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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】端子、および端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/50 20060101AFI20230126BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
H01R4/50 Z
H01R4/18 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019155827
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021034307
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】田端 正明
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159730(WO,A1)
【文献】実開平03-121661(JP,U)
【文献】実開昭48-017681(JP,U)
【文献】米国特許第04692122(US,A)
【文献】国際公開第2019/159746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/50
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の延び方向の前方端部に接続される端子であって、
前記電線を挟持する挟持部を有する端子本体と、
前記電線の延び方向に沿って前記端子本体に対してスライド可能なスライド部と、を備え、
前記スライド部は前記挟持部を前記電線に向けて加圧する加圧部を有し、
前記端子本体は折れ曲がった状態の金属板材により形成されており、
前記挟持部は前記電線に向かって突出し前記電線に接触する保持突部を有し、
前記保持突部は前記挟持部の先端部を折り返して、前記挟持部の重なり部に前記先端部が重なって形成されており、
前記重なり部の第1対向面と前記先端部の第2対向面とが対向して重なっており、
前記第1対向面には前記電線の延び方向に対して垂直方向に延びる第1嵌合部が設けられ、前記第2対向面には前記電線の延び方向に対して垂直方向に延びる第2嵌合部が設けられ、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが凹凸嵌合し、
前記加圧部は、平行に並んで配置され、前後方向に延びる上側加圧部および下側加圧部を備えて構成され、
前記先端部の前端に形成されたエッジは、前記上側加圧部と前記下側加圧部の間に位置している端子。
【請求項2】
前記挟持部の前記先端部は、前記第2対向面と反対側の面に、前記電線に接触する接触面を有し、
前記接触面には凹部が形成されており、
前記先端部のうち前記凹部に対応する部分は前記第2対向面から突出する前記第2嵌合部が形成されている請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記挟持部の前記先端部は、前記第2対向面と反対側の面に、前記電線に接触する接触面を有し、
前記先端部には、前記接触面と前記第2対向面とを貫通する貫通孔が設けられており、
前記貫通孔における前記第2対向面側の開口は前記第2嵌合部とされ、
前記第1嵌合部は、前記第2嵌合部に対応する位置に、前記第1対向面から前記第2嵌合部に向けて突出する形状をなしている請求項1に記載の端子。
【請求項4】
前記第1嵌合部および前記第2嵌合部は、前記電線の延び方向に間隔をあけて複数設けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の端子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の端子と、
前記端子に接続される電線と、を備えた端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子、および端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線の端末から露出する芯線に端子が接続された端子付き電線が知られている。このような端子として、例えば、電線の端末から露出する芯線に外側から圧着する圧着部を備えるものがある。
【0003】
上記の端子を電線に圧着するには、例えば以下のようにする。まず、金属板材をプレス加工することにより所定の形状の端子を成形する。続いて、上下方向に相対移動可能な一対の金型のうち下側に位置する下型の載置部に、端子を載置する。続いて、電線の端末から露出された芯線を、端子の圧着部に重ねて載置する。その後、一対の金型の一方又は双方を互いに接近する方向に移動させ、上型の圧着部と、下型の載置部との間で圧着部を挟み付けることにより、圧着部を電線の芯線に圧着する。以上により、電線の端末に端子が接続される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-50736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の技術によれば、電線の芯線に端子の圧着部を圧着するための金型や治具等、比較的に大規模な設備が必要なので、設備投資が必要となり、製造コストが上昇するという問題がある。
