(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/187 20060101AFI20230126BHJP
H01R 13/04 20060101ALI20230126BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20230126BHJP
H01R 13/516 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
H01R13/187 A
H01R13/04 E
H01R13/11 H
H01R13/11 K
H01R13/11 302A
H01R13/516
(21)【出願番号】P 2021052824
(22)【出願日】2021-03-26
(62)【分割の表示】P 2020502836の分割
【原出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2018033421
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 徹
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122623(JP,A)
【文献】特表2012-508959(JP,A)
【文献】特開2014-220188(JP,A)
【文献】特公昭49-033223(JP,B1)
【文献】特表2013-546151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/187
H01R 13/04
H01R 13/11
H01R 13/42
H01R 13/516
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の相手端子が挿入可能とされたコネクタであって、
板状の接続端子と、
バネ部と、
前記相手端子が挿入される挿入口を有し、前記バネ部が保持されたハウジングとを備え、
前記挿入口に挿入された前記相手端子と前記接続端子とは、前記バネ部によって挟持され
、
前記バネ部は金属で構成された板バネであって、板状の基端部と、前記基端部の一端から片持ち状に延びる第1弾性片と、前記基端部の他端から片持ち状に延びる第2弾性片とを備えて構成され、前記第1押圧部は前記第1弾性片に配され、前記第2押圧部は前記第2弾性片に配されているコネクタ。
【請求項2】
前記バネ部は、前記基端部と前記第1弾性片と前記第2弾性片とに囲まれた収容部と、前記基端部と対向する位置に設けられた開口部と、を備え、
前記相手端子が、前記開口部から前記収容部へ挿入される請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1押圧部は、前記第1弾性片における前記第2弾性片との対向面から前記第2押圧部側に突出して設けられている請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第2押圧部は、前記第2弾性片における前記第1弾性片との対向面から前記第1押圧部側に突出して設けられている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
板状の相手端子が挿入可能とされたコネクタであって、
板状の接続端子と、
バネ部と、
前記相手端子が挿入される挿入口を有し、前記バネ部が保持されたハウジングとを備え、
前記挿入口に挿入された前記相手端子と前記接続端子とは、前記バネ部によって挟持され、
前記ハウジングは、前記バネ部が内部に保持されたインナーハウジングと、前記インナーハウジングが内部に収容されたアウターハウジングと、前記インナーハウジングを前記アウターハウジングに保持させる保持キャップとを備えて構成され、前記挿入口は、前記インナーハウジングに設けられた内側挿入口と、前記保持キャップに設けられた外側挿入口とによって構成されているコネクタ。
【請求項6】
前記接続端子は、前記相手端子と対向する面に突出して形成される接点部を有し、
前記接点部は球面状をなす接触面を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記バネ部は、前記相手端子を前記接続端子に向けて押圧する第1押圧部と、前記接続端子を前記相手端子に向けて押圧する第2押圧部とを有し、
