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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】断熱カーテン
(51)【国際特許分類】
   A47H 23/08 20060101AFI20230126BHJP
   A47H 23/04 20060101ALI20230126BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20230126BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20230126BHJP
   D01F 6/92 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
A47H23/08
A47H23/04
D04B21/16
D04B21/00 A
D01F6/92 301M
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021138151
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2022046429
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2022-01-03
(31)【優先権主張番号】202010920000.9
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521379045
【氏名又は名称】杭州匯盛針紡有限公司
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU HUISHENG KNITTING AND TEXTILE CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.545 Yaqian Road,Yaqian Town,Xiaoshan, Hangzhou, Zhejiang 311209, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 偉涛
(72)【発明者】
【氏名】王 妙定
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064013(JP,A)
【文献】特開平10-212841(JP,A)
【文献】中国実用新案第203393345(CN,U)
【文献】特開2012-012726(JP,A)
【文献】特開2001-355164(JP,A)
【文献】実開昭51-144576(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47H 1/00 - 99/00
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも鎖編糸と、緯挿入糸と、断熱糸とにより編織された断熱カーテンであって、
前記鎖編糸は、カーテンの経方向に沿って編織され、カーテンの鎖編組織を形成し、
前記緯挿入糸は、カーテンの緯方向に沿って編織され、カーテンの緯挿入インレイを形成し、
前記カーテンの表裏の両面のそれぞれに緯挿入インレイが設置され、
前記断熱糸は、隣接する2本の鎖編組織の間に経方向に沿って敷かれているとともに、前記カーテンの表裏の両面の緯挿入インレイの間に介在し、
前記断熱糸は、前記鎖編糸と緯挿入糸の両方ともループ形成せず、
前記断熱糸は、全消光ポリエステルDTY糸であり、ナノTiO をつや消し剤とし、かつ0.1%~0.5%の酸化グラフェンが添加されていることを特徴とする断熱カーテン。
【請求項2】
前記断熱糸は、前記鎖編組織の形状と一致し、かつ、ループ形成しないことを特徴とする請求項1に記載の断熱カーテン。
【請求項3】
隣接する2本の前記鎖編組織の間に1本又は複数本の断熱糸が敷かれていることを特徴とする請求項1に記載の断熱カーテン。
