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特許7216859藻類培養装置の冷却機構及びこれを用いた冷却方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-24
(45)【発行日】2023-02-01
(54)【発明の名称】藻類培養装置の冷却機構及びこれを用いた冷却方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230125BHJP
   C12M 1/36 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
C12M1/00 E
C12M1/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022105379
(22)【出願日】2022-06-30
【審査請求日】2022-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】三枝 哲
(72)【発明者】
【氏名】大森 一樹
(72)【発明者】
【氏名】市村 莉奈
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-209757(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104178426(CN,A)
【文献】特開2001-049806(JP,A)
【文献】特開2006-138511(JP,A)
【文献】特開2011-185548(JP,A)
【文献】登録実用新案第3111873(JP,U)
【文献】特表平11-509402(JP,A)
【文献】特開平05-184347(JP,A)
【文献】特開2019-187318(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116946(WO,A1)
【文献】特開平9-121835(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0171761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を含む培養液に二酸化炭素を供給する管型の閉鎖系フォトバイオリアクターの藻類培養装置における、光合成にて前記藻類を育成するリアクターに散水又は噴霧して冷却する冷却機構であって、
前記培養液を内部に収容する循環タンクと、
前記循環タンクの培養液が前記リアクターに流入される流路の第1接続管と、
前記リアクターの培養液が前記循環タンクに流出される流路となる第2接続管と、
前記リアクターの流路出口側に配置され第2接続管と接続された第1配管と、前記循環タンク側に配置され前記第2接続管と接続された第2配管とからなり、かつ前記第1配管と前記第2配管はそれぞれ鉛直方向の上下に延在され、上方向は前記第2接続管に接続されると共に、下方向は第1配管と第2配管とが屈曲して互いに接続されてU字状の流路を構成してなるガス溶解管と、
前記ガス溶解管の前記第1配管の下部に供給口を介して接続され、前記培養液の液中に二酸化炭素ガスを溶解させる二酸化炭素ガス供給部と、
散水する条件となる環境要因を測定するためのセンサーと、
前記リアクターの出口に設けられ水温を測定する液温計と、
散水の開始または停止の時刻を設定するタイマーと、
前記リアクターに散水する散水ノズルを有する散水装置と、
前記散水装置に清水を供給する弁を開閉可能な自動電動弁と、
前記センサー、前記液温計の測定結果及び前記タイマー時刻が入力され作成されたスケジュールに基づき前記自動電動弁を開閉制御する制御システムと、
を備えことを特徴とする藻類培養装置の冷却機構。
【請求項2】
前記センサーは、気温センサー、湿度センサー、日射量センサー、気象情報の少なくとも1つの測定データが入力されていることを特徴とする請求項1に記載の藻類培養装置の冷却機構。
【請求項3】
前記気象情報は、インターネット等から入手することを特徴とする請求項2に記載の藻類培養装置の冷却機構。
【請求項4】
前記液温計の水温と前記気温センサーの測定データとの温度差が5℃以上ならば散水するように制御されることを特徴とする請求項2に記載の藻類培養装置の冷却機構。
【請求項5】
請求項1に記載の藻類培養装置の冷却機構を用いた、管型の閉鎖系フォトバイオリアクターのリアクターに散水して冷却する藻類培養装置の冷却方法であって、
天気予報又は気象予報に基づいて、冷却必要日をタイマーに設定するスケジュールのステップと、
前記冷却必要日の散水開始時刻と停止時刻、散水時間、散水停止時間を設定するスケジュールのステップと、
前記スケジュールの散水実施日が前記冷却必要日に該当し、かつ、散水開始時刻になると自動電動弁が散水時間の間、開状態に制御されて散水ノズルから水が噴出して散水されるステップと、
前記スケジュールの散水停止時間の間、前記自動電動弁を閉状態とし、前記散水ノズルへの水供給が停止され散水停止されるステップと、を含み、
前記散水時間は、前記リアクターのガラス管の表面外部を清水で散水して濡らす略1分とし、前記散水停止時間は、自然蒸発で乾燥する略15分乃至30分とし、
散水停止後、前記リアクターに付着の水が気化冷却乾燥されたとされる前記スケジュールの停止時間経過後、前記散水停止時刻になるまで散水を繰り返し実施リアクターを冷却することを特徴とする藻類培養装置の冷却方法。
【請求項6】
請求項1に記載の藻類培養装置の冷却機構を用いた、管型の閉鎖系フォトバイオリアクターのリアクターに散水して冷却する藻類培養装置の冷却方法であって、
冷却必要日の散水開始時刻、停止時刻、散水時間、散水停止時間を設定するスケジュールのステップと、
前記スケジュールの散水実施日が前記冷却必要日に該当し、散水開始時刻になると自動電動弁が散水時間の間、開状態に制御されて散水ノズルから水が噴出して散水可能とされるステップと、
前記リアクターが任意の水温以上で、さらに、水温と外気温の差が任意の温度以上であれば散水されるステップと、
前記スケジュールの散水停止時間の間、前記自動電動弁に対して散水バルブを閉状態とし、前記散水ノズルへの水供給が停止され散水停止されるステップと、