上記の問題を解決するために、以下の端子が考えられる。端子は、電線の延び方向と交差する方向に沿って変形可能な挟持部を備えた端子本体と、電線の延び方向に沿って端子本体に対して移動可能なスライド部と、を備える。スライド部は、電線が挟持部に配された状態で、挟持部を前記電線に押圧する加圧部を有する。
【0006】
このような端子における端子本体の挟持部には、仮想的な技術として、挟持部の側縁から突出した部分が挟持部に折り重ねられることにより形成された保持突部を設けることが考えられる。保持突部は挟持部から電線に向けて突出している。電線は保持突部によって押さえられ、挟持部に保持される。
【0007】
例えば、電線が引っ張られることによって保持突部が電線と摺動し、保持突部が電線の延び方向の後方に力を受けると、折り重ねられた保持突部がめくれるおそれがあり、この場合、端子と電線との電気的な接続信頼性が低下することが懸念される。
【0008】
本明細書に開示された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子と電線との接続信頼性を向上する端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、電線の延び方向の前方端部に接続される端子であって、前記電線を挟持する挟持部を有する端子本体と、前記電線の延び方向に沿って前記端子本体に対してスライド可能なスライド部と、を備え、前記スライド部は前記挟持部を前記電線に向けて加圧する加圧部を有し、前記端子本体は折れ曲がった状態の金属板材により形成されており、前記挟持部は前記電線に向かって突出し前記電線に接触する保持突部を有し、前記保持突部は前記挟持部の先端部を折り返して、前記挟持部の重なり部に前記先端部が重なって形成されており、前記重なり部の第1対向面と前記先端部の第2対向面とが対向して重なっており、前記第1対向面に設けられた第1嵌合部と、前記第2対向面に設けられた第2嵌合部とが凹凸嵌合する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、端子と電線との接続信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1にかかる端子付き電線を示す側面図である。
図2図2は、端子付き電線を示す側断面図である。
図3図3は、端子本体を示す斜視図である。
図4図4は、端子本体を示す斜視図である。
図5図5は、端子本体に対して仮係止位置に配されたスライド部を治具で前方に押す工程を示す側面図である。
図6図6は、端子本体における第1嵌合部と第2嵌合部とが凹凸嵌合される前の状態を説明する図である。
図7図7は、端子本体における第1嵌合部と第2嵌合部とが凹凸嵌合された後の状態を説明する図である。
図8図8は、実施形態2にかかる端子本体における、第1嵌合部と第2嵌合部とが凹凸嵌合される前の状態を説明する図である。
図9図9は、端子本体における第1嵌合部と第2嵌合部とが凹凸嵌合された後の状態を説明する図である。
図10図10は、実施形態3にかかる端子本体における、第1嵌合部と第2嵌合部とが凹凸嵌合される前の状態を説明する図である。
図11図11は、端子本体における第1嵌合部と第2嵌合部とが凹凸嵌合された後の状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0013】
(1)本開示は、電線の延び方向の前方端部に接続される端子であって、前記電線を挟持する挟持部を有する端子本体と、前記電線の延び方向に沿って前記端子本体に対してスライド可能なスライド部と、を備え、前記スライド部は前記挟持部を前記電線に向けて加圧する加圧部を有し、前記端子本体は折れ曲がった状態の金属板材により形成されており、前記挟持部は前記電線に向かって突出し前記電線に接触する保持突部を有し、前記保持突部は前記挟持部の先端部を折り返して、前記挟持部の重なり部に前記先端部が重なって形成されており、前記重なり部の第1対向面と前記先端部の第2対向面とが対向して重なっており、前記第1対向面に設けられた第1嵌合部と、前記第2対向面に設けられた第2嵌合部とが凹凸嵌合する。
【0014】
上記構成とすることで、保持突部が、例えば電線が引っ張られた際に保持突部が電線と摺動し、電線の延び方向に変位しようとしても、保持突部の第2嵌合部と挟持部の第1嵌合部とが凹凸嵌合することにより、折り重ねて形成された保持突部がめくれることを抑制できる。これにより、端子と電線との接続信頼性を向上できる。
【0015】
(2)前記挟持部の前記先端部は、前記第2対向面と反対側の面に、前記電線に接触する接触面を有し、前記接触面には凹部が形成されており、前記先端部のうち前記凹部に対応する部分は前記第2対向面から突出する前記第2嵌合部が形成されていることが好ましい。
