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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】スライドドア構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20230126BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20230126BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 075
B60R16/02 620C
B60R16/02 623U
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018181755
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020054125
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 真樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光伸
(72)【発明者】
【氏名】角谷 友
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 慶恭
(72)【発明者】
【氏名】河崎 佳
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086552(JP,A)
【文献】特開2016-136809(JP,A)
【文献】特開2008-062784(JP,A)
【文献】特開2004-034759(JP,A)
【文献】特開2018-078693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-17/02
H02G 3/00-3/04
11/00-11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して閉位置と開位置との間で移動可能に設けられるスライドドアと、前記車体と前記スライドドアとの間に配索されるワイヤハーネスと、を備えたスライドドア構造であって、
前記ワイヤハーネスは、
前記車体に一端が支持されるとともに前記スライドドアに他端が支持され、前記スライドドアの移動に伴って変形可能であり、前記スライドドアが前記閉位置にあるときに当該ワイヤハーネスの前記一端と前記他端との間の少なくとも一部が前記スライドドアに接触した状態が維持される、ように構成され
前記ワイヤハーネスは、
一又は複数の電線を含む電線部と、前記電線部に沿うように延びる帯状体及び前記帯状体から前記帯状体の厚さ方向に延出し且つ前記帯状体に沿って並ぶ複数の延出片を有する規制部と、前記電線部及び前記規制部を内部に収容する筒状の外装部と、を有し、
前記規制部は、
前記スライドドアが前記閉位置にあるとき、隣り合う前記延出片同士が接触することにより、当該規制部が前記スライドドアに向けて凸となるように湾曲した中間箇所を有するように当該規制部の形状を保持するとともに、前記中間箇所に対応する位置にある前記外装部が前記スライドドアに接触した状態を維持する、ように構成される、
スライドドア構造。
【請求項2】
請求項に記載のスライドドア構造において、
前記中間箇所に対応する前記複数の前記延出片の一部の形状と、前記中間箇所とは異なる他の箇所に対応する前記複数の前記延出片の他部の形状と、が異なる、
スライドドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に対して閉位置と開位置との間で移動可能に設けられるスライドドアと、車体とスライドドアとの間に配索されるワイヤハーネスと、を備えたスライドドア構造、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車体とスライドドアとの間に配索されるワイヤハーネスとして、柔軟性を有するコルゲートチューブ等の屈曲可能な外装部材によって電線束の外周を保護したワイヤハーネスが知られている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-085812号公報
【文献】特開2017-229206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スライドドアが車体への出入口を閉じる閉位置にあるとき、一般に、スライドドアを構成する板材の近傍を通過するようにワイヤハーネスが配索される。このとき、車両の走行中に生じる車体の振動などに起因してワイヤハーネスが振れ動くように変形すると、ワイヤハーネスがスライドドアの板材に接触して異音が生じる可能性がある。また、ワイヤハーネスがスライドドアの板材に接触しなくても、車体の振動などに起因し、コルゲートチューブ等の外装部材の内部で電線束が擦れ動いて異音が生じる可能性がある。このような異音は、スライドドアの品質向上などの観点から、出来る限り防がれることが望ましい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スライドドアが閉じられているときに外部からの振動などに起因する異音が生じることを抑制可能なスライドドア構造、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るスライドドア構造は、下記[1]~[]を特徴としている。