散水停止後、前記リアクターに付着の水が気化冷却乾燥されたとされる前記スケジュールの停止時間経過後、前記散水停止時刻になるまで散水を繰り返すステップと、
前記散水停止時刻前であっても、前記水温と前記外気温の差が任意の温度未満になると前記自動電動弁に対して散水バルブを閉状態とし、前記散水ノズルへの水供給が停止され散水停止されるステップと、を含み、
前記散水時間は、前記リアクターのガラス管の表面外部を清水で散水して濡らす略1分とし、前記散水停止時間は、自然蒸発で乾燥する略15分乃至30分とすることにより、前記リアクターを冷却することを特徴とする藻類培養装置の冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類培養装置の冷却機構、特に、閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)のリアクター管外部を散水し気化熱を利用して冷却する冷却機構及びこれを用いた冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
藻類培養装置において、微細藻類等の光合成生物を培養するにあたり、光合成を促進させ生長増殖させるためには、太陽光にできる限り当てるようにする。しかし、一方で培養液も温められ、夏季は外気温の+10℃程度は高くなる。このため、猛暑では培養生物が死滅するほど水温が高まってしまうことがあり、培養そのものを停止しなければならない。
【0003】
そのため従来の藻類培養装置の冷却方法が考えられ、例えば、特許文献1によれば、蛍光灯等の光源の周囲に藻類の培養室が設けられ、さらにその外側に冷却水路が設けられた本体よりなり、冷却水路には上部に水道水等の冷却水を受け冷却水路へ供給する冷却水室が接続され、下部には冷却水出口が設けられ藻類培養装置が記載されている。この考案の藻類培養装置は通常の蛍光灯などの光源と、水道水などの冷却水を必要とする以外の設備は不要であり、利用価値の高い簡易型の藻類培養装置であるとしている。
【0004】
また、特許文献2によれば、微細藻類の培養空間を形成する透明板に沿って、冷却水または温水が流通可能な温度調整水流通管が配設されており、該温度調整水流通管に冷却水または温水を流すことにより培養液の温度を制御することができ、藻類による光合成機能を好適に維持することができるとしている。また、該温度調整水流通管が透明材料で形成されているので、温度調整水流通管によって光が遮られることがないとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平7-1749号公報
【文献】特開2000-139444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術の冷却方法にあっては、一定水温の環境水(地下水や海水)を多量に使って冷却することはコスト面でも環境的にも好ましいものではない。
このため、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、管型の閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)のリアクター管が透明のガラス管で構成されていることを利用し、少量の清水による気化熱により簡便に低コストとする培養装置の冷却機構及びこれを用いた冷却方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の目的を達成する第1の発明は、藻類を含む培養液に二酸化炭素を供給する管型の閉鎖系フォトバイオリアクターの藻類培養装置における、光合成にて前記藻類を育成するリアクターに散水又は噴霧して冷却する冷却機構であって、
前記培養液を内部に収容する循環タンクと、
前記循環タンクの培養液が前記リアクターに流入される流路の第1接続管と、
前記リアクターの培養液が前記循環タンクに流出される流路となる第2接続管と、
前記リアクターの流路出口側に配置され第2接続管と接続された第1配管と、前記循環タンク側に配置され前記第2接続管と接続された第2配管とからなり、かつ前記第1配管と前記第2配管はそれぞれ鉛直方向の上下に延在され、上方向は前記第2接続管に接続されると共に、下方向は第1配管と第2配管とが屈曲して互いに接続されてU字状の流路を構成してなるガス溶解管と、
前記ガス溶解管の前記第1配管の下部に供給口を介して接続され、前記培養液の液中に二酸化炭素ガスを溶解させる二酸化炭素ガス供給部と、
散水する条件となる環境要因を測定するためのセンサーと、
前記リアクターの出口に設けられ水温を測定する液温計と、
散水の開始または停止の時刻を設定するタイマーと、
前記リアクターに散水する散水ノズルを有する散水装置と、
前記散水装置に清水を供給する弁を開閉可能な自動電動弁と、
前記センサー、前記液温計の測定結果及び前記タイマー時刻が入力され作成されたスケジュールに基づき前記自動電動弁を開閉制御する制御システムと、
を備えことを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記センサーは、気温センサー、湿度センサー、日射量センサー、気象情報の少なくとも1つの測定データが入力されていることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、前記気象情報は、インターネット等から入手することを特徴とする。
第4の発明は、第2の発明において、前記液温計の水温と前記気温センサーの測定データとの温度差が5℃以上ならば散水するように制御されることを特徴とする。
第5の発明は、請求項1に記載の藻類培養装置の冷却機構を用いた、管型の閉鎖系フォトバイオリアクターのリアクターに散水して冷却する藻類培養装置の冷却方法であって、
天気予報又は気象予報に基づいて、冷却必要日をタイマーに設定するスケジュールのステップと、
前記冷却必要日の散水開始時刻と停止時刻、散水時間、停止時間を設定するスケジュールのステップと、
前記スケジュールの散水実施日が前記冷却必要日に該当し、かつ、散水開始時刻になると自動電動弁が散水時間の間、開状態に制御されて散水ノズルから水が噴出して散水されるステップと、
