(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】PCSK9発現を特徴とする癌の治療のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230126BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230126BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230126BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61P43/00 111
C07K16/46
(21)【出願番号】P 2020572854
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 US2019038882
(87)【国際公開番号】W WO2020005869
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502363490
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュアン - ユアン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、シンチャン
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/087391(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/215590(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/007796(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61P 39/395
A61P 35/00
C07K 16/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCSK9阻害剤と、少なくとも1つの
免疫チェックポイント阻害剤とを含む、癌を治療するための医薬組成物であって、
前記PCSK9阻害剤は、PCSK9に対する拮抗性抗体を含み、
前記少なくとも1つの
免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体を含む、医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの
免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて癌を治療するためのPCSK9阻害剤を含む医薬組成物であって、
前記PCSK9阻害剤は、PCSK9に対する拮抗性抗体を含み、
前記少なくとも1つの
免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体を含む、医薬組成物。
【請求項3】
PCSK9阻害剤と組み合わせて癌を治療するための少なくとも1つの
免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物であって、
前記PCSK9阻害剤は、PCSK9に対する拮抗性抗体を含み、
前記少なくとも1つの
免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
前記PCSK9阻害剤が、前記少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤の投与前、投与後または同時に投与される、請求項1~3の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤が、更に、抗PDL1抗体、抗CTLA4抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、抗TIGIT抗体およびそれらの組合せからなる群から選択される抗体を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記
PCSK9に対する拮抗性抗体が、レパーサ(登録商標)(Amgen 145およびエボロクマブとしても知られている)、プラルエント(登録商標)(REGN 727[Regeneron]およびSAR236553[Sanofi]としても知られている)、LY3015014(フロボシマブ[Lilly]としても知られている)、RN316(ボコシズマブ[Pfizer]としても知られている)、1D05-IgG2[Merck]、1B20[Merck]、RG7652[Roche/Genentech]、LGT209[Novartis]、またはMEDI-4166[Astrazeneca]である、
請求項1~5の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記PCSK9阻害剤が二重特異性抗体を含み、前記二重特異性抗体の一方のアームがPCSK9に対して拮抗的であり、他方のアームが少なくとも1つの免疫チェックポイントタンパク質に対して拮抗的である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記PCSK9阻害剤が二重特異性抗体を含み、前記二重特異性抗体の一方のアームがPCSK9に対して拮抗的であり、他方のアームが免疫刺激標的に対して作動的である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記免疫刺激標的が、1BB、OX40およびICOSからなる群から選択される、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記
PCSK9に対する拮抗性抗体が、レパーサ(登録商標)(Amgen 145およびエボロクマブとしても知られている)、またはプラルエント(登録商標)(REGN 727[Regeneron]としても知られている)である、請求項
6
に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/689,288号明細書および2018年11月26日に出願された米国仮特許出願第62/771,293号明細書の優先権を主張し、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本開示の主題は、PCSK9発現の阻害を介して癌を治療する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、癌治療では、免疫チェックポイント阻害剤療法の出現が主な進歩の1つである。免疫チェックポイントの阻害は、黒色腫、肺癌、膀胱癌などを含む多くの種類の癌に効果的であることが実証されている。しかし、それらの大きな成功にもかかわらず、免疫チェックポイント阻害剤は癌患者の10~30%に有効であるにとどまる。とはいえ、免疫チェックポイント療法に応答する患者のサブセットに観察される持続的な成功は前例のないものであり、癌免疫療法の大きな可能性を実証している。したがって、既存の免疫チェックポイント阻害剤を補完するか、それと相乗し得る追加の分子標的を見出す緊急の必要があることは明らかである。
【発明の概要】
【0004】
「発明の概要」は、以下の「発明を実施するための形態」でさらに説明される、選択された概念に触れるために提供される。この「発明の概要」は、主張された主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、主張された主題の範囲を限定する助けとして使用されることを意図するものでもない。
【0005】
本開示は、部分的に、PCSK(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型前駆体)が癌治療の新規の標的であるという本発明者らによる発見に基づいている。PCSK9は、肝細胞および他の細胞型のLDL-R(低密度リポタンパク質受容体)レベルの調節に重要な役割を果たすことが知られている分泌タンパク質である。PCSK9は、LDL-Rに結合し、宿主細胞内でその分解を促進することにより、LDL-Rを負に調節する。これまで、PCSK9遺伝子内の変異は、それらがPCSK9のLDL-R分解機能を増強するか減弱するかに応じて、LDL血中濃度を劇的に増加または低下させ得ることが分かっていた。PCSK9の枯渇はまた、腫瘍細胞の表面でMHC-I発現の顕著な増加を引き起こし、これにより、細胞傷害性T細胞の強力な腫瘍内浸潤が促進される。
【0006】
本発明の一実施形態では、個体の癌を治療するための方法は、治療有効量のPCSK9阻害剤を個体に投与することを含み得る。
【0007】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対する拮抗性抗体であり得る。好ましい実施形態では、拮抗性抗体は、レパーサ(登録商標)(Amgen 145およびエボロクマブとしても知られている)、プラルエント(登録商標)(REGN 727[Regeneron]およびSAR236553[Sanofi]としても知られている)、LY3015014(フロボシマブ(Frovocimab)[Lilly]としても知られている)、RN316(ボコシズマブ[Pfizer]としても知られている)、J10[Pfizer]、J16[Pfizer]、J17[Pfizer]、1D05-IgG2[Merck]、1B20[Merck]、RG7652[Roche/Genentech]、LGT209[Novartis]、またはMEDI-4166[Astrazeneca]であり得る。
【0008】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、二重特異性抗体であり得、二重特異性抗体の一方のアームは、PCSK9に対して拮抗的であり、他方のアームは、少なくとも1つの免疫チェックポイントタンパク質に対して拮抗的である。
【0009】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つの免疫チェックポイントタンパク質は、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、TGF-βおよびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0010】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、二重特異性抗体であり得、二重特異性抗体の一方のアームは、PCSK9に対して拮抗的であり、他方のアームは、免疫刺激標的に対して作動的(agonistic)である。
【0011】
本発明の別の実施形態では、免疫刺激標的は、1BB、OX40およびICOSからなる群から選択され得る。
【0012】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、融合タンパク質であり得る。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、アネキシンA2融合タンパク質またはアネキシンA2-Fc融合タンパク質であり得る。
【0013】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤はアドネクチンであり得る。好ましい実施形態では、アドネクチンは、BMS0962476[Bristol Myers Squib]であり得る。
【0014】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対する単一ドメイン抗体であり得る。
【0015】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、EDF-Aドメイン模倣ペプチドであり得る。
【0016】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対するRNAi、Alnylam/ALN-PCS02に対するRNAiであり得る。
【0017】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対するRNAi、Alnylam/The Medicines Company/ALN-PCSsc/インクリシラン(Inclisaran)であり得る。
【0018】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。好ましい実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ISIS394814、SPC4061[Santaris-Pharma]またはPSC5011[Santaris-Pharma]であり得る。
【0019】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対するペプチド系ワクチンであり得る。好ましい実施形態では、ペプチド系ワクチンは、AT04A[Affiris]、またはWIPO特許出願公開番号WO2011/027257に記載されているものなどの他のPCSK9ワクチンであり得る。
【0020】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、低分子阻害剤であり得る。好ましい実施形態では、低分子阻害剤は、SX-PCSK9[Serometrix]、またはWIPO特許出願公開番号WO2014/150395に記載されているものなどの他の低分子PCSK9阻害剤であり得る。
【0021】
