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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
F04B51/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019089070
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2019199874
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018092444
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000239758
【氏名又は名称】兵神装備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】中澤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】若林 武徳
(72)【発明者】
【氏名】花川 道雄
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-012379(JP,A)
【文献】特開2012-052434(JP,A)
【文献】特開平08-021370(JP,A)
【文献】特開2000-283056(JP,A)
【文献】特開2013-147986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/00
F04B 51/00
F04B 28/00
F04B 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、
少なくとも前記第2ポンプの劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1が、第1閾値CV1以上となる、S2/S1≧CV1を満足することにより、前記第2ポンプのメンテナンス時期であると判断する、ポンプシステム。
【請求項2】
第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、
少なくとも前記第1ポンプの劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1が、第2閾値CV2以下となる、S2/S1≦CV2を満足することにより、前記第1ポンプのメンテナンス時期であると判断する、ポンプシステム。
【請求項3】
第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、
前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方の劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、
前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1の、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが正常運転している場合の変動範囲と、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプがメンテナンス時期に至るまでの変化傾向とを記憶する記憶手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記比S2/S1が前記変動範囲を超えて変化したとき、前記比S2/S1の変化傾向に基づいて、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプのメンテナンス時期を予測する、ポンプシステム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記比S2/S1を所定時間毎に複数回記憶させた結果に基づいて、前記比S2/S1の変化傾向を予測することにより、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプのメンテナンス時期を予測する時系列分析機能を有する、請求項1又は2に記載のポンプシステム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記比S2/S1を記憶した結果に基づいて、前記比S2/S1の変化傾向を深層学習することにより、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプのメンテナンス時期を予測する人工知能機能を有する、請求項1又は2に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記第1ポンプのメンテナンス時期を示す第1上限値UL1を記憶する記憶手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第1信号S1が、前記第1上限値UL1を超える、S1>UL1を満足することにより、前記第1ポンプがメンテナンス時期であると判断する、請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項7】
前記第2ポンプのメンテナンス時期を示す第2上限値UL2を記憶する記憶手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第2信号S2が、前記第2上限値UL2を超える、S2>UL2を満足することにより、前記第2ポンプがメンテナンス時期であると判断する、請求項2に記載のポンプシステム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1ポンプと前記第2ポンプとの間の中間圧力と、前記第2ポンプの吐出側圧力とに基づいて前記第2ポンプを駆動制御する、請求項1から7のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【請求項9】
直列接続される複数台のポンプからなる容積式ポンプ群と、
前記ポンプのうち、第(i)ポンプの劣化に伴う移送量の低下を、前記第(i)ポンプを駆動制御することにより補正する制御手段と、
前記第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Si、前記ポンプのうちの任意の第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sj、前記信号の比Si/Sj、及び、前記比Si/Sjに対する閾値CVkを記憶する記憶手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶した情報に基づいて、第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Siと、第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sjの比Si/Sjが、閾値CVk以上となる、Si/Sj≧CVkを満足することにより、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期であると判断する、ポンプシステム。
【請求項10】
前記制御手段は、前記2つのポンプの組み合わせの全てについてメンテナンス時期の判断を行う、請求項9に記載のポンプシステム。
【請求項11】
前記制御手段は、各ポンプのメンテナンス時期を、最も短いと判断された期間とする、請求項10に記載のポンプシステム。
【請求項12】
