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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】腰痛治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
A61F5/01 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022567196
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008649
(87)【国際公開番号】W WO2022186213
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2021031553
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521087586
【氏名又は名称】永田 英生
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 英生
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153624(JP,A)
【文献】特開2011-254878(JP,A)
【文献】特開平10-151033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00 - A61F 5/41
A61G 13/00 - A61G 15/12
A47C 7/00 - A47C 7/74
A47C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が座る座部を備え、
前記座部が、仙骨及び尾骨と対向し、背側から腹側に向けて伸びる底部と、前記患者の左右側方において一対の寛骨と各々対向する一対の側部と、を含み、
前記側部の動きと前記底部の動きとを連動させる連動機構をさらに備え、
前記連動機構は、前記底部が背側に向けて傾動すると、前記側部を両側に向けて開くように傾動させることを特徴とする腰痛治療装置。
【請求項2】
前記側部が、大腿骨頭の形状に沿う凹部を含む請求項1に記載の腰痛治療装置。
【請求項3】
前記側部が、凸部を含み、
前記凸部の一部に前記凹部が形成された、請求項に記載の腰痛治療装置。
【請求項4】
前記側部が、上側部と、前記上側部に傾動可能に連結された下側部と、を含み、
前記凹部は、前記上側部と前記下側部との連結部に配置され、前記底部の傾動に応じて、大腿骨頭に向けて移動する請求項2又は請求項3に記載の腰痛治療装置。
【請求項5】
前記底部を傾動可能に支持する弾性体と、前記底部の傾動を前記側部に伝達するアームと、を備えた、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の腰痛治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨盤を動かして腰痛を治療する腰痛治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、骨盤矯正を行う装置が知られている。例えば、特許文献1には、仙骨当て部と腸骨当て部とを有し、患者が座ると、仙骨当て部に起き上がりモーメントが作用し、腸骨当て部に前傾モーメントが作用して、姿勢が矯正される姿勢矯正装置の発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-254878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の発明によれば、あくまで姿勢を矯正するのみであり、仙腸関節への影響はなく、腰痛緩和効果は期待できない。
【0005】
一方、発明者は、腰痛治療の臨床現場において、一対の寛骨を背側から腹外側に押し広げつつ、尾骨先端を腹側に向けて押し上げる施術を開発した。しかし、実際の臨床においては、側臥位にした患者に施術をするため、右側臥位にして左側寛骨を背側から腹外側に押し広げるとともに、尾骨先端を腹側に向けて押し上げ、続いて、左側臥位にして右側寛骨を背側から腹外側に押し広げるとともに、尾骨先端を腹側に向けて押し上げる施術となり、連動した施術が行えないという問題があった。
【0006】
