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特許7216816貯蔵電力由来管理装置、方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】貯蔵電力由来管理装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230125BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H02J3/00 180
H02J3/38 110
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021520517
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2019019856
(87)【国際公開番号】W WO2020234953
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 真人
(72)【発明者】
【氏名】神田 充
(72)【発明者】
【氏名】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】大佐古 佳明
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 高弘
(72)【発明者】
【氏名】高島 力
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-196257(JP,A)
【文献】国際公開第2015/015770(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電部を充電する際の電力供給源を示す第1情報を取得する取得部と、
前記第1情報に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力の電力供給源を示す情報を蓄電された電力量に対応付けて記憶部に記憶させる蓄電管理部と、
前記蓄電部を放電させる際に、放電させる電力の電力供給源を、前記記憶部に記憶された電力供給源を示す情報に基づいて特定し、前記記憶部における前記特定した電力供給源に対応する電力量から、放電させる電力量を差し引く放電管理部と、を備え、
前記取得部は、更に、需要家の装置から、電力供給源を指定する第2情報を取得し、
前記放電管理部は、前記第2情報に更に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源を特定し、
前記第2情報は、更に、必要な電力量の情報と、電力供給源に関する優先度の情報とを含み、
前記放電管理部は、前記記憶部において、前記第2情報に基づいて特定した電力供給源に対応するものとして記憶された電力量が、前記必要な電力量よりも少ない場合、前記優先度に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源に、前記第2情報により指定されていない電力供給源を含める、
貯蔵電力由来管理装置。
【請求項2】
蓄電部を充電する際の電力供給源を示す第1情報を取得する取得部と、
前記第1情報に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力の電力供給源を示す情報を蓄電された電力量に対応付けて記憶部に記憶させる蓄電管理部と、
前記蓄電部を放電させる際に、放電させる電力の電力供給源を、前記記憶部に記憶された電力供給源を示す情報に基づいて特定し、前記記憶部における前記特定した電力供給源に対応する電力量から、放電させる電力量を差し引く放電管理部と、を備え、
前記第1情報は、前記電力供給源からの受電要求を含み、
前記蓄電管理部は、前記取得部により同時期に複数の電力供給源の装置から前記受電要求が取得された場合、所定の規則に基づいて一つの電力供給源を選択し、前記選択した電力供給源を示す情報を蓄電された電力量に対応付けて記憶部に記憶させ、
前記取得部は、更に、需要家の装置から、電力供給源を指定する第2情報を取得し、
前記第2情報は、更に、必要な電力量の情報と、電力供給源に関する優先度の情報とを含み、