前記記憶手段は、さらに、前記ポンプが正常運転の場合に於ける、第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Siと、第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sjの比Si/Sjの変動範囲と、第(i)ポンプがメンテナンス時期に至るまでの変化傾向とを記憶し、
前記制御手段は、前記比Si/Sjが前記変動範囲を超えて変化したとき、前記比Si/Sjの変化傾向に基づいて、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期を予測する、請求項9から11のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【請求項13】
前記制御手段は、第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Siが設定範囲内である、Si≦SRを満足するか否かを判断し、満足しなければ、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期であると判断する、請求項9から12のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【請求項14】
前記制御手段は、前記第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Siと、前記第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sjの比S1/Sjを所定時間毎に複数回記憶させた結果に基づいて、前記比Si/Sjの変化傾向を予測することにより、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期を予測する時系列分析機能を有する、請求項9から13のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【請求項15】
前記制御手段は、前記第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Siと、前記第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sjの比Si/Sjを記憶した結果に基づいて、前記比Si/Sjの変化傾向を深層学習することにより、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期を予測する人工知能機能を有する、請求項9から13のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【請求項16】
前記各ポンプは、一軸偏心ねじポンプである、請求項1から15のいずれか1項に記載のポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理では、下水から沈殿させた下水汚泥を脱水機で脱水して脱水汚泥(脱水ケーキ)としている。得られた脱水ケーキは、ポンプを駆動することにより、配管内を流動させ、焼却炉等まで移送している。脱水ケーキは粘土状であり、移送途中での圧力損失が大きい。このため、脱水ケーキを遠方の焼却炉等まで移送する場合、ポンプによって高圧にする必要がある。
【0003】
一軸偏心ねじポンプを使用する場合、脱水ケーキに高圧を付与するため、ロータ及びステータの段数を多くする必要がある。この場合、ロータの回転トルクを大きくしなければならず、駆動機構が大型で高価なものとなってしまう。
【0004】
従来、2台のポンプを直列につなぐことにより、各ポンプの負担を軽減し、小型で安価な構成としている。例えば、特許文献1に開示されるポンプ装置では、2台の一軸偏心ねじポンプを中間配管を介して直列接続し、中間配管内の圧力に基づいて、下流側の一軸偏心ねじポンプを駆動制御するようにしている。具体的に、ポンプの制御部は、中間配管内の圧力測定値に上限値と下限値を設定し、2台のポンプの移送量に対してフィードバック制御を行っている。中間配管内の圧力測定値が上限値を上回った場合、ステータの摩耗や劣化等が原因で、下流側のポンプの移送能力が低下し、中間配管内の脱水ケーキの排出が遅れていると判断できる。そこで、下流側ポンプの回転速度を上昇させて移送量を増加させる指示を出力する。一方、中間配管内の圧力が下限値を下回った場合、下流側のポンプの移送能力が上流側のポンプの移送能力を上回っていると判断できる。そこで、下流側ポンプの空運転を防ぐため、その回転速度を低下させて移送量を減少させる指示を出力する。このような回転速度の修正は、一時的な流量や圧力の変動に対して実施されることもあるが、ポンプのステータ劣化による移送量低下を補うためにも実施される。
【0005】
前記ポンプ装置では、上流側ポンプと下流側ポンプとで使用による移送能力の低下具合(ステータの摩耗具合)が相違する。例えば、上流側ポンプに比べて下流側ポンプの吐出圧が高い仕様であれば、両ポンプのステータがそれほど摩耗していない初期段階では、上流(低圧)側ポンプに比べて作用する圧力が大きい下流(高圧)側ポンプでステータが摩耗しやすく、劣化度合いが大きい。下流(高圧)側ポンプの劣化度合いがひどくなると、上流(低圧)側ポンプがそれほど劣化していなくても、ポンプシステム全体として所望の移送能力を発揮できなくなる。
【0006】
しかしながら、前記ポンプ装置では、いずれのポンプがどの程度劣化しているのかを判別できない。このため、使用開始から一定期間が経過すれば、各ポンプの劣化状態の如何に拘わらず、予防的に両方のポンプの消耗部品すなわちステータを交換しており、メンテナンスの負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3583809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、直列接続されたポンプのメンテナンス時期を判断できるポンプシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、少なくとも前記第2ポンプの劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1が、第1閾値CV1以上となる、S2/S1≧CV1を満足することにより、前記第2ポンプのメンテナンス時期であると判断する、ポンプシステムを提供する。
【0010】
この構成により、第1ポンプに比べて第2ポンプの劣化が進行している場合、第1ポンプに比べて第2ポンプによる移送量が不十分となるので、第2ポンプの駆動状態を変更する制御が実行され、第2ポンプによる移送能力が高められる。その後、第1ポンプに比べて第2ポンプの劣化が進行すれば、その都度、第2ポンプによる移送能力が高められるという同様の制御が繰り返される。これにより、第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1が大きくなる。換言すれば、比S2/S1が大きくなれば、第1ポンプに比べて第2ポンプの劣化が進行していると判断できる。そこで、この比S2/S1が、第1閾値CV1以上となる、S2/S1≧CV1を満足すれば、第2ポンプのメンテナンス時期であると判断する。これにより、第2ポンプのメンテナンスを促すことができる。
【0011】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、少なくとも前記第1ポンプの劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1が、第2閾値CV2以下となる、S2/S1≦CV2を満足することにより、前記第1ポンプのメンテナンス時期であると判断する、ポンプシステムを提供する。