【請求項4】
いずれか2本の鎖編組織の間に断熱糸が設置されているか、あるいは、断熱糸が任意の間隔で鎖編組織の間に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱カーテン。
【請求項5】
前記断熱糸は、カーテン生地の重量の5%以上を占めることを特徴とする請求項1に記載の断熱カーテン。
【請求項6】
前記断熱カーテンは、ジャガード糸をさらに含み、
前記断熱糸は、前記緯挿入糸とジャガード糸との間に介在することを特徴とする請求項1に記載の断熱カーテン。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の断熱カーテンに適用される断熱カーテンの編織方法であって、
ジャカール又はトリコット経編機を採用して糸を生地となるように編織し、
ジャカール経編機を採用する場合、少なくとも4つの筬を含み、そのうち、1つは、鎖編組織となるように縦方向に沿って編織するためのループ形成筬であり、1つは、表面の緯挿入糸又はジャガード糸を緯方向に沿って編織するためのフロント筬であり、1つは、裏面の緯挿入糸を緯方向に沿って編織するためのバック筬であり、1つは、前記断熱糸を、隣接する鎖編組織の間に経方向に沿って敷くためのプレーン筬であり、
トリコット経編機を採用する場合、少なくとも3つの筬を含み、そのうち、1つは、鎖編組織となるように縦方向に沿って編織するとともに、緯方向移動可能であって表面の緯挿入糸を編織するためのループ形成筬であり、1つは、裏面の緯挿入糸を緯方向に沿って編織するためのバック筬であり、1つは、前記断熱糸を、隣接する鎖編組織の間に経方向に沿って敷くためのプレーン筬である
ことを特徴とする断熱カーテンの編織方法。
【請求項8】
糸は、整経された後、経編機により生地となるように編織され、
整経時に、前記断熱糸のプリストレッチ率が8.0~10.0%であり、
整経後、異なる断熱糸の伸長偏差が3‰以下である請求項に記載の断熱カーテンの編織方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテン分野に関し、特に断熱カーテンに関する。
【背景技術】
【0002】
カーテンは、家庭用品の一部として、人々の物質的な生活レベルが上昇し、消費価値観が変化し続けるにつれて、その役割が元々の装飾及びプライバシー保護から、徐々に様々な機能まで広げられ、かつ、徐々に認められてきた。カーテンは、編織プロセス及び材質の改進により特定の機能を実現することができる。ここで、断熱保温カーテンは、夏は室外から室内への高温輻射を低減し、室内での快適性を増加し、冬は室内に対して保温の役割を有し、炭酸ガス放出を有効に低減できるエコレースカーテンである。
【0003】
従来、断熱カーテンは、カーテン生地をコーティングする方式により断熱効果を実現することができる。例えば、CN201710777276.4、CN104146580では、表面機能コーティングの方法により断熱仕上げ剤を生地層の表面に施し、断熱の機能を達成した。断熱仕上げ剤と生地との相溶性を良好にするために、仕上げ剤の配合成分に対して厳しく要求されており、また、処理過程では、通常、ディップコーティング、ロールコーティング等を用い、カーテン上の塗料が一定の厚さに達する必要がある。コーディング後のカーテンに対して、ウェット膜を押圧またはスピン脱水し、押圧においてゴムローラが用いられる。押圧またはスピン脱水後のカーテンを乾燥し、材料の上に完全に付着されていない余計な塗料を除去するために、乾燥及び洗浄を複数回繰り返す必要がある。断熱効果に達成するためにカーテン生地全体を処理するプロセスが複雑であり、処理量が大きく、複数回の洗浄により水が無駄となり、環境を汚染し、また、使用過程において有害ガスが揮発しやすく、人体の健康に対して一定のダメージを与える。
【0004】
