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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】工作機械の制御盤
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/12 20060101AFI20230126BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230126BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20230126BHJP
   F25D 1/00 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
B23Q11/12 A
H05K7/20 H
H05K7/20 G
B23Q11/08 Z
F25D1/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018240986
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020099978
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(74)【代理人】
【識別番号】100126077
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 亮平
(72)【発明者】
【氏名】田島 和茂
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 克宏
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-358483(JP,A)
【文献】実開昭60-174404(JP,U)
【文献】特開2013-083414(JP,A)
【文献】特開2000-190163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/08,11/12;
H05K 7/20;
F25D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の制御盤であって、
開閉可能な扉を有し、制御機器が配置された密閉型の内部空間を前記扉が閉じている時に閉塞する筐体と、
一端が閉塞し他端が前記内部空間に向かって開口した溝、及び、前記他端よりも前記一端に近い位置において前記溝と前記内部空間とを繋ぐ通風口を有し、前記筐体の内壁に対して前記溝を向けて固定されたダクト部材と、
前記通風口に配置されたファンと、を備え、
前記ファンは、前記通風口を介して空気を前記溝から前記内部空間に送り出す送り出しファン、及び、前記通風口を介して空気を前記内部空間から前記溝に吸い込む吸い込みファンを含み、
前記ダクト部材は、前記送り出しファンが設けられた送風ダクト部材、及び、前記吸い込みファンが設けられた吸気ダクト部材を含み、
該吸気ダクト部材は、前記送り出しファンと前記吸い込みファンとが対向する位置において前記内壁に固定されており、
前記内壁と前記ダクト部材とで囲まれた前記溝に対して前記ファンの駆動により前記内部空間の空気を通す、工作機械の制御盤。
【請求項2】
前記内壁は、底面部、天井部、及び、前記底面部から前記天井部に繋がる立壁部を含み、
前記ダクト部材は、前記立壁部において前記底面部よりも前記天井部に近い位置と、前記天井部と、の少なくとも一方に固定されている、請求項1に記載の工作機械の制御盤。
【請求項3】
前記ダクト部材は、前記内壁に対して着脱可能である、請求項1又は請求項2に記載の工作機械の制御盤。
【請求項4】
前記制御機器は、駆動対象を駆動するアンプを含み、
前記ファンの上端は、前記アンプの上端よりも上にある、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の工作機械の制御盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のための密閉型の内部空間を有する制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械の制御盤は、内部空間に配置された制御機器の発熱によるオーバーヒートを防ぐ冷却手段を備えている。ここで、工作機械からは、切削油に由来するオイルミスト等が発生する。制御盤の外部に存在する冷えた空気を内部空間に導入するためには、オイルミストを捕捉するフィルターに外気を通す必要がある。しかし、オイルミストがフィルターに付着すると冷却効率が低下するので、頻繁にフィルターを交換する必要がある。