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特許7216951干渉型光ファイバジャイロ及びセンシングコイル機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】干渉型光ファイバジャイロ及びセンシングコイル機構
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/72 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
G01C19/72 P
G01C19/72 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018139195
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020016525
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】501392361
【氏名又は名称】株式会社 オプトクエスト
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】巳谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】児子 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠均
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 賢志
(72)【発明者】
【氏名】鳥取 裕作
(72)【発明者】
【氏名】高畠 武敏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 治幸
(72)【発明者】
【氏名】多久島 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0037972(US,A1)
【文献】特開2015-166731(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103047980(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左回り光と右回り光との光干渉により角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロにおいて、
複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、前記複数の伝送コアのうち、少なくとも第1の伝送コア及び第2の伝送コアのそれぞれを光結合して1本の光路を形成するマルチコアファイバ光路結合部とを有するセンシングコイル機構を具備し、
前記光路の長さを2分する前記光路の中心点から、右回りに前記光路に沿って第1の距離を隔てた位置にある伝送コアと、左回りに前記光路に沿って前記第1の距離を隔てた位置にある伝送コアとが前記マルチコアファイバ内で隣接し、
前記マルチコアファイバ光路結合部は、
第1光入出力デバイスと、
第2光入出力デバイスと、
前記第1光入出力デバイスと前記第2光入出力デバイスとの間に設けられた複数のシングルモードファイバと
を含み、
前記第1光入出力デバイスと前記第2光入出力デバイスとによって、前記第1の伝送コア及び前記第2の伝送コアのそれぞれが光結合され、
前記複数のシングルモードファイバの中のいずれかが前記第1光入出力デバイス介した前記第1の伝送コアからの光入出力と、前記第2光入出力デバイスを介した前記第2の伝送コアからの光入出力とを結合して前記1本の光路が形成される
干渉型光ファイバジャイロ。
【請求項2】
左回り光と右回り光との光干渉により角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロにおいて、
複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、前記複数の伝送コアのうち、少なくとも第1の伝送コア及び第2の伝送コアのそれぞれを光結合して1本の光路を形成するマルチコアファイバ光路結合部とを有するセンシングコイル機構を具備し、
前記光路の長さを2分する前記光路の中心点から、右回りに前記光路に沿って第1の距離を隔てた位置にある伝送コアと、左回りに前記光路に沿って前記第1の距離を隔てた位置にある伝送コアとが前記マルチコアファイバ内で隣接している
干渉型光ファイバジャイロ。
【請求項3】
左回り光と右回り光との光干渉により角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロにおいて、
光源と、
前記光源から放出された光を分岐する第1光分岐器と、
前記第1光分岐器によって分岐された光の偏向を単一偏向にするポラライザと、
前記ポラライザによって単一偏向にされた光を2つに分岐する第2光分岐器と、
前記第2光分岐器によって分岐された、それぞれの光の位相を変調する光変調器と、