前記放電管理部は、前記記憶部において、前記第2情報に基づいて特定した電力供給源に対応するものとして記憶された電力量が、前記必要な電力量よりも少ない場合、前記優先度に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源に、前記第2情報により指定されていない電力供給源を含める、
貯蔵電力由来管理装置。
【請求項3】
蓄電部を充電する際の電力供給源を示す第1情報を取得する取得部と、
前記第1情報に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力の電力供給源を示す情報を蓄電された電力量に対応付けて記憶部に記憶させる蓄電管理部と、
前記蓄電部を放電させる際に、放電させる電力の電力供給源を、前記記憶部に記憶された電力供給源を示す情報に基づいて特定し、前記記憶部における前記特定した電力供給源に対応する電力量から、放電させる電力量を差し引く放電管理部と、を備え、
前記第1情報は、前記電力供給源からの受電要求を含み、
前記蓄電管理部は、前記取得部により同時期に複数の電力供給源の装置から前記受電要求が取得された場合、前記複数の電力供給源のそれぞれから電力が並行して供給されたものとして、前記複数の電力供給源を示す情報を蓄電された電力量に対応付けて記憶部に記憶させ、
前記取得部は、更に、需要家の装置から、電力供給源を指定する第2情報を取得し、
前記第2情報は、更に、必要な電力量の情報と、電力供給源に関する優先度の情報とを含み、
前記放電管理部は、前記記憶部において、前記第2情報に基づいて特定した電力供給源に対応するものとして記憶された電力量が、前記必要な電力量よりも少ない場合、前記優先度に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源に、前記第2情報により指定されていない電力供給源を含める、
貯蔵電力由来管理装置。
【請求項4】
前記第2情報は、前記需要家への放電要求を含み、
前記放電管理部は、前記取得部により同時期に複数の需要家の装置から前記放電要求が取得された場合、所定の規則に基づいて一つの需要家を選択し、前記選択した需要家の装置から取得された前記第2情報に基づいて、供給する電力の電力供給源を特定する、
請求項1記載の貯蔵電力由来管理装置。
【請求項5】
前記第2情報は、前記需要家への放電要求を含み、
前記放電管理部は、前記取得部により同時期に複数の需要家の装置から前記放電要求が取得された場合複数の電力供給源のそれぞれに電力を並行して供給するものとして、前記複数の需要家の装置から取得された前記第2情報に基づいて、供給する電力の電力供給源を特定する、
請求項1記載の貯蔵電力由来管理装置。
【請求項6】
前記第1情報は、電力供給源の装置から供給される電力量を示す情報を含み、
前記蓄電管理部は、前記取得された供給する電力量を示す情報に、送電ロスによる減少分を加味した情報を、前記電力供給源を示す情報に対応付けて前記記憶部に記憶させる、
請求項1から3のうち何れか1項に記載の貯蔵電力由来管理装置。
【請求項7】
前記蓄電管理部および前記放電管理部による処理の履歴を示す情報を提供する情報提供部を更に備える、
請求項1から3のうち何れか1項に記載の貯蔵電力由来管理装置。
【請求項8】
蓄電可能な電力量と、送電ロスと、送電設備の損耗と、電力供給源の種別と、自然放電による減少分とのうち一部または全部に基づいて電力の料金を決定し、前記需要家の装置に対して、料金を提示する料金決定部を更に備える、
請求項1から3のうち何れか1項に記載の貯蔵電力由来管理装置。
【請求項9】
前記放電管理部は、前記取得部が、放電を要求する前記需要家の装置から電力供給源を指定する第2情報を取得しなかった場合、予め設定された設定情報に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源を特定する、
請求項1から3のうち何れか1項に記載の貯蔵電力由来管理装置。
【請求項10】
コンピュータが、
蓄電部を充電する際の電力供給源を示す第1情報を取得し、
前記第1情報に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力の電力供給源を示す情報を蓄電された電力量に対応付けて記憶部に記憶させ、
前記蓄電部を放電させる際に、放電させる電力の電力供給源を、前記記憶部に記憶された電力供給源を示す情報に基づいて特定し、前記記憶部における前記特定した電力供給源に対応する電力量から、放電させる電力量を差し引き、