本発明の別の実施形態では、該方法は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を個体に投与することをさらに含み得る。
【0022】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤の投与前に投与され得る。
【0023】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤の投与後に投与され得る。
【0024】
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と同時に投与され得る。
【0025】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗CTLA4抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、抗TIGIT抗体およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0026】
本発明の別の実施形態では、該方法は、放射線療法、従来の化学療法、または標的化学療法からなる群から選択される抗癌治療を個体に投与することをさらに含み得る。
【0027】
本発明の別の実施形態では、該方法は、血管新生因子の少なくとも1つの阻害剤を個体に投与することをさらに含み得る。
【0028】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つの血管新生因子は、VEGFの阻害剤、VEGFR1の阻害剤、VEGFR2の阻害剤、TEKの阻害剤およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0029】
本発明の別の実施形態では、血管新生因子の少なくとも1つの阻害剤は、低分子を含む。
【0030】
本発明の別の実施形態では、血管新生因子の少なくとも1つの阻害剤は、抗体を含む。
【0031】
本発明の別の実施形態では、血管新生因子の少なくとも1つの阻害剤は、融合タンパク質を含む。
【0032】
本発明の別の実施形態では、癌は、PCSK9を発現する固形腫瘍であり得る。
【0033】
本発明の別の実施形態では、癌は、PCSK9を発現する血液由来癌(blood-borne cancer)であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】B26F10および4T1腫瘍細胞に対するPCSK9のノックアウトの成功を示すウエスタンブロットである。(a)PCSK9細胞をノックアウトするために使用された2つのsgRNAの配列;(b)sgRNA配列を組換えレンチウイルスベクターにクローニングし、B16F10および4T1細胞にそれぞれ感染させるために使用した。
【0035】
【
図2】腫瘍増殖に対するPCSKノックアウトの効果を示す画像およびグラフである:(a)C57/BL/6マウスのB16F10モデルにおいて有意に遅延した腫瘍増殖;(b)4T1腫瘍モデルにおいて有意に減弱した腫瘍増殖。
【0036】
【
図3】PCSK9抗体レパーサ(登録商標)による、B16F10黒色腫モデルにおけるPD1抗体に基づく免疫チェックポイント阻害剤療法の増強を示す画像およびグラフである。
【0037】
【
図4A】PCSK9欠乏によって誘発された腫瘍増殖抑制を示す画像およびグラフである。
【
図4B】PCSK9欠乏によって誘発された腫瘍増殖抑制を示す画像およびグラフである。
【
図4C】PCSK9欠乏によって誘発された腫瘍増殖抑制を示す画像およびグラフである。
【
図4D】PCSK9欠乏によって誘発された腫瘍増殖抑制を示す画像およびグラフである。
【
図4E】PCSK9欠乏によって誘発された腫瘍増殖抑制を示す画像およびグラフである。
【
図4F】PCSK9欠乏によって誘発された腫瘍増殖抑制を示す画像およびグラフである。
【
図4G】PCSK9欠乏によって誘発された腫瘍増殖抑制を示す画像およびグラフである。
【
図4H】PCSK9欠乏によって誘発された腫瘍増殖抑制を示す画像およびグラフである。
【0038】
【
図5A】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5B】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5C】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5D】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5E】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5F】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5G】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5H】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5I】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5J】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【
図5K】PCSK9阻害が抗PD1療法に対する腫瘍抵抗性を克服することを示す画像およびグラフである。
【0039】
【
図6A】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【
図6B】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【
図6C】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【
図6D】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【
図6E】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【
図6F】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【
図6G】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【
図6H】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【
図6I】最初の腫瘍接種が治癒したマウスに対する再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す画像およびグラフである。
【0040】
【
図7A】B16F10腫瘍への全体的なリンパ球浸潤の免疫蛍光染色を示す画像およびグラフである。
【
図7B】B16F10腫瘍への全体的なリンパ球浸潤の免疫蛍光染色を示す画像およびグラフである。
【
図7C】B16F10腫瘍への全体的なリンパ球浸潤の免疫蛍光染色を示す画像およびグラフである。
【
図7D】B16F10腫瘍への全体的なリンパ球浸潤の免疫蛍光染色を示す画像およびグラフである。
【
図7E】B16F10腫瘍への全体的なリンパ球浸潤の免疫蛍光染色を示す画像およびグラフである。
【0041】
【
図8A】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8B】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8C】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8D】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8E】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8F】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8G】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8H】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8I】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8J】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8K】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8L】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8M】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8N】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【
図8O】PCSK9枯渇が腫瘍内T細胞浸潤およびCTL活性を増強することを示す画像およびグラフである。
【0042】
【
図9A】PCSK9欠乏腫瘍の増殖遅延を媒介する際の様々な免疫エフェクター細胞(immunoeffector cell)の役割に関するデータを示す画像およびグラフである。
【
図9B】PCSK9欠乏腫瘍の増殖遅延を媒介する際の様々な免疫エフェクター細胞の役割に関するデータを示す画像およびグラフである。
【
図9C】PCSK9欠乏腫瘍の増殖遅延を媒介する際の様々な免疫エフェクター細胞の役割に関するデータを示す画像およびグラフである。
【
図9D】PCSK9欠乏腫瘍の増殖遅延を媒介する際の様々な免疫エフェクター細胞の役割に関するデータを示す画像およびグラフである。
【
図9E】PCSK9欠乏腫瘍の増殖遅延を媒介する際の様々な免疫エフェクター細胞の役割に関するデータを示す画像およびグラフである。
【
図9F】PCSK9欠乏腫瘍の増殖遅延を媒介する際の様々な免疫エフェクター細胞の役割に関するデータを示す画像およびグラフである。
【0043】
【
図10A】PCSK9が腫瘍細胞内でMHC-Iのリソソーム媒介性分解を促進することを示す画像およびグラフである。
【
図10B】PCSK9が腫瘍細胞内でMHC-Iのリソソーム媒介性分解を促進することを示す画像およびグラフである。
【
図10C】PCSK9が腫瘍細胞内でMHC-Iのリソソーム媒介性分解を促進することを示す画像およびグラフである。
【
図10D】PCSK9が腫瘍細胞内でMHC-Iのリソソーム媒介性分解を促進することを示す画像およびグラフである。
【
図10E】PCSK9が腫瘍細胞内でMHC-Iのリソソーム媒介性分解を促進することを示す画像およびグラフである。
【
図10F】PCSK9が腫瘍細胞内でMHC-Iのリソソーム媒介性分解を促進することを示す画像およびグラフである。
【
図10G】PCSK9が腫瘍細胞内でMHC-Iのリソソーム媒介性分解を促進することを示す画像およびグラフである。
【
図10H】PCSK9が腫瘍細胞内でMHC-Iのリソソーム媒介性分解を促進することを示す画像およびグラフである。
【0044】
【
図11A】マウスまたはヒトの腫瘍組織内のPCSK9とMHCまたはHLAとの間の関係に関するデータを示す画像およびグラフである。
【
図11B】マウスまたはヒトの腫瘍組織内のPCSK9とMHCまたはHLAとの間の関係に関するデータを示す画像およびグラフである。
【
図11C】マウスまたはヒトの腫瘍組織内のPCSK9とMHCまたはHLAとの間の関係に関するデータを示す画像およびグラフである。
【
図11D】マウスまたはヒトの腫瘍組織内のPCSK9とMHCまたはHLAとの間の関係に関するデータを示す画像およびグラフである。
【0045】
【
図12】B16F10腫瘍内の抗PD1治療に対するH2-K1過剰発現の影響を示す画像およびグラフである。
【0046】
【
図13】PCSK9とH2-K1タンパク質との間のエピスタシス関係の検討、および免疫適格性C57BL/6マウスにおけるB16F10腫瘍の増殖に対するそれらの影響を示す画像およびグラフである。
【0047】
【
図14】B16F10黒色腫細胞の細胞表面MHC-I発現と腫瘍形成能とを決定する際のPCSK9とLDLRとの間の関係の検討を示す画像およびグラフである。
【0048】
【
図15】ヒト肝細胞癌(LIHC)、膵臓腺癌(PAAD)、皮膚黒色腫(SKCM)、ブドウ膜黒色腫(UVM)、ヒト膀胱尿路上皮癌(BLCA)、肺腺癌(LUAD)、腎明細胞癌(KIRC)、乳頭状腎細胞癌(kidney renal papillary cell carcinoma)(KIRP)および卵巣癌(OV)におけるPCSK9 mRNAレベルと生存率との間の相関を示すグラフである。
【0049】
【
図16】リソソーム内のPCSK9媒介性MHC-I分解を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の記述では、説明を目的として、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示されている。当業者であれば、本発明の実施形態が、これらの特定の詳細を用いることなく、または同等の構成を用いて実施され得ることを認識するであろう。他の例では、本発明の実施形態を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造および装置がブロック図の形態で示されている。
【0051】