そこで、本開示の目的は、一対の寛骨を背側から腹外側に押し広げつつ、尾骨先端を患者腹側に向けて持ち上げる施術が可能な腰痛治療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の腰痛治療装置は、患者が座る座部を備え、座部が、仙骨及び尾骨と対向し、背側から腹側に向けて伸びる底部と、患者の左右側方において一対の寛骨と各々対向する一対の側部と、を含み、側部の動きと底部の動きとを連動させる連動機構をさらに備え、連動機構は、底部が背側に向けて傾動すると、側部を両側に向けて開くように傾動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の腰痛治療装置によれば、背側に向けて傾動可能な底部と、底部の傾動に応じて、背側から腹外側に向けて傾動する側部と、側部の動きと前記底部の動きとを連動させる連動機構とを備え、連動機構は、底部が背側に向けて傾動すると、側部を両側に向けて開くように傾動させるように構成したため、一対の寛骨を背側から腹外側に向けて押し広げる施術と、尾骨先端を腹側に向けて押し上げる施術とを同時に行うことができ、大腿骨頭周辺から臀部及び腰部に至る筋肉の筋緊張を緩和させ、腰痛を改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の腰痛治療装置の概略図である。
図2図1の腰痛治療装置の右側面図、要部拡大図である。
図3】装置後方の支柱を省略した背面図である。
図4】側部の動作及び作用を表す説明図である。
図5】底部の動作及び作用を示す説明図である。
図6】実施例2の腰痛治療装置の平面図である。
図7図6の腰痛治療装置の底面図である。
図8図6の腰痛治療装置の(a)側部、(b)底部の側面図である。
図9】側部の動作及び作用を表す説明図である。
図10】底部の動作及び作用を示す説明図である。
図11】実施例3の腰痛治療装置の平面図である。
図12図11の腰痛治療装置の分解斜視図である。
図13図11の腰痛治療装置の(a)右側面図、(b)側部を透視した右側面図である。
図14図11の腰痛治療装置の側部の仕組みを示す模式図である。
図15図11の腰痛治療装置の平面図である。
図16】側部の動作及び作用を表す説明図である。
図17】底部の動作及び作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を腰痛治療装置に具体化した実施例1~3を図面に基づいて説明する。以下の説明では、患者正面側(腹側)を装置正面又は装置前方、患者背面側(背側)を装置背面又は装置後方とし、患者の身体が接する面を施術面、その裏面を非施術面として説明する。
【実施例1】
【0011】
図1~3に示す腰痛治療装置101は、患者が座る座部(121,123,124)と、背もたれ(131,132)と、大腿を乗せるレッグレスト104と、支柱105,106と、座部、レッグレスト104、支柱105,106を載置する載置ベース107から構成される。座部、背もたれ、レッグレスト104は、各々、板状の金属又は樹脂から形成され、施術面に患者の身体に沿う曲面を含む。また、座部、レッグレスト104、背もたれは、バネ108等の弾性体により昇降可能、傾動可能に支持されている。
【0012】
背もたれは、上背もたれ131と下背もたれ132とから構成され、上背もたれ131と下背もたれ132とは、ヒンジにより接続されている。下背もたれ132は、上背もたれ131よりも傾斜が小さくなるように支持されている。ここで、上背もたれ131は、支柱105のスライド孔105aとブラケット109のスライド孔109aとにスライド可能に軸支されている。下背もたれ132は、ブラケット109に軸支されつつ、バネ108を介して支柱105に支持されている。このため、背もたれ全体が下降するにつれて傾斜が小さくなり、背もたれ全体が上昇するにつれて傾斜が大きくなるように傾動する。
【0013】
座部は、底部121と、底部121の両側に配置される一対の側部(123,124)を備える。一対の側部は、背面側から正面側に向けてハの字状に広がるように配置される。底部121の施術面の少なくとも一部には、所定の厚みの緩衝材が設けられている。
【0014】
