(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】静電容量型検知センサ、静電容量型検知センサモジュールおよび静電容量型検知センサを用いた状態判定方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20230126BHJP
H03K 17/955 20060101ALI20230126BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G01V3/08 D
H03K17/955 A
H01H36/00 D
(21)【出願番号】P 2019182941
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508282568
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 隆介
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン ディー ダブリュー マッデン
(72)【発明者】
【氏名】ミルザ エス サーウォー
(72)【発明者】
【氏名】ユウタ ドバシ
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-007739(JP,A)
【文献】特開2010-133791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0299605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/08
H03K 17/955
H01H 36/00
G01D 5/241
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる基材と、
三次元的に離間し電極間をつなぐ電気力線が前記誘電体の接触表面を通り、かつ、前記基材に少なくとも部分的に接した状態で配置されている基準電極および第1電極と、
前記基材の表面に対して垂直な方向について、前記第1電極よりも前記基材の表面から遠い位置で、前記基準電極とともに前記基材を挟むように前記基準電極に対向して配置されている第2電極と、
前記基材の表面に対して平行な方向について、前記基準電極および前記第1電極の間に接地された状態で配置されている静電遮蔽部材と、を備えていることを特徴とする静電容量型検知センサ。
【請求項2】
請求項
1に記載の静電容量型検知センサと、
前記基準電極および前記第1電極の間に電圧が印可されている第1検知期間と、前記基準電極および前記第2電極の間に電圧が印可されている第2検知期間と、を交互に切り替え、前記第1検知期間において前記基準電極および前記第1電極の間の静電容量に応じて前記基材の表面に対する物体の近接状態を検知し、かつ、前記第2検知期間において前記基準電極および前記第2電極の間の静電容量に応じて前記基材の表面に接触した物体から前記基材に作用する圧力を検知する検知処理装置と、を備えていることを特徴とする静電容量型検知センサモジュール。
【請求項3】
請求項
1に記載の静電容量型検知センサを用いた状態判定方法であって、
前記基準電極および前記第1電極の間に電圧が印可されている第1検知期間において、前記基準電極および前記第1電極の間の静電容量C1を測定し、
前記基準電極および前記第2電極の間に電圧が印可されている第2検知期間において、前記基準電極および前記第2電極の間の静電容量C2を測定し、
前記基材に対する物体の近接および接触がない状態における前記基準電極および前記第1電極の間の静電容量値Cp、前記基材に対して物体が接触した状態における前記基準電極および前記第1電極の間の静電容量値Cp_min、ならびに、前記基材に対して物体からの圧力がない状態における前記基準電極および前記第2電極の間の静電容量値Cfに基づき、
C1=CpかつC2=Cfの場合には前記基材に対する物体の近接および接触がない状態であると判定し、
Cp_min<C1<CpかつC2=Cfの場合には前記基材に対して物体が近接している状態であると判定し、
C1=Cp_minかつC2=Cfの場合には前記基材に対して物体が接触している状態であると判定し、
C2>Cfの場合には前記基材に対して物体から圧力が作用している状態であると判定する、状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
