60μmが挙げられる。
【0034】
成分c) スチレン共重合体系ゲル化剤
スチレン共重合体系ゲル化剤は、少なくとも1種のスチレン(S)とポリオレフィンの共重合体を含んでもよい。ポリオレフィンはエチレン-プロピレン(EP)またはエチレン-ブチレン(EB)であってもよい。スチレン共重合体はジブロックおよび/またはトリブロック共重合体を含んでもよい。トリブロック共重合体は、鎖の両端に(ポリ)スチレン(S)ブロックおよび中間に(ポリ)エチレン-プロピレン(EP)または(ポリ)エチレン-ブチレン(EB)ブロックを有してもよく、一方、ジブロック構造は鎖の一方の端のみにスチレンブロックを有する。スチレンは、また、ポリオレフィンブロックの中に組込まれてもよい。
【0035】
スチレン共重合体は、スチレンがポリオレフィンブロックの中に組込まれた、またはスチレンがポリオレフィンブロックの中に組込まれていない、SEP、SEB、SEPSもしくはSEBS共重合体またはそれらの混合物を含んでもよい。好ましくは、スチレン共重合体系ゲル化剤は、スチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン(SEPS)トリブロック共重合体、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン(SEBS)トリブロック共重合体およびそれらの混合物から選ばれる。好ましくは、スチレン共重合体はポリオレフィンブロックの中に組込まれたスチレンを有する。
【0036】
スチレン共重合体は、ジブロック、トリブロック、星形またはアーム構造を有するKraton G、Kraton D、Kraton A共重合体という商品名でクレイトン社(Kraton Corporation)から入手可能であり得る。Kraton Gシリーズはポリオレフィンブロックの中にスチレンが組込まれていないが、Kraton Aシリーズはポリオレフィンブロックの中にスチレンが組込まれていることが理解される。スチレン共重合体はSeptonという商品名でクラレアメリカ社(Kuraray America, Inc.)から入手可能であり得る。
【0037】
スチレン共重合体は、上記のポリマーの混合物を含んでもよい。
【0038】
共重合体のスチレンブロックは、PCM組成物においてミクロ相分離ドメインを形成し、3次元構造上の架橋点として機能してもよい。ポリオレフィンブロックは、PCMに部分的に溶解し、物質を取り込んでもよい。スチレン共重合体は、好ましくは、より密度の高い架橋点を形成する高分子量トリブロック共重合体を含む。前記の共重合体の種類の中で、ポリオレフィンブロックに一体化されたスチレンブロックを含むKraton Aポリマーは、ゲル化に特に有利であることが見いだされた。
【0039】
オプション成分d) ジオール
組成物は、さらに0.05~10質量%のジオールを含んでもよい。組成物は、少なくとも0.1質量%のジオールを含んでもよく、好ましくは少なくとも0.15質量%、より好ましくは少なくとも0.2質量%、特に好ましくは少なくとも0.25質量%のジオールを含んでもよい。組成物は、多くとも10質量%のジオールを含んでもよく、好ましくは多くとも8質量%、より好ましくは多くとも6質量%、特に好ましくは多くとも4質量%、望ましくは多くとも2質量%のジオールを含んでもよい。
【0040】
ジオールは有利にシリカ系ゲル化剤と相互作用し、シリカの内部ネットワークを強化することができる。ジオールは、特に25℃より高い温度において、組成物の粘度を増加させることができる。ジオールは、25℃~80℃、好ましくは25℃~60℃、より好ましくは25℃~40℃の温度範囲において、組成物の粘度の低下を減少または防止することができる。
【0041】
好ましくは、ジオールは、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン共重合体およびそれらの混合物から選ばれる。
【0042】
ジオールは、好ましくはポリエチレングリコールであり、より好ましくは200~1000の範囲内の分子量を有するポリエチレングリコールすなわちPEG1000~PEG200である。
【0043】
他のオプション成分
PCMの過冷却を防ぐために、組成物中に核剤を含めてもよい。核剤はPCMより高い融点を有していてもよい。核剤は有機物であってもよいし無機物であってもよく、好ましくは有機物である。核剤は、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、ポリエーテルおよびそれらの混合物から選ばれてもよく、好ましくは、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸エステルおよびそれらの混合物から選ばれてもよい。核剤はワックスであってもよい。核剤は、ベヘン酸ベヘニル、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリルアルコール、ステアルアミド、スクアランワックス、蜜蝋、モンタンワックス、石油ワックス、ミクロクリスタンワックス、ポリエチレンワックス、珪藻土、グラファイト、リン酸二水素カリウム、硫酸カルシウムおよびそれらの混合物から選ばれてもよい。核剤は、PCMの融点より少なくとも10℃高い融点を有していてもよく、好ましくは少なくとも15℃高い、特に好ましくは少なくとも20℃高い、望ましくは少なくとも30℃高い融点を有していてもよい。核剤は、PCMの融点より多くとも100℃高い融点を有していてもよく、好ましくは多くとも50℃高い融点を有していてもよい。