また、冷却手段として熱交換器やヒートシンクを用いる場合、熱交換器やヒートシンクが高価であるうえ、制御盤の筐体の外部に熱交換器やヒートシンクが出てしまい、制御盤が大きくなってしまう。そこで、ファンを用いながら制御盤の内部空間に外気を導入しない冷却手段が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された制御盤は、内部に制御機器が実装されたボックス状の制御盤本体、該制御盤本体の天板と協働して制御盤本体の上方全体にボックス状の冷却用空間を形成する冷却空間部材、及び、制御盤本体の側板と協働して垂直風路を形成する側部風路部材を備えている。制御盤本体の天板には、循環用ファンを備えた排出口が開口している。垂直風路は、冷却用空間と吸込口とを連通させている。制御盤本体内の空気は、天板の排出口から制御盤本体上方の冷却用空間に入り、垂直風路を経て吸込口から再び制御盤本体内に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-174275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された制御盤は、制御盤本体の上方全体に冷却用空間を設ける必要があるため、制御盤が鉛直方向において大きくなってしまう。
尚、上述のような問題は、種々の工作機械の制御盤に存在する。
【0006】
本発明は、工作機械の制御盤を小型化させることが可能な技術を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の工作機械の制御盤は、開閉可能な扉を有し、制御機器が配置された密閉型の内部空間を前記扉が閉じている時に閉塞する筐体と、
一端が閉塞し他端が前記内部空間に向かって開口した溝、及び、前記他端よりも前記一端に近い位置において前記溝と前記内部空間とを繋ぐ通風口を有し、前記筐体の内壁に対して前記溝を向けて固定されたダクト部材と、
前記通風口に配置されたファンと、を備え、
前記ファンは、前記通風口を介して空気を前記溝から前記内部空間に送り出す送り出しファン、及び、前記通風口を介して空気を前記内部空間から前記溝に吸い込む吸い込みファンを含み、
前記ダクト部材は、前記送り出しファンが設けられた送風ダクト部材、及び、前記吸い込みファンが設けられた吸気ダクト部材を含み、
該吸気ダクト部材は、前記送り出しファンと前記吸い込みファンとが対向する位置において前記内壁に固定されており、
前記内壁と前記ダクト部材とで囲まれた前記溝に対して前記ファンの駆動により前記内部空間の空気を通す、態様を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工作機械の制御盤を小型化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】工作機械の制御盤の例を扉が開いている状態において模式的に示す図である。
図2】ファンが設けられたダクト部材の例を示す図である。
図3】送り出しファンを通る位置において制御盤の水平断面の例を模式的に示す横断面図である。
図4】制御盤の放熱経路を模式的に示す縦断面図である。
図5】制御盤の別の例を扉が開いている状態において模式的に示す図である。
図6】制御盤の別の例を扉が開いている状態において模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~6に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
【0012】
[態様1]
本技術の一態様に係る工作機械1の制御盤2は、筐体10、ダクト部材100、及び、ファン200を備えている。前記筐体10は、開閉可能な扉14を有し、制御機器30が配置された密閉型の内部空間40を前記扉14が閉じている時に閉塞する。前記ダクト部材100は、一端(例えば閉塞端部121)が閉塞し他端(例えば開口端部122)が前記内部空間40に向かって開口した溝120、及び、前記他端(122)よりも前記一端(121)に近い位置において前記溝120と前記内部空間40とを繋ぐ通風口130を有し、前記筐体10の内壁20に対して前記溝120を向けて固定されている。前記ファン200は、前記通風口130に配置されている。本制御盤2は、前記内壁20と前記ダクト部材100とで囲まれた前記溝120に対して前記ファン200の駆動により前記内部空間40の空気Arを通す。
【0013】
