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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】振動式圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20230126BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G01L9/00 307
H01L29/84 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020002784
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021110637
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】岩井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】湯本 淳志
(72)【発明者】
【氏名】野呂 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆司
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132806(JP,A)
【文献】特開2004-077428(JP,A)
【文献】特開2012-058127(JP,A)
【文献】国際公開第2013/132842(WO,A1)
【文献】特表2001-507801(JP,A)
【文献】特開2012-150029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0120169(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振周波数の変化値に基づいて静圧を検出可能な圧力検知部を備えた振動式圧力センサであって、
前記圧力検知部が、
筐体に固定される筐体固定部と、
前記筐体固定部に固定される少なくとも1箇所以上の基板固定部と、前記筐体固定部と離間して前記基板固定部から延出する基板離間部とを有する基板部と、
前記筐体固定部と前記基板部との隙間に介在し、前記基板部を包み込む受圧流体と、
前記基板離間部に配置され、前記受圧流体によって印加される静圧に応じて前記基板部に生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第1振動子と
前記基板離間部に配置され、前記第1振動子における共振周波数の圧力感度と異なる共振周波数の圧力感度を有し、前記受圧流体によって印加される静圧に応じて前記基板部に生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第2振動子と、
備え
前記圧力検知部が、一つ又は複数の前記基板部に設けられる少なくとも2以上の前記基板離間部を有し、
前記第1振動子と前記第2振動子が、それぞれ異なる前記基板離間部に配置されている、
ことを特徴とする振動式圧力センサ。
【請求項2】
共振周波数の変化値に基づいて静圧を検出可能な圧力検知部を備えた振動式圧力センサであって、
前記圧力検知部が、
筐体に固定される筐体固定部と、
前記筐体固定部に固定される少なくとも1箇所以上の基板固定部と、前記筐体固定部と離間して前記基板固定部から延出する基板離間部とを有する基板部と、
前記筐体固定部と前記基板部との隙間に介在し、前記基板部を包み込む受圧流体と、
前記基板離間部に配置され、前記受圧流体によって印加される静圧に応じて前記基板部に生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第1振動子と、
前記基板離間部に配置され、前記第1振動子における共振周波数の圧力感度と異なる共振周波数の圧力感度を有し、前記受圧流体によって印加される静圧に応じて前記基板部に生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第2振動子と、
を備え、
前記第1振動子及び前記第2振動子は、何れも不純物を含む単結晶シリコン材料からなり、且つ、前記第1振動子と前記第2振動子とでは、各々における前記不純物の濃度が、単位を(cm -3 )としたとき、少なくとも1桁以上異なる値であり、
前記第2振動子の共振周波数の温度係数が、前記第1振動子の共振周波数の温度係数に比べて大きい、
ことを特徴とする振動式圧力センサ。
【請求項3】
共振周波数の変化値に基づいて静圧を検出可能な圧力検知部を備えた振動式圧力センサであって、
前記圧力検知部が、
筐体に固定される筐体固定部と、
前記筐体固定部に固定される少なくとも1箇所以上の基板固定部と、前記筐体固定部と離間して前記基板固定部から延出する基板離間部とを有する基板部と、
前記筐体固定部と前記基板部との隙間に介在し、前記基板部を包み込む受圧流体と、
前記基板離間部に配置され、前記受圧流体によって印加される静圧に応じて前記基板部に生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第1振動子と、
前記基板離間部に配置され、前記第1振動子における共振周波数の圧力感度と異なる共振周波数の圧力感度を有し、前記受圧流体によって印加される静圧に応じて前記基板部に生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第2振動子と、
を備え、
前記第2振動子は、前記基板部の厚み方向に沿った厚み寸法が、前記第1振動子の厚み寸法に比べて大きい、
ことを特徴とする振動式圧力センサ。
【請求項4】
前記基板部が、前記基板固定部を支点とする片持ち梁構造であることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の振動式圧力センサ。
【請求項5】
前記基板部が、前記基板部を貫通するように設けられる歪緩和孔を有することを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載の振動式圧力センサ。
【請求項6】
前記第1振動子が不純物を含む半導体材料からなり、且つ、前記不純物の濃度が1×1020(cm-3)以上であるとともに、前記不純物の原子半径が、母材である前記半導体材料の原子半径よりも小さいことを特徴とする請求項1~請求項5の何れか一項に記載の振動式圧力センサ。
【請求項7】
前記第1振動子及び前記第2振動子は、何れも不純物を含む単結晶シリコン材料からなり、且つ、前記第1振動子と前記第2振動子とでは、各々における前記不純物の濃度が、単位を(cm-3)としたとき、少なくとも1桁以上異なる値であり、
前記第2振動子の共振周波数の温度係数が、前記第1振動子の共振周波数の温度係数に比べて大きいことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の振動式圧力センサ。
【請求項8】
前記第2振動子は、前記基板部の厚み方向に沿った厚み寸法が、前記第1振動子の厚み寸法に比べて大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動式圧力センサ。
【請求項9】
前記基板部が、前記基板固定部を有して前記筐体固定部に固定されるベース基板と、前記ベース基板に接続される支持基板とを有し、
前記支持基板が、前記ベース基板に固定される固定部と、前記ベース基板と離間して前記固定部から延出する離間部とを有し、
前記受圧流体が、前記ベース基板と前記支持基板との隙間に介在し、前記離間部を包み込むことを特徴とする請求項1~請求項8の何れか一項に記載の振動式圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動式圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、振動式圧力センサは、従来から、計測対象である流体等の圧力をダイアフラムで受け、センサの表面に配置された振動子に生じる歪みによって引き起こされる、振動子の共振周波数の変化を検出することで、圧力を計測する構成が採用されている(例えば、特許文献1並びに非特許文献1を参照)。