静電スイッチに付着する水滴等による誤検知を防止すると共に、静電スイッチへの接触(近接)および静電スイッチに対する押圧の程度(圧力)を同時に検知するための技術的手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、パッド電極と一の配線電極との間の静電容量の変化に応じて指などの人体の近接が検知され、当該パッド電極と導電性ゴムと他の配線電極とを電流が流れる際の電気抵抗値に応じて、人体から当該導電性ゴムにかかる圧力が検知されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-173299号公報(特に 第0037段落~第0039段落および
図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、導電性ゴムの導電特性のばらつきまたは変化のため、当該導電性ゴムに人体から圧力がかかり始めた段階にもかかわらず電気抵抗値の変化が検知されず、人体が導電性ゴムから離間していると誤検知される可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、人体などの物体の近接の有無および当該物体から受ける圧力の検知精度の向上を図ることができる静電容量型検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の静電容量型検知センサは、誘電体からなる基材と、三次元的に離間し電極間をつなぐ電気力線が前記誘電体の接触表面を通り、かつ、前記基材に少なくとも部分的に接した状態で配置されている基準電極および第1電極と、前記基材の表面に対して垂直な方向について、前記第1電極よりも前記基材の表面から遠い位置で、前記基準電極とともに前記基材を挟むように前記基準電極に対向して配置されている第2電極と、前記基材の表面に対して平行な方向について、前記基準電極および前記第1電極の間に接地された状態で配置されている静電遮蔽部材と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の静電容量型検知センサモジュールは、本発明の静電容量型検知センサと、前記基準電極および前記第1電極の間に電圧が印可されている第1検知期間と、前記基準電極および前記第2電極の間に電圧が印可されている第2検知期間と、を交互に切り替え、前記第1検知期間において前記基準電極および前記第1電極の間の静電容量に応じて前記基材の表面に対する物体の近接状態を検知し、かつ、前記第2検知期間において前記基準電極および前記第2電極の間の静電容量に応じて前記基材の表面に接触した物体から前記基材に作用する圧力を検知する検知処理装置と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の静電容量型検知センサまたは静電容量型検知センサモジュールによれば、前記基準電極および前記第1電極の間に電圧が印可されている第1検知期間において、前記基準電極および前記第1電極の間の静電容量C1が測定される。前記基準電極および前記第2電極の間に電圧が印可されている第2検知期間において、前記基準電極および前記第2電極の間の静電容量C2が測定される。そして、前記基材に対する物体の近接および接触がない状態における前記基準電極および前記第1電極の間の静電容量値Cp、前記基材に対して物体が接触した状態における前記基準電極および前記第1電極の間の静電容量値Cp_min、ならびに、前記基材に対して物体からの圧力がない状態における前記基準電極および前記第2電極の間の静電容量値Cfに基づいて複数の状態が判別される。
【0015】
具体的には、(1)C1=CpかつC2=Cfの場合には前記基材に対する物体の近接および接触がない状態であると判定される。(2)Cp_min<C1<CpかつC2=Cfの場合には前記基材に対して物体が近接している状態であると判定される。(3)C1=Cp_minかつC2=Cfの場合には前記基材に対して物体が接触している状態であると判定される。(4)C2>Cfの場合には前記基材に対して物体から圧力が作用している状態であると判定される。基材は電気絶縁性を有しており、その導電特性とはほぼ無関係に安定して高精度で各状態が判定されうる。
【0016】
本発明の静電容量型検知センサまたは静電容量型検知センサモジュールは、前記基材の表面に対して平行な方向について、前記基準電極および前記第1電極の間に接地された状態で配置されている静電遮蔽部材を備えている。
【0017】
このため、基材に接近している物体と第2電極とが静電的に相互作用することによって基準電極と当該第2電極との間の静電容量C2の測定精度が低下することが回避され、これにより、各状態の判定精度の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態としての静電容量型検知センサおよび静電容量型検知センサモジュールの構成に関する説明図。
