(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】回転式噴射器具と回転式噴射器具集合体と流体噴射装置と噴射式清浄処理方法
(51)【国際特許分類】
B08B 5/02 20060101AFI20230126BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
B08B5/02 A
B08B3/02 D
(21)【出願番号】P 2019001579
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】392013198
【氏名又は名称】株式会社オサダコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】長田 康
(72)【発明者】
【氏名】師 秀男
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069161(JP,A)
【文献】特開平11-204469(JP,A)
【文献】実開昭52-087164(JP,U)
【文献】特開2002-113434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/02
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度50%未満の乾燥気体・湿度50%~湿度80%未満の低湿潤気体・湿度80%以上の高湿潤気体・水蒸気・ミスト・液体のうちのいずれかからなる噴射用流体の供給を流体供給系から受けたりその供給された噴射用流体を被噴射物に向けて噴射したりするための正逆回転自在な回転式の流体噴射管と、
前記被噴射物に接触させるための接触部材と、伝動用部品を有する回転駆動系からの回転動力を前記流体噴射管に伝えるための伝動用部品とを備えていること、および、
前記流体供給系からの噴射用流体を流入させるための流体流入部が前記流体噴射管における先端部以外の部位に形成されており、かつ、その流入流体を
前記被噴射物に向けて噴射するためのノズル部が前記流体噴射管の先端部に形成されていること、および、
前記流体噴射管の両端部間には、当該流体噴射管の一端部から他端部にわたる全体的な形状をくの字状にするための屈曲した部分があること、および、
前記接触部材が天然繊維・合成繊維・混紡繊維のうちから選択されたいずれかの繊維を含むものであり、かつ、細長い筒形状のものからなること、および、
前記接触部材が前記流体噴射管の前記ノズル部側に取り付けられて前記流体噴射管と前記接触部材とが互いに組み合わされていること、および、
前記回転駆動系からの回転動力を前記流体噴射管に伝えるための前記伝動用部品が前記流体噴射管の外周部に取り付けられて
前記流体噴射管側の前記伝動用部品と前記回転駆動系側の前記伝動用部品とが対をなす伝動部品として動力伝達可能に対応しているものであること、および、
前記流体噴射管の前記ノズル部から
前記被噴射物に向けて噴射される前記噴射用流体の少なくとも一部が前記接触部材に沿って噴射流動するものであること
を特徴とする回転式噴射器具。
【請求項2】
前記噴射用流体が粉体および/または粒体を含むものである請求項1
に記載された回転式噴射器具。
【請求項3】
前記流体噴射管が連続回転および/または間欠回転するものである請求項1ないし
請求項2のいずれかに記載された回転式噴射器具。
【請求項4】
請求項1ないし
請求項3のいずれかに記載された回転式噴射器具を複数備えていること、および、
複数の前記回転式噴射器具が、横列・縦列・斜め配列・山形配列・谷形配列・千鳥状配列・ランダム配列のうちのいずれかの配列態様を保持して組み合わされていること
を特徴とする回転式噴射器具集合体。
【請求項5】
複数の前記回転式噴射器具におけるそれぞれの前記流体噴射管には、単一または複数の流体供給系を介して前記噴射用流体が供給される
請求項4に記載された回転式噴射器具集合体。
【請求項6】
ケーシングと流体供給系と吸引手段と回転駆動系と、前記請求項1ないし3のいずれかに記載された前記回転式噴射器具または前記請求項4ないし前記請求項5のいずれかに記載された前記回転式噴射器具集合体とを備え、かつ、前記回転式噴射器具または前記回転式噴射器具集合体への回転動力伝達用として対をなす伝動用部品をも備えていること、および、
前記ケーシングが噴射対象たる被噴射物を内部に進入させるための入口と前記被噴射物を外部へ退出させるための出口とを有
していること、および、
前記回転式噴射器具が正逆回転自在な回転式の流体噴射管を有していて当該回転式噴射器具が前記ケーシング内に配置されていること、および、
前記流体供給系からの噴射用流体を流入させるための流体流入部が前記流体噴射管の先端部以外の部位に形成されて
いるとともに、前記ケーシング内を通過しているときの前記被噴射物に向けて前記噴射用流体を噴射する
ためのノズル部が前記流体噴射管の先端部側に形成されていること、および、
前記流体噴射管の両端部間には、当該流体噴射管の一端部から他端部にわたる全体的な形状をくの字状にする屈曲した部分があること、および、
前記回転駆動系からの回転動力を前記回転式噴射器具の流体噴射管に伝達するための対をなす前記伝動用部品については、その一方の伝動用部品が前記回転式噴射器具の基端部外周に取り付けられているとともに、その他方の伝動用部品が前記回転駆動系に備え付けられて、この双方の伝動用部品が対をなす伝動用部品として動力伝達可能に対応しているものであること、および、
前記ケーシング入口から前記ケーシング内を経由して前記ケーシング出口に至るときの前記ケーシング内の前記
被噴射物に流体噴射することのできる流体噴射角度が、前記回転式噴射器具の前記ノズル部に付されていること、および、
前記回転式噴射器具には、湿度50%未満の乾燥気体・湿度50%~湿度80%未満の低湿潤気体・湿度80%以上の高湿潤気体・水蒸気・ミスト・液体のうちのいずれかからなる噴射用流体が供給されるものであること
を特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
正逆回転自在な流体噴射管を有する回転式噴射器具について、一つ以上の当該回転式噴射器具が内部に装備されているケーシングを用いること、および、
前記ケーシングについては
前記清浄処理対象物を進入させるための入口と
前記清浄処理対象物を退出させるための出口とを有するものであること、および、
前記回転式噴射器具については清浄処理対象物に接触させるための接触部材が前記流体噴射管のノズル部側に取り付けられているものであること、および、
前記回転式噴射器具については前記流体噴射管の先端部にあるノズル部から
前記清浄処理対象物に向けて噴射用の流体が噴射され
、かつ、その噴射用流体の少なくとも一部が前記接触部材に沿って噴射流動するものであること、および、
前記ケーシングの内部については吸引手段で吸引され、かつ、その吸引されたものが前記ケーシング外に排出されること
を前提条件とする噴射式清浄処理方法において、
前記回転式噴射器具