【0044】
PCM組成物の熱的に誘導される分解または異性化を防止または遅延させるために、熱安定剤が必要とされる場合がある。特に、熱安定剤は、エステルの熱的に誘導される分解または異性化から生じる、より低い分子量の生成物または異性体の生成を防止または遅延させることができる。熱安定剤は、亜リン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、リン酸エステルおよびそれらの混合物から選ばれてもよい。
【0045】
PCM組成物の酸化を防止または遅延させるために、酸化防止剤が必要とされる場合がある。特に、酸化防止剤は、エステルと大気の酸素または酸素フリーラジカルとの反応から生じる生成物の生成を防止または遅延させることができ、生成物としては、例えば、アルコール、アルデヒド、酸、過酸化物または水を挙げることができる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、立体障害フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤およびそれらの混合物から選ばれてもよい。
【0046】
火災安全の目的のためにまたはPCM組成物のいくつかの用途に対する火災安全規則に従うために、難燃剤が必要とされる場合がある。難燃剤は、ハロゲン化炭化水素、リン酸エステルおよびそれらの混合物から選ばれてもよい。難燃剤は、クロロパラフィン、ブロモオクタデカン、ブロモペンタデカン、ブロモノナデカン、ブロモエイコサン、ブロモドコサンおよびそれらの混合物から選ばれてもよい。他の可能な難燃剤はビス(ペンタブロモフェニル)オキシドまたはビス(テトラブロモフェニル)オキシドが挙げられる。
【0047】
熱伝達促進剤が組成物に含まれていてもよい。熱伝達促進剤は、黒鉛、金属および金属酸化物の粒子および/または粉末から選ばれてもよい。
【0048】
組成物中の成分の量および割合
本発明の組成物は、少なくとも50質量%のPCMを含んでもよく、好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、望ましくは少なくとも85質量%、特に好ましくは少なくとも90質量%のPCMを含んでもよい。
【0049】
組成物は1~10質量%のシリカ系ゲル化剤を含む。組成物は、少なくとも1.5質量%のシリカ系ゲル化剤を含んでもよく、好ましくは少なくとも2質量%、より好ましくは少なくとも3質量%、特に好ましくは少なくとも4質量%のシリカ系ゲル化剤を含んでもよい。組成物は、多くとも9質量%のシリカ系ゲル化剤を含んでもよく、好ましくは多くとも8質量%、より好ましくは多くとも7質量%、特に好ましくは多くとも6質量%のシリカ系ゲル化剤を含んでもよい。
【0050】
組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比は、0.6~5:1の範囲にある。この質量比の範囲は、シリカ系ゲル化剤によって提供されるシリカ内部ネットワークの存在とスチレン共重合体系ゲル化剤によって提供されるスチレン共重合体内部ネットワークの存在の有利な組み合わせを提供し得る。この質量比の範囲内でのこれらの内部ネットワークの異なる特性の組み合わせは、組成物に有益な特性を提供することができる。理論に拘束されるものではないが、0.6:1より低い質量比は、スチレン共重合体のより高い濃度がシリカ内部ネットワークの効果を低減する結果をもたらす可能性があり、5:1より高い質量比は、シリカのより高い濃度がスチレン共重合体内部ネットワークの効果を低減する結果をもたらす可能性がある。
【0051】
組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比は、少なくとも0.8:1であってもよく、好ましくは少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも1.2:1、特に好ましくは少なくとも1.4:1、望ましくは少なくとも1.5:1であってもよい。組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比は、多くとも4.5:1であってもよく、好ましくは多くとも4:1、より好ましくは多くとも3.5:1、特に好ましくは多くとも3:1、望ましくは多くとも2.5:1であってもよい。
