(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】容器検査装置及び容器検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20230126BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G01N21/90 A
G01N21/88 K
(21)【出願番号】P 2020141879
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390014661
【氏名又は名称】キリンテクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕宗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 千代子
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281477(JP,A)
【文献】特開2013-231668(JP,A)
【文献】特開2016-080474(JP,A)
【文献】特開2009-162728(JP,A)
【文献】特開2005-077583(JP,A)
【文献】特開昭46-001145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0162966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する樹脂製の容器の表面における印字部を検査対象として検査するための画像を取得する画像取得装置であって、前記容器を蛍光発光させることが可能な波長域の紫外光により前記容器を照明する照明手段と、蛍光発光した容器を前記紫外光による照明方向と同一の側から観察した画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段への入射光の波長域に関して、前記容器にて生じる蛍光の波長域と比較して前記容器を照明する紫外光の波長域が制限されるように、前記入射光の波長域を調整するフィルタ手段と、を備えた画像取得装置と、
前記撮像手段が撮像した画像中の明暗差に基づいて、前記容器の前記印字部の適否を判別する判別手段と、
を備え
、
前記判別手段は、前記撮像手段が撮像した画像から前記印字部を暗部として抽出し、得られた印字部の画像に基づいて前記印字部の適否を判別する、容器検査装置。
【請求項2】
前記照明手段は360~380nmの波長域にてピークを示す紫外光によって前記容器を照明し、前記フィルタ手段は400nmよりも短波長側の波長域に関して前記撮像手段への入射を制限する請求項1に記載の
容器検査装置。
【請求項3】
透光性を有する樹脂製の容器の表面における印字部を検査対象として検査するための画像を取得する手順であって、前記容器を蛍光発光させることが可能な波長域の紫外光を発する照明手段にて前記容器を照明する手順と、蛍光発光した容器を前記照明手段による照明方向と同一の側から観察した画像を撮像手段により撮像する手順と、を含んだ手順と、
前記撮像手段が撮像した画像中の明暗差に基づいて、前記容器の前記印字部の適否を判別する手順と、
を含
み、
前記撮像する手順では、前記撮像手段への入射光の波長域に関して、前記容器にて生じる蛍光の波長域と比較して前記容器を照明する紫外光の波長域が制限されるように、フィルタ手段により前記入射光の波長域を調整し、
前記判別する手順では、前記撮像手段が撮像した画像から前記印字部を暗部として抽出し、得られた印字部の画像に基づいて前記印字部の適否を判別する、容器検査方法。
【請求項4】
前記照明する手順では360~380nmの波長域にてピークを示す紫外光によって前記容器を照明し、前記撮像する手順では前記フィルタ手段により400nmよりも短波長側の波長域に関して前記撮像手段への入射を制限する請求項3に記載の
容器検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性を有する樹脂製の容器を検査するための画像を取得する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