需要家の装置から、電力供給源を指定する第2情報を取得し、
前記第2情報に更に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源を特定し、
前記第2情報は、更に、必要な電力量の情報と、電力供給源に関する優先度の情報とを含み、
前記記憶部において、前記第2情報に基づいて特定した電力供給源に対応するものとして記憶された電力量が、前記必要な電力量よりも少ない場合、前記優先度に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源に、前記第2情報により指定されていない電力供給源を含める、
方法。
【請求項11】
コンピュータに、
蓄電部を充電する際の電力供給源を示す第1情報を取得させ、
前記第1情報に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力の電力供給源を示す情報を蓄電された電力量に対応付けて記憶部に記憶させる処理を行わせ、
前記蓄電部を放電させる際に、放電させる電力の電力供給源を、前記記憶部に記憶された電力供給源を示す情報に基づいて特定させ、前記記憶部における前記特定した電力供給源に対応する電力量から、放電させる電力量を差し引かせ、
需要家の装置から、電力供給源を指定する第2情報を取得させ、
前記第2情報に更に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源を特定させ、
前記第2情報は、更に、必要な電力量の情報と、電力供給源に関する優先度の情報とを含み、
前記記憶部において、前記第2情報に基づいて特定した電力供給源に対応するものとして記憶された電力量が、前記必要な電力量よりも少ない場合、前記優先度に基づいて、前記需要家に供給される電力の電力供給源に、前記第2情報により指定されていない電力供給源を含めさせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、貯蔵電力由来管理装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力源ごとのCO由来量を表示部に表示する電力制御方法の発明が開示されている。しかしながら、従来の技術では、需要家がどの電力供給源からの電力を使用したのかを仮想的に把握することができず、利便性が十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5393602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、利便性を高めることができる貯蔵電力由来管理装置、方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の貯蔵電力由来管理装置は、取得部と、蓄電管理部と、放電管理部とを持つ。取得部は、蓄電部を充電する際の電力供給源を示す第1情報を取得する。蓄電管理部は、前記第1情報に基づいて、前記蓄電部に蓄えられた電力の電力供給源を示す情報を蓄電された電力量に対応付けて記憶部に記憶させる。放電管理部は、前記蓄電部を放電させる際に、放電させる電力の電力供給源を、前記記憶部に記憶された電力供給源を示す情報に基づいて特定し、前記記憶部における前記特定した電力供給源に対応する電力量から、放電させる電力量を差し引く。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】貯蔵電力由来管理装置100の構成と使用環境の一例を示す図。
図2】取得部102が取得する情報の一例を示す図。
図3】電力内訳情報122の内容の一例を模式的に示す図。
図4】時間帯ごとの電力料金の推移の一例を示す図。
図5】送電ロス係数124の内容の一例を示す図。
図6】蓄電管理部104による処理の内容の一例を模式的に示す図。
図7】放電管理部108による処理の内容の一例を模式的に示す図。
図8】情報提供部110により提供される画像の一例を示す図。
図9】他の実施形態に係る電力内訳情報122Aの内容の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の貯蔵電力由来管理装置、方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0008】