CN201080051571.8には、内側布層と、外側布層と、内側布層と前記外側布層とに囲まれた断熱性フィラー布と、を備える断熱複合布が開示されている。前記断熱性フィラー布層が、該布の少なくとも片側に起毛面を有するテキスタイルファブリックである。断熱性フィラー布層は、裏編みテリーシンカーループニット構造を有する両面ニット生地を含む。前記両面ニット生地は、起毛面又は毛羽立った面を有する技術表面と、カットループ面又はベロア面を有する技術裏面とを有する。この断熱性布層は、断熱層を充填することにより、生地に断熱の効果を有させ、生地の厚さを増加し、生産コストをも増加させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願第201710777276.4号
【文献】中国特許公開第CN104146580公報
【文献】中国特許出願第201080051571.8号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、断熱カーテンを提供し、経編プロセスにより断熱糸をカーテン中に編み込み、得られたカーテンは、優れた断熱効果を有し、断熱仕上げ剤による後処理が必要とされない。また、編織過程において、断熱糸の使用量が最も少ないが、最良の断熱効果を達成し、断熱カーテンの生産コストを低下させ、カーテンのコストパフォーマンスを向上させ、断熱カーテンの普及、応用に対して重要な意義を有する。
【0007】
本発明は、以下の技術的解決手段により上記目的を実現する。
【0008】
経編プロセスにより編織された断熱カーテンであって、経編とは、1組又は複数組の平行に配列される糸を用い、経方向に編機の全ての編針へ給糸し、同時に、ループ形成して織物を形成するプロセス過程を指す。形成されたループが経方向に配列され、隣接する糸が互いにソケット接続してなる。ソケット接続過程において、各糸が単独の編針により制御される。糸は、一般的に、経方向の鎖編糸と、緯方向の緯挿入糸と、ジャガード糸と、に分けられる。本願における断熱カーテンは、少なくとも鎖編糸と、緯挿入糸と、断熱糸とにより編織される。鎖編糸が織物の鎖編組織となるように編織され、その特徴は、各ループウェールが同一の経糸により形成され、編織時に、各経糸は、始終、同一の編針においてインレイされることにある。鎖編組織において、各ウェールが互いに結ばず、縦方向の伸長性が小さく、一般的に、他の組織と複合して針織物となるように編織され、縦方向の伸長性を低減することができる。
【0009】
前記緯挿入糸は、カーテンの緯方向に沿って編織され、隣接する2本の鎖編組織が、緯挿入糸とループ形成した後に固定接続されることにより、カーテンの緯挿入インレイを形成し、前記カーテンの表裏の両面のそれぞれに緯挿入インレイが設置されている。前記断熱糸が、隣接する2本の鎖編組織の間に経方向に沿って設置されており、断熱糸が鎖編組織と平行し、また、断熱糸が前記カーテンの表裏の両面の緯挿入インレイの間に介在する。つまり、断熱糸の設置が、普通の経編プロセスにおけるその他の糸とは異なり、いずれの糸ともループ形成せず、表、裏の両面の緯方向に設置された糸により固定されるので、断熱糸は、カーテンの表裏の両面の緯挿入インレイの間に介在してもよいし、断熱糸をカーテンの表、裏の両面のジャガード糸の間に介在してもよく、あるいは、一方の面を緯挿入インレイとし、他方の面をジャガード糸にしてもよい。カーテンの表、裏の両面ともに緯方向の糸を設置することにより、断熱糸をカーテンの経方向に固定する。断熱糸が鎖編糸、緯挿入糸又はジャガード糸と固定接続されていないので、前記断熱糸を前記カーテンから単独で引き出すことができ、生地組織に敷くことに相当し、糸の使用量を低減することができる。なぜなら、ループ形成過程において、糸が結び合い、使用量が増加するからである。
【0010】
あるいは、鎖編組織が生地において垂直方向に設置され、隣接する鎖編組織の間に介在する断熱糸が直線状にカーテン生地の経方向に設置され、カーテン生地の表裏の両面ともに緯方向の緯挿入糸が設置され、断熱糸を表裏の両面の緯挿入インレイの間に介在させる。
【0011】
あるいは、鎖編組織が生地において曲線状に設置され、断熱糸が鎖編組織の曲線形状と一致し、断熱糸が、隣接する鎖編組織の間に設置される。カーテン生地の表裏の両面ともに緯方向の緯挿入糸が設置され、断熱糸を表裏の両面の緯挿入インレイの間に介在させる。