複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、前記マルチコアファイバの少なくとも第1の伝送コア及び第2の伝送コアのそれぞれを光結合する光入出力デバイスとを有し、前記マルチコアファイバ及び前記光入出力デバイスによって1本の光路が形成され、前記光変調器によって位相変調されたそれぞれの前記光が前記左回り光と前記右回り光として前記光路内を逆向きに進行するセンシングコイル機構と、
前記センシングコイル機構から放出された、前記左回り光と右回り光とが前記第2光分岐器を介して干渉する干渉光を受光する受光器と
を具備し、
前記光路の長さを2分する前記光路の中心点から、右回りに前記光路に沿って第1の距離を隔てた位置にある伝送コアと、左回りに前記光路に沿って前記第1の距離を隔てた位置にある伝送コアとが前記マルチコアファイバ内で隣接し、
前記光入出力デバイスは、第1光入出力デバイスと、第2光入出力デバイスとを含み、
前記第1光入出力デバイスと前記第2光入出力デバイスとの間に複数のシングルモードファイバが設けられ、
前記第1光入出力デバイスと前記第2光入出力デバイスとによって、前記第1の伝送コア及び前記第2の伝送コアのそれぞれが光結合され、
前記複数のシングルモードファイバの中のいずれかが前記第1光入出力デバイス介した前記第1の伝送コアからの光入出力と、前記第2光入出力デバイスを介した前記第2の伝送コアからの光入出力とを結合して前記1本の光路が形成される
干渉型光ファイバジャイロ。
【請求項4】
左回り光と右回り光との光干渉により角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロにおいて、
光源と、
前記光源から放出された光を分岐する第1光分岐器と、
前記第1光分岐器によって分岐された光の偏向を単一偏向にするポラライザと、
前記ポラライザによって単一偏向にされた光を2つに分岐する第2光分岐器と、
前記第2光分岐器によって分岐された、それぞれの光の位相を変調する光変調器と、
複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、前記マルチコアファイバの任意の伝送コア間を光結合する光入出力デバイスとを有し、前記マルチコアファイバ及び前記光入出力デバイスによって1本の光路が形成され、前記光変調器によって位相変調されたそれぞれの前記光が前記左回り光と前記右回り光として前記光路内を逆向きに進行するセンシングコイル機構と、
前記センシングコイル機構から放出された、前記左回り光と右回り光とが前記第2光分岐器を介して干渉する干渉光を受光する受光器と
を具備し、
前記光路の長さを2分する前記光路の中心点から、右回りに前記光路に沿って第1の距離を隔てた位置にある伝送コアと、左回りに前記光路に沿って前記第1の距離を隔てた位置にある伝送コアとが前記マルチコアファイバ内で隣接している
干渉型光ファイバジャイロ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載された干渉型光ファイバジャイロにおいて、
前記複数の伝送コアは、前記マルチコアファイバの中心に位置する中心コアと、前記中心コアの周りに配置された偶数個の周辺コアとを有し、
前記中心コア内に前記光路の中心点がある
干渉型光ファイバジャイロ。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載された干渉型光ファイバジャイロにおいて、
前記複数の伝送コアは、偶数個のコアを有し、
前記偶数個のコアにより前記光路が形成される
干渉型光ファイバジャイロ
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載された干渉型光ファイバジャイロにおいて、
前記マルチコアファイバが前記光路の中心点に対して対称になるようにコイル状に巻回された
干渉型光ファイバジャイロ。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1つに記載された干渉型光ファイバジャイロにおいて、
第2光分岐器、前記ポラライザ、及び前記光変調器が1つの基板上に集積され、前記基板上に光集積回路が構成されている
干渉型光ファイバジャイロ。
【請求項9】
左回り光と右回り光との光干渉により角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロに組み込まれるセンシングコイル機構であって、
複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、前記複数の伝送コアのうち、少なくとも第1の伝送コア及び第2の伝送コアのそれぞれを光結合して1本の光路を形成するマルチコアファイバ光路結合部とを有し、
前記複数の伝送コアにおいては、前記光路の長さを2分する前記光路の中心点から、右回りに前記光路に沿って第1の距離を隔てた位置にある伝送コアと、左回りに前記光路に沿って前記第1の距離を隔てた位置にある伝送コアとが前記マルチコアファイバ内で隣接し、
前記マルチコアファイバ光路結合部は、
第1光入出力デバイスと、
第2光入出力デバイスと、