[全体構成]
図1は、貯蔵電力由来管理装置100の構成と使用環境の一例を示す図である。貯蔵電力由来管理装置100は、蓄電装置200を管理する装置である。図示する各種装置・機器は、電力網ENを介して電力の授受を行うと共に、情報通信網CNを介して情報の送受信を行う。情報通信網CNは、例えば、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネットなどを含む。
【0009】
電力網ENには、例えば、電力供給源である電力系統10-A、風力発電機10-B、太陽光発電機10-Cなどが接続されている。これらは電力供給源としての一例に過ぎず、他の種類の電力供給源(例えば地熱発電機、蓄電装置など)が電力網ENに接続されてもよいし、同じ種類の複数の電力供給源が電力網ENに接続されてもよい。電力系統10-Aは、例えば、火力発電機や原子力発電機、水力発電機、送配電網などで構成される。図示しないが、風力発電機10-Bや太陽光発電機10-Cには、電力網ENに接続するためのPCS(Power Conditioning System)が接続されている。電力網ENには、更に、例えば、需要家である負荷装置20-A、20-Bなどが接続されており、蓄電装置200が接続されている。電力網ENには、蓄電装置200とは異なる蓄電装置が接続されてもよい。
【0010】
情報通信網CNには、例えば、系統管理装置12-A、発電機管理装置12-B、12-C、負荷端末装置22-A、22-B、および貯蔵電力由来管理装置100が接続されている。
【0011】
系統管理装置12-Aは、電力系統10-Aの運営者(例えば電力会社)によって運営される装置である。電力系統10-Aには、複数の発電機が接続されている。系統管理装置12-Aは、例えば、発電機ごとの発電電力をリアルタイムに(或いは10分おき、1時間おきといった間隔で)発信する。発信先には貯蔵電力由来管理装置100が含まれる。
【0012】
発電機管理装置12-Bは、風力発電機10-Bによる発電量を測定した結果に基づいて、風力発電機10-Bの発電量と受電要求を含む発電機状態情報をリアルタイムに(或いは10分おき、1時間おきといった間隔で)発信する。発電機管理装置12-Cは、太陽光発電機10-Cによる発電量を測定した結果に基づいて、太陽光発電機10-Cの発電電力と受電要求を含む発電機状態情報をリアルタイムに(或いは10分おき、1時間おきといった間隔で)発信する。共に、発信先には貯蔵電力由来管理装置100が含まれる。
【0013】
負荷装置20-A、20-Bは、電力を消費する任意の装置である。負荷端末装置22-Aは、負荷装置20-Aの運営者によって使用される端末装置である。負荷端末装置22-Aは、負荷装置20-Aが使用する電力に関して、放電を要求する放電要求、必要な電力量の情報などを含むデマンド情報を、貯蔵電力由来管理装置100に送信する。負荷端末装置22-Bは、負荷装置20-Bの運営者によって使用される端末装置である。負荷端末装置22-Bは、負荷装置20-Bが使用する電力に関して、放電を要求する放電要求、必要な電力量の情報などを含むデマンド情報を、貯蔵電力由来管理装置100に送信する。優先度の意義に関しては後述する。
【0014】
貯蔵電力由来管理装置100は、蓄電装置200の運営に関する種々の処理を行う。先に蓄電装置200について説明する。蓄電装置200は、例えば、充放電装置202と、測定部204と、蓄電部206とを備える。
【0015】
蓄電部206は、例えば二次電池であるが、これに限らず、電力を他のエネルギーに変換して蓄えるものであってもよい。例えば、蓄電部206は、電力を水素に変換して蓄えるものであってもよいし、フライホイールのように電力を運動エネルギーに変換して蓄えるものであってもよい。
【0016】
測定部204は、蓄電部206による充放電電流や、蓄電部206の正極と負極の間の電圧、蓄電部206の温度などを測定し、貯蔵電力由来管理装置100に出力する。充放電装置202は、例えばPCSであり、交流と直流を相互に変換する。
【0017】
貯蔵電力由来管理装置100は、例えば、取得部102と、蓄電管理部104と、料金決定部106と、放電管理部108と、情報提供部110とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0018】