前記散水時間は、前記リアクターのガラス管の表面外部を清水で散水して濡らす略1分とし、
前記スケジュールの散水停止時間の間、前記自動電動弁を閉状態とし、前記散水ノズルへの水供給が停止され散水停止されるステップと、を含み、
前記散水停止時間は、自然蒸発で乾燥する略15分乃至30分とし、
散水停止後、前記リアクターに付着の水が気化冷却乾燥されたとされる前記スケジュールの停止時間経過後、前記散水停止時刻になるまで散水を繰り返し実施するリアクターを冷却することを特徴とする。
第6の発明は、請求項1に記載の藻類培養装置の冷却機構を用いた、管型の閉鎖系フォトバイオリアクターのリアクターに散水して冷却する藻類培養装置の冷却方法であって、
冷却必要日の散水開始時刻、停止時刻、散水時間、散水停止時間を設定するスケジュールのステップと、
前記スケジュールの散水実施日が前記冷却必要日に該当し、散水開始時刻になると自動電動弁が散水時間の間、開状態に制御されて散水ノズルから水が噴出して散水可能とされるステップと、
前記リアクターが任意の水温以上で、さらに、水温と外気温の差が任意の温度以上であれば散水されるステップと、
前記スケジュールの散水停止時間の間、前記自動電動弁に対して散水バルブを閉状態とし、前記散水ノズルへの水供給が停止され散水停止されるステップと、
散水停止後、前記リアクターに付着の水が気化冷却乾燥されたとされる前記スケジュールの停止時間経過後、前記散水停止時刻になるまで散水を繰り返すステップと、
前記散水停止時刻前であっても、前記水温と前記外気温の差が任意の温度未満になると前記自動電動弁に対して散水バルブを閉状態とし、前記散水ノズルへの水供給が停止され散水停止されるステップと、を含み、
前記散水時間は、前記リアクターのガラス管の表面外部を清水で散水して濡らす略1分とし、前記散水停止時間は、自然蒸発で乾燥する略15分乃至30分とすることにより、前記リアクターを冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、管型の閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)のリアクター管が透明のガラス管で構成されていることを利用し、少量の清水による気化熱により簡便に低コストとする培養装置の冷却機構及びこれを用いた冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る藻類培養装置を模式的に示す図である。
図2】本実施形態に係る藻類培養装置の冷却方法の第1のフロー図である。
図3】本実施形態に係る藻類培養装置の冷却方法の第2のフロー図である。
図4】本実施形態に係る藻類培養装置の冷却方法の第3のフロー図である。
図5】本実施形態に係る藻類培養装置の冷却の評価試験のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[閉鎖系フォトバイオリアクター]
本実施形態に係る藻類培養装置は、管型の閉鎖系フォトバイオリアクターで、例えば太陽光やLEDの照射を十分に受けることが可能な屋外や屋内場所に設置される。このような閉鎖系フォトバイオリアクターは、藻類を含む培養液を内部に収容する循環タンクと、藻類を光合成により培養するガラス管式のリアクターと循環タンクの培養液がリアクターに流入される流路の第1接続管と、リアクターの培養液が循環タンクに流出される流路の第2接続管とを備えている。
なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、藻類を含んだ培養液(以下、単に培養液ともいう。)の供給と蓄積のための循環タンク2と、微細藻類を培養するリアクター3と、培養液をリアクター3に圧送するポンプ4と、培養液に二酸化炭素を供給するガス溶解管5とを備える。循環タンク2の底方から出た循環液を圧送するポンプ4と、さらにポンプ4からとリアクター3の入口とは第1接続管6で連通しており、リアクター3の流路出口から循環タンク2とは第2接続管7で連通している。ガス溶解管5は、循環タンク2寄りに位置して第2接続管7と連通している。
【0012】
第1接続管6には、ポンプ4からの流量を測定する流量計61と、第1接続管6の内部清掃時のドレン溜めとして用いられるドレン弁62が設けられている。
また、第2接続管7におけるガス溶解管5とリアクター3との中間位置に、液中のpH(水素イオン指数)、溶存酸素濃度、液温を測定するための測定槽8aが備えられている。
【0013】
培養液は、微細藻類を培養するための液で、例えば窒素、リン等の養分及び二酸化炭素を含んだ水である。
【0014】
循環タンク2は、タンク本体21と、タンク蓋22と、排気管23と、ジャケット24を有する。タンク本体21は、槽状の空間で、その底面には、タンク本体21内部の清掃時のドレン溜めとして用いられるドレン弁26が設けられている。タンク本体21は、循環タンクフレーム25により支持されている。
また、タンク蓋22は、例えば板状で、ごみ等の異物が入らないようにタンク本体21の上部を閉塞している。
また、循環タンク2には、図1の▽符号までの培養液の液位まで藻類を含んだ培養液Mが満たされている。このため、液位レベル計(図示せず。)が循環タンク2内の培養液の液位を検出して、この液位レベル計の検出結果に基づいて、培養液の液位(▽符号)が絶えず所定値範囲となるように制御可能とされる。また、温度計(図示せず。)が循環タンク2内の培養液の水温を検出して、この温度計の検出結果に基づいて、培養液温度が絶えず所定値範囲となるように制御可能とされる。
【0015】
排気管23は、タンク蓋22から突出したU字管が設けられている。これにより、循環タンク2内の培養液に悪影響を及ぼす不純物、例えば、本実施形態では、ガス溶解管5から供給されるガス(気体)が化石燃料を燃焼させた際に発生する排気ガスであった場合等、二酸化炭素以外の気体窒素や酸素が大気中に放出される。
また、外部からの異物混入が無いように排気管23の外側先端にネット23aが設けられている。
【0016】