【0012】
この構成により、第2ポンプに比べて第1ポンプの劣化が進行している場合、第2ポンプに比べて第1ポンプによる移送量が不十分となるので、第1ポンプの駆動状態を変更する制御が実行され、第1ポンプによる移送能力が高められる。その後、第2ポンプに比べて第1ポンプの劣化が進行すれば、その都度、第1ポンプによる移送能力が高められるという同様の制御が繰り返される。これにより、第1ポンプの駆動状態を示す第1信号SV1と、第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1が小さくなる。換言すれば、比S2/S1が小さくなれば、第2ポンプに比べて第1ポンプの劣化が進行していると判断できる。そこで、この比S2/S1が、第2閾値CV2以下となる、S2/S1≦CV2を満足すれば、第1ポンプのメンテナンス時期であると判断する。これにより、第1ポンプのメンテナンスを促すことができる。
【0013】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方の劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1の、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが正常運転している場合の変動範囲と、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプが故障に至るまでの変化傾向とを記憶する記憶手段と、を備え、前記制御手段は、前記比S2/S1が前記変動範囲を超えて変化したとき、前記比S2/S1の変化傾向に基づいて、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプのメンテナンス時期を予測する、ポンプシステムを提供する。
【0014】
この構成により、通常運転から故障に至るまでの、第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1の変化を示す過去のデータに基づいて、第1ポンプ又は第2ポンプのメンテナンス時期を予測することができる。したがって、メンテナンス時期の予測精度を高めて、計画的にメンテナンス作業を行うことが可能となる。
【0015】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方の劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1を所定時間毎に複数回記憶させた結果に基づいて、前記比S2/S1の変化傾向を予測することにより、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプのメンテナンス時期を予測する時系列分析機能を有する、ポンプシステムを提供する。
【0016】
この構成により、種々の仕様のポンプシステムにおいて、第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1の変化傾向に基づいて、稼働条件や設置環境を反映した過去のデータがなくても、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプのメンテナンス時期を予測することができる。
【0017】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方の劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1を記憶した結果に基づいて、前記比S2/S1の変化傾向を深層学習することにより、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプのメンテナンス時期を予測する人工知能機能を有する、ポンプシステムを提供する。
【0018】
この構成により、過去のデータが蓄積されればされるほど、人工知能による深層学習により、比S2/S1の実績データや、それ以外のデータ、例えば、気象や温度変化等、ポンプのメンテナンス予測に関連する種々のデータをも利用して比S2/S1の変化傾向を見出し、予測精度を高めることができる。
【0019】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、少なくとも前記第1ポンプの劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、前記第1ポンプのメンテナンス時期を示す第1上限値UL1を記憶する記憶手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1が、前記第1上限値UL1を超える、S1>UL1を満足することにより、前記第1ポンプがメンテナンス時期であると判断する、ポンプシステムを提供する。
【0020】
この構成により、第1ポンプと第2ポンプとが共に劣化し、第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1の変化からだけでは、第1ポンプのメンテナンス時期の判断が難しい場合であっても対応することができる。すなわち、第1ポンプと第2ポンプが同じように劣化した場合、前記比S2/S1は両ポンプの駆動状態が正常範囲であることを示す数値で推移するものの、ポンプシステム全体の移送能力は低下する。この場合、手動又は自動で第1ポンプの移送能力を高めるべく駆動状態を変更したとしても、ポンプシステム全体の移送効率が回復することはなく、いずれ限界を迎える。そこで、第1信号値S1が第1上限値UL1を超える、S1>UL1を満足すれば、第1ポンプが劣化していると判断し、メンテナンスが必要であることを通知することができる。
【0021】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、第1ポンプと、前記第1ポンプに対して下流側に直列接続される第2ポンプとを含む容積式ポンプ群と、少なくとも前記第2ポンプの劣化に伴う移送量の低下を、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくともいずれか一方を駆動制御することにより補正する制御手段と、前記第2ポンプのメンテナンス時期を示す第2上限値UL2を記憶する記憶手段と、を備え、前記制御手段は、前記第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2が、前記第2上限値UL2を超える、S2>UL2を満足することにより、前記第2ポンプがメンテナンス時期であると判断する、ポンプシステムを提供する。
【0022】
この構成により、第1ポンプと第2ポンプとが共に劣化し、第1ポンプの駆動状態を示す第1信号S1と、第2ポンプの駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1の変化からだけでは、第2ポンプのメンテナンス時期の検出が難しい場合であっても対応することができる。すなわち、第1ポンプと第2ポンプが同じように劣化した場合、前記比S2/S1は両ポンプの駆動状態が正常範囲であることを示す数値で推移するものの、ポンプシステム全体の移送能力は低下する。この場合、手動又は自動で第2ポンプの移送能力を高めるべく駆動状態を変更したとしても、ポンプシステム全体の移送効率が回復することはなく、いずれ限界を迎える。そこで、第2信号S2が第2上限値UL2を超える、S2>UL2を満足すれば、第2ポンプが劣化していると判断し、メンテナンスが必要であることを通知することができる。