[1]
車体に対して閉位置と開位置との間で移動可能に設けられるスライドドアと、前記車体と前記スライドドアとの間に配索されるワイヤハーネスと、を備えたスライドドア構造であって、
前記ワイヤハーネスは、
前記車体に一端が支持されるとともに前記スライドドアに他端が支持され、前記スライドドアの移動に伴って変形可能であり、前記スライドドアが前記閉位置にあるときに当該ワイヤハーネスの前記一端と前記他端との間の少なくとも一部が前記スライドドアに接触した状態が維持される、ように構成され
前記ワイヤハーネスは、
一又は複数の電線を含む電線部と、前記電線部に沿うように延びる帯状体及び前記帯状体から前記帯状体の厚さ方向に延出し且つ前記帯状体に沿って並ぶ複数の延出片を有する規制部と、前記電線部及び前記規制部を内部に収容する筒状の外装部と、を有し、
前記規制部は、
前記スライドドアが前記閉位置にあるとき、隣り合う前記延出片同士が接触することにより、当該規制部が前記スライドドアに向けて凸となるように湾曲した中間箇所を有するように当該規制部の形状を保持するとともに、前記中間箇所に対応する位置にある前記外装部が前記スライドドアに接触した状態を維持する、ように構成される、
スライドドア構造であること。

上記[]に記載のスライドドア構造において、
前記中間箇所に対応する前記複数の前記延出片の一部の形状と、前記中間箇所とは異なる他の箇所に対応する前記複数の前記延出片の他部の形状と、が異なる、
スライドドア構造であること。
【0007】
上記[1]の構成のスライドドア構造によれば、スライドドアが閉位置にあるとき、ワイヤハーネスの一端と他端との間の少なくとも一部が、スライドドアに接触した状態が維持される。そのため、ワイヤハーネスがスライドドアから離れた状態となっている場合に比べ、ワイヤハーネスの変形自由度が小さい。その結果、仮に外部からの振動などがワイヤハーネスに及んでも、ワイヤハーネスが揺れ動くように変形することやワイヤハーネス内の電線束などが擦れ動くことを抑制できる。したがって、本構成のスライドドア構造は、スライドドアが閉じられているときに外部からの振動などに起因する異音が生じることを抑制できる。
【0008】
更に、上記[]の構成のスライドドア構造によれば、スライドドアが閉位置にあるとき、ワイヤハーネスを構成する部材の一つである規制部が有する延出片により、規制部がスライドドアに向けて凸となるように湾曲した中間箇所を有するように、規制部の形状が保持される。更に、このように規制部の形状が保持されることで、中間箇所に対応する位置にある外装部が、スライドドアに接触した状態が維持される。これにより、外部からの振動などに起因するワイヤハーネスの変形や電線束の移動が抑制され、異音が生じることを抑制できる。
【0009】
上記[]の構成のスライドドア構造によれば、スライドドアに向けて凸となるように湾曲した中間箇所を構成するべく、中間箇所に対応する延出片の形状と、他の箇所に対応する延出片の形状と、が異なる。換言すると、延出片の形状を調整することにより、所望の位置に中間箇所(即ち、外装部材がスライドドアに接触することになる箇所)が構成されるように、ワイヤハーネスを設計することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スライドドアが閉じられているときに外部からの振動などに起因する異音が生じることを抑制可能なスライドドア構造を提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係るスライドドア構造を示す図であって、図1(a)はスライドドアが閉位置にあるときの概略平面図であり、図1(b)はスライドドアが半開状態のときの概略平面図であり、図1(c)はスライドドアが開位置にあるときの概略平面図である。
図2図2は、ワイヤハーネスの保護チューブの車体側の端部が接続された車体側給電具の水平方向の断面図である。
図3図3は、ワイヤハーネスの保護チューブのスライドドア側の端部が接続されたドア側給電具の水平方向の断面図である。
図4図4(a)は、ワイヤハーネスの保護チューブの内部の構造の一部を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のC-C断面図である。
図5図5(a)は、図1(a)の湾曲箇所Aの拡大図であり、図5(b)は、図5(a)に示す湾曲箇所Aの内部の構造を示す断面図であり、図5(c)は、図5(b)に示す複数の規制部のうちの一つの拡大図である。