における前記接触部材付きの前記流体噴射管を回転状態にしたり、前記流体噴射管に噴射用流体を供給してその噴射用流体を前記流体噴射管のノズル部から
前記清浄処理対象物に向けて噴射状態に
しながらその噴射用流体の少なくとも一部を前記接触部材に沿って噴射
流動させたり、さらには、
前記噴射用流体の噴射を受ける
前記清浄処理対象物を前記ケーシング入口から前記ケーシング内に進入させて前記ケーシング出口へと進行させたりすること、および、
前記ケーシング内の前記清浄処理対象物に対しては、前記流体噴射管の
前記ノズル部から噴射された前記噴射用流体を噴き付けたり
前記接触部材を接触させたりして、当該噴射用流体の噴き付けによる清掃作用と当該接触部材の接触によるはたき清掃作用とよって前記
清浄処理対象物をクリーンアップすること、および、
前記清浄処理対象物をクリーンアップしているときに、前記ケーシング内の内部流体を吸引手段により吸引して前記ケーシング外に排出すること
を特徴とする噴射式清浄処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃・消毒・塗布・湿潤・含液・液濡れ・払拭・冷却・加熱・供給など各種の処理や作業に適用することのできる技術に関するものである。より詳しくは、気体(乾燥気体・含湿気体を含む)・液体・蒸気・ミスト・粉体・粒体・粉粒体など噴射可能なものを噴射するための回転式噴射器具と回転式噴射器具集合体に関するものである。
【0002】
本発明は、また、上記回転式噴射器具および/または上記回転式噴射器具集合体を主体にして構成された流体噴射装置に関するものである。
【0003】
本発明は、さらに、上記流体噴射装置のような処理手段を用いて実施される噴射式清浄処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0004】
清浄な空気など気体の流動性を利用して処理対象物の表面を清浄化するというクリーニング装置が下記の特許文献1に開示されている。ちなみに、この場合の処理対象物については、単に対象物という呼び方があるほか、噴射対象物・除塵対象物・清浄化対象物・被噴射物などのような種々の呼び方がある。
【0005】
特許文献1のクリーニング装置は、薄形状物体の表面を安定・高品質・高能率にクリーニングすることができ、しかも、それが簡潔で安価に実施できるというのである。しかしながらこの文献記載のクリーニング装置は、薄形状物体に付着している塵などをクリーニング機構の粘着ローラで粘着除去するものであるため、汚れの増した粘着ローラを新規粘着ローラと定期的に交換しなければならい煩わしさがあった。このほか、薄形状物体を搬送するための搬送機構が大掛かりなものになるという難点もあった。
【0006】
これに対し下記の特許文献2に開示されたスピンノズルによるときは、薄形状物体に付着している塵などをエアーの噴射力で除塵することができる。このスピンノズル除塵方式の場合、粘着ローラ除塵方式(特許文献1)とは異なり、既述の煩わしいローラ交換がないのでメンテナンス上の負担が軽減される。
【0007】
特許文献2のスピンノズル(パイプノズルとも称される)についていうと、これはノズル先端の噴射口がノズル回転軸に対して斜めに指向しているものである。特許文献2のスピンノズルでは、かかるノズル構成とすることにより、エアー噴射にともなってノズル自身が自動旋回するのである。さらにいうと、この場合のスピンノズルの回転速度は、これに供給するエアーの圧力や単位時間あたりエアー流量に依存する。つまり、エアー圧力やエアー流量を増した場合にはスピンノズルが増速回転することとなり、逆に、エアー圧力やエアー流量を減じた場合にはスピンノズルが減速回転することとなる。
【0008】
上述した特許文献2のスピンノズルには、いくつかの改善の余地が残されている。それは下記の<01>~<04>のようなものである。
<01> スピンノズルの回転速度がこれに供給するエアー圧力やエアー流量に依存するものであるため、ノズル低速回転での高圧エアー噴射とか、ノズル高速回転での低圧エアー噴射とかのような回転噴射態様をとることができない。ゆえに、除塵対象物の状況に応じた細やかな除塵作業が行いがたいものになる。
<02> ノズル先端の斜めに指向した噴射口がスピンノズルの回転方向を決定づけている。すなわちスピンノズルは、右回転(時計回り)のみ、または、左回転(反時計回り)のみのように一定方向に回転するだけである。これはスピンノズル回転方向を随時切り替えや定時切り替えができないということである。もちろんこれも、除塵対象物の状況に応じた細やかな除塵作業を行いがたいものにする。
<03> スピンノズルからのエアー噴射によるときは、その噴射エアーの除塵作用でこの処理を受ける処理対象物が清浄化される。端的にいってこれは、噴射エアーのみによる除塵処理である。それゆえ、噴射エアーで除去することが困難な汚れなどには対処することができず、その適用範囲が限られてしまう。
<04> スピンノズルのエアー噴射とノズル回転とは一体不可分のものである。ゆえに、スピンノズルの停止状態(非回転状態)においてエアー噴射をすることができず、逆には、スピンノズルの回転状態を維持しつつエアー噴射状態のみを停止することもできないのである。このタイプのものは、さらに、スピンノズルを非回転状態にして特定方向へ集中的にエアー噴射するようなこともできない。
<05> スピンノズルは上述のようにエアーを噴射するだけのものである。しかもこれに関する従来の技術文献等には、他の手段を併用するなどして除塵機能をさらに高めるという技術開示がない。したがって現状は、より高機能の除塵手段を具現する上での技術示唆やインセンティブがとぼしい状況にあるといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-202471号公報
【文献】特開2001-054747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述のような技術課題に鑑み、各種の清浄化を含む清掃を効率よく合理的に実施する技術、また、清掃以外にも種々の作業を合理的に実施することのできる回転式噴射器具と回転式噴射器具集合体と流体噴射装置と噴射式清浄処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る回転式噴射器具は所期の目的を達成するためのものとして下記の第1項ないし第3項に記載された課題解決手段を特徴とするものである。
[第1項]
湿度50%未満の乾燥気体・湿度50%~湿度80%未満の低湿潤気体・湿度80%以上の高湿潤気体・水蒸気・ミスト・液体のうちのいずれかからなる噴射用流体の供給を流体供給系から受けたりその供給された噴射用流体を被噴射物に向けて噴射したりするための正逆回転自在な回転式の流体噴射管と、前記被噴射物に接触させるための接触部材と、伝動用部品を有する回転駆動系からの回転動力を前記流体噴射管に伝えるための伝動用部品とを備えていること、および、
前記流体供給系からの噴射用流体を流入させるための流体流入部が前記流体噴射管における先端部以外の部位に形成されており、かつ、その流入流体を前記被噴射物に向けて噴射するためのノズル部が前記流体噴射管の先端部に形成されていること、および、