【0016】
接触面に凹部を形成することにより、凹部はセレーションの機能を果たすこととなる。すなわち、凹部の開口縁と電線の芯線との接触部分に圧力が集中され、芯線の表面に形成された酸化被膜を容易に破壊できる。これにより、電線と保持突部との電気的な接続信頼性が向上する。この凹部を形成する際に、第2対向面から突出する構造が形成される場合がある。この突出構造を第2嵌合部とすることで、効率的に第2嵌合部を形成できる。これにより、端子のコスト低減に寄与できる。
【0017】
(3)前記挟持部の前記先端部は、前記第2対向面と反対側の面に、前記電線に接触する接触面を有し、前記先端部には、前記接触面と前記第2対向面とを貫通する貫通孔が設けられており、前記貫通孔における前記第2対向面側の開口は前記第2嵌合部とされ、前記第1嵌合部は、前記第2嵌合部に対応する位置に、前記第1対向面から前記第2嵌合部に向けて突出する形状をなしていることが好ましい。
【0018】
貫通孔の接触面側の開口は、セレーションの機能を果たすこととなり、電線と保持突部との電気的な接続信頼性を向上できる。また、貫通孔における第2対向面側の開口を第2嵌合部とすることで、効率的に第2嵌合部を形成できる。これにより、端子のコスト低減に寄与できる。
【0019】
(4)前記第1嵌合部および前記第2嵌合部は、前記電線の延び方向に間隔をあけて複数設けられていることが好ましい。
【0020】
第1嵌合部および第2嵌合部を電線の延び方向に複数設けることで、第2嵌合部の第1嵌合部への係止をより強固なものにできる。
【0021】
(5)本開示にかかる端子付き電線は、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の端子と、前記端子に接続される電線と、を備える。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0023】
<実施形態1>
本開示の実施形態1が図1から図7を参照しつつ説明される。実施形態1にかかる端子付き電線10は、電線11と、電線11に接続される端子12とを備える。以下の説明では、矢線Zの示す向きを上下方向における上方とし、矢線Yの示す向きを前後方向における前方とし、矢線Xの示す向きを左右方向における左方として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0024】
[電線11]
図1に示されるように、電線11は、前後方向(延び方向の一例)に延びて配されている。電線11は、芯線13の外周を絶縁性の合成樹脂からなる絶縁被覆14で包囲されている。実施形態1にかかる芯線13は、1本の金属線からなる。なお、芯線13は複数の金属細線が撚り合わされてなる撚線であってもよい。芯線13を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。実施形態1にかかる芯線13は銅、または銅合金からなる。
【0025】
[端子12]
図1に示されるように、端子12は、金属製の端子本体15と、端子本体15に対して相対的にスライド移動可能なスライド部16と、を備える。
【0026】
[端子本体15]
端子本体15は、金属板材を所定の形状にプレス加工することにより形成される。端子本体15を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。実施形態1にかかる端子本体15は、銅、又は銅合金からなる。端子本体15の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。実施形態1にかかる端子本体15にはスズめっきが施されている。
【0027】
図2に示されるように、端子本体15は、図示しない相手方端子が挿入可能な筒部17と、筒部17の後方に位置して電線11の前方端部と接続される電線接続部20を有する。電線接続部20は後方に延出された上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bを備える。
【0028】
図2に示されるように、筒部17は前後方向に延びる角筒状をなしている。筒部17の前端は相手方端子が挿入可能に開口されている。筒部17の内部には、図示しない弾性接触片が配されている。筒部17内に挿入された相手方端子に、弾性接触片に弾性的に接触することにより、筒部17と相手方端子とが電気的に接続される。
【0029】
[上側挟持部18A、下側挟持部18B]
図3に示されるように、筒部17の後方には角筒状をなす電線接続部20が設けられている。電線接続部20の上壁の後端部には上側挟持部18A(挟持部の一例)が後方に延びて設けられており、電線接続部20の下壁の後端部には下側挟持部18B(挟持部の一例)が後方に延びて設けられている。上側挟持部18Aと下側挟持部18Bは前後に延びた細長い形状をなしている。上側挟持部18Aと下側挟持部18Bの前後方向の長さ寸法は略同じに形成されている。電線接続部20には、上側挟持部18Aの左側縁30および下側挟持部18Bの左側縁32の前方に左側壁34が形成されており、また、上側挟持部18Aの右側縁31および下側挟持部18Bの右側縁33の前方に右側壁35が形成されている。
