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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】シート材搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/02 20060101AFI20230126BHJP
   B65H 5/24 20060101ALI20230126BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20230126BHJP
   B65G 47/30 20060101ALI20230126BHJP
   B31B 50/04 20170101ALI20230126BHJP
【FI】
B65H5/02 K
B65H5/24
B65H7/02
B65G47/30 E
B31B50/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019171983
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021050047
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106210
【氏名又は名称】サンエンヂニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 謙介
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩充
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-273219(JP,A)
【文献】特開昭50-041673(JP,A)
【文献】特開昭61-060560(JP,A)
【文献】米国特許第03239676(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0138037(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/00-70/99
B31C 1/00-99/00
B31D 1/00-99/00
B65G 47/22-47/32
47/52
47/56-47/62
47/66
B65H 5/02
5/06
5/22
7/00- 7/20
29/12-29/24
29/32
43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱用シート材を1枚ずつ送出する第1の搬送部と、前記箱用シート材の一部を重ねて搬送し、搬送速度を変更して前記箱用シート材間を略等間隔に整列させる第2の搬送部と、前記箱用シート材の異物を検出する異物検査部を備え、前記箱用シート材を一定の搬送速度で搬送する第3の搬送部と、搬送速度を変更して再び前記箱用シート材間を略等間隔に整列させる第4の搬送部とを、順次に配置する構成であって、前記第2の搬送部の搬送速度減速又は加速を開始してから、前記箱用シート材が前記第3の搬送部を通過するのに要する通過所要時間の経過後に、前記第4の搬送部の搬送速度の減速又は加速を開始することを特徴とするシート材搬送装置。
【請求項2】
前記第2の搬送部の搬送速度及び前記第4の搬送部の搬送速度は、一定の比率を維持することを特徴とする請求項1に記載のシート材搬送装置。
【請求項3】
前記通過所要時間は、前記箱用シート材が前記第3の搬送部の入口を搬送されるタイミングと前記第3の搬送部の出口を搬送されるタイミングとの差分時間と、前記第3の搬送部の搬送路長を前記一定の搬送速度で除算して算出した算出時間と、前記第3の搬送部を前記箱用シート材が搬送される搬送距離を測定し、該搬送距離が予め記憶した前記第3の搬送部の搬送路長と等しくなるまでに要した計測時間と、前記差分時間又は前記算出時間又は前記計測時間に補正値を付加した補正時間との何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材搬送装置。
【請求項4】