貯蔵電力由来管理装置100は、記憶部120を備える。記憶部120は、例えば、HDDやフラッシュメモリ、RAMなどである。記憶部120は、貯蔵電力由来管理装置100に付随する装置であってもよいし、貯蔵電力由来管理装置100が情報通信網CNを介してアクセス可能なNAS(Network Attached Storage)であってもよい。記憶部120には、電力内訳情報122、送電ロス係数124などの情報が格納されている。
【0019】
図2は、取得部102が取得する情報の一例を示す図である。取得部102は、電力供給源の装置である系統管理装置12-Aから系統状態情報を、発電機管理装置12-Bおよび12-Cから発電機状態情報を、それぞれ取得する。系統状態情報と発電機状態情報のうち少なくとも一方が、第1情報の一例である。系統状態情報は、発電機ごとの発電量などを含む。発電機状態情報は、例えば、受電要求と、発電量を含む。受電要求は、例えば0か1かの二値で表され、0が受電を要求しないことを、1が受電を要求することを表す。
【0020】
取得部102は、需要家の装置である負荷端末装置22-Aおよび22-Bからデマンド情報を取得する。デマンド情報は、第2情報の一例である。デマンド情報は、例えば、放電要求と、必要な電力の情報である受電量と、電力供給源指定情報と、受電時間帯とを含む。放電要求は、例えば0か1かの二値で表され、0が放電を要求しないことを、1が放電を要求することを表す。電力供給源指定情報は、例えば、再生可能エネルギー(以下、再エネ)であるか、そうでないかの二値で表される。再生可能エネルギーとは、図1の例では、風力発電機10-Bまたは太陽光発電機10-Cにより発電された電力をいう。
【0021】
[蓄電管理]
蓄電管理部104は、系統状態情報および発電機状態情報に基づいて、蓄電部206に蓄えられた電力の電力供給源を示す情報を、蓄電された電力量に対応付けて記憶部120に電力内訳情報122として記憶させる。図3は、電力内訳情報122の内容の一例を模式的に示す図である。図示するように、電力内訳情報122は、蓄電部206のSOC(State Of Charge)あるいは電力量(kW)を軸として、再エネと系統電力(電力系統から取得した電力)のそれぞれから取得した蓄電量が記述された情報である。
【0022】
蓄電管理部104は、所定時間ごとに、系統状態情報および発電機状態情報に含まれる発電量に基づいて、電力内訳情報122における再エネと系統電力とのそれぞれの蓄電量に加算する。例えば、蓄電管理部104は、時間帯ごとの電力料金に基づいて、安い電力を優先的に蓄電部206に供給すると決定する。図4は、時間帯ごとの電力料金の推移の一例を示す図である。電力料金は、時々刻々と変化するものであり、系統管理装置12-Aや発電機管理装置12-B、12-Cから貯蔵電力由来管理装置100に提示される。図示するように太陽光発電による電力は、昼間に最も安くなり、夜間には供給不可となることが想定される。但し、蓄電管理部104は、環境負荷低減のために割高でも再エネの電力を使用したいというニーズに備えて、一定割合は再エネの電力を蓄えるように管理してもよい。蓄電管理部104は、現在の管理状況から不足していると考えられる種別の電力を優先して充電するようにしてもよい。そのために、蓄電管理部104は、系統管理装置12-A、発電機管理装置12-B、12-Cに対して、所望の種別の電力を放電するように放電要求を送信してもよい。
【0023】
ところで実際には、蓄電部206に蓄電する電力の出所を限定するのは、電力線が個別に設けられていない限り困難である。そこで、蓄電管理部104は、蓄電部206に蓄電する電力の出所に関して合理的な説明力を持たせるため、例えば発電機管理装置12-Bからの受電要求に対して、(1)受電する旨の情報と、受電する電力量の情報とを発電機管理装置12-Bに返信し、(2)返信した電力量(その他にも系統電力を並行して取得する場合は合計の電力量)が蓄電されるように充放電装置202を制御し、(3)予め提示されている風力発電機10-Bに対応する電力料金を風力発電機10-Bの運営者に支払うように決済処理を行うことで、風力発電機10-Bからの電力が蓄電部206に蓄電されたものとして管理する。これに代えて(または、加えて)、発電元で発電状態情報を生成して貯蔵電力由来管理装置100に送信するようにし、ブロックチェーンなどの技術によって信頼性を担保するようにしてもよい。