本開示の主題は、さらに広範囲の発明の主題の1つ以上の特定の実施形態の理解を提供するのに十分な詳細とともに提示されている。説明は、本発明の主題を明示的に説明された実施形態および特徴に限定することなく、それらの特定の実施形態の特定の特徴を解説し、例示する。これらの説明を考慮した考察であれば、本開示の主題の範囲から逸脱することなく、追加の同様の実施形態および特徴をもたらす可能性が高い。
【0052】
定義
本明細書で使用される場合、「治療」、「療法」および/または「治療レジメン」は、患者が呈するか患者が感受性であり得る疾患、障害または生理学的状態に応答して行われる臨床的介入を指す。治療の目的には、症状の緩和または予防、疾患、障害または状態の進行または悪化の遅延または停止、および/または疾患、障害または状態の寛解が含まれる。
【0053】
用語「有効量」または「治療有効量」は、有益なまたは望ましい生物学的および/または臨床的結果をもたらすのに十分な量を指す。
【0054】
本明細書で使用される用語「対象」および「患者」は、本明細書では区別なく使用され、ヒトおよび非ヒト動物の両方を指す。本開示の用語「非ヒト動物」は、あらゆる脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0055】
本明細書で使用される用語「疾患」は、限定するものではないが、生物の一部に影響を与える構造または機能の異常な状態および/または障害を含む。これは、感染症などの外的要因によって、または癌、癌転移などの内的機能障害によって引き起こされ得る。
【0056】
当技術分野で公知のように、癌は、一般に、制御されていない細胞増殖と考えられる。本開示の方法は、PCSK9の発現を特徴とする任意の癌およびその任意の転移を治療するために使用することができる。そのような癌には、限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病が含まれる。そのような癌のさらに具体的な例には、乳癌、前立腺癌、結腸癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、子宮頸癌(cervical cancer)、胃腸癌、膵癌、神経膠芽腫、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸直腸癌、子宮頸癌(uterine cervical cancer)、子宮内膜癌、唾液腺癌、中皮腫、腎癌、外陰癌、膵癌、甲状腺癌、肝細胞癌、皮膚癌、黒色腫、脳癌、神経芽細胞腫、骨髄腫、様々な種類の頭頸部癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫および末梢性神経上皮腫が挙げられる。いくつかの実施形態では、癌は、PCSK9を発現する固形腫瘍を含む。他の実施形態では、癌は、PCSK9を発現する血液由来癌を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、「プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9」または「PCSK9」は、阻害剤の投与時または投与後に対象内のPCSK9の正常な活性を低下させることができる任意の分子を指すことを意味する。PCSK9は、LDLコレステロール(LDL-C)代謝に重要なタンパク質である。PCSK9は、LDL受容体(LDLR)の分解に重要な役割を果たす。LDL代謝では、LDLRは循環血液中のLDLに結合し、リソソーム分解のために、クラスリンにより被覆された穴にLDLを内在化する。LDLの内在化に続いて、LDLRは原形質膜に戻され、そこでさらに多くのLDLに結合することができる。この過程は連続的に繰り返される。ただし、LDLRのPCSK9分解は、膜へのLDLRの再循環を妨げ、その結果、血液からのLDLクリアランスを低下させる。したがって、PCSK9は、LDL-Cの減少を促進するための阻害のための重要な標的を有し、ひいては、高コレステロール血症および関連する心血管疾患の治療のための治療標的を有する。PCT7US2008/056316には、PCSK9の結晶構造が記載された。さらに、PCT/IB2004/001686は、高コレステロール血症に関連するヒトPCSK9遺伝子の変異を記載している。PCSK9は、LDL-C代謝経路の一部である。
【0058】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0059】
方法
本開示は、部分的に、PCSK(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型前駆体)が癌治療の新規の標的であるという本発明者らによる発見に基づいている。PCSK9は、肝細胞および他の細胞型のLDL-R(低密度リポタンパク質受容体)レベルの調節に重要な役割を果たすことが知られている分泌タンパク質である。PCSK9は、LDL-Rに結合し、宿主細胞内でその分解を促進することにより、LDL-Rを負に調節する。これまで、PCSK9遺伝子内の変異は、それらがPCSK9のLDL-R分解機能を増強するか減弱するかに応じて、LDL血中濃度を劇的に増加または低下させ得ることが分かっていた。
【0060】
本発明の一実施形態では、個体の癌を治療するための方法は、治療有効量のPCSK9阻害剤を個体に投与することを含み得る。本発明のさらに別の実施形態では、該方法は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を個体に投与することをさらに含み得る。
【0061】
抗体
いくつかの実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対する拮抗性抗体を含み得る。抗体は、モノクローナル、ポリクローナル、単一ドメインまたはそれらの断片であり得る。本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」または「MAb」は、実質的に均質な抗体の集団(すなわち、いくつかの自然発生変異は例外である可能性があるが、個々の抗体が互いに同一である場合)由来の抗体を指すことを意味する。MAbは高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものであり、多くの場合、抗原上の単一の決定基に対するものである。抗体はさらにヒト化され得る。本明細書で使用される場合、「ヒト化」抗体は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むそれらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合部分配列など)である非ヒト(例えば、齧歯類)抗体の形態を指すことを意味する。多くのヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0062】
いくつかのPCSK9拮抗性/阻害抗体(およびその断片)は、以下のような特許文献に記載されており、本明細書で提供される方法に使用するのに好適であり得る:MERCK/SCHERING CORP.(PCT/US2008/08131 1);SCHERING CORP.(PCT/US201 1/056649);REGENERON PHARMACEUTICALS,INC.(PCT/US2012/054756;PCT/US2012/048574;PCT/US2009/068013);SANOFI(PCT/EP2012/051318;PCT/EP2012/051320;PCT/EP2012/051321);ELI LILLY AND COMPANY(PCT/US2012/054737);AFFIRIS AG(PCT/EP2012/067950);PFIZER(PCT/IB2012/053534;PCT/IB2012/050924;PCT/IB2010/053784);NOVARTIS AG(PCT/EP2012/061045;PCT/US2012/041214;PCT/EP2008/054417);IRM LLCおよびNOVARTIS AG(PCT7US2012/024633;PCT/US2010/059959);GENENTECH INC.およびHOFFMANN LA ROCHE(PCT/US201 1/024633);MERCK SHARP&DOHME(PCT/US2010/054714;PCT/US2010/054640;PCT/US2010/048849);RINAT NEUROSCIENCE CORP/PFIZER(PCT/IB2009/053990);MERCK&CO INC.(PCT/US2009/033369;PCT/US2009/033341;PCT/US2007/023223;PCT/US2007/023213;PCT/US2007/023212;PCT/US2007/023169);ならびにAMGEN INC.(PCT/US2008/074097)。他の実施形態では、本発明の方法によるPCSK9に対する拮抗性抗体には、限定するものではないが、レパーサ(登録商標)(Amgen 145およびエボロクマブとしても知られている)、プラルエント(登録商標)(REGN 727[Regeneron]およびSAR236553[Sanofi]としても知られている)、LY3015014(フロボシマブ[Lilly]としても知られている)、RN316(ボコシズマブ[Pfizer]としても知られている)、J10[Pfizer]、J16[Pfizer]、J17[Pfizer]、1D05-IgG2[Merck]、1B20[Merck]、RG7652[Roche/Genentech]、LGT209[Novartis]およびMEDI-4166[Astrazeneca]が含まれる。
【0063】
別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、二重特異性抗体を含み得る。一実施形態では、二重特異性抗体は、PCSK9に対して拮抗的である一方のアームと、少なくとも1つの免疫チェックポイントタンパク質に対して拮抗的である他方のアームとを含み得る。好適な免疫チェックポイントタンパク質には、限定するものではないが、PD1、PDL1、CTLA4、LAG3、TIM3、TIGIT、TGF-βおよびそれらの組合せが含まれる。
【0064】
別の実施形態では、二重特異性抗体は、PCSK9に対して拮抗的である一方のアームと、免疫刺激標的に対して作動的である他方のアームとを含み得る。好適な免疫刺激標的には、限定するものではないが、1BB、OX40およびICOSが含まれる。
【0065】
融合タンパク質
別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、融合タンパク質を含み得る。融合タンパク質またはキメラタンパク質とは、別個のタンパク質を元々コードしていた2つ以上の遺伝子の結合によって作成されたタンパク質を指す。一実施形態では、PCSK9阻害剤は、アネキシンA2融合タンパク質を含み得る。別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、アネキシンA2-Fc融合タンパク質を含み得る。
【0066】
アドネクチン
別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、アドネクチンを含み得る。本明細書で使用される用語「アドネクチン」は、第10のフィブロネクチンIII型ドメインに基づいており、治療に関連する標的に高い親和性および特異性で結合するように設計された治療用タンパク質を指す。好適な例には、限定するものではないが、PCSK9阻害剤BMS-962476(Bristol Myers Squibb)が挙げられる。
【0067】
RNAi
PCSK9阻害分子は、RNAiをさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「RNAi」は、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)法を含め、当技術分野で公知の遺伝子サイレンシング法のいずれかを含むことを意味する。これらには、限定するものではないが、マイクロRNA(miRNA);低分子干渉(siRNA);低分子ヘアピンRNA(shRNA);プライマリーマイクロRNA(pri-miRNA);非対称干渉RNA(aiRNA);低分子内部セグメント化干渉RNA(sisiRNA);メロデュプレックスRNA(mdRNA);RNA-DNAキメラ二重鎖;トランスキングダムRNA(tkRNA);tRNA-shRNA;タンデムsiRNA(tsiRNA);タンデムヘアピンRNA(thR A);pri-miRNA模倣クラスター(pri-miRNA mimic cluster);および転写遺伝子サイレンシング(TGS)のうちの任意の1つ以上が含まれ得る。一実施形態では、PCSK9阻害剤は、EDF-Aドメイン模倣ペプチドを含み得る。別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対するRNAi、Alnylam/ALN-PCS02を含み得る。さらに別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対するRNAi、Alnylam/The Medicines Company/ALN-PCSsc/インクリシランを含み得る。
【0068】
オリゴヌクレオチド