前記第4の搬送部は、直線状の搬送路、直角方向の搬送路、曲線状の搬送路、ターン型搬送路の何れかを備えることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載のシート材搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立てることで立体的な箱体になる箱用シート材を、等間隔に重ねて搬送するシート材搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平面状の素材を折り曲げて糊付けして組立てることで、立体的な箱になる箱用シート材を作製するフォルダーグルアーと呼ばれる自動製箱機が知られている。また、従来から自動製箱機により連続して作製された箱用シート材を1枚ずつ高速に送出し、箱用シート材同士の一部が重なり合うように、略等間隔で整列させて搬送して、箱用シート材に塗布した糊剤により箱用シート材を接着させると共に、箱用シート材の取り出し及び箱詰めや計数等の作業を容易にするシート材搬送装置が提案されている。
【0003】
箱用シート材を計数する場合には、略等間隔で整列した箱用シート材の所定枚数毎に、目印として1枚の箱用シート材にマーキングを行う。マーキング方法としては、例えば箱用シート材に蛍光塗料をスプレーする方法や、紙テープを挟み込む方法が知られている。
【0004】
所定枚数毎に、蛍光塗料や紙テープを検出することで箱用シート材を計数すると共に、一部が重なり合うように略等間隔で整列された箱用シート材を、シート材搬送装置から効率的に取り出して箱詰め作業等が行われる。
【0005】
特許文献1には、箱用シート材を1枚ずつ送出する送出コンベアと、箱用シート材の一部を互いに重ねながら搬送する完成品コンベアと、送出コンベアの側部に設けられたバッティング装置が開示されている。送出コンベアでは、カウンタにより箱用シート材を計数し、バッティング装置により所定枚数毎に箱用シート材の1枚を搬送方向と略直交する側方に偏位させ、偏位した箱用シート材を含む箱用シート材群を送出する。完成品コンベアでは、箱用シート材をその一部が重なった状態で略等間隔に整列させて搬送する。整列状態の箱用シート材から、所定枚数毎に側方に偏位した箱用シート材を識別して箱用シート材を計数し、略等間隔に整列している箱用シート材の効率的な取り出しや箱詰め作業を行う。
【0006】
このように、箱用シート材を略等間隔で整列させることによって、取り出し及び箱詰めや計数等の作業が確実かつ効率的に行われている。
【0007】
また、近年では箱用シート材が食品用や医薬品用に広く使われるのに伴って、自動製箱機で作製される箱用シート材に、金属片等の異物が混入していないかを検査することが要求されている。特許文献2には、ベルトコンベアで搬送される被検出物中の異物を検出する異物検査部を備えた異物検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-175620号公報
【文献】特開平8-211160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示すシート材搬送装置の搬送系に、特許文献2に示す異物検査部を組み込んだ場合に、異物検査の精度を維持するために、異物検査部では一定速度で箱用シート材を搬送する必要がある。
【0010】
しかし、シート材搬送装置の上流側の搬送部では、ばらつきのある間隔で搬送される箱用シート材同士を、一部を重ねながら略等間隔に整列させるために、搬送速度を適宜に変更しながら搬送を行っている。
【0011】
この搬送部の下流に、搬送速度が一定の異物検査部が配置されると、略等間隔に整列していた箱用シート材が異物検査部を搬送されることによって、再び間隔にばらつきを有するようになってしまうことになる。
【0012】
一部を重ねている箱用シート材の間隔にばらつきがある状態で、異物検査部の下流に搬送されると、箱用シート材の整列状態の乱れで、取り出し及び箱詰めや計数等の作業が困難になるという問題がある。特に、箱用シート材の取り出し及び箱詰めや所定数の計数等の作業を効率化するために、搬送速度を減速して箱用シート材の間隔を狭め過ぎると、箱用シート材の整列状態の乱れが顕著になる。
【0013】
また、箱用シート材の整列状態が乱れると、バッティング装置により側方に偏位した箱用シート材が偏位しない位置に戻ったり、側方に偏位していない箱用シート材が側方に偏位したりする。このため、所定数の箱用シート材を正確に計数することが困難になるという問題も生ずる。
【0014】
なお、バッティング装置に代えて、箱用シート材の所定数毎に蛍光塗料をスプレーする方法もあるが、食品用や医薬品用の箱用シート材では、保健衛生上の観点から有害な蛍光塗料を使用することができない。また、箱用シート材に紙テープを挟み込む方法でも、箱用シート材の整列状態が乱れると、紙テープを取り出す作業が困難になったり、紙テープの取り出しを失念するなどの問題を引き起こす虞れがある。