上記態様1では、ダクト部材100の溝120の開口端部122が内部空間40に向かって開口しているので、溝120の向きAX1においてダクト部材100は筐体10の内壁20よりも短くなっている。制御機器30が配置された内部空間40の空気Arは、ダクト部材100の通風口130に配置されたファン200の駆動により、筐体10の内壁20とダクト部材100とで囲まれた溝120を通る。例えば、ファン200が通風口130を介して空気Arをダクト部材100の溝120から内部空間40に送り出す場合、内部空間40の空気Arは、ダクト部材100の溝120に対して筐体10の内壁20に沿って開口端部122から入って通風口130に向かって流れ、通風口130から内部空間40に送り出される。ファン200が通風口130を介して空気Arを内部空間40からダクト部材100の溝120に吸い込む場合、内部空間40の空気Arは、ダクト部材100の溝120に対して通風口130から入って開口端部122に向かって流れ、該開口端部122から筐体10の内壁20に沿って内部空間40に送り出される。
【0014】
筐体10の外壁は比較的低い温度の外気に接しているので、ダクト部材100の溝120を通る比較的高い温度の空気Arの熱エネルギーが筐体10を介して外気へ放出される。また、空気Arが溝120を通ることにより筐体10の内壁20の近くにおいて空気Arの流速が上がるので、熱伝達係数が高くなり、溝120内の空気Arから外気への放熱が促進される。これにより、高価な熱交換器やヒートシンクを利用しなくても、制御盤の内部を冷却することが可能となる。また、溝120の向きAX1においてダクト部材100は筐体10の内壁20よりも短くて済む。従って、本態様は、制御盤2の上方全体に冷却用空間を設けなくても制御盤2から効率的に放熱することができ、工作機械の制御盤を小型化させることができる。
【0015】
ここで、密閉とは、粉塵やオイルミストが通り抜ける隙間が無いように閉じることを意味し、内部空間と外部との間で空気の流通を完全に遮断することに限定されない。また、本技術における密閉型の内部空間は、扉が開くと外部に開放される空間を意味する。従って、密閉型の内部空間とは、扉が閉じている時に外部から粉塵やオイルミストが侵入しない空間を意味し、扉が閉じると外気から完全に遮断される空間に限定されない。
溝が内部空間に向かって開口していることは、筐体の内壁と溝の開口端部との間に内部空間の一部があることを意味する。
通風口が溝の他端よりも溝の一端に近い位置にあることは、溝の他端から通風口までの最短距離よりも溝の一端から通風口までの最短距離の方が短いこととする。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0016】
[態様2]
前記内壁20は、底面部21、天井部22、及び、前記底面部21から前記天井部22に繋がる立壁部23を含んでいてもよい。前記ダクト部材100は、前記立壁部23において前記底面部21よりも前記天井部22に近い位置と、前記天井部22と、の少なくとも一方に固定されてもよい。筐体10の内部空間40において空気Arの温度は下部よりも上部の方が高くなる傾向があるので、ダクト部材100が前述の位置に固定されると、内部空間40において比較的高い温度になり易い上部の空気Arが溝120を通る。従って、本態様は、制御盤2からさらに効率的に放熱することができ、工作機械の制御盤をさらに小型化させることができる。
ここで、ダクト部材が底面部よりも天井部に近い位置にあることは、底面部からダクト部材までの最短距離よりも天井部からダクト部材までの最短距離の方が短いこととする。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0017】
[態様3]
前記ファン200は、前記通風口130を介して空気Arを前記溝120から前記内部空間40に送り出す送り出しファン201、及び、前記通風口130を介して空気Arを前記内部空間40から前記溝120に吸い込む吸い込みファン202を含んでいてもよい。前記ダクト部材100は、前記送り出しファン201が設けられた送風ダクト部材101、及び、前記吸い込みファン202が設けられた吸気ダクト部材102を含んでいてもよい。該吸気ダクト部材102は、前記送り出しファン201と前記吸い込みファン202とが対向する位置において前記内壁20に固定されてもよい。
【0018】
上記態様3では、内部空間40の空気Arは、送り出しファン201により送風ダクト部材101の溝120に対して開口端部122から入って通風口130に向かって流れて通風口130から内部空間40に送り出され、送り出しファン201に対向する吸い込みファン202の方へ流れる。また、内部空間40において吸い込みファン202の方へ流れる空気Arは、吸い込みファン202により吸気ダクト部材102の溝120に対して通風口130から入って開口端部122に向かって流れて該開口端部122から内部空間40に戻る。これにより、筐体10内に空気Arの広い循環流C1が生じ、内部空間40の空気Arの熱エネルギーがより広い範囲で筐体10を介して外気へ放出される。従って、本態様は、制御盤2からさらに効率的に放熱することができ、工作機械の制御盤をさらに小型化させることができる。
【0019】
[態様4]
前記ダクト部材100は、前記内壁20に対して着脱可能でもよい。この態様は、制御盤2に応じてダクト部材100の位置を変えることができるので、制御盤2に応じた効率的な放熱が可能となる。従って、本態様は、工作機械の制御盤をさらに小型化させることができる。