【0003】
また、流体等の絶対圧を計測する場合には、ダイアフラムの一面側に、所定の圧力値に規定した圧力参照室を配置し、ダイアフラムの他面側に計測対象である流体等の圧力を印加する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5158160号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sensors and Actuators,“Three-dimensional Micromachining of Silicon Pressure Sensor Integrates Resonant Strain Gauge on Diaphragm”,Physical Volume 21,Issues 1-3,p146-150(February 1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載された従来の技術においては、ダイアフラムに高い静圧を印加した場合に、その周縁部が変形することにより、ダイアフラム自体に発生する応力が緩和する。即ち、振動式圧力センサは、静圧が低い場合における感度に比べて、静圧が高い場合の感度が見かけ上小さくなる、所謂バルーン効果が発生することから、圧力センサとしての入出力特性の直線性が著しく劣化するという問題があった。従って、例えば、高い静圧が印加される用途において、高い計測精度が得られ難いという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、計測対象である流体等によって印加される静圧の高低にかかわらず、高い直線性が得られ、優れた計測精度を備える振動式圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
本発明の一態様による振動式圧力センサは、共振周波数の変化値に基づいて静圧を検出可能な圧力検知部を備えた振動式圧力センサであって、前記圧力検知部が、筐体に固定される筐体固定部と、前記筐体固定部に固定される少なくとも1箇所以上の基板固定部と、前記筐体固定部と離間して前記基板固定部から延出する基板離間部とを有する基板部と、前記筐体固定部と前記基板部との隙間に介在し、前記基板部を包み込む受圧流体と、前記基板離間部に配置され、前記受圧流体によって印加される静圧に応じて前記基板部に生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第1振動子と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様による振動式圧力センサは、上記構成において、前記基板部が、前記基板固定部を支点とする片持ち梁構造であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様による振動式圧力センサは、上記構成において、前記基板部が、前記基板部を貫通するように設けられる歪緩和孔を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様による振動式圧力センサは、上記構成において、前記第1振動子が不純物を含む半導体材料からなり、且つ、前記不純物の濃度が1×1020(cm-3)以上であるとともに、前記不純物の原子半径が、母材である前記半導体材料の原子半径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様による振動式圧力センサは、上記構成において、前記圧力検知部が、前記基板部の前記基板離間部に配置され、前記受圧流体によって印加される静圧に応じて前記基板部に生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第2振動子を備え、前記第2振動子が、前記第1振動子における共振周波数の圧力感度と異なる共振周波数の圧力感度を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様による振動式圧力センサは、上記構成において、前記圧力検知部が、一つ又は複数の前記基板部に設けられる少なくとも2以上の前記基板離間部を有し、前記第1振動子と前記第2振動子が、それぞれ異なる前記基板離間部に配置されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様による振動式圧力センサは、上記構成において、前記第1振動子及び前記第2振動子は、何れも不純物を含む単結晶シリコン材料からなり、且つ、前記第1振動子と前記第2振動子とでは、各々における前記不純物の濃度が、単位を(cm-3)としたとき、少なくとも1桁以上異なる値であり、前記第2振動子の共振周波数の温度係数が、前記第1振動子の共振周波数の温度係数に比べて大きいことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様による振動式圧力センサは、上記構成において、前記第2振動子は、前記基板部の厚み方向に沿った厚み寸法が、前記第1振動子の厚み寸法に比べて大きいことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様による振動式圧力センサは、上記構成において、前記基板部が、前記基板固定部を有して前記筐体固定部に固定されるベース基板と、前記ベース基板に接続される支持基板とを有し、前記支持基板が、前記ベース基板に固定される固定部と、前記ベース基板と離間して前記固定部から延出する離間部とを有し、前記受圧流体が、前記ベース基板と前記支持基板との隙間に介在し、前記離間部を包み込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様による振動式圧力センサによれば、筐体固定部に固定される少なくとも1箇所以上の基板固定部及び基板離間部を有する基板部と、基板部の基板離間部に配置され、受圧流体によって基板部に印加された静圧に応じて生じる歪みに基づき、共振周波数の変化値として検出する第1振動子を備えた構成を採用している。これにより、計測対象である流体等によって印加される静圧の高低にかかわらず、高い直線性が得られ、優れた計測精度が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、図1(a)は、受圧流体として液体を用いた場合、図1(b)は、受圧流体として空気(大気)を用いた場合における、振動式圧力センサの全体構成を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、図1(a),(b)中に示した圧力検知部の平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、図2中のA-A線に沿う断面図である。
図4】本発明の第1の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、図2中のB-B線に沿う断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、振動式圧力センサにおける信号の処理動作を示すブロック図である。
図6】本発明の第2の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、圧力検知部を示す平面図である。
図7】本発明の第3の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、圧力検知部を示す平面図である。
図8】本発明の第4の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、圧力検知部を示す平面図である。
図9】本発明の第4の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、図8中のC-C線に沿う断面図である。