また、ジャケット24は、循環タンク2内の培養液の温度を所定の温度に保つために、温水の配管にて円筒状に覆われている。そして、ジャケット24に連通した加熱用温水流入口24aと加熱用温水流出口24bとを有する。加熱用温水流入口24aは、循環タンク2よりも鉛直方向の高さが高く、加熱用温水流出口24bはそれよりも低い位置に配置される。
これにより、冬場の寒さにより循環タンク2の培養液の温度が低くなると藻の育成が阻害されるため、所定の温度として例えば約20℃以上に保たれるようになっている。なお、藻類の培養温度の好ましくは約23℃とされる。所定の温度の設定については、一例であり、藻類に適した温度に設定することが好ましい。
/
【0017】
ドレン弁26は、循環タンク2内の培養液を排出する弁である。循環タンク2内の清掃ときの排液に使用する。また、レベル計(図示せず。)の検出結果に基づいて、培養液の液位が所定値を超える場合、ドレン弁26から培養液を回収し調整することも可能である。
【0018】
ドレン弁27は、循環タンク2内のドレンをサンプリングする弁である。循環タンク2内ドレン状況の確認検査に使用する。
また、ドレン弁26の手前にポンプ4との流路(第1接続管6)を開閉する止水弁28が設けられている。ポンプ4を長期停止してメンテナンス作業の際に使用する。
【0019】
リアクター3は、培養液に含まれる藻類に光合成を行うための光を透過可能な材料を用いて円筒の管状に形成され、免振構造のリアクターフレーム31により支持される。また、円筒の管端部をU字管で繋ぎ、上下方向に多段的に管路(流路)が形成される。このようなリアクター3の管路の繋目は、例えば、管路の洗浄用ピグ(図示せず。)が管内を止まらずに円滑に進むように隙間や段差が発生しないように結合されている。
【0020】
このようなリアクター3は、管路(流路)が長さ30m、50mの規模が大きい屋外用の閉鎖系フォトバイオリアクターの場合であっても、多段式の螺旋形状とすることによりリアクター3の設置面積を抑えつつ、リアクター3の表面積を増やすことができる。この結果、藻類に対して光合成可能な波長の光をより多く照射することができる。
また、藻類が光合成可能な波長の光を照射する光源部(図示せず。)を備えて光を効率的に供給することができるようにしても良い。
【0021】
ここでのリアクター3のリアクター管(以下、ガラス管という。)32は、軟化温度が高く熱膨張係数が小さく化学的に安定であるケイ酸(SiO)ガラス管が用いられているが、これに限定されることはなくソフトプラスチック(LDPE)等の光透過性を有する樹脂製のものを用いても良い。
また、最下段の管路には、第1接続管6と接続されて培養液が供給されリアクター3への流路入口3aと、第2接続管7と接続されて培養液がリアクター3から排出される流路出口3bが設けられている。
【0022】
ポンプ4は、培養液及び図示しない薬液洗浄用ピグ(図示せず。)をリアクター3に圧送するものである。本実施形態のポンプ4は、回転数の高いターボ型(非容積式)ポンプではなく、回転数の低い容積式ポンプが用いられる。これは、回転式ポンプの強い流れによって培養液が供給されると、その強い流れによって培養される微細藻類の種類によっては藻類がちぎれて死滅する。これを回避するため、一定容積にある分量だけ流れる容積式ポンプであれば微細藻類の育成に沿った緩やかな流れとしている。
【0023】
ガス溶解管5はU字管で、リアクター3の流路出口3b側に配置され第2接続管7と接続された第1配管5aと、循環タンク2側に配置され第2接続管7と接続された第2配管5bとからなり、それぞれ鉛直方向の上下に延在している。上方向は第2接続管7に接続され、下方向は第1配管5aと第2配管5bとが屈曲して互いに接続されている。これにより、第1配管5aの流路と第2配管5bの流路がU字状の流路となる。
【0024】
また、第1配管5aのU字状近傍には、培養液に二酸化炭素ガスを供給して液中に溶解させるための二酸化炭素ガス供給部5cが備えられている。二酸化炭素ガス供給部5cの供給口5dから供給される二酸化炭素は、培養液中で気泡となるが、溶解しやすくするため、気泡の径が例えば、5mm以下であることが望ましい。また、二酸化炭素ガス供給部5cから培養液に供給される第1配管5aの流路の断面積における気体量は、例えば、2.0NL(ノルマルリットル)/cm/min以下であることが好ましく、1.0NL(ノルマルリットル)/cm/min以下となることがより好ましい。
【0025】
ガス溶解管5から供給されるガス(気体)は、化石燃料を燃焼させた際に発生する排気ガスであっても良い。例えば、水素製造装置が都市ガスから水素を製造する際に排出する二酸化炭素をフォトバイオリアクターに直接投入できる。このような排気ガスは、二酸化炭素を含んでいるため、大気中に放出する二酸化炭素の量を低減でき、カーボンニュートラルに貢献可能とされる。また、光合成により生成する酸素分子を効率よく培養液中から取り除くために、排気ガス中に含まれる酸素の濃度は、10%以下となることが望ましい。
【0026】
二酸化炭素ガス供給部5cの供給口5dは、第1配管5aの下部に配置されていることから、二酸化炭素ガスの微細な気泡が下部で生成される。そして、生成された気泡が上昇すると、第1配管5a内の培養液は、上向きの推進力を受ける。よって、第1配管5a内の培養液は上昇して第2接続管7へ流れる。一方で、第2配管5b内の培養液は、第2接続管7に引き込まれる。さらに第2配管5b内の培養液が下向きに流れるために第2接続管7を流れる培養液の一部が第2配管5a内に引き込まれる。これにより、第2配管5b内から第2接続管7内に戻った培養液の一部は、ガス溶解管5内にひきこまれるようになっている。
【0027】
ガス溶解管5の供給口5dから第2接続管7の液面までの距離は、1.5m以上、好ましくは、1.5m以上6m未満、さらに好ましくは1.5m以上、2.5m未満である。これによれば、気泡サイズ5mm以下の場合、二酸化炭素の溶解率が90%以上となり、効率的な溶解が可能となる。すなわち、二酸化炭素が溶解するのに十分な距離が確保されていることから培養液に溶解する二酸化炭素の量が従来と比べて格段に増加する。
【0028】
また、ガス溶解管5の第1配管5a及び第2配管5bは、鉛直方向に対して傾斜していない。よって、配管の内面に気泡が付着しにくい。仮に気泡が付着すると気泡同士が接触して径が大型化した気泡が形成され二酸化炭素の溶解効率が低下するが、そのような事態が避けられる。