【0023】
前記制御手段は、前記第1ポンプと前記第2ポンプとの間の中間圧力と、前記第2ポンプの吐出側圧力とに基づいて前記第2ポンプを駆動制御するのが好ましい。
【0024】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、直列接続される複数台のポンプからなる容積式ポンプ群と、前記ポンプのうち、第(i)ポンプの劣化に伴う移送量の低下を、前記第(i+1)ポンプを駆動制御することにより補正する制御手段と、前記第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号S、前記ポンプのうちの任意の第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号S、両信号の比S/S、及び、前記比S/Sに対する閾値CVを記憶する記憶手段と、を備え、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶した情報に基づいて、第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Sと、第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sの比S/Sが、閾値CV以上となる、S/S≧CVを満足することにより、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期であると判断する、ポンプシステムを提供する。
【0025】
この構成により、複数台のポンプを直列接続する場合であっても、いずれのポンプがメンテナンス時期であるのかの判断を行うことができる。
【0026】
前記制御手段は、前記2つのポンプの組み合わせの全てについてメンテナンス時期の判断を行うのが好ましい。
【0027】
前記制御手段は、各ポンプのメンテナンス時期を、最も短いと判断された期間とするのが好ましい。
【0028】
前記記憶手段は、さらに、前記ポンプが正常運転の場合に於ける、第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Sと、第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sの比S/Sの変動範囲と、第(i)ポンプがメンテナンス時期に至るまでの変化傾向とを記憶し、前記制御手段は、前記比S/Sが前記変動範囲を超えて変化したとき、前記比S/Sの変化傾向に基づいて、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期を予測するのが好ましい。
【0029】
この構成により、複数台のポンプを直列接続する場合であっても、各ポンプのメンテナンス時期を予測することができる。
【0030】
前記制御手段は、第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Sが設定範囲内である、S≦SRを満足するか否かを判断し、満足しなければ、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期であると判断するのが好ましい。
【0031】
この構成により、複数台のポンプを直列接続する場合であっても、全てのポンプが同様に劣化している場合であっても、メンテナンス時期であることを判断することができる。
【0032】
前記制御手段は、前記第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Sと、前記第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sの比S/Sを所定時間毎に複数回記憶させた結果に基づいて、前記比S/Sの変化傾向を予測することにより、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期を予測する時系列分析機能を有するのが好ましい。
【0033】
この構成により、複数台のポンプを直列接続する場合、稼働条件や設置環境を反映した過去のデータがなくても、各ポンプのメンテナンス時期を予測することができる。
【0034】
前記制御手段は、前記第(i)ポンプの駆動状態を示す第(i)信号Sと、前記第(j)ポンプの駆動状態を示す第(j)信号Sの比S/Sを記憶した結果に基づいて、前記比S/Sの変化傾向を深層学習することにより、前記第(i)ポンプのメンテナンス時期を予測する人工知能機能を有するのが好ましい。
【0035】
この構成により、過去のデータが蓄積されればされるほど、人工知能による深層学習により、予測精度を高めることができる。
【0036】
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプは、一軸偏心ねじポンプであるのが好ましい。
【0037】
なお、本発明において、ポンプの駆動状態を示す信号値とは、制御装置から各ポンプに出力される駆動指令値であってもよいし、センサ類による各ポンプの駆動状態の実測値であってもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、直列接続されたポンプの交換時期を判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1実施形態に係るポンプシステムの概略図である。
図2図1に示すポンプシステムでの駆動制御を示すフローチャートである。
図3図2のメンテナンス診断処理を示すフローチャートである。
図4図2のメンテナンス予測処理を示すフローチャートである。
図5図1に示すポンプシステムに於ける指令値の比の実績データと記憶データに基づく近似式との変化を示すグラフである。
図6】第1実施形態に係るポンプシステムの稼働時間の経過と、モータの回転速度比との関係を示すグラフである。
図7】第2実施形態に係るポンプシステムの概略図である。
図8図7に示すポンプシステムでの駆動制御を示すフローチャートである。
図9図8の運転開始処理を示すフローチャートである。
図10図8の分圧制御処理を示すフローチャートである。
図11図8の保守診断処理を示すフローチャートである。
図12図8の保守予測処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0041】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るポンプシステムを示す。このポンプシステムでは、第1ポンプ1と第2ポンプ2がU字形の中間配管3により直列接続されている。ここでは、第1ポンプ1及び第2ポンプ2は共に一軸偏心ねじポンプである。そして、第1ポンプ1と第2ポンプ2とで容積式ポンプ群を構成している。搬送物に対して第1ポンプ1で圧力を付与した後、第2ポンプ2でさらに圧力を付与して高圧にすることができる。つまり、第1ポンプ1が低圧側ポンプとして機能し、第2ポンプが高圧側ポンプとして機能する。
【0042】
第1ポンプ1では、第1ケーシング4内に、第1ステータ5及び第1ロータ6と、スクリューロッド7とが収容されている。
【0043】
第1ケーシング4は、第1ステータ5及び第1ロータ6が収容される第1搬送部8と、スクリューロッド7が収容される第1容器部9とで構成されている。第1搬送部8は円筒状で、一端側の吐出部には中間配管3の一端部が接続され、他端部は第1容器部9に接続されている。第1容器部9は、第1搬送部8よりも大径で、中央部から上方に向かって筒状の吸込部10が延びている。吸込部10を介して攪拌機11から搬送物(ここでは、脱水ケーキ)が供給されるようになっている。
【0044】