前記挿入口に挿入された前記相手端子と前記接続端子とは、前記第1押圧部と前記第2押圧部によって挟持される請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄端子に接続される雌端子として、特許第6222039号公報(下記特許文献1)に記載の雌端子が知られている。この雌端子は、複数の周壁によって角筒状に形成された嵌合部と、嵌合部内に配されて雄端子に弾性的に接触する弾性片とを備えて構成されている。雄端子は、弾性片とこれに対向する周壁との間に挟持されることで雌端子と導通可能に接続される。雌端子は、板状の金属材をプレス加工によって打ち抜きおよび曲げ成形することにより角筒状に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大電流化に伴って金属材の板厚が大きくなると、プレス加工によって角筒状の雌端子を製造することができなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示されるコネクタは、板状の相手端子が挿入可能とされたコネクタであって、板状の接続端子と、バネ部と、前記相手端子が挿入される挿入口を有し、前記バネ部が保持されたハウジングとを備え、前記挿入口に挿入された前記相手端子と前記接続端子とは、前記バネ部によって挟持される構成とした。
【0006】
このような構成によると、相手端子をハウジングの挿入口に挿入すると、板状の相手端子と板状の接続端子とは、ハウジングに保持されたバネ部によって挟持されて電気的に接続される。したがって、端子を筒状に加工する必要がなく、板状の端子を使用できるため、端子の板厚が大きくなっても、端子を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示されるコネクタによれば、端子を筒状に加工する必要がなく、板状の端子を使用できるため、大電流化に伴って端子の板厚が大きくなっても、端子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】
図3のA-A線で切断した断面図であって、接続端子をバネ部に取り付ける前の状態を示した断面図
【
図6】
図3のA-A線で切断した断面図であって、接続端子をバネ部に取り付けた後の状態を示した断面図
【
図7】
図3のA-A線で切断した断面図であって、相手端子を挿入させた後の状態を示した断面図
【
図11】インナーハウジングの内部構造を正面から見た断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
最初に、本明細書によって開示される実施態様を列記して説明する。
本明細書で開示される第一の態様に係るコネクタは、板状の相手端子が挿入可能とされたコネクタであって、板状の接続端子と、バネ部と、前記相手端子が挿入される挿入口を有し、前記バネ部が保持されたハウジングとを備え、前記挿入口に挿入された前記相手端子と前記接続端子とは、前記バネ部によって挟持される。
【0010】
第一の態様のコネクタによれば、端子を筒状に加工する必要がないため、大電流化に伴って端子の板厚が大きくなっても、端子を容易に製造することができる。
【0011】
本明細書で開示される第二の態様に係るコネクタは、前記接続端子は、前記相手端子と対向する面に突出して形成される接点部を有し、前記接点部は球面状をなす接触面を備える。
【0012】
第二の態様のコネクタによれば、相手端子が捻回した場合でも相手端子と接続端子の接触面との接触面積が急激に減少することが抑制される。したがって、相手端子と接続端子との間の接触抵抗が急激に増加することを抑制できる。
【0013】
本明細書で開示される第三の態様に係るコネクタは、前記バネ部は、前記相手端子を前記接続端子に向けて押圧する第1押圧部と、前記接続端子を前記相手端子に向けて押圧する第2押圧部とを有し、前記挿入口に挿入された前記相手端子と前記接続端子とは、前記第1押圧部と前記第2押圧部によって挟持される。
【0014】
第三の態様のコネクタによれば、接続端子と相手端子は、第1押圧部と第2押圧部によって挟持される。したがって、接続端子と相手端子とは、高い接触圧で接触して電気的に接続される。
【0015】
本明細書で開示される第四の態様に係るコネクタは、前記バネ部は金属で構成された板バネであって、板状の基端部と、前記基端部の一端から片持ち状に延びる第1弾性片と、前記基端部の他端から片持ち状に延びる第2弾性片とを備えて構成され、前記第1押圧部は前記第1弾性片に配され、前記第2押圧部は前記第2弾性片に配されている。
【0016】