【0052】
組成物は、少なくとも0.2質量%のスチレン共重合体系ゲル化剤を含んでもよく、好ましくは少なくとも0.6質量%、より好ましくは少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも2質量%のスチレン共重合体系ゲル化剤を含んでもよい。組成物は、多くとも16質量%のスチレン共重合体系ゲル化剤を含んでもよく、好ましくは多くとも12質量%、より好ましくは多くとも8質量%、特に好ましくは多くとも6質量%、望ましくは多くとも4質量%のスチレン共重合体系ゲル化剤を含んでもよい。
【0053】
組成物は、少なくとも0.1質量%の核剤を含んでもよく、好ましくは少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも2質量%の核剤を含んでもよい。組成物は、多くとも10質量%の核剤を含んでもよく、好ましくは多くとも8質量%、特に好ましくは多くとも6質量%、望ましくは多くとも4質量%の核剤を含んでもよい。
【0054】
組成物は、少なくとも0.1質量%の熱安定剤を含んでもよく、好ましくは少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも2質量%の熱安定剤を含んでもよい。組成物は、多くとも10質量%の熱安定剤を含んでもよく、好ましくは多くとも8質量%、特に好ましくは多くとも6質量%、望ましくは多くとも4質量%の熱安定剤を含んでもよい。
【0055】
組成物は、少なくとも0.1質量%の酸化防止剤を含んでもよく、好ましくは少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも2質量%の酸化防止剤を含んでもよい。組成物は、多くとも10質量%の酸化防止剤を含んでもよく、好ましくは多くとも8質量%、特に好ましくは多くとも6質量%、望ましくは多くとも4質量%の酸化防止剤を含んでもよい。
【0056】
組成物は、少なくとも0.1質量%の難燃剤を含んでもよく、好ましくは少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも2質量%の難燃剤を含んでもよい。組成物は、多くとも10質量%の難燃剤を含んでもよく、好ましくは多くとも8質量%、特に好ましくは多くとも6質量%、望ましくは多くとも4質量%の難燃剤を含んでもよい。
【0057】
組成物は、少なくとも0.1質量%の熱伝達促進剤を含んでもよく、好ましくは少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも2質量%の熱伝達促進剤を含んでもよい。組成物は、多くとも10質量%の熱伝達促進剤を含んでもよく、好ましくは多くとも8質量%、特に好ましくは多くとも6質量%、望ましくは多くとも4質量%の熱伝達促進剤を含んでもよい。
【0058】
組成物の特性
組成物はゲル状である。組成物はゲルであってもよく、好ましくは形態安定性ゲルであってもよい。ゲルはゲル化剤によって提供される少なくとも1つの内部ネットワークを含んでもよい。内部ネットワークがゲルを構成してもよい。ゲルは、シリカ系ゲル化剤によって提供されるシリカ内部ネットワークおよびスチレン共重合体系ゲル化剤によって提供されるスチレン共重合体内部ネットワークを含んでもよい。組成物は非ニュートン流体であってもよい。組成物はずり流動化性であってもよい。
【0059】
組成物は基準温度におけるずり流動化値(STV)を有していてもよく、それは次式で計算することができる。
STV=0.2s-1での粘度/59s-1での粘度
ただし、粘度は、40mmステンレス鋼平行プレートジオメトリーを備えたティー・エイ・インスツルメント(TA Instruments)製DHR-2レオメーターで基準温度で測定する。
【0060】
組成物は、25℃におけるSTVが少なくとも20、好ましくは少なくとも40、好ましくは少なくとも60、特に好ましくは少なくとも80、望ましくは少なくとも100であってもよい。組成物は、25℃におけるSTVが多くとも500であってもよく、好ましくは多くとも400、より好ましくは多くとも300であってもよい。
【0061】
組成物は、40℃におけるSTVが少なくとも20であってもよく、好ましくは少なくとも40、より好ましくは少なくとも60、特に好ましくは少なくとも80、望ましくは少なくとも100であってもよい。組成物は、40℃におけるSTVが多くとも500であってもよく、好ましくは多くとも400であってもよい。
【0062】
組成物は基準温度におけるフロー・アット・レスト(FAR)を有することができ、それは、直径0.9cmの円形の下部(出口)開口部および直径6.8cmの円形の上部(入口)開口部および5cmの高さを有するプラスチックの円錐形の漏斗に、ある量の組成物を入れることによって測定することができる。FARは試料の85質量%が出口開口部を通って流出するのにかかった時間である。