【0024】
蓄電管理部104は、更に、電力料金の支払い対象となった電力量に対して、送電ロスを加味して割り引いた電力量を、電力内訳情報122の該当する項目に加算する。図5は、送電ロス係数124の内容の一例を示す図である。送電ロス係数124は、電力供給源ごとに、送電された電力に対して蓄電部206に蓄電される電力の比率を表した情報である。送電ロス係数124は、各発電機の位置などに基づいて予め計算され、記憶部120に格納されている。
【0025】
蓄電管理部104は、蓄電部206の二次電池の劣化が進行しにくいように充放電装置202を制御する。
【0026】
図6は、以上説明した蓄電管理部104による処理の内容の一例を模式的に示す図である。例えば、蓄電管理部104は、ある制御周期において、発電機管理装置12-Bからの受電要求に受電受諾の応答をすると共に、電力量300[kW]を受電することを伝える。蓄電管理部104は、所望のロジックに基づいて、同時に電力系統10-Aからも200[kW]の電力を購入することを決定した場合、例えば合計で300×0.97+200=491[kW]の充電をするように充放電装置202に指示する。この場合、蓄電管理部104は、電力内訳情報122の再エネの項目に300×0.97=291[kW]を、系統電力の項目に200[kW]を加算する。これによって、蓄電された電力の電力供給源が仮想的に特定される。なお、この逆に、蓄電部206に蓄電する電力量を先に決定し、送電ロス係数の逆数を乗算した電力量を、発電機管理装置12-B、12-Cに伝えるようにしてもよい。蓄電管理部104は、更に、蓄電部206に蓄電された電力が、自然放電で減っていく分を電力内訳情報122に反映させてもよい。例えば、蓄電管理部104は、蓄電部206の状態や利用環境(温度、SOC、充放電頻度など)に基づいて自然放電で減少する蓄電量を定期的に算出し、電力内訳情報122に反映させてもよい。この際に、蓄電された時間帯の情報を用いて、いつ、どこから供給された電力であるかに基づいて、自然放電で減少する蓄電量を算出してよい。この場合、料金決定部106は、自然放電で減った分の逆数を料金に乗算してもよい。
【0027】
料金決定部106は、例えば、系統管理装置12-Aや発電機管理装置12-B、12-Cから提示された電力料金(取得コスト)に運用コストを上乗せした料金を、負荷端末装置22-A、22-Bに提示する。ここで、再エネ、電力系統のそれぞれについて、時間帯が変わることで異なる電力料金で取得された電力が含まれる場合、料金決定部106は、例えば電力料金の移動平均を求めるなどして取得コストを決定してもよい。また、料金決定部106は、負荷端末装置22-A、22-Bからの放電要求の推移に応じて、要求の多い方の料金を上げるようにしてもよい。また、再エネの電力の需要が高い場合、再エネの電力にプレミアムを付けて料金を高く設定してもよいし、再エネの普及のために意図的に再エネの電力の料金を安く設定してもよい。また、料金決定部106は、SOCが低下して第1規定値(例えば20%)に近づくほど料金を上げ、SOCが上昇して第2規定値(例えば80%)に近づくほど料金を下げるようにしてもよい。これによって蓄電部206の劣化が進行するのを抑制することができる。
【0028】
[放電管理]
放電管理部108は、蓄電部206を放電させて需要家(負荷装置20-A、20-B)に電力を供給する際に、供給する電力の電力供給源を仮想的に特定し、電力内訳情報122における特定した電力供給源に対応する電力量から、需要家に供給される電力量を差し引く処理を行う。より具体的に、放電管理部108は、負荷端末装置22-Aまたは22-Bからのデマンド情報に基づいて、負荷装置20-Aまたは20-Bに供給する電力の電力供給源を仮想的に特定する。例えば、図2に示すように負荷端末装置22-Aから再エネを指定したデマンド情報を取得した場合、放電管理部108は、(1)放電する旨の情報を負荷端末装置22-Aに返信し、(2)デマンド情報に含まれる受電量の電力が放電されるように充放電装置202を制御し、(3)デマンド情報により指定された電力供給源ごとの料金を負荷装置20-Aの運営者に請求する処理を行い、(4)電力内訳情報122の該当する項目(再エネ)から放電する電力量に相当する分を差し引く。