図10】本発明の第4の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、図8中のD-D線に沿う断面図である。
図11】本発明の第5の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、台座上に設けられた圧力検知部を示す断面図である。
図12】本発明の第5の実施形態である振動式圧力センサを模式的に説明する図であり、図11に示した圧力検知部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した一実施形態である振動式圧力センサについて、図1図12を適宜参照しながら説明する。
なお、以下の説明においては、まず、本発明に係る振動式圧力センサの概要について説明し、次いで、本発明を適用した第1~5の実施形態の実施形態である振動式圧力センサについて詳述する。ここで、本実施形態の振動式圧力センサは、例えば、特に高い静圧が印加される用途において高い計測精度が得られるものである。
また、以下の説明においては、必要に応じて、各図中に記したXYZ直交座標系(原点の位置は適宜変更する)を参照しつつ、各部材の配置関係について説明する。
【0020】
また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。さらに、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
<本発明に係る振動式圧力センサの概要>
本発明に係る振動式圧力センサにおいては、筐体固定部に固定される少なくとも1箇所以上の基板固定部及び基板離間部を有する基板部と、基板部の基板離間部に配置され、受圧流体によって基板部に印加される静圧に応じて生じる歪みに基づいて共振周波数が変化する第1振動子とを備えている。
【0022】
上記のような、本発明の基本的な構成では、計測対象である振動式圧力センサの周囲環境(流体)の圧力(静圧)が、圧力伝搬隔壁部材によって受圧流体に伝播され、この受圧流体の圧力が基板部に印加されることで、基板部が等方的に圧縮される。これにより、基板離間部に対しては等方的に圧縮する応力が印加され、然るに、第1振動子に対しては長手方向に圧縮する応力が印加される。結果として、第1振動子の共振周波数が変化する。本発明に係る振動式圧力センサは、その共振周波数を計測することにより、当該振動式圧力センサに印加される静圧を計測するものである。
【0023】
なお、大気圧を計測するケースにおいては、上述した圧力伝搬隔壁部材を用いない場合もあるが、このような場合は、受圧流体は「大気」そのものになる。
大気との隔膜として圧力伝搬隔壁部材を用いる場合には、例えば、湿度の影響を受け難い材料や、風の影響を受け難い材料が用いられる。
【0024】
一方、従来の構成の振動式圧力センサにおいては、上述したように、高い静圧が印加されたときの圧力センサとしての入出力特性は、低い静圧が印加されたときの圧力センサとしての入出力特性と比較して、その直線性がバルーン効果により劣化するため、高い計測精度が得られない問題等がある。
【0025】
これに対し、本発明に係る振動式圧力センサにおいては、高い静圧を計測する場合においても、上記のように、受圧流体を介して、支持基板が等方的な圧力で圧縮されるので、入出力特性の直線性を著しく劣化させるバルーン効果が原理上避けられる。これにより、計測対象である流体等によって印加される静圧の高低にかかわらず、幅広い領域の静圧下で、圧力センサとしての入出力特性の高い直線性が得られ、優れた計測精度が実現できる。
【0026】
<第1の実施形態>
以下に、本発明を適用した第1の実施形態の振動式圧力センサについて、図1図5を参照しながら詳述する。
図1は、本実施形態の振動式圧力センサ1A,1Bを示す断面図であり、図1(a)は、計測対象とは別の受圧流体F(例えば、液体又は気体)を用いた場合、図1(b)は、計測対象(例えば、液体又は気体)を受圧流体Kとして用いた場合を示す図である。また、図2は、図1(a),(b)中に示した、振動式圧力センサ1A,1Bにおける圧力検知部を示す平面図であり、図3は、図2中のA-A線に沿う断面図、図4は、図2中のB-B線に沿う断面図である。また、図5は、振動式圧力センサ1A,1Bにおける信号の処理動作を示すブロック図である。
【0027】
[振動式圧力センサの構成]
本実施形態の振動式圧力センサ1Aは、共振周波数の変化値に基づいて静圧を検出可能な圧力検知部1を備え、ベース基板(筐体固定部)2と、支持基板(基板部)3と、ベース基板2と支持基板3との隙間Sに介在して支持基板3を包み込む受圧流体Fとを有する。支持基板3は、ベース基板2に固定される少なくとも1箇所以上の固定部(基板固定部)31と、ベース基板2と離間して固定部31からZ方向と交差する方向(例えば、X方向)に向けて延出する離間部(基板離間部)32とを有する。
そして、本実施形態の振動式圧力センサ1Aは、支持基板3の離間部32に配置され、受圧流体Fによって支持基板3(離間部32)に印加される静圧に応じて生じる歪みに基づいて共振周波数が変化する第1振動子4を有する。つまり、第1振動子4には、受圧流体Fによって支持基板3(離間部32)に印加される静圧によって(離間部32を介して)歪みが生じ、その歪みに基づいて第1振動子4の共振周波数が変化する。
さらに、本実施形態の振動式圧力センサ1Aは、支持基板3の離間部32に配置され、受圧流体Fによって支持基板3に印加される静圧に応じて生じる歪みに基づいて変化する共振周波数の変化量(圧力感度)が第1振動子4における共振周波数の当該変化量(圧力感度)よりも小さい第2振動子5を備えている。
本実施形態においては、上記の第1振動子4が圧力を検出する機能を有し、第2振動子5が温度を検出する機能を有する。
【0028】
より詳細に説明すると、第1振動子4は、例えば、一方の電極から交流電圧(励振信号)が入力されることで、静電吸引力によって励振される。さらに、他方の電極と第1振動子4との間に直流電圧を印加することにより、第1振動子4が励振された際の他方の電極と第1振動子4との間の容量の時間変化に伴い、他方の電極に電流が出力される。このときの、他方の電極に出力される電流を電流電圧変換することで、振動式圧力センサ1Aの出力電圧が得られる。この出力電圧に基づき、一方の電極から入力する励振信号に適切なフィードバックをかけることにより、第1振動子4の共振周波数において、安定した自励振状態が得られる。このような動作は、図5のブロック図に示すアナログ回路81の内部で実現される。そして、アナログ回路81は、その出力電圧を周波数カウンタ82に出力する。
【0029】
第2振動子5は、第1振動子4と同様、一方の電極から交流電圧(励振信号)が入力されることで、静電吸引力によって励振される。さらに、他方の電極と第2振動子5との間に直流電圧を印加することにより、第2振動子5が励振された際の他方の電極と第2振動子5との間の容量の時間変化に伴い、他方の電極に電流が出力される。このような他方の電極に出力される電流を電流電圧変換することで、振動式圧力センサ1Aの出力電圧が得られ、この出力電圧に基づいて、一方の電極から入力する励振信号に適切なフィードバックをかけることで、第2振動子5の共振周波数において安定した自励振状態が得られる。このような動作は、図5のブロック図に示すアナログ回路84の内部で実現され、このアナログ回路84は、その出力電圧を周波数カウンタ85に出力する。
【0030】
次いで、図5中に示す周波数カウンタ82において、アナログ回路81から入力された出力電圧に対して周波数計測が実施される。そして、周波数カウンタ82は、演算部83に対し、第1振動子4の検出信号に基づいた周波数のカウント値であるデジタル信号を出力する。
これとともに、図5中に示す周波数カウンタ85において、アナログ回路84から入力された出力電圧に対して周波数計測が実施され、周波数カウンタ85は、上記の周波数カウンタ82と同様、演算部83に対し、第2振動子5の検出信号に基づいた周波数のカウント値であるデジタル信号を出力する。