【0030】
[上側保持突部23A]
図3に示されるように、上側挟持部18Aの下面には、後端部よりも前方の位置に、下方に突出する上側保持突部23Aが設けられている。上側保持突部23Aは、上側挟持部18Aの左側縁30から突出した部分が上側挟持部18Aの下面に密着して折り重ねられた状態で形成されている。上側保持凸部23Aの右端部は、上側挟持部18Aの右側縁31から右方に突出しないように形成されている。図2に示すように、上側保持突部23Aの下面は、電線11の芯線13に接触する上側接触面68とされる。
【0031】
[下側保持突部23B]
図3に示されるように、下側挟持部18Bの上面の後端部には、上方に突出する下側保持突部23Bが設けられている。図6図7に示されるように、下側保持突部23Bは、下側挟持部18Bの後端部から後方に突出した先端部18B2が折り返され、下側挟持部18Bの重なり部18B1に密着するように重ねられることで形成されている。重なり部18B1の上面である第1対向面60と、先端部18B2(すなわち、下側保持突部23B)の下面である第2対向面61とが対向して重なっている。下側挟持部18Bのうち下側保持突部23Bが設けられた領域は、下側保持突部23Bによって補強されることにより撓みにくくなっている。下側保持突部23Bの上面は、電線11の芯線13に接触する下側接触面(接触面)64とされる。
【0032】
[凹部66]
下側保持突部23Bの下側接触面64には、2つの凹部66が形成されている。凹部66は、下側保持突部23Bにおける下側接触面64から凹んだ形状をなしている。2つの凹部66は、前後方向に間隔を開けて配されている。
【0033】
図2に示されるように、下側保持突部23Bと、上側保持突部23Aとは、前後方向についてずれた位置に設けられている。上側保持突部23Aの後端部と、下側保持突部23Bの前端部とは、前後方向についてやや離れて形成されている。上側保持突部23Aの後端部と、下側保持突部23Bの前端部との間隔は、芯線13の直径よりも小さく設定されている。これにより、上側保持突部23Aの後端部に形成されたエッジ50Aと、下側保持突部23Bの前端部に形成されたエッジ50Bとが、芯線13に食い込むようになっている。
【0034】
上側挟持部18Aの下面、および下側挟持部18Bの上面が、芯線13の表面に形成された酸化被膜に食い込んで酸化被膜を剥がすことにより、芯線13の金属表面を露出させるようになっている。この金属表面と、上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bとが接触することにより、芯線13と端子本体15とが電気的に接続される。
【0035】
また、上側保持突部23Aの上側接触面68、および下側保持突部23Bの下側接触面64が、芯線13の表面に形成された酸化被膜に食い込んで酸化被膜を剥がすことにより、芯線13の金属表面を露出させるようになっている。このとき、下側接触面64側に形成された凹部66は、凹部66の開口縁と芯線13との接触部分に圧力を集中させるセレーションの機能を有する。これにより、芯線13の表面に形成された酸化被膜を容易に破壊できる。この金属表面と、上側保持突部23Aおよび下側保持突部23Bとが接触することにより、芯線13と端子本体15とが電気的に接続される。
【0036】
更に、上側保持突部23Aの後端部に形成されたエッジ50Aと、下側保持突部23Bの前端部に形成されたエッジ50Bとが、芯線13に食い込むことにより、芯線13の表面に形成された酸化被膜が剥がされる。これにより、芯線13と端子本体15との電気的な接続がより確実になされる。
【0037】
[左易屈曲部51、右易屈曲部52]
下側挟持部18Bの前端部には、下側挟持部18Bの左側縁32から右方に切り欠かれた左易屈曲部51が設けられており(図3参照)、下側挟持部18Bの右側縁33から左方に切り欠かれた右易屈曲部52が設けられている(図4参照)。左易屈曲部51と、右易屈曲部52とは、前後方向について同じ位置に設けられている。下側挟持部18Bのうち、左易屈曲部51と右易屈曲部52が設けられた部分は、他の部分と比べて、左右方向について幅狭に形成されている。これにより、下側挟持部18Bは、左易屈曲部51および右易屈強部を起点として屈曲するようになっている。
【0038】
[第1嵌合部62、第2嵌合部63]
図7に示されるように、第1対向面60には、2つの第1嵌合部62が設けられている。2つの第1嵌合部62は、前後方向に間隔を開けて配されている。第2対向面61には、2つの第2嵌合部63が設けられている。第2嵌合部63は、前後方向に間隔を開けて配されている。第1嵌合部62には、第2嵌合部63が嵌合される。
【0039】