底部121は、背側から腹側に向けて伸びるように形成されている。底部121は、前端部121aと後端部121bの間において仙骨B2と対向し、前端部121aにおいて尾骨B3と対向する。底部121の前端部121aに、尾骨B3の先端を包み込む曲面を形成することも可能である。また、底部121は、背側に向けて傾動可能に設けられている。前端部121a及び後端部121bは、バネ108により支持されている。バネ108の弾性力により、患者が座部に座ったときに後端部121bが下降し、前端部121aに上昇方向の相対的な力がかかり、前端部121aが上昇する。ここで、後端部121bの下降距離は、バネ108の弾性力により、5~70mm程度、好ましくは50mm程度に制限されている。バネ108は、体重の重い患者に使用する場合など、耐荷重に応じて適宜、最適な弾性体を選択できる。下降距離を制限したことにより、底部121を程よく傾斜させ、仙骨B2及び尾骨B3を程よく押し上げることができる。
【0015】
一対の側部は、上側部123と下側部124から構成され、各々一対の寛骨B1と対向している。また、下側部124と上側部123とは、相互に傾動可能に連結されている。また、下側部124は、接続部(127,128)により底部121と接続されている。接続部は、側部の動きと底部121の動きとを連動させる連動機構として機能する。
【0016】
上側部123は、支柱106に固定された軸123aに回転可能に軸支されている。具体的には、軸123aは、背側から腹側に向けて高くなる傾斜状態に設けられ、上側部123は、背側から腹外側に向けて傾動可能に軸支されている。
【0017】
上側部123の施術面には、断面略半円形に形成された略U字形状の凸部125が設けられ、下側部124には、凸部125の形状に沿う切り欠き部124aが形成されている。凸部125の折り返し部は、大腿骨頭B4の形状に沿う凹部126として機能する。凹部126は、上側部123と下側部124の連結部129(図4参照)に配置されている。連結部129は、患者が座部に座ったときに、大腿骨頭B4と対向する位置に配置されている。このため、大腿骨頭B4を避けて梨状筋や大臀筋に作用し、寛骨B1を含む骨盤を、腹外側に向けて押し広げることができる。また、施術時に大腿骨頭B4が側部と干渉して痛みを生ずることを防止できる。
【0018】
凸部125は、腹側に向けて斜め上向きに開口するように配置されている。このように配置することで、患者が装置に座る際に、大腿骨頭B4が凹部126にスムーズに嵌め込まれる。凸部125の素材は樹脂材料が好適であるが、その他の部材も採用可能である。
【0019】
接続部は、紐状部材127とアーム128とから構成される。紐状部材127は、下側部124を、底部121に緩く繋留している。このため、底部121が背側に向けて傾くと、一対の下側部124は、底部121に向けて牽引される。紐状部材127は、ダイヤルワイヤー110によって緩み具合を調整することができる。
【0020】
アーム128は、折り返し部128aと、スライド孔128bと、スライド孔に沿って移動するリンク128cを備え、上側部123の下端縁部と、底部121の後端部121bとを接続している。患者が座り、底部121が背側に向けて傾くと、リンク128cがスライド孔128bに沿って下降し、折り返し部128aが軸128d周りに回動し、側部及び凸部125を患者に向けて押し付けるように作動する。
【0021】
続いて、上記構成の腰痛治療装置101の動作を、図4,5に基づいて説明する。
【0022】
図4(a)に示すように、腰痛治療装置101に患者が座り、底部121の後端部121b及び下側部124が下降すると、下側部124は、上側部123及び底部122の両方に向けて牽引される。
【0023】
すると、図4(b)に示すように、上側部123は、軸123a周りに回転傾動し、側部全体が、寛骨B1を腹外側に向けて押し広げるように作用する。このとき、連結部129は、患者に接近するように持ち上げられ、連結部129に配置された凹部126によって、大腿骨頭B4が腹外側に向けて押し広げられ、側部が寛骨B1を腹外側に向けて押し広げる作用を補助する。
【0024】
一方、図5に示すように、腰痛治療装置101に患者が座ると、底部121の後端部121bが下降し、前端部121aが上昇するように傾動する。底部121の傾動により、仙骨B2及び尾骨B3が破線の姿勢となるように動かされ、尾骨B3の先端部が腹側に向けて押し上げられる。ここで、図5では、説明のために仙骨B2及び尾骨B3の動き幅を大きく表したが、実際の施術においては仙骨B2及び尾骨B3の動きは極僅かである。
【0025】