図6図6(a)は、図1(a)の湾曲箇所Bの拡大図であり、図6(b)は、図6(a)に示す湾曲箇所Bの内部の構造を示す断面図であり、図6(c)は、図6(b)に示す複数の規制部のうちの一つの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るスライドドア構造について説明する。
【0014】
<全体構成>
図1(a)~図1(c)に示すように、本実施形態に係るスライドドア構造は、自動車等の車両の車体1に対して閉位置と開位置との間でスライド可能なスライドドア2と、車体1とスライドドア2との間に配索されるワイヤハーネス11と、を備える。スライドドア2は、車体1に対してスライドされることで、車体1に設けられた昇降口3を開閉する。昇降口3は、車内の前後に配置された座席4の間における車体1の側部に設けられている。
【0015】
図1(a)に示すように、スライドドア2が閉位置に配置されて昇降口3が閉じられた閉状態からスライドドア2が開方向(即ち、図1(a)中の矢印X方向)へスライドされると、図1(b)に示すように、昇降口3が開く。その後、図1(c)に示すように、スライドドア2が開位置に配置されて昇降口3が開かれた開状態とされると、昇降口3の全体が開放される。即ち、図1(b)は、スライドドア2が閉位置と開位置との間の中間位置にある状態(即ち、半開状態)における、スライドドア2及びワイヤハーネス11等の位置関係を表している。逆に、図1(c)に示すように、スライドドア2が開位置から閉方向(図1(c)中の矢印Y方向)へスライドされると、図1(b)に示すように、昇降口3が閉じる。その後、図1(a)に示すように、スライドドア2が閉位置に達すると、昇降口3が閉鎖される。このように、スライドドア2は、開位置と閉位置との間を往復するように移動可能に構成されている。
【0016】
車体1の昇降口3には、スカッフプレート5が設けられている。スカッフプレート5は本例では、車体1の昇降口3に形成された窪み3aに設けられている。ワイヤハーネス11は、本例では、スカッフプレート5の上側に配置されている。但し、ワイヤハーネス11の配索経路は車体1の形状などに応じて適宜設計されればよく、例えば、ワイヤハーネス11がスカッフプレート5から車体外側に離れた位置に配置されてもよい。
【0017】
ワイヤハーネス11は、スライドドア2に設けられた種々の電装品および補機などへの電力供給や、車体1とスライドドア2との間での各種信号の送受信のために設けられる。ワイヤハーネス11は、複数本の電線束からなる電線部31(図4(a)及び図4(b)参照)を有している。電線部31は、保護チューブ32(外装部)に挿通されている。保護チューブ32として、例えば、コルゲートチューブやケーブルベア(登録商標)が使用され得る。保護チューブ32は、後述するようにワイヤハーネス11の姿勢維持のためにスライドドア2に接触することになるため、スライドドア2を傷つけ難い材料(例えば、樹脂など)で構成されていることが好ましい。
【0018】
更に、ワイヤハーネス11には、保護チューブ32の内部にて、電線部31を覆うように規制部33が設けられている(図4(a)及び図4(b)参照)。規制部33は、コルゲートガイドとも呼ばれる。規制部33は、電線部31に沿って延びる帯状体34と、帯状体34から延出するように帯状体34に一体的に成形された複数の延出片35と、を有する。延出片35は、帯状体34の幅方向の両端部(即ち、図4(a)及び図4(b)での上下の端部)から帯状体34の厚さ方向に延出している。規制部33は、スライドドア2が閉位置にあるときに、2つの湾曲箇所A及び湾曲箇所B(図1(a)参照)を有するS字状となるようにワイヤハーネス11の全体形状を保持する。より具体的には、規制部33は、湾曲箇所Aに対応する位置にある保護チューブ32がスライドドア2に接触した状態を維持するようになっている。規制部33については、より詳細に後述する。
【0019】
車体1には車体側給電具14が設けられ、スライドドア2にはドア側給電具16が設けられている。ワイヤハーネス11の保護チューブ32は、その一端が車体側給電具14に接続され、その他端がドア側給電具16に接続されている。
【0020】
図2は、ワイヤハーネス11の保護チューブ32の車体側の端部が接続された車体側給電具14の水平方向の断面図である。図3は、ワイヤハーネス11の保護チューブ32のスライドドア側の端部が接続されたドア側給電具16の水平方向の断面図である。
【0021】
図2に示すように、車体側給電具14は、車体1に固定されたアウタ部材21と、アウタ部材21に水平方向に回動自在(首振り可能)に軸支され且つワイヤハーネス11の保護チューブ32の端部を支持したインナ部材22と、を含む。アウタ部材21及びインナ部材22により、車体側給電具14は、インナ部材22の軸22aを中心に保護チューブ32を水平方向に回動自在(首振り可能)に支持するようになっている。アウタ部材21は、回動規制壁21a,21bを有している。インナ部材22は、回動規制壁21a,21bに当接することにより、回動範囲が規制される。
【0022】