第四の態様のコネクタによれば、バネ部が板バネであることから、接続端子と相手端子とを十分な接触圧で挟持できる。また、通電時の電磁反発により、接続端子と相手端子とが離間することを抑制することができる。よって、接続端子と相手端子との間で、アーク放電が生じることを抑制できる。
【0017】
本明細書で開示される第五の態様に係るコネクタは、前記バネ部は、前記基端部と前記第1弾性片と前記第2弾性片とに囲まれた収容部と、前記基端部と対向する位置に設けられた開口部と、を備え、前記相手端子が、前記開口部から前記収容部へ挿入される。
【0018】
第五の態様のコネクタによれば、相手端子を収容部に挿入する際に、相手端子の端末を基端部に接触させることにより、相手端子の挿入深さを制限することができる。したがって、相手端子の挿入深さを容易に管理できるため、コネクタの組立作業性を向上させることができる。
【0019】
本明細書で開示される第六の態様に係るコネクタは、前記第1押圧部は、前記第1弾性片における前記第2弾性片との対向面から前記第2押圧部側に突出して設けられている。
【0020】
第六の態様のコネクタによれば、相手端子をコネクタに挿入させる際に、相手端子が第1押圧部と摺動することで円滑な挿入動作が可能になる。
【0021】
本明細書で開示される第七の態様に係るコネクタは、前記第2押圧部は、前記第2弾性片における前記第1弾性片との対向面から前記第1押圧部側に突出して設けられている。
【0022】
第七の態様のコネクタによれば、接続端子をバネ部に取り付ける際に、接続端子が第2押圧部に摺動することで円滑な挿入動作が可能になる。
【0023】
本明細書で開示される第八の態様に係るコネクタは、前記ハウジングは、前記バネ部が内部に保持されたインナーハウジングと、前記インナーハウジングが内部に収容されたアウターハウジングと、前記インナーハウジングを前記アウターハウジングに保持させる保持キャップとを備えて構成され、前記挿入口は、前記インナーハウジングに設けられた内側挿入口と、前記保持キャップに設けられた外側挿入口とによって構成されている。
【0024】
第八の態様のコネクタによれば、バネ部をインナーハウジングに保持させた状態で接続端子をバネ部に取り付けることができるため、接続端子の取付作業が容易になる。
【0025】
実施形態を
図1から
図14の図面を参照しながら説明する。本実施形態のコネクタ10は、
図1に示すように、接続端子20と、接続端子20に溶接された電線30と、接続端子20が装着されるハウジング40と、ハウジング40に保持されるバネ部80と、電線30に嵌着されるゴムリング90と、ゴムリング90を保持するバックリテーナ91と、を備えて構成されている。このコネクタ10には、
図7に示す相手端子100が挿入可能とされている。ハウジング40は、インナーハウジング50とアウターハウジング60と保持キャップ70とによって構成されている。電線30は、金属からなる芯線31が絶縁性の被覆32で覆われた被覆電線である。相手端子100は、金属から構成された平板状の端子である。相手端子100は、例えば、銅や銅合金、又はアルミニウムやアルミニウム合金などから構成されている。
【0026】
接続端子20は、金属から構成された平板状の端子である。接続端子20は、例えば、銅や銅合金、又はアルミニウムやアルミニウム合金などから構成されている。接続端子20は、平面視で長方形状とされ、相手端子100に接続される端子接続部21と、電線30の芯線31が溶接される電線接続部22とを備えて構成されている。端子接続部21における相手端子100との対向面23には、接点部24が突出して設けられている。接点部24は一対設けられ、一対の接点部24は端子接続部21と電線接続部22の並び方向に並んで配されている。端子接続部21の先端部には、テーパー状の誘い込み面25が設けられている。
【0027】
接点部24は、
図13および
図14に示すように、ほぼ平坦面に近い緩やかな球面状をなす接触面24Aを有している。例えば、接触面24Aは、ドーム状やアーチ状といった凸曲面であり得る。図示した例では、接点部24は、ドーム状頂面を有する突出部である。なお、接触面24Aの曲率半径Rは、例えば、20mm以上となるように形成されている。また、接触面24Aは、理想的な真球の外面の一部であってもよく、例えば回転楕円体等の歪んだ球体の外面の一部であってもよい。この接触面24Aは、相手端子100とは1点で接触するようになっている。この接触面24Aによれば、相手端子100が捻回した場合でも相手端子100との接触面積が略一定に保たれるため、接触抵抗の急激な増加による高発熱を防ぐことができる。換言すると、相手端子100が捻回した場合でも、接触面24Aと相手端子100との接触面積が急激に減少することを抑制できる。したがって、接続端子20と相手端子100との間の接触抵抗が急激に増加して発熱することを抑制でき、ひいては、その発熱によって生じ得る両端子20、100の損傷を抑制できる。また、接触面24Aと相手端子100の接続状態は平面同士の接続状態に近くなるため、接触面24Aと相手端子100の接触圧は分散し、相手端子100の挿抜を繰り返し行うことによる摩耗を抑制しやすくなる。