【0029】
ガス溶解管5とリアクター3とを接続連通する第2接続管7上にリアクター3の配管内の液中のpH、溶存酸素濃度、液温を測定するための測定槽8aが備えられている。
【0030】
この測定槽8aは、液貯留タンクで、リアクター3から流れ込みガス溶解管5に向かって流れ出て、一定の液面の高さまで満たされている。そして、溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度計8c、pHを測定するpH計8b、液中の温度を測定する液温計9がある。
【0031】
溶存酸素濃度計8cは、微細藻類に光があたると、二酸化炭素を吸収して酸素を生成することから、その溶存酸素量を測定する。この溶存酸素濃度計8cは、水中に溶解している溶存酸素濃度(Dissolved Oxygen:DO)を計測でき、その濃度は単位容積当たりの酸素量(mg/L)で表す。光合成による培養プロセスにおいて溶存酸素を計測することは、培養経過を監視する基本的かつ重要な仕様とされる。
【0032】
pH計8bは、光合成によって二酸化炭素を吸収するとpH値があがり、そのpH値を測定する。
【0033】
そして、これらの測定結果は、図示しない無線通信手段を介して作業管理者に通知され、時間スケール毎にグラフ化されて常時モニター監視される。
なお、測定槽8aに限定されないで、第2接続管7への埋め込みセンサーを用いて監視することでも構わない。これらのモニター監視を常時することによって、微細藻類の光合成効率(生産効率)を最適化することができる。
【0034】
液温計9は、例えば、二種類の異なる金属導体で構成された温度センサーを用いた熱電対式の工業用温度計である。これにより、リアクター3のガラス管32を流れる培養液の温度を測定され、その結果は、制御システム11に送られる、散水有無の指示パラメータとして用いられる。
【0035】
[培養装置の冷却機構]
本実施形態の管型の閉鎖系フォトバイオリアクター(培養装置)の冷却機構は、図1に示すように、散水する条件となる環境要因を測定するためのセンサー(気温センサー11b、湿度センサー11c、日射量センサー11d、気象情報(図示せず。)の少なくとも1つが入力され、リアクター3の出口に設けられ水温を測定する液温計(T1)9と、散水の開始または停止の時刻を設定するタイマー11aと、リアクター3に散水する散水ノズル12aを有する散水装置12と、散水装置12に清水を供給する弁を開閉可能な自動電動弁10と、センサー、液温計(T1)9の測定結果及びタイマー時刻が入力され作成されたスケジュールに基づき自動電動弁10を開閉制御する制御システム11と、を備えている。
【0036】
冷却機構は、複数のセンサーが所定の位置に備えられている。具体的には、リアクター3の気温を測定するための気温センサー11b、またリアクター3の相対湿度を測定するための湿度センサー11cが、リアクター3への日射の強度を測定するための日射量センサー11dが設けられていて、これら複数のセンサー測定結果は制御システム11に入力される。そして、これら複数のセンサーから得られる測定データに基づいてリアクター3内の環境の分析または自動制御が行われる。なお、これら複数のセンサーは、屋外に設置のリアクター3の場合、その屋根内に設けられているのが通常であるが外側に設けられてもよい。
【0037】
気温センサー11bは、熱電対、サーミスタ、白金測温抵抗体などを用いた温度センサーで、センシング部、通信部、マイコン部及び電源部が内蔵されていて、測定結果をアナログ或いはデジタル化して出力される。本実施形態では、夏場や冬場の温度が測定できるものであればよいので、ここでの説明は省略する。
【0038】
湿度センサー11cは、抵抗式と静電容量式の電気式湿度計で、センシング部、通信部、マイコン部及び電源部が内蔵されていて、測定結果をアナログ或いはデジタル化して出力される。
【0039】
日射量センサー11dは、フォトダイオードを用いて測定するもので、センシング部、通信部、マイコン部及び電源部が内蔵されていて、測定結果をアナログ或いはデジタル化して出力されるものであればよいので、ここでの説明は省略する。なお、日射量センサー11dは光量子束密度センサーで代用してもよい。
【0040】
これら複数のセンサーは、測定により取得した気温データ、日射量データまたは相対湿度データなどの測定データを、ケーブル接続による有線通信手段または無線通信手段によって制御システム11に入力する。無線通信手段であれば、例えば、BLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)またはWi-Fiを用いて測定データを制御システム11に送信できる。
【0041】
制御システム11は、入力された気温データ、日射量データまたは相対湿度データなどの測定データ及びタイマー信号について、ケーブル接続による有線通信手段または無線通信手段によって、PCにデータ出力されディスプレイ上で参照可能とされるコンピュータ制御装置である。そして、PCにデータ出力後、作業管理者によるPC操作によって散水スケジュールなどの実施制御に係る信号を受け取り、その散水スケジュールにしたがって、自動電動弁10のモータにより電磁弁を開閉可能としている。
【0042】
自動電動弁10は、制御システムからの電気モータMへ作動の制御信号が出力され、バルブによりリアクター3のガラス管32への散水開始および停止のための開閉が実行される。自動電動弁10は、流量を自動制御可能なバルブを有する周知の装置であり、特にここでの説明は行わない。
【0043】
また、本発明は、リアクター3上部或いは側面からガラス管32の表面が濡れる程度、清水を噴霧或いは散水し、ガラス管32の表面に付着した清水が気化蒸発するのを待って、再度、清水を噴霧或いは散水することに特徴があることから、その効果は、外的要因である気温データ、日射量データまたは相対湿度データなどの測定データに大きく影響される。
【0044】
そこで、過去の気温データ、日射量データまたは相対湿度データにそれぞれの重みづけを行う加重平均によるデータベース化を行い、これらデータに基づいて人工知能プログラムによる適切な散水時間と気化蒸発するための停止時間の予測を可能とし、自動電動弁10の開閉制御(流量調整含む。)ができることも可能としている。