前記流体噴射管の両端部間には、当該流体噴射管の一端部から他端部にわたる全体的な形状をくの字状にするための屈曲した部分があること、および、
前記接触部材が天然繊維・合成繊維・混紡繊維のうちから選択されたいずれかの繊維を含むものであり、かつ、細長い筒形状のものからなること、および、
前記接触部材が前記流体噴射管の前記ノズル部側に取り付けられて前記流体噴射管と前記接触部材とが互いに組み合わされていること、および、
前記回転駆動系からの回転動力を前記流体噴射管に伝えるための前記伝動用部品が前記流体噴射管の外周部に取り付けられて前記流体噴射管側の前記伝動用部品と前記回転駆動系側の前記伝動用部品とが対をなす伝動部品として動力伝達可能に対応しているものであること、および、
前記流体噴射管の前記ノズル部から前記被噴射物に向けて噴射される前記噴射用流体の少なくとも一部が前記接触部材に沿って噴射流動するものであること
を特徴とする回転式噴射器具。
[第2項]
前記噴射用流体が粉体および/または粒体を含むものである前記第1項に記載された回転式噴射器具。
[第3項]
前記流体噴射管が連続回転および/または間欠回転するものである前記第1項または前記第2項に記載された回転式噴射器具。
【0012】
本発明に係る回転式噴射器具集合体は所期の目的を達成するためのものとして下記の第4項ないし第5項に記載された課題解決手段を特徴とするものである。
[第4項]
前記第1項ないし前記第3項のいずれかに記載された回転式噴射器具を複数備えていること、および、
複数の前記回転式噴射器具が、横列・縦列・斜め配列・山形配列・谷形配列・千鳥状配列・ランダム配列のうちのいずれかの配列態様を保持して組み合わされていること
を特徴とする回転式噴射器具集合体。
[第5項]
複数の前記回転式噴射器具におけるそれぞれの前記流体噴射管には、単一または複数の流体供給系を介して前記噴射用流体が供給される前記第4項に記載された回転式噴射器具集合体。
【0013】
本発明に係る流体噴射装置は所期の目的を達成するためのものとして下記の第6項に記載された課題解決手段を特徴とするものである。
[第6項]
ケーシングと流体供給系と吸引手段と回転駆動系と、前記請求項1ないし3のいずれかに記載された前記回転式噴射器具または前記請求項4ないし前記請求項5のいずれかに記載された前記回転式噴射器具集合体とを備え、かつ、前記回転式噴射器具または前記回転式噴射器具集合体への回転動力伝達用として対をなす伝動用部品をも備えていること、および、
前記ケーシングが噴射対象たる被噴射物を内部に進入させるための入口と前記被噴射物を外部へ退出させるための出口とを有していること、および、
前記回転式噴射器具が正逆回転自在な回転式の流体噴射管を有していて当該回転式噴射器具が前記ケーシング内に配置されていること、および、
前記流体供給系からの噴射用流体を流入させるための流体流入部が前記流体噴射管の先端部以外の部位に形成されているとともに、前記ケーシング内を通過しているときの前記被噴射物に向けて前記噴射用流体を噴射するためのノズル部が前記流体噴射管の先端部側に形成されていること、および、
前記流体噴射管の両端部間には、当該流体噴射管の一端部から他端部にわたる全体的な形状をくの字状にする屈曲した部分があること、および、
前記回転駆動系からの回転動力を前記回転式噴射器具の流体噴射管に伝達するための対をなす前記伝動用部品については、その一方の伝動用部品が前記回転式噴射器具の基端部外周に取り付けられているとともに、その他方の伝動用部品が前記回転駆動系に備え付けられて、この対をなす双方の伝動用部品が動力伝達可能に対応しているものであること、および、
前記ケーシング入口から前記ケーシング内を経由して前記ケーシング出口に至るときの前記ケーシング内の前記被噴射物に流体噴射することのできる流体噴射角度が、前記回転式噴射器具の前記ノズル部に付されていること、および、
前記回転式噴射器具には、湿度50%未満の乾燥気体・湿度50%~湿度80%未満の低湿潤気体・湿度80%以上の高湿潤気体・水蒸気・ミスト・液体のうちのいずれかからなる噴射用流体が供給されるものであること
を特徴とする流体噴射装置。
【0014】
本発明に係る噴射式清浄処理方法は所期の目的を達成するためのものとして下記の第7項に記載された課題解決手段を特徴とするものである。
[第7項](当初請求項14)
正逆回転自在な流体噴射管を有する回転式噴射器具について、一つ以上の当該回転式噴射器具が内部に装備されているケーシングを用いること、および、
回転式噴射器具については清浄処理対象物に接触させるための接触部材が前記流体噴射管のノズル部側に取り付けられているものであること、および、
前記ケーシングについては清浄処理対象物を進入させるための入口と清浄処理対象物を退出させるための出口とを有するものであること、および、
前記回転式噴射器具については前記流体噴射管の先端部にあるノズル部から噴射用の流体が噴射され、かつ、その噴射用流体の少なくとも一部が前記接触部材に沿って噴射流動するものであること、および、
前記ケーシングの内部については吸引手段で吸引され、かつ、その吸引されたものが前記ケーシング外に排出されること
を前提条件とする噴射式清浄処理方法において、
前記回転式噴射器具における前記接触部材付きの前記流体噴射管を回転状態にしたり、前記流体噴射管に噴射用流体を供給してその噴射用流体を前記流体噴射管のノズル部から噴射状態にしながらその噴射用流体の少なくとも一部が前記接触部材に沿って噴射流動させたり、さらには、噴射用流体の噴射を受ける対象物を前記ケーシング入口から前記ケーシング内に進入させて前記ケーシング出口へと進行させたりすること、および、
前記ケーシング内の前記清浄処理対象物に対し、前記流体噴射管のノズル部から噴射された前記噴射用流体を噴き付けたり前記接触部材を接触させたりして、当該噴射用流体の噴き付けによる清掃作用と当該接触部材の接触による清掃作用とよって前記清浄処理対象物をクリーンアップすること、および、
前記対象物をクリーンアップしているときに、前記ケーシング内の内部流体を吸引手段により吸引して前記ケーシング外に排出すること
を特徴とする噴射式清浄処理方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る回転式噴射器具は下記<11>~<15>のような効果を有する。
<11> 回転式噴射器具の流体噴射管は、回転駆動系からの動力を同管外周部の伝動用部品で受けるという動力伝達方式により回転する。このような流体噴射管は、流体の噴射にともなって回転する従来方式のものと基本的に異なる。さらにいうと、流体噴射管による流体噴射と流体噴射管の回転とは互いに独立していて双方の相互干渉がない。すなわち流体噴射管は、噴射用流体の状況いかんに関わらず、流体噴射管が自由に回転したり自由に回転停止したりすることができるのである。この流体噴射管が自由に選択することのできる代表的な稼働状態を上げると、それは回転停止状態での流体噴射・低速回転状態での流体噴射・中速回転状態での流体噴射・高速回転状態での流体噴射などである。その際の噴射流体についても、流体の少量供給・流体の中量供給・流体の多量供給などを自由に設定することができる。ゆえに回転式噴射器具の場合、流体噴射管の回転と流体の噴射について多種多様の態様をとることができ、もって、仕事の目的や状況に応じた処理が高度かつ適切に行えるようになる。