他の実施形態では、PCSK9阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含み得る。例には、Isis Pharmaceuticals/Bristol-Myers Squibb製のPCSK9アンチセンスオリゴヌクレオチド(ISIS 394814;BMS-PCSK9Rx)が挙げられる同様に、Santaris Pharma製のロック核酸(SPC4061;SPC5011;LNA ASO)は、マウスのPCSK9 mRNAレベルを低下させた。LNA ASOは、ヒトおよびマウスのPCSK9 mRNA(アクセッション番号NM174936およびNM153565)に相補的であり、以下の配列、すなわちGTctgtggaaGCG(大文字はLNA、小文字はDNA)と、ホスホロチオアートヌクレオシド間結合とを有する13ヌクレオチドの長いギャップマーである。Alnylam Pharmaceuticalsは、PCSK9の阻害に関するsiRNA(ALN-PCS)の臨床試験で肯定的な結果を示している。いくつかのPCSK9阻害性オリゴヌクレオチドは、以下のような特許文献に記載されており、本開示の範囲内にある:SANTARIS PHARMA A/S(PCT/EP2007/060703;PCT/EP2009/054499;PCT/EP2010/059257);ISIS PHARMACEUTICAL INC.(PCT/US2007/068404);SIRNA THERAPEUTICS INC.(PCT/US2007/073723);ALNYLAM PHARMACEUTICALS INC.(PCT/US201 1/058682;PCT/US2010/047726;PCT/US2010/038707;PCT/US2009/032743;PCT/US2007/068655);RXI PHARMACEUTICALS CORP.(PCT/US2010/000019)INTRADIGM CORP.(PCT/US2009/036550);およびNASTECH PHARM CO.(PCT/US2008/055554)。
【0069】
ペプチド系ワクチン
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、PCSK9に対するペプチド系ワクチンであり得る。好ましい実施形態では、ペプチド系ワクチンは、AT04A[Affiris]、またはWIPO特許出願公開番号WO2011/027257に記載されているものなどの他のPCSK9ワクチンであり得る。
【0070】
低分子
本発明の別の実施形態では、PCSK9阻害剤は、低分子阻害剤であり得る。好ましい実施形態では、低分子阻害剤は、SX-PCSK9[Serometrix]、またはWIPO特許出願公開番号WO2014/150395に記載されているものなどの他の低分子PCSK9阻害剤であり得る。上記の説明および図面は例示的なものであり、本発明を開示された正確な形態に限定するものと解釈されるべきではない。関連技術の当業者であれば、上記の開示に照らして多くの修正および変形が可能であることを理解することができる。本開示の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が説明されている。ただし、特定の例では、説明を曖昧にすることを避けるために、周知のまたは従来の詳細は説明されていない。
【0071】
ペプチド
PCSK9を阻害するために、PCSK9に結合するLDLRのEGFAドメインを模倣するペプチドが開発されている。同様に、EGF-Aペプチド、PCSK9に結合するフィブロネクチン系足場ドメインタンパク質、およびPCSK9変異体(例えば、Pro/Catドメインを有する)の中和が開発されており、これらはいずれもPCSK9活性を阻害することが示されている。いくつかのPCSK9阻害ペプチドは、以下のような特許文献に記載されており、本開示の範囲内にある:SCHERING CORP.(PCT US2009/044883);GENENTECH INC.およびHOFFMANN LA ROCHE(PCT US2012/043315);SQUIBB BRISTOL MYERS CO.(PCT/US201 1/032231;PCT/US2007/015298);ANGELETTI P 1ST RICHERCHE BIO(PCT/EP2011/054646);ならびにAMGEN INC.(PCT/US2009/034775)。
【0072】
治療的投与および医薬製剤
本発明による治療用組成物の投与は、好適な担体、賦形剤、および改善された伝達、送達、忍容性などを提供するために製剤に組み込まれる他の薬剤とともに投与され得る。あらゆる医薬品化学者に公知の処方集、すなわち、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pa.に、多数の適切な製剤を見出すことができる。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(登録商標)など)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油および油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含有する半固体混合物を含む。例えば、Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311を参照されたい。
【0073】
用量は、投与される対象の年齢および寸法、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。本開示のPCSK9阻害剤が、成人患者に対して、癌などを含め、PCSK9に関連する様々な状態および疾患を治療するために使用される場合、本開示のPCSK9阻害剤を通常、約0.01~約20mg/kg体重、さらに好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5または約0.05~約3mg/kg体重の単回用量で静脈内投与することが有利であり得る。状態の重症度に応じて、治療の頻度および持続期間を調整してもよい。
【0074】
様々な送達系、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル内のカプセル化、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体を介したエンドサイトーシス(例えば、Wu et al.(1987)J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照)が公知であり、本開示の医薬組成物を投与するために使用され得る。導入の方法には、限定するものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が含まれ得る。組成物は、任意の都合の良い経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与されてもよく、他の生物学的に活性な薬剤とともに投与されてもよい。投与は全身的または局所的であり得る。
【0075】
医薬組成物はまた、小胞、特にリポソーム内で送達され得る(例えば、Langer(1990)Science 249:1527-1533;Treat et al.(1989)in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365;Lopez-Berestein、同書、pp.317-327を参照;全体的に同書を参照)。
【0076】
特定の実施形態では、医薬組成物は、制御放出系で送達され得る。一実施形態では、ポンプが使用され得る(Langer、上記;Sefton(1987)CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施形態では、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974)に記載されているポリマー材料が使用され得る。さらに別の実施形態では、制御放出系が組成物の標的の近くに配置されてもよく、したがって、全身用量のごく一部しか必要とされない(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115-138,1984を参照)。
【0077】
本発明の他の実施形態では、注射可能な調製物は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含み得る。これらの注射可能な調製物は、公に知られている方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射に従来使用される無菌の水性媒体または油性媒体に、上記のPCSK9阻害剤(例えば、拮抗性抗体またはその塩)を溶解、懸濁または乳化することによって調製され得る。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張液などがあり、これらは、適切な可溶化剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルバート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などと組み合わせて使用され得る。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが使用され、これらは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用され得る。このように調製された注射剤は、好ましくは適切なアンプルに充填される。本開示の医薬組成物は、標準的な針および注射器を用いて皮下または静脈内送達され得る。さらに、皮下送達に関して、ペン送達装置は、本開示の医薬組成物の送達に容易に適用される。そのようなペン送達装置は、再使用可能または使い捨てであり得る。再使用可能なペン送達装置は、一般に、医薬組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物が残らず投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に廃棄され、医薬組成物を含む新しいカートリッジと交換され得る。その後、ペン送達装置は再使用され得る。使い捨てペン送達装置には、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン送達装置は、装置内のリザーバに保持された医薬組成物によって予め充填されていてもよい。リザーバ内の医薬組成物が空になると、装置全体が廃棄されてもよい。
【0078】
多数の再使用可能なペン送達装置および自動注射器送達装置が、本開示の医薬組成物の皮下送達に適用される。例には、確実に限定するものではないが、AUTOPEN(登録商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(登録商標)pen(Disetronic Medical Systems,Burghdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(登録商標)pen、HUMALOG(登録商標)pen、HUMALIN 70/30(登録商標)pen(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,Ind.)、NOVOPEN(登録商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(登録商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(登録商標)pen(Becton Dickinson,Franklin Lakes,N.J.)、OPTIPEN(登録商標)、OPTIPEN PRO(登録商標)、OPTIPEN STARLET(登録商標)、ならびにOPTICLIK(登録商標)(sanofi-aventis,Frankfurt,Germany)が挙げられるが、ここに挙げた例はわずかに過ぎない。本開示の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てペン送達装置の例には、確実に限定するものではないが、SOLOSTAR(登録商標)pen(sanofi-aventis)、FLEXPEN(登録商標)(Novo Nordisk)およびKWIKPEN(登録商標)(Eli Lilly)が挙げられる。
【0079】
有利には、上記の経口または非経口使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適合するのに適した単位用量の剤形に調製される。単位用量のそのような剤形には、例えば、錠剤、丸薬、カプセル、注射(アンプル)、坐剤などが含まれる。
【0080】
投与量
本発明のいくつかの方法に従って個体に投与されるPCSK9阻害剤の量は、一般に、治療有効量であり得る。抗体を含むPCSK9阻害剤の場合、治療有効量は、約0.05mg~約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mgまたは約600mgのPCSK9阻害剤であり得る。
【0081】
個々の用量に含有されるPCSK9阻害剤の量は、患者の体重1キログラム当たりの抗体のミリグラム数(すなわち、mg/kg)で表され得る。例えば、抗PCSK9抗体は、約0.0001~約10mg/kg患者体重の用量で患者に投与され得る。
【0082】
投与レジメン
本発明の特定の実施形態によれば、定義された時間経過にわたって、PCSK9阻害剤の複数用量を対象に投与してもよい。本発明のこの態様による方法は、対象に複数用量のPCSK9阻害剤を連続投与することを含み得る。本明細書で使用される場合、「連続投与」は、PCSK9阻害剤の各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、時間、日、週または月)によって隔てられた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本発明は、PCSK9阻害剤の単一の初期用量、続いてPCSK9阻害剤の1つ以上の二次用量、および場合によりPCSK9阻害剤の1つ以上の三次用量を患者に連続投与することを含み得る方法を含む。