図3に示すように、ドア側給電具16は、スライドドア2のインナパネルに固定されたアウタ部材25と、アウタ部材25に水平方向に回動自在(首振り可能)に軸支され且つワイヤハーネス11の保護チューブ32の端部を支持したインナ部材26と、を含む。アウタ部材25とインナ部材26により、ドア側給電具16は、インナ部材26の軸26aを中心に保護チューブ32を水平方向に回動自在(首振り可能)に支持するようになっている。アウタ部材25は、回動規制壁25aを有している。インナ部材26は、回動規制壁25aに当接することにより、回動範囲が規制される。更に、本例では、ドア側給電具16は、インナ部材26をドア側に向けて付勢するばね部材27を備えている。
【0023】
スライドドア2が開閉されると、ワイヤハーネス11の保護チューブ32の動きに合わせ、保護チューブ32の端部が接続されているインナ部材22,26が回動する。これにより、スライドドア2の開閉時におけるワイヤハーネス11の端部での過剰な屈曲が抑えられる。
【0024】
<規制部33の構成及び作用>
次いで、図4図6を参照しながら、ワイヤハーネス11に設けられた規制部33(即ち、帯状体34及び複数の延出片35)の構成及び作用について説明する。
【0025】
図4図6に示すように、ワイヤハーネス11の保護チューブ32の内部には、電線部31に沿うように延びる帯状体34と、帯状体34に沿って並ぶように帯状体34に一体的に成形された複数の延出片35とが設けられている。規制部33は、ワイヤハーネス11の湾曲を規制する部材であり、樹脂から構成され得る。
【0026】
図4(a)、図5(b)、図5(c)、図6(b)及び図6(c)に示すように、規制部33の一部である帯状体34は、スライドドア2の閉位置(図1(a)参照)にて、電線部31の車体外側に位置し、電線部31の延在方向の略全域に亘って水平面内にて屈曲可能に延在している。電線部31、規制部33及びこれらを内部に収容する保護チューブ32は、同じ全体形状となるように、延在方向の略全域に亘って水平面内にて一体で屈曲可能となっている。
【0027】
図4(a)、図4(b)、図5(b)、図5(c)、図6(b)及び図6(c)に示すように、延出片35は、帯状体34の幅方向の両端部から帯状体34の厚さ方向に延出している。帯状体34の幅方向の一の端部から延出した延出片35と、他の端部から延出した延出片35とは、互いに向かい合っている。以下、便宜上、帯状体34の幅方向の両端部から延出した2つの延出片35を、一対の延出片35と称呼する。このような一対の延出片35が、帯状体34の延在方向の略全域に亘って、帯状体34に沿って並ぶように配置されている。
【0028】
図4(b)に示すように、スライドドア2の閉位置(図1(a)参照)にて、帯状体34は電線部31の車体外側に位置し、一対の延出片35のうち上側の延出片35は電線部31の上側に位置し、下側の延出片35は電線部31の下側に位置している。即ち、規制部33は、スライドドア2の閉位置(図1(a)参照)にて、電線部31の延在方向の略全域を、上側、車体外側、及び、下側から覆っている。
【0029】
複数の延出片35は、以下のように、規制部33(ひいてはワイヤハーネス11)の屈曲度合を規制するようになっている。即ち、図5(c)及び図6(c)に示すように、隣接する延出片35の対向する側面35a同士が互いに近づく方向に水平面内にて規制部33が屈曲する場合、規制部33は、対向する側面35a同士が接触するまでは屈曲可能であるが、それ以上は屈曲できない。逆に、規制部33が、隣接する延出片35の対向する側面35a同士が互いに遠ざかる方向に水平面内にて屈曲する場合、規制部33の屈曲度合が延出片35によって制限されない。そして、このように対向する側面35a同士が接触することで規制部33の屈曲度合が規制されることで、規制部33(ひいてはワイヤハーネス11)の形状が保持可能となっている。
【0030】
本例では、スライドドア2の閉位置(図1(a)参照)にて、図5(b)及び図6(b)に示すように、ワイヤハーネス11の湾曲箇所A及び湾曲箇所Bにおいて、隣接する延出片35の対向する側面35a同士が接触することで、所定の湾曲形状が保持されている。
【0031】
具体的には、図5(c)に示すように、湾曲箇所Aでは、各延出片35の一対の側面35aが、車体内側に近付くにつれて延出片35の幅が狭くなる方向に傾斜している(角度a参照)。この傾斜に起因し、図5(b)に示すように、規制部33が、車体外側に凸となるように(即ち、スライドドア2に向けて凸となるように)水平面内にて屈曲している。この結果、湾曲箇所Aでは、ワイヤハーネス11が、車体外側に凸となるように水平面内にて湾曲するとともに、ワイヤハーネス11の保護チューブ32がスライドドア2に接触した状態となる。
【0032】
一方、図6(c)に示すように、湾曲箇所Bでは、各延出片35の延出片35の一対の側面35aが、車体内側に近付くにつれて延出片35の幅が広くなる方向に傾斜している(角度b参照)。この傾斜に起因し、図6(b)に示すように、規制部33が、車体内側に凸となるように(即ち、車体1に向けて凸となるように)水平面内にて屈曲している。この結果、湾曲箇所Bでは、ワイヤハーネス11が車体内側に凸となるように水平面内にて湾曲している。このように湾曲箇所Aに対応する延出片35の形状と、湾曲箇所Bに対応する延出片35の形状とは、異なっている。