【0020】
[態様5]
前記制御機器30は、駆動対象を駆動するアンプ32を含んでいてもよい。前記ファン200の上端200aは、前記アンプ32の上端32aよりも上にあってもよい。アンプは多くの熱を出すため、下方から空気を吸って上方から排出するアンプが多い。例えば、ファン200が吸い込みファン202である場合、アンプ32から上方へ排出された比較的高い温度の空気がダクト部材100の溝120に吸い込まれ、該溝120を通る比較的高い温度の空気の熱エネルギーが筐体10を介して外気へ放出される。ファン200が送り出しファン201である場合、ダクト部材100の溝120から比較的低い温度の空気がアンプ32の上方に送り出され、アンプ32の上方に比較的高い温度の空気が滞留することが抑制される。従って、本態様は、制御盤2からさらに効率的に放熱することができ、工作機械の制御盤をさらに小型化させることができる。
【0021】
(2)制御盤の構成の具体例:
図1は、例として工作機械1の制御盤2を扉14が開いている状態において示している。図1は、本技術を説明するために簡略化した一例を示しているに過ぎず、本技術を限定するものではない。
【0022】
工作機械1は、ワークを加工する加工部3、及び、この加工部3の動作を制御する制御盤2を有している。工作機械1がNC(数値制御)旋盤である場合、加工部3は、ワークを把持する主軸を設けた主軸台、主軸に把持されたワークを加工する工具を保持した刃物台、主軸台と刃物台を相対移動させる駆動部、主軸に把持されたワークに切削油を供給する切削油供給装置、等を備える。制御盤2は、CPU(Central Processing Unit)や半導体メモリー等を含む回路を有するプリント基板31、加工部3のモーター等の駆動対象を駆動するためのアンプ32、等の制御機器30を有し、ワークの把持、主軸の回転、主軸台や刃物台の移動、切削油の供給、等を制御する。半導体メモリーには、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)が含まれる。制御機器30は、金属製の筐体10の内部空間40に配置されている。外部から供給される電力により動作する制御機器30からは、熱が発生する。特に、アンプ32は、駆動対象を駆動するため、多くの熱が発生する。このため、アンプ32には、下方から空気Arを吸って上方から排出するアンプを使用している。アンプ32は比較的高い温度の空気を上方へ排出するため、アンプ32の上端32aと内壁20の天井部22との間に隙間が設けられている。
制御機器30のオーバーヒートを防ぐため、制御盤2は、ファン200が設けられたダクト部材100を冷却手段として備えている。以下、ファン200が設けられたダクト部材100をファン付きダクト部材100と呼ぶ。
【0023】
図1に示す筐体10は、制御機器30の下にある矩形状の底板11、制御機器30の上にある矩形状の天板12、制御機器30の前において開閉可能な矩形状の扉14、制御機器30の後ろにある矩形状の背板15、制御機器30の左にある矩形状の左側板16、及び、制御機器30の右にある矩形状の右側板17を有している。背板15と側板16,17は、底板11と天板12との間にあり、天板12を支持している。扉14は、蝶番を介して左側板16に取り付けられ、蝶番を中心として前側へ回転して開く動作、及び、後側へ回転して閉じる動作が可能である。扉14が開いている時は内部空間40の前面が開口し、扉14が閉じている時は内部空間40の前面が閉じている。筐体10は、底板11、天板12、扉14、背板15、及び、側板16,17により箱状に形成されている。
【0024】
切削油供給装置を備える加工部3からは、切削油からオイルミストが発生する。制御盤2の外部に存在する冷えた空気を内部空間40に導入すれば内部空間40を冷却することができるものの、粉塵とともにオイルミストを捕捉するフィルターが必要となる。オイルミストがフィルターに付着すると冷却効率が低下するので、頻繁にフィルターを交換する必要がある。また、制御盤の冷却手段として熱交換器やヒートシンクを用いる場合、熱交換器やヒートシンクが高価であるだけでなく、制御盤の筐体の外部に熱交換器やヒートシンクが出てしまい、制御盤が大きくなってしまう。そこで、本具体例の制御盤2は、扉14が閉じると粉塵やオイルミストが通り抜ける隙間が無いような密閉型の内部空間40が形成される構造を有している。むろん、扉14が開いている時には内部空間40が外気に開放され、扉14が閉じると粉塵やオイルミストが通り抜ける隙間が無いように内部空間40が閉塞される。
【0025】
尚、筐体の構造は、図1に示す筐体10の構造に限定されない。例えば、制御機器30の前には、扉14の代わりに、開閉可能な扉を有する前板が配置されてもよい。
【0026】