【0012】
経編織物において、隣接する鎖編糸の間にメッシュを有し、好ましくは、いずれか2本の隣接する鎖編組織の間に1本又は複数本の断熱糸が設置されている。これは全てのメッシュが断熱糸で被覆されることに相当し、断熱糸で被覆される生地の表面積が最大となる。この場合、カーテン生地において、ループ形成以外の表面には、いずれも断熱糸が敷かれており、断熱効果が最も良い。
【0013】
好ましくは、隣接する2本の鎖編組織の間に複数本の断熱糸が設置されてもよく、複数本の断熱糸が設置された場合、メッシュがより良く被覆され、より良い断熱効果を有することができる。
【0014】
あるいは、前記断熱糸は、隣接する鎖編組織の間に間隔を置いて設置されてもよい。断熱効果への異なる要求に応じて、断熱糸の粗密の程度を設置してもよい。例えば、2本の鎖編組織ずつの間隔を置いて1本断熱糸を設けてもよい。
【0015】
本願は、断熱カーテンの編織方法を提供し、ジャカール又はトリコット経編機を用いることができ、ジャカール経編機であれば、少なくとも4つの筬を含み、そのうち、1つは、鎖編組織となるように縦方向に沿って編織するためのループ形成筬であり、1つは、表面の緯挿入糸を緯方向に沿って編織するためのフロント筬であり、1つは、裏面の緯挿入糸を緯方向に沿って編織するためのバック筬であり、1つは、前記断熱糸を、隣接する鎖編糸の間に経方向に沿って給糸するためのプレーン筬である。トリコット経編機の場合、少なくとも3つの筬を含み、そのうち、1つは、鎖編組織となるように縦方向に沿って編織するとともに、緯方向移動可能であって表面の緯挿入糸を編織するためのループ形成筬であり、1つは、裏面の緯挿入糸を緯方向に沿って編織するためのバック筬であり、1つは、前記断熱糸を、隣接する鎖編組織の間に経方向に沿って敷くためのプレーン筬である。
【0016】
編織過程において、鎖編糸、緯挿入糸又はジャガード糸が普通の糸であり、また、編織後、糸が互いにループ形成して結び合い、糸の整経に対する要求が高くない。整経とは、所望の糸をボビンから引き出し、一定の予張力を付与し、幾つかの糸分け編針を経過し、経軸の巻回動力の作用により、糸を経軸上に平行に巻き回すことを指す。断熱糸の整経がそれと異なり、DTY糸であるので、低い弾性を有し、整経時に、各糸の張力が同じであり、プリストレッチした後の伸長が一致し、収縮後に経軸上に平行に巻き回すことが要求される。経軸成形の硬さが中ほどであり、繊維上のオイルが溢れ出てはならない。同一ソケットの経軸上の断熱糸の張力、長さが一致することが要求される。整経された経軸断熱糸の伸長偏差が3‰を超えてはならず、そうでなければ、生地表面が不平坦となってしまうか、あるいは、糸切れが発生してしまう。従って、断熱糸の整経は、設備及びプロセスをより高く要求している。
【0017】
断熱糸の整経過程において、断熱糸がボビンから解舒された後、解舒速度よりも大きい線速度で糸を引き出し、解舒された糸がボビンにつれて巻き回され続けるのを防止する。プリストレッチ率の選択が適切であるか否かは、断熱糸がスムーズにボビンから解舒され、ボビンの回動に従って巻き回され続けるか否かに係わる。プリストレッチ率が大きすぎると、断熱糸がスムーズにボビンから引き出され、ボビンの回動に従って巻き回され続けないが、糸切れを生じさせやすい。逆に、プリストレッチ率が小さすぎると、断熱糸がボビンから引き出されにくく、ボビンの回動に従って巻き回され、糸切れが増え、整経の進行に不利である。複数回の試験により、本願において、断熱糸のプリストレッチ率を8.0~10.0%とした。
【0018】
整経後の糸は、経編機により生地となるように編織され、経編機は、主に編織手段及び巻取手段により構成され、編織手段は、糸を、ループ形成後に生地となるように編織し、巻取手段の作用は、所定の速度で編織領域から出た生地を布ロールとなるように巻き回すことである。
【0019】