その後、演算部83において、周波数カウンタ82から入力されたデジタル信号に対応する圧力値が計算されるとともに、周波数カウンタ85から入力されたデジタル信号に対応する圧力値が計算され、外部にそれらの圧力値を出力する。このとき、演算部83は、周波数カウンタ85から入力されたデジタル信号、即ち、第2振動子5による圧力検知部1の内部温度に応じた周波数を有するデジタル信号を温度補正用信号として用い、この信号から求められた圧力検知部1の内部温度により、圧力検知部1の検出結果を温度補正する。
以上のような動作により、振動式圧力センサ1Aにおいて第1振動子4及び第2振動子5に生じる共振周波数の変化に基づき、圧力検知部1の内部温度による補正が反映された圧力値が得られる。
【0031】
なお、上記説明においては、第1振動子4及び第2振動子5を用いて圧力を測定する例を説明しているが、本実施形態においては、第1振動子4のみを用いて圧力を測定することも可能である。
【0032】
図示例においては、支持基板3は、固定部31を固定端とし、離間部32を自由端として構成されており、圧力検知部1は、概略で1点支持の片持ち梁構造とされている。
【0033】
図示例においては、支持基板3上に形成された積層構造の表面30の上に、さらに、この表面30を覆うようにシェル6が設けられている。
【0034】
ベース基板2は、圧力検知部1の基台であり、例えば、シリコン単結晶ウェハ等の半導体基板からなる。このベース基板2の表面20側には支持基板3の固定部31が固定されている。また、ベース基板2の表面20には、ベース基板2を平面視したときに、周縁部を除いた領域(離間部32と対向する領域)に凹部20aが設けられている。これにより、本実施形態においては、詳細を後述するように、ベース基板2と支持基板3の離間部32との間に、受圧流体F(K)が入り込む隙間Sが確保されている。なお、本発明に係る振動式圧力センサは、ベース基板に凹部を設けることによってベース基板と離間部との間に受圧流体が入り込む隙間を確保した構成には限定されず、例えば、離間部を固定部の厚さよりも薄い厚さで形成することにより、ベース基板と離間部との間に受圧流体が入り込む隙間を確保する構成であってもよい。
【0035】
ベース基板2は、例えば、詳細を後述する支持基板3と熱膨張係数や弾性定数等が近い材料からなることが好ましく、これらの特性が同じ材料(同一の材料)からなることがより好ましい。上述したように、ベース基板2に支持基板3が直接接合されることから、これら各基板に特性が近似した材料を用いることで、印加される圧力や環境温度等によって材料の変形が生じた際の変形量が概略で等しくなるので、ベース基板2と支持基板3との変形量の差によって接合面に生じる応力等が低減される。よって、振動式圧力センサ1の温度特性やヒステリシス、長期安定性等が向上する効果が得られる。
【0036】
支持基板3は、追って詳述する第1振動子4及び第2振動子5を支持する基板であり、ベース基板2に固定される固定部31と、ベース基板2の表面20に設けられた凹部20aに対し、隙間SでZ方向にて離間して固定部31からZ方向と交差する方向(例えば、X方向)に延出する離間部32とを有する。支持基板3は、上述したように、ベース基板2と接合される固定部31と、ベース基板2と離間される離間部32とで片持ち梁構造が構成されている。
【0037】
支持基板3は、固定部31がベース基板2の表面20に接合される。また、支持基板3は、当該支持基板3を平面視したとき、固定部31から概略コの字状に延出するように形成され、且つ、離間部32を囲むように設けられる側壁部33を備えている。この側壁部33は、圧力検知部1における側壁でもあり、固定部31と同様、ベース基板2の表面20に接合されている。また、支持基板3は、離間部32が、側壁部33に囲まれながら該側壁部33と離間した概略舌片状に形成されており、カンチレバーとしての機能を有する(図中のX方向及びY方向を参照)。また、離間部32は、平面視で概略矩形状に形成され、略同一の断面形状で(略均一に)固定部31から図中のX方向へ延出している。
また、離間部32は、図中のZ方向における厚み、即ち、支持基板3の積層方向の厚みが、図中のX方向及びY方向の全体において一定とされている。
【0038】
支持基板3の離間部32における先端(固定部31と反対側の端部)寄りの位置には、詳細を後述する第1振動子4及び第2振動子5が、離間部32の延出方向に沿って並列に配置されている。図示例では、第1振動子4及び第2振動子5が、それぞれ、支持基板3をなす支持層3a上に設けられた活性層3cの位置に配置され、且つ、第1振動子4及び第2振動子5の周囲に所定のクリアランスCが保たれた状態で、それぞれ配置されている。
【0039】
また、支持基板3の固定部31側の位置における表面30には、第1振動子4及び第2振動子5と電気的に接続され、これら各振動子の検出信号を外部の制御機器に送出するためのパッド35a,35b、35c、35d、35e,35fが配置されている。これらパッド35a~35fの材質としては、特に限定されないが、例えば、従来公知のアルミパッド等を何ら制限無く採用することができる。
【0040】
また、図2に示すように、本実施形態においては、パッド35a,35cが、それぞれ、電極36a、電極36cに接続され、パッド35bが電極36bを介して第1振動子4と接続されている。また、パッド35d、35fが、それぞれ、電極36d、電極36fに接続され、パッド35eが電極36eを介して第2振動子5と接続される。ここで、本実施形態においては、図4中におけるパッド35bと電極36bとの接続構造に示すように、シェル6、並びに、後述するTEOS酸化膜3eを貫通する孔部内に各パッドを配置することで、各パッドと各電極とが電気的に接続される。
なお、上述した各々の電極36a~36fの材料としても、従来からこの分野で用いられている導電材料を何ら制限無く採用することができる。
【0041】
本実施形態においては、パッド35a,35b,35c及び電極36a,36b,36cを用いて、第1振動子4を励振させるための励振信号が外部から供給されるとともに、第1振動子4で発生した第1検出信号(圧力及び温度に応じた周波数を有する信号)が外部に向けて出力される。また、パッド35d,35e,35f及び電極36d、36e,36fを用いて、第2振動子5を励振させるための励振信号が外部から供給されるとともに、第2振動子5で発生した第2検出信号(温度のみ又は圧力及び温度に応じた周波数を有する信号)が外部に向けて出力される。
【0042】
支持基板3の材料としては、特に限定されないが、上述したように、この支持基板3の固定部31が直接接合されるベース基板2と特性が近似した材料からなることが好ましく、同じ材料からなることがより好ましい。支持基板3としては、詳細については後述するが、例えば、シリコン単結晶ウェハ等の半導体基板からなるものを採用できる。
【0043】
また、本実施形態の支持基板3をなす支持層3a上には、図3の断面図に示した層構造のように、埋め込み酸化膜3b、活性層3c、不純物拡散層3d、及びTEOS(テトラエトキシシラン)酸化膜3eが順次積層され、所謂SOI(Silicon on Insurator)構造が形成されている。そして、図3等に示す例においては、支持層3a上に形成された上記の層構造における活性層3cの位置で第1振動子4及び第2振動子5が形成されている。
【0044】
支持基板3をなす支持層3aは、不純物がドープされたシリコン単結晶であり、1×1018~1×1019(cm-3)程度の均一なボロン濃度を有する層である。また、支持層3aは、上記のSOI構造における基台として機能する。
埋め込み酸化膜3bは、支持基板3の支持層3a上に形成され、支持層3aを構成するシリコン単結晶に対して酸化処理が施された絶縁膜であり、上述した各電極間(電極36aと電極36cとの間、並びに、電極36dと電極36fとの間)を電気的に絶縁する機能を有する。
活性層3cは、ドープされたシリコン単結晶であって、例えば、1×1017~1×1018(cm-3)程度の均一なボロン濃度を有する層である。
不純物拡散層3dは、活性層3cに対して、不純物としてボロン(B)が高濃度に拡散された層である。