透明又は半透明の樹脂製容器の表面に設けられた文字列等を検査する手法として、PET(ポリエチレンテレフタレートの略。以下、同様である。)樹脂製のプリフォームに凹凸模様として刻印された金型番号の検査を目的として、プリフォームをその背後から照明し、正面側からプリフォームを観察した画像を撮像し、得られた画像に基づいて刻印部分の適否を検査する検査方法が知られている(特許文献1参照)。一方、樹脂製容器に巻き付けられたラベルの適否を検査する手法として、PET樹脂製のボトルの外周に、PET樹脂よりも蛍光強度が低い樹脂、例えば2軸延伸ポリスチレンフィルム製のラベルを装着し、紫外光の照射に対するラベルの蛍光発光の強度と、ボトルの蛍光発光の強度との相違を利用して、ラベルの損傷の有無を検査する検査方法が知られている(特許文献2参照)。樹脂製容器の外周に巻き付けられるべきラベルに蛍光物質含有層を設け、そのラベルが装着された容器に紫外光を照射することにより、ラベルの有無やその装着位置の適否を検査する検査方法も知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-150072号公報
【文献】特開2008-281477号公報
【文献】特開2005-77583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査方法では、容器の背面側から入射した照明光が容器の内部を通過して正面側から出射し、カメラに入射する。そのため、容器の内壁に付着した水滴や泡等(以下、水滴等と呼ぶことがある。)が画像中に暗部として出現し、刻印等の検査対象の検出精度が劣化するおそれがある。特許文献2及び3のように、容器を一方の側から紫外光で照明し、同一の側から容器を撮像する検査方法では、容器内の水滴等の影響を抑えることが可能である。しかしながら、容器の表面で反射した紫外光がカメラに入射して、容器と検査対象部分との明暗差が縮小し、その結果として検査精度が損なわれるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、容器表面における反射光の影響を抑えて検査対象の適否を検査するに適した画像を取得するための画像取得装置及び方法、並びにそれらを用いた容器の検査装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像取得装置は、透光性を有する樹脂製の容器の表面における印字部を検査対象として検査するための画像を取得する画像取得装置であって、前記容器を蛍光発光させることが可能な波長域の紫外光により前記容器を照明する照明手段と、蛍光発光した容器を前記紫外光による照明方向と同一の側から観察した画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段への入射光の波長域に関して、前記容器にて生じる蛍光の波長域と比較して前記容器を照明する紫外光の波長域が制限されるように、前記入射光の波長域を調整するフィルタ手段と、を備えたものである。
【0007】
本発明の一態様に係る画像取得方法は、透光性を有する樹脂製の容器の表面における印字部を検査対象として検査するための画像を取得する画像取得方法であって、前記容器を蛍光発光させることが可能な波長域の紫外光を発する照明手段にて前記容器を照明する手順と、蛍光発光した容器を前記照明手段による照明方向と同一の側から観察した画像を撮像手段により撮像する手順と、を含み、前記撮像する手順では、前記撮像手段への入射光の波長域に関して、前記容器にて生じる蛍光の波長域と比較して前記容器を照明する紫外光の波長域が制限されるように、フィルタ手段により前記入射光の波長域を調整するものである。
【0008】
本発明の一態様に係る容器検査装置は、上記態様の画像取得装置と、前記撮像手段が撮像した画像中の明暗差に基づいて、前記容器の前記印字部の適否を判別する判別手段とを備え、前記判別手段は、前記撮像手段が撮像した画像から前記印字部を暗部として抽出し、得られた印字部の画像に基づいて前記印字部の適否を判別するものである。
【0009】
本発明の一態様に係る容器検査方法は、上記態様の画像取得方法により画像を取得する手順と、前記撮像手段が撮像した画像中の明暗差に基づいて、前記容器の前記印字部の適否を判別する手順と、を含み、前記判別する手順では、前記撮像手段が撮像した画像から前記印字部を暗部として抽出し、得られた印字部の画像に基づいて前記印字部の適否を判別するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一形態に係る容器検査装置の一例を示す図。