【0015】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、箱用シート材を、一部を重ねて略等間隔に整列させて搬送させた後に、搬送速度が一定である異物検査部を搬送させた場合であっても、箱用シート材の整列状態を維持することができ、箱用シート材の箱詰め作業や所定数の計数を容易とするシート材搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係るシート材搬送装置は、箱用シート材を1枚ずつ送出する第1の搬送部と、前記箱用シート材の一部を重ねて搬送し、搬送速度を変更して前記箱用シート材間を略等間隔に整列させる第2の搬送部と、前記箱用シート材の異物を検出する異物検査部を備え、前記箱用シート材を一定の搬送速度で搬送する第3の搬送部と、搬送速度を変更して再び前記箱用シート材間を略等間隔に整列させる第4の搬送部とを、順次に配置する構成であって、前記第2の搬送部の搬送速度減速又は加速を開始してから、前記箱用シート材が前記第3の搬送部を通過するのに要する通過所要時間の経過後に、前記第4の搬送部の搬送速度の減速又は加速を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るシート材搬送装置によれば、ばらつきのある間隔で送出される箱用シート材を略等間隔に整列させた後に、異物を検出する異物検査部を有する搬送部を一定速度で搬送し、箱用シート材間の間隔に再びばらつきが生じても、下流側の搬送部において再び箱用シート材を略等間隔に整列させることができる。従って、箱用シート材の取り出し及び箱詰めや計数等の作業を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】シート材搬送装置の箱用シート材の搬送状態の平面図である。
図2】第3の搬送部前後の箱用シート材の搬送状態の平面図である。
図3】円盤状の搬送路を有する第4の搬送本体部の平面図である。
図4】第4の搬送速度の速度変化を表したグラフ図である。
図5】箱用シート材が第3の搬送部から第4の搬送部に移送される際の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1はシート材搬送装置の箱用シート材Bの搬送状態の平面図であり、図2は第3の搬送部前後の箱用シート材Bの搬送状態の平面図であり、箱用シート材B同士の搬送間隔の変化を示している。
【0020】
シート材搬送装置は、第1の搬送速度V1で箱用シート材Bを搬送する第1の搬送部1と、第1の搬送部1の下流に配置され、第2の搬送速度V2で箱用シート材Bを搬送する第2の搬送部2と、第2の搬送部2の下流に配置され、第3の搬送速度V3で箱用シート材Bを搬送する第3の搬送部3と、第3の搬送部3の下流に配置され、第4の搬送速度V4で箱用シート材Bを搬送する第4の搬送部4とから構成されている。
【0021】
第1の搬送部1は、箱用シート材Bを第1の搬送速度V1で搬送する第1の搬送本体部11と、第1の搬送本体部11に搬送される箱用シート材Bが通過するタイミングを検出する通過検出センサ12と、通過検出センサ12よりも下流にあって、第1の搬送本体部11の側部に配置されたバッティング部13と、第1の搬送速度V1と搬送距離を例えばエンコーダを使用して測定する第1の速度測定部14と、第1の搬送部1の動作を制御する第1の駆動制御部15とから構成されている。
【0022】
第1の搬送部1には搬送方向D1の上流側に、面状の素材を折り曲げて糊を塗布することによって、箱用シート材Bを作製する図示しない自動製箱機が連結されている。第1の搬送本体部11は、折り曲げや糊の塗布を完了した箱用シート材Bを自動製箱機から受け取って、搬送方向D1の下流側に箱用シート材B同士の間隔p1で1枚ずつ送出する機能を有している。
【0023】
バッティング部13は、エアシリンダ16と、エアシリンダ16の先端に取り付けられ、箱用シート材Bを押し出す板状部材17とから構成されている。バッティング部13により、1枚の箱用シート材Bを搬送方向D1と略直交する右方向に押し出して、右側に偏位した識別シート材Bnの状態にすることができる。
【0024】
通過検出センサ12、バッティング部13及び第1の速度測定部14は、それぞれ第1の駆動制御部15に接続されている。第1の駆動制御部15は、通過検出センサ12から入力される箱用シート材Bが通過するタイミングの検出信号を利用して、箱用シート材Bの通過枚数を計数し、計数結果に基づいてバッティング部13のエアシリンダ16の動作制御を行うと共に、第1の速度測定部14による第1の搬送速度V1と搬送距離の測定結果をモニタリングしている。