【0028】
バネ部80は、金属で構成された板バネである。バネ部80は、鉄や鉄合金から構成され、例えば、SUS(Steel Use Stainless)から構成される。バネ部80が鉄や鉄合金から構成されていると、バネ部80は薄くても強固なバネ力を生じさせることができる。バネ部80は、平板状の基端部83と、基端部83の一端から片持ち状に延びる第1弾性片81と、基端部83の他端から片持ち状に延びる第2弾性片82とを備えて構成されている。第1弾性片81と第2弾性片82は互いに対向する配置とされている。第1弾性片81の先端部は、第2弾性片82と反対側に折り曲げられており、その曲げ縁から先端までの部分が第1誘い込み部81Bとされている。同様に、第2弾性片82の先端部は、第1弾性片81と反対側に折り曲げられており、その曲げ縁から先端までの部分が第2誘い込み部82Bとされている。
【0029】
バネ部80の基端部83は、
図12に示すように、図示上下方向に長い長方形状に形成されている。基端部83の中央部には、図示左右方向に長い長方形状の保持孔83Aが貫通して設けられている。
【0030】
バネ部80において、基端部83と第1弾性片81と第2弾性片82とで囲まれた空間が収容部84として機能する。バネ部80において、基端部83とは反対側に、第1開口部85が形成されている。
図1に示した例では、第1弾性片81の長辺であり得る先端縁と第2弾性片82の長辺であり得る先端縁との間に、第1開口部85が形成されている。
【0031】
図1に示すように、第1弾性片81の短辺であり得る上側端縁と第2弾性片82の短辺であり得る上側端縁との間、及び第1弾性片81の別の短辺であり得る下側端縁と第2弾性片82の別の短辺であり得る下側端縁との間には、それぞれ第2開口部86が形成されている。
【0032】
第1弾性片81における第2弾性片82との対向面には第1押圧部81Aが第2第2押圧部82A側に突出して設けられている。一方、第2弾性片82における第1弾性片81との対向面には第2押圧部82Aが第1押圧部81A側に突出して設けられている。各押圧部81A、82Aの表面は、ほぼ平坦面に近い緩やかな球面状に形成されている。また、各押圧部81A、82Aは、
図1に示すように、側面視において図示上下方向に長い楕円形状に形成されている。
【0033】
図5に示すように、バネ部80はインナーハウジング50の内部に収容されている。インナーハウジング50は合成樹脂から構成されている。
図1に示すように、インナーハウジング50は、下方に開口するフード部51を有している。バネ部80はフード部51内に下方から挿入される。フード部51は、前壁51A、後壁51B及び一対の側壁51Cからなる周壁を備える。フード部51の周壁を構成する前壁51Aには、図示上下方向に長い内側挿入口54が設けられている。内側挿入口54は、前方および下方に開口している。
【0034】
図11に示すように、フード部51の周壁を構成する後壁51Bには、第1保持突起52が設けられている。一方、バネ部80の基端部83には、保持孔83Aが設けられている。バネ部80がフード部51内に挿入されると、
図5に示すように、第1保持突起52が保持孔83Aに嵌まり込み、保持孔83Aの内周縁が第1保持突起52に係止することでバネ部80がフード部51内に保持される。
【0035】
また、
図11に示すように、フード部51の周壁を構成する一対の側壁51Cには、一対の第2保持突起53が設けられている。第2保持突起53は、第1保持突起52よりも下方に配され、フード部51の開口付近に位置している。
図9に示すように、バネ部80の各弾性片81、82の下端部が第2保持突起53に係止することによってもバネ部80がフード部51内に保持される。
【0036】
アウターハウジング60は合成樹脂から構成されている。
図1および
図10に示すように、アウターハウジング60は、前方に開口するフード部61を有している。フード部61の奥壁61Aには一対の取付壁62が設けられている。一対の取付壁62は、左右方向に対向する配置とされ、奥壁61Aから前方に突出して設けられている。一対の取付壁62の外周側には、一対の取付突起62Aが設けられている。インナーハウジング50は一対の取付壁62の間に収容され、保持キャップ70により保持されている。