また、TEOS酸化膜3eは、不純物拡散層3dが形成された活性層3cに対して、テトラエトキシシラン(TEOSガス)を材料として形成されるシリコン酸化膜であり、埋め込み酸化膜3bと同様、上述した各電極間(電極36aと電極36cとの間、並びに、電極36dと電極36fとの間)を電気的に絶縁する絶縁膜として機能する。
【0045】
第1振動子4は、本実施形態の振動式圧力センサ1における圧力検出用振動子であり、支持基板3の離間部32に設けられる。
第1振動子4は、図2図5に示すように、支持基板3をなす支持層3a上に設けられた活性層3cをなすシリコン単結晶を加工することで線状に形成されており、Z方向における活性層3cの位置で形成されている。
【0046】
第1振動子4は、電極36aと電極36cの間にY方向で挟み込まれるように配置されている。
また、第1振動子4は、Y方向及びZ方向において周囲に所定のクリアランスCが確保され、X方向の両端部が支持された両持ち梁構造に形成されている。
また、第1振動子4は、詳細を後述するシェル6によって周囲のクリアランスCが真空状態に保持されることにより、支持基板3とシェル6との間に真空封止されている。
【0047】
そして、第1振動子4は、電極36aから入力される励振信号によって励振し、また、印加された圧力に応じた周波数を有する信号を電極36cから出力する。
即ち、第1振動子4には、受圧流体F(K)によって支持基板3に印加される静圧に応じた歪みが生じ、この歪みに基づいて変化した第1振動子4の共振周波数の変化値は、上述したように、周波数信号として、図5のブロック図に示すアナログ回路81を介して周波数カウンタ82に出力される。周波数カウンタ82においては、アナログ回路81から入力された出力電圧に対して周波数計測が実施され、周波数のカウント値であるデジタル信号が演算部83に出力される。そして、演算部83においては、周波数カウンタ82から入力されたデジタル信号に対応する圧力値が演算される。
圧力検知部1においては、上記構成により、当該圧力検知部1に作用する静圧(等方的な圧力)を検出できるように第1振動子4が設けられている。
【0048】
本実施形態においては、第1振動子4が不純物を含む半導体材料からなり、且つ、不純物の濃度が1×1020(cm-3)以上であるとともに、不純物の原子半径が、母材であるシリコンの原子半径よりも小さいことがより好ましい。
より詳細に説明すると、第1振動子4に含まれる不純物としては、例えば、ボロン(B)やリン(P)等が挙げられる。この場合、第1振動子4を構成するシリコンよりも原子半径の小さな不純物が当該シリコンと置き換わるため、第1振動子4が縮む方向に作用する。しかしながら、第1振動子4の固定端4a,4bは固定されているため、第1振動子4には引張応力が予め作用・付与されることとなる。その結果、通常、高圧の静圧下において、引張応力が付与されていない場合には、第1振動子4の固定端4a,4bに生じる圧縮応力によって第1振動子4が座屈して圧力計測機能が失われる虞があるのに対し、本実施形態の圧力検知部1は、引張応力が予め付与されており、その引張応力で当該圧力検知部1に作用する圧縮応力を相殺できるため、第1振動子4が座屈するのを防止でき、圧力計測機能を維持することが可能になる。
【0049】
ここで、上記の非特許文献1に記載された平面視でH字状の振動子(H型振動子:非特許文献1のfig.1を参照)に対して、例えば、不純物であるボロンを1×1020(cm-3)以上の濃度で含み、且つ、不純物の原子半径が母材であるシリコンの原子半径よりも小さい半導体材料を適用した場合について説明する。
例えば、非特許文献1のようなH型振動子を備える振動式圧力センサ等においても、振動子を形成する選択エピタキシャル工程において1×1020(cm-3)以上の濃度のボロンを導入することで、振動子の座屈を防ぎながら、高い静圧を計測できる圧力センサを実現できる。
【0050】
なお、本実施形態の振動式圧力センサ1Aに備えられる圧力検知部1においては、離間部32における第1振動子4の配置位置が、図2中に示すX方向において、固定部31と離間部32との接続箇所を基点として、離間部32の長さの1/2以上2/3以下の位置であることが、圧力センサとしての感度及び計測精度が高められる観点からより好ましい。
【0051】
第2振動子5は、本実施形態の振動式圧力センサ1Aにおける温度検出用振動子であり、圧力検出用の第1振動子4と同様、支持基板3の離間部32に設けられる。第2振動子5は、図2等に示す例では、第1振動子4とY方向で離間しつつ、当該第1振動子4と平行(X方向に延出する)に設けられるとともに、離間部32において第1振動子4とY方向で対称となる位置に設けられる。
即ち、第2振動子5は、図2図5に示すように、支持基板3をなす支持層3a上に設けられた活性層3cをなすシリコン単結晶を加工することでX方向に延設された線状に形成されており、Z方向における活性層3cの位置で形成されている。
【0052】
第2振動子5は、電極36dと電極36fの間にY方向で挟み込まれるように配置されている。
また、第2振動子5も、第1振動子4の場合と同様、Y方向及びZ方向において周囲に所定のクリアランスCが確保され、X方向の両端部が支持された両持ち梁構造に形成されている。
また、第2振動子5も、第1振動子4と同様、詳細を後述するシェル6によって周囲のクリアランスCが真空状態に保持されることにより、支持基板3とシェル6との間に真空封止されている。
【0053】
そして、第2振動子5は、電極36dから入力される励振信号によって励振し、また、第1振動子4と異なる圧力感度で圧力に応じた周波数を有する信号を、圧力計測時の温度補正用信号として電極36fから出力する。
【0054】
第1振動子4及び第2振動子5は、圧力に応じて共振周波数が変化し、さらに、圧力検知部1の内部温度(第1振動子4の温度及び第2振動子5の温度とほぼ等しい温度)に応じたヤング率の変化や材料間の線膨張係数の差によっても共振周波数が変化する。これに加え、本実施形態では、第2振動子5の共振周波数の圧力感度が、第1振動子4の共振周波数の圧力感度に比べて小さいことにより、第2振動子5の共振周波数の変化値と第1振動子4の共振周波数の変化値との差分から圧力検知部1の内部温度(温度検出信号)を求めることができる。そして、求めた内部温度と、第1振動子4の共振周波数の変化値(圧力検出信号)とから、圧力検知部1に印加されるより正確な圧力値を求めることができる。
【0055】
ここで、上述した「共振周波数の圧力感度」とは、単位圧力あたりの共振周波数の変化量であり、その単位は、例えば、「Hz/Pa」等である。また、共振周波数の圧力感度を変化率で表す場合には、その単位は、例えば、「ppm/Pa」等である。
【0056】
また、本実施形態の振動式圧力センサ1Aに備えられる圧力検知部1においては、離間部32における第2振動子5の配置位置についても、第1振動子4の場合と同様、図2中に示すX方向において、固定部31と離間部32との接続箇所を基点として、離間部32の長さの1/2以上2/3以下の位置であることが、温度検出精度が高められ、圧力センサとしての感度及び計測精度の向上にも寄与する観点からより好ましい。
【0057】
シェル6は、支持基板3上に配置され、図3等に示す例では、支持層3a上の積層構造において最上層に配置されたTEOS酸化膜3eの表面30を覆うように設けられる。また、上述したように、シェル6は、第1振動子4及び第2振動子5を真空封止するものである。即ち、シェル6は、第1振動子4及び第2振動子5の周囲に設けられたクリアランスCを封止しながら、上記の表面30に接合される。
シェル6の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリシリコン等を用いることができる。
【0058】
ケーシング50の内部に、圧力検知部1が収容されるとともに、受圧流体F又は受圧流体Kが収容されることで、図1(a),(b)に示すようなケーシング付きの振動式圧力センサ1A又は振動式圧力センサ1Bが構成される。
【0059】