第1ステータ5は、適宜搬送する流動物に応じて選択されるゴム、樹脂等の弾性材料(例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム)を筒状(例えば、断面形状が円形)に形成したものである。第1ステータ5の中心孔5aは、その内周面がn条で単段あるいは多段の雌ねじ形状とされている。第1ステータ5は、第1搬送部8に、その内周面と密着した状態で取り付けられる。
【0045】
第1ロータ6は、ステンレス等の金属材料からなる軸体をn-1条で単段あるいは多段の雄ねじ形状としたものである。第1ロータ6は、第1ステータ5の中心孔5a内に配置され、その長手方向につながった搬送空間5bを形成する。第1ロータ6の一端部は第1自在継手12を介してスクリューロッド7の一端部に連結されている。
【0046】
スクリューロッド7の他端部には、第1モータ13の回転軸が連結されている。第1モータ13は、第1インバータ14によって設定される周波数の違いによって回転速度が変更される。第1インバータ14からの供給電力は、制御装置15によって制御される。すなわち、第1インバータ14には制御装置15から第1信号S1(第1駆動指令値)が出力され、第1ポンプ1の回転数(第1モータ13に出力する交流の電圧及び周波数)が調整される。ポンプが一軸偏心ねじポンプ等の容積型ポンプであれば、制御装置15からの回転速度の駆動指令値と実際のポンプの回転速度との間の相関関係に大きな変化は生じない。このため、第1信号S1が第1モータ13すなわち第1ポンプ1の駆動状態を示すと判断してもよい。第1モータ13の駆動により、スクリューロッド7及び第1ロータ6が回転する。第1ロータ6は、第1ステータ5の内側で自転すると共に、第1ステータ5の内周面に沿って公転する。つまり、第1ロータ6は第1ステータ5の中心孔内で偏心回転することにより、搬送空間内の脱水ケーキを中間配管3に向かって搬送する。
【0047】
第2ポンプ2では、第2ケーシング16内に、第2ステータ17及び第2ロータ18が収容されている。
【0048】
第2ケーシング16は、第2ステータ17及び第2ロータ18が収容される第2搬送部19と、第2容器部20とで構成されている。第2搬送部19は円筒状で、一端側の吸込部10には中間配管3の他端部が接続され、他端部は第2容器部20に接続されている。第2容器部20は、第2搬送部19よりも大径で、そこからは筒状の排出部21が延びている。排出部21から排出された脱水ケーキは、遠方の焼却炉等へと供給される。
【0049】
第2ステータ17及び第2ロータ18は、前記第1ステータ5及び前記第1ロータ6とそれぞれ同様な構成である。第2ロータ18は、第2ステータ17の中心孔内に配置され、その長手方向につながった搬送空間16bを形成する。第2ロータ18の一端部は、第2自在継手22を介して第2モータ23の回転軸に連結されている。第2モータ23は、第2インバータ24によって設定される周波数の違いによって回転速度が変更される。第2インバータ24からの供給電力は、制御装置15によって制御される。すなわち、第2インバータ24には制御装置15から第2信号S2(第2駆動指令値)が出力され、第2ポンプ2の回転数(第2モータ23に出力する交流の電圧及び周波数)が調整される。このため、第1ポンプ1と同様に、第2信号S2が第2モータ23すなわち第2ポンプ2の駆動状態を示すことになる。第2モータ23の駆動により第2ロータ18が回転する。第2ロータ18の回転は、前記第1ロータ6と同様であり、第2ステータ17の内側で自転すると共に、第2ステータ17の内周面に沿って公転する。つまり、第2ロータ18は第2ステータ17の中心孔内で偏心回転することにより、搬送空間内の脱水ケーキを第2容器部20へと搬送する。
【0050】
第1ポンプ1と第2ポンプ2とを接続する中間配管3の途中には第1圧力センサ25が設けられている。第1圧力センサ25で検出される中間配管3内の圧力は、制御装置15に入力される。第2ポンプ2の排出部21には第2圧力センサ26が設けられている。第2圧力センサ26で検出される第2ポンプ2から吐出される脱水ケーキの圧力は、制御装置15に入力される。制御装置15は、第1圧力センサ25及び第2圧力センサ26からの入力信号に基づいて第1インバータ14及び第2インバータ24に制御信号を出力する。また、制御装置15は、各インバータ14、24に出力する制御信号(第1駆動指令値及び第2駆動指令値)に基づいて第1ポンプ1又は第2ポンプ2のメンテナンス時期を判断する。
【0051】
次に、前記構成からなるポンプシステムの動作について説明する。
【0052】
図2のフローチャートに示すように、まず、攪拌機11を駆動し、供給される脱水ケーキを攪拌する(ステップS1)。攪拌された脱水ケーキは、第1ポンプ1の第1容器部9へと送られる。攪拌機11による攪拌の開始から所定時間T(例えば、5~10秒)が経過すれば(ステップS2)、第1モータ13の駆動を開始し、スクリューロッド7及び第1ロータ6を回転させる(ステップS3)。第1モータ13の回転速度は、攪拌機11から供給する脱水ケーキの単位時間当たりの重量に応じた値とする。
【0053】
第1モータ13の駆動により中間配管3内の圧力が上昇する。第1圧力センサ25で検出される圧力が予め設定した値(設定値)となれば、第2ポンプ2の駆動を開始する(ステップS4)。これにより、第2ポンプ2から脱水ケーキが排出される。
【0054】
第1圧力センサ25で検出される中間配管3内の第1圧力P1と、第2圧力センサ26で検出される第2ポンプ2の排出部21での第2圧力P2とを読み込む(ステップS5)。そして、第1圧力P1と第2圧力P2との比P1/P2が設定範囲であるか否かを判断する(ステップS6)。設定範囲としては、例えば、1/2-c≦P1/P2≦1/2+c(cは定数)とすることができる。
【0055】
比P1/P2が設定範囲内であれば、第1モータ13と第2モータ23の駆動回転数が適切であると判断し、ステップS9に移行する。比P1/P2が設定範囲内でなければ、PID(Proportional-Integral-Differential)制御を実行することにより、各モータ13、23の駆動状態を調整する。
【0056】
PID制御では、比P1/P2が設定範囲の上限値を上回った場合、第2ポンプ2の回転数を上昇させるために、第2インバータ24に出力する第2信号S2(第2駆動指令値)を大きくする。これにより、第2ポンプ2による脱水ケーキの移送量が増大する。
【0057】
一方、比P1/P2が設定範囲の下限値を下回った場合、第2モータ23の回転数を降下させるために、第2インバータ24に出力する第2信号S2の値を小さくする。これにより、第2ポンプ2による脱水ケーキの移送量が減少する。なお、第1ポンプ1の移送量を制御する第1インバータ14への制御信号である第1信号S1(第1駆動指令値:ここでは第1ポンプ1の回転数)については、ポンプシステム全体の所望流量や下水処理施設全体の稼働状況に基づいて手動又は自動により設定され、外部から入力される。
【0058】
脱水ケーキを移送する場合、第1ポンプ1の第1ステータ5が摩耗劣化して移送能力が低下していれば、移送量を補うため第1信号S1(第1ポンプ1の回転数)を上昇させる。一方、第2ポンプ2の第2ステータ17が摩耗劣化して移送能力が低下していれば、第1圧力センサ25及び第2圧力センサ26で検出される圧力値に基づいて、フィードバック制御により第2信号S2(ここでは、第2ポンプ2の回転数)を上昇させる。一般に、第1ステータ5と第2ステータ17の摩耗劣化度合いの進行状況は相違している。このため、第1信号S1と第2信号S2の補正は、摩耗劣化度合いの進行が速いポンプに対して行う。この結果、ステータを無交換でポンプシステムを運転し続ける限り、第1信号S1と第2信号S2の比(モータの回転速度比)であるS2/S1は増大していく傾向にある。そして、いずれかのステータが、交換を必要とするほど劣化し切る時期に近付くに従って、第1信号S1と第2信号S2との比S2/S1の変化はさらに加速する。この現象を利用して、制御装置15は、第1ポンプ1又は第2ポンプ2のメンテナンス時期を判断し、又は予測する。