密閉型の内部空間40を冷却するため、筐体10の内壁20には、ファン付きダクト部材100が固定されている。ここで、内壁20の内、底板11の内壁を底面部21と呼び、天板12の内壁を天井部22と呼び、扉14と背板15と側板16,17の内壁を立壁部23と呼ぶことにする。立壁部23は、底面部21から天井部22に繋がっている。図1に示すダクト部材100は、左側板16において立壁部23に固定された送風ダクト部材101、及び、右側板17において立壁部23に固定された吸気ダクト部材102を含んでいる。送風ダクト部材101には送り出しファン201が設けられ、吸気ダクト部材102には吸い込みファン202が設けられている。各ダクト部材101,102は、立壁部23において底面部21よりも天井部22に近い位置にある。
【0027】
図2は、ファン付きダクト部材100の外観を例示している。尚、送風ダクト部材101と吸気ダクト部材102の形状は同じであり、送り出しファン201と吸い込みファン202の形状は同じである。そこで、図2では、両ダクト部材101,102を総称してダクト部材100と示し、両ファン201,202を総称してファン200と示している。図3は、図1に示す送り出しファン201の位置において制御盤2の水平断面を模式的に例示している。
ダクト部材100は、内部空間40の空気Arが流れる溝120、及び、ファン200が配置される通風口130を有している。
【0028】
ダクト部材100の溝120は、筐体10の内壁20に対向する対向部111、及び、この対向部111を挟む位置にある側部112,113により形成されている。ダクト部材100は、さらに、溝120の一端において対向部111及び側部112,113に繋がっている閉塞部114、及び、複数の取付部115を有している。溝120の一端は閉塞部114により閉塞し、溝120の他端は内部空間40に向かって開口している。ここで、溝120の閉塞した一端を閉塞端部121と呼び、溝120の開口した他端を開口端部122と呼ぶことにする。溝120が内部空間40に向かって開口していることは、開口端部122が対向する内壁20、例えば、図1に示す底面部21から離れていることを意味する。従って、内部空間40の一部が開口端部122と内壁20との間にある。図2に示す4箇所の取付部115は、閉塞端部121近傍にある2箇所の取付部、及び、開口端部122近傍にある2箇所の取付部を含んでいる。閉塞端部121近傍の2箇所の取付部115は、側部112から扉14又は背板15に向かう方向へ延出した取付部、及び、側部113から溝120とは反対方向へ延出した取付部を含んでいる。開口端部122近傍の2箇所の取付部115は、側部112から溝120の方へ折れ曲がって底板11に向かう方向へ延出した取付部、及び、側部113から溝120の方へ折れ曲がって底板11に向かう方向へ延出した取付部を含んでいる。
【0029】
ダクト部材100の通風口130は、溝120の閉塞端部121の近傍において対向部111に形成されている。すなわち、通風口130は、開口端部122よりも閉塞端部121に近い位置にある。通風口130は、溝120と内部空間40とを繋いでいる。
【0030】
ダクト部材100は、筐体10の内壁20に対して溝120を向けて固定されている。内壁20とダクト部材100とで囲まれた溝120は、内部空間40の空気Arの通り道となる。内壁20に対するダクト部材100の固定には、例えば、ねじSC1(ボルトを含む。)を用いることができる。ボルトを用いる場合、例えば、各取付部115と筐体10とにボルトを通す貫通穴を形成しておき、各取付部115の貫通穴を筐体10の貫通穴に合わせてボルトを通してナットに螺合させると、内壁20に対してダクト部材100を取り外し可能に取り付けることができる。また、各取付部115にねじSC1と螺合するねじ穴を形成しておくと、例えば、筐体10の各貫通穴に通したねじSC1を各取付部115に螺合させることにより、内壁20に対してダクト部材100を取り外し可能に取り付けることができる。むろん、ねじSC1を取り付ける向きは、図2で示した向きに限定されず、図2で示した向きとは反対の向きでもよい。
図1に示すダクト部材100は、閉塞部114が天井部22から離隔している状態で立壁部23の上部に固定されている。
【0031】
尚、ダクト部材100は、金属製でもよいし、樹脂製等でもよい。ダクト部材100が金属製である場合、内壁20に対して各取付部115を溶接することによりダクト部材100を固定してもよい。また、内壁20に対するダクト部材100の固定は、ねじや溶接に限定されず、高耐熱の両面テープを用いた固定等でもよい。
【0032】