図7に示されるように、第2嵌合部63は、第2対向面61から下方に突出する形状をなしている。第2嵌合部63は、凹部66の形成にともなって副次的に形成される。すなわち、凹部66は、下側保持突部23Bの一部が、下側接触面64側から下方に押し出されることにより形成される。凹部66の形成にともない、下側保持突部23Bの一部が、第2対向面61側から下方に押し出される。これにより、2つの第2嵌合部63が形成される。このため、各第2嵌合部63は、各凹部66と上下方向において対応した位置に形成されている。このように、凹部66の形成にともなって副次的に形成された部分を第2嵌合部63とすることで、新たに第2嵌合部を形成する場合と比較して、効率的に第2嵌合部63を形成できる。
【0040】
図6図7に示されるように、第1嵌合部62は、第1対向面60における第2嵌合部63に対応する位置に開口形成されている。第1嵌合部62は、下側挟持部18Bの第1対向面60から凹んだ形状をなしている。下側保持突部23Bが下側挟持部18Bの上面に折り重ねられるときに、下側保持突部23Bの第2嵌合部63は、下側挟持部18Bの第1嵌合部62に挿入される。これにより、第1嵌合部62と第2嵌合部63とは凹凸嵌合され、下側保持突部23Bは下側挟持部18Bに係止される。これにより、下側保持突部23Bが、例えば電線11が後方に引っ張られた際に下側保持突部23Bの下側接触面64が電線11の芯線13と摺動し、電線11の後方に変位しようとしても、折り重ねて形成された下側保持突部23Bがめくれることを抑制できる。
【0041】
[スライド部16]
図2に示されるように、スライド部16は、前後方向に延びる角筒状をなしている。スライド部16は、プレス加工、切削加工、鋳造等、公知の手法により所定の形状に形成される。スライド部16を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。実施形態1にかかるスライド部16は、特に限定されないが、ステンレス鋼からなる。スライド部16の表面にはめっき層が形成されていてもよい。めっき層を構成する金属は、スズ、ニッケル、銀等必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。
【0042】
図2に示されるように、スライド部16の上壁の前端部には、上方に突出する治具接触部46が形成されている。治具接触部46には後述する治具45が後方から接触するようになっている(図5参照)。
【0043】
図2に示されるように、スライド部16の後半部分には、スライド部16の上壁の下面に、下方に突出する上側加圧部25Aが設けられている。スライド部16の下壁の上面には、上方に突出する下側加圧部25Bが設けられている。上側加圧部25Aの前面および下側加圧部25Bの前面には傾斜面が形成されている。これにより、上側挟持部18Aの後端部および下側挟持部18Bの後端部が、それぞれ、上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bへとガイドされる。
【0044】
図1に示されるように、スライド部16の側壁には、前後方向の前端部寄りの位置に、仮係止受け部26が開口されている。また、スライド部16の側壁には、仮係止受け部26よりも後方の位置に、本係止受け部27が開口されている。仮係止受け部26と、本係止受け部27は、端子本体15の左側壁34および右側壁35のそれぞれに設けられた係止突起28と弾性的に係止可能になっている。
【0045】
端子本体15の係止突起28とスライド部16の仮係止受け部26とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が仮係止位置に保持された状態となっている(図1参照)。この状態においては、スライド部16の上側加圧部25Aおよび下側加圧部25Bは、端子本体15の上側挟持部18Aおよび下側挟持部18Bの後端縁から後方に離間している。また、この状態においては、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の間隔は、芯線13の直径よりも大きく設定されている。
【0046】
端子本体15の係止突起28とスライド部16の本係止受け部27とが係止した状態は、端子本体15に対してスライド部16が本係止位置に係止された状態となっている(図5参照)。この状態においては、スライド部16の上側加圧部25Aは、上側挟持部18Aの上方から上側挟持部18Aに接触している。また、スライド部16の下側加圧部25Bは、下側挟持部18Bの下方から下側挟持部18Bに接触している。
【0047】
上記のように、スライド部16は、端子本体15のうち上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとが設けられた領域に外嵌された状態で、上記した仮係止位置と、本係止位置との間を、前後方向(電線の延び方向)に沿ってスライド可能になっている。
【0048】