布巻ローラが、駆動巻取ローラ及び従動巻取ローラ上に放置され、布巻を行う時に駆動装置が駆動巻取ローラを回動させ、駆動巻取ローラが従動巻取ローラを回動させ、布巻ローラが駆動巻取ローラ及び従動巻取ローラ上に放置されているので、間接に回動する。布巻過程において、布巻ローラの回動速度が一定であるため、生地の張力は調整できない。普通の経編生地は、鎖編組織がループ形成であり、糸が曲線状を呈することに相当し、一定の伸長性を有し、布巻ローラに対する張力が小さい。断熱糸は、生地内部に敷かれているため、引張状態であり、弾性が非常に小さく、特に、隣接する2本の鎖編組織の間に断熱糸が複数本設置されている場合、生地の張力がより大きくなる。布巻ローラの回動過程において、布巻ローラに対する張力が明らかに増大し、布巻ローラの軸方向中心線の湾曲、生地模様の変形を引き起こしやすく、製品の品質に影響を与えいる。従って、通常では、普通の経編生地に適用可能な布巻ローラは、本願の生地の生産プロセスに適用できず、断熱生地の編織密度に応じて、普通の布巻ローラを調整し、直径又は布巻ローラの剛性を増大することにより、断熱糸の布巻過程における応力に適応する必要があり、布巻ローラが定速回動可能であって、軸方向に変形が生じないことを基準とし、設備の改造に対してより高く要求されている。
【0020】
DTY糸の生産過程において、一般的に、PETチップを用いてPOYを紡糸し、その後、弾性付与を行ってDTYを生産する。TiOは、PETチップ中に分散され、TiOのチップ中での分散が均一であるほど、その後の紡糸過程がより容易となる。TiOの含有量が高いほど、つや消し性がより良くなり、糸の断熱効果がより良くなる。しかし、TiOの含有量が高い場合、繊維中での分布を非常に均一にすることは非常に困難であり、なぜなら、TiOが固体ペレットであり、水に不溶であり、ペレットが細かくて小く、分散過程において非常に凝集しやすいからであり、この場合、POYの非晶質領域及び結晶領域の分布の均一性に大きな影響を与え、その後の紡糸、弾性付与過程に対して非常に不利な要素であり、繊維の引張、加撚、変形において局所の結晶及び配向の不均一を招き、DTY糸条の縦方向部分の染色差異を招き、欠点を形成してしまう。
【0021】
本願は、PETチップにおいて、ナノTiOをつや消し剤として、0.1%~0.5%の酸化グラフェンを添加することにより、つや消し性及び紡糸性を改善する断熱糸を開示する。
【0022】
断熱カーテンの原理は、主に下記の2点である。1つは、余計な太陽光を吸収することにより、強度を低下させることであり、もう1つは、ほとんどの太陽光を反射することにより断熱を実現することである。ナノ二酸化チタンは、白色でふんわりとした粉末であり、紫外線を遮光する作用が強く、良好な分散性及び耐候性を有する。二酸化チタンで処理された糸は、有効に断熱できる。二酸化チタンの糸中での担持量は、断熱性能に対して非常に重要な影響を有し、担持量が少なければ、断熱効果が顕著ではなく、二酸化チタンの糸中での担持の堅固度が断熱の有効時間に影響を与え、堅固度が低ければ、使用時間が長くなるにつれて、カーテンの断熱効果が徐々に低下する。従って、二酸化チタンの担持量が大きくて堅固度が高い糸の開発が十分な価値がある。二酸化チタンの糸への担持は、化繊紡糸又は紡績過程においてナノ二酸化チタンを添加してもよいが、この方式により、ナノ粒子の分散が不均一となりやすく、紡口が塞がれやすく、同時に、糸の機械性能が低下しやすい。本願は、PETチップにナノ二酸化チタン及び酸化グラフェンを添加することにより、ナノ二酸化チタン粒子が凝集しやすく、分散しにくく、糸マトリックスとの結合堅固度が悪いという問題を解決した。酸化グラフェンは、非常に強い親水性を有し、水中での分散性に優れ、大きい比表面積を提供してナノ二酸化チタンを有効に分散させ、凝集を防止することができる。かつ、酸化グラフェンは、数多くの酸素含有官能基、例えば水酸基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、カルボニル基(C-O)及びエポキシ化物等を有し、これらの酸素含有基により、酸化グラフェンが非常に強い可塑性を有し、ナノ二酸化チタンの糸中における吸着力を増強することができる。
【0023】