前記第1光入出力デバイスと前記第2光入出力デバイスとの間に設けられた複数のシングルモードファイバと
を含み、
前記第1光入出力デバイスと前記第2光入出力デバイスとによって、前記第1の伝送コア及び前記第2の伝送コアのそれぞれが光結合され、
前記複数のシングルモードファイバの中のいずれかが前記第1光入出力デバイス介した前記第1の伝送コアからの光入出力と、前記第2光入出力デバイスを介した前記第2の伝送コアからの光入出力とを結合して前記1本の光路が形成される
センシングコイル機構。
【請求項10】
左回り光と右回り光との光干渉により角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロに組み込まれるセンシングコイル機構であって、
複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、前記複数の伝送コアのうち、少なくとも第1の伝送コア及び第2の伝送コアのそれぞれを光結合して1本の光路を形成するマルチコアファイバ光路結合部とを有し、
前記光路の長さを2分する前記光路の中心点から、右回りに前記光路に沿って第1の距離を隔てた位置にある伝送コアと、左回りに前記光路に沿って前記第1の距離を隔てた位置にある伝送コアとが前記マルチコアファイバ内で隣接している
センシングコイル機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉型光ファイバジャイロ及びセンシングコイル機構に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉型光ファイバジャイロでは、光源から発せられた光が光分岐器で2つに分岐され、光変調器で、各々の光に対しての位相変調が行われる。この後、各々の光は、シングルモードファイバがボビンに対称に巻かれたセンシングコイルに導光され、各々の光は、センシングコイル内を左回り及び右回りで進んだ後、光変調器に戻り、光変調器で再度位相変調を受け、重ね合わされ互いに干渉する。干渉した光は、光カプラを介して光受光器に導光され、光受光器で電気信号に変換される。
【0003】
センシングコイル内で光が進行している際、センシングコイルに角速度が印加されると、右回り光と左回り光とに位相差が発生する(サニャック効果)。これにより、光受光器は、位相差に応じた干渉光の強度変化を捉えることができ、角速度の検知が可能になる。
【0004】
このような干渉型光ファイバジャイロのセンシングコイルとして、最近では、複数の伝送コアを有するマルチコアファイバが用いられた例がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8497994B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の開示例では、マルチコアファイバを対称的に巻くことを基本とし、巻き線工程に多大な手間がかかることになる。これにより、マルチコアファイバを干渉型光ファイバジャイロに適用しても、その低コスト化に限界が生じている。また、マルチコアファイバの対称的な巻き方を回避してしまえば、角速度を検知する精度が劣ってしまう。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、より高精度な測定が可能であり、低コストで製造し得る干渉型光ファイバジャイロ及びセンシングコイル機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る干渉型光ファイバジャイロは、左回り光と右回り光との光干渉により角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロである。干渉型光ファイバジャイロは、複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、複数の伝送コアのうち、少なくとも第1の伝送コア及び第2の伝送コアのそれぞれを光結合して1本の光路を形成するマルチコアファイバ光路結合部とを有するセンシングコイル機構を具備する。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る干渉型光ファイバジャイロは、光源と、第1光分岐器と、ポラライザと、第2光分岐器と、光変調器と、センシングコイル機構と、受光器とを具備する。
第1光分岐器は、光源から放出された光を分岐する。
ポラライザは、第1光分岐器によって分岐された光の偏向を単一偏向にする。
第2光分岐器は、ポラライザによって単一偏向にされた光を2つに分岐する。
光変調器は、第2光分岐器によって分岐された、それぞれの光の位相を変調する。
センシングコイル機構は、複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、マルチコアファイバの任意の伝送コア間を光結合する光入出力デバイスとを有し、マルチコアファイバ及び光入出力デバイスによって1本の光路が形成され、光変調器によって位相変調されたそれぞれの光が左回り光と右回り光として光路内を逆向きに進行する。