図2に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、上側加圧部25Aが上方から上側挟持部18Aを押圧することによって上側挟持部18Aが下方に屈曲するようになっている。また、下側加圧部25Bが下方から下側挟持部18Bを押圧することによって下側挟持部18Bが上方に屈曲するようになっている。これにより、上側挟持部18Aと下側挟持部18Bとの間の空間に、芯線13を前後方向(延び方向)に延びた状態で配し、且つ、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持した状態では、芯線13は、屈曲した上側挟持部18Aと下側挟持部18Bによって上下方向から挟持されるようになっている。すなわち、上側挟持部18Aは上側加圧部25Aに下方に押圧されることにより芯線13に上方から接触し、下側挟持部18Bは下側加圧部25Bに上方に押圧されることにより芯線13に下方から接触するようになっている。
【0049】
図2に示されるように、スライド部16が端子本体15に対して本係止位置で保持された状態では、上側挟持部18Aの上側保持突部23Aが芯線13を上方から押圧し、下側挟持部18Bの下側保持突部23Bが芯線13を下方から押圧する。このように、芯線13は、上側保持突部23Aによって上方から押圧されるとともに、上側保持突部23Aと前後方向にずれた位置に配された下側保持突部23Bによって下方から押圧されることにより、上下方向について屈曲した状態に保持される。芯線13は、側方から見て、クランク状に屈曲した状態で、上側保持突部23Aおよび下側保持突部23Bによって保持されている。また、上側保持突部23Aと、下側保持突部23Bとによっても、芯線13と端子12とが電気的に接続されるようになっている。
【0050】
図5に示されるように、スライド部16の上壁の前端部には、治具接触部46が形成されている。治具接触部46に後方から治具45が接触して、この治具45によってスライド部16が前方に押されることにより、スライド部16が前方に移動可能になっている。なお、上記の治具45は、金型や、この金型を稼働させるための設備に比べて、比較的に小規模なものとなっている。このため、治具45に起因するコストの増大は抑制される。
【0051】
図5に示されるように、スライド部16の後端部寄りの位置には、左右両側壁に、スライド部16の内方に突出する一対の誘い込み部47が設けられている。誘い込み部47は、後方から前方に向かうにしたがって幅狭に形成されている。誘い込み部47の内面に芯線13が摺接することにより、芯線13はスライド部16の内部へと案内される。
【0052】
[実施形態1の作用効果]
続いて、実施形態1の作用効果について説明する。実施形態1によれば、下側保持突部23Bが、例えば電線11が後方に引っ張られた際に下側保持突部23Bが電線11の芯線13と摺動し、電線11の延び方向に変位しようとしても、下側保持突部23Bの第2嵌合部63と下側挟持部18Bの第1嵌合部62とが凹凸嵌合することにより、折り重ねて形成された下側保持突部23Bがめくれることを抑制できる。これにより、端子12と電線11との接続信頼性を向上できる。
【0053】
また、下側接触面64に凹部66を形成することにより、凹部66はセレーションの機能を果たすこととなる。すなわち、凹部66の開口縁と電線11の芯線13との接触部分に圧力が集中され、芯線13の表面に形成された酸化被膜を容易に破壊できる。これにより、電線11と下側保持突部23Bとの電気的な接続信頼性が向上する。この凹部66を下側接触面64から凹んだ形状に形成する際に、第2対向面61から突出する構造が形成される場合がある。この突出構造を第2嵌合部63とすることで、効率的に第2嵌合部63を形成できる。これにより、端子12のコスト低減に寄与できる。
【0054】
また、第1嵌合部62および第2嵌合部63を電線11の延び方向に複数(実施形態1では2つ)設けることで、第2嵌合部63の第1嵌合部62への係止をより強固なものにできる。
【0055】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2にかかる端子112について、図8図9を参照しつつ説明される。端子112における下側保持突部123Bは、下側挟持部118Bの先端部118B2が折り返され、下側挟持部118Bの重なり部118B1に密着するように重ねられることで形成されている。
【0056】
端子112における下側保持突部123Bには、凹部166が形成されている。凹部166は、下側接触面164側に1つ設けられており、実施形態1の凹部66と同様、セレーションの機能を有する。また、第2対向面161側の第2嵌合部163は、凹部166と対応する位置に1つ設けられている。
【0057】
下側挟持部118Bにおける第1嵌合部162は、第2嵌合部163に対応する位置に設けられており、第1対向面160と下側挟持部118Bの下面とを貫通することにより形成されている。下側保持突部123Bが下側挟持部118Bに折り重ねられると、第1嵌合部162と第2嵌合部163とは凹凸嵌合される。
【0058】
第1嵌合部162は、貫通形成されていることから、例えば、実施形態1のように、第1嵌合部62が第1対向面60から凹んだ形状をなす構成と比較して、端子112は軽量化される。