これによって、貯蔵電力由来管理装置100は、あたかも需要家の指定する電力供給源から需要家に電力が供給されたように情報管理を行うことができる。なお、デマンド情報に電力供給源を指定する情報が含まれていない場合、或いはデマンド情報以外の形で放電が要求された場合(すなわち、放電を要求する需要家の装置から電力供給源を指定する情報を取得しなかった場合)、放電管理部108は、予め設定された設定情報に基づいて、需要家に供給される電力の電力供給源を特定してもよい。設定情報は、需要家の指定に基づいて決定されてもよいし、貯蔵電力由来管理装置100が一律に決定してもよい。また、貯蔵電力由来管理装置100が各時点の受給バランスを考慮して自動的に決定してもよい。
【0029】
図7は、以上説明した放電管理部108による処理の内容の一例を模式的に示す図である。例えば、放電管理部108は、ある制御周期において、負荷端末装置22-Aからの250[kW]の放電要求に放電受諾の応答をすると共に、電力量250[kW]を放電することを伝える。放電管理部108は、250[kW]の放電をするように充放電装置202に指示する。このとき、放電管理部108は、負荷装置20-Aまでの送電ロスを加味して250[kW]よりも多く放電するように充放電装置202に指示してもよい。放電管理部108は、電力内訳情報122の再エネの項目から250[kW]を差し引く。これによって、放電された電力の電力供給源が仮想的に特定される。
【0030】
情報提供部110は、蓄電管理部104および放電管理部108による処理の履歴を示す情報を各種装置に提供する。蓄電管理部104および放電管理部108による処理の履歴を示す情報とは、例えば、制御周期ごと、電力供給源ごとの蓄電および放電の履歴である。情報提供部110は、例えば、ウェブサーバあるいはアプリサーバの機能を有し、ウェブページの形式で画像を提供することができる。図8は、情報提供部110により提供される画像の一例を示す図である。係る情報を参照することで、例えば需要家は電力の需給関係を詳細に知ることができる。
【0031】
[並行要求時の制御:蓄電]
以下、複数の電力供給源から受電要求があった場合の制御について説明する。
【0032】
(パターン1)
蓄電管理部104は、取得部102により同時期に(例えば同じ制御周期で)複数の発電機管理装置から受電要求が取得された場合、例えば、所定の規則に基づいて一つの発電機を選択し、選択した発電機について図6で説明した処理を行う。所定の規則とは、電力料金の安い方を選択する、送電ロスの小さい方を選択する、送電設備への負担が少ないものを選択する、といった規則である。
【0033】
(パターン2)
蓄電管理部104は、取得部102により同時期に(例えば同じ制御周期で)複数の発電機管理装置から受電要求が取得された場合、複数の発電機のそれぞれから電力が並行して供給されたものとして、図6で説明した処理を行ってもよい。
【0034】
[並行要求時の制御:放電]
以下、複数の需要家から放電要求があった場合の制御について説明する。
【0035】
(パターン1)
放電管理部108は、取得部102により同時期に(例えば同じ制御周期で)複数の負荷端末装置から放電要求が取得された場合、例えば、所定の規則に基づいて一つの負荷装置を選択し、選択した負荷装置について図7で説明した処理を行う。
【0036】
(パターン2)
放電管理部108は、取得部102により同時期に(例えば同じ制御周期で)複数の負荷端末装置から放電要求が取得された場合、複数の負荷装置のそれぞれに電力を並行して供給するものとして、図7で説明した処理を行ってもよい。この場合、デマンド情報に含まれる電力量の一部のみ供給することになる場合もあり得る。
【0037】
[他の実施形態1]
上記実施形態では、電力系統からの電力は一律に系統電力として扱うものとして説明したが、電力系統からの電力を、発電機の種別ごとに区別して電力内訳情報で管理してもよい。図9は、他の実施形態に係る電力内訳情報122Aの内容の一例を模式的に示す図である。本図の例において、系統電力のうち水力発電機によって発電された電力は再エネとして扱われてもよい。この場合、デマンド情報には優先度に関する情報が含まれ、放電管理部108は、例えばデマンド情報に含まれる再エネの電力量が電力内訳情報122Aに記述された再エネの電力量を上回る場合、優先度に基づいて次善の電力供給源を選択して放電管理を行ってもよい。例えば、デマンド情報には、電力供給源指定情報として再エネが指定されており、優先度として火力を原子力よりも優先するという内容が指定されている。放電管理部108は、仮想的に蓄電部206に蓄電された再エネの電力量がデマンド要求に係る電力量よりも小さい場合、火力発電機によって発電された電力が負荷装置に提供されるように制御する。