【0059】
第2モータ23の駆動が開始されれば、ポンプのメンテナンス診断処理を実行する(ステップS9)。
【0060】
ポンプのメンテナンス診断処理では、図3のフローチャートに示すように、まず、所定時間毎に、第1信号S1と第2信号S2を記憶する(ステップS9-1)。そして、第1信号S1と第2信号S2の比S2/S1(ここでは、周波数の比)を求める(ステップS9-2)。続いて、この比S2/S1が予め設定した第1閾値CV1以上である(SV2/SV1≧CV1)か否かを判断する(ステップS9-3)。S2/S1≧CV1であれば、第2ポンプ2の駆動回転数が必要以上に上昇していることになる。つまり、第2ロータ18の1回転当たりの吐出量が不十分であり、第2ステータ17が摩耗する等により、第2ポンプ2がメンテナンスを必要とする時期(メンテナンス時期)になっていると判断し、これを報知する(ステップS9-7)。
【0061】
前記比S2/S1が予め設定した第2閾値CV2以下である(S2/S1≦CV2)か否かを判断する(ステップS9-4)。S2/S1≦CV2であれば、第1ポンプ1の駆動回転数が必要以上に上昇していることになる。つまり、第1ロータ6の1回転当たりの吐出量が不十分で、第1ステータ5が摩耗する等により、第1ポンプ1のメンテナンス時期であると判断する(ステップS9-7)。
【0062】
CV1<S2/S1<CV2を満足し、問題がないと判断される場合であっても、第1ポンプ1及び第2ポンプ2が共に劣化していることがある。そこで、第1信号S1が第1上限値UL1を超えている(S1>UL1)か否かを判断する(ステップS9-5)。また、第2信号S2が第2上限値UL2を超えている(S2>UL2)か否かを判断する(ステップS9-6)。S1>UL1であれば、第1ポンプ1がメンテナンス時期になっていると判断し、S2>UL2であれば、第2ポンプ2がメンテナンス時期になっていると判断する。
【0063】
新規に第1ポンプ1と第2ポンプ2の使用を開始した場合、より高圧のかかる第2ポンプ2でステータが摩耗等により劣化しやすい。したがって、先に比S2/S1が第1上限値UL1を超えることが予測される。そして、第2ポンプ2で、劣化したステータを交換すれば、第1ポンプ1でのステータの劣化による影響が出る。この場合、比S2/S1が第2上限値UL2未満となることが予測される。
【0064】
ポンプのメンテナンス診断処理が終了すれば、続いてポンプのメンテナンス予測処理を実行する(ステップS10)。
【0065】
ポンプのメンテナンス予測処理では、図4のフローチャートに示すように、前記比S2/S1を所定周期で記憶する(ステップS10-1)。そして、前記比S2/S1が予め記憶してある変動範囲CR内である(LCR≦S2/S1≦UCR)か否かを判断する(ステップS10-2)。変動範囲は、先にメンテナンス時期であると判断され、ステータが交換されたポンプがあれば、そのデータを使用する。この場合、記憶された比S2/S1の振れ幅の上下限値に対して上下に余裕を持たせた閾値を設定するのが好ましい。
【0066】
図5は、前記比S2/S1の時間的な変化を示すグラフである。図5中、実線が実績データ、すなわち、所定時間毎に記憶した第1信号S1と第2信号S2の比S2/S1の変化を示す。また、点線が過去の記憶データから算出した近似式の変化を示す。このグラフから明らかなように、実績データはほぼ近似式に沿って変化する。そこで、以下のようにしてメンテナンス時期を予測することができる。
【0067】
LCR≦S2/S1≦UCRであれば、各ポンプは適切に稼働していると判断し、メンテナンス予測は行わない。S2/S1>LCR又はUCR<S2/S1となれば、予め記憶してあるS2/S1の変化傾向を示す近似式に基づいて、比S2/S1が第1上限値CV1又は第2上限値CV2を超えるメンテナンス時期、正確には各ポンプが劣化しきるまでの稼働時間を予測する(ステップS10-3)。得られたデータは、図示しないモニタ等に表示して作業者に交換時期を報知させたり、メンテナンス業者にインターネットを介して連絡し、ポンプがメンテナンス時期となる前にメンテナンス作業を実施できるようにしたりしてもよい。なお、過去の記憶データの利用は、近似式に代えて統計的手法等であってもよい。
【0068】
以上のようにして、脱水ケーキの搬送作業が終了するまで、ステップS1からステップS8までの脱水ケーキの搬送処理、ステップS9のポンプのメンテナンス診断処理、及び、ステップS10のポンプのメンテナンス予測処理を繰り返す。
【0069】
図6は、ポンプシステムの稼働時間の経過と、第1信号S1と第2信号S2の比(モータの回転速度比)S2/S1の関係を示すグラフである。速度比S2/S1は、ポンプの使用開始から値1未満で推移しているが、ある期間を超えた時点で値1を超えて急激に大きくなっている。この例では、使用開始からの経過時間が設定時間となることによりステータを交換している。したがって、速度比S2/S1の変化度合いに従ってメンテナンス時期を予測して、稼働停止に至る前に交換作業を実行するようにすれば、計画的な作業を行うことができる。
【0070】
また、ステータの交換から設定時間が経過することにより再びステータを交換している。但し、2回目のステータの交換では、速度比S2/S1は値1を超えてはいるものの、急激には大きくなっておらず、ステータの劣化度合いがそれほど進行していないものと推測される。したがって、第1実施形態に係る方法を採用していれば、メンテナンス時期を先に延ばすことができ、無駄な交換作業を不要とすることが期待できる。
【0071】
以上説明したように、前記第1実施形態に係るポンプシステムには次のような利点がある。
(1)従来では対応できていなかったポンプのメンテナンス時期を判断できる。特に、2段ポンプのいずれのポンプがメンテナンス時期であるのかを判断できる。したがって、一方のポンプのみをメンテナンスするだけでよくなり、メンテナンス作業を効率的に行うことができる。また、メンテナンスの不要なポンプでの無駄な部品の交換が不要となり、経済的でもある。
(2)従来では考えられていなかったポンプのメンテナンス時期を予測できる。すなわち、部品交換等が必要となる以前からメンテナンス時期を予測して、計画的にメンテナンス作業の準備をしておくことが可能となる。これにより、ポンプシステムの予期しない時期での急な停止により、脱水ケーキの搬送処理が滞るといった不具合の発生を防止できる。
【0072】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係るポンプシステムを示す。このポンプシステムでは、第1ポンプ31a、第2ポンプ31b、…第iポンプ(iは自然数、以下同じ)…からなる複数台のポンプ31が直列接続されている。各ポンプ31は、前記第1実施形態と同様な一軸偏心ねじポンプである。このため、ここではその構成についての説明は省略する。第1ポンプ31aには、ホッパー32を介して流動体(ここでは、脱水ケーキ)が供給される。ホッパー32内では、図示しない攪拌羽根が回転駆動する。攪拌羽根の回転により脱水ケーキは攪拌されて第1ポンプ31a内へと供給される。
【0073】