【0037】
アウターハウジング60は、ゴムリング90が装着されるゴムリング装着筒部64を有している。
図8に示すように、ゴムリング90は、ゴムリング装着筒部64の内部に下方から装着されている。ゴムリング90は、電線Wの外周面とゴムリング装着筒部64の内周面との間に挟持されており、ゴムリング装着筒部64の内部に下方から水が浸入することが抑制されている。ゴムリング90の下方には、バックリテーナ91が装着されている。バックリテーナ91には一対の装着凹部92が設けられている。一対の装着凹部92を一対の装着突起64Aに係止させることでバックリテーナ91がゴムリング装着筒部64に保持されている。バックリテーナ91によって、ゴムリング90が抜け止めされた状態でゴムリング装着筒部64内に保持されている。
【0038】
保持キャップ70は合成樹脂から構成されている。
図1に示すように、保持キャップ70は、後方(図示右側)に開口している。保持キャップ70の両側壁71には、一対の取付片72が設けられている。取付片72は、側壁71の前端部から片持ち状をなして後方に延びている。取付片72の先端部には、取付孔72Aが設けられている。保持キャップ70を一対の取付壁62に外嵌させると、一対の取付孔72Aに一対の取付突起62Aが嵌まり込む。よって、一対の取付孔72Aの内周縁が一対の取付突起62Aに係止することで保持キャップ70が一対の取付壁62に保持される。これにより、保持キャップ70の内部に収容されたインナーハウジング50がアウターハウジング60に保持される。
【0039】
図10に示すように、アウターハウジング60のフード部61の奥壁61Aにおける一対の取付壁62の間には、上下一対の位置決め突部65が設けられている。一方、インナーハウジング50のフード部51の後壁51Bには、
図8に示すように、上下一対の位置決め孔58が設けられている。各位置決め突部65は各位置決め孔58に後方から嵌合している。これにより、インナーハウジング50がアウターハウジング60に対して正規の装着姿勢に位置決めされている。
【0040】
保持キャップ70の前壁74には、外側挿入口75が設けられている。外側挿入口75は、相手端子100が挿入する開口とされており、
図5に示すように、インナーハウジング50の内側挿入口54と前後方向に並んで配置されている。したがって、相手端子100は、保持キャップ70の外側挿入口75とインナーハウジング50の内側挿入口54とを通ってバネ部80の内部に進入するものとされている。
【0041】
また、保持キャップ70の底壁73には端子挿通孔73Aが設けられている。端子挿通孔73Aには接続端子20が下方から挿通可能とされている。接続端子20が端子挿通孔73Aから保持キャップ70内に挿入されると、電線接続部22の側縁部がアウターハウジング60の抜止突起63に係止する。よって、接続端子20はアウターハウジング60によって抜け止めされ、バネ部80の一対の弾性片81、82の間に保持される。
【0042】
さて、バネ部80は、電線30が振られた際に接続端子20と相手端子100が摺動摩耗することを抑制するために、接続端子20と相手端子100を挟持している。
図5に示す状態から接続端子20をバネ部80に取り付けると、
図6に示すように、接続端子20が第2弾性片82の第2押圧部82Aに摺動する。より詳しくは、接続端子20を第2開口部86からバネ部80の収容部84に挿入すると、接続端子20が第2弾性片82の第2押圧部82Aに摺動する。これにより、接続端子20は、正規の取付位置に向けて円滑にバネ部80へ挿入できる。なお、
図9に示すように、接続端子20の先端部は、インナーハウジング50の後壁51Bに設けられた段差部55に係止されている。よって、バネ部80からの反力を受けて接続端子20全体が図示左側に変位することが抑制されている。したがって、接続端子20が内側挿入口54の少なくとも一部を塞ぐことを抑制でき、相手端子100がバネ部80の内部へ案内されない等の好ましくない状況を抑制できる。
【0043】
しかし、
図6に示すように、バネ部80が接続端子20によって傾いた姿勢となる。ただし、第2弾性片82がインナーハウジング50の側壁51Cと干渉するため、バネ部80の傾きは制限される。より詳しくは、第2弾性片82の先端が、後述する第2逃がし凹部57と干渉するため、バネ部80の傾きは制限される。これにより、第1弾性片81の第1誘い込み部81Bの先端は、インナーハウジング50の内側挿入口54から飛び出すことが抑制される。したがって、相手端子100は、第1弾性片81の先端と干渉することはなく、第1誘い込み部81Bによってバネ部80の内部に案内される。