【0063】
組成物は、25℃におけるFARが少なくとも30分であってもよく、好ましくは少なくとも60分、より好ましくは少なくとも2時間、特に好ましくは少なくとも4時間、望ましくは少なくとも12時間、特に好ましくは少なくとも20時間であってもよい。
【0064】
組成物は、40℃におけるFARが少なくとも30分であってもよく、好ましくは少なくとも60分、より好ましくは少なくとも2時間、特に好ましくは少なくとも4時間、望ましくは少なくとも12時間、特に好ましくは少なくとも20時間であってもよい。
【0065】
組成物中のb)シリカ系ゲル化剤とc)スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比は、PCMの熱的性質および組成物のレオロジー特性に影響を与える可能性がある。ゲル化剤の量によって影響を受けるPCMの熱的性質には、過冷却および潜熱が含まれ得る。理論に拘束されるものではないが、過剰のスチレン共重合体系ゲル化剤(すなわち0.6:1未満のシリカ系ゲル化剤:スチレン共重合体系ゲル化剤の質量比)は、PCMの結晶構造に干渉し、減少した潜熱および著しい過冷却に結びつく可能性がある。シリカ系ゲル化剤の存在はそのような熱的欠点を防ぎ、望ましい熱的性質をもたらすことができる。
【0066】
いくつかのPCMの用途においては、組成物が、静止状態で、すなわち外部剪断応力が加えられていないとき、固体のような挙動を示すことが望まれる。シリカ系ゲル化剤が存在しない場合、スチレン共重合体系ゲル化剤のみの存在は、適度な温度でさえ、組成物が自重によりゆっくりと流動するのを許す可能性があるので、このレオロジー挙動を達成するのは難しい。そのような挙動は、PCMが容器に詰められる多くの用途において望ましくない。そのようなフロー・アット・レストは、本発明のゲル化剤の組み合わせによって止めることができる。さらに、本発明のゲル化剤の質量比を使用することによって、同じ固体のような挙動が比較的高い温度でさえ得ることができる。
【0067】
組成物を含む物品
1つの態様では、本発明は、密封された容器および容器の中に含まれる本発明の組成物を含む物品を提供する。組成物のゲル特性は、容器がその他の必要なもの(すなわち、容器はより重要ではないかもしれない)よりも薄いおよび/または透過性の低い壁を有することを可能にしてもよく、または容器は異なる(例えばより安価な)材料または密封方法で作られてもよい。
【0068】
容器は金属で作られていてもよいし、プラスチックで作られていてもよく、好ましくはプラスチックで作られていてもよい。容器は、ポリアミド、ポリアミン、ポリイミド、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエポキシド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリフルオロカーボン、ホルムアルデヒド重合体、天然の重合体、ポリオレフィン、フッ素化ポリオレフィン、ポリフェニレン、ケイ素含有重合体、ポリウレタン、ポリビニル、ポリアセタール、ポリアクリレートならびにそれらの共重合体および混合物から選ばれるプラスチックで作られていてもよい。好ましくは、プラスチックは、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリエステルならびにそれらの共重合体および混合物から選ばれる。容器は、鋼鉄、アルミニウム、チタン、青銅、銅、銀、マグネシウムおよびそれらの合金から選ばれる金属で作られていてもよく、好ましくは金属はアルミニウムおよびその合金から選ばれる。
【0069】
容器は堅くてもよいし、可撓性であってもよい。容器はロッド、パウチまたはパネルであってもよく、好ましくはパウチまたはパネルであってもよい。好ましくは、容器は可撓性のパウチである。容器は堅いパネルであってもよい。
【0070】
組成物を含む製品
本発明の組成物は、織物製品(例えば衣料品)、発泡体製品(例えばマットレス)、包装製品(例えば熱に弱い物質のための容器)、電子製品(例えばプリント回路板、マイクロチップ、CPUまたは電池)、自動車システム(例えば乗り物エンジン部品)、冷却システム(例えば冷蔵庫または冷凍庫)、暖房・換気・空調(HVAC)システムまたは建設資材に組込まれてもよい。
【0071】
本発明の1つの態様では、本発明の組成物を含む織物製品、発泡体製品、医療製品、電子製品、包装製品、自動車システム、冷却システム、HVACシステムまたは建設資材が提供される。
【0072】
方法
1つの態様では、本発明は、次の工程を含む本発明の組成物を作る方法を提供する。
i)スチレン共重合体系ゲル化剤を組成物に完全に溶解させるのに十分な温度で十分な時間、組成物の成分を混合する工程、および