【0025】
第1の搬送部1の搬送方向D1の下流側には、第2の搬送部2が配置されていている。第2の搬送部2は、箱用シート材Bを第2の搬送速度V2で搬送方向D1に搬送する第2の搬送本体部21と、第2の搬送部2の動作を制御する第2の駆動制御部22と、第2の搬送速度V2と搬送距離を測定する第2の速度測定部23とから構成されている。
【0026】
第2の搬送本体部21は、搬送ベルトを搬送方向D1に走行させることで、上流側の第1の搬送部1から搬送される識別シート材Bnを含む箱用シート材Bを受け入れる。第2の搬送本体部21の搬送方向D1は、第1の搬送本体部11の搬送方向D1と一致するように配置されている。
【0027】
第2の駆動制御部22は搬送ベルトを駆動する駆動モータを備え、第2の速度測定部23には第2の搬送速度V2と搬送距離を測定する例えばエンコーダが使用されている。第2の駆動制御部22には、第1の駆動制御部15、第2の速度測定部23が接続されている。
【0028】
第2の駆動制御部22は、第2の速度測定部23の測定結果をモニタリングすると共に、第1の駆動制御部15から第1の搬送速度V1、通過検出センサ12が検出した箱用シート材Bが通過するタイミングの情報、箱用シート材B同士の間隔p1を受け取る。そして、箱用シート材B同士の間隔p1のばらつきを取り除いて、箱用シート材B同士の一部が重なり合って、略等間隔p2で整列して搬送されるように、第2の搬送速度V2を制御する。
【0029】
第2の搬送部2の搬送方向D1の下流側には、第3の搬送部3が配置されている。第3の搬送部3は、箱用シート材Bを第3の搬送速度V3で搬送方向D1に搬送する第3の搬送本体部31と、箱用シート材Bに混入している異物を検出する異物検査部32とから構成されている。
【0030】
第3の搬送本体部31は、搬送ベルトを搬送方向D1に走行させることで、上流側の第2の搬送部2から搬送される識別シート材Bnを含む箱用シート材Bを受け入れる。また、金属異物を検出する異物検査部32は、例えば電磁誘導を利用して、発生する電場の中を箱用シート材Bが通過することで金属異物を検出している。このため、発生する電場の中を箱用シート材Bが所定速度範囲内の一定速度で搬送される必要があり、第3の搬送本体部31の典型的な第3の搬送速度V3は、5~50m/分程度の範囲内の一定速度に設定される。箱用シート材Bが電場中を搬送される際に、金属異物が存在すれば磁場が変化するので、金属異物を検出することができる。
【0031】
第3の搬送速度V3は、第2の搬送速度V2とは個別に設定されるため、第2の搬送本体部21の第2の搬送速度V2が減速又は加速制御されることで、略等間隔p2に整列した箱用シート材Bは、第3の搬送本体部31において、再びばらつきを有する箱用シート材B同士の間隔p3で搬送されることになる。
【0032】
第4の搬送部4は、箱用シート材Bを第4の搬送速度V4で搬送方向D1に搬送する第4の搬送本体部41と、第4の搬送速度V4を制御する第4の駆動制御部42とを備える。第4の搬送本体部41は、搬送ベルトを搬送方向D1に走行させることで、上流側の第3の搬送部3から搬送される識別シート材Bnを含む箱用シート材Bを受け入れる。第4の搬送本体部41の搬送方向D1は、第3の搬送本体部31の搬送方向D1と一致するように図示しているが、必ずしも一致している必要はなく、例えば搬送方向D1と直角方向に搬送する搬送路としてもよい。
【0033】
また、第4の搬送本体部41は直線状の搬送路ではなく、図3に示すような円盤状の搬送路を有して搬送方向D2を回転させるターン型搬送本体部41’や、曲線状の搬送路など、多様な形態の搬送路で構成することもできる。特に、直線状に搬送路を設置するスペースがない場合には、第4の搬送本体部41を曲線状や円盤状の搬送路とすることが効果的である。
【0034】
第4の駆動制御部42は搬送ベルトを駆動する駆動モータを備えており、接続した第2の駆動制御部22から第2の搬送速度V2の速度制御情報を受け取る。第4の駆動制御部42は、第3の搬送本体部31で生じた箱用シート材B同士の間隔p3のばらつきを取り除き、箱用シート材B同士の一部が重なり合った状態で、略等間隔p4で整列させて搬送するように、第4の搬送速度V4を制御する。第4の搬送速度V4は、第2の搬送速度V2を基準として、搬送速度の比率(V4/V2)が一定となるように設定されている。なお、第4の搬送速度V4は、通常は第2の搬送速度V2と等速、又はより遅い速度とされているが、第2の搬送速度V2よりも速い速度とすることもできる。