ダクト部材100には、通風口130を覆うようにファン200が取り付けられている。ファン200は、通電されることにより駆動する。ファン200が駆動されると、内壁20とダクト部材100とで囲まれた溝120に対して内部空間40の空気Arが溝120の向きAX1に沿って通過する。ファン200の通風の向きAX2は、溝120の向きAX1と直交している。これにより、筐体10内の隅などデッドスペースにファン付きダクト部材100を配置しても空気Arが円滑に流れる。尚、ファン200の通風の向きAX2は、溝120の向きAX1と交差していれば、溝120の向きAX1と直交していなくてもよい。
【0033】
ファン200が図1,3に示す送り出しファン201である場合、送り出しファン201によりダクト部材100は通風口130を介して空気Arが溝120から筐体10の内部空間40に送り出される送風ダクト部材101となる。この場合、内部空間40の空気Arは、送風ダクト部材101の溝120に対して開口端部122から入って溝120の向きAX1に沿って通風口130へ流れ、通風口130から送り出しファン201の通風の向きAX2に変わって内部空間40に送り出される。
【0034】
ファン200が図1に示す吸い込みファン202である場合、ダクト部材100は吸い込みファン202により通風口130を介して空気Arを筐体10の内部空間40から溝120に吸い込む吸気ダクト部材102となる。この場合、内部空間40の空気Arは、吸気ダクト部材102の溝120に対して通風口130から通風の向きAX2に流入して溝120の向きAX1に変わって開口端部122へ流れ、開口端部122から溝120の向きAX1に送り出されて内部空間40に戻る。図1に示すように送り出しファン201と吸い込みファン202とが対向する位置にある場合、送り出しファン201から空気Arが吸い込みファン202の方へ送り出される。
【0035】
筐体10の外壁は、比較的低い温度の外気に接している。ダクト部材100が送風ダクト部材101であっても吸気ダクト部材102であっても、溝120を通る比較的高い温度の空気Arの熱エネルギーは、筐体10を介して外気へ放出される。また、空気Arが溝120を通ることにより筐体10の内壁20の近くにおいて空気Arの流速が上がるので、熱伝達係数が高くなり、溝120内の空気Arから外気への放熱が促進される。
【0036】
また、図1に示すようにファン200の上端200aがアンプ32の上端32aよりも上にある(つまり、ファン200の上端200aがアンプ32の上端32aよりも天井板22に近い位置にある)と、アンプ32から上方へ排出される比較的高い温度の空気が滞留することが抑制される。ファン200が吸い込みファン202である場合、アンプ32から上方へ排出された比較的高い温度の空気がダクト部材100の溝120に吸い込まれ、該溝120を通る比較的高い温度の空気の熱エネルギーが筐体10を介して外気へ放出される。従って、アンプ32の上端32aよりも上に上端200aがあるファン200は、吸い込みファン202が好ましい。ただ、ファン200が送り出しファン201であっても、ダクト部材100の溝120から比較的低い温度の空気がアンプ32の上方に送り出され、アンプ32の上方に比較的高い温度の空気が滞留することが抑制される。
【0037】
さらに、アンプ32が背板15に固定される場合、側板16,17に固定されるダクト部材100のファン200の位置は、扉14よりも背板15に近い位置が好ましい。この位置にファン200があると、アンプ32から上方へ排出される比較的高い温度の空気が滞留することがさらに抑制される。
【0038】
放熱を促進させるため、溝120の深さL1を溝120の幅L2よりも浅くして溝120の空気Arを内壁20に近付ける方が好ましい。図2に示す溝120において、深さL1は対向部111に直交する方向における溝120の長さに相当し、幅L2は側部112,113間の距離に相当する。制御盤2の発熱状態に応じて、L1<L2/2、さらにL1<L2/3、等となるようにダクト部材100を形成してもよい。また、溝120の深さL1はファン200の直径Dよりも浅い方が好ましく、溝120の幅L2はファン200の直径Dよりも広い方が好ましい。
また、溝120の空気Arの流れを内壁20の近くに保つため、溝120の長さL3は溝120の幅L2よりも長い方が好ましい。図2に示す溝120において、長さL3は向きAX1における対向部111の長さに相当する。制御盤2の発熱状態に応じて、L3>2×L2、さらにL3>3×L2、等となるようにダクト部材100を形成してもよい。溝120の長さL3は、図1に示すように、溝120の向きにおける立壁部23の長さよりも短い。
【0039】
(3)上述した具体例の作用及び効果:
次に、図1~4を参照して、上述した具体例の作用及び効果を説明する。図4は、制御盤2の放熱経路を模式的に示している。
【0040】