したがって、この実施形態の腰痛治療装置101によれば、底部121の背側に向かう傾動と側部の背側から腹外側に向かう傾動とを連動させたため、寛骨B1を背側から腹外側に向けて押し広げる施術と、尾骨B3を腹側に向けて押し上げる施術とを連動でき、寛骨B1に阻まれ、本来動かしにくい仙骨B2及び尾骨B3を確実に動かすことができる。そして、このときの仙骨B2及び尾骨B3の極僅かな動きによって、大腿骨頭を包囲する筋肉や、臀部、腰部から背部に至る筋肉の筋緊張を緩和させ、腰痛を改善する効果がある。また、このとき、底部121の後端部121bの下降距離を5~70mm程度に制限し、底部121の急激な傾動、ひいては、底部121と接続された側部の急激な傾動を抑制したため、底部121を程よく傾斜させ、仙骨B2及び尾骨B3を程よく押すことができるとともに、患者の身体に負担がかからないように施術できる。
【実施例2】
【0026】
図6~8に示すように、腰痛治療装置201は、患者が座る座部(221,224)を備える。座部は、板状の金属又は樹脂から形成され、施術面に患者の身体に沿う曲面を含む。
【0027】
座部は、底部221と、底部221の両側に配置される一対の側部224と、一対の側部224を底部221に接続して連動させる連動機構としての紐状部材229とから構成される。側部224は、紐状部材229によって、底部221に緩く繋留されている。
【0028】
底部221は、仙骨B2から尾骨B3に沿って背側から腹側に向けて伸びるように形成され、底部221の施術面には、長手方向に沿って複数の略半球形状の凸部222が形成されている。底部221の前端部221aに、尾骨B3の先端を包み込む曲面を形成することも可能である。凸部222は、仙骨B2び尾骨B3の解剖学的な凹凸と係合するように配置されている。凸部222を設けたことにより、底部221が仙骨B2及び尾骨B3を滑らないように捉え、尾骨B3の先端を腹側に向けて適切に持ち上げることが可能となる。底部221の前端部221aには、非施術面に、底部221の前端部221aを載置面Gに支持する支持部223が設けられている。支持部223は、載置面Gから受ける抗力によって、前端部221aを患者に向けて押し付けるように作用する。
【0029】
側部224は、大腿骨頭B4に沿う凹部226と、中央から外周に向けて大径となる長丸半球形状の凸部225と、側部224を載置面Gに支持する脚部228と、側部224を操作するハンドル227とから構成される。凸部225は施術面に設けられ、脚部224は非施術面において、凸部225と対向する位置に配置されている。ハンドル227は、非施術面の側縁部に設けられている。
【0030】
ここで、一対のハンドル227及び一対の脚部228は、背側から腹側に向けて開くハの字状に設けられている。このため、ハンドル227を載置面Gに押し付けるように操作すると、側部224が脚部228の接地点Pを支点として回転する。このとき、側部224の施術面は、寛骨B1を、背面側から腹外側に向けて押し広げるように作用する。
【0031】
凸部225は、臀部の窪みと相補的な形状を有している。凸部225を設けたことにより、患者が座ったときに患者の腰部を正しい施術位置に導くことができる。凹部226は、大腿骨頭B4の出っ張りと相補的な形状を有している。凹部226を設けたことにより、大腿骨頭B4が側部224に圧迫されることを防止し、大腿骨頭B4の痛みを防止できる。
【0032】
続いて、上記構成の腰痛治療装置201の動きを、図9,10に基づいて説明する。
【0033】
図9(a)に示すように、患者が座り、ハンドル227を載置面Gに向けて押し付けるように操作すると、図9(b)に示すように、側部224が脚部228の接地点Pを支点として回転するように傾動し、凸部225によって、寛骨B1を、背側から腹側に向けて押し広げられる。このとき、大腿骨頭B4は凹部226と対向するため、側部224と干渉しない。
【0034】
一方、図10に示すように、患者が座ると、底部221は載置面Gに押し付けられる。このとき、載置面Gからの抗力を受けた支持部223により、底部221の前端部221aが患者に向けて押し付けられ、仙骨B2及び尾骨B3が破線の姿勢となるように動かされるとともに、尾骨B3の先端部を腹側に向けて押し上げられる。
【0035】
したがって、この実施形態の腰痛治療装置201によれば、ハンドル225を操作することにより、紐状部材229を介して側部224及び底部221が連動する。このため、寛骨B1を背側から腹外側に向けて押し広げる施術と、尾骨B3を腹側に向けて押し上げる施術とを連動させ、腰痛改善に効果的な骨盤治療を行うことができる。
【実施例3】