【0045】
また、上記の複数のセンサー以外に、本実施形態の管型の閉鎖系フォトバイオリアクター(培養装置)が設置されている地域における、現在又は過去に実際に観測された気象観測情報や現在以降に観測されることが予測される気象予測情報について、インターネットから得て制御システム11に入力される手段も備えている。
【0046】
また、冷却機構は、タイマー11aを備え、設定登録された冷却必要日の散水開始時刻、散水停止時刻、散水時間、停止時間の指示指令をスケジューラに従って行う。タイマー11aは、周知の装置であり、特にここでの説明は行わない。
【0047】
冷却機構の散水(噴霧)する手段12は、実施形態の説明上、所定間隔をもって複数の散水(噴霧)ノズル12aがリアクター3のガラス管32の上段部分に設けられている。散水(噴霧)ノズル12aは、多孔噴霧ノズルが用いられる。実施する場合には、ガラス管32の全体部分に噴霧液滴が均一に到達するように、リアクター3のガラス管32の上段から下段に向けて複数の散水(噴霧)する手段12が縦並びに配置されて散水(噴霧)されるようにしている。そして、散水(噴霧)ノズル12aからの散水(噴霧)される微細液滴がガラス管32の表面で蒸発する時に奪う気化熱にてガラス管32の内部の藻類を含む培養液が冷却される。したがって、過剰の散水(噴霧)により、気化を阻害するのは好ましくなく、ガラス管32が濡れる程度の散水(噴霧)が好ましい。
【0048】
散水(噴霧)する手段12に供給される水は、水道水や雨水、地下水などの清水である。また、散水(噴霧)ノズル12aがゴミなどの異物による目つまりを起こさないように、フィルター(図示せず)を介して供給されている。
【0049】
図示しないPC(Personal Computer)は汎用のコンピュータであって、入力装置やディスプレイが接続されている。そして、この入力装置によって散水システムの制御に必要な各種情報の入力が行われ、ディスプレイには散水システムを自動制御する上での各種画面が表示される。さらに、PCは、記憶装置を備えており、散水システムを自動制御する制御プログラム、散水スケジュールを作成するアプリケーションソフト、無線通信の記録その他各種のデータ(データロガーを含む。)が記憶されている。そして、このPCの操作により、散水スケジュールなどにより清水供給の自動電動弁10を開閉する制御システム11に対してリモートコントロールも行われる。
【0050】
このように、この設定された散水スケジュールにしたがって、散水する日、散水開始時刻及び散水停止時刻からなるスケジュールデータが生成され、制御システム11上に設定登録される。散水スケジュールを変更する場合には、PC上で変更し制御システム11に再度設定する。
【0051】
なお、ここでのPCは、例えば、PCに限定されず、携帯電話またはタブレット専用装置などの情報処理装置であってもよく、PCと制御システム11との間には、図示しない無線通信手段を備えており、その無線通信手段によりPCと制御システム11が無線通信手段に接続された状態となっている。このため、作業管理者が散水必要日の散水スケジュールを作成する際、ネットを介して入手した天気等の各種情報をディスプレイ上で参照可能となっている。
【0052】
次に、上記の如く構成された散水システムの動作について、図2及び図3に基づいて説明する。なお、図2は制御装置で行われる処理を示すフローチャートであり、図3は散水装置で行われる処理を示すフローチャートである。
【0053】
冷却機構の基本操作は、リアクター3のガラス管32の表面外部を少量の清水で濡らし(1分ほど散水)、清水をかけるのを止め、自然蒸発で乾燥するのを待つ(15~30分程)操作を繰り返す。これらの散水の実施はコンピュータ(以下、単にPCという。)のプログラムによる自動制御で行っている。先ず、ウィークリータイマーによる冷却機構の単純制御(基本)について、フロー図を用いて説明する。
【0054】
[ウィークリータイマーによる冷却機構の単純制御(基本)フロー]
冷却機構は、週間天気予報による晴天、晴天ならば猛暑となるか、曇天、雨であるかの予想から、清水を噴霧或いは散水し、冷却するタイミングを天候に応じて藻類培養を阻む悪天となる時間前から制御するもので、リアクター3上部或いは側面からガラス管32の表面が濡れる程度、清水を噴霧或いは散水し、ガラス管32の表面に付着した清水が気化蒸発するのを待って、再度、清水を噴霧或いは散水する工程を自動的に繰り返す制御するものである。
冷却機構の自動制御は、3通りの散水方法があって、これらの単独或いは複合制御で冷却の散水を行う。
【0055】
第1の自動制御は、動作時刻やON:OFF間隔を調整するタイマーを用いて、散水の自動制御で行う。例えば、気温が高くなる日中11時~15時の間、20分に1回、1分間に任意の水量でリアクターに清水を散水する。
【0056】
これを制御フローでみると、天気予報に基づいて、冷却必要日をウィークリータイマーに設定するスケジュールのステップと、冷却必要日の散水開始時刻と停止時刻、散水時間、停止時間を設定するスケジュールのステップと、スケジュールの散水実施日が冷却必日に該当し、かつ、散水開始時刻になると自動電動弁10が散水時間の間、開状態に制御されて散水ノズル12aから清水が噴出して散水されるステップと、スケジュールの停止時間の間、自動電動弁10を閉状態とし、散水ノズル12aへの水供給が停止され散水停止されるステップと、散水停止後、リアクター3に付着の清水が気化冷却乾燥されたとされるスケジュールの停止時間経過後、散水停止時刻になるまで散水を繰り返し実施してリアクターを冷却する。
【0057】
具体的には、図2のフローを用いてさらに説明する。作業管理者はPCを操作して制御システム11に、散水スケジュールの週間天気予報を参考に、1週間の冷却必要日をタイマー(図示せず。)に登録設定する(ステップS11)。例えば、ウィークリータイマーとして、水木金土は散水実施(晴天、猛暑予想)、日月火は散水停止(曇天、雨天予報)とする。
散水スケジュールの設定に際しては、作業管理者はインターネットを介して入手した天気等の情報(データロガー)や記憶装置に記憶されている各種情報をディスプレイ上で参照可能である。