<12> 回転駆動系から動力伝達を受けて回転するという回転式噴射器具の流体噴射管は、また、流体噴射にともなって回転する従来方式のものと異なり、回転駆動系の速度制御で回転速度を正確に制御することができるので、連続回転や間欠回転のいずれであっても、安定した回転を期することができる。
<13> 回転式噴射器具の流体噴射管であって、同管の先端部に被噴射物(処理対象物)と接触することのできる接触部材が取り付けられている流体噴射管の場合、流体噴射管と接触部材とによる相乗効果も得ることができる。たとえば、処理対象物を清掃処理するというとき、流体噴射管からの噴射流体による清掃作業と接触部材による清掃作業とが相俟って清掃効果が格段に向上する。塗布・払拭・その他の処理作業を実施するときなども、噴射流体と清掃作業との相乗効果で作業性を高めることができる。
<14> 回転式噴射器具の一つは、流体噴射管の外周部に伝動部品が取り付けられただけのものである。回転式噴射器具の他の一つは、流体噴射管の先端部(ノズル部)側に接触部材が取り付けられただけのものである。回転式噴射器具のさらに他の一つは、流体噴射管の上記各所定部に伝動部品や接触部材が取り付けられただけのものである。回転式噴射器具はこのように、構成部品ないし構成部材が少ない上にそれらの構造も単純潔なものであるから、総じて簡潔な器具構成のものとなる。
<15> 上記のように部品(部材)数が少なくて構成が簡潔なものである。このような回転式噴射器具は、組み立てや製作などが容易である。したがって回転式噴射器具の場合、小数部品・簡潔構成・組み立て容易・製作容易など、これらによって、ローコストで提供できるようになる。
【0016】
本発明に係る回転式噴射器具集合体は下記<16>~<19>のような効果を有する。
<16> 回転式噴射器具集合体における個々の回転式噴射器具は、既述の回転式噴射器具と共通する構成を具備しているので、上記に記載された<11>~<15>の効果がある。
<17> 回転式噴射器具集合体における各流体噴射管(複数)の場合、これらが分散することなくまとめられているので、取り扱いについては、分離独立した単一の流体噴射管を複数取り扱う場合よりも容易である。
<18> 回転式噴射器具集合体の場合、複数の流体噴射管がすでに配列状態にあるので、たとえば多数の流体噴射管を広域にわたって整列配置(レイアウト)などするとき、多数の単一の流体噴射管を整列配置する場合に比し、当該配置作業が容易かつ迅速に行えるようになる。
<19> 回転式噴射器具集合体をつくる際の流体噴射管の配列(レイアウト)については、事後の装置作製で要求される噴射管配列(レイアウト)を想定して当該集合体を組み立てることができる。この回転式噴射器具集合体によるときは、流体噴射管が所定配列をなす流体噴射装置の作製において主要工程が簡素化されるので、当該装置を作製する際の合理化をはかることができる。
【0017】
本発明に係る流体噴射装置は、下記<20>~<22>のような効果を有する。
<20> 流体噴射装置は、既述の回転式噴射器具または既述の回転式噴射器具集合体を構成要素として具備するものであるから、上記に記載された<11>~<15>の効果または上記に記載された<16>~<19>の効果がある。
<21> 流体噴射装置においては回転式噴射器具または回転式噴射器具集合体がケーシング内に配置される。この場合の回転式噴射器具には、ケーシング内を移動する対象物(被噴射物)との相対関係においてその対象物に対する流体噴射角度がノズル部に付される。これは、回転式噴射器具のノズル部の流体噴射角度に留意しながら回転式噴射器具または回転式噴射器具集合体をケーシング内に配置するだけでよいので、流体噴射装置の要部構成が簡潔なものとなり、かつ、当該装置の組み立ても簡単・容易なものとなる。
<22> 流体噴射装置について、ケーシング内の流体噴射管(回転式噴射器具の主要部材)に接触部材が取り付けられているものの場合は、流体噴射管による流体噴射作用と接触部材による接触作用とが重畳するので、対象物(被噴射物)に対して高度かつ強度のある作用力を発揮する。このような流体噴射装置の場合、既述の各処理において、高速処理・処理時間の短縮・処理効果の確実性などを期することができる。
【0018】
本発明に係る噴射式清浄処理方法は、下記<23>~<24>のような効果を有する。
<23> 噴射式清浄処理方法の一つは数少ない低難易度操作を実施するだけのものである。その要点となるものは、a.回転式噴射器具の流体噴射管を回転状態にすること、b.流体噴射管に噴射用流体を供給してその噴射用流体を流体噴射管のノズル部から噴射状態にすること、c.噴射用流体の噴射を受ける対象物をケーシング入口からケーシング内に進入させてケーシング出口へと進行させることの三つだけである。もちろんこの単純な三つの操作のみであっても、対象物は十分にクリーンアップされる。すなわち、流体噴射管のノズル部からの噴射用流体はケーシング内の対象物に噴き付けられ、この噴き付けによる清掃作用で対象物がクリーンアップされるのである。
<24> 噴射式清浄処理方法の他の一つは、上記の流体噴射処理に加え、流体噴射管に取り付けられた接触部材による対象物への接触処理を行う。ちなみに、流体噴射処理のみとか部材接触処理のみとかの場合、それぞれ単独の処理結果しか得られない。これに対し、流体噴射処理と部材接触処理とを同期させながら対象物を清浄処理する当該方法の場合は、[噴射流体の噴射除去作用+接触部材の叩き(はたき)除去作用+接触部材の払拭除去作用]などの協調(相乗効果)で対象物からの塵埃除去(塵芥除去)が飛躍的に向上するようになる。これとともに対象物の確実な清浄処理も迅速化する。一方、これにケーシング内の吸引作用が加わるときは、その吸引作用で用済み噴射流体が速やかにケーシング外へ排出されてケーシング内部が清浄度の高い状態に保持されるので、ケーシング内環境が清浄処理にとって好ましいものになる。対象物はこの好条件下でより高度にクリーンアップされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る回転式噴射器具についてその一実施形態を略示した斜視図である。
【
図3】本発明に係る回転式噴射器具集合体についてその一実施形態を略示した斜視図である。
【
図4】
図3の回転式噴射器具集合体の縦断面図である。
【
図5】本発明に係る流体噴射装置ならびに本発明に係る噴射式清浄処理方法についてその一実施形態を略示した縦断面図である。
【
図6】本発明に係る回転式噴射器具・回転式噴射器具集合体などの配列状態を略示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る回転式噴射器具・回転式噴射器具集合体・流体噴射装置・噴射式清浄処理方法などについて、添付の図面を参照してこれらの実施形態を説明する。その順序としては、1番目に回転式噴射器具を説明し、2番目に回転式噴射器具集合体を説明し、3番目に流体噴射装置を説明し、4番目に噴射式清浄処理方法を説明する。