【
図2】ボトルを照明する紫外光の分光強度と、ボトルの蛍光発光の分光強度と、フィルタの分光感度との関係の一例を示す図。
【
図4】一形態に係る容器検査装置にて得られる画像の一例を示す図。
【
図5】比較例に係る容器検査装置にて得られる画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一形態に係る容器検査装置を示している。容器検査装置1は、樹脂製容器の一例としてのPET樹脂製のボトル2を検査するように設けられている。検査対象は、一例として、ボトル2のサポートリング2aの幾らか下方に施された印字部3である。ボトル2には内容物の一例として飲料が充填されている。ボトル2の上端の口部はキャップ4で封止されている。印字部3は内容物の液面Lに対して幾らか上方に位置している。ボトル2の内壁には、飲料の水滴等が付着している場合がある。
図1では、印字部3の一部の背後に水滴Dが付着している様子が示されている。なお、
図1では、印字部3に「123」の数字列が記された状態が示されているが、これは一例である。印字部3の内容は適宜に設定されてよい。
【0012】
容器検査装置1は、ボトル2の印字部3を検査するための画像を取得する画像取得装置10を含む。画像取得装置10は、ボトル2を照明する照明手段の一例としての照明装置11と、そのボトル2を撮像する撮像手段の一例としてのカメラ12と、カメラ12への入射光の波長域を調整するフィルタ手段の一例としてのフィルタ13とを備えている。
【0013】
照明装置11は、ボトル2の印字部3を含む所定範囲を所定の照明光によって照明する。ボトル2は、その照明光に対して透光性を有する。透光性は、透明及び半透明のいずれも含む概念である。照明装置11は、ボトル2を蛍光発光させることが可能な波長域の紫外光を照明光として発するように設けられている。紫外光の波長域の具体例は後述する。
図1では、照明装置11が、印字部3の側方からボトル2を照明するかのごとく描かれているが、これは理解を助けるために構図を変更したものであって、実際の配置を示すものではない。照明装置11は、印字部3等の検査対象をその正面側から照明するように設けられる。
【0014】
カメラ12は、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子を用いてボトル2の光学像を電気的な画像信号に変換する。カメラ12は、蛍光発光したボトル2を照明装置11による照明方向と同一の側から観察した画像を撮像するように設けられている。カメラ12の撮像範囲は、少なくとも印字部3を含む所定範囲の画像を撮像できるように設定されている。なお、ボトル2は静止していてもよいし、移動していてもよい。例えば、飲料の充填ラインにカメラ12を設置し、カメラ12の撮像範囲にボトル2が達したタイミングでカメラ12に撮像動作を実行させることにより、移動中のボトル2が逐次撮像されてもよい。印字部3等の検査対象の向きが不定である場合には、ボトル2をその中心線の回りに自転させ、印字部3等の検査対象が照明装置11及びカメラ12の側に繰り出される時期に合わせてカメラ12にてボトル2を撮像してもよい。照明装置11は常時点灯でもよいし、カメラ12の撮像動作に同期して照明装置11を点灯させてもよい。
【0015】
フィルタ13は、カメラ12への入射光の波長域に関して、ボトル2にて生じる蛍光の波長域と比較してボトル2を照明する紫外光の波長域が制限されるように入射光の波長域を調整する。フィルタ13の分光特性の具体例は後述する。なお、紫外光の波長域に関する入射の制限は、蛍光の波長域の入射と比較して、入射光の強度を低下させるものであればよく、紫外光の波長域の入射を完全に阻止する態様のみならず、入射光量を相対的に減少させる態様も含む。一方、蛍光の波長域に関しては、検査に必要な光量の蛍光がカメラ12に入射すれば足りる。蛍光の全波長域がフィルタ13を通過してカメラ12に入射するようにフィルタ13の分光特性が設定されてもよいし、蛍光の一部の波長域はフィルタ13によりカメラ12への入射が制限されてもよい。例えば、蛍光の波長域のうち、照明光としての紫外光の波長域に比較的近い短波長側の一部の波長域については、フィルタ13にてその通過を制限し、その制限される波長域よりも長波長側の蛍光についてはフィルタ13を通過してカメラ12に入射させるようにフィルタ13の分光特性が設定されてもよい。