【0035】
以上のように、第1の搬送部1~第4の搬送部4までを順次に配置したシート材搬送装置では、図示しない製箱機から箱用シート材Bが第1の搬送部1に送られてくる。製箱機では例えばボトムベルト式の給紙部が使用され、給紙ベルト上に積み上げられた箱用シート材Bの最下部のものから、順次にシャッタ部と給紙ベルトの間を通過して1枚ずつ給紙される。積み上げられた箱用シート材Bの枚数や箱用シート材Bの形状及び材質によって、箱用シート材B同士や箱用シート材Bと給紙ベルトとの摩擦力が変化するため、給紙された箱用シート材B同士は等間隔に搬送されることは少ない。折り曲げや糊の塗布を完了し、第1の搬送部1に送られてくる箱用シート材B同士の間隔p1には、通常で数mm~数10mmのばらつきが存在する。また、例えば給紙後に不良の箱用シート材Bが検出され、その箱用シート材Bを排除した場合等では、間隔p1は数100mmのばらつきを有することになる。
【0036】
第1の搬送本体部11は、箱用シート材Bの長辺方向を搬送方向D1に合わせて、1枚ずつ下流側に第1の搬送速度V1で搬送する。第1の搬送速度V1及び搬送距離は、第1の速度測定部14によって測定され、第1の駆動制御部15に測定結果が入力される。第1の搬送速度V1は、製箱機と同期して20~300m/分程度である。搬送される箱用シート材Bは、通過検出センサ12で通過するタイミングが検出され、検出信号は第1の駆動制御部15に入力される。第1の駆動制御部15では、第1の速度測定部14に例えば搬送距離を計測するエンコーダを使用して、箱用シート材Bが通過検出センサ12で検出されたタイミングから1枚後の箱用シート材Bが検出されるまでの搬送距離を、箱用シート材B同士の間隔p1としている。
【0037】
或いは、第1の駆動制御部15は箱用シート材Bが検出されたタイミングの時間情報を記憶すると共に、箱用シート材Bの通過するタイミングと1枚後の箱用シート材Bの通過するタイミングとの時間的差分に第1の搬送速度V1を乗算して、箱用シート材B同士の間隔p1を算出するようにしてもよい。なお、箱用シート材B同士の間隔p1の算出に用いる第1の搬送速度V1には、第1の速度測定部14による測定値を用いた方が高精度であるが、第1の駆動制御部15の速度指令値を用いることもできる。
【0038】
また、第1の駆動制御部15は、通過検出センサ12の検出信号から通過した箱用シート材Bが所定枚数に達したことを認識すると、バッティング部13のエアシリンダ16を起動させる。エアシリンダ16が起動すると、板状部材17を箱用シート材Bに押し付けて、搬送方向D1に略直交する右方向に識別シート材Bnを偏位させる。通過検出センサ12によって検出される箱用シート材Bの所定枚数は、例えば50枚や100枚等に設定され、所定枚数毎に右側に偏位した識別シート材Bnの存在によって、後工程で箱用シート材Bの計数管理を行う。識別シート材Bnの偏位量Lbは、例えば板紙製の箱用シート材Bの場合には5~15mm程度であり、紙質、形状、糊代幅等の箱用シート材の特性によって多少の調整を施す。箱用シート材Bの変更がない場合には、通常一定の偏位量Lbで運用する。
【0039】
箱用シート材Bは、箱用シート材B同士の間隔p1が製箱機で生じた数mm~数100mmのばらつきを有した状態のままで、第1の搬送本体部11から第2の搬送本体部21に1枚ずつ送出される。また、送出された箱用シート材Bが、第2の搬送本体部21上に載せられる以前に、好ましくは通過検出センサ12で1枚後の箱用シート材Bが検出された時点で、第1の駆動制御部15から第1の搬送速度V1、通過検出センサ12が送出された箱用シート材Bを検出した時間、送出された箱用シート材Bと1枚後の箱用シート材Bとの間隔p1が、第2の駆動制御部22に入力される。第2の駆動制御部22に入力される第1の搬送速度V1には、第1の速度測定部14による測定値を用いた方が高精度であるが、第1の駆動制御部15の速度指令値を用いることもできる。
【0040】
第2の駆動制御部22では、予め第2の搬送本体部21上を搬送される箱用シート材B同士の間隔p2が、箱用シート材Bが整列されて安定して搬送できる所定値として設定されている。搬送本体部21における箱用シート材B同士の間隔p2と、第1の駆動制御部15から入力された第1の搬送速度V1及び送出された箱用シート材Bと1枚後の箱用シート材Bとの間隔p1を用いて、V2=V1×(p2/p1)となる第2の搬送本体部21の第2の搬送速度V2を算出する。第2の搬送本体部21における箱用シート材B同士の間隔p2は、通常は第1の搬送本体部11における箱用シート材B同士の間隔p1の1/5~1/30程度とされ、第2の搬送速度V2は第1の搬送速度V1の1/5~1/30程度の所定値に減速されることになる。