従来技術と比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
1.本発明の断熱カーテンによれば、経編プロセスにより断熱効果を有し、鎖編糸と、緯挿入糸と、断熱糸とにより編織される断熱カーテンであって、断熱糸は、鎖編糸及び緯挿入糸の両方とも固定接続されておらず、カーテンの表裏の両面の緯挿入インレイの間に敷かれるだけであり、断熱糸は敷かれるので、ループ形成していないので、経編組織の編針進退において、使用量が最も少ない断熱糸により、断熱糸で被覆される表面積が最も大きく、かつ、経編生地のメッシュを断熱糸で被覆することにより、最良の断熱効果を奏することができる。
2.本発明の断熱カーテンによれば、断熱糸の設置方式において、断熱糸が他の糸と固定接続されていないため、経方向に沿って力を込めて断熱糸をカーテンから引き出すことができ、断熱糸は、隣接する2本の鎖編組織の間に経方向に沿って設置され、緯方向に沿って表裏の両面の緯挿入インレイの間に介在するので、カーテンの中間層に堅固に固定可能であり、糸抜けが発生しない。一方、緯挿入インレイの厚さを設置し、カーテン生地の厚さを調整することにより、異なるグラム重量の生地を得ることができ、カーテンは断熱効果を有しながら、軽くて薄くて通気性が良い。
3.断熱糸の異なる設置方式により、異なる断熱効果を達成することができ、任意の隣接する2本の鎖編組織に断熱糸が設置されている場合、カーテン本体上の、断熱糸で被覆する表面積が最も大きく、断熱効果が良い。使用状況に応じて、断熱要求が高くない場面において、カーテンのコストを低下させるために断熱糸を間隔を置いて設けることもできる。
4.本発明の断熱糸によれば、ナノ二酸化チタンに酸化グラフェンを添加することにより、ナノ二酸化チタンの糸中での担持量を大きくし、堅固度が高くなり、断熱カーテン効果が良くなり、使用寿命が長くなる。
5.本発明の断熱カーテンによれば、断熱糸が表、裏の両面の糸の間に囲まれるので、断熱糸の摩耗が小さく、カーテンの断熱効果を有効延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の断熱カーテンの断熱効果検出箱の構造概略図である。
図2図2は、普通の経編生地の組織構造図である。
図3図3は、本発明の断熱カーテン生地の組織構造図である。
図4図4は、図3の生地の鎖編糸のラッピングコード図である。
図5図5は、鎖編組織が曲線であるラッピングコード図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、断熱カーテンの断熱効果は、以下の検出箱1において測定され、観察が便利のため、検出箱を透明材質とし、検出箱は、対称する左箱体11と右箱体12とを含み、左右箱体の間に検出すべき生地2を介在させ、また、空隙が露出して検出効果が影響されるのを防止するために、生地の周辺を左右箱体の間に完全に介在させた。左右箱体のそれぞれにおいて温度測定器3を設置するとともに、左箱体において赤外光ランプを加熱装置4として設置して、室温での左右箱体の温度を記録し、その後、左箱体を40~45℃に加熱し、30min維持し、右側箱体中での温度を観察した。
【0026】
実施例1
図2は、普通の経編生地(No.1生地)の組織構造図であり、図中、鎖編組織5は、垂直方向に設置され、生地の表裏の両面ともに緯挿入糸6が設置されており、隣接する鎖編組織の間に、敷される断熱糸が設置されておらず、このことから、経編プロセスにより編まれた生地において、ほぼメッシュであった。図2の生地は、普通のポリエステル糸で編織され、生地のグラム重量が100グラム/平方メートルであった。
【0027】
図3は、断熱カーテン生地の組織構造図であり、鎖編組織の間に断熱糸7を敷いてNo.2生地を得、鎖編組織が直線状であり、図4は、鎖編糸のラッピングコード図(0-1/1-0//)であり、図4は、オープン式鎖編であり、隣接する2本の鎖編の間に1本の断熱糸を直接に挿入している。オープン式鎖編をクローズド式鎖編に設けてもよく、クローズド式鎖編のラッピングコードが0-1//である。同様に、隣接する2本のクローズド式鎖編の間に1本の断熱糸を直接に挿入している。