受光器は、センシングコイル機構から放出された、左回り光と右回り光とが第2光分岐器を介して干渉する光を受光する。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るセンシングコイル機構は、左回り光と右回り光との光干渉により角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロに組み込まれるセンシングコイル機構であって、複数の伝送コアを有するマルチコアファイバと、前記複数の伝送コアのうち、少なくとも第1の伝送コア及び第2の伝送コアのそれぞれを光結合して1本の光路を形成するマルチコアファイバ光路結合部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明によれば、より高精度な測定が可能であり、低コストで製造し得る干渉型光ファイバジャイロ及びセンシングコイル機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る干渉型光ファイバジャイロのブロック構成図である。
図2】本実施形態に係るセンシングコイル機構のブロック構成図である。
図3】本実施形態のセンシングコイル内に光が伝送される様子を示す仮想光学系の模式図である。
図4図3に示すセンシングコイル内で隣接する伝送コアの組み合せを示す仮想光学系の模式図である。
図5】本実施形態のセンシングコイル内に光が伝送される別の様子を示す仮想光学系の模式図である。
図6図5に示すセンシングコイル内で隣接する伝送コアの組み合せを示す仮想光学系の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0014】
(干渉型光ファイバジャイロ)
【0015】
まず、本実施形態に係る干渉型光ファイバジャイロの基本構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る干渉型光ファイバジャイロのブロック構成図である。
【0017】
図1に示す干渉型光ファイバジャイロ100は、左回り光と右回り光とが光干渉する作用を利用して角速度を検出する干渉型光ファイバジャイロ(I-FOG)である。干渉型光ファイバジャイロ100は、光源21と、光カプラ22(第1光分岐器)と、ポラライザ23と、光分岐器241(第2光分岐器)と、光変調器242と、デポラライザ25と、受光器26と、センシングコイル機構10Aとを具備する。センシングコイル機構10Aは、光入出力デバイス11、12と、複数のシングルモードファイバ13と、マルチコアファイバ14と、ボビン16とを有する。また、干渉型光ファイバジャイロ100においては、光カプラ22、ポラライザ23、光分岐器241、光変調器242、及びデポラライザ25を纏めて1つのモジュールとしてもよい。
【0018】
干渉型光ファイバジャイロ100においては、光源21から放出された光が光カプラ22によって分岐され、その一部の光がポラライザ23に導入され、光の偏向が単一偏光となる。単一偏光となった光は、光分岐器241で2つに分岐され、分岐された各々の光が光変調器242で位相変調される。各々の光は、デポラライザ25を通過し無偏光となった後、光入出力デバイス11、12を介して、マルチコアファイバ14がボビン16にコイル状に巻かれたセンシングコイル15内へ右回り光と、左回り光として導光される。なお、デポラライザ25は、適宜取り除かれてもよく、光変調器242とセンシングコイル機構10Aとの間に少なくとも1つあればよい。例えば、上記のモジュールからデポラライザ25を取り除き、偏波保持マルチコアファイバとしてもよい。また、光分岐器241、ポラライザ23、及び光変調器242は、1つの基板(不図示)の上に集積され、この基板上に光集積回路が形成されてもよい。この場合、複数の要素が集積されることにより、干渉型光ファイバジャイロ100が小型になり、光導波路を利用することでPush-Pull位相変調方式による変調電圧の低電圧化が図られる。
【0019】
例えば、右回り光は、光入出力デバイス11を介して、センシングコイル15に含まれるマルチコアファイバ14のいずれかの伝送コア(光ファイバ)を通過した後、光入出力デバイス12に到達する。右回り光は、光入出力デバイス12によってシングルモードファイバ13へ光結合され、再度、光入出力デバイス11に導光される。光入出力デバイス11では、右回り光がマルチコアファイバ14内で先に通過した伝送コアとは異なる伝送コアへ光結合され、マルチコアファイバ14内の異なる伝送コアを通過する。右回り光は、上記の進行を繰り返すことで、マルチコアファイバ14内に複数配置された伝送コアを順次通過し、最後に光入出力デバイス12に到達する。この後、右回り光は、デポラライザ25、光変調器242の順に通過し、光分岐器241に到達する。
【0020】