ケーシング50の内部で、ベース基板2や支持基板3等の圧力検知部1を構成する各部材が保護されるとともに、当該内部に受圧流体F,Kが収容されることで、計測対象である外部からの印加圧力が支持基板3に伝えられる。
また、ケーシング50は、振動式圧力センサ1A,1Bにおける基台として機能し、図示例においては、内底部上に台座53が設けられ、その上に圧力検知部1が設置されている。
【0060】
ケーシング50としては、例えば、酸化アルミニウム等のセラミックスや、コバール、SUS316L、又はインコネル等の金属によって形成される箱状部材が用いられる。
また、図1(a),(b)においては図示を省略しているが、ケーシング50には、内部に収容された圧力検知部1に備えられているパッド35a~35fと図視略の金属ワイヤによって電気的に接続され、外部機器との接続に用いられる複数の端子部が備えられている。
【0061】
図1(a)に示す例の振動式圧力センサ1Aは、ケーシング50の内部に圧力伝搬隔壁部材52によって計測対象と隔離された受圧流体Fを収容したものであり、例えば、流体による高い静圧が印加された状態で当該静圧(圧力)を測定する用途に用いられる。図示例の振動式圧力センサ1Aは、ケーシング50の天板部に設けられた貫通孔51に圧力伝搬隔壁部材52が設けられている。この圧力伝搬隔壁部材としては、従来からこの分野で用いられている金属材料や樹脂材料等を何ら制限無く採用することができる。
【0062】
一方、図1(b)に示す例の振動式圧力センサ1Bは、ケーシング50の内部に計測対象の流体を受圧流体Kとして収容したものであり、例えば、一般的な大気圧等を計測する用途に用いられるものである。このように、図1(b)に示す振動式圧力センサ1Bは、圧力伝搬隔壁部材等が設けられておらず、貫通孔51が外部雰囲気に向けて開放された状態とされる。
【0063】
[振動式圧力センサの動作]
次に、上述した振動式圧力センサ1Aの動作について簡単に説明する。
まず、圧力検知部1に受圧流体Fを介して静圧が作用すると、この圧力が支持基板3に印加され、当該支持基板3の少なくとも一部(固定部31を除く部分であり、本実施形態においては離間部32)がほぼ等方的に圧縮される。このとき、第1振動子4には、離間部32の圧縮(支持基板3に印加される圧力)に応じた歪みが生じ、この歪みに基づいて第1振動子4の共振周波数が変化する。これとともに、第2振動子5にも、離間部32の圧縮(支持基板3に印加される圧力)に応じた歪みが生じ、この歪みに基づいて第2振動子5の共振周波数が変化する。
【0064】
第1振動子4は、電極36aから入力される励振信号によって振動しており、上記の歪みに基づいて生じる共振周波数の変化値は、上述したように、周波数信号として、図5に示すアナログ回路81を介して周波数カウンタ82にされる。周波数カウンタ82では、アナログ回路81から入力された出力電圧に対して周波数計測が実施され、周波数のカウント値であるデジタル信号を演算部83に出力する。
【0065】
さらに、圧力検知部1は、上記の第1振動子4による圧力の計測と同時に、第2振動子5による内部温度に応じた周波数を有する信号を温度補正用信号として用い、この信号から求められた圧力検知部1の内部温度により、圧力検知部1の検出結果を温度補正することができる。即ち、第2振動子5は、電極36dから入力される励振信号によって振動しており、離間部32の圧縮に応じた歪みに基づいて生じる共振周波数の変化値は、上記同様、周波数信号として、アナログ回路84を介して周波数カウンタ85にされる。周波数カウンタ85では、アナログ回路84から入力された出力電圧に対して周波数計測が実施され、周波数のカウント値であるデジタル信号を演算部83に出力する。
【0066】
そして、演算部83では、周波数カウンタ82から入力されたデジタル信号に対応する圧力値が演算されるとともに、周波数カウンタ85から入力されたデジタル信号に対応する圧力値が演算される。このとき、演算部83は、周波数カウンタ85から入力された、第2振動子5による内部温度に応じた周波数を有するデジタル信号を温度補正用信号として用い、この信号から求められた圧力検知部1の内部温度により、圧力検知部1の検出結果を温度補正する。
上記動作により、第1振動子4及び第2振動子5に生じる共振周波数の変化に基づき、圧力検知部1の内部温度による温度補正が反映された圧力値が得られる。
【0067】
なお、上述したように本実施形態においては、第2振動子5を用いた温度補正を行わずに、第1振動子4のみを用いて圧力を測定することも可能である。
【0068】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態の振動式圧力センサ1Aによれば、少なくとも、ベース基板2に固定される固定部31及び離間部32を有する支持基板3と、支持基板3の離間部32に配置され、受圧流体Fによって支持基板3に印加される静圧に応じて生じる歪みに基づいて、共振周波数が変化する第1振動子4を備えている。これにより、計測対象である液体又は気体等によって印加される静圧の高低にかかわらず、高い直線性、並びに、優れた計測精度が得られる。
【0069】
<第2の実施形態>
以下に、本発明を適用した第2の実施形態の振動式圧力センサについて、主として図6を適宜参照しながら詳述する。
なお、第2の実施形態の振動式圧力センサの説明において、上述した第1の実施形態の振動式圧力センサ1Aと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
また、図6においては、第2の実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10のみを示し、例えば、ケーシングや受圧流体等については図示を省略している。
【0070】
図6は、第2の実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10を説明する平面図である。図6に示すように、本実施形態の振動式圧力センサは、圧力検知部10に備えられる支持基板(基板部)3Aが、この支持基板3Aを貫通するように設けられる歪緩和孔37を有する点で、上述した第1の実施形態の振動式圧力センサ1Aとは異なる。
【0071】
歪緩和孔37は、支持基板3Aにおける離間部(基板離間部)32A及びシェル6をZ方向で貫通するように設けられる。また、図示例の歪緩和孔37は、支持基板3Aを平面視したとき、第1振動子4と第2振動子5との間に設けられている。
【0072】
本実施形態の振動式圧力センサによれば、支持基板3Aに歪緩和孔37が設けられていることで、ベース基板2から固定部31を介して離間部32Aに伝播され得る歪み、及び、離間部32A内で伝播され得る歪みが歪緩和孔37によって吸収される。これにより、ベース基板2から固定部31を介して離間部32Aに伝播され得る歪み、及び、離間部32A内で伝播され得る歪みの両方が抑制(低減)されるので、計測誤差の要因となり得るこれらの歪み伝播の影響を軽減でき、第1振動子4及び第2振動子5の共振周波数がより静圧に応じた変化を示すこととなる。
従って、上記のような、高い直線性、並びに、優れた計測精度が得られる効果がより顕著に得られる。
【0073】
<第3の実施形態>
以下に、本発明を適用した第3の実施形態の振動式圧力センサについて、主として図7を参照しながら詳述する。
なお、第3の実施形態の振動式圧力センサの説明においても、上述した第1,2の実施形態の振動式圧力センサと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
また、図7においても、図6に示した第2の実施形態の振動式圧力センサの場合と同様、第3の実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Aのみを示し、ケーシングや受圧流体等については図示を省略している。
【0074】
図7は、第3の実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Aを説明する平面図である。図7に示すように、本実施形態の振動式圧力センサは、圧力検知部10Aに備えられる支持基板(基板部)3Bにおいて、第1振動子4と第2振動子5が、それぞれ異なる離間部(基板離間部)32B又は離間部(基板離間部)32Cに配置されている点で、上述した第1,2の実施形態の振動式圧力センサ1A等とは異なる。