【0044】
また、バネ部80が傾いた姿勢になると、
図9に示すように、第1弾性片81の先端と第2保持突起53の係り代が小さくなる。しかし、
図6に示すように、第1弾性片81が傾いたとしても、基端部83はほとんど傾かないため、第1保持突起52が保持孔83Aに嵌まり込んだ状態は維持される。したがって、バネ部80がインナーハウジング50から脱落することが抑制される。
【0045】
次に、
図6に示す状態から相手端子100は、外側挿入口75と内側挿入口54とを通ってインナーハウジング50の内部に進入し、第1弾性片81の第1誘い込み部81Bに摺動することによってバネ部80の内部へと案内される。換言すると、相手端子100は、外側挿入口75と内側挿入口54とを通ってインナーハウジング50の内部に進入し、第1開口部85を通って収容部84へ案内される。
【0046】
相手端子100の先端が第1弾性片81の第1押圧部81Aに摺動し始めると、第1弾性片81が第2弾性片82から離間する方向に弾性的に変形し始める。
図7に示すように、相手端子100が正規の挿入位置に至ると、バネ部80は第1弾性片81と第2弾性片82が最も開いた状態となり、強固なバネ力を発生させる。
【0047】
相手端子100は、接続端子20と交差するようにバネ部80で挟持されている。より詳しくは、相手端子100と接続端子20とが重なり部分を有するように相手端子100と接続端子20とが重ねられた状態で、バネ部80は相手端子100と接続端子20との重なり部分を板厚方向に弾性的に押圧するように構成されている。図示した例では、相手端子100は、接続端子20と直交するようにバネ部80によって挟持されている。換言すると、収容部84の内部で、相手端子100は接続端子20と交差するように重なり合っている。接続端子20と相手端子100とが直交するように配置されることにより、例えば、接続端子20と相手端子100とが一直線状に配置される場合と比較して、コネクタ10と相手端子100が、接続端子20の長手方向(
図1の上下方向)において必要とする寸法を小さくすることができる。
【0048】
ここで、相手端子100は第1押圧部81Aによって接続端子20側に押圧され、接続端子20は第2押圧部82Aによって相手端子100側に押圧される。第1押圧部81Aと第2押圧部82Aは、押圧方向が対向するように配置されている。より詳しくは、第1押圧部81Aと第2押圧部82Aは、押圧方向に重複する左右対称配置とされている。相手端子100と接続端子20は第1押圧部81Aと第2押圧部82Aによって挟持される。したがって、接続端子20の一対の接点部24は相手端子100に高い接触圧で接触し、両者は導通可能に接続される。この接触状態では電線30が振られたとしても一対の接点部24が相手端子100に摺動して摩耗することが抑制される。
【0049】
なお、インナーハウジング50の前壁51Aと側壁51Cとの角部には、第1弾性片81の先端を逃がす第1逃がし凹部56と、第2弾性片82の先端を逃がす第2逃がし凹部57とが設けられている。また、第1逃がし凹部56の後方には、第1誘い込み部81Bを受ける第1過度撓み防止部56Aが設けられ、第2逃がし凹部57の後方には、第2誘い込み部82Bを受ける第2過度撓み防止部57Aが設けられている。第1過度撓み防止部56Aにより、相手端子100が傾いた姿勢で挿入されたとしても、第1弾性片81が過度に撓むことが防止される。また、第2過度撓み防止部57Aにより、接続端子20が傾いた姿勢で挿入されたとしても、第2弾性片82が過度に撓むことが防止される。
【0050】
以上のように本実施形態では、相手端子100をハウジング40の挿入口(内側挿入口54、外側挿入口75)に挿入すると、接続端子20と相手端子100とがハウジング40に保持されたバネ部80に挟持された状態で電気的に接続されている。
【0051】
このようにすれば、端子を筒状に加工する必要がないため、端子の板厚が大きくなっても、端子を容易に製造することができる。
【0052】
また、接続端子20は、相手端子100との対向面23に接点部24が突出して設けられており、接点部24は球面状の接触面24Aを備えている構成としてもよい。この構成によれば、相手端子100が捻回した場合でも、接触面24Aと相手端子100との接触面積が急激に減少することを抑制できる。したがって、接続端子20と相手端子100との間の接触抵抗が急激に増加して発熱し、両端子20、100が損傷することを抑制できる。