【0041】
このようにして、第2の駆動制御部22は、第1の搬送本体部11における箱用シート材B同士の間隔p1にばらつきが発生しても、第2の搬送本体部21における箱用シート材B同士の間隔p2が一定となるように、第2の搬送速度V2を制御することができる。その結果、第1の搬送本体部11から送出された箱用シート材Bは、第2の搬送速度V2を変更することで、第2の搬送本体部21上を設定された箱用シート材B同士の間隔p2を維持しながら、整列された状態で搬送されることになる。
【0042】
実際の第2の駆動制御部22による第2の搬送速度V2の制御は、第2の搬送本体部21における箱用シート材B同士の間隔p2が略一定となればよいので、例えば次のように行われる。先ず、予め第1の搬送本体部11における箱用シート材B同士の間隔p1に対して基準間隔p1’、第2の搬送速度V2に対して基準速度V2’=V1×(p2/p1’)を設定しておく。第1の搬送本体部11から第2の搬送本体部21に送出された箱用シート材Bの間隔p1が基準間隔p1’以下であれば、第2の搬送速度V2は基準速度V2’のままで変更されずに、送出された箱用シート材Bが第2の搬送本体部21上を搬送される。基準間隔p1’は、例えば第1の搬送本体部11上における箱用シート材B同士の間隔p1の平均値に設定すればよい。
【0043】
間隔p1が略基準間隔p1’となる通常の搬送状態であれば、第2の搬送本体部21上では、箱用シート材B同士の間隔p2=p1×(V2’/V1)の略一定間隔となり、搬送速度が減速されたことによって箱用シート材B同士の一部が重なり合うように整列されて搬送される。第2の搬送本体部21上における箱用シート材B同士の間隔p2は、板紙製の箱用シート材Bの場合には通常5~20mm程度の範囲内で所定値となる。
【0044】
箱用シート材B同士の間隔p1が、上流側の製箱機で生じた数mm~数100mmのばらつきの影響で基準間隔p1’よりも大きい場合には、第2の駆動制御部22は第2の搬送速度V2を第2の搬送速度V2”に減速し、図2に示すように間隔p2を略一定値に維持して、送出された箱用シート材Bを第2の搬送本体部21上で搬送する。例えば、減速された第2の搬送速度V2”は、第2の搬送速度V2の基準速度V2’に箱用シート材B同士の間隔の比率(p1’/p1)を乗算した値に設定する。
【0045】
第2の搬送速度V2を第2の搬送速度V2”に減速するタイミングは、通過検出センサ12によって通過するタイミングを検出された箱用シート材Bが、第1の搬送本体部11から第2の搬送本体部21に移送される時間に設定する。例えば、第1の搬送本体部11の通過検出センサ12の位置から第2の搬送本体部21の入口までの図1に示す搬送距離E1を予め測定しておき、搬送距離E1を第1の搬送速度V1で除算した値を、箱用シート材Bが通過検出センサ12で検出された時間に加算して、第2の搬送速度V2を第2の搬送速度V2”に減速する時間を算出する。また、例えば第1の駆動制御部15では、第1の速度測定部14に搬送距離を計測するエンコーダを使用して、通過検出センサ12によって箱用シート材Bが検出されたタイミングから搬送距離がE1に達した時を、第2の搬送速度V2を第2の搬送速度V2”に減速するタイミングとしてもよい。
【0046】
なお、第1の搬送部1で右側に偏位した識別シート材Bnは、第2の搬送部2においても搬送方向D1に整列された複数の箱用シート材Bから右側に偏位量Lbだけ偏位した状態が維持される。そして、識別シート材Bnを含む箱用シート材Bは、引き続き第2の搬送本体部21の搬送ベルト上を搬送方向D1に搬送されて、第2の搬送本体部21から第3の搬送本体部31に移送される。
【0047】
第3の搬送本体部31では、異物検査部32の検出精度を高精度に維持するために、箱用シート材Bは予め所定値に定められた第3の搬送速度V3で搬送される。異物検査部32が例えば金属異物を検出する場合には、第3の搬送速度V3は5~50m/分程度の範囲内の一定値となる。金属の検出精度は異物検査部32の金属検出部を通過する搬送速度によって変化するために、搬送速度V3は一定速度での使用が求められる。しかし、箱用シート材Bの変更や、金属検出精度の変更により、5~50m/分程度の範囲内でV3は設定される。なお、電磁誘導を利用する金属検査では、搬送速度が遅くなると検出精度が低下し、搬送速度5m/分以下では正確な検出ができなくなるので、搬送速度5m/分以上とすることが好ましい。
【0048】