【
図2】本発明の第1実施形態としての静電容量型検知センサの機能に関する説明図。
【
図3】本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサおよび静電容量型検知センサモジュールの構成に関する説明図。
【
図4A】本発明の一実施例としての静電容量型検知センサの構成に関する説明図。
【
図4B】本発明の一実施例としての静電容量型検知センサの構成に関する説明図。
【
図5A】本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサの第1検知期間における機能に関する説明図。
【
図5B】本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサの第2検知期間における機能に関する説明図。
【
図6A】複数の指が物体の表面を撫でた後で徐々に物体の表面から離れる様子に関する説明図。
【
図6B】複数の指と物体との平均間隔および平均せん断力の変化態様に関する説明図。
【
図7A】本発明の第1実施形態としての静電容量型検知センサが物体の表面に分散配置されている場合の静電容量C1(合計値)およびC2(合計値)の変化態様に関する説明図。
【
図7B】本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサが物体の表面に分散配置されている場合静電容量のC1(合計値)およびC2(合計値)の変化態様に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(静電容量型検知センサの構成(第1実施形態))
図1に示されている本発明の第1実施形態としての静電容量型検知センサは、基材10と、一対の第1電極111、112と、一対の第2電極121、122と、静電遮蔽部材140と、を備えている。本発明の第1実施形態としての静電容量型検知センサモジュールは、本発明の第1実施形態としての静電容量型検知センサと、検知処理装置200と、を備えている。静電遮蔽部材140は省略されてもよい。
【0020】
基材10は、PVCゲル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂もしくはエポキシ系樹脂、または、これらの任意の組み合わせの複合材料などの誘電体からなる。一対の第1電極111、112は、基材10の接触表面102に対して平行な方向に離間して配置され、かつ、せん断方向の感度を高める必要がある方向について基材10を構成する誘電体との間に空隙を介在させた状態で基材10に埋設されている。一対の第2電極121、122は、基材10の接触表面102に対して垂直な方向について、一対の第1電極111、112よりも基材10の接触表面102から遠い位置で対向して配置された状態で基材10に埋設されている。静電遮蔽部材140は、基材10の接触表面102に対して垂直な方向について、一対の第1電極111、112および一対の第2電極121、122のそれぞれに対して少なくとも部分的に重なるように、一対の第1電極111、112および一対の第2電極121、122の間に配置され、かつ、接地された状態で基材10に埋設されている。一対の第1電極111、112、一対の第2電極121、122および静電遮蔽部材140のそれぞれは、炭素、銀、金もしくは液体金属などの金属、チオフェン系導電性高分子もしくはPSSなどの導電性樹脂、PVCゲル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂もしくはエポキシ系樹脂、または、これらの任意の組み合わせの複合材料などの誘電体、または、これら の任意の組み合わせの複合材料により構成されている。例えば、誘電体のシートに所定のパターンで印刷された導電性ペーストにより第1電極111、112、第2電極121、122および静電遮蔽部材140のそれぞれが構成され、複数の当該誘電体シートが重ね合わせられて一体化されることによって静電容量型検知センサが作成されてもよい。
【0021】
検知処理装置200は、マイクロプロセッサおよびメモリ等により構成されているコンピュータによって構成されている。検知処理装置200は、第1静電容量測定要素210と、第2静電容量測定要素220と、状態判定要素240と、を備えている。第1静電容量測定要素210は、一対の第1電極111、112の間に電圧を印可し、この際の当該一対の第1電極111、112の間の電位差、ひいては静電容量C1を測定する。状態判定要素240は、一対の第1電極111、112の間の静電容量C1の測定結果に応じて、基材10の接触表面102に対する物体Qの近接状態を検知する。第2静電容量測定要素220は、一対の第2電極121、122の間に電圧を印可し、この際の当該一対の第2電極121、122の間の電位差、ひいては静電容量C2を測定する。状態判定要素240は、一対の第2電極121、122の間の静電容量C2の測定結果に応じて、基材10の接触表面102に接触した物体Qから基材10に作用する圧力を検知する。