【0036】
図11~15に示す腰痛治療装置301は、患者が座る座部(321,322)と、座部を揺動自在に支持するフレーム305と、座部を載置する載置部303と、載置部303と座部との間に配設された中間部材304とから構成される。座部は、板状の金属又は樹脂から形成され、施術面に患者の身体に沿う曲面を含む。
【0037】
座部は、底部321と、底部321の両側に配置される一対の側部322から構成される。一対の側部322は、背側から腹側に向けてハの字状に広がるように配置される。
【0038】
底部321は、背側から腹側に向けて腰部に沿って形成されている。患者が座ると、底部321は、仙骨B2及び尾骨B3と対向するように設けられている。
【0039】
載置部303は、座部を支持する本体部331と、側部322の上端部322aを棒334周りに回転可能に支持する腕部332と、底部321の腹側端部321aを支持する脚部333を備える。患者が座部に座ると、バネ308が縮み、底部321は、脚部333を支点として、回転するように傾動する。腕部332の上端部には、載置部303をフレーム305に、揺動自在に吊り下げる吊り下げ部332aが設けられている。本体部331には、中間部材304を介して座部を支持するバネ308等の弾性体が配置されている。ここで、背側端部321b(図13参照)の下降距離は、バネ308の弾性力により、5~70mm程度、好ましくは50mm程度に制限されている。バネ308は、体重の重い患者に使用する場合など、耐荷重に応じて適宜、最適な弾性体を選択できる。下降距離を制限したことにより、底部321を程よく傾斜させ、仙骨B2及び尾骨B3を程よく押し上げることができる。
【0040】
一対の側部322は、一対の寛骨B1と対向するように設けられている。側部322の非施術面の上端部322aには、側部322を載置部303の腕部332に取り付けるブラケット309が取り付けられている。ブラケット309には、患者の体格に応じて、一対の側部322同士の間隔を調節するための調節機構(調整孔309a)が設けられ、腕部332に挿通した棒334を調整孔309aに挿通することにより、側部322を腕部332に取り付けることができる。このとき、内側の調整孔309aに棒334を挿通すると一対の側部322同士の間隔を広げ、外側の調整孔309aに棒334を挿通すると一対の側部322同士の間隔を狭めるように調整できる。また、ブラケット309には、側部322をワイヤ335等により中間部材304の両端部342aに取り付けるための取付孔309bが設けられている。この実施例では、調整孔309aは内側から3つ設けられ、取付孔309bは最も外側に設けられている。
【0041】
中間部材304は、板状の金属又は樹脂から形成され、背側から腹側に伸びる中央部341と中央部341から左右に伸びる一対の腕部342とを備える。中央部341は、背側に、底部321の背側端部321bを支持する立ち上がり部341aを有する。
【0042】
中間部材304の腕部342は、ブラケット309を介して側部322に接続されている。一方、中間部材304の中央部341は、バネ308と底部321の間に介設されている。このため、患者が座部に座り、バネ308が収縮して中間部材304が下降すると、図14に示すように、中間部材304の腕部342がワイヤ335及びブラケット309の取付孔309bを介して側部322を牽引し、側部322が棒334周りに回転し、左右に開くように傾動する。このように、中間部材304は、底部321と側部322とを連動させる連動機構として機能する。
【0043】
側部322の施術面には、断面略半円形に形成された略U字形状の凸部325が設けられている。凸部325の折り返し部は、大腿骨頭B4の形状に沿う凹部326として機能する。このため、大腿骨頭B4を避けて梨状筋や大臀筋に作用し、寛骨B1を含む骨盤を、腹外側に向けて押し広げることができる。また、施術時に大腿骨頭B4が側部322と干渉して痛みを生ずることを防止できる。
【0044】
凸部325は、腹側に向けて斜め上向きに開口するように配置されている。このように配置することで、患者が装置に座る際に、大腿骨頭B4が凹部326にスムーズに嵌め込まれる。凸部325の素材は樹脂材料が好適であるが、その他の部材も採用可能である。
【0045】
続いて、上記構成の腰痛治療装置301の動作を、図16,17に基づいて説明する。
【0046】
