(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】破砕機駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230126BHJP
B02C 23/00 20060101ALI20230126BHJP
B60L 53/14 20190101ALN20230126BHJP
B60L 58/12 20190101ALN20230126BHJP
B60L 1/00 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
B02C23/00 E
B60L53/14
B60L58/12
B60L1/00 L
(21)【出願番号】P 2019218904
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】倉山 功治
(72)【発明者】
【氏名】中山 弘志
(72)【発明者】
【氏名】相森 冨男
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 美信
(72)【発明者】
【氏名】東島 光男
(72)【発明者】
【氏名】島内 佳司
(72)【発明者】
【氏名】瀬崎 忠
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-011021(JP,A)
【文献】特開2011-245365(JP,A)
【文献】特開2014-087115(JP,A)
【文献】特開2004-344810(JP,A)
【文献】特開2007-125494(JP,A)
【文献】特開平11-226446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
B02C9/00-11/08
B02C19/00-25/00
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕対象物を破砕する場合に駆動する駆動手段に電力を供給するための第1接続部と、
前記駆動手段に電力を供給する外部電源に接続するための第2接続部と、
所定のタイミングで前記駆動手段に電力を供給すると共に、前記外部電源からの電力を充電するバッテリ電源と、
前記外部電源からの電力供給、並びに前記バッテリ電源からの電力供給、及び前記バッテリ電源への充電を制御する電力制御手段と
、
前記バッテリ電源の充電残量に基づいて、前記破砕対象物を供給する供給手段の動作を制御する供給制御手段とを備える破砕機駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕機駆動装置において、
前記電力制御手段が、前記外部電源側の電圧が所定値以下となった場合に、前記バッテリ電源から前記駆動手段に対して電力が供給されるように制御する破砕機駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の破砕機駆動装置において、
前記
駆動手段への負荷が所定値以下である場合に、前記駆動手段から回生した電力が前記バッテリ電源に充電される破砕機駆動装置。
【請求項4】
請求
項3に記載の破砕機駆動装置において、
前記駆動手段
が破砕を回転駆動するモータであり、当該モータによる回転の1周期ごとに回生した電力が前記バッテリ電源に充電される破砕機駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石などの破砕機を駆動するための駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド型の建設機械に関する技術として、例えば特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、HCUが、バッテリ温度によって蓄電装置が低温状態であると判断したときに、バッテリ温度が低くなるに従って大きい値とするバッテリ低温減少出力を決定するバッテリ低温減少出力演算部と、作動油温度によって作動油が低温状態であると判断したときに、作動油温度が低くなるに従って大きい値とする作動油低温減少出力を決定する作動油低温減少出力演算部と、バッテリ低温減少出力と作動油低温減少出力との和に従って車体動作を制御する出力指令演算部とを有しているものである。
【0003】