即ち、本実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Aは、支持基板3Bに二つの離間部32B,32Cが設けられ、それぞれに、第1振動子4又は第2振動子5が配置されている。
【0075】
具体的には、本実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Aにおいては、基板離間部として、離間部32B及び離間部32Cを有し、離間部32Bに圧力検出用の第1振動子4が配置され、離間部32Cに温度検出用の第2振動子5が設置されている。
離間部32Bと離間部32Cとは、Y方向で離間しつつ、互いに平行に配列されている。また、離間部32Bと離間部32Cとは、その延出方向(X方向)において概略同じ位置及び大きさとなるように整列されている。
【0076】
本実施形態の振動式圧力センサによれば、上記のように、第1振動子4と第2振動子5が、それぞれ、独立して設けられる離間部32B又は離間部32Cに配置されていることで、振動エネルギーの授受等が生じ難い。
従って、圧力計測の誤差をさらに抑制することが可能になる。
【0077】
なお、図7に示す例では、一つの支持基板3Bに二つの離間部32B,32Cが設けられた構成を示しているが、これには限定されない。例えば、一つの支持基板(基板部)に設けられる離間部(基板離間部)が三つ以上であってもよい。また、例えば、複数の支持基板(基板部)を備えたうえで、それぞれの支持基板に離間部が個別に(独立して)設けられた構成、即ち、複数の支持基板に設けられる少なくとも2以上の離間部を有する構成を採用してもよい。
【0078】
<第4の実施形態>
以下に、本発明を適用した第4の実施形態の振動式圧力センサについて、主として図8図10を参照しながら詳述する。
なお、第4の実施形態の振動式圧力センサの説明においても、上述した第1,2,3の実施形態の振動式圧力センサと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
また、図8図10においても、図6及び図7に示した第2,3の実施形態の振動式圧力センサの場合と同様、第4の実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Bのみを示し、ケーシングや受圧流体等については図示を省略している。
【0079】
図8は、第4の実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Bを説明する平面図であり、図9は、図8中のC-C線に沿う断面図、図10は、図8中のD-D線に沿う断面図である。
図8~10に示す本実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Bは、第1振動子4及び第2振動子5が単結晶シリコン材料からなる。また、圧力検知部10Bにおける第1振動子4と第2振動子5とは、各々における不純物の濃度が、単位を(cm-3)としたとき、少なくとも1桁以上異なる値である。そして、圧力検知部10Bは、第2振動子5の共振周波数の温度係数が、第1振動子4の共振周波数の温度係数に比べて大きい構成とされている。ここで、上述した共振周波数の温度係数とは、単位温度あたりの共振周波数の変化率であって、その単位は、例えば、(ppm/℃)等である。
【0080】
より具体的に説明すると、本実施形態の振動式圧力センサは、例えば、単結晶シリコン材料からなる第1振動子4と第2振動子5が、一方の不純物の濃度を[a×10(cm-3)]としたとき、他方の不純物の濃度が[a×10n-1(cm-3)]以下、又は、[a×10n+1(cm-3)]以上となる。
【0081】
本実施形態の振動式圧力センサは、図示を省略する工程フローにより、第1振動子4には高濃度の不純物を拡散し、第2振動子5には不純物の拡散を行わないことにより、共振周波数の温度係数を異にする構成とされている。即ち、本実施形態では、図8中に示す支持基板3の非拡散領域R、即ち、第2振動子5の近傍の領域には不純物の拡散を行っていない。
【0082】
より具体的には、図9に示すように、本実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Bは、支持基板3における第1振動子4の周辺には不純物拡散層3dが形成されているが、第2振動子5の周辺には不純物拡散層3dが形成されていない。これにより、圧力検知部10Bは、第1振動子4と第2振動子5とで不純物濃度が大きく異なる構成とすることができる。
【0083】
一般に、振動子に含まれる不純物の濃度や種類、振動子を構成する材料の結晶軸方向、並びに圧力計測に用いる振動子の共振モードにより、その共振周波数の温度係数が変化することが知られている。本実施形態においては、上記のように、第1振動子4と第2振動子5との間で、不純物の濃度[cm-3]が少なくとも1桁以上異なる値に設定することにより、第1振動子4の共振周波数の温度係数に比べ、第2振動子5の共振周波数の温度係数を大きくする。即ち、本実施形態においては、振動式圧力センサに温度変化があった場合、第1振動子4の共振周波数の変化量に比べて、第2振動子5の共振周波数の変化量が大きくなることを意味する。つまり、第2振動子5の温度感度が第1振動子4の温度感度と比較して高くなるため、第1振動子4を用いた圧力測定において、第2振動子5を用いた温度測定による(二つの振動子(第1振動子4及び第2振動子5)における共振周波数から算出される内部温度を用いた)温度補正を高精度で行うことが出来る。従って、第1振動子4を用いた圧力測定の温度補正精度が向上される。
【0084】
一例として、不純物にボロン(B)を用い、単結晶シリコン材料からなる支持基板3において、第1振動子4が配置される領域(第1振動子4を構成する材料)の結晶軸方向を<110>方向、ウェハ表面の法線方向を<100>方向とし、固定端4a,4bにおける基本振動がウェハの面内に振動するモードである場合について説明する。上記のような条件において、第1振動子4の不純物濃度を1020(cm-3)、第2振動子5の不純物濃度を1018(cm-3)程度にした場合、共振周波数の温度係数は、第1振動子4においては-10(ppm/℃)、第2振動子5においては-30(ppm/℃)程度になる。つまり、第2振動子5の温度感度が第1振動子4の温度感度と比較して高くなるため、第1振動子4を用いた圧力測定において、第2振動子5を用いた温度測定による温度補正を高精度で行うことが出来る。従って、第1振動子4を用いた圧力測定の温度補正精度が向上される。
【0085】
また、本実施形態では、詳細な図示は省略するが、第2振動子5の、支持基板3の厚み方向に沿った厚み寸法が、第1振動子4の厚み寸法に比べて大きいことがより好ましい。つまり、第2振動子5の、支持基板3の積層方向、即ち、Z方向における厚み寸法が、第1振動子4の厚み寸法に比べて大きいことがより好ましい。このような構成を採用することにより、第2振動子5による内部温度の計測精度がより高められ、温度補正精度も向上するので、結果として、圧力検知部1による圧力の計測精度も高められる。
【0086】
上記のような、第2振動子5の厚み寸法が、第1振動子4の厚み寸法に比べて大きい構成は、以下に説明するような製造工程の条件に依存する。
例えば、上述したような、第1振動子4に不純物を高濃度で導入する際には、まず、第2振動子5を形成する領域に不純物が導入されることを防ぐため、当該領域に熱酸化膜からなるマスクを形成する。
次いで、第1振動子4に、ガス材料、もしくは塗布ガラス材料を用いて不純物拡散源を形成し、その後、1000℃以上の高温下で、第1振動子4中に不純物を導入、並びに拡散させる。このような、第1振動子4中に不純物を導入並びに拡散させる高温下での工程は、一般に酸素を供給しながら実施するため、シリコンの表面が露出している面では、シリコンが酸化されてシリコン酸化膜が形成される。