各ポンプ31の間を接続する配管33内の圧力は、圧力計34によって検出される。第1ポンプ31aと第2ポンプ31bを接続する第1配管33aに設けられているのが第1圧力計34aであり、第2ポンプ31bと第3ポンプ31cを接続する第2配管33bに設けられているのが第2圧力計34bであり、第(i-1)ポンプと第(i)ポンプを接続する第(i)配管に設けられているのが第(i)圧力計である。検出された圧力は、制御装置36に入力される。また、最下流側の移送先へと繋がる配管33には、圧力計34のほかに流量計35が設けられている。流量計35で検出された流量も制御装置36に入力される。制御装置36は、入力されるデータを記憶する記憶部36aと、記憶したデータを処理する処理部36bとを有する。制御装置36では、入力された圧力値及び流量値に基づいて、各ポンプ31の駆動源である各モータ(図示せず)の回転速度を制御する。各ポンプ31には、同一仕様の一軸偏心ねじポンプが使用されている。したがって、各ポンプ31でのロータの回転速度は初期状態では同一に設定され、昇圧値も同じとなっている。
【0074】
前記構成のポンプシステムの動作について説明する。
【0075】
図8のフローチャートに示すように、まず、ポンプ31の運転開始処理を実行する(ステップS11)。そして、全てのポンプ31の駆動が開始されてからポンプ31の分圧制御処理を実行し(ステップS12)、脱水ケーキの搬送を開始する。脱水ケーキの搬送が開始されれば、ポンプ31の保守診断処理(ステップS13)、次いでポンプ31の保守予測処理(ステップS14)を実行する。そして、保守診断処理及び保守予測処理の結果に基づいて、適宜、ポンプシステムを停止する運転終了処理を実行する(ステップS15)。
【0076】
(運転開始処理)
ポンプ31の運転開始処理では、図9のフローチャートに示すように、ホッパー32内の攪拌羽根を回転駆動し(ステップS11-1)、脱水ケーキを攪拌しながら第1ポンプ31aへと供給する。そして、i=1(iは自然数)に設定し(ステップS11-2)、第1ポンプ31aの駆動を開始する(ステップS11-3)。第1ポンプ31aの開始から所定時間経過すれば(ステップS11-4)、i=i+1とし(ステップS11-5)、第2ポンプ31bの駆動を開始する(ステップS11-6)。以下、i=nとなり全てのポンプ31の駆動が完了するまで(ステップS11-7)、ステップS11-4に戻って上流側のポンプ31の駆動開始から所定時間経過する毎にi=i+1とし、下流側のポンプ31の駆動を開始する。そして、全てのポンプ31が駆動されれば、運転開始処理から分圧制御処理へと移行する。
【0077】
(分圧制御処理)
ポンプの分圧制御処理では、図10のフローチャートに示すように、i=1に設定し(ステップS12-1)、第1ポンプ31aと第2ポンプ31bを接続する第1配管33aに設けられている第1圧力計34aで検出される第1圧力値Pを読み込む(ステップS12-2)。そして、i=i+1とし(ステップS12-3)、第2ポンプ31bと第3ポンプ31cを接続する第2配管33bに設けられている第2圧力計34bで検出される第2圧力値Pを読み込む(ステップS12-4)。続いて、第1圧力値と第2圧力値の比(圧力比)P/Pを算出し(ステップS12-5)、この算出圧力比P/Pが基準圧力比範囲R内であるか否かを判断する(ステップS12-6)。ここに、基準圧力比範囲Rは、LLV≦R≦ULVである。また、LLVは、LLV=i/(i+1)-a(aは固定値)を満足する下限値であり、ULVは、ULV=i/(i+1)+b(bは固定値)を満足する上限値である。
【0078】
算出圧力比P/Pが基準圧力比範囲Rの下限値以下である場合(ステップS12-6:YES)、第1ポンプ31aに比べて第2ポンプ31bによる脱水ケーキの搬送量が大きくなり過ぎていると判断できる。そこで、第2ポンプ31bの回転速度を低下させ(ステップS12-7)、第2ポンプに32bよる脱水ケーキの搬送量を減少させる。これにより、第1ポンプ31aに比べて第2ポンプ31bによる脱水ケーキの搬送量が小さくなり、第1配管33a内での圧力が上昇する。
【0079】
算出圧力比P/Pが基準圧力比範囲Rの上限値を超えている場合(ステップS12-6:NO)、第1ポンプ31aに比べて第2ポンプ31bによる脱水ケーキの搬送量が小さくなり過ぎていると判断できる。そこで、第2ポンプ31bの回転速度を上昇させ(ステップS12-8)、第2ポンプ31bによる脱水ケーキの搬送量を増大させる。これにより、第1ポンプ31aに比べて第2ポンプ31bによる脱水ケーキの搬送量が大きくなり、第1配管33a内での圧力が降下する。
【0080】
以下、ステップS12-3に戻ってi=i+1とし、ステップS12-4で、順次、下流側の配管33に設けた圧力計で検出される圧力値Pi+1を読み込む。そして、ステップS12-5で、第(i)圧力値Pと第(i+1)圧力値Pi+1の比P/Pi+1を算出し、ステップS12-6で、この算出圧力比P/Pi+1が基準圧力比範囲R内であるか否かを判断する。算出圧力比P/Pi+1が基準圧力比範囲Rの下限値以下である場合、ステップS12-7で、第(i+1)ポンプの回転速度を低下させる。算出圧力比P/Pi+1が基準圧力比範囲Rの上限値を超えている場合、ステップS12-8で、第(i+1)ポンプの回転速度を上昇させる。
【0081】
なお、各ポンプ31の回転速度の上昇度合いは、予め設定した一定値だけ上昇させるか、あるいは、基準圧力比範囲Rの中央値となるようにPID制御すればよい。また、各ポンプ31の駆動制御は、上下流に隣り合うポンプのうち、下流側ではなく上流側のポンプ31で行うようにしても構わない。こうして、全てのポンプ31の駆動制御が終了すれば(ステップS12-9)、分圧制御処理から保守診断処理へと移行する。
【0082】
(保守診断処理)
ポンプ31の保守診断処理では、図11のフローチャートに示すように、i=1とし(ステップS13-1)、第1ポンプ31aの回転速度(第1実施形態と同様に、制御装置36からの回転速度指示値である第1ポンプ31aの駆動状態を示す第1信号Sを示す。以下、他のポンプも同様である。)を読み込む(ステップS13-2)。以下、i=i+1として(ステップS13-3)、i=n(nはポンプの総数)に到達するまで(ステップS13-5)、順次、下流側に位置する第(i+1)ポンプの回転速度を読み込む(ステップS13-4)。
【0083】
こうして全てのポンプ31の回転速度が読み込まれれば、全てのポンプ31の組み合わせについて速度比S/S(i:判定対象となるポンプ、j:判定対象以外の任意のポンプ(jは自然数))を算出し、記憶する(ステップS13-6)。そして、全ての算出速度比S/Sが正常であるか否かを判断する(ステップS13-7)。すなわち、算出速度比S/Sが、ポンプ31の組み合わせ毎に設定された上限値CV(kは自然数)以上となる、S/S≧CVを満足するか否かを判断する。算出速度比SP/SPが上限値以上である場合(ステップS13-7:YES)、そのポンプ31のステータ(又はロータ)は劣化していると判断し、該当するポンプ31についてメンテナンス時期となったことを報知する(ステップS13-9)。
【0084】
このように、保守診断処理では、全てのポンプ31の組み合わせについて算出速度比S/Sを設定された上限値CVと比較することにより総当たりでメンテナンス時期であるか否かを判断するようにしている。例えば、あるポンプ31について、他の全てのポンプとの組み合わせで1つでも該当すれば、メンテナンス時期であると判断するようにしている。これにより、何らかの原因で2以上のポンプ31の劣化度合いが同程度であったとしても、1つでも劣化具合が異なるポンプ31が存在すれば、速度比の比較により個別にメンテナンス時期を判断することができる。
【0085】