【0038】
[他の実施形態2]
上記実施形態では、系統状態情報に発電機ごとの発電量や発電種別が含まれているものとしたが、系統状態情報にこれらの情報が含まれておらず、単に発電電力の情報が含まれてもよい。また、系統状態情報が系統管理装置12-Aから取得されなくてもよい。また、「蓄電管理部104は、所定時間ごとに、系統状態情報および発電機状態情報に含まれる発電量に基づいて、電力内訳情報122における再エネと系統電力とのそれぞれの蓄電量に加算する」ものとしたが、蓄電管理部104は、系統状態情報に依らず、所望のタイミングで電力系統10-Aから所望の電力量を取得して蓄電装置200の蓄電部206に蓄電させてもよい。
【0039】
[他の実施形態3]
系統状態情報には、更に、発電場所(発電機の位置)に関する情報が含まれ、貯蔵電力由来管理装置100は、発電場所ごとに蓄電量を管理し、負荷端末装置22-A、22-Bから発電場所を指定した放電要求を受け付けてもよい。こうすれば、特定の地域で発電された電力を購入したいというニーズ(例えば、ふるさと応援、地産地消などの動機に基づくニーズ)に応えることができる。発電場所の情報は、例えば、発電元で発電機状態情報をタグ付けすることで系統状態情報に含められる。この情報が真正であり改ざんされていないことを確保するために、ブロックチェーンなどの情報が採用されてよい。発電場所の情報に対して、価格範囲に関する情報が付加されてもよい。
【0040】
[他の実施形態4]
上記実施形態では、電力供給源は専ら発電機であるものとしたが、他の蓄電装置が電力供給源として扱われてもよい。この場合、他の蓄電装置は、蓄電部206のSOCが100%に近い場合に、一時的に電力を預かるバッファとして機能してもよいし、貯蔵電力由来管理装置100が他の蓄電装置から放電要求を受けて放電するようにしてもよい。
【0041】
[他の実施形態5]
また、VPP(Vertual Power Plant)が電力供給源として扱われてもよい。VPPとは、例えば一日中、ある程度の電力を使用する装置が、一時的に電力消費を抑制することで、相対的に余剰の電力を生み出し、発電機であるかのように振る舞う主体をいう。例えば、駅やデパートの照明装置、工場、水処理装置などがVPPとなり得る。
【0042】
[他の実施形態6]
上記実施形態では、複数の電力供給源に共通の蓄電部206を備えるものとしたが、複数の電力供給源ごとに物理的に別体の蓄電部206を使用してもよい。
【0043】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、蓄電部206を充電する際の電力供給源を示す第1情報を取得する取得部102と、第1情報に基づいて、蓄電部206に蓄えられた電力の電力供給源を示す情報を、蓄電された電力量に対応付けて記憶部120に記憶させる蓄電管理部104と、蓄電部206を放電させて需要家に電力を供給する際に、供給する電力の電力供給源を仮想的に特定し、記憶部120における特定した電力供給源に対応する電力量から、需要家に供給される電力量を差し引く放電管理部108とを持つことにより、電力の利用に関する利便性を高めることができ、より円滑な電力融通を実現することができる。
【0044】
例えば、再エネを中心に電力供給を受けたいが、近くに再エネの発電機が存在しない需要家などにとって、仮想的であっても再エネの電力供給を受けて動作していることについて客観的な証明を得ることができれば、設備投資を省略しつつ自身のCO排出量を削減することができる。また、時間帯ごとに変動する料金を見ながら安い電力の供給を選択的に受けることもできる。電力の供給側にとっても、バッファとして電力を蓄えると共に、需要家のデマンド情報に応じた電力の供給分けをする貯蔵電力由来管理装置100が存在することで、電力の供給先を拡大することができる。このように、仮想的に電力供給源を特定して管理することで、電力の利用に関する種々の効果を奏することができる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9