【0016】
以上の構成によれば、照明装置11から発せられる紫外光にてボトル2を照明することにより、ボトル2が蛍光発光する。したがって、ボトル2それ自体を印字部3の検査のための発光源として機能させることができる。ボトル2が発光することにより、ボトル2の内壁に水滴Dや泡が付着していても、それらの水滴等が暗部としてカメラ12の画像に出現するおそれがない。一方、印字部3は蛍光発光しないため、カメラ12の画像には印字部3が暗部として出現する。したがって、水滴等が存在していても、ボトル2の蛍光発光部分と印字部3との明暗差を十分に確保して印字部3を高い精度で検出し、その適否を精度よく検査することが可能である。なお、ボトル2で生じた蛍光がボトル2内の水滴等に反射してカメラ12に入射すると、その水滴等が明部として画像に現れることがある。しかし、印字部3を暗部として検出すればよいので、ボトル2内の水滴等からの反射があっても印字部3の検査精度は損なわれない。
【0017】
一方、ボトル2を紫外光で照明した場合、ボトル2の表面にて紫外光が反射し、その反射光がカメラ12に入射することがある。その場合、印字部3が相対的に明るく映し出されて検査精度が損なわれるおそれがある。フィルタ13は、ボトル2の表面における紫外光の反射の影響を抑えるために設けられている。樹脂製のボトル2を紫外光で照明した場合に生じる蛍光の波長域は、紫外光の波長域よりも長波長側にずれる。そこで、
図1の容器検査装置1では、カメラ12への入射光の波長域に関して、ボトル2にて生じる蛍光の波長域と比較してボトル2を照明する紫外光の波長域が制限されるように入射光の波長域を調整する分光特性(分光感度)を備えたフィルタ13をボトル2とカメラ12との間に配置している。フィルタ13により、ボトル2の表面で生じた反射光(紫外光)のカメラ12への入射を、ボトル2で生じる蛍光のカメラ12への入射と比較して制限することができる。したがって、ボトル2の表面における反射光の影響を抑えつつ、ボトル2の蛍光発光する部分と印字部3との間の画像中の明暗差を十分に確保して検査精度を高めることが可能である。
【0018】
次に、
図2及び
図3を参照して照明装置11の紫外光の波長域等の具体例を説明する。
図2は、ボトル2を照明する紫外光の分光強度と、ボトル2の蛍光発光の分光強度と、フィルタ13の分光感度との関係の一例を示している。
図2の横軸は波長を、縦軸は紫外光及び蛍光の分光強度及びフィルタ13の分光感度をそれぞれ示す。
図3はカメラ12の分光感度の一例を示し、横軸は波長を、縦軸は相対感度をそれぞれ示す。
【0019】
図2に示すように、360nm付近にて分光強度がピークを示す紫外光にてPET樹脂製のボトル2を照明した場合、そのボトル2は、400nm前後の波長から長波長側の可視光域にて蛍光発光する。一方、
図3に示すように、可視光域の画像を撮像する目的で使用される一般的なカメラの分光感度は、550nm付近の感度が最も高い。カメラ12の感度は、長波長側は1000nm付近で、短波長側では400nm付近で実質的に失われる。紫外光の波長域を、320nm付近がピークとなるように設定すれば、より多くの蛍光を得ることが可能である。しかし、その場合は蛍光の波長域も短波長側にシフトし、カメラ12が十分な分光感度を示す波長域に対して蛍光の波長域が外れるおそれがある。したがって、
図2に示すように、照明装置11が発する紫外光の波長域は、360nm~380nmの範囲で分光強度がピークを示すように、好ましくは365nm~375nmの範囲で分光強度がピークを示すように設定することが望ましい。
【0020】
一方、フィルタ13に関しては、例えば400nm付近から長波長側の光線束は通過させ、それよりも短波長側の光線束については通過を制限する分光感度を有するフィルタを用いることができる。以上のように紫外光の波長域、及びフィルタ13の分光感度を設定することにより、ボトル2の表面で反射した紫外光のカメラへの入射を制限しつつ、ボトル2で生じた蛍光はカメラ12に確実に入射させることが可能である。蛍光の波長域が400nmから短波長側まで広がり、その部分の蛍光がフィルタ13にて遮られたとしても、400nm以上の波長域にて十分な強度でボトル2が蛍光発光するため、フィルタ13の分光特性を上記のように設定しても印字部3の検査には支障がない。