【0021】
図面を参照して説明する以下の回転式噴射器具・回転式噴射器具集合体・流体噴射装置などにおいて、材料ないし材質をとくに説明しない部品や部材は、金属製・プラスチック製・複合材製など周知のものからなり、これらには、その機能や用途に応じた機械的特性(強度)がある。
【0022】
本発明における処理対象物(図中の処理対象物W)については、既述と同様、単に対象物という呼び方があるほか、噴射対象物・除塵対象物・清浄化対象物・被噴射物などのような種々の呼び方がある。
【0023】
図1・
図2に例示された回転式噴射器具において、11は流体噴射管を示し、21は接触部材を示す。さらに、31は伝動部品、41は回転駆動系をそれぞれ示す。
【0024】
流体噴射管11は金属・プラスチック・木・竹・セラミック・ガラス・石・厚紙のいずれか、または、このうちで二つ以上の材料が組み合わされた複合材からなるものである。流体噴射管11を介して噴射される流体は、気体(乾燥気体・含湿気体を含む)・液体・蒸気・ミスト・粉体・粒体・粉粒体などのいずれか、または、このうちの複数組み合わせからなる混合流体である。したがって流体噴射管11の材料としては、取り扱う流体に適した材質のもの、すなわち、使用する流体を目的にしたがい満足に取り扱うことのできる材質のものが選択される。
【0025】
流体噴射管11の一端部(図示の上端側)には、流体を導入するための流体流入部として導入口12があり、かつ、流体噴射管11の他端部(図示の下端側)には、導入した流体を噴射するための噴射口(ノズル孔)を有するノズル部13がある。流体噴射管11の両端部間(中間部分)には屈曲した部分があり、それによって、一端部から他端部にわたる流体噴射管11の全体的な形状がほぼ「くの字」状に曲がっている。
【0026】
接触部材21は、植物繊維・動物繊維・化学繊維・繊維状合成樹脂・金属繊維・織布・不織布・紐・糸などのうちのいずれかからなり、または、これらのうちの複数種が組み合わされたものからなる。もちろん接触部材21については、ゴム製やプラスチック製のものでもよく、その場合に軟質のものだけでなく半硬質のものも採用することができる。接触部材21の具体的な形状構造について代表的な数例をあげると、これには、細長い筒のような形状構造、そのような細長い筒を縦方向に切り開いたような形状構造、短冊を束ねたような形状構造、箒の穂のような形状構造、叩き(はたき)における叩き部分のような形状構造、ブラシにおける刷毛部分のような形状構造などがある。望ましい接触部材21として組紐からなるものをあげることができる。組紐には四角い角打ち紐・平たい平打ち紐・丸い丸打ち紐などがあるが、このいずれの組紐も接触部材21として使用することができる。接触部材21として使用する組紐の典型的な一例は合成樹脂製の組紐であるが、植物繊維製や動物繊維製の組紐も接触部材21として使用することができる。組紐のうちで筒状(パイプ状)をなす丸打ち紐の場合は、流体噴射管11の外周に嵌め込むことで組み付けることができるので、より望ましい。合成樹脂製の丸打ち紐などは、熱溶着で流体噴射管11の外周に取り付け固定されたりする。組紐からなる接触部材21としては、解繊された先端部をもつものがよい。先端部が解繊された接触部材21の場合、その先端部が刷毛のような状態になるから、処理対象物Wに対する叩き(はたき)効果がきわめて高いものになる。
【0027】
接触部材21は流体噴射管11に組み付けることでこれと一体に組み合わされる。より具体的にいうと、接触部材21の一端部が流体噴射管11の一端部側(ノズル部13側)の外周部に嵌め込まれるとともに、その一端部が固縛材(糸・紐・ゴム紐・ワイヤなど)で流体噴射管11の外周部に固縛固定されるか、または、その一端部が締め付け用のリング状金具で流体噴射管11の外周部に締め付け固定されるか、あるいは、その一端部が流体噴射管11の外周部に溶着固定または接着剤固定されるなど、周知の慣用手段で接触部材21は流体噴射管11に組み付け固定される。これとは逆に、接触部材21の一端部が流体噴射管11のノズル部13からその内部に嵌め込まれるとともに、その接触部材21の一端部外周面が流体噴射管11の一端部内周面に固定されることもある。
【0028】
伝動部品31は後述のとおり、流体噴射管11の外周部に取り付けられるものである。伝動部品31は、通常、伝動輪(プーリ)や歯車(ギア)などで代表されるものである。しかしながら
図1・
図2の実施形態では、回転駆動系41から伝動部品31にわたる動力伝達方式として非接触伝動方式が採用されるので、伝動部品31としても磁石(磁石片)を備えた従動用の伝動輪が採用される。もちろん、このような磁石付きの伝動輪は周知である。ちなみに、磁石利用の非接触伝動方式については、特開2002-218735号公報・特開2002-211785公報・特開昭50-136559号公報などで公知である。本発明における磁石利用の非接触伝動方式も、技術的にはこれら公知技術と共通するものである。それで伝動部品31も、その伝動輪の周面および/または板面に多数の磁石(図示しない磁石片)が所定間隔で取り付けられているものである。
【0029】
伝動部品31を介して流体噴射管11を回転駆動させるための回転駆動系41は
図1・
図2を参照してつぎのようなものである。基台42X上には二つの軸受スタンド43a・43bが設けられており、回転軸44Xはその両軸受スタンド43a・43bを介して正逆回転自在に支持されている。正逆回転自在な電動機(モータ)からなる原動機45は、基台42X上の軸受スタンド43a側に配置されており、原動機45の出力軸46と回転軸44Xとが一直線状をなしている。そして、回転軸44Xと原動機45の出力軸46とが、軸継手たるカップリング47を介して連結されている。伝動部品31と対をなす伝動部品48が回転軸44Xの外周部に取り付けられている。この伝動部品48も、磁石(磁石片)を備えた原動用の伝動輪からなる。
【0030】
伝動部品31付き流体噴射管11と関連するその他の構成について、
図2を参照して詳述する。基台42Xには、これを厚さ方向に貫通する貫通孔51が形成されている。流体噴射管11は基台42Xの貫通孔51を貫通した状態でこの箇所に正逆回転自在に取り付け保持される。より具体的にいうと、流体噴射管11の外周面と貫通孔51の内周面との間に介在された軸受部材(ベアリング)52や流体噴射管11の外周面と貫通孔51の内周面との間に差し込み込み介入されたセットカラー53などを介して、流体噴射管11は基台42Xの貫通孔51に正逆回転自在に保持される。ちなみにセットカラー53は、公知ないし周知のものである。一方で基台42Xの上には、両軸受スタンド43a・43bで正逆回転自在に支持された回転軸44Xが、流体噴射管11の一端部(