ii)混合を止めて、組成物を静止させゲルを形成させる工程。
【0073】
工程i)は均一な組成物、好ましくは均質な組成物を生成することができる。工程ii)は均一な組成物、好ましくは均質な組成物を生成することができる。
【0074】
工程i)は加熱を含んでもよい。工程i)の温度は、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも30℃、より好ましくは少なくとも50℃、さらに好ましくは少なくとも70℃、特に好ましくは少なくとも90℃であってもよい。工程i)の温度は、多くとも160℃、好ましくは多くとも140℃、より好ましくは多くとも120℃、特に好ましくは多くとも110℃であってもよい。
【0075】
工程i)の継続時間は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも40分、より好ましくは少なくとも60分、特に好ましくは少なくとも80分であってもよい。工程i)の継続時間は、多くとも24時間、好ましくは多くとも15時間、より好ましくは多くとも10時間、特に好ましくは多くとも6時間であってもよい。
【0076】
混合は攪拌によってもよい。攪拌は、少なくとも100rpm、好ましくは少なくとも200rpm、より好ましくは少なくとも300rpm、特に好ましくは少なくとも400rpmの速度で攪拌してもよい。攪拌は、多くとも1500rpm、より好ましくは多くとも1300rpmの速度で攪拌してもよい。
【0077】
工程ii)は加熱を止めることを含むことができる。工程ii)の温度は周囲温度であってもよい。工程ii)の温度は少なくとも20℃であってもよい。工程ii)の温度は、多くとも80℃、好ましくは多くとも60℃、より好ましくは多くとも40℃、特に好ましくは多くとも30℃であってもよい。
【0078】
工程ii)の継続時間は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも40分、より好ましくは少なくとも60分、特に好ましくは少なくとも80分であってもよい。工程ii)の継続時間は、多くとも48時間、好ましくは多くとも24時間、より好ましくは多くとも15時間、特に好ましくは多くとも10時間であってもよい。
【0079】
使用
1つの態様では、本発明は、相変化物質を含むゲル組成物を作るための、シリカ系ゲル化剤とスチレン共重合体系ゲル化剤の組み合わせの使用であって、ゲル組成物の25℃におけるフロー・アット・レスト(FAR)時間が、ここで測定されたときに、比較のゲル組成物のそれの少なくとも2倍であり、ただし、比較のゲル組成物はスチレン共重合体のみからなる比較のゲル化剤を含み、ゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%と比較のゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%は等しい、使用を提供する。
【0080】
ゲル組成物の25℃におけるFAR時間は、比較のゲル組成物のそれの少なくとも4倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも8倍、特に好ましくは少なくとも10倍であってもよい。
【0081】
ゲル組成物の40℃におけるFAR時間は、比較のゲル組成物のそれの少なくとも4倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも8倍、特に好ましくは少なくとも10倍であってもよい。
【0082】
もう1つの態様では、本発明は、相変化物質を含むゲル組成物を作るための、シリカ系ゲル化剤とスチレン共重合体系ゲル化剤の組み合わせの使用であって、ゲル組成物の25℃におけるずり流動化値(STV)が、ここで測定されたときに、比較のゲル組成物のそれの少なくとも2倍であり、ただし、比較のゲル組成物はスチレン共重合体のみからなる比較のゲル化剤を含み、ゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%と比較のゲル組成物中のゲル化剤の合計質量%は等しい、使用を提供する。
【0083】
ゲル組成物の25℃におけるSTVは、比較のゲル組成物のそれの少なくとも4倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも8倍、特に好ましくは少なくとも10倍であってもよい。
【0084】
ゲル組成物の40℃におけるSTVは、比較のゲル組成物のそれの少なくとも4倍、好ましくは少なくとも6倍、より好ましくは少なくとも8倍、特に好ましくは少なくとも10倍であってもよい。
【実施例
【0085】
本発明を以下の非限定的な実施例によって例証する。
【0086】