【0028】
図中、隣接する鎖編組織の間にいずれも断熱糸が敷かれており、ここで、鎖編糸は、ループ形成後に、湾曲状を呈して鎖編組織を形成した。断熱糸は、DTY糸であり、低い弾性を有し、編織過程において、ふんわりの表面が糸の表面積を増大させることができる。緯挿入糸が緯方向に設置され、断熱糸が表裏の両面の緯挿入糸の間に固定されている。比較として、領域Aにおける断熱糸を抜き出すと、大きなメッシュを露出させることができる。明らかに、生地本体のほとんどのメッシュが断熱糸で被覆されており、中空部分の表面積が大幅に減少し、断熱効果を達成する。断熱糸が抜き出されていない場合、図3の生地において、断熱糸の使用量が生地の総重量の10%であり、グラム重量が100グラム/平方メートルである。つまり、1平方メートルの生地において、10グラムが断熱糸、90グラムが普通の糸であり、生地の総質量が100グラムである。
【0029】
No.1生地とNo.2生地のグラム重量が同じである。検出箱において断熱効果測定を行う。まず、No.1生地を左箱体と右箱体との間に介在させて固定し、この時、左右箱体中での温度測定器がいずれも23℃を示す。左箱体中での赤外光ランプをオンにして加熱を行い、左箱体を40℃に加熱し、右側箱体の温度測定器を観察し、左箱体の温度の上昇につれて、右箱体中での温度も徐々に上昇し、左箱体中での温度が40℃に達したとき、右箱体中での温度が37℃であり、30min維持した後、右箱体中での温度が39℃に達した。
【0030】
同様に、No.2生地を左箱体と右箱体との間に介在させて固定し、この時、左右箱体中での温度測定器がいずれも23℃を示す。左箱体中での赤外光ランプをオンにして加熱を行い、左箱体を40℃に加熱し、右側箱体の温度測定器を観察し、左箱体の温度の上昇につれて、右箱体中での温度も徐々に上昇し、左箱体中での温度が40℃に達したとき、右箱体中での温度が29℃であり、30min維持した後、右箱体中での温度が31℃に達した。
【0031】
同一のグラム重量で、普通の経編生地はメッシュが大きいので、断熱効果が悪いことがわかった。断熱糸が敷かれた生地の断熱効果が大幅に向上し、断熱効果が25%以上であった。
【0032】
実施例2
本実施例において、No.2生地の断熱糸の使用量を半分に減少し、つまり、第1列に断熱糸を設けるが、第2列には設けず、さらに第3列に断熱糸を設け、順次に間隔を置いて設置し、No.3生地を得た。実施例1における検出方法を用いて、No.3生地の断熱効果を測定し、左箱体中での温度が40℃に達したとき、かつ30min維持した後、右箱体の温度が35℃であり、このことから、断熱糸の使用量の減少につれて、断熱効果も相応的に低下したことがわかった。
【0033】
同様に、縦方向の列において、異なる断熱効果に達するために、断熱糸の設置及び断熱糸の不設置は任意に組み合わせてもよい。
【0034】
実施例3
本実施例において、普通の糸の代わりに断熱糸を鎖編糸として用い、緯挿入糸が普通の糸であり、隣接する鎖編組織の間に断熱糸が敷かれておらず、No.4生地を得た。鎖編組織は、ループ形成であるため、断熱糸の使用量が明らかに増加し、編織してグラム重量が100グラム/平方メートルの生地が得られ、断熱糸の使用量が35グラムであった。実施例1における検出方法を用いて、No.4生地の断熱効果を測定し、左箱体中での温度が40℃に達した時、右箱体の温度が36℃であり、このことから、断熱糸の使用量が明らかに増加し、敷く時の約3.5倍であることがわかった。断熱糸の価額が高いため、生地のコストが増加する。同時に、メッシュの存在により、断熱効果も、敷く時の効果に劣っている。一方、断熱糸を鎖編糸として用いる場合、鎖編糸は、ループ形成して鎖編組織を形成するので、鎖編糸はずっと引張状態にあり、これは、断熱糸の直径が細くなり、断熱糸で被覆される生地の表面積が小さくなることに相当する。しかし、断熱糸が直接挿入される場合、編織後、断熱糸は、経方向に張力がなく、断熱糸の表面のふんわりであり、表面積を増大することができる。