【0083】
用語「初期用量」、「二次用量」および「三次用量」は、PCSK9阻害剤の投与の時間的順序を指す。したがって、「初期用量」は、治療レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)であり、「二次用量」は、初期用量の後に投与される用量であり、「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初期用量、二次用量および三次用量はいずれも同じ量のPCSK9阻害剤を含有し得るが、一般に、投与頻度の点で互いに異なる。ただし、特定の実施形態では、初期用量、二次用量および/または三次用量に含有されるPCSK9阻害剤の量は、治療の過程中に互いに変化する(例えば、必要に応じて上下に調整される)。
【0084】
本開示の特定の例示的な実施形態では、各二次用量および/または三次用量は、直前の用量の1~30(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30またはそれ以上)日後、または直前の用量の1~12(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれ以上)週間後に投与される。本明細書で使用される「直前の用量」という語句は、複数投与の順序では、その順序の次の用量の投与の前に患者に投与されるPCSK9阻害剤の用量を意味し、介在する用量は存在しない。
【0085】
本発明のこの態様による方法は、任意の数の二次用量および/または三次用量のPCSK9阻害剤を患者に投与することを含み得る。例えば、特定の実施形態では、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施形態では、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
【0086】
複数の二次用量を含む実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~12週間後に患者に投与され得る(例えば、週1回[Q1W]、2週間に1回[Q2W]、3週間に1回[Q3W]、4週間に1回[Q4W]、6週間に1回[Q6W]、8週間に1回[Q8W]など)。同様に、複数の三次用量を含む実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各三次用量は、直前の用量の1~12週間後に患者に投与され得る(例えば、週1回[Q1W]、2週間に1回[Q2W]、3週間に1回[Q3W]、4週間に1回[Q4W]、6週間に1回[Q6W]、8週間に1回[Q8W]など)。あるいは、二次用量および/または三次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの過程にわたって変化し得る。投与の頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師による治療の過程で調整され得る。
【0087】
併用療法および補助療法
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、本開示の医薬組成物の投与時または投与直前に癌の治療のための抗癌治療レジメンを受けている患者に、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物を投与することを含み得る。例えば、以前にPCSK9発現を特徴とする癌(例えば、固形腫瘍または血液由来癌)と診断された患者が、PCSK9阻害剤を含む医薬組成物の投与の前および/または投与と同時に、別の薬剤の安定した治療レジメンを処方され、服用している場合がある。例えば、一実施形態では、PCSK9阻害剤は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、抗癌治療、および/または血管新生因子の阻害剤と同時に投与され得る。他の実施形態では、PCSK9阻害剤は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、抗癌治療、および/または血管新生因子の阻害剤の投与前に投与され得る。さらに他の実施形態では、PCSK9阻害剤は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤、抗癌治療、および/または血管新生因子の阻害剤の投与後に投与され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗CTLA4抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、抗TIGIT抗体およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0089】
別の実施形態では、抗癌治療は、放射線療法、従来の化学療法、または標的化学療法からなる群から選択され得る。
【0090】
さらに別の実施形態では、血管新生因子の阻害剤は、VEGFの阻害剤、VEGFR1の阻害剤、VEGFR2の阻害剤、TEKの阻害剤およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。他の実施形態では、血管新生因子の阻害剤は、低分子を含むか、低分子からなるか、低分子から本質的になり得る。さらに他の実施形態では、血管新生因子の阻害剤は、抗体を含むか、抗体からなるか、抗体から本質的になり得る。他の実施形態では、血管新生因子の阻害剤は、融合タンパク質を含むか、融合タンパク質からなるか、融合タンパク質から本質的になり得る。
【0091】
以下の例は、限定ではなく説明のために提供される。
【0092】
例1
ここで
図1および
図2を参照すると、PCSK9の阻害は、インビボで腫瘍増殖を有意に減弱することができる。
図1で同定された2つのsgRNA配列を組換えレンチウイルスベクターにクローニングし、それぞれB16F10および4T1細胞に感染させるために使用した。ウエスタンブロット分析は、いずれかのsgRNA配列を使用して、B16F10および4T1細胞に対してPCSK9のノックアウトが成功したことを示している。
【0093】
図2は、PCSK9をノックアウトすると、B16F10細胞ではインビボでの腫瘍増殖が有意に遅延し、C57BL/6マウスの4T1細胞ではインビボでの腫瘍増殖が有意に減弱することを示している。上部のグラフは腫瘍のそれぞれの腫瘍増殖曲線を示し、中央のパネルは動物の殺処分の終了時の後のそれぞれの腫瘍サイズを示し、下部のグラフは腫瘍重量を示している。B16F10および4T1の両実験ではN=6。
【0094】
ここで
図3を参照すると、PCSK9の阻害は、免疫チェックポイント療法、ならびに他の確立された癌治療法、例えば、放射線療法、従来の化学療法、および標的化学療法と相乗して、腫瘍増殖をさらに減弱させることができる。
図3は、B16F10黒色腫モデルにおけるPCSK9阻害、拮抗性抗体レパーサ(登録商標)(Amgen 145およびエボロクマブとしても知られている)、および免疫チェックポイント阻害剤抗PD1抗体の様々な組合せから得られた結果を示している。上部のグラフは腫瘍のそれぞれの腫瘍増殖曲線を示し、中央のパネルは動物の殺処分の終了時の後のそれぞれの腫瘍サイズを示し、下部のグラフは腫瘍重量を示している、n=5。5匹のマウスのうち2匹では、全3種類の処置の組合せを使用した実験の終了時に腫瘍は存在しなかった。
【0095】
例2
CRISPR-Cas9技術を使用して、4つの悪性マウス癌細胞株(B16F10、4T1、MC38、CT26)のPCSK9遺伝子をノックアウトした。PCSK9ノックアウトは、腫瘍細胞の形態もしくはインビトロ増殖速度、または軟寒天中で3Dコロニーを形成する能力を変化させなかった。
【0096】
材料および方法
細胞株および組織培養
B16F10マウス黒色腫細胞、CT26マウス結腸癌、4T1マウス乳癌細胞、MDA-MB-231ヒト乳癌細胞は、Duke University School of MedicineのCell Culture Facilityから購入した。MC38マウス結腸腺癌細胞は、Dr.Takuya Osada(Duke University,School of Medicine)から入手した。B16F10、CT26、4T1、MC38、MDA-MB-231細胞はいずれも、10%ウシ胎児血清(FBS)ならびに100ユニット/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン抗生物質を含むDMEM(Sigma)中で増殖させた。いずれの細胞株も、ユニバーサルマイコプラズマ(Mycoplasma)検出キット(ATCC)を使用して、マイコプラズマ(mycoplasma)試験に定期的に供した。
【0097】
CRISPR/Cas9を介したPCSK9の遺伝子ノックアウト
レンチウイルスを介したCRISPR/Cas9技術を使用して、PCSK9ノックアウト細胞を作製した。オンラインCRISPR設計ツール(chopchop)を使用して、PCSK9遺伝子を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)配列を設計した。マウスおよびヒトのPCSK9遺伝子を標的とするsgRNA配列を以下の表1に示す。Cas9およびsgRNAを同じベクター内で共発現するBsmB1(Thermal Fisher Scientific)消化プラスミドLentiCRISPRv2(MITのDr.Feng Zhang博士によりAddgene,Cambridge,MAに寄託された)に、sgRNA配列をコードする二本鎖オリゴヌクレオチドをクローニングした。次いで、Zhangラボによって確立されたプロトコルに従って、sgRNAをコードするCRISPRレンチウイルスベクターを作製した。ノックアウト細胞株を作製するために、標的細胞を、sgRNAをコードするCRISPRレンチウイルスに感染させ、10%FBSを含むDMEM中で培養し、7~10日かけてピューロマイシン(B16F10、CT26、MC38、MDA-MB-231では1μg/mlおよび4T1では4μg/ml)中で選択した。ウエスタンブロットによって感染細胞内のPCSK9タンパク質の発現を検出して、ノックダウンを検証した。一般に、実験に使用する前に、PCSK9ノックアウト細胞の混合集団をインビトロで10~12日間増殖させた。
【表1】
【0098】
軟寒天コロニー形成アッセイ
PCSK9欠乏腫瘍細胞が3Dで増殖する能力を測定するために、確立されたプロトコルに従って軟寒天アッセイを行った。6ウェルプレートに、1ウェル当たり10,000細胞の密度で2連で細胞を播種した。3週間の培養後、コロニーを固定し、0.005%クリスタルバイオレットを用いて染色した。次いで、1ウェル当たりのコロニー数を計数した。2つの独立した実験を行った。
【0099】
マウスの腫瘍増殖
この試験で行われた動物実験はいずれも、Duke University Institutional Animal Use and Care Committeeによって承認された。C57BL/6J、Balb/cマウスおよびOT-1トランスジェニックマウス(C57BL/6バックグラウンド)は、Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。NOD CRISPR PrkdcIl2rGamma(NCG)三重免疫不全マウスは、Charles River Laboratory(Wilmington,MA)から購入した。腫瘍細胞を注射する前に、年齢を一致させた6~8週齢のマウスの脇腹を剃毛した。次いで、剃毛した脇腹に、1.0x105のCRISPR/Cas9改変対照または標的遺伝子ノックアウト腫瘍細胞とともに、腫瘍細胞を皮下注射した。
【0100】
PCSK9中和抗体を含む実験では、C57BL/6マウスに、2.5x105のMC38結腸癌細胞を皮下接種し、3、5、8および11日目に200μgのヒトIgG2アイソタイプ対照(BioXcell)を(腹腔内)注射した。さらに、5および8日目に、抗PCSK9抗体と組み合わせて、約100μgの抗PD1(クローン:RMP1-14、BioXcell)抗体を一部のマウスに注射した。その後、2~3日ごとにマウスの腫瘍増殖をモニタリングした。キャリパーを使用して腫瘍サイズを測定した。進行性に増殖する腫瘍が最長寸法で1.5cmに達した時点として死亡を定義した。
【0101】
リンパ球の枯渇
マウスにおける免疫エフェクター細胞(immune effector cell)の特定のサブセットの役割を評価するために、それぞれ-3、0、3および8日目に、BioXcellから購入した150μgの抗CD4(GK1.5)、100μgの抗CD8β(53-5.8)および200μgの抗NK1.1(PK136)をi.p.注射することにより、CD4+T細胞、CD8+T細胞およびNK細胞を枯渇させた。対照として、等量のIgGアイソタイプ抗体(BioXcell)を注射した。
【0102】
インビボ競合アッセイ
EGFPまたはtdTomatoを安定に発現するB16F10細胞を、それぞれPCSK9標的(表1のsgRNA1、sgRNA2)または対照レンチウイルスベクターに感染させ、1μg/mlピューロマイシンを用いて10日かけて選択した。続いて、約5x104のPCSK9ノックアウト細胞(EGFP発現)と5x104の対照細胞(tdTomato発現)とを混合し、C57BL/6J雌マウスに皮下接種した。接種後12~14日に腫瘍を切除した。次いで、それらを細かく切り刻み、DNase I(50μg/ml、Sigma)およびコラゲナーゼP(2mg/ml、Sigma)中で37oCで20分間インキュベートした。解離した腫瘍細胞を70μm細胞ストレーナー(BD)に通した。腫瘍細胞を洗浄し、2%FBSを含む氷冷PBSに再懸濁した。BD Cantoフローサイトメトリーシステム(Flow Cytometry Shared Facility、Duke University School of Medicine)を使用して、GFPとtdTomato腫瘍細胞との比を分析した。