ここに記載されるすべての試験および物理的パラメーターは、本明細書に別段の定めがない限り、または参照される試験方法および手順において別段の定めがない限り、大気圧および室温(すなわち約25℃)で決定されたことが理解されるであろう。別段の定めがない限り、部およびパーセントはすべて質量基準で示される。すべてのレオロジー測定は、試料作成後、試料を少なくとも1日間静置した後に行なった。
【0087】
試験方法
この明細書においては、以下の試験方法を使用した。
(i)フロー・アット・レスト(FAR)は、直径0.9cmの円形の下部(出口)開口部および直径6.8cmの円形の上部(入口)開口部および5cmの高さを有するプラスチックの円錐形の漏斗に、ある量の試料を入れることによって測定した。試料の85質量%が出口開口部を通って流出するのにかかった時間を測定し、それをFARとした。実験は25℃および40℃で行なった。
(ii)示差走査熱量測定法(DSC)は、メトラー・トレド(Mettler-Toledo)によって提供されたMettler-Toledoマシン(モジュールDSC822-LT and 3+)および制御・分析ソフトウェアを使用して行なった。DSCは、例えば融点、結晶化点および潜熱を測定するために使用することができる。
(iii)試料のレオロジー特性は、ティー・エイ・インスツルメント(TA Instruments)からのDHR-2レオメーターで測定した。せん断速度掃引測定は、40mmのステンレス鋼平行プレートジオメトリーで25℃および40℃で行なった。
【0088】
純粋なPCM-対照
純粋なCrodaTherm 6.5(クローダ・ヨーロッパ社(Croda Europe Limited)製)(脂肪酸エステルPCM)の試料を、対照試料として使用した。それは、融点が6.84℃であり、室温(すなわち約25℃)では液体の状態である。
【0089】
例1-比較
91.7質量%のCrodaTherm 6.5および8.3質量%のKraton A1535(クレイトン社(Kraton Corporation)製)を含む比較試料ゲルを、以下の工程によって作った。
1)CrodaTherm 6.5を、ビーカーの中で500rpmでオーバーヘッドスターラーで攪拌しながら100℃に加熱する。
2)攪拌速度を750rpmに設定し、Kraton A1535を40分間かけて添加する。
3)Kratonをすべて添加したら、混合物をさらに40分間攪拌して、組成物を完全に均質化する。
4)攪拌を止め、組成物を放置して、冷却し、ゲルを形成する。
【0090】
実施例2
a)91.7質量%のCrodaTherm 6.5、
b)5.3質量%の親水性ヒュームドシリカ、および
c)3質量%のKraton A1535を含む試料ゲル
を、例1で説明した手順に従い、かつ工程1)と工程2)の間に以下の工程を加えることによって作った。
1a)攪拌速度を1200rpmに上げながら、親水性ヒュームドシリカを徐々に添加する。
1b)シリカをすべて添加したら、混合物をさらに5分間攪拌する。
【0091】
実施例3
a)91.2質量%のCrodaTherm 6.5および0.5質量%の核剤、
b)5質量%の親水性ヒュームドシリカ、
c)3質量%のKraton A1535、および
d)0.3質量%のPEG400(ポリエチレングリコール)
を含む試料ゲルを、実施例2で説明した手順に従い、かつ工程3の後に以下の工程を加えることによって作った。
3a)攪拌速度を600rpmに設定し、PEG400を1滴ずつ添加する。
【0092】
実施例4
上記の試料をここに定義した試験方法を使用して試験した。試料の試験から得られた結果を、下記の表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
例1~3において、組成物中のゲル化剤の合計質量%は、適切な比較を行うために、一定かつ均等に保たれている。
【0095】
本発明の実施例2および3におけるゲル化剤の組み合わせは、結晶化温度の低下の減少および均一な融解ピークなどの熱的性質において、比較例1よりも明らかな利点を実証している。
【0096】
すべての実施例において使用されたゲル化剤は、純粋なPCMと比較したとき、粘度を増加させる。さらに、実施例2および3の本発明の組成物は、25℃でさえ顕著なずり流動化を示す。これは、実施例2および3のずり流動化値(STV)結果を例1と比較することによって分かることができる。低温での高いずり流動化は、材料を加工する多くの製造者にとって、特に興味深い。
【0097】
多くのPCM用途において、包装材料が使用中にまたは輸送中に偶発的に穴をあけられたときに、PCM組成物が流出するのを防ぐことが望ましい。フロー・アット・レスト(FAR)試験結果は、例1と比較したとき、この点で、実施例2および3の利点を示す。40℃でさえ、実施例2および実施例3の組成物は、例1と異なり、オリフィスを通って流出しない。
【0098】
上記の実施形態は単に例として記載されたものであり、本発明は上記の実施形態の詳細に限定されるべきではないことが理解されるべきである。多くの変更が可能である。