左回り光は、センシングコイル15において右回り光と逆方向に進行する。左回り光は、光入出力デバイス12を介して、センシングコイル15に含まれるマルチコアファイバ14のいずれかの伝送コアを通過した後、光入出力デバイス11に到達する。左回り光は、光入出力デバイス11によってシングルモードファイバ13へ光結合され、再度、光入出力デバイス12に導光される。次に、左回り光は、マルチコアファイバ14内で先に通過した伝送コアとは異なる伝送コアへ光結合され、マルチコアファイバ14内の異なる伝送コアを通過する。左回り光は、このような進行を繰り返すことで、マルチコアファイバ14内に複数配置された伝送コアを順次通過し、最後に光入出力デバイス11に到達する。この後、左回り光は、デポラライザ25、光変調器242、光カプラ22の順に通過し、光分岐器241に到達する。
【0021】
ここで、センシングコイル15内では、左回り光が進行する伝送コアとして、右回り光が進行する伝送コアに隣接する伝送コアが選択される。
【0022】
センシングコイル機構10Aから放出された、右回り光と、左回り光とが光変調器242を経由して光分岐器241に到達すると、互いに重なり合い干渉する。干渉光は、ポラライザ23、光カプラ22を通過し、受光器26が干渉光を受光する。干渉光が受光器26へ到達すると、電気信号へ変換される。
【0023】
センシングコイル15内に、右回り光と、左回り光とが通過している際、センシングコイル15に角速度が印加されると、右回り光と、左回り光との間に位相差が生じ、干渉光強度が変化する。受光器26で変換された電気信号が信号処理回路31で信号処理されると、干渉光強度の変化に応じたジャイロ出力、すなわち角速度が得られる。
【0024】
(センシングコイル機構)
【0025】
次に、本実施形態に係るセンシングコイル機構10Aの詳細について説明する。
【0026】
図2は、本実施形態に係るセンシングコイル機構のブロック構成図である。
【0027】
図2では、模式的に右回り光が実線の矢印で、左回り光が破線の矢印で示されている。また、センシングコイル機構10Aの図の上側には、マルチコアファイバ14を切断面Aで切断したときの断面図が示され、下側には、マルチコアファイバ14を切断面Bで切断したときの断面図が示されている。
【0028】
図2に示すように、マルチコアファイバ14は、複数の伝送コア1~7を有し、例えば、伝送コア1は、マルチコアファイバ14の中心に位置し、伝送コア1の周りに伝送コア2~7が配置されている。ここで、伝送コア1を中心コア、伝送コア2~7を周辺コアとする。伝送コア1~7のそれぞれの間隔は、例えば、等間隔である。伝送コア1~7のそれぞれの間には、例えば、樹脂が充填され、伝送コア1~7は、例えば、断面の外形が円状の樹脂層内に配置されている。
【0029】
センシングコイル機構10Aでは、複数の伝送コア1~7のうち、少なくとも2つ伝送コアのそれぞれが光入出力デバイス11、12によって光結合される。また、光入出力デバイス11、12のそれぞれの伝送コアからの光入出力とは、シングルモードファイバ13によって光結合される。すなわち、光入出力デバイス11、12及びシングルモードファイバ13が共働してマルチコアファイバ光路結合部として機能する。
【0030】
例えば、センシングコイル機構10Aにおいては、光入出力デバイス11に導光された右回り光が光入出力デバイス11によってマルチコアファイバ14の伝送コア2に光結合されて、センシングコイル15内を進む。このとき、光入出力デバイス12に導光された左回り光は、光入出力デバイス12によってマルチコアファイバ14の伝送コア3に光結合されて、センシングコイル15内を進む。
【0031】
この例のように、センシングコイル機構10Aにおいては、右回り光と左回り光とが隣接する伝送コア2、3を進行することになり、マルチコアファイバ14の温度が変化したとしても、伝送コア2と伝送コア3とが近接しているために、それぞれの温度変化率の空間分布が近似し、右回り光及び左回り光のそれぞれの位相変化が極めて小さくなる。この結果、マルチコアファイバ14の温度が変化しても、ジャイロ出力が変動しにくくなる。これは、左回り光を伝送コア3に光結合する代わりに、伝送コア7へ光結合しても、同じ効果が得られることになる。
【0032】
なお、光入出力デバイス11、12においては、例えば、特許5870426に開示されている例のように、レンズ、プリズム等を用いた光学的機構により光の進行路を変更できる手段が利用されている。
【0033】
本実施形態に係るセンシングコイル機構10Aの動作を具体的に説明する。
【0034】
図3は、本実施形態のセンシングコイル内に光が伝送される様子を示す仮想光学系の模式図である。
【0035】
図3には、奇数個である7個の伝送コア1~7の全てに光が通過する例が示されている。センシングコイル機構10Aにおいては、複数の伝送コア1~7のうち、少なくとも2つの伝送コアのそれぞれが光入出力デバイス11、12によって光結合される。光入出力デバイスの任意の伝送コアからの光入出力と、別の任意の伝送コアからの光入出力とがシングルモードファイバ13によって光結合されて、1本の光路が形成されている。例えば、センシングコイル機構10Aにおいては、伝送コア1~7のそれぞれが光入出力デバイス11、12によって、複数のシングルモードファイバ13のいずれかが接続することで、全ての伝送コア1~7が光結合され、1本の光路が形成されている。
【0036】