一方、算出速度比S/Sが、上限値CV未満であれば(ステップS13-7:NO)、全てのポンプ31の回転速度SPが設定(仕様)範囲SR内である、SP≦SRを満足するか否かを判断する(ステップS13-10)。これは、全てのポンプ31での劣化度合いがほぼ同じであれば、速度比だけでは劣化しているかどうかの判断ができないからである。いずれの判断でも問題がなければ保守診断処理を終了する。S≦SRを満足しなければ、前記同様、該当するポンプ31についてメンテナンス時期となったことを報知する(ステップS13-9)。
【0086】
以下同様にして、全てのポンプ31の組み合わせについて、速度比S/SがS/S≧CVを満足し、各回転速度SがS≦SRするか否かを判断する(ステップS13-10)。全てのポンプ31の組み合わせについてステップS13-7からステップS13-9の処理を繰り返し、全ての処理が終了すれば、ステップS13-9でメンテナンス時期であると判断されたポンプ31について、ユーザにその旨を報知する(ステップS13-11)。このとき、第(i)ポンプに対して複数の異なるポンプ31との組み合わせについてメンテナンス時期を判断することになるが、いずれか1つでもメンテナンス時期であると判断されていれば、その旨を報知するようにするのが好ましい。このように、全てのポンプ31の組み合わせについてメンテナンス時期であるか否かの判断が行われれば、保守予測処理へと移行する。
【0087】
(保守予測処理)
ポンプ31の保守予測処理では、前記保守診断処理で算出した速度比に基づいて各ポンプの劣化の進行具合を予測する。
【0088】
すなわち、予め2つのポンプ31の速度比と劣化度合いの関係を記憶しておく。一般に、ポンプの速度比は、その使用開始からの経過期間(ポンプの駆動時間の総計)がある値に到達するまではほぼ変化せずに推移した後、徐々に大きくなる傾向にある。そこで、劣化によりポンプ31のメンテナンスが必要となる速度比を限界値とし、この限界値に至るまでの複数段階で、ユーザに警告するための設定値SVを設けておく。設定値SVとしては、メンテナンス時期までの期間の違いに応じて、例えば、SV1では残り30日、SV2では残り15日等と決めておくことができる。
【0089】
そして、図12のフローチャートに示すように、ポンプ31の組み合わせ毎に、前記保守診断処理で算出した速度比S/Sを読み込む(ステップS14-1)。続いて、読み込んだ算出速度比S/Sが設定値SV以上となったか否かを判断する(ステップS14-2)。算出速度比S/Sが設定値SV未満であれば、該当するポンプ31は正常であると判断し(ステップS14-3)算出速度比S/Sが設定値SV以上となれば、その設定値SVに応じて該当するポンプの劣化度合いを警告する(ステップS14-4)。そして、全てのポンプ31の組み合わせについて、これらの処理を実行する(ステップS14-5)。このとき、第(i)ポンプ31について、異なる2以上のポンプ31との間で第(i)ポンプの劣化度合いを判断した結果、劣化度合いが異なり、メンテナンス時期までの期間が相違することがある。この場合、メンテナンス時期までの期間が最も短いものを選択し、メンテナンス時期を警告するのが好ましい。但し、相違するメンテナンス時期までの期間の平均値を算出して、この平均値をメンテナンス時期として警告するようにしてもよい。そして、全てのポンプ31についてメンテナンス時期予測が終了すれば、運転終了処理を実行する。
【0090】
このように、前記第2実施形態に係るポンプシステムによれば、3台以上のポンプ31を直列接続する場合であっても、いずれのポンプ31が劣化しているのかを判断することができる。また、各ポンプ31の劣化度合いを判断してメンテナンス時期を予測することができる。このため、突然ポンプシステムが停止することはなく、計画的に運転及び保守を行うことができる。
【0091】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0092】
前記各実施形態では、ポンプとして一軸偏心ねじポンプを採用する場合について説明したが、これに限らず、容積式であれば、他のポンプ、例えば、ピストンポンプ、プランジャポンプ、ダイヤフラムポンプ等の往復ポンプや、歯車ポンプ、ベーンポンプ等の回転ポンプを使用できる。そして、ポンプの故障検出及び故障予測を実行することにより、例えば、ピストンポンプであれば、シリンダのシール部材等の故障を診断したり予測したりすることができる。
【0093】
前記各実施形態では、2段ポンプあるいは多段ポンプを脱水ケーキの搬送のために設けたが、搬送の対象物は脱水ケーキに限らず、穀物・飼料・化学肥料、粉体等の1段ポンプでは搬送の難しいものが含まれる。
【0094】
前記各実施形態では、第1信号S、第2信号S、第(i)信号Sとして、各ポンプのインバータに出力する信号すなわち各ポンプの回転数を使用するようにしたが、他のパラメータを使用することもできる。例えば、各ポンプのモータの回転数をタコメータ等で検出した信号を使用してもよい。
【0095】
前記各実施形態では、過去に記憶した第(i)信号Sと第(k)信号S(第1信号Sと第2信号S等)の比S/Sの変化傾向データから作成した近似式等を利用してポンプのメンテナンス時期を予測するようにしたが、次のような手法を採用することもできる。
【0096】
すなわち、メンテナンス時期は、時系列分析手法を用いて予測することができる。時系列分析手法では、ポンプシステムにおいて、例えば、第1ポンプ1が正常運転している場合の駆動状態を示す第1信号S1と、第2ポンプ2の駆動状態を示す第2信号S2の比S2/S1を所定時間毎に記憶する。そして、記憶した複数回の比S2/S1に基づいて、自己回帰モデルや移動平均モデル等の時系列分析手法により将来の比S2/S1がどのような変化傾向を示すのかを予測する。この場合、第1閾値CV1又は第2閾値CV2への到達時期を予測することでポンプのメンテナンス時期を予測してもよい。これによれば、ポンプシステムの各種運転条件が異なり過去のデータが適用できない場合であっても対応することができる。
【0097】
また、メンテナンス時期は、人工知能機能を利用して予測することができる。この場合、使用するパラメータとしては、インバータに出力する指令値に限らず、温度や湿度、下水の成分比に関わる気象条件(例えば、豪雨により下水汚泥中に土砂成分が増加するとポンプの劣化が早く進む)等、容積式ポンプによって搬送する際に影響するものを含めることができる。そして、これらパラメータを利用して比S/Sの変化傾向を深層学習等の手法で学習させれば、ポンプのメンテナンス時期を、より一層正確に予想することが可能となる。
【0098】
前記各実施形態では、中間配管3での圧力が第2ポンプ2からの吐出圧の1/2となるようにポンプをPID制御するようにしたが、特許第3583809号公報に開示されるような他の方法により制御するようにしても構わない。また、個々のポンプ31から吐出口側の移送量を流量計で測定し、ポンプ31同士の移送量比が設定範囲から外れることにより、回転速度をPID制御するようにしても構わない。要するに、各ポンプの劣化による移送量低下を各ポンプの駆動制御の修正により補う制御を行うポンプシステムであればよい。
【符号の説明】
【0099】
1…第1ポンプ
2…第2ポンプ
3…中間配管
4…第1ケーシング
5…第1ステータ
6…第1ロータ
7…スクリューロッド
8…第1搬送部
9…第1容器部
10…吸込部
11…攪拌機
12…第1自在継手
13…第1モータ
14…第1インバータ
15…制御装置(制御手段)
16…第2ケーシング
17…第2ステータ
18…第2ロータ
19…第2搬送部
20…第2容器部
21…排出部
22…第2自在継手
23…第2モータ
24…第2インバータ
25…第1圧力センサ
26…第2圧力センサ
31…ポンプ
32…ホッパー
33…配管
34…圧力計
35…流量計
36…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図12