一方で建設機械の一つであるクラッシャについて、発電機式クラッシャとバッテリ式クラッシャとが知られている。クラッシャの電源に関しては、以下のような問題がある。(1)クラッシャの慣性が大きいため起動時に非常に大きい負荷が掛かる。(2)破砕時と無負荷時との負荷の変動が激しいため、細かい制御が必要となる。(3)硬めの破砕対象物が供給されると瞬間的に大きい負荷が掛かってしまう。(4)発電機を搭載する場合はオフロード法による排ガス規制があり、それに適合した希少な発電機を使用する必要がある。
【0004】
発電機式クラッシャの場合、(1)~(3)の問題があるため、定常時の負荷に比べて数倍(例えば、2~3倍)の容量をカバーでき、且つ(4)の排ガス規制を満たす発電機を用いる必要があり、導入時のコストが非常に高くなると共に、燃費も非常に高くなってしまうという問題がある。
【0005】
これに対して、バッテリ式クラッシャの場合、(1)~(3)の問題は瞬間的な電力でカバーすることが可能になると共に、排ガス規制もクリアすることが可能となる。しかしながら、上記の容量をカバーするためのバッテリが非常に高価であり、導入時のコストが非常に高くなってしまう。また、容量が大きくなると充電時間が非常に長くなってしまうと共に、発電機に比べて外形寸法が非常に大きくなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示す技術を用いたとしても上記のような問題を解決することができない。
【0008】
本発明は、発電機とバッテリ電源とを用いることで破砕における負荷変動をカバーしつつ、省エネルギーを実現する破砕機駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る破砕機駆動装置は、破砕対象物を破砕する場合に駆動する駆動手段に電力を供給するための第1接続部と、前記駆動手段に電力を供給する外部電源に接続するための第2接続部と、所定のタイミングで前記駆動手段に電力を供給すると共に、前記外部電源からの電力を充電するバッテリ電源と、前記外部電源からの電力供給、並びに前記バッテリ電源からの電力供給、及び前記バッテリへの充電を制御する電力制御手段とを備えるものである。
【0010】
このように、本発明に係る破砕機駆動装置においては、破砕対象物を破砕する場合に駆動する駆動手段に電力を供給するための第1接続部と、前記駆動手段に電力を供給する外部電源に接続するための第2接続部と、所定のタイミングで前記駆動手段に電力を供給すると共に、前記外部電源からの電力を充電するバッテリ電源と、前記外部電源からの電力供給、並びに前記バッテリ電源からの電力供給、及び前記バッテリへの充電を制御する電力制御手段とを備えるため、駆動手段への負荷が大きい場合などにバッテリ電源からの電力を補助的に供給することで、破砕機の運転を停止することなく持続して作業することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る破砕機の構成の一部を示す機能ブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る破砕機及び破砕機駆動装置の動作を示す第1のフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態に係る破砕機及び破砕機駆動装置の動作を示す第2のフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態に係る破砕機の構成の一部を示す機能ブロック図である。
【
図5】第2の実施形態に係る破砕機及び破砕機駆動装置の動作を示す第1のフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態に係る破砕機及び破砕機駆動装置の動作を示す第2のフローチャートである。
【
図8】ジョークラッシャーにおける消費電力の変化を示す図である。
【
図9】第4の実施形態に係る破砕機の構成の一部を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0013】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る破砕機駆動装置について、
図1ないし