【0022】
(静電容量型検知センサの機能(第1実施形態))
本発明の第1実施形態としての静電容量型検知センサまたは静電容量型検知センサモジュールによれば、一対の第1電極111、112の間に電圧が印加され(
図1の曲線矢印で表わされた電気力線参照)、この際の一対の第1電極111、112の電位差に基づき、一対の第1電極111、112の間の静電容量C1が測定される。一対の第2電極121、122の間に電圧が印加され(
図1の上向き矢印で表わされた電気力線参照)、この際の一対の第2電極121、122の電位差に基づき、一対の第2電極121、122の間の静電容量C2が測定される。下側の第2電極121が上側の第2電極122よりも高電位になるように一対の第2電極121、122に電圧が印加されるほか、下側の第2電極121が上側の第2電極122よりも低電位になるように一対の第2電極121、122に電圧が印加されてもよい。
【0023】
そして、基材10に対する例えば、手の指などの人体の一部である物体Qの近接および接触がない状態における一対の第1電極111、112の間の静電容量値Cp、基材10に対して物体Qが接触した状態における一対の第1電極111、112の間の静電容量値Cp_min、ならびに、基材10に対して物体Qからの圧力がない状態における一対の第2電極121、122の間の静電容量値Cfに基づいて複数の状態が判別される。
【0024】
具体的には、(1)C1=CpかつC2=Cfの場合には基材10に対する物体Qの近接および接触がない状態であると判定される。(2)Cp_min<C1<CpかつC2=Cfの場合には基材10に対して物体Qが近接している状態であると判定される。(3)C1=Cp_minかつC2=Cfの場合には前記基材10に対して物体が接触している状態であると判定される。(4)Cp_min<C1<CpかつC2>Cfの場合には基材10に対して物体Qから比較的弱い圧力が作用している状態であると判定される。(5)C1>CpかつC2>Cfの場合には基材10に対して物体Qから比較的強い圧力が作用している状態であると判定される。表1には、一対の第1電極111、112の間の静電容量C1の測定結果、および、一対の第2電極121、122の間の静電容量C2の測定結果に応じた状態の判定結果がまとめて示されている。
【0025】
【0026】
図2には、状態が(1)→(2)→(3)→(4)→(5)と遷移する場合における一対の第1電極111、112の間の静電容量C1、および、一対の第2電極121、122の間の静電容量C2の変化態様が示されている。静電遮蔽部材140により、基材10に接近している物体Qと一対の第2電極121、122とが静電的に相互作用することによって当該一対の第2電極121、122の間の静電容量C2の測定精度が低下することが回避され、これにより、各状態の判定精度の向上が図られる。
【0027】
(静電容量型検知センサの機能(第2実施形態))
図3に示されている本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサは、基材10と、基準電極100と、第1電極110と、第2電極120と、を備えている。本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサモジュールは、本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサと、検知処理装置200と、を備えている。静電遮蔽部材140は省略されてもよい。
【0028】
基材10は、PVCゲル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂もしくはエポキシ系樹脂、または、これらの任意の組み合わせの複合材料などの誘電体からなる。基準電極100および第1電極110のそれぞれは、基材10の接触表面102に対して平行な方向に離間して配置され、かつ、せん断方向の感度を高める必要がある方向について基材10を構成する誘電体との間に空隙を介在させた状態で基材10に埋設されている。第2電極120は、基材10の接触表面102に対して垂直な方向について、第1電極110よりも基材10の接触表面102から遠い位置で基準電極100に対向して配置された状態で基材10に埋設されている。静電遮蔽部材140は、基材10の接触表面102に対して平行な方向について、基準電極100および第1電極110の間に配置され、かつ、接地された状態で基材10に埋設されている。