【0058】
次に、冷却必要日の散水開始、停止時刻、散水時間、停止時間を設定登録(S12)する。例えば、10:00~15:00に、散水は30分サイクル(1分散水、29分散水停止)である。
【0059】
これらのスケジュールデータとそのデータに対応する散水指令信号は制御システム11から自動電動弁10に弁開閉信号が送信され、散水ステップのフローが実施される。
先ず、散水実施日であるか否かを判定する(S13)、Yesならば散水開始時刻(S14)ならば散水する(S15)。散水方法は、散水開始時刻になると清水の供給路が開状態となるように自動電動弁10を自動制御される。これにより散水ノズル12aに自動電動弁10を介して清水が供給され、散水ノズル12aから清水が噴出して清水がまかれる。
【0060】
散水サイクルに応じて散水停止し気化冷却させる(S16)。散水停止になると制御部11は、自動電動弁10に対して清水からの供給路を閉状態とすることで、散水ノズル12aへの水供給が停止され、散水も停止される。これによりリアクター3のガラス管32の表面外部を少量の清水で濡らし(1分ほど散水)、清水をかけるのを止め、自然蒸発で乾燥するのを待つ(15~30分程)操作を繰り返す。
【0061】
何回か散水のステップS15から散水停止時刻ステップS17を繰り返して、冷却必要日の散水停止時刻であるか否か判定し、Noの当該時刻でなければ、散水ステップ(S15)に戻る。散水停止時刻であるか判定し(S17)、Yesならば、散水実施日を判定する(S13)のステップまで戻る。
【0062】
ステップS13において、散水実施日であるか否かを判定したときに、Noならば散水実施日ではないので散水を行わない散水停止(S18)とし、改めて散水実施日であるか否かを判定する(S13)までに戻る。
【0063】
これらのステップフローについて、指令された経緯や状況が正常であったか否かはその都度、制御システムにフィードバックされ、記録としてPCの記憶装置に記憶される。
【0064】
これらのステップフローについて、指令された経緯や状況が正常であったか否かはその都度、制御システム11にフィードバックされ、記録としてPCの記憶装置に時系列データで記憶される。
【0065】
[外部の気象情報とタイマー制御の組み合わせたフロー]
第2の自動制御は、外部の気象情報からのデータであるが、第1の自動制御での散水スケジュールの週間天気予報を参考に1週間の冷却必要日をタイマーに登録設定する点で相違しているが、散水開始から散水停止の制御フローは同じである。すなわち、ウィークリータイマーによる冷却機構の単純制御とするか、気象情報サービスの配信データ内から自動で必要データを読み取るかであり、データ入手手段が異なっている。
【0066】
このような第2の自動制御は、外部の気象予報情報を入手し、気象条件を判断する。すなわち、気象予報情報を入手し冷却の可否を制御する。例えば、気象予報サイトから当日朝に気象情報を入手し、猛暑が予報されている時間帯はリアクターに清水を散水する。
【0067】
図3のフローに示すように、外部の気象情報とタイマー制御の組み合わせについて説明する。本フローは、猛暑で日中の外気温と水温の差が大きい時間帯のみ最小限の清水でリアクター3のガラス管32を濡らし、その気化熱でガラス管32そのものを冷却する実施形態である。
先ず、作業者は、冷却必要日の散水開始、停止時刻、散水時間、停止時間について、制御システム11のタイマー(図示せず。)設定する(S21)。次に、朝(6:00~9:00)にインターネット等から気象予報情報を自動入手する(S22)。例えば、作業管理者は、気象情報サービスの配信データ内から自動で必要データを読み取るプログラムを活用する。これらの設定に際しては、作業管理者はインターネットを介して入手した天気等の情報(データロガー)や記憶装置に記憶されている各種情報をディスプレイ上で参照可能である。
【0068】
気象予報情報により冷却必要日が猛暑日であるかの最高気温等で予測する(S23)。Yesの猛暑日で、次の条件の散水開始時刻であれば(S24)、散水を行う(S25)。散水サイクルの停止になれば散水停止し気化冷却に移行する(S26)。散水停止になると制御システム11は、自動電動弁10に対して水からの供給路を閉状態とすることで、散水ノズル12aへの水供給が停止され、水まきも停止される。これにより、リアクター3のガラス管32の表面外部を少量の清水で濡らした後清水をかけるのを止め、自然蒸発で乾燥するのを待つ。Noの猛暑日でなければ、散水停止し(S28)、S22まで戻る。
【0069】
冷却必要日の散水停止時刻であるか判定し(S27)、Noであれば散水(S25)に戻り散水を継続する。冷却必要日の散水停止時刻であるか否かの判定が、Yesであれば、ステップS22まで戻る。
【0070】
制御システムにおいて指令された経緯や状況が正常であったか否かを確認され、記録として記憶装置に記憶される。
【0071】
なお、散水必要日の散水開始時刻の前後において、晴れの日で日射が強い日や曇りや雨の日で日射が弱い日になるなど、当初、気象情報サービスの配信データに基づいて制御システム11に設定登録されている散水スケジュールと相違することが発生する。そこで、本実施形態では、図示していない自動割込制御による補正を行う。例えば、晴れの日で日射が強い日は、自動電動弁10をさらに開き清水の供給量を多くし、曇りや雨の日で日射が弱い日であれば、自動電動弁10をさらに閉じ清水の供給量を少なくすることができる。このような際、自動電動弁10は、流量を調整可能な調整弁が用いられる。
【0072】
[培養装置の水温や外気温差とタイマー制御の組み合わせたフロー]
第3は、制御するための環境要因である培養液の液温、外部環境の気温、湿度、日射量(光量子束密度)などの環境要因を測定することで冷却の可否を制御する。例えば、培養液が藻類種による任意の水温(例えば35℃)以上となり、外気温との差が5℃以上ある場合にリアクター3に清水を散水する。
【0073】
これを制御フローでみると、培養装置の水温や外気温差とタイマー制御の組み合わせについて説明する。このフローは、時刻、日射量や培養液水温、外気温、湿度の測定値から、清水を噴霧或いは散水し、冷却するタイミングを自動制御するもので、リアクター3上部或いは側面からガラス管32の表面が濡れる程度、清水を噴霧或いは散水し、ガラス管32の表面に付着した清水が気化し蒸発するのを待って、再度、清水を噴霧或いは散水する工程を自動的に繰り返す制御するものである。