送風ダクト部材101の近傍において、筐体10の内部空間40の空気Arは、送り出しファン201により送風ダクト部材101の溝120に対して開口端部122から入る。開口端部122から入った空気Arは、溝120の向きAX1に沿って通風口130へ流れる。筐体10の外壁は内部空間40よりも低い温度の外気に接しているので、図4に放熱の向きH1を示したように、溝120を通る空気Arの熱エネルギーが筐体10を介して外気へ放出される。ここで、内部空間40の空気Arは上部ほど温度が上昇し易いので、送風ダクト部材101が立壁部23の上部に固定されていることにより、より高い温度の空気Arが送風ダクト部材101の溝120を通って溝120内の空気Arの熱エネルギーが効率的に外気へ放出される。また、溝120を通る空気Arの流れが速いので、溝120内の空気Arから外気へ速やかに放熱される。
【0041】
通風口130に流れた空気Arは、通風口130から送り出しファン201の通風の向きAX2に変わって内部空間40に戻る。内部空間40に戻った空気Arは、天井部22に沿って吸い込みファン202の方へ流れる。この間、図4に放熱の向きH1を示したように、空気Arの熱エネルギーが天板12を介して外気へ放出される。内部空間40の空気Arは上部ほど温度が上昇し易いので、内部空間40の上部を流れる空気Arの熱エネルギーが効率的に外気へ放出される。吸い込みファン202に近付いた空気Arは、吸気ダクト部材102の溝120に対して通風口130から通風の向きAX2に流入し、溝120の向きAX1に変わって開口端部122へ流れる。溝120の向きAX1に沿って溝120内を流れる空気Arの熱エネルギーは、図4に放熱の向きH1を示したように、右側板17を介して外気へ放出される。吸気ダクト部材102が立壁部23の上部に固定されていることにより、より高い温度の空気Arが吸気ダクト部材102の溝120を通って溝120内の空気Arの熱エネルギーが効率的に外気へ放出される。また、溝120を通る空気Arの流れが速いので、溝120内の空気Arから外気へ速やかに放熱される。
【0042】
吸気ダクト部材102の開口端部122から内部空間40に戻った空気Arは、右側板17の立壁部23に沿って下方へ流れる。この間、空気Arの熱エネルギーが右側板17を介して外気へ放出される。図1に示すように、右側板17の立壁部23に沿って下方へ流れる空気Arは、やがて向きを変え、吸気ダクト部材102の近傍に近付くと送り出しファン201により送風ダクト部材101の溝120に対して開口端部122から入る。
【0043】
以上により、筐体10内に空気Arの広い循環流C1が生じ、内部空間40の空気Arの熱エネルギーが広い範囲で筐体10を介して外気へ放出される。むろん、内部空間40は、密閉型であるので、粉塵やオイルミストの侵入が抑制されている。また、溝120の向きAX1においてダクト部材100は立壁部23よりも短くて済む。従って、本具体例は、高価な熱交換器やヒートシンクが不要であり、制御盤2の上方全体に冷却用空間を設けなくても制御盤2から効率的に放熱することができ、工作機械の制御盤を小型化させることができる。
さらに、ダクト部材100が内壁20に対して着脱可能である場合、制御盤2に応じてダクト部材100の位置を変えることができるので、制御盤2に応じた効率的な放熱が可能となる。従って、工作機械の制御盤をさらに小型化させることが可能となる。
【0044】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、筐体10の内壁20に固定するファン付きダクト部材100は、送り出しファン201が設けられた送風ダクト部材101だけでもよいし、吸い込みファン202が設けられた吸気ダクト部材102だけでもよい。また、内壁20に固定するファン付きダクト部材の数は、2個に限定されず、1個でもよいし、3個以上でもよい。
上述した実施形態では閉塞部114が天井部22から離隔している状態でダクト部材100が立壁部23に固定されていたが、閉塞部114が天井部22に接触している状態でダクト部材100が立壁部23に固定されてもよい。
内壁20にファン付きダクト部材100を固定する位置は、側板16,17の立壁部23に限定されず、背板15の立壁部23でもよいし、天井部22でもよいし、底面部21でもよい。
【0045】
図5に例示するように、内壁20に複数の吸気ダクト部材102を固定しても、筐体10内に空気Arの循環流C2を発生させることができる。図5は、制御盤2の別の例を扉14が開いている状態において模式的に示している。分かり易く示すため、制御機器30を点線により示している。図5に示す制御盤2は、図1で示した制御盤2と比べて、左側板16の立壁部23に固定されたファン付きダクト部材100が変わっている。図5に示す左側板16の立壁部23の上部には、吸い込みファン202が設けられた吸気ダクト部材102が固定されている。
【0046】