【0053】
バネ部80は、相手端子100を接続端子20に向けて押圧する第1押圧部81Aと、接続端子20を相手端子100に向けて押圧する第2押圧部82Aとを備える。この構成によれば、接続端子20と相手端子100は、第1押圧部81Aと第2押圧部82Aによって挟持される。よって、接続端子20と相手端子100は、高い接触圧で接触して電気的に接続される。したがって、接続端子20の接点部24が、相手端子100と摺動して摩耗することが抑制される。
【0054】
また、接続端子20と相手端子100とが通電すると、クーロン力に基づく電磁反発力が接続端子20と相手端子100とに加わる。もし、接続端子20と相手端子100とが、電磁反発によって互いに離れる方向に変位すると、両端子20、100の接触面積の減少による接触抵抗の増大が懸念される。しかし、上記構成によれば、第1押圧部81Aが、相手端子100を接続端子20側に押圧する。さらに、第2押圧部82Aが、接続端子20を相手端子100側へ押圧する。すなわち、電磁反発力に抗して両端子20、100の離間を抑制するように、バネ部80から両端子20、100へ弾性力が加わる。したがって、通電時の電磁反発により接続端子20と相手端子100との接触抵抗が増大することを抑制できる。
【0055】
バネ部80は金属から構成される板バネであって、板状の基端部83と、基端部83の一端から片持ち状に延びる第1弾性片81と、基端部83の他端から片持ち状に延びる第2弾性片82とを備え、第1押圧部81Aは第1弾性片81に配され、第2押圧部82Aは第2弾性片82に配されている構成としてもよい。このような構成によれば、板バネであるバネ部80の第1弾性片81に設けられた第1押圧部81Aが、相手端子100を接続端子20側に押圧する。さらに、第2弾性片82に設けられた第2押圧部82Aが、接続端子20を相手端子100側へ押圧する。よって、接続端子20と相手端子100とをより高い接触圧で挟持することができる。したがって、接続端子20と相手端子100との電気接続信頼性を向上させることができる。
【0056】
また、前述のとおり、通電時に生じる電磁反発力により、接続端子20と相手端子100とは互いに離れようとする。よって、例えば、両端子20、100の接触面積の減少による接触抵抗の増大が懸念される。しかし、上記構成によれば、バネ部80によって接続端子20と相手端子100とが挟持されているため、通電時の接続端子20と相手端子100との間の接触抵抗の増大が抑制できる。
【0057】
さらに、上記構成によれば、接続端子20と相手端子100とは、バネ部80を介して電気的に接続されている。すなわち、接続端子20と相手端子100とは、第1弾性片81と基端部83と第2弾性片82とを介して、電気的に接続されている。したがって、通電時の電磁反発によって、両端子20、100間の接触圧が低下して接触抵抗が増大した場合であっても、バネ部80を介して接続端子20と相手端子100とが電気的に接続されているため、両端子20、100間の発熱を抑制できる。
【0058】
また、前述のとおり、通電時に生じる電磁反発力により、接続端子20と相手端子100とは互いに離れようとする。よって、例えば、接続端子20と相手端子100との間に隙間が生じ、両端子20、100間の電気的に接続された状態が解除されることで、両端子20、100間でアーク放電が発生して、両端子20、100が損傷することが懸念される。しかし、上記構成によれば、通電時の電磁反発により接続端子20と相手端子100との間に隙間が生じた場合であっても、バネ部80を介して接続端子20と相手端子100とは電気的に接続された状態が維持される。よって、通電時の電磁反発により、接続端子20と相手端子100との間で、アーク放電が生じることを抑制できる。したがって、接続端子20や相手端子100が損傷し、両端子20、100間の接触抵抗が増大することを抑制できる。
【0059】
バネ部80は基端部83と反対側に第1開口部85を備え、相手端子100は第1開口部85を通り収容部84へ挿入される。この構成によれば、相手端子100を収容部84に挿入する際に、相手端子100の端末を基端部83に接触させることにより、相手端子100の挿入深さを制限することができる。したがって、相手端子100の挿入深さを容易に管理できるため、接続端子20と相手端子100との電気接続の作業性を向上させることができる。
【0060】