【0103】
フローサイトメトリーによる細胞表面MHC-I発現の分析
インビボ実験では、PCSK9欠乏(FGP発現)または対照ベクター(tdTomato発現)B16F10細胞をマウスに別個に接種し、10~12日後に腫瘍を採取した。次いで、腫瘍細胞を上記のように分解および処理し、抗H-2Kb/H-2Db抗体(28-8-6、BioLegend)を使用してフローサイトメトリー分析に供した。
【0104】
インビトロ実験では、抗H-2Kb/H-2Db(28-8-6、BioLegend)もしくは抗H-2Kd/H-2Dd(34-1-2S、BioLegend)、またはHLA-A2(BB7.2)抗体を用いて、それぞれ氷上で20分かけて、B16 F10、4T1、ヒトMDA-MB-231細胞を染色した。いくつかの実験では、インターフェロンガンマ(IFNγ、4T1:4ng/ml;B16F10、1ng/ml)を用いて細胞を12時間処理して、MHC I発現を刺激した。PBS+2%PBSで洗浄した後、BD Cantoフローサイトメトリーシステム(Flow Cytometry Shared Facility、Duke University School of Medicine)を使用して、MHC I表面分子の発現レベルを分析した。
【0105】
フローサイトメトリーによる腫瘍浸潤リンパ球の分析
B16F10細胞をPCSK9標的または対照レンチウイルスベクターに感染させ、1μg/mlピューロマイシンを用いて10日かけて選択した。次いで、C57BL/6Jマウスに、約1x10
5のPCSK9ノックアウトまたは対照細胞を皮下接種した。接種後12日目に腫瘍を収集し、重量を測定し、機械的に細かく切り刻み、DNase I(50μg/ml、Sigma)およびコラゲナーゼP(2μg/ml、Sigma)中で20分間37°Cでインキュベートした。解離した細胞を70μm細胞ストレーナー(BD)に通した。次いで、濾過した細胞を抗CD16/32抗体(BioLegend)を用いてブロックし、指定された表面抗体を用いて氷上で20分間染色した。Live/Dead Fixable Aqua色素(Thermo Fisher Scientific)を使用して、死細胞を除外した。製造業者の指示(Thermo Fisher Scientific)に従って、固定および透過処理後に細胞内抗体を加えた。抗マウス蛍光色素コンジュゲート抗体を表2に示す。BD Cantoフローサイトメトリーシステムを使用して、染色された細胞を分析した。
【表2】
【0106】
腫瘍浸潤リンパ球TCR配列決定
上記のように腫瘍細胞を接種し、接種後10日目にゲノムDNA抽出のためにそれらを収集した。DNeasy Blood&Tissueキット(Qiagen)を使用してゲノムDNAを抽出し、マウスTCRB CDR3サーベイ配列決定のためにAdaptive Biotechnologiesに提出した。PCR反応のインプットとして約2.6μgの初期DNAを使用した。Adaptive Biotechnologieオンライン分析プラットフォームを使用してデータを分析した。
【0107】
OT-1 T細胞培養
OT-1 C57BL/6マウスの脾臓から、マウスH-2Kbに結合したSIINFEKLペプチドを特異的に認識するTCRをコードする導入遺伝子を発現するOT-1 CD8+T細胞を採取した。マウス組換えIL2の存在下で、5x106細胞/mlのOT-1 SIINFEKLパルスマウス脾細胞を5~7日間インビトロでインキュベートすることにより、活性化されたOT-1 T細胞を作製した。要約すると、OT-1マウスの脾臓を採取し、無菌技術を使用してホモジナイズした。放出された細胞をペレット化し、3ml ACK緩衝液(0.15M NH4Cl、1mM KHCO3および0.1mM EDTA)に2分間再懸濁して、室温で赤血球を溶解した。次いで、脾細胞をペレット化し、洗浄し、0.75μg/ml SIINFEKLペプチド(GenScript)を含有する完全増殖培地(10%ウシ胎児血清[Corning]、1Xペニシリン-ストレプトマイシン[Thermo Fisher Scientific]、1Xピルビン酸ナトリウム[Thermo Fisher Scientific]および1X 2-メルカプトエタノール[Thermo Fisher Scientific]を含むRPMI1640[Sigma-Aldrich])中に5x106細胞/mlで再懸濁し、95%空気/5%CO2加湿環境で37oCでインキュベートした。3および5日目に、新鮮な完全増殖培地とともに、マウス組換えIL2(Thermo Fisher Scientific)を30ユニット/mlで加えた。7日目に、アッセイのために細胞を回収した。APC/Fire750標識抗マウスCD8およびAPC標識抗マウスTCRVβ5.1/5.2抗体(BioLegend)を使用したフローサイトメトリー分析によって特異性を決定した。
【0108】
ウエスタンブロット
細胞をPBSで洗浄した後、プロテアーゼ阻害剤を添加したRIPA緩衝液中に溶解した。SDS-PAGEにより等量のタンパク質を分離し、PVDFメンブレンに転写した。特異的な抗体、続いてHRPとコンジュゲートした二次抗体を用いてタンパク質をプローブした。ECLを使用してHRPシグナルを発現させた。Image J(NIH)を使用して、目的のタンパク質の定量を分析した。
【0109】
細胞分画
リソソームおよび膜内のMHC-Iの分布を検討するために、5x107のH2-K1-Flag形質導入PCSK9過剰発現またはノックアウトB16F10細胞を使用して、リソソームおよび膜画分を単離した。リソソームの単離には、製造業者の指示に従って(Lysosome Enrichmentキット、Thermo Scientific)、密度勾配超遠心分離法を使用した。膜分離緩衝液A(50mM Tris-HCl、pH7.5、450mM NaCl、1.5mM MgCl2、0.2mM EDTA、0.1mM EGTA、1mM DTT)および緩衝液B(緩衝液A+1%NP40、0.1%SDS)を使用して、膜画分を分離した。マウス抗Flag抗体を使用したウエスタンブロットによって、リソソームおよび膜画分内のMHC-I発現を検出した。それぞれリソソームおよび膜のマーカーとして、マウス抗LAMP2(Porteintech)およびウサギ抗パンカドヘリン(Novus Biologicals)を使用した。
【0110】
腫瘍細胞およびOT-1 T細胞の共培養分析
1ng/mlでマウス組換えIFNγと12時間インキュベーションすることによって、B16F10 Ctrl-Td(TdTomato蛍光タンパク質を発現)、B16F10 PCSK9KO-Td、B16F10 Ctrl-OVA-Td(ニワトリ卵白アルブミン遺伝子を発現)およびB16F10 PCSK9 KO-OVATd細胞を最初に刺激した。次いで、マウス組換えIL2(30ユニット/ml)を含むOT-1 T細胞完全増殖培地中で、1:1の比でOT-1 T細胞とともに、またはOT-1 T細胞を用いず、刺激された腫瘍細胞を24時間培養した。続いて、TdTomato発現腫瘍細胞を計数するために、Zeiss Axio Observer.Z1蛍光顕微鏡イメージングステーションによってTdTomato蛍光および明視野画像(各ウェルについて3つの視野)を捕捉し、ZENイメージングソフトウェア(Carl Zeiss Microscopy GmbH)およびImageJ 1.52h(NIH)によって分析した。二元配置分散分析とHolm-Sidakの多重比較検定とを使用して、統計的有意性を検討した。GraphPad Prism 6.0ソフトウェア(GraphPad Software)を使用して結果をプロットした。
【0111】
免疫蛍光および免疫組織化学分析
免疫蛍光分析では、マウスから得られた腫瘍を10%中性緩衝ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、薄片にした後、切片上に封入した。次いで、表2に記載されているマウスCD45またはCD8aに対する抗体を使用して、標準的な手順に従って染色した。
【0112】
リソソーム共局在化実験では、細胞をLyso-Tracker(ディープレッド、Thermo Fisher Scientific)と37oCで20分間インキュベートし、4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で15分間固定し、ブロッキング緩衝液(1%BSA、5%ロバ血清、0.1%ジギトニン)を室温で30分間浸透させた。次いで、細胞を抗Flag(Sigma、F1804)および抗PCSK9(Proteintech、55206-1-AP)一次抗体と室温で1時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、DAPIを含有する封入剤(Vector Laboratories)を用いて、染色した切片を封入した。共焦点顕微鏡を使用して画像を捕捉した。
【0113】
異所性遺伝子発現構築物の生成
表3に記載されている配列を有するPCRプライマーを使用して、mycタグ付きマウスPCSK9の2.2kb断片と、flagタグ付きH2K
dの0.7kb断片とを得た。次いで、製造業者の指示(New England Biolabs)に従って、ギブソンアセンブリのキットを使用して、GFP-Neoレンチウイルスベクターに、PCSK9-mycおよびH2K
d-Flag断片をコードするDNA断片をクローニングした。遺伝子をコードするレンチウイルスベクターを作製し、次いでB16F10細胞を感染させるために使用した。その後の分析の前に、G418を用いて5日かけて細胞を選択した。
【表3】
【0114】
タンパク質共免疫沈降(CO-IP)
10cmペトリ皿で培養した細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Sigma-Aldrich)を添加した500μlのIP溶解緩衝液(150nM NaCl、50mM Tris、0.1%NP-40)を用いて、氷上で直接溶解した。細胞溶解物を1.7mlチューブに移し、4oCで15分間エンドツーエンド回転(end-to-end rotated)させた。Bio-Radタンパク質アッセイによって溶解物中のタンパク質濃度を測定した。HAタグ付きPCSK9タンパク質のIPについては、ローテーター上で500μlの細胞溶解物を5μlの抗HA抗体(Santa Cruz Biotechnology)と4oCで一晩インキュベートした。次いで、c-HA抗体を含む溶解物を20μlのプロテインA/Gアガロースビーズ(Santa Cruz Biotechnology)と4oCで2時間コンジュゲートさせた。IP溶解緩衝液で3回洗浄した後、SDS-PAGEおよびウエスタン分析のために、プルダウン複合体(pull-down complex)を2X SDSローディング緩衝液中で煮沸した。
【0115】
定量的RT-PCR
CRISPR/Cas9ベクター対照またはPCSK9ノックアウトB16F10腫瘍細胞から全RNAを抽出し、RNA-seq分析に供した。Duke University Sequencing and Genomic Technologies CoreによってRNA-seqを行った。Kapa Stranded mRNA-seqライブラリー調製キットを使用して、配列決定ライブラリーを作製した。Illumina Hiseq 4000装置を使用して、50bpの単一末端読取り長により、ライブラリーを配列決定した。
【0116】
読取りの3’末端から低品質の塩基とIlumina配列決定アダプターとをトリミングするためにCutadaptを使用するTrimGaloretoolkitを使用して、RNA-seqデータを処理した。トリミング後、その後の分析のために、20nt以上の読取りのみを保持した。STAR RNA-seqアラインメントツールを使用して、マウスゲノムおよびトランスクリプトームのGRCm38.p6に読取りをマッピングした。SAMtoolsを使用して単一のゲノム位置に読取りをマッピングした場合、その後の分析のために読取りを保持した。HTSeqツールを使用して遺伝子数を編集した。その後の分析では、任意の所与のライブラリー内の少なくとも10の読取りを有した遺伝子のみを使用した。R統計プログラミング環境でDESesq2 Bioconductorパッケージを使用して、正規化および差次的発現を行った。Gene set enrichment analysis(GSEA)を行って、行われた比較のために、差次的に調節された経路と遺伝子オントロジー用語とを識別した。
【0117】
RNeasy Miniキット(Qiagen)を製造業者の指示に従って使用して、担癌C57BL/6Jマウスから得られたCRISPR/Cas9対照またはPCSK9ノックアウトB16F10腫瘍(約200~300mm3の体積)から全RNAを抽出した。Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)を使用してランダムヘキサマープライマーを用いて、RNAをcDNA合成に供した。QuantiTest SYBR Green PCR Master Mixキット(Qiagen)を使用して、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を行った。様々な遺伝子に使用したプライマーを表3に示した。
【0118】