図3を用いて説明する。本実施形態に係る破砕機駆動装置は、石やコンクリートなどの破砕対象物を破砕する破砕部を発電機や商用電源などの外部電力を利用して駆動する場合に、破砕部の負荷に応じて内部に備えたバッテリ電源により電力を補うことで、破砕作業をスムーズに効率よく進めるものである。特に破砕部に石材が詰まった場合や破砕対象物が硬い場合に、バッテリ電源の電力を付加することでそれらを効率よく破砕することが可能となる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る破砕機の構成の一部を示す機能ブロック図である。破砕機10は、当該破砕機10の駆動を制御する破砕機駆動装置1と、油圧モータを駆動する第1駆動部2と、電動モータを駆動する第2駆動部8と、作業現場において設置又は固定されており破砕作業のために必要となる電力を供給する外部電源3とを少なくとも備える。外部電源3は、作業現場の環境に応じて商用電源や発電機が用いられる。
【0015】
第1駆動部2は、油圧モータを駆動する処理部であり、油圧モータにより破砕機10の移動の際に駆動するクローラや、実際に石やコンクリートなどを砕石する破砕部が駆動制御される。第2駆動部8は、電動モータを駆動する処理部であり、電動モータにより砕石を行う破砕部を駆動制御する。破砕部には、ジョークラッシャ、コーンクラッシャ、インパクトクラッシャ等の様々な種類が知られており、いずれのクラッシャにも本願を適用可能である。第1駆動部2の油圧モータは、破砕部のクラッシャを初期起動する際に利用され、第2駆動部8の電動モータはクラッシャの起動が安定した定常状態において利用される。すなわち、初期起動から定常状態に移行する際に第1駆動部2から第2駆動部8に駆動制御が切り替わる。この駆動制御の切り換えは、例えばモータの回転数に応じて行われる。また、第1駆動部2の油圧モータは、破砕機10のクローラを駆動する場合にも利用されるため、破砕機10が作業場所を移動する際には、この第1駆動部2が駆動制御される。
【0016】
破砕機駆動装置1は、第1駆動部2に電気的に接続する第1接続部4と、第2駆動部8に電気的に接続する第2接続部5と、外部電源3に電気的に接続する第3接続部9と、第1駆動部4及び/又は第2駆動部8の負荷に応じて外部電源3からの電力供給を補うバッテリ電源6と、外部電源3から第1駆動部2又は第2駆動部8へ供給される電力、バッテリ電源6から第1駆動部2又は第2駆動部8へ供給される電力、及び外部電源3からバッテリ電源6へ充電される電力等の変換を行うインバータ回路7と、バッテリ電源6の稼働状態を監視するBMS(Battery Management System)11と、破砕機駆動装置1全体の電力供給や充電を制御するシーケンサであるPLC12とを備える。
【0017】
上述したように、破砕機10の作業現場までの移動は、第1駆動部2でクローラが駆動することにより行われるが、その際に必要な電力はバッテリ電源6のみから供給されることが望ましい。すなわち、移動の際にバッテリ電源6を用いることで、排ガス規制がされているような領域であっても破砕機10の自走により作業場所を移動することが可能になる。
【0018】
作業現場では、第3接続部9が外部電源3としての商用電源又は発電機に接続する。そして破砕作業が開始されると、PLC12の制御下でインバータ回路7を介した外部電源3からの電力により、第1駆動部2の油圧モータを駆動して破砕部の初期起動が実行される。初期起動により破砕部が安定した起動状態(例えば、油圧モータの回転数が所定値以上の状態)になると、第1駆動部2の油圧モータから第2駆動部8の電動モータに駆動を切り替える。このように定常時は、インバータ回路7を介して外部電源3からの電力を第2駆動部8に供給し、電動モータにより破砕部を回転させて破砕作業が行われる。
【0019】
破砕部に供給される破砕対象物は、様々な大きさや硬度を有する石やコンクリートなどであるため、対象物によって破砕部への負荷が大きく変化する。また、金属などの異物が混入することで破砕部への負荷が大きく変化する場合がある。本実施形態においては、破砕部への負荷が大きくなるとバッテリ電源6からも電力を供給することで、その負荷に対応する。すなわち、定常時は外部電源3側の電圧が高くなっており、外部電源3から破砕部への電力が供給されると共に、バッテリ電源6の充電残量に応じて、バッテリ電源6への充電が並行して行われる。そして、外部電源3の容量を超えた負荷が掛かった場合は、電圧降下によりバッテリ電源6側の電圧が高くなり、バッテリ電源6から電力を補う。破砕部への負荷が安定すると、再び外部電源3側の電圧が上昇し、バッテリ電源6側からの電力供給は停止する。
【0020】
このように、破砕作業時には外部電源3をメインで使用し、バッテリ電源6は高負荷時の補助用の電源や移動時のクローラの駆動としてのみ利用することで、バッテリ電源6の容量をある程度下げてコストを抑えることができる。