左側板16に固定された吸気ダクト部材102に設けられた吸い込みファン202の近傍において、内部空間40の空気Arは、吸気ダクト部材102の溝120に対して通風口130から入って開口端部122に向かう。この時、溝120内を流れる空気Arの熱エネルギーは、左側板17を介して外気へ放出される。吸気ダクト部材102の開口端部122から内部空間40に戻った空気Arは、左側板16の立壁部23に沿って下方へ流れ、やがて向きを変えて上昇する。右側板17に固定された吸気ダクト部材102に設けられた吸い込みファン202の近傍において、内部空間40の空気Arは、吸気ダクト部材102の溝120に対して通風口130から入って開口端部122に向かう。吸気ダクト部材102の開口端部122から内部空間40に戻った空気Arは、右側板17の立壁部23に沿って下方へ流れ、やがて向きを変えて上昇する。
【0047】
以上により、筐体10内に空気Arの循環流C2が生じ、内部空間40の空気Arの熱エネルギーが広い範囲で筐体10を介して外気へ放出される。従って、図5に示す制御盤2も、上方全体の冷却用空間無しに制御盤2から効率的に放熱することができ、小型化可能である。
【0048】
図6に例示するように、天井部22に吸気ダクト部材102を固定し、背板15の立壁部23の上部に吸気ダクト部材102を固定しても、筐体10内に空気Arの循環流C3を発生させることができる。図6は、制御盤2の別の例を扉14が開いている状態において模式的に示している。分かり易く示すため、制御機器30を点線により示している。天井部22に固定された吸気ダクト部材102は、左側板16の近傍に閉塞端部121と吸い込みファン202があり、開口端部122が右側板17の立壁部23に対向している。背板15の立壁部23に固定された吸気ダクト部材102は、天井部22の近傍に閉塞端部121と吸い込みファン202があり、開口端部122が底面部21に対向している。
【0049】
天井部22に固定された吸気ダクト部材102に設けられた吸い込みファン202の近傍において、内部空間40の空気Arは、吸い込みファン202により吸気ダクト部材102の溝120に対して通風口130から入って開口端部122に向かう。溝120内を流れる空気Arの熱エネルギーは、天板12を介して外気へ放出される。ここで、内部空間40の空気Arは上部ほど温度が上昇し易いので、吸気ダクト部材102が天井部22に固定されていることにより、より高い温度の空気Arが溝120を通ることとなる。その結果、熱エネルギーが効率的に外気へ放出される。吸気ダクト部材102の開口端部122から内部空間40に戻った空気Arは、天板12に沿って右方へ流れる。この間、空気Arの熱エネルギーが天板12を介して外気へ放出される。
【0050】
背板15の立壁部23に固定された吸気ダクト部材102に設けられた吸い込みファン202に向かう空気Arは、吸い込みファン202により吸気ダクト部材102の溝120に対して通風口130から入って開口端部122に向かう。溝120内を流れる空気Arの熱エネルギーは、背板15を介して外気へ放出される。ここでも、内部空間40の空気Arは上部ほど温度が上昇し易いので、吸気ダクト部材102が立壁部23の上部に固定されていることにより、より高い温度の空気Arが溝120を通ることとなる。その結果、熱エネルギーが効率的に外気へ放出される。吸気ダクト部材102の開口端部122から内部空間40に戻った空気Arは、右側板17の立壁部23の近傍において背板15の立壁部23に沿って下方へ流れる。この間、空気Arの熱エネルギーが背板15を介して外気へ放出される。背板15の立壁部23に沿って下方へ流れる空気Arは、やがて向きを変え、天井部22に固定された吸気ダクト部材102に設けられた吸い込みファン202の近傍に近付くと吸気ダクト部材102の溝120に対して通風口130から入る。
【0051】
以上により、筐体10内に空気Arの広い循環流C3が生じ、内部空間40の空気Arの熱エネルギーが広い範囲で筐体10を介して外気へ放出される。従って、図6に示す制御盤2も、上方全体の冷却用空間無しに制御盤2から効率的に放熱することができ、小型化可能である。
【0052】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、工作機械の制御盤を小型化させる技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…工作機械、2…制御盤、3…加工部、
10…筐体、11…底板、12…天板、14…扉、15…背板、16,17…側板、
20…内壁、21…底面部、22…天井部、23…立壁部、
30…制御機器、32…アンプ、32a…上端、40…内部空間、
100…ダクト部材、101…送風ダクト部材、102…吸気ダクト部材、
111…対向部、112,113…側部、114…閉塞部、115…取付部、
120…溝、121…閉塞端部、122…開口端部、
130…通風口、
200…ファン、200a…上端、201…送り出しファン、202…吸い込みファン、
Ar…空気、AX1…溝の向き、AX2…通風の向き、C1~C3…循環流、
H1…放熱の向き。
図1
図2
図3
図4
図5
図6