【0059】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0060】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3にかかる端子212について、図10図11を参照しつつ説明される。端子212における下側保持突部223Bは、下側挟持部218Bの先端部218B2が折り返され、下側挟持部218Bの重なり部218B1に密着するように重ねられることで形成されている。
【0061】
端子212における下側保持突部223Bには、下側接触面264と第2対向面261とを貫通する貫通孔267が形成されている。貫通孔267は、前後方向に間隔を開けて2つ設けられている。
【0062】
貫通孔267における下側接触面264側の開口はセレーションの機能を有する。また、貫通孔267における第2対向面261側の開口は、第2嵌合部263とされる。第1嵌合部262は、第1対向面260から上方に突出する形状をなしている。第1嵌合部262は、例えば、第1対向面260上に溶接、または、第1対向面260側の面を切削することにより形成される。
【0063】
第1嵌合部262は、第2嵌合部263に対応する位置に設けられている。下側保持突部223Bが下側挟持部218Bに折り重ねられると、第1嵌合部262は、第2嵌合部263の開口内に挿通される。これにより、第1嵌合部262と第2嵌合部263とは凹凸嵌合される。
【0064】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0065】
[実施形態3の作用効果]
続いて、実施形態3の作用効果について説明する。実施形態3によれば、貫通孔267の下側接触面264側の開口は、セレーションの機能を果たすこととなり、電線11(電線11は実施形態1と同一構成のため、実施形態3では図示されていない)と下側保持突部223Bとの電気的な接続信頼性を向上できる。また、貫通孔267における第2対向面261側の開口を第2嵌合部263とすることで、効率的に第2嵌合部263を形成できる。これにより、端子212のコスト低減に寄与できる。
【0066】
<他の実施形態>
本開示は上記記述および図面によって説明された実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の技術的範囲に含まれる。
【0067】
(1)実施形態1においては、凹部66は2つ設けられる構成とされ、実施形態2においては、凹部166は1つ設けられる構成とされたが、これに限られることはない。例えば、凹部は、3つ以上設けられる構成としても良い。この場合、第2嵌合部および第1嵌合部も、凹部の数に合わせて、3つ以上である構成としても良い。
(2)実施形態1および実施形態2においては、端子12、112の下側保持突部23B、123Bには、セレーションの機能を有する凹部66、166が設けられる構成とされたが、これに限られることはなく、下側保持突部には凹部が設けられない構成としても良い。
(3)実施形態1から実施形態3においては、第1嵌合部62、162、262、および第2嵌合部63、163、263は下側挟持部18B、118B、218B側に設けられる構成とされたが、これに限られることはない。例えば、第1嵌合部、および第2嵌合部は、上側挟持部側に設けられる構成としても良い。
(4)実施形態1においては、下側保持突部23Bは、下側挟持部18Bの後端部から後方に突出した部分が下側挟持部18Bの上面に密着して折り重ねられた状態で形成される構成とされたが、これに限られることはない。例えば、下側保持突部は、下側挟持部の左右のいずれか一方の側縁部から側方に突出した部分が、下側挟持部の上面に密着して折り重ねられた状態で形成される構成としても良い。
(5)実施形態3においては、第1嵌合部262は、第1対向面260上に溶接、または、第1対向面260側の面を切削することにより形成される構成としたが、これに限られることはない。例えば、実施形態1、2における第2嵌合部63、163のように、下側挟持部を下面側からたたき出すことにより、第1嵌合部を形成しても良い。この場合、下側挟持部の下面側には、凹部が形成されることとなる。
【符号の説明】
【0068】
10: 端子付き電線
11: 電線
12、112、212: 端子
13: 芯線
14: 絶縁被覆
15: 端子本体
16: スライド部
17: 筒部
18A: 上側挟持部
18B、118B、218B: 下側挟持部
18B1、118B1、218B1:重なり部
18B2、118B2、218B2:先端部
20: 電線接続部
23A: 上側保持突部
23B、123B、223B: 下側保持突部
25A: 上側加圧部
25B: 下側加圧部
26: 仮係止受け部
27: 本係止受け部
28: 係止突起
30、31、32、33: 側縁
34、35: 側壁
45: 治具
46: 治具接触部
47: 誘い込み部
50A、50B: エッジ
51、52: 易屈曲部
60、160、260: 第1対向面
61、161、262: 第2対向面
62、162、262: 第1嵌合部
63、163、263: 第2嵌合部
64、164、264: 下側接触面(接触面)
66、166: 凹部
267: 貫通孔
68:上側接触面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11