【0021】
バッテリ電源6の充放電については、BMS11の監視情報が用いられる。BMS11は主にバッテリ電源6の充電残量の監視を行っており、充電残量が所定値以下である場合は、破砕部に高負荷が掛かった場合であっても接点13をOFFにして切断することで電力供給を行わないようにし、充電残量が所定値を超えたら破砕部への電力供給を可能にするために接点13をONにして接続状態にする。また、PLC12の初期起動は、スイッチ14をONにすることでバッテリ電源6からの電力供給で実行される。
【0022】
次に、本実施形態に係る破砕機の動作について説明する。
図2は、本実施形態に係る破砕機及び破砕機駆動装置の動作を示す第1のフローチャート、
図3は、本実施形態に係る破砕機及び破砕機駆動装置の動作を示す第2のフローチャートである。ここでは、第1接続部4と第1駆動部2、第2接続部5と第2駆動部8のそれぞれが既に物理的に接続されており、切替部(図示しない)により電気的な接続をいずれかの駆動部に切り替えられるものとする。
【0023】
まず、第1接続部4と第1駆動部2とを電気的に接続状態にする(S1)、作業現場にて第3接続部9と外部電源3(商用電源又は発電機)と接続する(S2)。外部電源3の電力を利用して第1駆動部2の油圧モータで破砕部を初期起動し、砕石作業を開始する(S3)。破砕部が安定起動したら駆動部の接続を第1駆動部2から第2駆動部8に切り替える(S4)。
【0024】
駆動部が第2駆動部8に切り替わると、第2駆動部8の電動モータで破砕部を定常運転する(S5)。定常運転において外部電源3側の電圧が破砕部への負荷増大による電圧降下で所定値以下となっているかどうかを判断し(S6)、所定値以下である場合はバッテリ電源6の電池残量が所定値以上であるかどうかを判定する(S7)。電池残量が所定値未満であれば、電当該池残量が所定値以上になるまで外部電源3からバッテリ電源6に充電を行う(S8)。また、電池残量が所定値未満であれば、S8と並行して、破砕部への負荷が所定値以上であるかどうかを判定する(S9)。所定値未満であれば、継続してS5の定常処理を行う。破砕部への負荷が所定値以上であれば、過負荷保護装置(図示しない)により第2駆動部8の定常処理を停止する(S10)。切替部を第1駆動部2に切り替えて油圧モータを起動する(S11)。油圧モータにより破砕部をインチングして過負荷の原因となる破砕対象物や異物等を排出し(S12)、切替部を第2駆動部8に切り替えてS5の定常処理を再開する。
【0025】
S7で電池残量が所定値以上であれば、又は充電により所定値以上になった場合(すなわち、外部電源3側の電圧値よりも高電圧となった場合)は、バッテリ電源6から第2駆動部8に対して補助的に電力が供給され(S13)、S5の定常処理が維持される。バッテリ電源6から破砕部への電力供給は、PLC12の制御に基づくBMS11の指令信号により接点13がONにされることで可能となる。定常運転において、S6で電圧降下が生じていない場合は、作業者により現場作業が終了かどうかが判断され(S14)、作業終了ではない場合はS5の定常処理を継続する。作業終了である場合は、第3接続部9と外部電源3との接続をOFFにして、第2駆動部8から第1駆動部2に切り替える(S15)。バッテリ電源6を起動し、バッテリ電源6の電力のみを利用して帰りの経路を移動し(S16)、一連の動作を終了する。
【0026】
このように、本実施形態に係る破砕機駆動装置においては、駆動部への負荷が大きい場合などにバッテリ電源6からの電力を補助的に供給することで、破砕機10の運転を停止することなく定常運転を持続して作業することができる。
【0027】
また、外部電源3側の電圧が所定値以下となった場合に、バッテリ電源6から駆動部に対して電力が供給されるように制御するため、硬めの破砕対象物や異物により駆動部に瞬間的に大きい負荷が掛かり、外部電源3側で電圧降下が起こるに伴い、バッテリ電源6側の電圧が高くなることでバッテリ電源6からの電力を供給することが可能となり、バッテリ電源6で補うことができる。
【0028】
さらに、破砕部への負荷が大きすぎる場合には、過負荷保護装置を起動することで定常運転を休止し、インチングにより作業を進行しつつ破砕部の破損等を防止することができる。
【0029】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る破砕機駆動装置について、
図4ないし