【0033】
スライドドア2の閉位置(図1(a)参照)にて、このように湾曲箇所A及び湾曲箇所Bのそれぞれの湾曲形状が延出片35によって保持されることで、ワイヤハーネス11の全体形状がS字状となるように保持される。この結果、湾曲箇所Aに対応する位置にある保護チューブ32がスライドドア2に接触した状態が維持される(図1(a)参照)。別の言い方をすると、湾曲箇所Aに対応する位置にある保護チューブ32がスライドドア2に接触した状態が維持されるように、湾曲箇所Aに対応する位置にある延出片35の形状(例えば、角度aの大きさ)が設計されればよい。
【0034】
スライドドア2の閉位置(図1(a)参照)にて、ワイヤハーネス11における湾曲箇所A及び湾曲箇所B以外の箇所では、隣接する延出片35の対向する側面35a同士が接触していても接触していなくてもよい。隣接する延出片35の対向する側面35a同士が接触している場合、ワイヤハーネス11の全体形状が図1(a)に示すS字状に保持されるように、各延出片35の一対の側面35aの傾斜角度(図5(c)の角度a、図6(c)の角度b参照)がそれぞれ設計される必要がある。
【0035】
以上、本発明の実施形態に係るスライドドア構造によれば、スライドドア2が閉位置にあるとき、ワイヤハーネス11の一端と他端との間の湾曲箇所Aがスライドドア2に接触した状態が維持される。よって、ワイヤハーネス11がスライドドア2に接触せず離れた状態となっている場合に比べ、外部からの振動などがワイヤハーネス11に及んでも、ワイヤハーネス11が揺れ動くように変形することや保護チューブ32の内部で電線部31が擦れ動くことが抑制される。その結果、異音が生じることを抑制できる。
【0036】
更に、スライドドア2が閉位置にあるとき、ワイヤハーネス11を構成する部材の一つである規制部33が有する延出片35により、規制部33がスライドドア2に向けて凸となるように湾曲した湾曲箇所Aを有するように規制部33の形状が保持される。更に、規制部33により、湾曲箇所Aに対応する位置にある保護チューブ32が、スライドドア2に接触した状態が維持される。これにより、ワイヤハーネス11の振動が抑制されることになる。
【0037】
更に、スライドドア2に向けて凸となるように湾曲した湾曲箇所Aを構成するために、湾曲箇所Aに対応する延出片35の一対の側面35aの形状と、他の箇所である湾曲箇所Bに対応する延出片35の一対の側面35aの形状と、が異なる。即ち、それぞれの延出片35の形状を湾曲箇所Aを構成可能な形状に設計することにより、ワイヤハーネス11がスライドドア2に接触した状態を維持できる。
【0038】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
ここで、上述した本発明に係るスライドドア構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
車体(1)に対して閉位置と開位置との間で移動可能に設けられるスライドドア(2)と、前記車体(1)と前記スライドドア(2)との間に配索されるワイヤハーネス(11)と、を備えたスライドドア構造であって、
前記ワイヤハーネス(11)は、
前記車体(1)に一端が支持されるとともに前記スライドドア(2)に他端が支持され、前記スライドドア(2)の移動に伴って変形可能であり、前記スライドドア(2)が前記閉位置にあるときに当該ワイヤハーネス(11)の前記一端と前記他端との間の少なくとも一部(A)が前記スライドドア(2)に接触した状態が維持される、ように構成される、
スライドドア構造。
[2]
上記[1]に記載のスライドドア構造において、
前記ワイヤハーネス(11)は、
一又は複数の電線を含む電線部(31)と、前記電線部(31)に沿うように延びる帯状体(34)及び前記帯状体から前記帯状体の厚さ方向に延出し且つ前記帯状体に沿って並ぶ複数の延出片(35)を有する規制部(33)と、前記電線部(31)及び前記規制部(33)を内部に収容する筒状の外装部(32)と、を有し、
前記規制部(33)は、
前記スライドドア(2)が前記閉位置にあるとき、隣り合う前記延出片(35)同士が接触することにより、当該規制部(33)が前記スライドドア(2)に向けて凸となるように湾曲した中間箇所(A)を有するように当該規制部(33)の形状を保持するとともに、前記中間箇所(A)に対応する位置にある前記外装部(32)が前記スライドドア(2)に接触した状態を維持する、ように構成される、
スライドドア構造。
[3]
上記[2]に記載のスライドドア構造において、
前記中間箇所(A)に対応する前記複数の前記延出片(35)の一部の形状と、前記中間箇所(A)とは異なる他の箇所(B)に対応する前記複数の前記延出片(35)の他部の形状と、が異なる、
スライドドア構造。
【符号の説明】
【0040】
1 車体
2 スライドドア
11 ワイヤハーネス
31 電線部
32 保護チューブ(外装部)
33 規制部
34 帯状体
35 延出片
35a 側面
A 湾曲箇所(中間箇所)
B 湾曲箇所(他の箇所)
図1
図2
図3
図4
図5
図6