また、第3の搬送速度V3は、通常では第2の搬送速度V2よりも遅い速度に設定されている。第2の搬送本体部上を搬送される箱用シート材Bは、箱用シート材B同士の間隔p2が略一定で搬送されるが、第2の搬送速度V2は間隔p2を略一定に維持するために変化するので、第3の搬送本体部上を搬送される箱用シート材B同士の間隔p3=p2×(V3/V2)には、図2に示すように再びばらつきが発生する。
【0049】
右側に偏位した識別シート材Bnは、第3の搬送本体部31上でも整列された複数の箱用シート材Bから右側に偏位量Lbだけ偏位した状態が維持される。そして、識別シート材Bnを含む箱用シート材Bは、引き続き第3の搬送本体部31を搬送されて、異物検査部32によって異物がないことを確認してから、第3の搬送本体部31から第4の搬送本体部41に移送される。
【0050】
第3の搬送速度V3は所定値で一定であるので、箱用シート材Bが第3の搬送本体部31上を通過するのに要する通過所要時間T3は、常に一定時間となる。箱用シート材Bが第2の搬送本体部21から第3の搬送本体部31に移送されるタイミングで計測された時間、即ち第3の搬送部の入口を搬送されるタイミングで計測された時間と、箱用シート材Bが第3の搬送本体部31から第4の搬送本体部41に移送されるタイミングで計測された時間、即ち第3の搬送部の出口を搬送されるタイミングで計測された時間との差分時間を、通過所要時間T3として予め第4の駆動制御部42に記憶しておく。或いは、通過所要時間T3として、予め記憶している第3の搬送本体部31の搬送路長を第3の搬送速度V3で除算して算出した算出時間を用いてもよい。
【0051】
または、第3の搬送部3に搬送距離測定手段を設けて、第3の搬送本体部31の搬送ベルトが搬送した搬送距離を測定し、第3の搬送本体部31の搬送路長と測定した搬送距離が等しくなるまでに要した計測時間を、通過所要時間T3として用いてもよい。例えば、搬送距離測定手段としてエンコーダを用い、その測定パルス出力を第4の駆動制御部42に接続する。第4の駆動制御部42には予め第3の搬送本体部31の搬送路長と等距離となるエンコーダの所定パルス数を記憶しておく。第4の駆動制御部42は、エンコーダからの測定パルス出力が所定パルス数に達した時間を計測して、この時間を通過所要時間T3として用いることができる。
【0052】
このように、第3の搬送部3を箱用シート材Bが搬送される搬送距離を測定し、この搬送距離が予め記憶した第3の搬送部3の搬送路長と等しくなるまでに要した計測時間を通過所要時間T3として用いる場合には、第3の搬送速度V3が一定でなくとも、通過所要時間T3を求めることができるという利点もある。
【0053】
また、第2の駆動制御部22から第2の搬送速度V2の速度制御情報として速度値と変更された時間が、第4の駆動制御部42に常に入力される。第4の駆動制御部42に入力される第2の搬送速度V2の速度値には、第2の速度測定部23による測定値を用いた方が高精度であるが、第2の駆動制御部22の速度指令値を用いることもできる。
【0054】
第4の駆動制御部42は、第2の搬送速度V2の速度制御情報に基づいて、第4の搬送本体部41の第4の搬送速度V4を制御し、第4の搬送本体部41上に搬送される箱用シート材Bを、図2に示すように箱用シート材B同士の一部が重なり合うように略等間隔p4で整列させて搬送する。
【0055】
図4は第4の駆動制御部42による第4の搬送速度V4の時間tに対する制御状況を、第2の搬送速度V2及び第3の搬送速度V3と共に表したグラフ図である。第4の搬送速度V4は、通常では第2の搬送速度V2及び第3の搬送速度V3よりも低速に設定される。また、第4の搬送速度V4は第2の搬送速度V2が減速又は加速を開始してから、第3の搬送本体部31の通過所要時間T3経過後に、減速又は加速を開始する。
【0056】
そして、第2の搬送速度V2と第4の搬送速度V4との比率(V4/V2)は、一定値に維持されて減速又は加速が行われる。ただし、第2の搬送速度V2がゼロとなる場合には、第4の搬送速度V4も通過所要時間T3経過後にゼロとなる。このような第4の搬送速度V4の減速又は加速制御に基づいて、第4の搬送本体部41上を搬送されている箱用シート材B同士の間隔p4は、次式で表すことができる。
p4=p3×(V4/V3)=p2×(V3/V2)×(V4/V3)
=p2×(V4/V2)
【0057】
上式から明らかなように、第4の搬送本体部41上における箱用シート材B同士の間隔p4は、第2の搬送本体部21上における箱用シート材B同士の間隔p2に、第4の搬送速度V4と第2の搬送速度V2の比率(V4/V2)を乗算した値となる。間隔p2は略一定値で、比率(V4/V2)は一定値に制御されており、第4の搬送速度V4は第2の搬送速度V2よりも遅いので、間隔p4は間隔p2よりも狭い略一定値となる。