図6を用いて説明する。本実施形態に係る破砕機駆動装置は、バッテリ電源6の充電残量に応じて第2駆動部8に掛かる負荷を調整するために破砕対象物の供給量を制御するものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0030】
図4は、本実施形態に係る破砕機の構成の一部を示す機能ブロック図である。前記第1の実施形態における
図1の場合と異なるのは、破砕機10が、破砕対象となる石やコンクリートなどの破砕対象物を供給する破砕対象物供給部15(フィーダ)を新たに備えると共に、破砕機駆動装置1が、破砕対象物供給部15に接続する第4接続部16と、破砕対象物供給部15に供給する電力の電力変換を行う供給インバータ回路17とを更に備えることである。
【0031】
供給インバータ回路17は、バッテリ電源6の電池残量が所定値以上ある場合は、破砕対象物の供給量を維持するように破砕対象物供給部15に電力を供給し続ける。つまり、破砕対象物供給部15が供給する破砕対象物により第2駆動部8に大きな負荷が掛かったとしても、バッテリ電源6からの十分な電力供給が可能となるため、破砕作業を維持することができる。バッテリ電源6の電池残量が所定値未満である場合は、バッテリ電源6による第2駆動部8への電力供給ができないため、現状の破砕作業を維持するのが難しくなる。このような状態になった場合、本実施形態においては、破砕対象物供給部15への電力供給を低減することで破砕対象物供給部15(フィーダ)の動作を低速又は停止にし、これ以上の負荷が第2駆動部8に掛からないようにする。そうすることで、破砕作業を完全に休止することなく持続しながら続けて効率を上げることができる。
【0032】
なお、バッテリ電源6の電池残量が所定値未満である場合に、第2駆動部8に掛かる負荷(電流)が所定値を超えて掛かっているとき(例えば、大きい破砕対象物が供給されたときや、硬い異物が混入しているとき)は、過負荷保護装置(図示しない)により第2駆動部8を停止し、第1駆動部2の油圧モータで破砕部をインチングし、過負荷の原因となっている破砕対象物や異物を排出するようにしてもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係る破砕機の動作について説明する。
図5及び
図6は、本実施形態に係る破砕機及び破砕機駆動装置の動作を示すフローチャートである。ここでは、第1接続部4と第1駆動部2、第2接続部5と第2駆動部8のそれぞれが既に物理的に接続されており、切替部(図示しない)により電気的な接続をいずれかの駆動部に切り替えられるものとする。前記第1の実施形態における
図2及び
図3の場合と異なるのは、S6で外部電源3側の電圧降下で電圧が所定値以下となり、S7バッテリ電源6の電池残量が所定値未満となっている場合に、S9で破砕部の負荷が所定値未満のときに破砕対象物供給部15への電力供給を抑えることで、フィーダからの破砕対象物の供給を低減して(S9’)、定常運転に戻る処理が加わっている点である。すなわち、S9において、過負荷により装置を停止させる程ではないものの、負荷を低減したほうが安定して定常運転を行うことができるような場合に、負荷を低減するために破砕対象物の供給量を減らす。そうすることで破砕部の負荷が低減し、安定した定常運転をスムーズに再開することが可能となる。
【0034】
なお、
図6のフローチャートでは明記していないものの、定常運転が安定した後は所定のタイミングで破砕対象物供給部15への電力供給を以前の状態(S9’の処理を行う直前の状態)に戻し、破砕対象物の供給量を増加させるものとする。
【0035】
このように、本実施形態に係る破砕機駆動装置においては、バッテリ電源6の充電残量に基づいて、破砕対象物を供給する破砕対象物供給部15への電力を制御する供給インバータ17を備えるため、硬めの破砕対象物や金属などの異物が連続して供給されることでバッテリ電源6の充電残量が所定値以下に減少したような場合であっても、破砕対象物の供給量を調整することで、定常運転を維持しつつバッテリ電源6の充電残量を維持又は増加させることができる。また、破砕部への負荷が大きすぎる場合には、過負荷保護装置を起動することで定常運転を休止し、インチングにより作業を進行しつつ破砕部の破損等を防止することができる。
【0036】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る破砕機駆動装置について、
図7及び