【0021】
図1に戻って容器検査装置1の説明を続ける。カメラ12にて撮像された画像に基づいて印字部3を検査するため、容器検査装置1には処理ユニット20が設けられている。処理ユニット20は、一例として、CPU及びその動作に必要な内部記憶装置等を含んだコンピュータユニットとして構成されている。処理ユニット20には、画像処理部21と、検査部22とが設けられている。画像処理部21及び検査部22は、例えば処理ユニット20のハードウエアと、ソフトウエアとしてのコンピュータプログラムとの組み合わせによって実現される論理的装置として設けられてもよいし、LSI等の論理回路を組み合わせた物理的装置として設けられてもよい。
【0022】
画像処理部21は、カメラ12から出力される画像信号を受け取り、検査部22の検査に適した画像処理を施す。例えば、画像処理部21は、画像の明度、コントラスト等の補正処理等を実施してよい。検査部22は、画像処理部21にて処理された画像信号を受け取り、印字部3の適否を所定のアルゴリズムに従って判別する。それにより、検査部22は判別手段の一例として機能する。印字部3の適否を判別するアルゴリズムは、画像中の明暗差を利用して印字部3の適否を判別する限り、適宜に構成されてよい。例えば、検査部22は、カメラ12が撮像した画像中の明暗差を利用して画像を二値化して印字部3を暗部として抽出し、得られた印字部3の画像と、良品の印字部3の画像とを比較して印字部3の適否を判別してもよい。
【0023】
検査部22における検査結果を出力するための手段として、検査ユニット20には、検査結果を表示するモニタ23、あるいは検査結果を記憶する記憶装置24等が適宜に接続されてよい。出力手段としてプリンタが接続されてもよい。さらに、検査ユニット20には、容器検査装置1のオペレータが適宜の指示を入力するためのキーボード、ポインティングデバイスといった各種の入力手段が接続されてよい。
図1では、入力手段の図示が省略されている。
【0024】
以上のように構成された容器検査装置1によれば、ボトル2を蛍光発光させて発光源として機能させるとともに、フィルタ13を用いてボトル2の表面で反射した紫外光のカメラ12への入射を制限することにより、ボトル2それ自体と印字部3との明暗差を十分に確保して、印字部3の適否を精度よく検査することが可能である。
【0025】
上述した容器検査装置1を用いてボトル2の印字部3を撮像した画像の一例を
図4に示す。比較例として、同一のボトル2をその背後から可視光で照明し、照明方向と反対側からカメラ12にて印字部3を撮像した画像を
図5に示す。
図4に示すように、本形態の容器検査装置1によれば、ボトル及びその内部の飲料の泡が画像中に明部として出現する一方、印字部が暗部として画像中に出現していることが理解できる。一方、比較例では、飲料中の泡が比較的暗く映し出されている。したがって、印字部と泡とが重なっている部分で印字部を認識することが困難である。さらに、容器検査装置1を実際の飲料充填ラインに組み込んでその効果を確認したところ、従来の容器検査装置では、水滴等の影響で製造本数に対して20~30%の比率で印字部の適否の誤判定が生じていたところ、印字部の不良判定率を0.06%程度まで低減することができた。不良品と判定されたボトル群には印字不良のボトルも含まれていることから、本形態の容器検査装置1によれば水滴等の影響はほぼ払拭できたと考えられる。
【0026】
本発明は上述した形態に限定されず、適宜の変形又は変更が施された形態にて実施されてよい。例えば、検査対象の容器はPET樹脂製のボトルに限らず、紫外線で照明することにより蛍光発光する容器であれば本発明を適用することが可能である。例えば、ポリプロピレン樹脂、あるいはポリエチレン樹脂製の容器に対して本発明が適用されてもよい。検査対象は印字部に限らず、容器の蛍光発光部分との明暗差を利用して適否を判別可能である限り、容器上の適宜の要素が検査対象として設定されてよい。例えば、紫外光に対して透光性を有するラベルに施された標章等が検査対象として設定されてもよい。
【0027】
上述した実施の形態及び変形例のそれぞれから導き出される本発明の各種の態様を以下に記載する。なお、以下の説明では、本発明の各態様の理解を容易にするために添付図面に図示された対応する構成要素を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0028】