【0035】
実施例4
本実施例において、普通の糸の代わりに断熱糸を緯挿入糸として用い、鎖編糸が普通の糸であり、隣接する鎖編組織の間に断熱糸が敷かれておらず、No.5生地を得た。緯挿入糸は、緯方向に移動して緯挿入インレイを形成するので、断熱糸の使用量も明らかに増加し、編織してグラム重量が100グラム/平方メートルの生地が得られ、断熱糸の使用量が30~35グラムであった。実施例1における検出方法を用い、No.5生地の断熱効果を測定し、左箱体中での温度が40℃に達したとき、右箱体の温度が33℃であり、このことから、断熱糸の使用量が明らかに増加し、敷く時の約3.0~3.5倍であることがわかった。断熱糸の価額が高いため、生地のコストが増加した。断熱糸を鎖編糸として用いる場合と比べて、断熱糸を緯挿入糸として用いる場合の断熱効果がより良いが、敷く時と比べて、糸の使用量が大幅に増加してしまう。
【0036】
実施例5
本実施例において、経方向に設置された鎖編組織が曲線を呈し、例えば、六角曲線となるように設置され、図5に示すように、ラッピングコードが0-1/1-0/0-1/1-2/1-2/2-1/1-0//であり、隣接する2本の鎖編の間に1本の断熱糸を設け、No.6生地を得た。この場合、断熱糸が曲線であり、隣接する断熱糸の間に六角形を形成した。六角形の断熱糸は、鎖編と交差しておらず、縦方向に沿って断熱糸をカーテンから引き出すことができる。同様に、鎖編は、その他の任意の曲線となるように設置されてもよく、断熱糸は、交差せずに、隣接する2本の鎖編糸の間に設置されている。曲線となるように設置された断熱糸は、直接挿入の設置と比べて糸の使用量が増加した。実施例1における検出方法を用い、No.6生地の断熱効果を測定し、左箱体中での温度が40℃に達したとき、右箱体の温度が29℃であった。
【0037】
実施例6
経編生地は、編織過程において、編織密度の違いにより、形成されたメッシュの大きさも異なり、隣接する鎖編糸の間の距離も異なり、一般的に、生地の編織密度が大きいほど、グラム重量が大きくなり、メッシュが小さくなる。本実施例において、隣接する鎖編組織にいずれも断熱糸が敷かれており、異なるグラム重量を有する生地に、同一重量の断熱糸を使用し、実施例1の測定方法を用いて、異なるグラム重量の生地の断熱効果を考察した。ここで、断熱効果は、左箱体が40℃に達したときに、左右箱体の温度差と左箱体の温度との比の値により表される。その結果を表1に示す。
【0038】
表1
【0039】
上記の表から明らかなように、断熱糸の使用量が同じである場合、生地のグラム重量のみを増加し、つまり、その他の普通の糸の使用量を増加することにより、生地の厚さを増加した。この場合、断熱効果の向上が非常に有限であり、上記の表から、70グラム/平方メートルの生地の断熱効果が13.5%であり、150グラム/平方メートルの生地の断熱効果がわずか16.6%であることがわかった。
【0040】
実施例7
本実施例において、生地のグラム重量が150グラム/平方メートルであり、異なる重量比の断熱糸を生地に添加し、実施例1の測定方法を用い、生地の断熱効果を考察した。ここで、断熱効果は、左箱体が40℃に達したときに、左右箱体の温度差と左箱体の温度との比の値で表される。その結果を表2に示す。
【0041】
表2
【0042】
上記の表から、同一グラム重量の生地は、生地を占める断熱糸の質量比が大きければ、断熱効果が顕著となり、かつ、向上幅が大きいことがわかった。このことから、断熱糸の質量比は、断熱効果の向上に対して非常に顕著であることがわかった。
【0043】
以上、本発明の基本的な原理、主な特徴及びメリットを示して説明した。本発明は上記実施例により制限されず、上記実施例及び明細書の説明は、単に本発明の原理を説明するものに過ぎず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、本発明は、さらに様々な変化及び改進を含み、これらの変化及び改進がいずれも保護を求める本発明の範囲内に含まれると当業者であれば理解される。

図1
図2
図3
図4
図5