例えば、光は、光分岐器241で右回り光と左回り光とに分岐された後、各々の光は、光変調器242で位相変調され、デポラライザ25で無偏光化される。
【0037】
例えば、右回り光(実線の矢印)は、光入出力デバイス11の2番入出力ポートに導かれ、マルチコアファイバ14の伝送コア2に光結合される。この後、右回り光は、光入出力デバイス12の2番入出力ポートに導かれる。光入出力デバイス12の2番入出力ポートから出力された右回り光は、シングルモードファイバ13で導光され、光入出力デバイス11の4番入出力ポートへ光結合され、マルチコアファイバ14の伝送コア4に光結合される。この後、右回り光は、光入出力デバイス12の4番入出力ポートに導かれる。光入出力デバイス12の4番入出力ポートから出力された右回り光は、シングルモードファイバ13で導光され、光入出力デバイス11の6番入出力ポートへ光結合される。
【0038】
右回り光は、これ以降、伝送コア6、光入出力デバイス12の6番入出力ポート、シングルモードファイバ13、光入出力デバイス11の1番入出力ポート、伝送コア1、光入出力デバイス12の1番入出力ポート、シングルモードファイバ13、光入出力デバイス11の7番入出力ポート、伝送コア7、光入出力デバイス12の7番入出力ポート、シングルモードファイバ13、光入出力デバイス11の5番入出力ポート、伝送コア5、光入出力デバイス12の5番入出力ポート、シングルモードファイバ13、光入出力デバイス11の3番入出力ポート、伝送コア3の順に進み、最後に光入出力デバイス12の3番入出力ポートから出力される。
【0039】
一方、左回り光(破線の矢印)は、光入出力デバイス12の3番入出力ポートに導かれ、マルチコアファイバ14の伝送コア3に光結合される。この後、左回り光は、光入出力デバイス11の3番入出力ポートに導かれる。光入出力デバイス11の3番入出力ポートから出力された左回り光は、シングルモードファイバ13で導光され、光入出力デバイス12の5番入出力ポートへ光結合され、マルチコアファイバ14の伝送コア5に光結合される。この後、左回り光は、光入出力デバイス11の5番入出力ポートに導かれる。光入出力デバイス11の5番入出力ポートから出力された左回り光は、シングルモードファイバ13で導光され、光入出力デバイス12の7番入出力ポートへ光結合される。
【0040】
左回り光は、これ以降、伝送コア7、光入出力デバイス11の7番入出力ポート、シングルモードファイバ13、光入出力デバイス12の1番入出力ポート、伝送コア1、光入出力デバイス11の1番入出力ポート、シングルモードファイバ13、光入出力デバイス12の6番入出力ポート、伝送コア6、光入出力デバイス11の6番入出力ポート、シングルモードファイバ13、光入出力デバイス12の4番入出力ポート、伝送コア4、光入出力デバイス11の4番入出力ポート、シングルモードファイバ13、光入出力デバイス12の2番入出力ポート、伝送コア2の順に進み、最後に光入出力デバイス11の2番入出力ポートから出力される。
【0041】
光入出力デバイス11の2番入出力ポートから出力された左回り光と、光入出力デバイス12の3番入出力ポートから出力された右回り光は、デポラライザ25で無偏光化され、この後、光変調器242で位相変調されて、光分岐器241で重ね合わされ干渉する。
【0042】
図4は、図3に示すセンシングコイル内で隣接する伝送コアの組み合せを示す仮想光学系の模式図である。
【0043】
図4に示す枠中に並べられた数字は、例えば、一番左の(11,2)を例にあげると、光入出力デバイス"11"の"2"番入出力ポートを意味している。図4に示すように、複数の伝送コア1~7の中で、その中心に配置された伝送コア1は、センシングコイル機構10Aにおける光路の中心に位置している。さらに、伝送コア1内の中心点は、光路の長さを2分する。換言すれば、光路の中心点が伝送コア1内にある。この中心点から等しい距離にある隣接する伝送コアの組み合せは、伝送コア6及び伝送コア7、伝送コア4及び伝送コア5、伝送コア2と伝送コア3になる(両矢印の組み合せ)。なお、伝送コア1については、他の伝送コア2~7の全てに隣接している。
【0044】
換言すれば、光路の中心点から、右回りに光路に沿って所定の距離を隔てた位置にある伝送コアと、左回りに光路に沿って、前記所定の距離と同じ距離を隔てた位置にある伝送コアとは、マルチコアファイバ14内で隣接している。すなわち、センシングコイル機構10Aでは、右回り光と左回り光とが隣接する伝送コアで、それぞれが逆向きに通過するように構成されている。
【0045】
従来の干渉型光ファイバジャイロの中には、センシングコイルとして、シングルモードファイバをコイル状に巻きつけたものがある。このような干渉型光ファイバジャイロでは、シングルモードファイバが1個の伝送コアのみを有するため、シングルモードファイバの全長が光路長と等しくなる。
【0046】
このような干渉型光ファイバジャイロでは、角速度の感度を上昇させるために、シングルモードファイバの長さを長くする方法がある。また、このような干渉型光ファイバジャイロでは、シングルモードファイバの温度変化によって生じるジャイロ出力の変動(Shupe効果)を抑制するため、シングルモードファイバを光路長の中心に対して対称に巻回する方法がある。この場合、光路長の中心からみて同距離にある伝送コアが同じ温度変化率になるように対称にシングルモードファイバが巻回されることになる。