シクロヘキシミドチェイスアッセイ
MHC-Iタンパク質のリソソーム分解のPCSK9の影響を決定するために、20μg/mlシクロヘキシミド(CHX、Sigma)を用いて、ベクター対照またはPCSK9ノックアウトMDA-MB-231細胞を処理して、タンパク質生合成を1、4、8、18、24時間阻害した。リソソーム阻害のために、20nMバフィロマイシン(Baf A1、Sigma)を用いて、MDA-MB-231細胞を1、2、4、8、24時間処理した。次いで、細胞を回収し、抗HLA-ABC抗体(Proteintech)を使用したウエスタンブロットによりMHCクラスIタンパク質を検出した。
【0119】
統計分析
GraphPad Prism 6ソフトウェアを使用して統計分析を行い、0.05未満のp値によって統計的有意性を決定した。腫瘍増殖遅延実験の多重比較には、二元配置分散分析を使用した。マウスの生存分析には、ログランク(Mantel-Cox)検定を使用した。他の実験では、独立スチューデントのt検定を使用して、2つの群間の比較を行った。Gene Expression across Normal and Tumor tissueデータベース(GENT)を使用して、示された患者コホートにおけるPCSK9とCD8Aとの間の関係を分析した。TCGAデータベースからPCSK9遺伝子発現および患者生存率に関するデータを取得し、ログランク検定を使用してその関係を評価し、p<0.05の値が統計的に有意であると解釈した。
【0120】
結果
ここで
図4A~
図4Hを参照すると、同系マウス宿主にPCSK9欠乏細胞を接種すると、腫瘍を形成するそれらの能力は有意に減弱された(
図4A、
図4C、
図4E、
図4G)。さらに、試験した4つのマウス腫瘍系統いずれでも、PCSK9ノックアウト群では、腫瘍細胞接種後60日まで宿主マウスに腫瘍が認められない長期生存マウスが存在した。対照的に、マウスにベクター対照形質導入腫瘍細胞を注射した群では、腫瘍増殖のために全マウスを最終的に殺処分しなければならなかった(
図4B、
図4D、
図4F、
図4H)。蛍光タンパク質を使用することにより、PCSK9欠乏細胞の優先的な増殖抑制をインビボでさらに確認した。PCSK9ノックアウト細胞がほぼ完全に失われたのに対して、対照細胞が腫瘍塊に多数残っていたことは明らかである。約1x10
5のベクター対照およびPCSK9ノックアウトマウス腫瘍細胞を同系マウスに皮下接種し、腫瘍形成を観察した。腫瘍サイズおよび無腫瘍生存率をともにモニタリングした。「TF」は、それらの特定の実験が示された数の無腫瘍マウスをもたらしたことを示す。
【0121】
ここで
図5A~
図5Kを参照すると、PCSK9欠乏誘発性増殖抑制を媒介する免疫系の役割をさらに評価するために、PCSK欠乏B16F10黒色腫、MC38結腸癌を接種したマウス、およびCT26結腸癌モデルに対して、抗PD1免疫チェックポイント阻害剤を用いて実験を行った。結果は、抗PD1抗体投与が、3つの腫瘍モデルいずれでも、腫瘍増殖を抑制する点でPCSK9欠乏と相乗したことを示している。実際に、PCSK9欠乏腫瘍細胞を接種したマウスの大部分では、抗PD1抗体による処置後80~100日の時点で腫瘍が認められないままであった。
図5A~
図5Cは、同系マウスに対して抗PD1抗体を用いた、PCSK9ノックアウトB16F10黒色腫の処置から得られた結果を示す。同位体対照抗体を使用して、抗PD1抗体を対照した。
図5D~Fは、抗PD1抗体マウスを用いたPCSK9ノックアウトMC38結腸癌の処置から得られた結果を示す。
図5G~
図5Kは、マウスに対して抗PCSK9抗体と抗PD1抗体とを併用した、野生型MC38結腸癌の処置から得られた結果を示す。抗PD1抗体または抗PCSK9抗体を単独で投与すると、MC38腫瘍の有意な増殖遅延を引き起こし得るが、その効果は抗PD1抗体を追加することにより有意に増強された。エボロクマブ+抗PD1またはアリロクマブ+抗PD1をそれぞれ用いて処置したMC38マウスの10匹中5匹または10匹中4匹では、接種後60日まで腫瘍が認められないままであり、長期治癒が示された。結果は、様々なマウス腫瘍モデルでは、PCSK9阻害が、抗PD1免疫チェックポイント療法に対する抵抗性を効果的に克服し得ることを示唆している。
【0122】
ここで
図6A~
図6Iを参照すると、最初の腫瘍細胞接種後、長期間(>30日)腫瘍が認められないままであるマウスが再チャレンジに抵抗する能力を評価した。最初のチャレンジ後に腫瘍が認められないままであるマウスに、野生型腫瘍細胞を注射した。結果は、B16F10(PCSK9欠乏+PD1Ab処置)を接種し、腫瘍が認められないマウス13匹中11匹、および4T1(PCSK欠乏のみ)を接種し、腫瘍が認められないマウス12匹中4匹が、野生型親腫瘍細胞による再チャレンジに抵抗性であったことを示している。データは、抗PD1抗体と組み合わせたPCSK9阻害が、マウスの長期的な抗腫瘍記憶を誘発し得ることを示している。
図6A~
図6Cは、PCSK9欠乏4T1細胞の最初の接種の43日後に腫瘍が認められないままであったBalb/Cマウスに対して野生型4T1腫瘍細胞を用いた再チャレンジ後の宿主マウスの腫瘍増殖速度および生存期間を示す。
図6D~
図6Fは、PCSK9欠乏B16F10細胞の最初の接種および抗PD1抗体による処置の26日後に腫瘍が認められないままであったC57BL/6マウスに対して野生型B16F10腫瘍細胞を用いた再チャレンジ後の宿主マウスの腫瘍増殖速度および生存期間を示す。
図6G~
図6Hは、PCSK9欠乏MC38細胞の最初の接種および抗PD1抗体による処置の34日後に腫瘍が認められないままであったC57BL/6マウスに対して野生型MC38腫瘍細胞を用いた再チャレンジ後の宿主マウスの腫瘍増殖速度および生存期間を示す。
【0123】
ここで
図7A~
図7Eおよび
図8A~
図8Fを参照すると、抗腫瘍免疫に対するPCSK9阻害の正の効果を理解するために、腫瘍への免疫細胞浸潤を分析した。
図7Aは、同系C57BL/6Jマウスで増殖した対照およびPCSK9 KO腫瘍内のCD45陽性リンパ球の免疫蛍光染色を示す。
図7Bは、対照およびPCSK9 KO腫瘍内のCD45陽性リンパ球の定量的推定を示す。
図7Cは、対照およびPCSK9 KO腫瘍を有するマウスの脾臓内のCD4
+およびCD8
+T細胞の定量的推定を示す。
図7Dおよび
図7Eは、対照およびPCSK9 KO腫瘍内の腫瘍内IFNγおよびグランザイムB mRNAレベルの定量的逆転写PCR(Q-RTPCR)分析を示す。
【0124】
データは、CD45
+細胞の画分により識別されるように、PCSK9枯渇が、腫瘍内のリンパ球浸潤の全体的な増加を引き起こしたことを示している。さらに、腫瘍内CD4
+Tヘルパー(T
h)細胞、CD8
+細胞傷害性T細胞およびNK細胞の有意な増加も観察された(
図8A)。対照的に、CD4
+Foxp3
+Treg細胞の増加は腫瘍内で観察されなかった(
図8A)。さらに、CD4
+またはCD8
+T細胞の増加は宿主マウスの脾臓では観察されなかった(
図7C)。免疫蛍光染色により、腫瘍へのCD8
+細胞傷害性T細胞浸潤の増加をさらに確認した(
図8B、
図8C)。特に興味深いのは、PCSK9欠乏B16F10腫瘍内の腫瘍細胞が豊富な領域内をCTLが移動したという観察であった(
図8B)。比較すると、CTLは対照B16F10腫瘍では主に末梢にとどまった(
図8B)。追加の分析は、腫瘍内でCD8
+CTL対Treg細胞の比が有意に増加したことを示した(
図8D)。同様に、フローサイトメトリー(
図3E、
図3F)またはQ-RT-PCR(
図7D、
図7E)のいずれかにより評価した場合、PCSK9欠乏腫瘍ではIFNγ
+およびグランザイムB
+CTLの数も有意に増加し、腫瘍内のCTL活性の増加と一致した。
【0125】
ここで
図8G~
図8Hおよび
図9A~Eを参照すると、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞およびNK細胞を枯渇させるために抗体に基づくアプローチを使用して、PCSK9欠乏腫瘍増殖に対するこれらの細胞成分の相対的重要性を決定した。データは、CD8
+細胞の枯渇(
図9Aに示されるスケジュールに従う)が、PCSK9欠乏腫瘍(
図8G、
図8H)に観察された腫瘍増殖遅延を完全に無効にしたことを示している。対照的に、CD4
+T細胞またはNK細胞の枯渇は、PCSK9欠乏腫瘍の増殖遅延に最小限の影響を及ぼしたのみであった(
図9B~
図9E)。
【0126】
腫瘍内T細胞の性質に対するPCSK9欠乏の影響をさらに特性評価するために、T細胞受容体(TCR)レパートリーの分子分析を行った。分析は、総TCR数(
図8I)と、固有のTCRの数(
図8J)とが、PCSK9欠乏腫瘍では有意に増加したことを示唆し、成熟T細胞の数および多様性の両方がPCSK9欠乏腫瘍では有意に増加したことを示唆している。追加の分析は、個々のT細胞クローンの優位性の尺度である生産的クローン性(productive clonality)が、PCSK9欠乏腫瘍では有意に増加したことを示し(
図8K)、成熟T細胞の多様性の全体的な増加に加え、T細胞クローンのサブセットの有意な拡大および優位性を示した。精査により、対照およびPCSK9欠乏腫瘍ではともに、個々のT細胞クローンの最大優位性は0.3近く(30%)であったことが示され、これは、一部のT細胞クローンが腫瘍内T細胞集団全体の30%を占めたことを示唆している(
図8L)。PCSK9欠乏腫瘍で最も優位であったクローンは、対照腫瘍で最も優位であったクローンとは異なっていた(
図8M)。
【0127】
その後の実験では、CTLを介した腫瘍細胞の細胞殺傷に対するPCSK9欠乏の影響を決定した。これを行うために、ニワトリOVA抗原(SIINFEKL)に特異的なTCRを発現するように操作されたT細胞が単離されたOT-Iトランスジェニックマウスモデルと、OVA形質導入、tdTomato標識ベクター対照およびPCSK9欠乏B16F10黒色腫細胞に対するその細胞傷害性効果とをインビトロで評価した。結果は、PCSK9欠乏により、B16F10細胞が細胞傷害性T細胞活性に対して有意にさらに感受性になることを示している(
図8Nおよび
図9F)。
【0128】
公的に利用可能なデータベース(GENT、gene expression across normal and tumor tissue)を使用して、ヒト癌患者におけるPCSK9発現と腫瘍免疫シグネチャーとの間の関係を評価した。所見は、ヒトの食道癌、結腸腺癌、膵臓腺癌および前立腺腺癌では、PCSK9 mRNA発現がCTLマーカーCD8Aの発現と負に相関することを示し(
図8O)、マウスにおける上記の所見がヒト患者の転帰に関連することを示唆している。
【0129】
ここで
図10A~
図10Hを参照すると、PCSK9欠乏腫瘍細胞の増強されたCTL殺傷に関与する分子機構を検討した。LDL‐Rなどの細胞表面タンパク質レベルの調節におけるPCSK9の既知の活性のために、PCSK9欠乏が腫瘍細胞の表面上の抗原提示に影響を及ぼし得るという仮説を試験した。MHC-Iは、CTL活性を調節するのに主要な役割を果たす重要な抗原提示タンパク質複合体であるため、B16F10黒色腫細胞内で、十分に特徴付けられたOVA抗原(SIINFEKL)を提示するMHC-I複合体の能力に対するPCSK9欠乏の影響を分析した。ニワトリ卵白アルブミン(OVA)遺伝子を発現する対照およびPCSK9欠乏B16F10細胞に対して、H-2K
b/SIINFEKL複合体に対する蛍光標識抗体を使用して、フローサイトメトリー分析を行った。結果は、対照B16-F10-OVA細胞と比較した場合、PCSK9欠乏B16F10-OVA細胞の表面では、H-2K
b/SIINFEKL染色が有意に増強されたことを明確に示している(
図10Aおよび
図11A)。結果は、PCSK9がペプチド抗原のMHC I提示の能力に強い影響を与えることを示している。
【0130】
インビボで増殖したB16F10腫瘍細胞の表面上のH-2K
bレベルに対するPCSK9ノックアウトの効果を検討した。tdTomato形質導入ベクター対照およびPCSK9欠乏B16F10細胞から増殖した腫瘍を脱凝集し、H-2K
b表面発現についてフローサイトメトリーにより分析した。結果は、tdTomato陽性細胞上のMHC-I発現が、PCSK9欠乏腫瘍では、対照B16F10腫瘍と比較してインビボで有意に増加したことを示している(
図10B、
図10C)。同様に、PCSK9欠乏はまた、IFNγにより処理した4T1細胞では、インビトロでMHC-I(H-2K
d)の有意な増加を引き起こした(
図10Dおよび
図11A)。それと一致して、PCSK9の遺伝的枯渇(
図11B)は、ヒトトリプルネガティブ乳癌株MDA-MB231(
図10E)のHLA-2レベルの有意な増加を引き起こした。他方では、外因性PCSK9タンパク質とPCSK9欠乏MDA-MB231細胞とのインキュベーションは、表面HLA-A2レベルの有意な減少を引き起こした(
図10F)。したがって、この結果は、PCSK9欠乏腫瘍細胞に対して増強されたCTL活性という発見に対する妥当な説明を提供する結果である、PCSK9がヒトおよびマウスの両腫瘍細胞で細胞表面MCH‐I発現を負に調節することを示唆している。
【0131】
公的なドメインデータベース(GENT)の調査から、いくつかのヒトの癌の種類(外陰、膵臓、食道、結腸および乳房)では、一致する正常組織よりも癌組織ではPCSK9発現が高いことが示された(
図11C)。さらに、ヒト皮膚癌では、比較的高いPCSK9発現が、患者の予後の悪化と相関していた(
図11D)。このデータは、PCSK9がヒト癌患者の治療転帰を決定する上で重要な役割を果たしていることを示している。
【0132】
ここで
図12および