図2の上端部)に近接してこれと直交している。そして、流体噴射管11の上端部外周面に取り付けられた伝動部品31と回転軸44Xの外周面に取り付けられた伝動部品48とが、対をなす伝動部品として動力伝達可能に対応している。基台42X上の軸受スタンド43a側に配置された原動機45の出力軸46は、既述のように回転軸44Xと一直線状をなしていて、しかもカップリング47を介してその回転軸44Xと連結されている。このようにして所要の部品部材を搭載した基台42Xの上面は、ダクト状のカバー54Xで囲われている。カバー54Xは基台42Xに対して着脱自在なものである。しかしながら、カバー54Xを介して覆われているときの基台42Xの上面内部は、外部と遮断されていて気密な状態になっている。
【0031】
上記図示例の場合、基台42Xの上面を覆うカバー54X内に所要の流体が供給され、その流体が回転式噴射器具(流体噴射管11)を介して噴射される。この場合の流体については回転式噴射器具の目的や用途に応じて種々のものが選択される。基本的には、湿度50%未満の乾燥気体・湿度50%~湿度80%未満の低湿潤気体・湿度80%以上の高湿潤気体・水蒸気・ミスト・液体などのいずれであっても、この場合の流体として用いることができる。典型的一例でいうと、
図1・
図2に例示された回転式噴射器具では、清浄空気(クリーンエア)が上記流体として採用され、それがカバー54X内に供給される。そのためにカバー54Xには、流体供給用の流体供給系55が配管接続される。かかる流体供給系55としては、たとえばエアコンプレッサやエアフィルタ機構(空気清浄機)などを配管系に備えたものが採用され、それを介してカバー54X内に清浄空気が供給される。このときに供給される空気清浄度は、一例として国際規格(ISO)14644-1のクラス1~9の範囲内で設定されたりする。
【0032】
図1・
図2に例示された回転式噴射器具は、原動機45を運転状態にして正回転または逆回転させたときに、その回転が出力軸46→カップリング47→回転軸44X→伝動部品48→伝動部品31のように伝わり、それによって流体噴射管11が正回転または逆回転するものである。このときには、また、流体供給系55を介してカバー54X内に所要の流体が連続的または間欠的に供給されるので、その供給流体が流体噴射管11の導入口12から該管11内に流入して該管11のノズル部13から噴射される。したがって、たとえば
図2に略示されたフィルム状またはシート状の処理対象物Wが同図の矢印方向に進行しているようなときには、流体噴射管11のノズル部13から噴射された流体が処理対象物Wの表面に噴き付けられ、それによって処理対象物Wの表面が処理される。具体的一例で説明すると、流体噴射管11から噴射される流体が清浄空気のようなクリーニング処理用気体とか清浄水のようなクリーニング処理用液体とかであるとき、処理対象物Wの表面に付着している塵埃(塵芥)や各種の汚れなどは、そのクリーニング処理用の噴射流体の物理的な噴射清掃作用を受けて取り除かれたり噴き飛ばされたりする。そして処理対象物Wは、かかる噴射清浄処理を受けたことでクリーンな表面状態に仕上がるのである。
【0033】
上述した流体噴射管11のノズル部13側には接触部材21が取り付けられており、この接触部材21も流体噴射管11と共に正回転または逆回転する。こうして回転するときの接触部材21は、処理対象物Wの表面に対して清掃作用のある動的状態で接触する。それは回転しながら処理対象物Wの表面を叩き・擦り・拭うというものである。この接触部材21の叩き作用・擦り作用・拭う作用を受ける処理対象物Wの場合、それによって、表面に付着している塵埃や汚れなどが取り除かれたり弾き飛ばされたりする。ゆえに処理対象物Wは、この接触清浄処理によっても表面がクリーンな状態になる。
【0034】
噴射清浄処理と接触清浄処理とが重畳して作用する上記処理のときは、また、この二元的な処理を同時に受けながら処理対象物Wの表面が清浄化される。これは噴射による物理的作用と接触による物理的作用というように、二様の異なる除塵清掃力が同期的に作用するのであるから、処理対象物表面における塵埃や汚れ等の表面乖離性が格段に高まる。ゆえに処理対象物Wの表面は、噴射清浄処理と接触清浄処理とが重畳する状況下での相乗効果として、より高度なクリーン状態に仕上げられるのである。
【0035】
図1・
図2に例示された回転式噴射器具の他の用例として、処理対象物Wの表面に液体を塗布することがある。この場合の流体供給系55からは、気体に変えて塗布用の液体が流体噴射管11に供給され、それが流体噴射管11のノズル部13から噴射される。こうして流体噴射管11から噴射される液体は、該管11が回転することで振り撒かれながら処理対象物Wの表面上を拡散する。一方で接触部材21は、処理対象物Wの表面を擦りながら噴射液体をその表面に平滑に塗布する。したがって、流体噴射管11から塗布液を噴射してこれを処理対象物Wの表面上に塗布するというとき、当該塗布時の作業の質や作業の効率が高いものになる。
【0036】
図1・
図2に例示された回転式噴射器具を主体にして処理対象物の清掃(清浄化)を行うための流体噴射装置を作製したり、または、その他の目的に使用する流体噴射装置を作製したりするとき、単数・複数・多数(たとえば三つ以上)の当該回転式噴射器具を配設するためのケーシングが用いられたりする。この場合のケーシングの内部は、真空吸引式のチャンバとなっており、そのチャンバには、一方方向に進行する処理対象物を入室させたり退室させたりするための入口と出口がある。
図1・
図2に例示された回転式噴射器具は、ケーシングのチャンバ内に進入した処理対象物に対して所要の流体が噴射できるように、チャンバ内の空間に配設される。
【0037】
図1・
図2に例示された回転式噴射器具の流体噴射管11について、これが回転することで該管11内に外気(空気)が導入されるものであるとき、流体供給系55が省略されることもある。このような場合、ダクト状のカバー54Xにフィルター付きの外気導入口が設けられたりする。
【0038】
図3・
図4に例示された回転式噴射器具集合体においても、11は流体噴射管、21は接触部材、31は伝動部品、41は回転駆動系をそれぞれ示す。
【0039】
図3・
図4に例示された流体噴射管11・接触部材21・伝動部品31などは、前例の
図1・
図2で述べたものと実質的に同じかそれに準ずるものであるので、前例のそれらを参照することで説明を省略する。接触部材21や伝動部品31も、前例の
図1・
図2で述べたと同様にして流体噴射管11に取り付けられている(組み合わされている)ので、これについても、前例のそれらを参照することで説明を省略する。
【0040】
それぞれの伝動部品31を介して複数の各流体噴射管11を回転駆動させるための回転駆動系41は
図3・
図4を参照してつぎのようなものである。前例よりも長い基台42Y上には四つの軸受スタンド43a・43b・43c・43dが設けられており、前例よりも長い回転軸44Yは各軸受スタンド43a~43dを介して正逆回転自在に支持されている。正逆回転自在な電動機(モータ)からなる原動機45は、基台42Y上の軸受スタンド43a側に配置されており、原動機45の出力軸46と回転軸44Yとが一直線状をなしている。そして回転軸44Yと原動機45の出力軸46とが、軸継手たるカップリング47を介して前例と同様に連結されている。一方、各伝動部品31と対をなす複数の伝動部品48は、所定間隔をおいて回転軸44Yの外周部にそれぞれ取り付けられている。この場合の各伝動部品48も、既述の磁石(磁石片)を備えた原動用の伝動輪からなるものである。