基準電極100、第1電極110、第2電極120および静電遮蔽部材140のそれぞれは、炭素、銀、金もしくは液体金属などの金属、チオフェン系導電性高分子もしくはPSSなどの導電性樹脂、PVCゲル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂もしくはエポキシ系樹脂、または、これらの任意の組み合わせの複合材料などの誘電体、または、これらの任意の組み合わせの複合材料に より構成されている。例えば、誘電体のシートに所定のパターンで印刷された導電性ペーストにより基準電極100、第1電極110、第2電極120および静電遮蔽部材140のそれぞれが構成され、複数の当該誘電体シートが重ね合わせられて一体化されることによって静電容量型検知センサが作成されてもよい。
【0029】
第1実施形態では基材10の接触表面102からの距離が異なる3箇所または3つのレイヤのそれぞれに、一対の第1電極111、112、一方の第2電極122および他方の第2電極121のそれぞれが配置されていたが(
図1参照)、第2実施形態では表面102からの距離が異なる2箇所または2つのレイヤのそれぞれに、基準電極100および第1電極110、ならびに、第2電極120のそれぞれが配置されている(
図3参照)。このため、第2実施形態では、第1実施形態よりも基材10の接触表面102に垂直な方向について複数の電極の配置スペースのコンパクト化、静電容量型検知センサの薄型化が図られる。
【0030】
図4Aおよび
図4Bに示されているように、十字状に配置された5つの略正方形状の電極が基材10の第1レイヤに配置された状態で埋設され、当該5つの略正方形状の電極に重なるように基材10の第2レイヤに大面積の略正方形状の電極が配置された状態で埋設されている構成が既存である場合について考える。この場合、第1レイヤに配置された中央の電極が静電遮蔽部材140として用いられ、当該中央の電極に隣接する第1対の電極が基準電極100として用いられ、当該中央の電極に隣接する第2対の電極が第1電極110として用いられ、かつ、第2レイヤに配置された電極が第2電極120として用いられてもよい。このように既存の構成を利用することにより、第2実施形態にしたがった一実施例としての静電容量型検知センサが構成される。
【0031】
検知処理装置200は、マイクロプロセッサおよびメモリ等により構成されているコンピュータによって構成されている。検知処理装置200は、静電容量測定要素230と、状態判定要素240と、を備えている。静電容量測定要素230は、基準電極100および第1電極110の間に電圧が印可されている第1検知期間と、基準電極100および第2電極120の間に電圧が印可されている第2検知期間と、を交互に切り替える。静電容量測定要素230は、第1検知期間において基準電極100および第1電極110の間の静電容量C1を測定する。状態判定要素240は、当該測定結果に応じて基材10の接触表面102に対する物体Qの近接状態を検知する。静電容量測定要素230は、第2検知期間において基準電極100および第2電極120の間の静電容量C2を測定する。状態判定要素240は、当該測定結果に応じて基材10の接触表面102に接触した物体Qから基材10に作用する圧力を検知する。
【0032】
(静電容量型検知センサの機能(第2実施形態))
本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサまたは静電容量型検知センサモジュールによれば、第1検知期間において、基準電極100および第1電極110の間に電圧が印可される(
図4Aの曲線矢印で表わされた電気力線参照)。基準電極100が第1電極110よりも高電位になるように基準電極100および第1電極110の間に電圧が印加されるほか、基準電極100が第1電極110よりも低電位になるように基準電極100および第1電極110の間に電圧が印加されてもよい。この際の基準電極100および第1電極110の間の電位差、ひいては静電容量C1が測定される。
【0033】
第2検知期間において、基準電極100および第2電極120の間に電圧が印可される(
図4Bの下向き矢印で表わされた電気力線参照)。基準電極100が第2電極120よりも高電位になるように基準電極100および第2電極120の間に電圧が印加されるほか、基準電極100が第2電極120よりも低電位になるように基準電極100および第2電極120の間に電圧が印加されてもよい。この際の基準電極100および第2電極120の間の間の電位差、ひいては静電容量C2が測定される。
【0034】