図13を参照すると、免疫チェックポイント療法に関するMHC-I発現レベルの重要性を検討した。H2-K1はB16F10黒色腫細胞内で過剰発現しており、その腫瘍形成能と抗PD1療法に対する応答とを検討した。結果は、H2-K1発現が腫瘍増殖を有意に減弱する可能性があることを示した。さらに、H2-K1発現は、B16F10腫瘍の抗PD1療法の効果を有意に増強する可能性がある(
図12)。腫瘍免疫療法に果たすMHC-Iの重要な役割を確立した後、PCSK9阻害の抗腫瘍効果を媒介するのにMHC-Iが機能的に必要であるかどうかを検討した。H2-K1 KOまたはH2-K1/PCSK9ダブルノックアウト(DKO)B16F10を作製し、C57BL/6マウスを対象に、腫瘍を形成するそれらの能力を評価した。結果は、H2-K1欠乏が、対照と比較した場合に腫瘍増殖速度の有意な増加を引き起こしたことを示した。さらに、H2-K1欠乏は、PCSK9ノックアウト腫瘍に観察された腫瘍増殖遅延をほぼ完全に無効にした(
図13)。したがって、結果から、腫瘍増殖の調節におけるPCSK9の必須の下流因子としてH2-K1が確立された。
【0133】
ここで
図14を参照すると、PCSK9が細胞表面PCSK9発現を制御する機構を検討した。以前に、コレステロールレベルがMHC-I再循環に影響を与え得ることが報告されていたため、PCSK9が、PCSK9の確立された下流標的でもある主要なコレステロール調節因子であるLDLRを介して間接的にMHC-Iを調節する可能性を仮定した。LDLRレベルがPCSK9の下流のMHC-Iレベルを調節する可能性があるかどうかを決定するために、LDLRノックアウトまたはLDLR/PCSK9ダブルノックアウトを有するB16F10細胞を作製した。続いて、2つの細胞株から得られた腫瘍形成率を比較したところ、データは、LDLRノックアウトが、B16F10腫瘍内のPCSK9欠乏によって引き起こされる増殖抑制を減少させなかったことを示した。次いで、フローサイトメトリーを使用して、インビボでの腫瘍細胞のMHC-Iレベルを決定した。データは、B16F10のLDLRノックアウトが、インビボでB16F10細胞表面上のMHC-I発現に有意な影響を及ぼさなかったことを示した。さらに、LDLRノックアウトは、MHC-I表面発現のPCSK9欠乏誘発性アップレギュレーションを減少させなかった。次いで、MHC IIおよびPD-L1の腫瘍細胞表面発現レベルを検討することによって、PCSK9阻害のMHC-Iブースト効果がMHC-Iに限定されるかどうかを決定した。データは、PCSK9の状態がMHC-II発現に影響を与えず、PD-L1表面発現の低下に非常に小さい(が有意な)影響を及ぼしたに過ぎなかったことを示した。PCSK9の効果を無効にするH2-K1ノックアウトを示す以前のデータと組み合わせて、この発見は、MHC-Iが腫瘍増殖の調節におけるPCSK9の主要な下流標的であることを裏付ける。
【0134】
PCSK9阻害を介したMHC-I細胞表面発現のアップレギュレーションの分子機構を検討した。LDL-Rタンパク質の分解のために物理的相互作用とリソソームへのエンドサイトーシスとを介してLDL‐Rタンパク質をダウンレギュレートするPCSK9の既知の能力のため、PCSK9がMHC‐Iと直接結合し得るかどうかを検討した。結果は、抗PCSK9免疫沈降物中のH2-K
dの存在によって証明されるように、共発現したPCSK9およびH2-K
dがB16F10細胞内で複合体を形成し得ることを示している(
図10G)。2つのタンパク質の関係をさらに検討するために、B16F10細胞に対してH-2K
dとPCSK9との免疫蛍光共染色を行った。PCSK9共発現の非存在下では、多くのH2-K
dタンパク質がリソソームの外側に位置することが見出された(
図10H)。ただし、PCSK9共発現の存在下では、H2-K
dとPCSK9とは高度に共局在する(
図10H)。さらに重要なことに、リソソームへのタンパク質の広範囲な共局在化が認められた(
図10H)。したがって、結果は、PCSK9が、LDL-Rのその負の調節と同様にMHC-I表面レベルをダウンレギュレートすることを示唆している。
【0135】
ここで
図15を参照すると、ヒト肝細胞癌(LIHC)、膵臓腺癌(PAAD)、皮膚黒色腫(SKCM)、ブドウ膜黒色腫(UVM)、ヒト膀胱尿路上皮癌(BLCA)、肺腺癌(LUAD)、腎明細胞癌(KIRC)、乳頭状腎細胞癌(KIRP)および卵巣癌(OV)を含む9つのTCGAヒト癌患者コホートを対象としたPCSK9関連生存率分析を行った。結果は、マウスのMHC-I表面発現を抑制するPCSK9の能力の発見と一致して、PCSK9 mRNA発現が高い患者では、PCSK9発現が低い患者よりも生存率が低いことを示した。
【0136】
ここで
図16を参照すると、PCSK9の存在下で、MHC-Iはリソソーム内に輸送され、分解される(左パネル)。PCSK9の非存在下では、抗体を介した中和、または遺伝子欠失のために、表面上のMHC-Iレベルは高いままであるため、T細胞に、腫瘍特異的消化性抗原を比較的効率的に提示することができる(右パネル)。
【0137】
本明細書中の「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書中の様々な箇所での「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではなく、他の実施形態を相互に排除する別個のまたは代替の実施形態を指すわけでもない。さらに、いくつかの実施形態によって示され得、他の実施形態によって示され得ない様々な特徴が説明される。同様に、いくつかの実施形態の要件であり得るが、他の実施形態の要件ではあり得ない様々な要件が説明される。
【0138】
文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、説明および特許請求の範囲全体を通じて、単語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味で、すなわち、「含むが、これに限定されない」という意味で解釈されるべきである。本明細書で使用される用語「接続された」、「結合された」またはそれらの任意の変形例は、2つ以上の要素間の直接または間接の任意の接続または結合を意味し、該要素間の接続の結合は、物理的、論理的またはそれらの任意の組合せであり得る。さらに、単語「本明細書では(herein)」、「上(above)」、「下(below)」および類似の意味の単語は、本出願において使用される場合、本出願の任意の特定の部分ではなく、本出願全体を指すものとする。文脈が許せば、単数または複数を使用する上記「発明を実施するための形態」中の単語は、それぞれ複数または単数を含んでいてもよい。2つ以上の項目の列挙に関連して、単語「または」は、単語の以下の解釈をいずれも包含する:列挙内の項目のいずれか、列挙内の項目のすべて、および列挙内の項目の任意の組合せ。
【0139】
本明細書で提供される本開示の教示は、必ずしも上記のシステムではなく、他のシステムに適用することができる。上記の様々な実施形態の要素および行為を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。
【0140】
上記「発明を実施するための形態」に照らして、これらおよび他の変更を本開示に加えることができる。上記の説明は、本開示の特定の実施形態を説明し、企図される最良の形態について説明しているが、上記が文章でどれほど詳細に表れていても、該教示は多くの方法により実施することができる。システムの詳細は、本明細書に開示された主題に依然として包含されているが、その実装の詳細においてかなり異なる場合がある。上記のように、本開示の所定の特徴または態様を説明する際に使用される特定の用語は、その用語に関連する、本開示の任意の所定の特性、特徴または態様に限定されるように本明細書において再定義されていることを意味すると解釈されるべきではない。概して、以下の特許請求の範囲において使用される用語は、上記「発明を実施するための形態」セクションがそのような用語を明示的に定義しない限り、本明細書中に開示された特定の実施形態に本開示を限定するものと解釈されるべきではない。したがって、本開示の実際の範囲は、開示された実施形態だけでなく、特許請求の範囲の下で本開示を実施または実装するあらゆる同等の方法も包含する。
【0141】
本明細書中で使用される用語は、概して、本開示の文脈内で、および各用語が使用される特定の文脈において、技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本開示を説明するために使用される特定の用語は、本開示の説明に関して実施者に追加の指針を提供するために、上記、または本明細書中の他の箇所で説明されている。便宜上、大文字、斜体字および/または引用符などを使用して、特定の用語が強調表示され得る。強調表示を使用しても、用語の範囲および意味に影響を及ぼさない。強調表示されているかどうかにかかわらず、同じ文脈では、用語の範囲および意味は同じである。同じ要素が複数の方法で記述され得ることが理解されよう。
【0142】
したがって、本明細書中で説明されている用語のうちの任意の1つ以上について、代替の言語および同義語が使用され得、用語が本明細書中で詳述されているか説明されているかどうかに特別な意義はない。特定の用語の同義語が提供されている。1つ以上の同義語の詳説は、他の同義語の使用を除外しない。本明細書中で説明される任意の用語の例を含む、本明細書中の任意の箇所での例の使用は、例示に過ぎず、本開示、または任意の例示された用語の範囲および意味をさらに限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書中で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0143】
本開示の範囲をさらに限定することを意図することなく、本開示の実施形態による機器、装置、方法およびそれらに関連する結果の例を以下に示す。読者の便宜のために、例においてタイトルまたはサブタイトルが使用され得るが、それは決して本開示の範囲を限定するものではないことに留意されたい。他に定義されない限り、本明細書中で使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含む本文書を優先するものとする。
【0144】
この説明のいくつかの部分は、情報に対する操作のアルゴリズムおよび記号表現の観点から本発明の実施形態を説明している。これらのアルゴリズムの説明および表現は、それらの作用の中身を他の当業者に効果的に伝えるためにデータ処理分野の当業者によって一般的に使用される。これらの操作は、機能的、計算的または論理的に説明されているが、コンピュータプログラムまたは同等の電気回路、マイクロコードなどによって実装されると理解される。さらに、操作のこれらの配置をモジュールと呼ぶことは、一般性を失うことなく、時として便利であることも証明されている。説明された操作およびそれらに関連するモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアまたはそれらの任意の組合せで具体化され得る。
【0145】
最後に、本明細書中で使用される言語は、読みやすさおよび教授目的のために主に選択されており、本発明の主題を描写または制限するために選択されていない場合がある。したがって、本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、本明細書に基づく出願に関して発行される任意の請求項によって限定されることが意図されている。したがって、本発明の実施形態の開示は、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を例示することを意図しているが、限定することを意図していない。
【0146】
他に定義されない限り、本明細書中で使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、本開示の主題が関連する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法、装置および材料を、本開示の主題の実施または試験に使用することができ、代表的な方法、装置および材料がここで説明される。
【0147】
長年の特許法条約に従い、用語「a」、「an」および「the」は、特許請求の範囲を含め、主題明細書で使用される場合、「1つ以上」を指す。したがって、例えば、「添加剤」への言及は、複数のそのような添加剤などを含むことができる。
【0148】
特に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される構成要素、条件などの量を表すすべての数字は、すべての場合に用語「約」によって修飾されるものと理解されるべきである。したがって、反対のことが示されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本開示の主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0149】
本明細書で使用される用語「約」は、質量、重量、時間、体積、濃度および/またはパーセンテージの値または量を指す場合、そのような変動が、開示された製品および方法において適切であるように、特定の量から、いくつかの実施形態では+/-20%、いくつかの実施形態では+/-10%、いくつかの実施形態では+/-5%、いくつかの実施形態では+/-1%、いくつかの実施形態では+/-0.5%、およびいくつかの実施形態では+/-0.1%の変動を包含することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0150】
配列表1~12 <223>合成
【配列表】