【0041】
伝動部品31付き流体噴射管11に関連する他の構成について、
図3・
図4を参照して詳述する。基台42Yには、これを厚さ方向に貫通する複数(五つ)の貫通孔51が形成されている。この場合の各貫通孔51はつぎのような態様のものである。
図3における基台42Yの前後両側部を基準にした場合、二つの貫通孔51は基台42Yの前側縁寄りにあり、残る三つの貫通孔51は基台42Yの後側縁寄りにある。すなわち、五つの貫通孔51は、基台42Yの前後両側縁を基準にして、後側縁寄り・前側縁寄り・後側縁寄り・前側縁寄り・後側縁寄りというように千鳥状に配置されている。各流体噴射管11は基台42Yの各貫通孔51を貫通した状態でこれらの箇所に正逆回転自在に取り付け保持される。具体的には前例と同じく、流体噴射管11の外周面と貫通孔51の内周面との間に介在された軸受部材(ベアリング)52や流体噴射管11の外周面と貫通孔51の内周面との間に差し込み介入された既述のセットカラー53などを介して、流体噴射管11が基台42Yの貫通孔51に正逆回転自在に保持される。一方で基台42Yの上には、各両軸受スタンド43a~43dを介して正逆回転自在に支持された回転軸44Yが、各流体噴射管11の一端部(
図3の上端部)に近接してこれらと直交している。そして、それぞれの流体噴射管11の上端部外周面に取り付けられた各伝動部品31と回転軸44Yの外周面に取り付けられた各伝動部品48とが、それぞれ対をなす伝動部品として動力伝達可能に対応しているのである。基台42Y上の軸受スタンド43a側に配置された原動機45の出力軸46は、前例と同様、回転軸44Yと一直線状をなしているとともにカップリング47を介してその回転軸44Yと連結されている。このようにして所要の部品部材が搭載装備された基台42Yの上面は、前例よりも長いダクト状のカバー54Yで囲われることとなる。この場合のカバー54Yも、また、基台42Yに対して着脱自在なものである。
図3・
図4において、カバー54Yを介して覆われた基台42Yの上面内部も、前例と同様、外部と遮断されて気密状態になっている。
【0042】
図3・
図4に例示された回転式噴射器具集合体の場合も、基台42Y上のカバー54Y内に所要の流体が供給され、その流体が各流体噴射管11を介して噴射される。この場合の流体についても回転式噴射器具集合体の目的や用途に応じて種々のものが選択される。
図3・
図4の回転式噴射器具集合体で使用可能な流体も、前例と同様、湿度50%未満の乾燥気体・湿度50%~湿度80%未満の低湿潤気体・湿度80%以上の高湿潤気体・水蒸気・ミスト・液体などである。
図3・
図4の回転式噴射器具集合体において、所要の流体として清浄空気(クリーンエア)が採用された場合には、当該清浄空気がカバー54Y内に供給されることとなる。さらにこの場合、カバー54Yに配管接続される流体供給用の流体供給系55が、たとえばその配管系に既述のようなエアコンプレッサやエアフィルタ機構(空気清浄機)などを備えたものからなるときは、それを介してカバー54Y内に清浄空気が供給される。清浄空気の空気清浄度も、国際規格(ISO)14644-1のクラス1~9の範囲内で設定されたりする。
【0043】
図3・
図4に例示された回転式噴射器具集合体の場合も、原動機45を運転状態にしてこれを正回転または逆回転させたときに、原動機45の回転が出力軸46→カップリング47→回転軸44X→複数の伝動部品48→複数の伝動部品31のように伝わり、それにともなって、それぞれの流体噴射管11が正回転または逆回転するようになる。このときには、また、流体供給系55を介してカバー54X内に所要の流体が連続的または間欠的に供給されるので、その供給流体が各流体噴射管11の導入口12から該各管11内に流入して該各管11のノズル部13から噴射される。したがって、たとえば
図4に略示されたフィルム状またはシート状の処理対象物Wが同図の矢印方向に進行しているようなときには、各流体噴射管11のノズル部13から噴射された流体が処理対象物Wの表面に噴き付けられ、それによって処理対象物Wの表面が処理される。具体的一例で説明すると、流体噴射管11から噴射される流体が清浄空気のようなクリーニング処理用気体とか清浄水のようなクリーニング処理用液体とかであるとき、処理対象物Wの表面に付着している塵埃や各種の汚れなどは、そのクリーニング処理用の噴射流体の物理的な噴射清掃作用を受けて取り除かれたり噴き飛ばされたりする。そして処理対象物Wは、このような噴射清浄処理を受けたことでクリーンな表面状態に仕上がるのである。一方で接触部材21は、処理対象物Wの表面を擦りながら噴射液体をその表面に平滑に塗布する。したがって、流体噴射管11から塗布液を噴射してこれを処理対象物Wの表面上に塗布するというとき、当該塗布時の作業の質や作業の効率が高いものになる。
【0044】
上述の説明を総合して明らかなように、
図3・
図4に例示された回転式噴射器具集合体は、回転式噴射器具の数が多いという点で
図1・
図2の前例と構成が異なるが、その用途や使用目的など基本的事項に関しては、
図1・
図2に例示された回転式噴射器と異なるものでなく、その前例と実質的に同じである。したがって、
図3・
図4に例示された回転式噴射器具集合体の場合、前例で述べた技術的な諸事項などは、技術的互換性の範囲内ですべて採用することができる。
【0045】
本発明に係る流体噴射装置の具体的一例が
図5に略示されている。
図5に例示された流体噴射装置は、入口62や出口63を有するケーシング61の内部に既述(
図3・
図4)の回転式噴射器具集合体ZLが装備されたものである。より具体的にいうと、入口62と出口63とにわたるケーシング61内の基準面(処理対象物Wの移動面)を境にして、その基準面の上位側と下位側に、上下一対の回転式噴射器具集合体ZLが配置されたものである。この場合の上下両回転式噴射器具集合体ZLは、支持部材・取付部材・取付金具などを用いる慣用手段でケーシング61内の所定位置に取り付け支持される。その一例をあげると、それぞれの回転式噴射器具集合体ZLにおける基台42Yやカバー54Yの両端部などが周知の取付手段でケーシング61の両側壁内面に固定されるのである。ケーシング61の両側壁内面に固定された上下両回転式噴射器具集合体ZLは、ケーシング61の両側壁内面間にわたって架設されているともいえる。ケーシング61内に装備された各回転式噴射器具集合体ZLの場合、流体噴射管11の先端部はケーシング61内の上記基準面に近接するものの、その基準面には接触することがない。一方で接触部材21の先端部は、上記基準面に被さるほどの余剰分をもって接するようになっている。
【0046】
上述のケーシング61は全体が一体に構成されるものであるが、場合によって、上下二分割や上下前後四分割など、分割された複数パーツの組み合わせや集合で構成されるものもある。このいずれであってもケーシング61は、作業監視・保守・点検の際など、必要に応じて一部または全部を分解することができる。
【0047】