そして、基材10に対する物体Qの近接および接触がない状態における基準電極100および第1電極110の間の静電容量値Cp、基材10に対して物体が接触した状態における基準電極100および第1電極110の間の静電容量値Cp_min、ならびに、基材10に対して物体からの圧力がない状態における基準電極100および第2電極120の間の静電容量値Cfに基づいて複数の状態が判別される。この判定方法は、表1に示されている第1実施形態の判定方法と同様である。
【0035】
静電遮蔽部材140により、基材10に接近している物体Qと第2電極120とが静電的に相互作用することによって基準電極100と当該第2電極120との間の静電容量C2の測定精度が低下することが回避され、これにより、各状態の判定精度の向上が図られる。
【0036】
例えば、
図6Aに模式的に示されているように、複数の本発明に係る静電容量型検知センサが表面に配置されている物体を、片手の4本の指で撫でた後、当該4本の指が物体から離れた場合について考察する。この場合、
図6Bに一点鎖線で示されているように、すべての指と物体との平均間隔dは、すべての指が物体を撫でている間は0であり、その後に一部の指が物体から離れるにつれて徐々に増加していく。また、
図6Bに二点鎖線で示されているように、指から物体に作用する平均せん断力fは、すべての指が物体を撫でている間は略一定であり、その後に一部の指が物体から離れると徐々に減少し、すべての指が物体から離れると0になる。
【0037】
本発明の第1実施形態としての静電容量型検知センサが、当該物体の表面に配置されている場合、
図7Aに一点鎖線で示されているように、一対の第1電極111、112の間の静電容量C1の合計値は、すべての指が物体を撫でている間は0であり、その後に一部の指が物体から離れるにつれて徐々に増加していき、ある値で飽和する。また、
図7Bに二点鎖線で示されているように、一対の第2電極121、122の間の静電容量C2の合計値は、すべての指が物体を撫でている間は略一定であり、その後に一部の指が物体から離れると徐々に減少し、すべての指が物体から一定間隔以上離れると一定値に収束する。
【0038】
本発明の第2実施形態としての静電容量型検知センサが、当該物体の表面に配置されている場合、
図7Bに一点鎖線で示されているように、第1検知期間における断続的な基準電極100および第1電極110の間の静電容量C1の合計値は、すべての指が物体を撫でている間は0であり、その後に一部の指が物体から離れるにつれて徐々に増加していき、ある値で飽和する。また、
図7Bに二点鎖線で示されているように、第2検知期間における断続的な基準電極100および第2電極120の間の静電容量C2の合計値は、すべての指が物体を撫でている間は略一定であり、その後に一部の指が物体から離れると徐々に減少し、すべての指が物体から一定間隔以上離れると一定値に収束する。
【0039】
(本発明の他の実施形態)
第1実施形態では、一対の第1電極111および112が基材10の接触表面102に対して平行な方向に離間した状態で、ともに全体的に基材10に埋設されていたが(
図2参照)、他の実施形態では一対の第1電極111および112のうち少なくとも一方が部分的に(例えば平板電極の一方の主面が)露出するように基材10の表面に貼付されまたは基材10に部分的に埋設されていてもよく、一対の第1電極111および112は平行な方向に離間していなくても三次元的に離間し電極間をつなぐ電気力線が前記誘電体の接触表面102を通っていればよい。当該露出箇所は、絶縁性シートにより保護されていてもよい。第1実施形態では、一対の第2電極121および122がともに全体的に基材10に埋設されていたが(
図1参照)、他の実施形態では一対の第2電極121および122のうち少なくとも一方が部分的に(例えば平板電極の一方の主面の一部が)露出するように基材10の表面に貼付されまたは基材10に部分的に埋設されていてもよい。当該露出箇所は、絶縁性シートにより保護されていてもよい。
【0040】
第2実施形態では、基準電極100、第1電極110および第2電極120のそれぞれが全体的に基材10に埋設されていたが(
図1参照)、他の実施形態では少なくともいずれか1つの電極が部分的に(例えば平板電極の一方の主面が)露出するように基材10の表面に貼付されまたは基材10に部分的に埋設されていてもよい。当該露出箇所は、絶縁性シートにより保護されていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10‥基材、102‥接触表面、100‥基準電極、110、111、112‥第1電極、120、121、122‥第2電極、140‥静電遮蔽部材、200‥検知処理装置、210‥第1静電容量測定要素、220‥第2静電容量測定要素、230‥静電容量測定要素、240‥状態判定要素。