【0058】
即ち、第3の搬送本体部31上における箱用シート材B同士の間隔p3に生じていたばらつきは、上述のように第4の搬送速度V4の減速又は加速制御を行うことによって解消され、第4の搬送本体部41では箱用シート材B同士の間隔p4は、より狭い略等間隔となり搬送されることになる。なお、第4の搬送速度V4が第2の搬送速度V2以上の高速である場合についても、同様に第4の搬送速度V4の減速又は加速制御を行うことによって、第4の搬送本体部41上を搬送される箱用シート材B同士の間隔p4を略等間隔とすることができる。
【0059】
このとき、第1の搬送部1のバッティング部13により右側に偏位した識別シート材Bnは、第4の搬送本体部41上において第4の搬送速度V4の速度制御には関係なく、整列された複数の箱用シート材Bから右側に偏位量Lbだけ偏位した状態が維持される。所定枚数毎に配置された識別シート材Bnを含む箱用シート材Bを取り出すことで、箱詰めする枚数を正確に計数することができる。また、より狭い間隔p4で箱用シート材Bを略等間隔に整列させているので、箱用シート材Bの搬送路からの取り出し作業や箱詰め作業が容易に行える。
【0060】
このように、識別シート材Bnを用いる計数方法を例示したが、本実施例ではこれに限定されることなく、識別シート材Bnを用いない計数方法であっても、箱用シート材Bをより狭い略等間隔に整列させることで、計数、取り出し、箱詰め等の作業を効率的に行うことができる。
【0061】
なお、第2の搬送速度V2が変更されてから第4の搬送速度V4を変更するまでの第3の搬送本体部31の通過所要時間T3については、補正値を付加した補正時間を用いてもよく、通過所要時間T3の精度を高めることが可能である。
【0062】
図5は箱用シート材Bが第3の搬送本体部31から第4の搬送本体部41に移送される際の、搬送状況を示す側面図である。第3の搬送本体部31と第4の搬送本体部41の間には数10mm程度の間隙があり、厳密に搬送速度がV3からV4に切換わるタイミングは、箱用シート材B同士の摩擦や、箱用シート材Bと第3の搬送本体部31及び第4の搬送本体部41との摩擦によって変化する。
【0063】
そこで、例えば最大で数10mm程度の搬送距離に相当する搬送時間の補正値ΔT3を、箱用シート材Bの搬送状況を観察しながら適値に調整して、通過所要時間T3に付加することによって、予め実際の搬送状況に対応して精度を高めた通過所要時間T3+ΔT3とする補正時間を用いることができる。第2の搬送速度V2が変更されてから通過所要時間T3+ΔT3の経過後に、第4の搬送速度V4を変更することによって、第4の搬送本体部41上で整列して搬送される箱用シート材B同士の間隔p4を、より高精度に略等間隔にすることができる。
【0064】
このように、本実施例のシート材搬送装置によれば、ばらつきのある間隔で搬送される箱用シート材Bを略等間隔に整列させる第2の搬送部2及び第4の搬送部4の中間に、一定速度で搬送し、異物を検出する異物検査部32を有する第3の搬送部を設置しても、第4の搬送部4において箱用シート材Bを略等間隔に整列させることができる。従って、箱用シート材Bを取り出して箱詰めする作業や所定数の計数等を容易に行うことが可能である。
【0065】
特に、近年需要が急増している食品用や医薬品用などの箱用シート材Bでは、異物検査、例えば金属検査を精度良く実施するために、所定搬送速度で搬送しなければならないので、そのような場合に箱用シート材Bを略等間隔に整列させて、計数や取り出し及び箱詰め作業の効率化を図れる効果は極めて大きい。
【符号の説明】
【0066】
1 第1の搬送部
2 第2の搬送部
3 第3の搬送部
4 第4の搬送部
11 第1の搬送本体部
12 通過検出センサ
13 バッティング部
14 第1の速度測定部
15 第1の駆動制御部
21 第2の搬送本体部
22 第2の駆動制御部
23 第2の速度測定部
31 第3の搬送本体部
32 異物検査部
41 第4の搬送本体部
42 第4の駆動制御部
B 箱用シート材
p1 箱用シート材B同士の第1の搬送本体部における間隔
p2 箱用シート材B同士の第2の搬送本体部における間隔
p3 箱用シート材B同士の第3の搬送本体部における間隔
p4 箱用シート材B同士の第4の搬送本体部における間隔
V1 第1の搬送速度
V2 第2の搬送速度
V3 第3の搬送速度
V4 第4の搬送速度
図1
図2
図3
図4
図5