第1押圧部81Aは、第1弾性片81における第2弾性片82との対向面から第2押圧部82A側に突出して設けられている構成としてもよい。この構成によれば、相手端子100をコネクタ10に挿入させる際に、相手端子100が第1押圧部81Aと摺動することで円滑な挿入動作が可能になる。
【0061】
第2押圧部82Aは、第2弾性片82における第1弾性片81との対向面から第1押圧部81A側に突出して設けられている構成としてもよい。
この構成によれば、接続端子20をバネ部80に取り付ける際に、接続端子20が第2押圧部82Aに摺動することで円滑な挿入動作が可能になる。
【0062】
ハウジング40は、バネ部80が内部に保持されたインナーハウジング50と、インナーハウジング50が内部に収容されたアウターハウジング60と、インナーハウジング50をアウターハウジング60に保持させる保持キャップ70とを備えて構成され、挿入口は、インナーハウジング50に設けられた内側挿入口54と、保持キャップ70に設けられた外側挿入口75とによって構成されているものとしてもよい。
このようにすると、バネ部80をインナーハウジング50に保持させた状態で接続端子20をバネ部80に取り付けることができるため、接続端子20の取付作業が容易になる。
【0063】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では第1押圧部81Aと第2押圧部82Aが押圧方向に重複する左右対称配置とされているものの、必ずしも左右対称配置である必要はなく、第1押圧部と第2押圧部は押圧方向に一部が重複する配置としてもよいし、第1押圧部と第2押圧部が押圧方向に重複しない配置としてもよい。
【0064】
(2)上記実施形態ではSUSで構成されたバネ部80を例示しているものの、SUS以外の金属で構成されたバネ部としてもよい。バネ部80は、鉄合金の他の例として、炭素鋼などから構成されていてもよい。より詳しくは、バネ部80は、リボン鋼などから構成されていてもよい。バネ部80は、銅や銅合金などから構成されていてもよい。銅や銅合金から構成されるバネ部80は、鉄や鉄合金から構成されるバネ部80に比べて電気伝導しやすい。したがって、接続端子20と相手端子100とがバネ部80を介して電気的に接続される構成において、電磁反発により両端子20、100との間に隙間が生じても、両端子20、100との間でアーク放電が生じることをより抑制できる。
【0065】
(3)上記実施形態では板バネからなるバネ部80を例示したが、コイルバネからなるバネ部を用いてもよい。
【0066】
(4)上記実施形態では第1押圧部81Aの表面が球面状とされているものを例示したが、第1押圧部の表面が第1弾性片81の表面と面一をなすものとしてもよい。
【0067】
(5)上記実施形態では第2押圧部82Aの表面が球面状とされているものを例示したが、第2押圧部の表面が第2弾性片82の表面と面一をなすものとしてもよい。
【0068】
(6)上記実施形態ではインナーハウジング50と保持キャップ70が別体に構成されているものを例示したが、インナーハウジングと保持キャップが一体に構成されているものとしてもよい。この場合、内側挿入口54と外側挿入口75が一体に構成された単一の挿入口を設けてもよい。
【0069】
(7)上記実施形態では相手端子100との対向面23に接点部24を設けているものの、相手端子100に接点部を設けてもよい。
【0070】
(8)上記実施形態では、接続端子20と相手端子100とが、直交するように配置されているが、これに限定されない。例えば、接続端子20と相手端子100とが、一直線状に並ぶように配置されていてもよい。この構成によれば、接続端子20と相手端子100とが直交する場合と比較して、コネクタ10と相手端子100が、接続端子20の長手方向と直交方向(
図1の左右方向)において必要とする寸法を小さくすることができる。この場合、接続端子20と相手端子100とを第2開口部86からバネ部80へ挿入できるように、内側挿入口54と外側挿入口75とを第2開口部86と重なるように設けてもよい。
【0071】
(9)上記実施形態では、接続端子20の対向面23には、接点部24が一対設けられているが、これに限定されない。例えば、接点部20の対向面23には、接点部24が1つ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…コネクタ
20…接続端子
23…対向面
24…接点部
40…ハウジング
50…インナーハウジング
54…内側挿入口
60…アウターハウジング
70…保持キャップ
75…外側挿入口
80…バネ部
81…第1弾性片
81A…第1押圧部
82…第2弾性片
82A…第2押圧部
83…基端部
100…相手端子