本発明の一態様に係る画像取得装置(10)は、透光性を有する樹脂製の容器(2)を検査するための画像を取得する画像取得装置であって、前記容器を蛍光発光させることが可能な波長域の紫外光により前記容器を照明する照明手段(11)と、蛍光発光した容器を前記紫外光による照明方向と同一の側から観察した画像を撮像する撮像手段(12)と、前記撮像手段への入射光の波長域に関して、前記容器にて生じる蛍光の波長域と比較して前記容器を照明する紫外光の波長域が制限されるように、前記入射光の波長域を調整するフィルタ手段(13)と、を備えたものである。
【0029】
本発明の一態様に係る画像取得方法は、透光性を有する樹脂製の容器(2)を検査するための画像を取得する画像取得方法であって、前記容器を蛍光発光させることが可能な波長域の紫外光を発する照明手段(11)にて前記容器を照明する手順と、蛍光発光した容器を前記照明手段による照明方向と同一の側から観察した画像を撮像手段(12)により撮像する手順と、を含み、前記撮像する手順では、前記撮像手段への入射光の波長域に関して、前記容器にて生じる蛍光の波長域と比較して前記容器を照明する紫外光の波長域が制限されるように、フィルタ手段(13)により前記入射光の波長域を調整するものである。
【0030】
上記態様によれば、容器を蛍光発光させることにより、容器それ自体を撮像手段からみて発光源として機能させることができる。そのため、容器とその表面の検査対象との間に明暗差を生じさせることが可能である。容器を照明する紫外光の波長域に対して蛍光の波長域は長波長側にずれるため、その波長域の差を利用して容器の表面で生じる反射光(紫外光)の撮像手段への入射を制限しつつ、蛍光の波長域の光線束を撮像手段に入射させることができる。したがって、容器表面の反射光の影響を抑えつつ、画像中における容器の蛍光発光部分と検査対象との間に明瞭な明暗差を生じさせ、それにより検査対象の適否を判別するに適した画像を取得することが可能である。
【0031】
上記態様の画像取得装置において、前記照明手段は360~380nmの波長域にてピークを示す紫外光によって前記容器を照明し、前記フィルタ手段は400nmよりも短波長側の波長域に関して前記撮像手段への入射を制限してもよい。また、上記態様の画像取得方法において、前記照明する手順では360~380nmの波長域にてピークを示す紫外光によって前記容器を照明し、前記撮像する手順では前記フィルタ手段により400nmよりも短波長側の波長域に関して前記撮像手段への入射を制限してもよい。これらの態様によれば、容器の表面で生じる紫外光の反射光が画像の明暗差に与える影響を確実に抑えつつ、容器で生じる蛍光の光線束を撮像手段にて確実に捉えて検査対象の検査に適した画像を取得することが可能である。
【0032】
本発明の一態様に係る容器検査装置(1)は、上記態様の画像取得装置(10)と、前記撮像手段(12)が撮像した画像中の明暗差に基づいて、前記容器の表面に設けられた検査対象(3)の適否を判別する判別手段(22)とを備えたものである。
【0033】
本発明の一態様に係る容器検査方法は、上記態様の画像取得方法により画像を取得する手順と、前記撮像手段(12)が撮像した画像中の明暗差に基づいて、前記容器の表面に設けられた検査対象(3)の適否を判別する手順と、を含んだものである。
【0034】
上記の態様によれば、上述した画像取得装置又は方法で得られた画像中の明暗差を利用して容器表面の検査対象の適否を精度よく検査することが可能である。
【0035】
上記態様の容器検査装置及び容器検査方法においては、前記検査対象が、前記容器の表面における印字部(3)であってもよい。これによれば、印字部を画像中に暗部として出現させて、蛍光発光する容器それ自体との間に十分な明暗差を生じさせることが可能である。したがって、印字部の適否を精度よく検査することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 容器検査装置
2 ボトル(容器)
3 印字部(検査対象)
10 画像取得装置
11 照明装置(照明手段)
12 カメラ(撮像手段)
13 フィルタ(フィルタ手段)
20 処理ユニット
22 検査部(判別手段)