上記のような工程の結果、上述した第1振動子4の厚み寸法は、活性層の元の厚みよりも小さくなる。一方、第2振動子5の厚み寸法は、活性層の元の厚みと同等になる。これにより、第2振動子5の厚み寸法が、第1振動子4の厚み寸法に比べて大きくなる。
【0087】
なお、本実施形態で説明する「支持基板(基板部)3の厚み方向に沿った厚み寸法」とは、支持基板3の積層方向であって、図中のZ方向における厚み寸法のことをいう。
【0088】
<第5の実施形態>
以下に、本発明を適用した第5の実施形態の振動式圧力センサについて、主として図11及び図12を参照しながら詳述する。
なお、第5の実施形態の振動式圧力センサの説明においても、上述した第1~4の実施形態の振動式圧力センサと共通する構成については、図中において同じ符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
また、図11及び図12においても、図6図10に示した第2~4の実施形態の振動式圧力センサの場合と同様、第5の実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Cのみを示し、ケーシングや受圧流体等については図示を省略している。
【0089】
図11は、第5の実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Cを概略で説明する断面図であり、図12はその平面図である。なお、図11は、図12中におけるE-E線に沿う断面図である。
図11に示すように、本実施形態の振動式圧力センサは、ベース基板(基板部)2A及び支持基板(基板部)3Cを有する圧力検知部10Cに、さらに、ベース基板2Aが固定される台座(固定基板(筐体固定部))53を備える。
また、本実施形態の振動式圧力センサに備えられる圧力検知部10Cは、ベース基板2Aが、台座53の表面53aに固定される少なくとも1箇所以上の固定部(基板固定部)21と、台座53と距離SでZ方向に離間して固定部21から表面53aに沿って(Z方向と交差する方向、例えば、X方向)延出する離間部(基板離間部)22,23とを有する。図示例では、ベース基板2Aが、固定部21を支点とし、離間部22及び離間部23が自由端とされた片持ち梁構造として構成されている。
そして、本実施形態の振動式圧力センサは、図11中では図示を省略する受圧流体が、台座53とベース基板2Aとの隙間Sに介在しながら、ベース基板2A(離間部22及び離間部23)を包み込むように構成される。
なお、図11及び図12に示す本実施形態の振動式圧力センサにおいても、図8~10に示した第4の実施形態の振動式圧力センサの場合と同様、支持基板3Cにおける第1振動子4の周辺には不純物拡散層3dが形成されている一方、第2振動子5の周辺には不純物拡散層3dが形成されていない。
【0090】
本実施形態の振動式圧力センサによれば、ベース基板2Aが、上記のような固定部21及び離間部22,23を備える構成を採用することで、第1~4の実施形態で説明した振動式圧力センサと同様、受圧流体によって支持基板3Cに印加された静圧に応じて生じる歪みに基づいて第1振動子4の共振周波数が変化する。これにより、計測対象である液体又は気体等によって印加される静圧の高低にかかわらず、高い直線性、並びに、優れた計測精度が得られる。
【0091】
一方、本実施形態の振動式圧力センサにおいては、上記のように、ベース基板2Aが台座53に対する離間部22,23を有する構成なので、支持基板3Cには、第1~4の実施形態で説明したような離間部を設けてもよいし、設けなくても構わない。なお、図11には、支持基板3Cにおいても、ベース基板2Aの凹部20aとの間に離間部が設けられている例を示している。
【0092】
台座53としては、ベース基板や支持基板と同様、シリコン単結晶ウェハ等の材料を何ら制限なく用いることができる。
【0093】
なお、本実施形態の振動式圧力センサにおいては、図示例のように、ベース基板2Aにおける離間部22,23の少なくとも一部に、凹状の歪絶縁用溝24、又は、ベース基板2Aを貫通する歪絶縁用孔25の少なくとも何れかが設けられていることがより好ましい。図示例においては、離間部22の1箇所に、台座53側に向かって開口するように、凹状の歪絶縁用溝24が設けられているとともに、離間部23の1箇所に歪絶縁用孔25が設けられている。
本実施形態においては、上記の歪絶縁用溝24及び歪絶縁用孔25がベース基板2Aに設けられていることにより、台座53からベース基板2A(離間部22及び離間部23)を介して支持基板3Cに伝播され得る歪み、及び、ベース基板2A内を伝播され得る歪みが歪絶縁用溝24又は歪絶縁用孔25によって吸収される。これにより、台座53からベース基板2A(離間部22及び離間部23)を介して支持基板3Cに伝播される歪み、及び、ベース基板2A内を伝播され得る歪みが抑制(低減)されるので、計測誤差の要因となり得るこれら歪みの伝播の影響を低減でき、第1振動子4及び第2振動子5の共振周波数がより静圧に応じた変化を示すこととなる。従って、上記のような、高い直線性、並びに、優れた計測精度が得られる効果がより顕著に得られる。
【0094】
<その他の構成>
以上、本発明の各実施形態について説明したが、これらの各実施形態は一例として示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。これらの各実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるのと同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0095】
例えば、上述した各実施形態では、支持基板又はベース基板における離間部が1点の固定部でベース基板又は台座(固定基板)に支持された、所謂片持ち梁構造の例を示しているが、これには限定されず、例えば、2点以上の固定部で離間部が支持された構成を採用することも可能である。
【0096】
また、本発明に係る振動式圧力センサにおいて採用した、支持基板が、ベース基板との間に隙間を有する離間部を備え、当該離間部に振動子を配置した構成は、例えば、平面視でH字状の振動子(H型振動子:例えば、上記の非特許文献1におけるfig.1を参照)を備える振動式圧力センサ等にも適用可能である。具体的には、上記のH字状の振動子を、例えば、上述した各実施形態に記載の振動子に代えて、支持基板3,3A,3B,3Cにおける離間部32,32A,32B,32Cであって、シェル6によって真空封止された空間に設けることにより、上述した各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の振動式圧力センサは、計測対象である流体等によって印加される静圧の高低にかかわらず、直線性が高く、計測精度に優れている。従って、本発明の振動式圧力センサは、高い静圧が印加される用途において、特に有用である。
【符号の説明】
【0098】
1A,1B…振動式圧力センサ
1,10,10A,10B,10C…圧力検知部
2…ベース基板(筐体固定部)
2A…ベース基板(基板部)
20…表面
20a…凹部
21…固定部(基板固定部)
22,23…離間部(基板離間部)
24…歪絶縁用溝
25…歪絶縁用孔
3,3A,3B,3C…支持基板(基板部)
3a…支持層
3b…埋め込み酸化膜
3c…活性層
3d…不純物拡散層
3e…TEOS酸化膜
30…表面
31…固定部(基板固定部)
32,32A,32B,32C…離間部(基板離間部)
33…側壁部
35a,35b,35c,35d,35e,35f…パッド
36a,36b,36c,36d,36e,36f…電極
37…歪緩和孔
R…非拡散領域
4…第1振動子
4a,4b…固定端
5…第2振動子
5a,5b…固定端
6…シェル
50…ケーシング
51…貫通孔
52…圧力伝搬隔壁部材
53…台座(固定基板(筐体固定部))
53a…表面
S…隙間
C…クリアランス
F,K…受圧流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12