【0074】
具体的には、図2のフローを用いて説明する。作業管理者は先ず、冷却必要日の散水開始時刻、停止時刻、散水時間、停止時間を設定するスケジュールのステップと、スケジュールの散水実施日が前記冷却必要日に該当し、散水開始時刻になると自動電動弁10が散水時間の間、開状態に制御されて散水ノズル12aから水が噴出して散水可能とされるステップと、リアクターが任意の水温以上で、さらに、水温と外気温の差が任意の温度以上であれば散水されるステップと、スケジュールの停止時間の間、自動電動弁10に対して散水バルブ12aを閉状態とし、散水ノズル12aへの水供給が停止され散水停止されるステップと、散水停止後、リアクター3に付着の水が気化冷却乾燥されたとされるスケジュールの散水時間経過後、散水停止時刻になるまで散水を繰り返すステップと、散水停止時刻前であっても、水温と外気温の差が任意の温度未満になると自動電動弁10を閉状態とし、散水ノズル12aへの水供給が停止され散水停止されるステップと、からなる。
【0075】
具体的には、図4のフローを用いてさらに説明する。作業管理者は、先ず、冷却必要日の散水開始、停止時刻、散水時間、停止時間を制御システム11のタイマー(図示せず。)設定する(S31)。散水時刻内であるか否かを判定し(S32)、Yesならば次の条件「任意の水温以上」か(S33)を判定し、Noならば散水停止し(S38)、散水時刻内かの判定ステップ(S32)に戻る。
気温センサー11bにより測定される気温は、リアクター3が日射を受けると、ガラス管32の温度が上昇し、ガラス管32の培養液の水温も上昇するからである。そこで、水温と外気温との差を抑制する必要がある。培養液の水温は、液温計(T1)9で測定される。
【0076】
任意の水温以上(S33)ならば、次の条件「水温と外気温の差が任意の温度以上」か否かを判定し(S34)、Yesならば散水し(S35)、散水サイクルに応じて散水停止し気化冷却させる(S36)。例えば、任意の水温とは35℃、水温と外気温の差が任意の温度とは、5℃である。
散水停止になると制御システム11は、自動電動弁10に対して水からの供給路を閉状態とすることで、散水ノズル12aへの水供給が停止され、散水(噴霧)も停止される。これにより、リアクター3のガラス管32の表面外部を少量の清水で濡らした後清水をかけるのを止め、自然蒸発で乾燥するのを待つ。
【0077】
まだ、冷却必要日の散水停止時刻であるか否か判定し(S37)、Noの当該時刻でなければ、任意の水温以上かの判定ステップ(S33)に戻る。散水停止時刻であるか判定し、Yesの当該時刻であれば、散水時刻内であるか否かを判定する(S32)に戻る。
【0078】
第3の自動制御は、第1の自動制御における散水スケジュールの週間天気予報をデータにするか、第2に自動制御における外部の気象情報からのデータでのいずれか或いは両方のデータをモニターしながら、任意の水温以上で「水温と外気温の差」が任意の温度以上であれば散水と散水停止させ気化冷却させる第4の自動制御も本実施形態の範囲内である。
【0079】
[評価試験結果]
出願人は、猛暑を利用し、3kWチラーで300Lの培養液を冷却したが、その結果、2℃程しか低下しなくて十分な冷却効果が得られなかった。そこで、日中の猛暑で外気温が暑くなる直前から、様々な条件で水道水をリアクターのガラス管32にかけ、冷却の評価試験を試みた。
【0080】
実際の試験結果を、散水前後の温度変化のグラフにより示す。図5(a)は、猛暑で晴天時に散水を行っていない場合の時間に沿った水温変化のグラフで、時刻は午後の14時で最高水温は45℃である。図5(b)は、同じく猛暑で晴天時であるが、暑くなる前の10時~11時頃から自動的に散水を行って、散水気化冷却行っている場合の時間に沿った温度変化のグラフで、最高水温は36℃である。
本実施形態で示されるように、水そのもので冷やすのでなく、ガラス管の周壁に濡れた水滴の気化熱によって、同時刻の午後の14時で最高水温が36℃位まで冷やすことができた。このように、非常に少量の水道水で約10℃近く培養液の水温を下げることができる結果を得た。
【0081】
また、本実施形態では、ジャケット24の加熱用温水を循環タンクに供給することにより冬でも藻類培養できる。これにより年間通して夏冬にも培養可能で、設備稼働率が高くいつでも季節を問わず培養できる。
【符号の説明】
【0082】
1 閉鎖系フォトバイオリアクター(藻類培養装置)
2 循環タンク
3 リアクター
3a 流路入口
3b 流路出口
4 ポンプ
5 ガス溶解管
5a 第1配管
5b 第2配管
6 第1接続管
7 第2接続管
8a 測定槽
8b pH計
8c 溶存酸素濃度計
9 液温計(T1)
10 自動電動弁
11 制御システム
11a タイマー
11b 気温センサー
11c 湿度センサー
11d 日射量センサー
12 散水装置
12a 散水ノズル
21 タンク本体
22 タンク蓋
23 排気管
24 ジャケット
24a 加熱用温水流入口
24b 加熱用温水流出口
25 循環タンクフレーム
26、27、62 ドレン弁
28 止水弁
31 リアクターフレーム
32 ガラス管
61 流量計
【要約】
【課題】管型の閉鎖系フォトバイオリアクター(PBR)のリアクター管が透明のガラス管で構成されていることを利用し、少量の清水による気化熱により簡便に低コストとする培養装置の冷却機構及び冷却方法を提供する。
【解決手段】藻類培養装置の冷却機構は、散水する条件となる環境要因を測定するためのセンサーと、リアクター3の出口に設けられ水温を測定する液温計9と、散水の開始または停止の時刻を設定するタイマー11aと、リアクターに散水する散水ノズル12aを有する散水装置12と、散水装置に清水を供給する弁を開閉可能な自動電動弁10と、センサー、液温計の測定結果及びタイマー時刻が入力され作成されたスケジュールに基づき自動電動弁を開閉制御する制御システム11とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5