図16(a)に示すように、腰痛治療装置301に患者が座り、底部321が背側に傾斜すると、中間部材304を介して側部322が左右に展開するように傾動する。
【0047】
すると、図16(b)に示すように、側部322全体が、寛骨B1を腹外側に向けて押し広げるように作用する。このとき、凹部126によって、大腿骨頭B4が腹外側に向けて押し広げられ、側部322が寛骨B1を腹外側に向けて押し広げる作用を補助する。
【0048】
一方、図17(a)に示すように、腰痛治療装置301に患者が座ると、バネ308が縮みし、中間部材304全体が下降し、載置部303の脚部333を支点として底部321が背側に向けて回転傾動し、背側端部321bに対して腹側端部321aが相対的に上昇するように傾動する。底部321の傾動により、図17(b)に示すように、仙骨B2及び尾骨B3が破線の姿勢となるように動かされ、尾骨B3の先端部が腹側に向けて押し上げられる。ここで、図17では、説明のために仙骨B2及び尾骨B3の動き幅を大きく表したが、実際の施術においては仙骨B2及び尾骨B3の動きは極僅かである。
【0049】
したがって、この実施形態の腰痛治療装置301によれば、底部321の背側に向かう傾動と側部322の背側から腹外側に向かう傾動とを連動させたため、寛骨B1を背側から腹外側に向けて押し広げる施術と、尾骨B3を腹側に向けて押し上げる施術とを連動でき、寛骨B1に阻まれ、本来動かしにくい仙骨B2及び尾骨B3を確実に動かすことができる。そして、このときの仙骨B2及び尾骨B3の極僅かな動きによって、大腿骨頭を包囲する筋肉や、臀部、腰部から背部に至る筋肉の筋緊張を緩和させ、腰痛を改善する効果がある。また、このとき、底部321の下降距離を5~70mm程度に制限し、底部321の急激な傾動、ひいては、底部321と中間部材304を介して接続された側部322の急激な傾動を抑制したため、底部321を程よく傾斜させ、仙骨B2及び尾骨B3を程よく押すことができるとともに、患者の身体に負担がかからないように施術できる。
【0050】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
以下、本開示の特徴を示す。
項1.
患者が座る座部を備え、
前記座部が、仙骨及び尾骨と対向し、背側から腹側に向けて伸びる底部と、一対の寛骨と各々対向する一対の側部と、を含み、
前記側部の動きと前記底部の動きとを連動させる連動機構をさらに備え、
前記連動機構は、前記底部が背側に向けて傾動すると、前記側部を両側に向けて開くように傾動させることを特徴とする腰痛治療装置。
項2.
前記側部が、大腿骨頭の形状に沿う凹部を含む項1に記載の腰痛治療装置。
項3.
前記側部が、凸部を含み、
前記凸部の一部に前記凹部が形成された、項2に記載の腰痛治療装置。
項4.
前記側部が、上側部と、前記上側部に傾動可能に連結された下側部と、を含み、
前記凹部は、前記上側部と前記下側部との連結部に配置され、前記底部の傾動に応じて、大腿骨頭に向けて移動する項2又は項3に記載の腰痛治療装置。
項5.
前記底部を傾動可能に支持する弾性体と、前記底部の傾動を前記側部に伝達するアームと、を備えた、項1~項4の何れか一項に記載の腰痛治療装置。
【符号の説明】
【0051】
101 腰痛治療装置
104 レッグレスト
105 支柱(a:スライド孔)
106 支柱
107 載置ベース
108 バネ
109 ブラケット(a:スライド孔)
110 ダイヤルワイヤー
121 底部(a:前端部、b:後端部)
123 上側部(a:軸)
124 下側部(a:切り欠き部)
125 凸部
126 凹部
127 紐状部材
128 アーム(a:折り返し部、b:スライド孔、c:リンク、d:軸)
131 上背もたれ
132 下背もたれ
201 腰痛治療装置
221 底部(a:前端部)
222 凸部
223 支持部
224 側部
225 凸部
226 凹部
227 ハンドル
228 脚部
229 紐状部材
301 腰痛治療装置
303 載置部
304 中間部材
305 フレーム
308 バネ
309 ブラケット(a:調整孔、b:取付孔)
321 底部(a:腹側端部、b:背側端部)
322 側部(a:上端部、b:下端部)
325 凸部
326 凹部
331 本体部
332 腕部(a:吊り下げ部)
333 脚部
341 中央部
342 腕部
B1 寛骨
B2 仙骨
B3 尾骨
B4 大腿骨頭
G 載置面
P 接地点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図16
図17