【0047】
しかし、長いファイバをボビンに巻く作業は、多くの時間を要し、さらに、長いファイバを光路の中心に対して対称的に巻く作業には、さらに多くの時間、手間がかかる。従って、このような手法で製造した干渉型光ファイバジャイロは、高価格になってしまう。
【0048】
また、シングルモードファイバを用いた場合、隣接する伝送コア間の距離は、伝送コアを被覆する樹脂層の径(例えば、165μm径)より小さくすることができないため、左回り光が進む伝送コアと右回り光が進む伝送コアとの距離を近づけるのには制限が生じてしまう。このため、伝送コアを隣接させても、それぞれの温度変化率の空間分布が近似せず、温度変化によるジャイロ出力の変動を抑制するのには限界が生じてしまう。
【0049】
これに対して、本実施形態では、複数の伝送コア1~7を有するマルチコアファイバ14を用いることで、マルチコアファイバ14の長さに伝送コアの数を乗じた長さが実質的なセンシングコイル15の長さになる。従って、シングルモードファイバのみで構成されたセンシングコイルと同じ光路長を得るには、シングルモードファイバのみで構成されたセンシングコイルの長さの1/(伝送コアの数)の長さのマルチコアファイバ14を用いることで足り、センシングコイル15を形成するための巻き作業が大幅に簡略化される。
【0050】
さらに、本実施形態では、マルチコアファイバ14を光路長の中心に対して対称に巻かずとも、センシングコイル機構10Aでは、右回り光と左回り光とが隣接する伝送コアを通過する。
【0051】
これにより、左回り光が進む伝送コアと右回り光が進む伝送コアとの距離が近づき、それぞれの温度変化率の空間分布が近似する。この結果、センシングコイル15に温度変化が生じても、ジャイロ出力の変動が抑制され、高精度に角速度が検知することができる。
【0052】
特に、マルチコアファイバ14では、隣接する伝送コア間の距離は、例えば、50μm以下である。一例として、その距離は、45μmであるが、この数値に限らない。このような短い間隔であれば、左回り光が進む伝送コアと右回り光が進む伝送コアとの距離が近づき、それぞれの温度変化率の空間分布がより近似することになる。
【0053】
(変形例1)
【0054】
図5は、本実施形態のセンシングコイル内に光が伝送される別の様子を示す仮想光学系の模式図である。
【0055】
図5に示すセンシングコイル機構10Bでは、マルチコアファイバ14で中心に配置された伝送コア1を光路として用いず、偶数個の伝送コア2~7が光路として使用されたマルチコアファイバ14が示されている。センシングコイル機構10Bでは、偶数個の伝送コア2~7により光路が形成される。なお、伝送コア1については、マルチコアファイバ14から取り除いてもよい。
【0056】
センシングコイル機構10Bでは、光路の中心点がセンシングコイル15内に存在せず、中心点が光入出力デバイス11の7番入出力ポートと、光入出力デバイス12の6番入出力ポートとを光結合するシングルモードファイバ13内にある。隣接する伝送コアの組み合せは、センシングコイル機構10Aと同様である。
【0057】
例えば、図6は、図5に示すセンシングコイル内で隣接する伝送コアの組み合せを示す仮想光学系の模式図である。
【0058】
光路の中心点から等しい距離にある隣接する伝送コアの組み合せとしては、伝送コア6及び伝送コア7、伝送コア4及び伝送コア5、伝送コア2及び伝送コア3、である。
【0059】
このようなセンシングコイル機構10Bであっても、センシングコイル機構10Aと同じ効果を奏する。特に、センシングコイル機構10Bにおいては、マルチコアファイバ14で中心に配置された伝送コア1を用いないことから、右回り光と左回り光とが常時、隣接する伝送コアを通過することになり、ジャイロ出力の変動がさらに抑制され、さらに高精度に角速度が検知することができる。
【0060】
(変形例2)
【0061】
マルチコアファイバ14においては、光路の中心点に対して対称になるようにボビン16にコイル状に巻回されてもよい。このような対称巻きを行うことにより、隣接する伝送コア間の空間近接性の他に、マルチコアファイバ14間の空間近接性という2つの対称性がセンシングコイル機構に付与され、より高精度に角速度を計測することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。また、各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0063】
1~7…伝送コア
10A、10B…センシングコイル機構
11、12…光入出力デバイス
13…シングルモードファイバ
14…マルチコアファイバ
15…センシングコイル
16…ボビン
21…光源
22…光カプラ
23…ポラライザ
241…光分岐器
242…光変調器
25…デポラライザ
26…受光器
31…信号処理回路
100…干渉型光ファイバジャイロ
図1
図2
図3
図4
図5
図6