図5の流体噴射装置において、ケーシング61の下部側には吸引ポンプなどを主体にした周知の吸引機64が装備されている。吸引機64はケーシング61内の内気を吸引してそれをケーシング61外に排出するためのものである。したがって、吸引機64の吸入口はケーシング61の内部と通じており、吸引機64の排出口はケーシング61外の排気処理部に通じている。ちなみに、
図5の流体噴射装置が清掃用とか除塵用とかのものであるとき、この場合の吸引機64が吸引ポンプを備えた掃除機、すなわち、電気掃除機などで知られる集塵機等からなることもある。
【0048】
図5の流体噴射装置において、ケーシング61における入口62側の前段には、その入口62に向けて処理対象物Wを案内誘導するための案内部65が設けられており、ケーシング61の出口63側の後段には、ケーシング61内の処理対象物Wに対する第1の除塵用ローラ66や第2の除塵ローラ67が設けられている。このうちで案内部65は、たとえばガイドローラを備えたものからる。上下一対の第1除塵用ローラ66は、たとえば、表面に塵埃付着性のある樹脂やゴムなどからなる。かかる第1塵用ローラ66の具体的な材料ないし材質をあげると、それはブチル系やウレタン系の樹脂またはゴムであったり、あるいは、シリコ-ン系の樹脂またはゴムであったりする。上下一対の第2除塵用ローラ67は、たとえば、芯軸ローラの表面に切り取り可能な粘着シートが巻き付けられたものからなる。ゆえに第2除塵用ローラ67の表面には、粘着性がある。ケーシン出口63からケーシング61外に出た処理対象物Wは、上下一対の第1除塵用ローラ66に接触しながら当該両ローラ間を通過することとなるが、このときに処理対象物Wの表面と接触した除塵用ローラ66は、処理対象物表面の塵などをその表面の付着力で取り去るように作用する。第1除塵用ローラ66には、また、処理対象物Wをケーシング61内からケーシング61外に引き出す機能もある。上下一対の除塵用ローラ66に対しては、それぞれ第2除塵用ローラ67が接触している。第2除塵用ローラ67は、第1除塵用ローラ66に付着している塵埃をそこから粘着除去するものである。すなわち第2除塵用ローラ67は、第1除塵用ローラ66のクリーニング用とでもいうべきものである。これによって、第1除塵用ローラ66の除塵機能が長時間(長期間)持続することとなる。
図5の流体噴射装置には、このほか、除電体68がケーシング入口62の前段位置やケーシング出口63の後段位置にそれぞれ上下一対あて配置されている。一例として除電体68は、除電ブラシと称される周知品からなる。この周知の除電体68は、タングステンまたはタングステン合金からなる金属線が簾状または櫛歯状に並んだものである。もちろん除電体68についても、これがタングステン以外またはタングステン合金以外の除電用金属からなることがある。
【0049】
図5の流体噴射装置において、処理対象物Wは同図の左側から右側へと進行する過程でつぎのような各処理を受ける。はじめは処理対象物Wがケーシング入口62側の両除電体68間を通過するときに除電される。すなわち処理対象物Wは、これに帯電しているところの静電気を前段の両除電体68によって瞬時に中和される。つぎに処理対象物Wはケーシング61内に進入する。さらにいうと、処理対象物Wはケーシング61内において既述の基準面(処理対象物Wの移動面)に沿って進行し、ここでクリーンアップのための清掃処理を受ける。このときのケーシング61内では、上下両回転式噴射器具集合体ZLの各流体噴射管11が回転しながらそれぞれのノズル部13から噴射用流体(たとえば清浄空気)を噴射している。このときは、また、各流体噴射管11のノズル部13側に取り付けられた接触部材21も該各流体噴射管11と共に回転している。かかる運転状態のケーシング61内を進行する処理対象物Wは、各流体噴射管11のノズル部13から噴射される噴射流体をその両面で受けると同時に各接触部材21による叩き・擦り・拭いなどもその両面で受ける。そして噴射流体の噴き付けによる清掃作用や、接触部材21による叩き・擦り・拭いなどの清掃作用によって、処理対象物Wがクリーンアップされる。このときのケーシング61内の内気は、吸引機64により吸引されてケーシング61外に排出されるので、塵埃等がケーシング61内を循環するなどしてそれが処理対象物Wに再付着するというような不都合は生じない。かくてケーシング61内でクリーンアップされた処理対象物Wは、ケーシング61内を出た後、除塵用ローラ66による除塵を受けたり、後段の両除電体68による除電作用を受けたりする。
【0050】
図5の流体噴射装置を用いる上記の噴射式清浄処理は、本発明に係る噴射式清浄処理方法の実施形態の一つでもある。したがって、本発明に係る噴射式清浄処理方法の実施形態については、
図5の流体噴射装置に関する上記の記載内容を参照することで省略する。
【0051】
図5の流体噴射装置を用いる噴射式清浄処理については、回転式噴射器具集合体ZLに代えて回転式噴射器具ZSがケーシング61内に装備された流体噴射装置によっても実施することができ、また、回転式噴射器具ZSと回転式噴射器具集合体ZLとがケーシング61内に装備された流体噴射装置によっても実施することができる。ケーシング61内に回転式噴射器具ZSおよび/または回転式噴射器具集合体ZLを装備するとき、当該器具ZS・当該器具集合体ZLは、ケーシング61内の一側面や両側面に取り付けられてもよいものである。これまでの説明を総合していうと、当該器具ZSおよび/または当該器具集合体ZLは、ケーシング61内の天井面・一側面・他側面のうちの一つ以上に取り付けられることとなる。当該器具ZSまたは当該器具集合体ZLが一つだけケーシング61内に装備されるとき、その取付面として、ケーシング61内の天井面・一側面・他側面のうちのいずれかが選択される。
【0052】
ケーシング61内の取付面に複数の回転式噴射器具ZSおよび/または回転式噴射器具集合体ZLが取り付ける場合の配列態様についていうと、これには、
図6(A)に示すような横列・
図6(B)に示すような縦列・
図6(C)に示すような斜め配列・
図6(D)に示すような山形配列・
図6(E)に示すような谷形配列・
図6(F)に示すような千鳥状配列・
図6(G)に示すようなランダム配列などがある。
【産業上の利用可能性】
【0053】
各種の清浄化を含む清掃を効率よく合理的に実施する技術、また、清掃以外にも種々の作業を合理的に実施することのできる回転式噴射器具と回転式噴射器具集合体と流体噴射装置と噴射式清浄処理方法が提供される。産業上の有用性ら有益性からして、これらの利用可能性はきわめて高い。
【符号の説明】
【0054】
11 流体噴射管
12 導入口
13 ノズル部
21 接触部材
31 伝動部品
41 回転駆動系
42X 基台
42Y 基台
43a 軸受スタンド
43b 軸受スタンド
43c 軸受スタンド
43d 軸受スタンド
44X 回転軸
44Y 回転軸
45 原動機
46 出力軸
47 カップリング
48 伝動部品
51 貫通孔
52 軸受部材
53 セットカラー
54X カバー
54Y カバー
55 流体供給系
61 ケーシング
62 入口
63 出口
64 吸引機
65 案内部
66 除塵用ローラ
67 除塵用ローラ
68 除電体
W 処理対象物
ZS 回転式噴射器具
ZL 回転式噴射器具集合体