図8を用いて説明する。本実施形態に係る破砕機駆動装置は、第2駆動部8への負荷が所定値以下である場合に、第2駆動部8の電動モータから回生した電力がバッテリ電源6に充電されるものである。なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0037】
例えばジョークラッシャーの場合、
図7に示すように、固定歯に対して動歯が垂直方向に(水平方向を軸として)回転することで固定歯と動歯との間にある石やコンクリートなどの破砕対象物を破砕する。このとき、動歯が垂直方向に上昇と下降を繰り返しながら回転するが、上昇時の半回転には動歯を持ち上げるために電力を消費し、下降時には自重により自然に半回転することで電力を消費することがない。このようなジョークラッシャーの破砕部における消費電力のグラフを
図8に示す。
図8に示すように1周期ごとに消費電力が大きく変動していることがわかる。
【0038】
図8のグラフにおいて、下降時の半周期は動歯の自重により自然に半回転することから、電動モータを発電機として利用することが可能となる。すなわち、動歯が上昇する半回転はモータとして電力を消費しながら駆動し、動歯が下降する半回転はモータを発電機として電力を回生しながら作業を行うことが可能となる。本実施形態に係る破砕機駆動装置においては、この1周期ごとに回生される電力をバッテリ電源6に充電することで、バッテリ電源6の電力を節電して省エネルギーで作業を行うことが可能となる。
【0039】
なお、ジョークラッシャー以外にも、ロールクラッシャ、コーンクラッシャ、インパクトクラッシャ、ジャイロパクタ等のクラッシャで電力を回生することが可能であり、特にインパクトクラッシャについては、その慣性の大きさで多くの回生電力を充電することが可能である。
【0040】
(本発明の第4の実施形態)
本実施形態に係る破砕機駆動装置について、
図9を用いて説明する。本実施形態に係る破砕機駆動装置は、バッテリ電源6に直列に接続される補助バッテリ電源を備えることで、外部電源3側の電圧降下が生じるような場合に、補助バッテリ電源をONにしてバッテリ電源6側の電圧を上げることで負荷への電力供給をバッテリ電源6側に切り替え、外部電源3の回路を保護するものである。なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0041】
図9は、本実施形態に係る破砕機の構成の一部を示す機能ブロック図である。前記第1の実施形態における
図1の場合と異なるのは、バッテリ電源6にPLC12の制御によりON/OFFするコンタクタ18を介して補助バッテリ電源6aが直列に接続されていることである。前記第1の実施形態において前述したように、破砕部への負荷が大きくなると外部電源3側に電圧降下が生じ、バッテリ電源6側が高電圧となってバッテリ電源6からの電力が補助的に供給される。このとき、外部電源3には大きな負荷が掛かるため装置や回路がダメージを受けてしまう可能性がある。
【0042】
図9の構成において、通常時はコンタクタ18をOFFにしておく。PLC12が外部電源3側の電圧降下が生じた又は生じそうであることを検知し(電圧の実行値で判断してもよいし、AIなどの学習機能を用いて電圧降下を推定してもよい)、外部電源3への負荷が大きくなりそうな場合にコンタクタ18をONにしてバッテリ電源6と補助バッテリ電源6aとを接続する。補助バッテリ電源6aの電池容量は任意でもよいが、例えば12Vの電池パック1つだけで構成されてもよい。バッテリ電源6に補助バッテリ電源6aが直列に接続されることで、バッテリ電源6側が高電圧となり、外部電源3への負荷をなくしてバッテリ電源6及びバッテリ電源6aでの駆動に切り替えることが可能となる。
【0043】
また、補助バッテリ電源6aに充電する場合もコンタクタ18をONにすることで、バッテリ電源6を充電するのと同時に補助バッテリ電源6aを充電することが可能となる。
【0044】
このような構成により、コンタクタ18のON/OFF制御だけで、外部電源3とバッテリ電源6との切り替えを行うと共に、負荷増大による外部電源3へのダメージを最小限に抑えることが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1 破砕機駆動装置
2 第2駆動部
3 外部電源
4 第3接続部
5 第1接続部
6 バッテリ電源
6a 補助バッテリ電源
7 インバータ回路
8 第1駆動部
9 第2接続部
10 破砕機
11 BMS
12 PLC
13 接点
14 スイッチ
15 破砕対象物供給部
16 第4接続部
17 供給インバータ回路
18 コンタクタ